(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
[高誘電樹脂組成物]
以下、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物は、静電容量型センサにおける封止膜を形成するために用いられる高誘電樹脂組成物であり、エポキシ樹脂(A)と、比誘電率(1MHz)が5以上である高誘電性無機充填剤(B)と、を含む。
そして、平坦な底面を有するアルミ箔容器の上記底面の全面を覆うように上記高誘電樹脂組成物を上記アルミ箔容器に収容し、大気圧下175℃の雰囲気下で3分間加熱することにより上記高誘電樹脂組成物を硬化させたとき、硬化した上記高誘電樹脂組成物の上記底面に接する面において形成された空隙の面積が、硬化した上記高誘電樹脂組成物の上記底面に接する面の総面積に対して3%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、特に好ましくは10%以上、そして、28%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは22%以下、特に好ましくは20%以下である。ここで、硬化した上記高誘電樹脂組成物の上記底面に接する面の総面積に対する硬化した上記高誘電樹脂組成物の上記底面に接する面において形成された空隙の面積の比率を空隙率とも呼ぶ。
【0015】
具体的には、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物の空隙率は、以下のように測定することができる。
図1は、この空隙率の測定方法の一例を説明する図である。まず、平坦な底面を有するアルミ箔容器を準備し、このアルミ箔容器の底面の全面を高誘電樹脂組成物で覆うようにアルミ箔容器に高誘電樹脂組成物を収容する(
図1(a))。ついで、大気圧下に高誘電樹脂組成物を曝しながら、高誘電樹脂組成物を収容するアルミ箔容器全体を175℃の雰囲気下で3分間加熱する。こうすることにより高誘電樹脂組成物を硬化させる(
図1(b))。そして、アルミ箔容器から上記硬化処理した高誘電樹脂組成物を取り出し(
図1(c))、高誘電樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面を観察し(
図1(d))、観察の対象面(硬化した高誘電樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面)の総面積に対する観察の対象面において形成された空隙の面積の比率、すなわち空隙率を求める。
【0016】
空隙の面積の求め方は、特に限定されないが、例えば、硬化した高誘電樹脂組成物のアルミ箔容器の底面に接していた面をデジタルカメラで撮影するなどしてデジタル画像とし、画像処理により二値化して算出してもよい。例えば、空隙を黒に処理した場合は、黒の部分の合計を空隙の面積とすればよい。そして、画像化された観察の対象面の面積全体に対する黒の部分の面積の比率を算出することにより、空隙率を求めることができる。
【0017】
空隙率の測定に用いるアルミ箔容器の形状は、平坦な底面を有し、かつ、高誘電樹脂組成物を収容できるものであればどのようなものであってもよい。また、アルミ箔容器の厚みは、例えば、0.01mm以上2mm以下とすることができる。アルミ箔容器の好ましい態様の一例としては、空の容器を雰囲気温度170℃以上180℃以下に保持したオーブンに容器を静置し30秒以内に容器の底面内面(容器の底面内側)の表面温度が170℃以上180℃以下に到達するような容器が例示される。
【0018】
また、アルミ箔容器に高誘電樹脂組成物を投入する際は、空隙率を測定するときに硬化処理後の高誘電樹脂組成物の厚み(
図1(b)のw)が2mm以上10mm以下になるようにアルミ箔容器に高誘電樹脂組成物を収容させることが好ましい。また、高誘電樹脂組成物の表面(容器から露出した面)は、平坦であることがより好ましい。
【0019】
また、高誘電樹脂組成物を加熱する際は、高誘電樹脂組成物を収容するアルミ箔容器を傾けずに静置でき、かつ、高誘電樹脂組成物を収容したアルミ箔容器の全体を175℃に加熱できれば特に限定されないが、例えば、恒温槽(オーブン)で加熱する方法が挙げられる。
【0020】
大気圧とは、一般的には、1気圧(約0.1MPa)をいうが、本実施形態において、大気圧下とは、0.01MPa以上1MPa以下の範囲を含むことができる。
【0021】
本発明者らは、本発明者が考案した、所定の条件における高誘電樹脂組成物を硬化させたときの空隙率が、静電容量型センサにおけるバリの発生および静電容量型センサのボンディングワイヤの変形の発生の両方をバランスよく抑制するための設計指針として有効であることを新たに知見し、本実施形態の構成に至った。
まず、高誘電樹脂組成物の空隙率を上記上限値以下とすることにより、静電容量型センサにおけるボンディングワイヤの変形の発生を抑制することができる。
また、高誘電樹脂組成物の空隙率を上記下限値以上とすることにより、静電容量型センサにおけるバリの発生を抑制することができる。
すなわち、高誘電樹脂組成物の空隙率を上記範囲内に調整することにより、静電容量型センサを歩留りよく製造することができる。
この理由は定かではないが、空隙率が上記範囲内である高誘電樹脂組成物は、封止膜を形成する際、すなわち金型内で適度な流動状態になっており、その結果、金型の合わせ面等の隙間に高誘電樹脂組成物が浸入するのを抑制できながら、ボンディングワイヤへの応力を低減でき、静電容量型センサにおけるバリの発生およびボンディングワイヤの変形の発生の両方をバランスよく抑制できると考えられる。
【0022】
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物の上記空隙率は、後述する高誘電樹脂組成物を構成する各成分の種類と含有割合を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、特に、後述する高誘電性無機充填剤(B)やシリカ粒子(B3)等の無機充填剤の種類や粒度分布、含有割合等が上記空隙率を制御するための因子として挙げられる。
【0023】
以下、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物について詳細に説明する。
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物は、例えば、基板101上に設けられた検出電極103を封止する封止膜105を形成するために用いられる。高誘電樹脂組成物を用いた封止成形は特に限定されないが、例えば、トランスファー成形法、または圧縮成形法により行うことができる。高誘電樹脂組成物は、例えば、タブレット状または粉粒体である。高誘電樹脂組成物がタブレット状である場合、例えば、トランスファー成形法を用いて高誘電樹脂組成物を成形することができる。また、高誘電樹脂組成物が粉粒体である場合には、例えば、圧縮成形法を用いて高誘電樹脂組成物を成形することができる。高誘電樹脂組成物が粉粒体であるとは、粉末状または顆粒状のいずれかである場合を指す。
これらの中でも圧縮成形法を用いる場合、静電容量型センサの歩留りにより一層優れる観点から、高誘電樹脂組成物は顆粒状であることが好ましい。
【0024】
(エポキシ樹脂(A))
エポキシ樹脂(A)としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。
本実施形態において、エポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ樹脂(A)としては、耐湿信頼性と成形性のバランスを向上させる観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂(A)としては、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(3)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることが特に好ましい。
【0026】
【化1】
(式(1)中、Ar
1はフェニレン基またはナフチレン基を表し、Ar
1がナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Ar
2はフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。R
aおよびR
bは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表す。gは0〜5の整数であり、hは0〜8の整数である。n
3は重合度を表し、その平均値は1〜3である。)
【0027】
【化2】
(式(2)中、複数存在するR
cは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
5は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0028】
【化3】
(式(3)中、複数存在するR
dおよびR
eは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。n
6は重合度を表し、その平均値は0〜4である。)
【0029】
本実施形態において、高誘電樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂(A)の含有量は、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、成形時において、十分な流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図ることができる。
一方で、高誘電樹脂組成物中におけるエポキシ樹脂(A)の含有量は、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、高誘電樹脂組成物の硬化物を封止膜として用いる静電容量型センサについて、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
【0030】
(高誘電性無機充填剤(B))
高誘電性無機充填剤(B)は比誘電率(1MHz)が5以上であるものならば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、アルミナ、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、およびチタン酸バリウムからなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、封止膜105の比誘電率を特に向上できる観点から、アルミナ、酸化チタンおよびチタン酸バリウムからなる群から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましく、アルミナおよびチタン酸バリウムから選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態において、高誘電樹脂組成物中における高誘電性無機充填剤(B)の含有量は、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。高誘電性無機充填剤(B)の含有量を上記下限値以上とすることにより、高誘電樹脂組成物の誘電特性をより一層向上させ、静電容量型センサの感度をより一層向上させることができる。
一方で、高誘電樹脂組成物中における高誘電性無機充填剤(B)の含有量は、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、96質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが特に好ましい。高誘電性無機充填剤(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、高誘電樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0032】
高誘電性無機充填剤(B)の平均粒径D
50は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましい。平均粒径D
50を上記下限値以上とすることにより、高誘電樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性をより効果的に向上させることが可能となる。また、平均粒径D
50を上記上限値以下とすることにより、ゲート詰まり等が生じることを確実に抑制できる。
なお、平均粒径D
50は、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、(株)島津製作所製、SALD−7000)を用いて、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D
50)を平均粒径D
50とすることができる。
【0033】
高誘電性無機充填剤(B)の粒径D
90は特に限定されないが、2μm以上20μm以下であることが好ましい。これにより、高誘電樹脂組成物の流動性をより一層良好なものとし、成形性をより効果的に向上させることが可能となる。また、得られる封止膜の膜厚の均一性をより良好なものとすることができる。
なお、粒径D
90は、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、(株)島津製作所製、SALD−7000)を用いて、粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより得ることができる。
【0034】
高誘電性無機充填剤(B)は破砕状の無機充填剤(B1)および球状の無機充填剤(B2)から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、高誘電性無機充填剤(B)の充填性を向上させ、高誘電樹脂組成物中における高誘電性無機充填剤(B)の含有量を高める観点から、破砕状の無機充填剤(B1)および球状の無機充填剤(B2)の両方を含むことがより好ましい。
【0035】
高誘電性無機充填剤(B)の比表面積(SSA)は1.5m
2/g以下であることが好ましく、0.1m
2/g以上1.5m
2/g以下であることがより好ましい。
高誘電性無機充填剤(B)としては、比表面積(SSA)が異なる2種以上の高誘電性無機充填剤(B)を用いることもできる。
なお、本実施形態において、高誘電性無機充填剤(B)の比表面積(SSA)は、例えば、市販の比表面積計(例えば、(株)マウンテック製MACSORB HM−MODEL−1201等)により測定することができる。
【0036】
(シリカ粒子(B3))
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物は、得られる静電容量型センサの感度を向上させつつ、静電容量型センサの反りを抑制する観点から、シリカ粒子(B3)をさらに含むことが好ましい。
シリカ粒子(B3)の平均粒径D
50は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.02μm以上15μm以下であることがより好ましい。平均粒径D
50を上記下限値以上とすることにより、高誘電樹脂組成物の流動性をより一層良好なものとし、成形性をより一層向上させることが可能となる。また、平均粒径D
50を上記上限値以下とすることにより、ゲート詰まり等が生じることをより一層抑制できる。
また、本実施形態においては、シリカ粒子(B3)は平均粒径D
50が0.01μm以上1μm以下の微粉シリカを含むことが、高誘電樹脂組成物の充填性を向上させる観点や、静電容量型センサの反りを抑制する観点から、好ましい態様の一つとして挙げられる。
【0037】
シリカ粒子(B3)の含有量は、得られる静電容量型センサの感度を向上させつつ、静電容量型センサの反りを抑制する観点から、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上28質量%以下であることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物において、上記空隙率を高度に制御する観点から、粒径が0.5μm以下の無機充填剤の含有量が、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、14質量%以上18質量%以下であることが好ましい。ここで、上記無機充填剤とは、高誘電性無機充填剤(B)だけでなく、シリカ粒子(B3)も含まれる。
なお、粒径が0.5μm以下の無機充填剤の量はレーザー回折散乱式粒度分布測定法により定量でき、例えば、市販のレーザー式粒度分布計(例えば、(株)島津製作所製、SALD−7000)を用いて測定することができる。
【0039】
(硬化剤(C))
高誘電樹脂組成物は、例えば、硬化剤(C)を含むことができる。硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂(A)と反応して硬化させるものであれば特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2〜20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類;アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;トリスフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂;ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)等の芳香族酸無水物等を含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテル等のポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
高誘電樹脂組成物中における硬化剤(C)の含有量は、特に限定されないが、例えば、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
(カップリング剤(D))
高誘電樹脂組成物は、例えば、カップリング剤(D)を含むことができる。カップリング剤(D)としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。
これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
高誘電樹脂組成物中におけるカップリング剤(D)の含有量は、特に限定されないが、例えば、高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。カップリング剤(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、高誘電樹脂組成物中における高誘電性無機充填剤(B)の分散性を良好なものとすることができる。また、カップリング剤(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、高誘電樹脂組成物の流動性を良好なものとし、成形性の向上を図ることができる。
【0043】
(その他の成分(E))
高誘電樹脂組成物は、上記成分の他に、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、もしくはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物、または1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、イミダゾール等のアミジン系化合物、ベンジルジメチルアミン等の3級アミンや上記化合物の4級オニウム塩であるアミジニウム塩、もしくはアンモニウム塩等に代表される窒素原子含有化合物、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物等の硬化促進剤;カーボンブラック等の着色剤;天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等の離型剤;ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤;ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;水酸化アルミニウム等の難燃剤;酸化防止剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0044】
高誘電樹脂組成物の硬化体の1MHzにおける比誘電率(ε
r)は、好ましくは5以上であり、より好ましくは7以上であり、特に好ましくは8以上である。比誘電率(ε
r)が上記下限値以上であることにより、高誘電樹脂組成物の誘電特性をより一層向上させ、静電容量型センサの感度をより一層向上させることができる。
高誘電樹脂組成物の硬化体は、例えば、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記高誘電樹脂組成物を圧縮成形することにより得られる。この硬化体は、例えば、直径50mm、厚さ3mmである。
硬化体の比誘電率(ε
r)は、例えば、YOKOGAWA−HEWLETT PACKARD社製Q−METER 4342Aにより測定できる。
比誘電率(ε
r)の上限は特に限定されないが、例えば、300以下である。
【0045】
上記比誘電率(ε
r)は、高誘電樹脂組成物を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することが可能である。本実施形態においては、特に高誘電性無機充填剤(B)の種類や含有量を適切に選択することが、上記比誘電率(ε
r)を制御するための因子として挙げられる。例えば、誘電率が大きい無機充填剤を多く使用するほど、高誘電樹脂組成物の硬化体の上記比誘電率(ε
r)を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物において、成形性をより良好にする観点から、175℃、荷重10kgでの溶融粘度が1Pa・s以上50Pa・s以下であることが好ましい。175℃、荷重10kgでの溶融粘度は、例えば、島津製作所社製の熱流動評価装置(フローテスタ)により測定することができる。
なお、溶融粘度は、例えば、高誘電樹脂組成物に含まれる各成分の種類や含有量等をそれぞれ適切に調整することにより制御することが可能である。
【0047】
本実施形態においては、高誘電樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度が、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることが特に好ましい。これにより、静電容量型センサの耐熱性をより効果的に向上させることができる。一方で、上記ガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、250℃とすることができる。
【0048】
高誘電樹脂組成物の硬化体の上記ガラス転移温度は、例えば、次のように測定することができる。
高誘電樹脂組成物の硬化体は、例えば、圧縮成形機を用いて、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記高誘電樹脂組成物を圧縮成形することにより得られる。この硬化体は、例えば、長さ10mm、幅4mm、厚さ4mmである。
次いで、得られた硬化体を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃〜320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行う。この測定結果から、ガラス転移温度を算出する。
上記ガラス転移温度は、高誘電樹脂組成物を構成する各成分の種類や配合割合を適切に調節することにより制御することが可能である。
【0049】
[高誘電樹脂組成物の製造方法]
以下、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態に係る高誘電樹脂組成物は、上記成分を混合混練した後、粉砕、造粒、押出切断および篩分等の各種の手法を単独または組み合わせることにより、顆粒とすることができる。顆粒を得る方法としては、例えば、各原料成分をミキサーで予備混合し、これをロール、ニーダーまたは押出機等の混練機により加熱混練した後、複数の小孔を有する円筒状外周部と円盤状の底面から構成される回転子の内側に溶融混練された樹脂組成物を供給し、その樹脂組成物を、回転子を回転させて得られる遠心力によって小孔を通過させて得る方法(遠心製粉法);上記と同様に混練した後、冷却、粉砕工程を経て粉砕物としたものを、篩を用いて粗粒と微紛の除去を行って得る方法(粉砕篩分法);各原料成分をミキサーで予備混合した後、スクリュー先端部に小径を複数配置したダイを設置した押出機を用いて、加熱混練を行うとともに、ダイに配置された小孔からストランド状に押し出されてくる溶融樹脂をダイ面に略平行に摺動回転するカッターで切断して得る方法(以下、「ホットカット法」とも言う。)等が挙げられる。いずれの方法においても、混練条件、遠心条件、篩分条件および切断条件等を選択することにより、所望の粒度分布を有する顆粒状の高誘電樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
[静電容量型センサ]
以下、本実施形態に係る静電容量型センサ100の構成ついて詳細に説明する。
【0051】
本実施形態に係る静電容量型センサ100は、例えば、指との静電容量を感知する静電容量方式によって、指紋情報を読み取る指紋センサである。ここで、指紋センサは、当該指紋センサに載せられた指の凹凸を読み取る。例えば、静電容量型センサ100には、指紋の凹凸よりも細かい検出電極103が設けられている。そして、指紋の凹凸と検出電極103との間に蓄積される静電容量により指紋の凹凸を表した2次元画像を作成する。例えば、指紋の凸部と凹部では検出される静電容量が異なるため、この静電容量の差から指紋の凹凸を表した2次元画像を作成できる。この2次元画像により指紋情報を読み取ることができる。
【0052】
図2は、本実施形態に係る静電容量型センサ100を模式的に示す断面図である。
本実施形態に係る静電容量型センサ100は、基板101と、基板101上に設けられた検出電極103と、検出電極103を封止する封止膜105と、を備えている。
本実施形態によれば、検出電極103を封止する封止膜105は、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物の硬化物により構成される。このような硬化物は誘電特性に優れている。このため、静電容量型センサ100の感度を向上させることができる。ここで、本実施形態において、誘電特性に優れるとは、例えば、比誘電率が高く、静電容量が大きいことを意味する。
【0053】
静電容量型センサ100の感度をより一層向上させる観点から、基板101(例えば、シリコンチップ)上の封止膜105の厚みDは、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
【0054】
基板101は、例えば、チップ状のシリコン基板である。検出電極103は、例えば、Al膜により形成され、基板101上に層間膜107を介して一次元または二次元アレイ状に配置されている。層間膜107は、例えば、SiO
2等により形成される。
検出電極103の上面は封止膜105により被覆されている。検出電極103は、例えば、ワイヤボンディングが施されている。
【0055】
本実施形態に係る静電容量型センサ100は公知の情報に基づいて製造することができる。例えば、次のように製造される。
まず、基板101上に層間膜107を設けた後、層間膜107上に検出電極103を形成する。次いで、検出電極103を、高誘電樹脂組成物により封止成形する。成形法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法が挙げられる。これらの中でも圧縮成形法を用いた場合、静電容量型センサ100のバリや静電容量型センサのボンディングワイヤの変形が特に発生しやすいため、本実施形態に係る高誘電樹脂組成物をより効果的に用いることができる。
次いで、高誘電樹脂組成物を熱硬化させ、封止膜105を形成する。これにより、本実施形態に係る静電容量型センサ100が得られることとなる。
【0056】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
静電容量型センサにおける封止膜を形成するために用いられる高誘電樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂(A)と、
比誘電率(1MHz)が5以上である高誘電性無機充填剤(B)と、
を含み、
平坦な底面を有するアルミ箔容器の前記底面の全面を覆うように前記高誘電樹脂組成物を前記アルミ箔容器に収容し、大気圧下175℃の雰囲気下で3分間加熱することにより前記高誘電樹脂組成物を硬化させたとき、硬化した前記高誘電樹脂組成物の前記底面に接する面において形成された空隙の面積が、硬化した前記高誘電樹脂組成物の前記底面に接する面の総面積に対して3%以上28%以下である高誘電樹脂組成物。
<2>
<1>に記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)が破砕状の無機充填剤(B1)を含む高誘電樹脂組成物。
<3>
<2>に記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)が球状の無機充填剤(B2)をさらに含む高誘電樹脂組成物。
<4>
<1>乃至<3>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
顆粒状である高誘電樹脂組成物。
<5>
<1>乃至<4>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)の比表面積(SSA)が1.5m2/g以下である高誘電樹脂組成物。
<6>
<1>乃至<5>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒径D50が1μm以上10μm以下である高誘電樹脂組成物。
<7>
<1>乃至<6>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
粒径が0.5μm以下の無機充填剤の含有量が、前記高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、14質量%以上18質量%以下である高誘電樹脂組成物。
<8>
<1>乃至<7>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径D90が2μm以上20μm以下である高誘電樹脂組成物。
<9>
<1>乃至<8>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
175℃、荷重10kgでの前記高誘電樹脂組成物の溶融粘度が1Pa・s以上50Pa・s以下である高誘電樹脂組成物。
<10>
<1>乃至<9>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度が100℃以上である高誘電樹脂組成物。
<11>
<1>乃至<10>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電樹脂組成物の硬化体の1MHzにおける比誘電率(εr)が5以上である高誘電樹脂組成物。
<12>
<1>乃至<11>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填剤(B)がアルミナ、酸化チタンおよびチタン酸バリウムから選択される一種または二種以上を含む高誘電樹脂組成物。
<13>
<1>乃至<12>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記高誘電性無機充填材(B)の含有量が、前記高誘電樹脂組成物全体を100質量%としたとき、50質量%以上96質量%以下である高誘電樹脂組成物。
<14>
<1>乃至<13>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物において、
前記静電容量型センサが静電容量型指紋センサである高誘電樹脂組成物。
<15>
基板と、
前記基板上に設けられた検出電極と、
前記検出電極を封止し、かつ、<1>乃至<14>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物の硬化物により構成された封止膜と、
を備える静電容量型センサ。
<16>
<15>に記載の静電容量型センサを製造するための製造方法であって、
<1>乃至<14>いずれか一つに記載の高誘電樹脂組成物を用いた圧縮成形法により前記検出電極を封止する工程を含む静電容量型センサの製造方法。
【実施例】
【0057】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
(高誘電樹脂組成物の調製)
まず、表1に従い配合された各原材料を2軸型混練押出機を用いて混練した。次いで、得られた混練物を、脱気、冷却を行った後に粉砕機で粉砕し、顆粒状の高誘電樹脂組成物を得た。次いで、後述の各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。
ここで、高誘電性無機充填剤(B)およびシリカ粒子(B3)の平均粒径D
50、粒径D
90および粒径が0.5μm以下の粒子の含有量は(株)島津製作所製、SALD−7000を使用し、レーザー回折式粒度分布測定法により求めた。
また、(B)高誘電性無機充填剤および(B3)シリカ粒子の比表面積(SSA)は(株)マウンテック製MACSORB HM−MODEL−1201を使用し、BET流動法により求めた。
【0059】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX−4000K)
エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC−3000)
(B)高誘電性無機充填剤
高誘電性無機充填剤1:チタン酸バリウム(日本化学工業株式会社製、BパルセラムBTUP−2、D
50=2μm、粒径D
90=2.8μm、比誘電率(1MHz)=1500、比表面積=0.8m
2/g、形状:破砕状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:13質量%)
高誘電性無機充填剤2:アルミナ(株式会社マイクロン製、AX3−20R、D
50=3μm、粒径D
90=10μm、比表面積=0.6m
2/g、比誘電率(1MHz)=8.9、形状:球状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:14質量%)
(B3)シリカ粒子
シリカ粒子1:シリカ(株式会社マイクロン製、TS−6026、D
50=9μm、粒径D
90=18μm、比誘電率(1MHz)=4、比表面積=3.4m
2/g、形状:球状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:16質量%)
シリカ粒子2:シリカ(株式会社アドマテックス社製、SC−2500−SQ、D
50=0.55μm、粒径D
90=1.0μm、比誘電率(1MHz)=4、比表面積=6.4m
2/g、形状:球状、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量:54質量%)
(C)硬化剤
硬化剤1:トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7500)
硬化剤2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS)
(D)カップリング剤
カップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、CF4083)
(E)その他の成分
硬化促進剤1:下記式(4)で示される硬化促進剤
【0060】
【化4】
【0061】
[硬化促進剤1の合成方法]
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに4,4'−ビスフェノールS37.5g(0.15モル)、メタノール100mlを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mlのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mlのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1モル)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し、白色結晶の硬化促進剤1を得た。
【0062】
硬化促進剤2:下記式(5)で示される硬化促進剤
【化5】
【0063】
[硬化促進剤2の合成方法]
メタノール1800gを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン249.5g、2,3−ジヒドロキシナフタレン384.0gを加えて溶かし、次に室温攪拌下28%ナトリウムメトキシド−メタノール溶液231.5gを滴下した。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド503.0gをメタノール600gに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥し、桃白色結晶の硬化促進剤2を得た。
【0064】
硬化促進剤3:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート(ケイアイ化成社製)
硬化促進剤4:2,3−ジヒドロキシナフタレン(エアウォーター社製)
【0065】
低応力剤1:アクリロニトリルブタジエンゴム(宇部興産株式会社製、カルボキシル基末端ブタジエンアクリルゴム、CTBN1008SP)
低応力剤2:シリコーンオイル
着色剤:カーボンブラック
離型剤:モンタンワックス
イオン捕捉剤:ハイドロタルサイト
【0066】
<実施例2〜6および比較例1〜2>
高誘電樹脂組成物の配合を表1に示す配合に変更した以外は実施例1と同様に顆粒状の高誘電樹脂組成物をそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0067】
1.空隙率
アルミカップ(直径50mm、外周高さ10mm、厚み70μm)に実施例および比較例の顆粒状の高誘電樹脂組成物(7g)を加え、175℃に設定したオーブンで3分加熱した。硬化後の高誘電樹脂組成物の厚みは、5.2mmであった。アルミカップから硬化した樹脂組成物を取りだし、アルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面をデジタルカメラで撮影し画像化した。得られた画像を二値化し、アルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面内における空隙の面積(A1)とアルミカップの底面と接していた樹脂組成物の面の総面積(A2)を計測し、空隙率を式(1)で示すように算出した。
空隙率[%]=(A1/A2)×100・・・(1)
【0068】
実施例2の二値化画像を
図3に示す。また、比較例1の二値化画像を
図4に示す。
【0069】
2.溶融粘度の測定
175℃、荷重10kgでの溶融粘度は、島津製作所社製の熱流動評価装置(フローテスタ)により測定した。
【0070】
3.ガラス転移温度の測定
高誘電樹脂組成物の硬化体のガラス転移温度(Tg)を、以下のように測定した。圧縮成形機(TOWA(株)製、PMC1040)を用いて、金型に、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記高誘電樹脂組成物を圧縮成形することにより高誘電樹脂組成物の硬化体を得た。この硬化体は、長さ10mm、幅4mm、厚さ4mmであった。
次いで、得られた硬化体を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃〜320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0071】
4.比誘電率の測定
高誘電樹脂組成物の比誘電率および誘電正接の測定を行った。圧縮成形機(TOWA(株)製、PMC1040)を用いて、金型に、金型温度175℃、成形圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、上記高誘電樹脂組成物を圧縮成形することにより高誘電樹脂組成物の硬化体を得た。この硬化体は、直径50mm、厚さ3mmであった。
次いで、得られた硬化体について、YOKOGAWA−HEWLETT PACKARD社製Q−METER 4342Aにより、1MHz、室温(25℃)における比誘電率を測定した。
【0072】
5.ワイヤ変形評価
実施例1〜6および比較例1〜2について、圧縮成型機を用いて顆粒状の高誘電樹脂組成物により半導体素子の封止成形を以下のように行った。まず、厚み0.4mm、幅65mm、長さ190mmの有機基板上に、厚み0.3mm、7.5mm角の半導体素子を5個銀ペーストにて接着し、径18μm、長さ7mmの金ワイヤをピッチ間隔60μmでボンディングした。次いで、圧縮成型機(TOWA(株)製、PMC1040)の金型温度を予め175℃とした。次いで、上金型に有機基板を固定した。次いで、下金型にテトラフルオロエチレンとポリエチレンの共重合体により構成される離型フィルム(50μm厚)を配置した後、当該離型フィルム上に実施例および比較例で得られた顆粒状の高誘電樹脂組成物を均一に供給した。次いで、高誘電樹脂組成物を供給した直後に、金型を型締めすると同時に下金型と上金型により形成されるキャビティ内を真空度0.8Torrに減圧した。その後、減圧を維持しながら金型を完全に型締めして、成形圧力3.9MPa、硬化時間90秒の条件で封止成形を行った。そして、得られたパッケージのワイヤ流れを観察した。
ワイヤ変形については、次のように評価を行った。軟X線装置(ソフテックス(株)製、PRO‐TEST−100)を用いて、得られたパッケージの対角線上にある金ワイヤの平均の流れ率を測定し、ワイヤ流れ率(ワイヤ流れ量/ワイヤ長×100(%))を算出した。このとき、ワイヤ流れ率が3%未満である場合を◎とし、ワイヤ流れ率が3%以上6%未満である場合を○とし、ワイヤ流れ率が6%以上である場合を×とした。
【0073】
6.成形性評価
高誘電樹脂組成物の成形性を以下のように評価した。
上記ワイヤ変形評価用のパッケージの作製の際に、金型のエアベント部から出たバリ長さで成形性を評価した。
バリが2mm未満の場合を◎とし、バリが2mm以上5mm未満の場合を○とし、5mm以上場合を×として評価した。
【0074】
7.耐擦傷性評価
JIS K 5600−5−4に従って、鉛筆硬度試験を実施した。2H以上を○、H以下を×とした。
【0075】
【表1】
【0076】
空隙率が3%以上28%以下である実施例1〜6の高誘電樹脂組成物はワイヤ変形評価成形性評価および耐擦傷性評価のそれぞれにおいて優れた結果を示した。
これに対し、空隙率が28%を超える比較例1の高誘電樹脂組成物は成形性評価および耐擦傷性評価の結果は良好であるものの、ワイヤ変形評価において劣る結果を示した。また、空隙率が3%未満である比較例2の高誘電樹脂組成物はワイヤ変形評価および耐擦傷性は良好であるものの、成形性評価において劣る結果を示した。
【0077】
100 静電容量型センサ
101 基板
103 検出電極
105 封止膜
107 層間膜