特許第6854594号(P6854594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854594
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20210329BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   E05F11/48 C
   B60J1/17 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-103368(P2016-103368)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210756(P2017-210756A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】生駒 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良樹
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実公平07−020305(JP,Y2)
【文献】 実公平06−045593(JP,Y2)
【文献】 実開平02−039088(JP,U)
【文献】 米国特許第06427386(US,B1)
【文献】 実用新案登録第2521628(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00− 13/04、17/00
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアパネルに固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを前記ガイドレールに沿って昇降駆動するための駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤを駆動するワイヤ駆動機構と、前記ガイドレールの上端部及び下端部の少なくとも一方に設けられ且つ前記駆動ワイヤの配索方向を変えるワイヤガイド部材と、を有する車両用ワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、
前記ワイヤガイド部材は、
前記駆動ワイヤが巻回されるワイヤガイド溝と、
前記ワイヤガイド溝を挟む両側の領域の一方の領域から他方の領域に向かって延びるように設けられ、前記他方の領域との間に、前記ワイヤガイド溝への前記駆動ワイヤの導入を可能とするワイヤ挿入隙間を形成するワイヤ外れ防止部と、
前記他方の領域に設けられた、前記ワイヤガイド溝に導入される前記駆動ワイヤを前記ワイヤ挿入隙間に案内する傾斜案内面と、
を有し、
前記ワイヤガイド部材に、前記ワイヤガイド溝の延出方向と交差する方向に延びる傾斜リブが形成され、前記傾斜リブのエッジが前記傾斜案内面である、
ことを特徴とする車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、
前記ワイヤガイド部材は、
前記ワイヤガイド溝を有する本体部と、
前記ガイドレールの一方の端部に取り付けられ、前記傾斜案内面の前記他方の領域の側の延長線上に位置する固定部と、
を有し、
前記傾斜案内面は、第1の端部が前記本体部と直接接続され、第2の端部が前記固定部と直接接続されている、
ことを特徴とする車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ。
【請求項3】
車両ドアパネルに固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースをガイドレールに沿って昇降駆動するための駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤを駆動するワイヤ駆動機構と、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ワイヤガイド溝を外周面に有する駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に収容支持するドラムハウジングと、を有する車両用ワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、
前記ドラムハウジングは、
前記駆動ドラムの前記駆動ワイヤガイド溝の接線方向に延びるワイヤ配索ガイド溝と、
前記ワイヤ配索ガイド溝を挟む両側の領域の一方の領域から他方の領域に向かって延びるように設けられ、前記他方の領域との間に、前記ワイヤ配索ガイド溝への前記駆動ワイヤの導入を可能とするワイヤ挿入隙間を形成するワイヤ外れ防止部と、
前記他方の領域に設けられた、前記ワイヤ配索ガイド溝に導入される前記駆動ワイヤを前記ワイヤ挿入隙間に案内する傾斜案内面と、
を有することを特徴とする車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ワイヤ式ウインドレギュレータに関し、特に組立時に駆動ワイヤをワイヤガイド部材のワイヤ挿入隙間に案内する案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイヤ式ウインドレギュレータは、長手方向に延びるガイドレールと、このガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、このスライダベースをガイドレールに沿って昇降駆動するための駆動ワイヤと、この駆動ワイヤを駆動する駆動機構とを有している。ガイドレールの上下端部近傍には、上下のワイヤガイド部材が備えられており、これらのワイヤガイド部材には、組立時に駆動ワイヤを仮保持し、外れを防止するための外れ防止部が設けられている。この外れ防止部は、例えば外れ防止爪(鍔部)として形成され、外れ防止爪とガイド部(ワイヤ配索溝、ガイド溝)との間にワイヤ挿入隙間が形成されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−210022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両用ワイヤ式ウインドレギュレータでは、駆動ワイヤを外れ防止部のワイヤ挿入隙間を狙って移動(誘導)し、ワイヤ挿入隙間からガイド部に挿入しなければならないので、駆動ワイヤをワイヤ挿入隙間に移動する作業自体が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、従って、組立時に駆動ワイヤをワイヤガイド部材のワイヤ挿入隙間に容易に案内することができる車両用ワイヤ式ウインドレギュレータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用ワイヤ式ウインドレギュレータは、車両ドアパネルに固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースを前記ガイドレールに沿って昇降駆動するための駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤを駆動するワイヤ駆動機構と、前記ガイドレールの上端部及び下端部の少なくとも一方に設けられ且つ前記駆動ワイヤの配索方向を変えるワイヤガイド部材と、を有する車両用ワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、前記ワイヤガイド部材は、前記駆動ワイヤが巻回されるワイヤガイド溝と、前記ワイヤガイド溝を挟む両側の領域の一方の領域から他方の領域に向かって延びるように設けられ、前記他方の領域との間に、前記ワイヤガイド溝への前記駆動ワイヤの導入を可能とするワイヤ挿入隙間を形成するワイヤ外れ防止部と、前記他方の領域に設けられた、前記ワイヤガイド溝に導入される前記駆動ワイヤを前記ワイヤ挿入隙間に案内する傾斜案内面と、を有し、前記ワイヤガイド部材に、前記ワイヤガイド溝の延出方向と交差する方向に延びる傾斜リブが形成され、前記傾斜リブのエッジが前記傾斜案内面である、ことを特徴とする。
【0007】
前記ワイヤガイド部材は、前記ワイヤガイド溝を有する本体部と、前記ガイドレールの一方の端部に取り付けられ、前記傾斜案内面の前記他方の領域の側の延長線上に位置する固定部と、を有し、前記傾斜案内面は、第1の端部が前記本体部と直接接続され、第2の端部が前記固定部と直接接続されていることが好ましい。
【0008】
別の観点からなる本発明の車両用ワイヤ式ウインドレギュレータは、車両ドアパネルに固定されるガイドレールと、前記ガイドレールに昇降自在に支持され且つウインドガラスが支持されるスライダベースと、前記スライダベースをガイドレールに沿って昇降駆動するための駆動ワイヤと、前記駆動ワイヤを駆動するワイヤ駆動機構と、前記駆動ワイヤが巻回される駆動ワイヤガイド溝を外周面に有する駆動ドラムと、前記駆動ドラムを回転可能に収容支持するドラムハウジングと、を有する車両用ワイヤ式ウインドレギュレータにおいて、前記ドラムハウジングは、前記駆動ドラムの前記駆動ワイヤガイド溝の接線方向に延びるワイヤ配索ガイド溝と、前記ワイヤ配索ガイド溝を挟む両側の領域の一方の領域から他方の領域に向かって延びるように設けられ、前記他方の領域との間に、前記ワイヤ配索ガイド溝への前記駆動ワイヤの導入を可能とするワイヤ挿入隙間を形成するワイヤ外れ防止部と、前記他方の領域に設けられた、前記ワイヤ配索ガイド溝に導入される前記駆動ワイヤを前記ワイヤ挿入隙間に案内する傾斜案内面と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組立時に駆動ワイヤをワイヤ挿入隙間に容易に案内することができる車両用ワイヤ式ウインドレギュレータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態による車両用ワイヤ式ウインドレギュレータの正面図(車外側から見た図)である。
図2】本実施形態による車両用ワイヤ式ウインドレギュレータの背面図(車内側から見た図)である。
図3】ロアガイド部材単体の正面図である。
図4】同平面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】同ロアガイド部材単体の斜視図である。
図8】アッパガイド部材の正面図である。
図9】同平面図である。
図10】同車両用ワイヤ式ウインドレギュレータのドラムハウジング単体の斜視図である。
図11図10のXI矢線方向から見たドラムハウジング単体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10の実施形態について説明する。図1に示すように、車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10は、長尺部材であるガイドレール20を有している。このガイドレール20は、長手方向に位置を異ならせて設けられたブラケット20A(一方のみ図示)を介して、車両ドアパネル(図示略)の内部に取り付けられる。ガイドレール20は、車両ドアパネルへの取付状態で、長手方向を概ね車両の高さ方向に向けて配置される。
【0012】
車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10は、ガイドレール20に昇降自在に支持され且つウインドガラス(図示略)が支持されるスライダベース(ガラスキャリア)30を有している。このスライダベース30には一対の駆動ワイヤW1、W2のそれぞれの一端のワイヤエンドW1E、W2Eが接続されている。
【0013】
ガイドレール20の長手方向の上端近傍には駆動ワイヤW1の配索方向を変えるワイヤガイド部材としてプーリブラケット(アッパガイド部材)40が固定されており、このプーリブラケット40上にガイドプーリ42がプーリ支持軸44を介して回転可能に支持されている。駆動ワイヤW1は、スライダベース30からガイドレール20に沿って該ガイドレール20の上方向に延び、ガイドプーリ42の外周面上に形成したワイヤガイド溝によって支持される。駆動ワイヤW1の進退に応じて、ガイドプーリ42はプーリ支持軸44を中心として回転する。
【0014】
ガイドレール20の長手方向の下端近傍には駆動ワイヤW2の配索方向を変えるワイヤガイド部材としてワイヤガイド部材(ロアガイド部材)50が設けられている。駆動ワイヤW2は、スライダベース30からガイドレール20に沿って該ガイドレール20の下方向に延びてワイヤガイド部材50に案内される。ワイヤガイド部材50は、ガイドレール20に対して固定されており、ワイヤガイド部材50に形成したワイヤガイド溝54に沿って進退可能に駆動ワイヤW2が支持される。
【0015】
ガイドプーリ42から出た駆動ワイヤW1は、管状のアウタチューブW1T内に挿通され、アウタチューブW1Tが接続されるドラムハウジング60内に設けた駆動ドラム70に巻回される。ワイヤガイド部材50から出た駆動ワイヤW2は、管状のアウタチューブW2T内に挿通され、アウタチューブW2Tが接続されるドラムハウジング60内に設けた駆動ドラム70に巻回される。
【0016】
ドラムハウジング60に対してモータユニット80が取り付けられる。モータユニット80は、駆動ドラム70を回転させる駆動モータ及びギヤボックス(図示せず)を有している。
【0017】
アウタチューブW1Tは、一端がプーリブラケット40に接続され、他端がドラムハウジング60に接続され、このように両端位置が定められたアウタチューブW1T内で駆動ワイヤW1が進退可能となっている。アウタチューブW2Tは、一端がワイヤガイド部材50に接続され、他端がドラムハウジング60に接続され、このように両端位置が定められたアウタチューブW2T内で駆動ワイヤW2が進退可能となっている。
【0018】
ドラムハウジング60は車両ドアパネル(図示略)に固定される。モータユニット80内のモータの駆動力によって駆動ドラム70が正逆に回転すると、駆動ワイヤW1と駆動ワイヤW2の一方が駆動ドラム70への巻回量を大きくし、他方が駆動ドラム70から繰出されて、駆動ワイヤW1と駆動ワイヤW2の牽引と弛緩の関係によってスライダベース30がガイドレール20に沿って移動する。スライダベース30の移動に応じてウインドガラス(図示略)が昇降する。
【0019】
以上の基本構成を有する車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10においては、ガイドレール20の上端部にプーリブラケット40が固定され、下端部にワイヤガイド部材50が固定されている。ガイドレール20は、図1及び図2に示すように、ハット状断面をなすもので、車内側と車外側の車両前後方向レール部21と22、該車両前後方向レール部21と22を接続する前後位置規制レール部23、及び車両前後方向レール部22の前後位置規制レール部23とは反対側の端部から車外側に延びるフック状レール部24を備えている。車両前後方向レール部21は、車幅方向位置規制レール部を構成する。車両前後方向レール部22には、ワイヤガイド部材50を固定するための係合穴25(図2)が穿設されている。
【0020】
図3ないし図7について、ワイヤガイド部材50を説明する。ワイヤガイド部材50は、合成樹脂材料の成形品からなるもので、ガイドレール20を挿入するレール挿入溝51、ガイドレール20の係合穴25に係合するフック部52aを有する弾性係止脚52、アウタチューブW2Tの先端部を挿入するチューブ挿入筒部53、チューブ挿入筒部53(アウタチューブW2T)の軸線を含む面と同一平面上を正面円弧状に延びるワイヤガイド溝54、スライダベース30の下降端を規制する規制面(部)55、ワイヤガイド溝54に駆動ワイヤW2を嵌める(係合させる)前後に、駆動ワイヤW2がワイヤガイド溝54から外れるのを防止する外れ防止爪56、及び外れ防止爪56に駆動ワイヤW2を案内するための傾斜案内面(ワイヤ案内面)57aを有する傾斜リブ57を有している。チューブ挿入筒部53には、その径方向下部に、駆動ワイヤW2をワイヤガイド溝54に導入するためのスリット53aが形成されている(図3図4図6)。レール挿入溝51は、対をなす縦壁51aと51b(図3図4図5図7)によって形成されており、底部は閉塞されている(図5)。縦壁51aと51bは、図5図7に明らかなように、一方(縦壁51a)が他方(縦壁51b)より長く(上方に突出していて)、両者の間に段差d1(図5)が存在する。また、縦壁51aの上端部には、縦壁51b側に向けて斜めに下方に傾斜するテーパ面51atが形成されている。このようにレール挿入溝51を構成する縦壁51aと51bの高さに差を設け、かつ高い方の縦壁51aの上端部にテーパ面51atと設けることにより、ガイドレール20をレール挿入溝51に容易に挿入することができる。レール挿入溝51と縦壁51a、51bは、ワイヤガイド部材50をガイドレール20に固定する固定部を形成し、他の部分がワイヤガイド部材50のワイヤガイド溝54を有する本体部を形成している。
【0021】
ワイヤガイド部材50は、ワイヤガイド溝54の中心(中心線)を通る平面によって二分割される一方と他方の領域54aと54bの一方の領域54aに他方の領域54bに向かって延びるように設けられた、ワイヤガイド溝54との間にワイヤ挿入隙間56cを形
成するワイヤ外れ防止爪(ワイヤ外れ防止部)56を有している。
外れ防止爪56は、ワイヤガイド溝54の中心線を含む平面と直交する方向に延びる基部56aと、基部56aの先端部と鋭角状をなして傾斜リブ57に向けて延びる外れ防止鉤部56bと、を有する鈎型をなしており、外れ防止鉤部56bの先端と傾斜リブ57との間には、ワイヤ挿入隙間56cが形成されている。外れ防止鉤部56bは、ワイヤガイド溝54の中心線を含む平面と交叉して延びている。
【0022】
傾斜リブ57の傾斜案内面57aは、外れ防止爪56に近づくに連れ、外れ防止鉤部56bとの距離を縮める傾斜面である。図示実施例では、傾斜案内面57aは、ワイヤガイド溝54(他方の領域54b部分)に連なっている。傾斜リブ57は、レール挿入溝51を形成する縦壁51aのL字状に屈曲した二つの壁面51a1及び51a2(の劣角側)(固定部)と、ワイヤガイド溝54を有する本体部とを接続して補強する補強リブとしての機能を併せ持つ。
【0023】
上記構成の本車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10のワイヤガイド部材50は、ワイヤガイド溝54を挟む両側の領域54aと54bの一方の領域54aから他方の領域54bに向かって延びるように設けられ、該他方の領域54bとの間に、ワイヤガイド溝54への駆動ワイヤW2の導入を可能とするワイヤ挿入隙間56cを形成する外れ防止爪(ワイヤ外れ防止部)56と、他方の領域54bに設けられた、ワイヤガイド溝54に導入される駆動ワイヤW2をワイヤ挿入隙間56cに案内する傾斜案内面57aとを有するので、ワイヤガイド部材50のワイヤガイド溝54に駆動ワイヤW2を係合させるときには、作業者が駆動ワイヤW2を、ワイヤ挿入隙間56cから離間したいずれかの位置において傾斜リブ57の傾斜案内面57aに押し付け、押し付けながらワイヤ挿入隙間56c(外れ防止爪56、ワイヤガイド溝54)側に移動させる。すると、駆動ワイヤW2は傾斜案内面57aと摺接しながら移動し、やがてワイヤ挿入隙間56cに達して、該ワイヤ挿入隙間56cから外れ防止鉤部56bの内部(ワイヤガイド溝54)に案内(導入)される。
【0024】
一度駆動ワイヤW2が外れ防止鉤部56b内に入ると、駆動ワイヤW2は自身の直線状に戻ろうとする復元力で外れ防止鉤部56bの内側に保持され、容易に脱落することがない。ワイヤガイド部材50は、チューブ挿入筒部53がワイヤガイド溝54の接線方向を向いており、ワイヤガイド溝54の半径を大きく設定したので、駆動ワイヤW2がワイヤガイド溝54に滑らかに案内され、駆動ワイヤW2の耐久性が向上する。
ワイヤガイド溝54は、外れ防止爪56から上方に進むにつれて(規制面55に向かって)拡径するラッパ形状を呈している(図7)。ワイヤガイド溝54と規制面55との境界部分は、丸め(面取り)加工が施されている。このようにワイヤガイド溝54が拡径しているので、スライダベース30を昇降させる際に駆動ワイヤW2が車内外方向に振れたとしても、駆動ワイヤW2がワイヤガイド溝54の角に当たらないので、駆動ワイヤW2が傷つき難い。
【0025】
図8図9は、本発明をガイドレール20の上端部に結合されるプーリブラケット(ワイヤガイド部材)40に適用した実施形態である。プーリブラケット40は、上述のように、プーリ支持軸44で回動自在に支持されたガイドプーリ42を有している。ガイドプーリ42の外周面には、駆動ワイヤW1が巻回されるワイヤガイド溝42aが形成されている。プーリ支持軸44は、ガイドレール20の上端部に固定されたカバー部材41に支持されており、カバー部材41は、プーリ支持軸44の軸線と直交してガイドプーリ42の軸方向の一側に位置する基板部41aと、基板部41aと直交しガイドプーリ42の外周縁に位置する外周フランジ部41bと、ガイドプーリ42の外周の接線方向に向くチューブ挿入筒部41cとを有している。外周フランジ部41bのプーリ支持軸44と直交する端面41b1は、ガイドプーリ42の端面とほぼ面一をなしている(図9)。チューブ挿入筒部41cは、駆動ワイヤW1のアウタチューブW1Tの上端部を挿入固定するもので、アウタチューブW1Tから露出した駆動ワイヤW1を挿入するスリット41c1が形成されている。
【0026】
図8に示すように、外周フランジ部41bは、ガイドレール20側の一部を除き、ガイドプーリ42の外周に沿って位置するもので、ガイドプーリ42を軸方向から見たとき、外周フランジ部41bの内周面とプーリ支持軸44の外周面との間に隙間mが存在している。この隙間mは、駆動ワイヤW1の直径dより大きく(m>d)、駆動ワイヤW1をガイドプーリ42の軸線と直交する方向から挿入することができる幅である。
【0027】
一方、外周フランジ部41bには、その上端部の一部に、ガイドプーリ42を軸方向から見たとき、ガイドプーリ42の外周との距離を縮めて隙間(ワイヤ挿入隙間)m’(m>m’)とする狭隘部(外れ防止部)45が形成されている。隙間m’は、駆動ワイヤW1の直径dと同等か小さく(m’≒<d)、狭隘部45を通してプーリ支持軸44の軸方向からガイドプーリ42のワイヤガイド溝42aに駆動ワイヤW1を挿入するには抵抗がある。つまり、駆動ワイヤW1を狭隘部45からガイドプーリ42の外周に挿入してワイヤガイド溝42aに嵌めると、駆動ワイヤW1はガイドプーリ42(プーリブラケット40)から外れにくい(狭隘部45の隙間を通ってカバー部材41の外部に容易に出ることがない)。
【0028】
カバー部材41の外周フランジ部41bには、図9に示すように、カバー部材41をガイドプーリ42の軸線と直交する方向から見たとき、ガイドプーリ42のワイヤガイド溝42aを露出させると同時に、基板部41aから外周フランジ部41bの端面41b1に近づくに連れ、狭隘部45との周方向と径方向の距離を縮める傾斜案内面41b2が形成されている。
【0029】
上記構成の本車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10は、プーリブラケット40のガイドプーリ42に駆動ワイヤW1を係合させるときには、作業者が駆動ワイヤW1をカバー部材41の傾斜案内面41b2に押し付けながら、狭隘部(ワイヤ挿入隙間)45側に移動させる(滑らせる)。すると、駆動ワイヤW1は傾斜案内面41b2に押し付けられているため、傾斜案内面41b2と摺動しながら確実に狭隘部45に接近し、接近した状態で、外周フランジ部41bの狭隘部45とガイドプーリ42の隙間(ワイヤ挿入隙間)からワイヤガイド溝42aと外周フランジ部41bの間に挿入できる。一度駆動ワイヤW1がワイヤガイド溝42a内に入ると、駆動ワイヤW1は自身の直線状に戻ろうとする復元力で外周フランジ部41bの内側に保持され、容易に脱落することがない。
【0030】
以上の実施形態では、プーリブラケット40をアッパガイド部材、ワイヤガイド部材50をロアガイド部材とした。しかし本発明は、プーリブラケット40をロアガイド部材、ワイヤガイド部材50をアッパガイド部材としてもよく、アッパとロアガイド部材の両方のガイド部材をプーリブラケット40またはワイヤガイド部材50としてもよい。
【0031】
以上の実施形態は、本発明を車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10のアッパガイド部材(プーリブラケット40)とロアガイド部材(ワイヤガイド部材50)に適用した例である。本発明は、ドラムハウジング60に適用することも可能である。図10及び図11は、本発明をドラムハウジング(駆動機構)60に適用した実施形態であって、ドラムハウジング60単体を示している。
【0032】
ドラムハウジング60は、一対の駆動ワイヤが巻回される駆動ドラム70を有している。駆動ドラム70は円柱状をなし、外周面には、駆動ワイヤW1と駆動ワイヤW2が巻回される螺旋溝71が形成されている(図11)。この螺旋溝71は、駆動ドラム70の外周面に沿って旋回しながら駆動ドラム70の軸線方向に位置を変化させる。駆動ドラム70は、ドラムハウジング60のドラム収容部61内に回動可能に収納される。
【0033】
ドラムハウジング60に対してモータユニット80が取り付けられる。モータユニット80は、駆動ドラム70を正逆に回転駆動する、減速機構を備えたモータ82を有している。
【0034】
アウタチューブW1Tは、一端がプーリブラケット40に接続され、他端がドラムハウジング60に接続され、このように両端位置が定められたアウタチューブW1T内で駆動ワイヤW1が進退可能となっている。アウタチューブW2Tは、一端がワイヤガイド部材50に接続され、他端がドラムハウジング60に接続され、このように両端位置が定められたアウタチューブW2T内で駆動ワイヤW2が進退可能となっている。
【0035】
ドラムハウジング60は車両ドアパネル(図示略)に固定される。モータ82の駆動力によって駆動ドラム70が正逆に回転すると、駆動ワイヤW1と駆動ワイヤW2の一方が駆動ドラム70の螺旋溝71への巻回量を大きくし、他方が駆動ドラム70の螺旋溝71から繰出されて、駆動ワイヤW1と駆動ワイヤW2の牽引と弛緩の関係によってスライダベース30がガイドレール20に沿って移動する。スライダベース30の移動に応じてウインドガラス(図示略)が昇降する。
【0036】
図10に示すように、ドラムハウジング60は、ドラム収容部61と一対のアウタチューブ挿入部62とを有している。ドラム収容部61は、一端部が開放された有底の筒形状である。ドラムハウジング60には、ドラム収容部61に連通する一対のワイヤ配索ガイド溝63が互いに異なる方向(車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10の完成状態でのプーリブラケット40とワイヤガイド部材50の方向)に向けて形成されており、これら一対のワイヤ配索ガイド溝63の先端に一対のアウタチューブ挿入部62が形成されている。ワイヤ配索ガイド溝63は、ドラム収容部61に収容された駆動ドラム70の螺旋溝71の接線方向に延びている。
【0037】
ドラムハウジング60は、合成樹脂材料の成形品からなるもので、ベース60A上に、ドラム収容部61と、一対のアウタチューブ挿入部62及びワイヤ配索ガイド溝63が形成され、ドラム収容部61の中心から略等距離等間隔で、車両ドアパネル固定用の3個のボス65が形成されている。さらにドラムハウジング60は、ベース60A上に、駆動ドラム70の螺旋溝71に巻回された駆動ワイヤW1がワイヤ配索ガイド溝63から外れるのを防止する外れ防止爪66、及び外れ防止爪66に駆動ワイヤW1を案内するための傾斜案内面(ワイヤ案内面)67aを有する傾斜リブ67を有している。
【0038】
外れ防止爪66は、ワイヤ配索ガイド溝63の中心(中心線)を通る平面によって二分割される一方と他方の領域63aと63bの内、一方の領域63aに他方の領域63bに向かって延びるように設けられている。外れ防止爪66は、一方の領域63aから、上記平面と直交する方向に延びる基部66aと、基部66aの先端部と鋭角状をなして傾斜リブ67に向けて延びる外れ防止鉤部66bと、を有する鈎型をなしており、外れ防止鉤部66bの先端と傾斜リブ67との間には、ワイヤ挿入隙間66cが形成されている。外れ防止鉤部66bは、ワイヤ配索ガイド溝63の中心を通る平面と交叉して延びている。
【0039】
傾斜リブ67は他方の領域63bに設けられ、ボス65から外れ防止爪66(外れ防止部材)に向かって傾斜し、外れ防止爪66とワイヤ配索ガイド溝63との間にワイヤ挿入隙間66cを形成する傾斜案内面67aを有する。傾斜リブ67は、ボス65(固定部)とベース60A(他方の領域63b、ワイヤ配索ガイド溝63)(本体部)とを接続して補強する補強リブとしての機能を併せ持つ。
【0040】
上記構成の本車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10は、駆動ワイヤW1とW2が螺旋溝71に巻回された駆動ドラム70を駆動ドラム収容部61に嵌めた後、駆動ワイヤW1をワイヤ配索ガイド溝63に嵌合させるときには、作業者が駆動ワイヤW1を、ワイヤ配索ガイド溝63(外れ防止爪66、ワイヤ挿入隙間66c)から離間した位置の傾斜案内面67aに押し付け、押し付けた状態でワイヤ挿入隙間66c側に移動させる。すると、駆動ワイヤW1は傾斜案内面67aに押し付けられているため、傾斜案内面67aと摺動しながら確実にワイヤ挿入隙間66cに接近し、ワイヤ挿入隙間66cからワイヤ配索ガイド溝63内に容易に導入される。一度駆動ワイヤW1がワイヤ配索ガイド溝63内に導入されると、駆動ワイヤW1は自身の直線状に戻ろうとする復元力でワイヤ配索ガイド溝63または外れ防止鉤部66bの内側に保持され、容易に脱落することがない。その後、アウタチューブW1Tの端部をアウタチューブ挿入部62に挿入係合する。
【0041】
他方の駆動ワイヤW2及びアウタチューブW2Tは、上記のように一方の駆動ワイヤW1及びアウタチューブW1Tを装着した後に装着する。一方の駆動ワイヤW1が外れ防止鉤部56bに保持されてワイヤ配索ガイド溝63から外れ難いので、他方の駆動ワイヤW2及びアウタチューブW2Tは比較的容易に装着できる。駆動ワイヤW1とW2及びアウタチューブW1TとW2Tをドラムハウジング60に装着した状態で、モータユニット80をドラムハウジング60にねじ止め固定する。
【0042】
本車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ10のドラムハウジング60は、ワイヤ配索ガイド溝63を挟む両側の領域63a、63bの一方の領域63aから他方の領域63bに向かって延びるように設けられ、該他方の領域63bとの間に、ワイヤ配索ガイド溝63への駆動ワイヤW1の導入を可能とするワイヤ挿入隙間66cを形成するワイヤ外れ防止爪(ワイヤ外れ防止部)66と、他方の領域63bに設けられた、ワイヤ配索ガイド溝63に導入される駆動ワイヤW1をワイヤ挿入隙間66cに案内する傾斜案内面67aとを有するので、駆動ワイヤW1をワイヤ挿入隙間66cから離間した位置において傾斜案内面67aに押し当ててワイヤ挿入隙間66c側に滑らせるだけで、駆動ワイヤW1をワイヤ挿入隙間66cに案内し、ワイヤ挿入隙間66cからワイヤ配索ガイド溝63に容易に導入することができる。このドラムハウジング60では、外れ防止爪66及び傾斜案内面67aを一対のワイヤ配索ガイド溝63の一方に設けたが、一対のワイヤ配索ガイド溝63の両方に設けてもよい。
【0043】
本発明において、傾斜案内面は、ワイヤガイド溝、ワイヤ配索溝から離間した位置からワイヤガイド溝、ワイヤ配索溝に接続するまで平面であっても曲面であってもよく、ワイヤ外れ防止部との間にワイヤ挿入隙間を形成するとともに、駆動ワイヤを離間位置からワイヤ挿入隙間に案内できればよい。
【符号の説明】
【0044】
10 車両用ワイヤ式ウインドレギュレータ
20 ガイドレール
21 22 車両前後方向レール部
20A ブラケット
30 スライダベース(ガラスキャリア)
40 プーリブラケット(ワイヤガイド部材、アッパガイド部材)
41 カバー部材
41a 基板部
41b 外周フランジ部
41b1 端面
41b2 傾斜案内面
41c チューブ挿入筒部
42 ガイドプーリ
42a ワイヤガイド溝
44 プーリ支持軸
45 狭隘部
50 ワイヤガイド部材(ロアガイド部材)
51 レール挿入溝(固定部)
51a 51b 縦壁(固定部)
51a1 51a2 壁面
51at テーパ面
52 弾性係止脚
53 チューブ挿入筒部
53a スリット
54 ワイヤガイド溝
54a 一方の領域
54b 他方の領域
55 規制面(部)
56 外れ防止爪
56a 基部
56b 外れ防止鉤部
56c ワイヤ挿入隙間
57 傾斜リブ
57a 傾斜案内面
60 ドラムハウジング
60A ベース
61 ドラム収容部
62 アウタチューブ挿入部
63 ワイヤ配索ガイド溝
63a 一方の領域
63b 他方の領域
66 外れ防止爪
66a 基部
66b 外れ防止鉤部
66c ワイヤ挿入隙間
67 傾斜リブ
67a 傾斜案内面
70 駆動ドラム
71 螺旋溝
80 モータユニット(駆動機構)
W1 W2 駆動ワイヤ
W1T W2T アウタチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11