(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[縫製システムの全体構成]
以下、本発明の実施の形態である縫製システム100について図面に基づいて説明する。
図1は縫製システム100の全体構成を示す側面図である。
縫製システム100は、被縫製物の縫製を行うミシン10と、ミシン10を保持すると共に保持したミシン10を被縫製物に対して位置決めして任意の縫製を行わせるロボットアーム110と、上記各構成を制御する制御装置90とを備えている。
【0011】
[ロボットアーム]
ロボットアーム110は、土台となるベース111と、関節113で連結された複数のアーム112と、各関節ごとに設けられた駆動源としてのサーボモーター114と、各サーボモーター114により回転又は回動されるアーム角度をそれぞれ検出するエンコーダー115とを備える垂直多関節型のロボットアームであり、関節113で連結された複数のアーム112の先端部にはミシン10が保持されている。
【0012】
上記各関節113は、アームの一端部を揺動可能として他端部を軸支する揺動関節と、アーム自身をその長手方向を中心に回転可能に軸支する回転関節とのいずれかから構成される。
そして、ロボットアーム110は、六つの関節113を具備しており、六軸によってその先端部のミシン10を任意の位置に位置決めし、任意の姿勢をとらせることができる。
従って、ロボットアーム110は、被縫製物の立体的な曲面上の任意の曲線に沿って縫製を行わせることが可能である。
なお、ロボットアーム110において、底部に位置するベース111に最も近い関節113を第一関節113Aとする。この第一関節113Aは、鉛直上下方向に沿った軸回りに、ベース111を除くロボットアーム110全体を回動させることが可能である。
【0013】
なお、ロボットアーム110は、六軸に限らず、七つの関節を有する七軸のものを採用してもよい。その場合、冗長関節が生じるので、ミシン10を任意の位置に位置決めし、任意の姿勢をとらせながら、途中の関節を移動させることができるようになるので、ロボットアーム110の周囲の他の構成物との干渉を回避することができる。従って、ミシン10をより広い範囲で任意の位置に位置決めし、任意の姿勢をとらせることができる。
【0014】
また、ロボットアーム110のアームの先端部は、ミシン10のミシンフレーム20におけるミシンアーム部23の先端部(針棒側端部)の上を保持しており、これにより、ミシン10の針落ち位置近傍とロボットアーム110のアームの先端部との距離を縮めることができ、針落ち位置をより精度良く位置決めすることを可能としている。
【0015】
[ミシン]
図2及び
図3はミシン10の側面図である。ミシン10は、これらの図に示すように、針板13及び針板13を支持する土台61がミシンフレーム20のミシンベッド部21に対して昇降可能に支持されており、
図2に示す針板13及び土台61の上昇位置において縫製が行われ、
図3に示す下降位置において被縫製物のセッティング等の縫製の準備作業が行われる。
【0016】
上記ミシン10は、二本の縫い針11を下端部に保持する針棒12と、針棒12に上下の往復動作を付与する針棒上下動機構と、二つのルーパーにより各縫い針11に通された上糸にルーパー糸を挿通させるルーパー機構と、針板13及びルーパーを保持する土台61の昇降動作を行う昇降機構と、上昇位置にある針板13に対して上方から被縫製物を押さえる布押さえ14と、被縫製物に形成された基線を撮影する撮影装置としてのカメラ15と、基線の撮影を良好に行うためのスリット光を被縫製物に照射する光源としてのレーザー16と、上記各構成を支持するミシンフレーム20とを備えている。
【0017】
ミシンフレーム20は、所定の長手方向に延在するミシンベッド部21と、当該ミシンベッド部21の一端部からその長手方向に直交する方向に向かって立設された立胴部22と、立胴部22の頂部からミシンベッド部21と同方向に向かって延出されたミシンアーム部23とを備えている。
なお、ミシン10の各構成における以下の説明では、ミシンベッド部21の長手方向をY軸方向、Y軸方向に直交し、立胴部22が立設された方向をZ軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向をX軸方向とする。
また、Y軸方向における一方を前方、他方を後方とし、X軸方向における一方を左方(
図2の紙面奥側)、他方を右方(
図2の紙面手前側)とし、Z軸方向における一方を上方、他方を下方とする。
【0018】
針棒上下動機構は、ミシンモーター24を駆動源として上軸を回転駆動し、クランク機構を介して針棒12を上下動させる周知の構成である。
針棒上下動機構の上軸は、ミシンアーム部23内においてY軸方向に沿って延在しており、図示しないベルト機構を介してルーパー機構を駆動させる下軸にトルクの付与を行っている。
【0019】
布押さえ14は、針棒12の左隣に位置するZ軸方向に沿った押さえ棒141の下端部に保持されており、当該押さえ棒141を介して図示しない押さえバネによって下方への押圧力が付与されている。
布押さえ14には、図示しない押さえ上げ機構が併設されており、被縫製時には布押さえ14をより上方となる退避位置に保持することができる。この押さえ上げ機構は、手動操作を行うものでも良いが、アクチュエーターにより制御信号に従って退避位置と縫製位置とに切り替え可能とすることが望ましい。
【0020】
ルーパー機構は、二本の縫い針に対応して針板の下側に設けられた二つのルーパーと、ミシンモーター24からのトルクが伝達される、二本に分割可能な下軸と、各ルーパーに往復揺動動作を付与するカム機構とを備え、二つのルーパー及びカム機構は後述する土台61に支持されている。
【0021】
各ルーパーは、Y軸方向に二つ並んだ状態で、尖鋭な先端部が右側に向けられており、揺動により、各針板13に通された上糸のループに先端部を突入させることによって上糸のループを捕捉すると共にルーパー糸を挿通させる。また、ルーパーは後退することでルーパー糸のループが形成され、当該ルーパー糸のループに縫い針11が突入してルーパー糸を捕捉する。これらの繰り返しにより、縫い目の形成が行われるようになっている。
【0022】
下軸は、前側部分と後側部分とに二本に分割可能であり、前側部分はルーパー及びカム機構と共に土台61に回転可能に支持されている。
そして、下軸の前側部分は、カム機構にトルクを付与し、カム機構は、回転カムからルーパーを支持する揺動腕に往復揺動動作の付与を行っている。
【0023】
また、下軸の後側部分は、前述したようにベルト機構により上軸からトルクが伝達されている。
下軸の前側部分と後側部分とは、通常時には、同一軸上に配置され、相互間は、オルダムカップリングにより連結されており、前側部分と後側部分の連動回転が可能となっている。また、土台61が下降して、縫い針11から針板13が離間したときには、オルダムカップリングの特性により、下軸の後側部分に対して、前側部分がスライド移動し、土台61の昇降動作を妨げないようになっている。
なお、下軸は、前側部分と後側部分とが同一軸上にあるときにトルク伝達可能であって前側部分と後側部分とが相対的に分離可能あれば、オルダムカップリング以外の連結構造を用いても良い。
【0024】
昇降機構は、針板13及びルーパー機構の主要な構成を支持する土台61と、土台61を昇降させるカム機構とを備えている。
土台61は、前述したように、その上端部に針板13を支持し、その下方にルーパー機構の下軸の後側部分以外の構成を支持している。
そして、土台61の右側外壁には、Z軸方向に沿った図示しないスライドレールが固定装備されており、ミシンベッド部21の内壁に固定装備されたスライドブロックによりZ軸方向に滑動可能となっている。
【0025】
また、土台61の左側外壁は、カム機構が設けられている。
カム機構は、土台61に設けられたカム従節となるコロと、ミシンベッド部側に設けられたカム原節となる溝カムと、溝カムに前後方向に沿った移動動作を付与する駆動源としてのエアシリンダー62とを備えている。
そして、溝カムは前後方向と上下方向に沿った斜め方向に形成されたカム溝を備え、エアシリンダー62により前後に移動すると、カム溝内のコロが土台61に上下方向に変位を与え、土台61の昇降動作を可能としている。
【0026】
カメラ15は、ミシンベッド部21の底部において、縫い針11の上下動方向と光軸が平行であって下向きに配置されている。なお、ロボットアーム110を水平面上に設置した状態で、針棒12が鉛直上下方向に平行な状態(ミシンフレーム20のミシンベッド部21及びミシンアーム部23は水平方向となる)をミシン10の基準姿勢とし、当該基準姿勢において、カメラ15は光軸が上下動方向に平行且つ下向きとなる。
【0027】
レーザー16は、ミシンベッド部21の底部において、カメラ15の後方に配置され、前斜め下方向に向けてX軸方向に平行なスリット光を照射する。
被縫製物に付された基線は溝状であり、スリット光を基線に交差する方向に照射することで、基線位置に凹部が生じ、基線位置を明確に撮影することができる。また、レーザー16の光軸の傾斜角度は既知であり、制御装置90は、カメラ15の撮影範囲内に撮影されたスリット光のY軸方向の位置に応じて、カメラ15から被縫製物までのZ軸方向(上下方向)の距離を求めることができる。
【0028】
[縫製システムの制御系]
縫製システム100の制御装置90は、
図4に示すように、縫製に関する各種の処理又は制御を行うためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)92と、演算処理の作業領域地となるRAM(Random Access Memory)93と、各種設定データなどを記憶する記憶手段としての書き換え可能な不揮発性のデータメモリ94と、ROM92内のプログラムを実行するCPU91(Central Processing Unit)とを備えている。
【0029】
また、CPU91は、モーター駆動回路114a,24aを介してロボットアーム110のサーボモーター114,ミシン10のミシンモーター24の駆動を制御する。
また、サーボモーター114とミシンモーター24には、それぞれの出力軸角度を検出するエンコーダー115,25が併設されており、CPU91は、それぞれの検出回路115a,25aを介して接続されている。
なお、ロボットアーム110は、サーボモーター114及びエンコーダー115を六つの関節113(113Aを含む)ごとに備えているが、
図4では一つのみを図示して、他の図示は省略している。
【0030】
さらに、CPU91は、ミシン10の土台61の昇降を行うエアシリンダー62を作動させる電磁弁62bを制御するための駆動回路62aと接続されている。
また、CPU91は、画像処理装置15aを介してカメラ15と接続されている。
さらに、CPU91は、駆動回路16aを介してレーザー16と接続されている。
【0031】
[縫製システムの較正処理]
ロボットアーム110によりミシン10の針落ち位置を精度良く位置決めするためには、制御装置90が、ロボットアーム110の先端部に固定された座標系(先端座標系とする)におけるミシン10の針中心位置の位置座標(ロボットアーム110の先端部に対する相対的なミシン10の針中心位置及び向き)を正確に取得することが必要となる。
ミシン10をロボットアーム110の先端部に組み付ける場合に、ミシン10がロボットアーム110に保持される位置と針中心位置との相対的な位置関係は設計データから把握することが可能だが、組み付け誤差等も生じることから、常に、設計データからロボットアーム110の先端座標系におけるミシン10の針中心位置の位置座標を正確に取得することは困難である。
そこで、制御装置90は、以下に説明する較正処理を実行する。
【0032】
なお、「ミシン10の針中心位置」とは、X−Y平面上の二本の縫い針11の位置の中間点(平面視での二本の縫い針11の位置の中間点)を示す。なお、ミシン10が一本針ミシンである場合には、X−Y平面上一本の縫い針11の位置(平面視での一本の縫い針11の位置)を示す。
【0033】
図5は制御装置90のCPU91がプログラムに基づいて実行する較正処理のフローチャートである。
まず、CPU91は、データメモリ94から較正前の針中心位置を示すX−Y座標データを読み出す処理を行う(ステップS1)。
この較正前の針中心位置のデータは、例えば、ミシン10の設計データから求められたデフォルト値や前回実行された較正処理で取得された針中心位置である。
【0034】
次に、CPU91は、ロボットアーム110の各サーボモーター114を駆動させてミシン10を規定の針落ち位置に搬送する(ステップS3)。
規定の針落ち位置には、針落ちが行われた場合にその針落ち位置を撮影画像から認識し易い被縫製物や治具が設置されている。例えば、針落ちによって形成される穴が画像中で目立つもの、白い紙などが好適である。
【0035】
次に、CPU91は、ミシンモーター24を駆動させて一回目の針落ちを実行して第一の針落ち位置を形成する(ステップS5)。なお、この時、ミシン10は針棒12の長手方向(針上下動方向)が鉛直上下方向に平行となる基準姿勢を維持して針落ちを実行する。
【0036】
次に、CPU91は、ロボットアーム110の各サーボモーター114を駆動させてミシン10を、較正前の針中心位置のデータに基づいて当該中心位置を通る鉛直上下方向に沿った回動軸を中心に反時計方向に90°回動させる(ステップS7)。
なお、この回動動作は、絶対座標系(地上を基準とするロボットアーム110の動作にかかわらず固定された座標系)におけるミシン10の針中心位置(制御装置90が記憶する構成前の針中心位置)を維持するように行われる。
なお、ミシン10の回動方向は時計方向でも良く、また、回動角度は90°に限らず任意の角度に変更可能である(但し、360°又はその整数倍の角度を除く)。
そして、ミシンモーター24を駆動させて二回目の針落ちを実行して第二の針落ち位置を形成する(ステップS9)。
【0037】
次に、CPU91は、第一と第二の針落ち位置が両方ともカメラ15の撮影範囲内となるようにロボットアーム110の各サーボモーター114を駆動させてミシン10を移動し、カメラ15により第一と第二の針落ち位置を撮影する(ステップS11)。
【0038】
図6は第一と第二の針落ち位置の撮影画像を示す説明図である。
この撮影画像から画像処理装置15aによりパターンマッチングなどを行い、第一と第二の針落ち位置を抽出し、CPU91は、実際のミシン10の針中心位置を算出する。
即ち、CPU91は、抽出された一回目の二本の縫い針11による第一の針落ち位置p11,p12からこれらの中点となる針中心位置c1を特定する。また同様に、二回目の二本の縫い針11による第二の針落ち位置p21,p22からこれらの中点となる針中心位置c2を特定する。
なお、これら第一の針落ち位置p11,p12、第二の針落ち位置p21,p22、針中心位置c1,c2は、絶対座標系における位置である。
【0039】
図7は針中心位置c1と針中心位置c2のX−Y平面(水平面)上の配置を示した拡大説明図である。
制御装置90が記憶する較正前の針中心位置(先端座標系の位置)が正確であれば、ミシン10を90°回動させた場合でも、絶対座標系における針中心位置c1と針中心位置c2は位置変化を生じないが、較正前の針中心位置に誤差が含まれている場合には、針中心位置c1と針中心位置c2は位置変化を生じる。
図7のように、針中心位置c1と針中心位置c2との位置ズレが生じた場合には、CPU91は、絶対座標系において、これら二点c1,c2を結ぶことが可能な反時計回りに向かう中心角度90°の円弧状のベクトルbを求め、さらに、当該円弧状のベクトルbの中心位置c0を算出する。
制御装置90は、この中心位置c0を中心にミシン10を回動させているので(中心位置c0=較正前の針中心位置)、これを正しい位置に補正する。
具体的には、針中心位置c1の絶対座標系の位置座標から中心位置c0の絶対座標系の位置座標を減じた値を補正値として、当該補正値を先端座標系の値に変換した上で、制御装置90が記憶する較正前の針中心位置に加算し、新たな針中心位置に修正する。
なお、針中心位置c2の絶対座標系の位置座標から中心位置c0を減じて補正を行っても良い。
これらにより、ミシン10の正確な針中心位置が算出される(ステップS13)。
【0040】
そして、CPU91は、データメモリ94内のミシンの針中心位置データを、新しく求められたミシンの針中心位置を示す先端座標系におけるX−Y座標データに更新する(ステップS15)。
これにより、較正処理を終了する。
なお、この較正処理は、初期の縫製システム100について出荷前に一回のみ行う構成としても良いし、縫製システム100の毎回の主電源投入時に実行しても良いし、定期的に実行しても良い。また、制御装置90に併設された操作部から較正処理を任意に実行させることが可能としても良い。
【0041】
[縫製システムのバックラッシ量の取得処理]
ロボットアーム110の関節113は回動方向の正逆の切り替えの際にバックラッシを生じ得る。
しかし、第一関節113A以外の関節113の回動軸は、ロボットアーム110の姿勢変化に応じて鉛直上下方向に対して傾きを生じた状態となる場合が殆どなので、重力の影響によりバックラッシは生じにくいが、第一関節113Aの回動軸だけは、常に、鉛直上下方向を維持しているのでバックラッシが生じ易い。
さらに、第一関節113Aは、ロボットアーム110の最も基端部(根元)側の関節なので、バックラッシが生じると、ロボットアーム110の先端部に対して位置精度に最も影響を及ぼしやすい。
従って、制御装置90は、第一関節113Aのバックラッシ量を求める取得処理を実行する。
【0042】
図8は制御装置90のCPU91がプログラムに基づいて実行するバックラッシ量の取得処理のフローチャートである。
まず、CPU91は、データメモリ94から所定の目標針落ち位置を示す絶対座標系の位置座標データを読み出す処理を行う(ステップS31)。
【0043】
次に、CPU91は、ロボットアーム110の各サーボモーター114を駆動させてミシン10を所定の目標針落ち位置に搬送する(ステップS33)。
その際、ロボットアーム110の第一関節113Aは、一定方向(例えば時計回り)の回動動作を行いながら目標針落ち位置に到達する軌跡でミシン10の搬送を実行する。
所定の目標位置には、針落ちが行われた場合にその針落ち位置を撮影画像から認識し易い被縫製物や治具が設置されている。
【0044】
次に、CPU91は、目標位置において、ミシンモーター24を駆動させて一回目の針落ちを実行して第三の針落ち位置を形成する(ステップS35)。なお、この時、ミシン10は針棒12の長手方向(針上下動方向)が鉛直上下方向に平行となる基準姿勢を維持して針落ちを実行する。
【0045】
次に、CPU91は、ロボットアーム110の第一関節113Aだけを、前述した一定方向(例えば時計回り)に所定の回動角度で回動させ、その後、逆方向(例えば反時計回り)に同じ回動角度で回動動作を行い、前述した目標針落ち位置にミシン10を戻す搬送動作を実行する(ステップS37)。
そして、再び目標位置において、ミシンモーター24を駆動させて二回目の針落ちを実行して第四の針落ち位置を形成する(ステップS39)。
【0046】
次に、CPU91は、第一と第二の針落ち位置が両方ともカメラ15の撮影範囲内となるようにロボットアーム110の各サーボモーター114を駆動させてミシン10を移動し、カメラ15により第三と第四の針落ち位置を撮影する(ステップS41)。
【0047】
図9は第三と第四の針落ち位置の撮影画像を示す説明図である。
この撮影画像から画像処理装置15aによりパターンマッチングなどを行い、第三と第四の針落ち位置を抽出し、CPU91は、第一関節113Aにおけるバックラッシ量を算出する(ステップS43)。
【0048】
即ち、CPU91は、絶対座標系における、抽出された一回目の二本の縫い針による第三の針落ち位置p31,p32と第四の針落ち位置p41,p42を特定する。
これらの内、CPU91は、同じ縫い針11により針落ち位置p31,p41に着目し(針落ち位置p32,p42でも良い)、これらの相互間距離dを撮影画像内の距離から算出する。
【0049】
さらに、CPU91は、ロボットアーム110の全ての関節113の角度をエンコーダー115から検出して、平面視における、ロボットアーム110の第一関節113Aの中心軸からアーム先端部までの距離を算出する。また、これに、ロボットアーム110の先端部におけるミシン10の保持位置から縫い針11までの距離の設計データ又は前述した較正処理で求めたミシン10の針中心位置の位置座標を参照して、第一関節113Aの中心軸から縫い針11までの平面視における距離Rを算出する。
一方、距離dが距離Rに比べて十分小さい場合には、第一関節113Aにおけるバックラッシ量を角度θとした場合、Rsinθ=dとみなせるので、第一関節113Aにおけるバックラッシ量である角度θ=sin
-1(d/R)により算出される。
【0050】
そして、CPU91は、データメモリ94に第一関節113Aにおけるバックラッシ量である角度θの値を登録し(ステップS45)、バックラッシ量の取得処理を終了する。
なお、このバックラッシ量は、ロボットアーム110の動作において、第一関節113Aの回動する方向が正逆の切り替わりを生じた場合に、補正値として参照される。
【0051】
なお、このバックラッシ量の取得処理は、初期の縫製システム100について出荷前に一回のみ行う構成としても良いし、縫製システム100の毎回の主電源投入時に実行しても良いし、定期的に実行しても良いし、制御装置90に併設された操作部から任意に実行可能としても良い。
【0052】
[実施形態の効果]
上記縫製システム100では、制御装置90が、当該制御装置90が記憶する較正前の針中心位置を通る回動軸回りに規定の角度でミシン10を回動させる動作の前後で針落ちを行い、これにより形成された第一の針落ち位置p11,p12と第二の針落ち位置p21,p22をカメラ15で撮影して得られた撮影画像の撮影範囲内の第一の針落ち位置p11,p12と第二の針落ち位置p21,p22に基づいて、制御装置90が記憶する針中心位置を較正する較正処理を実行している。
このため、人手による計測等を行うことなく、縫製システム100の各部の制御により、ミシン10の実際の針中心位置を制御装置90がより正確に認識することができ、ロボットアーム110によりミシン10の針落ち位置をより正確に位置決めすることができるので縫い品質の向上を図ることが可能となる。
また、較正処理の作業負担を低減することが可能となる。
【0053】
また、上記縫製システム100では、制御装置90が、目標とする針落ち位置に対して、第一関節113Aにおける一定方向の回動による位置決め後に形成される第三の針落ち位置p31,p32と、第一関節113Aにおける逆方向の回動による位置決め後に形成される第四の針落ち位置p41,p42とをカメラ15で撮影し、その撮影画像の撮影範囲内の第三の針落ち位置p31,p32と第四の針落ち位置p41,p42の各位置p31,p41に基づいて、第一関節113Aに生じるバックラッシ量の取得処理を実行している。
このため、ミシン10の第一関節113Aに生じるバックラッシ量を取得することで、ミシン10の針落ち位置の位置決め動作において、バックラッシ量を考慮して補正する動作制御を行うことにより、ロボットアーム110によりミシン10の針落ち位置をより正確に位置決めすることができるので縫い品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0054】
[その他]
較正処理において、一回目の針落ちにより針落ち位置と二回目の針落ちによる針落ち位置とを同時に一回で撮影しているが、針落ちごとに別々に撮影を行ってもよい。
バックラッシ量の取得処理の場合も同様である。
【0055】
また、ミシン10では、カメラ15の光軸を針棒12の長手方向と平行に向けているが、カメラ15の光軸は傾斜した方向に向けても良い。
また、カメラ15による基線の撮影を良好に行うためのスリット光を被縫製物に照射する光源としてレーザー16を用いているが、スリット光が照射できればLEDや電球などの光を用いても良い。