(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854615
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】電流遮断構造及びそれを備えた電気接続箱
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20210329BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20210329BHJP
H01R 31/08 20060101ALI20210329BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20210329BHJP
H01R 13/04 20060101ALI20210329BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20210329BHJP
H01H 27/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
B60R16/02 630
H02G3/16
H01R31/08 Q
H01R11/01 Q
H01R13/04 B
H01R13/11 D
H01H27/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-198708(P2016-198708)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-58529(P2018-58529A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖一
(72)【発明者】
【氏名】古屋 宏恭
(72)【発明者】
【氏名】兼光 秀彰
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−007920(JP,A)
【文献】
特開2002−369337(JP,A)
【文献】
特開2000−223000(JP,A)
【文献】
実開昭50−134680(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01H 27/00
H01R 11/01
H01R 13/04
H01R 13/11
H01R 31/08
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリから電装品に供給される電流を遮断する電流遮断構造であって、
導電性の金属板から打ち抜かれて形成された、基端部と、該基端部から平行に延びた一対の雄型端子と、を有するショートピンと、
前記一対の雄型端子をそれぞれ挟持する一対の雌型端子と、
前記一対の雌型端子を収容したフレームと、
を備え、
前記一対の雄型端子の各先端部は、当該雄型端子の前記雌型端子への差し込み方向に位置ずれしており、
前記ショートピンは、前記一対の雄型端子が前記一対の雌型端子に挟持され、前記電流が供給される接続位置と、一方の前記雄型端子が一方の前記雌型端子に挟持されかつ他方の前記雄型端子が他方の前記雌型端子と非接触となり、前記電流を遮断する遮断位置と、にわたって前記差し込み方向に移動自在であり、
前記ショートピンは、前記接続位置及び前記遮断位置において少なくとも一方の前記雄型端子が前記雌型端子に挟持されていることによって当該雌型端子に保持され、他の部材によって保持されていない
ことを特徴とする電流遮断構造。
【請求項2】
前記フレームが、前記遮断位置において前記ショートピンが傾くことを規制するガイド部を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の電流遮断構造。
【請求項3】
前記ショートピンが、前記基端部から前記一対の雄型端子と反対側に突出した把持部を有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流遮断構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の電流遮断構造を備えたことを特徴とする電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたバッテリから電装品に供給される電流を遮断する電流遮断構造及びそれを備えた電気接続箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車メーカーで製造された自動車を海外に輸出する際などには、該自動車の電装品に長時間に亘って暗電流が流れ続けるため、バッテリが上がってエンジンが始動できなくなるおそれがある。そのため、自動車の出荷時に、バッテリの電源を電装品に供給する回路からヒューズを抜き取り、前記自動車がディーラー等に届けられるまでの間、暗電流が流れないようにすることが行われている。
【0003】
また、自動車の出荷時に抜き取ったヒューズの紛失を防止するために、「ヒューズホルダ」と呼ばれる部品を使用することが特許文献1に開示されている。このヒューズホルダは、ヒューズを保持した状態で、電気接続箱のフレームに対して前記ヒューズの抜き差しを行う部品であり、ヒューズをフレーム内の接続端子に電気接続させる位置と、ヒューズを接続端子から分離させる位置とに亘って、フレームに移動可能に取り付けられる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−169382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のヒューズホルダを用いた電流遮断構造においては、ヒューズホルダを用いることにより構造が大型化してしまうという問題があった。また、従来のヒューズホルダを用いた電流遮断構造においては、ヒューズの抜き差しを行う際、ヒューズを接続端子に挿抜するための力の他に、ヒューズホルダのロック状態を変更するための力(例えばロックアームがロック突起を乗り越えるための力)が必要であるため、これらを合わせた大きな操作力を要してしまうという問題があった。さらに、従来のヒューズホルダを用いた電流遮断構造においては、前述したようにヒューズの抜き差しに大きな操作力を要するため、押し込み不足による半嵌合等が起きる可能性があるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、小型化が可能な電流遮断構造及びそれを備えた電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、車両に搭載されたバッテリから電装品に供給される電流を遮断する電流遮断構造であって、
導電性の金属板から打ち抜かれて形成された、基端部と、該基端部から平行に延びた一対の雄型端子と、を有するショートピンと、前記一対の雄型端子をそれぞれ挟持する一対の雌型端子と、前記一対の雌型端子を収容したフレームと、を備え、前記一対の雄型端子の各先端部は、当該雄型端子の前記雌型端子への差し込み方向に位置ずれしており、前記ショートピンは、前記一対の雄型端子が前記一対の雌型端子に挟持され、前記電流が供給される接続位置と、一方の前記雄型端子が一方の前記雌型端子に挟持されかつ他方の前記雄型端子が他方の前記雌型端子と非接触となり、前記電流を遮断する遮断位置と、にわたって前記差し込み方向に移動自在であり、前記ショートピンは、前記接続位置及び前記遮断位置において少なくとも一方の前記雄型端子が前記雌型端子に挟持されていることによって当該雌型端子に保持され
、他の部材によって保持されていないことを特徴とする電流遮断構造である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記フレームが、前記遮断位置において前記ショートピンが傾くことを規制するガイド部を有していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記ショートピンが、前記基端部から前記一対の雄型端子と反対側に突出した把持部を有していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の電流遮断構造を備えたことを特徴とする電気接続箱である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、前記ショートピンは、前記接続位置及び前記遮断位置において少なくとも一方の前記雄型端子が前記雌型端子に挟持されていることによって当該雌型端子に保持されているので、小型化が可能な電流遮断構造を提供することができる。さらに、前記ショートピンは、ヒューズと異なり設計自由度が高いため、前記一対の雄型端子の長さを長く設計して前記一対の雌型端子との接触代を大きくすることが可能である。そのために、他部材を用いずとも、少なくとも一方の前記雄型端子が前記雌型端子に挟持されていることによって当該雌型端子により前記ショートピンを確実に保持することができ、部品点数を削減でき、コストを削減できる。さらに、本構造は、背景技術の項及び発明が解決しようとする課題の項で説明したヒューズホルダ等の他部材を省くことができるので、ショートピンの抜き差しに要する操作力が小さくて済む(ヒューズホルダ等の他部材のロック状態を変更するための力が不要)。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、前記フレームが、前記遮断位置において前記ショートピンが傾くことを規制するガイド部を有しているので、前記雄型端子を前記雌型端子に真っ直ぐ確実に差し込むことができる。また、前記遮断位置において他方の前記雄型端子が他方の前記雌型端子に意図せず接触してしまうことを防止できる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、前記ショートピンが、前記基端部から前記一対の雄型端子と反対側に突出した把持部を有しているので、当該ショートピンを前記接続位置から前記遮断位置に容易に引き上げることができる。
【0014】
請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜3の何れか1項に記載の電流遮断構造を備えているので、小型化が可能な電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる電流遮断構造及び電気接続箱を示す概略図であり、ショートピンが接続位置に位置付けられている状態を示す図である。
【
図2】
図1のショートピンが遮断位置に位置付けられている状態を示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態にかかる電流遮断構造を構成するショートピンの斜視図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態にかかる電流遮断構造及び電気接続箱を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる「電流遮断構造」及び「電気接続箱」を
図1〜4を参照して説明する。
【0017】
図1,2に示す電気接続箱100は、自動車に搭載されて、該自動車のバッテリから複数の電装品に電源分配を行う装置である。この電気接続箱100は、絶縁性の合成樹脂で形成されたフレーム4(
図1,2に一部のみ示す)と、フレーム4に取り付けられるリレー、ヒューズ等の複数の電気部品と、フレーム4に取り付けられる複数のバスバと、後述する電流遮断構造1と、を備えている。前記バスバは、導電性の金属板に打ち抜き・折り曲げ加工等が施されて得られる配線部材である。
【0018】
電流遮断構造1は、前記バッテリから前記電装品(時計、盗難防止装置等)に供給される電流を遮断する構造である。この電流遮断構造1は、ショートピン2と、該ショートピン2の後述する一対の雄型端子21,22をそれぞれ挟持する一対の雌型端子3と、これら一対の雌型端子3を収容した上記フレーム4と、を備えている。
【0019】
ショートピン2は、導電性の金属板から打ち抜かれて形成されている。ショートピン2は、
図3に示すように、基端部20と、該基端部20から平行に延びた一対の雄型端子21,22と、を有している。一対のうちの一方の雄型端子21は、基端部20の一端から延びている。一対のうちの他方の雄型端子22は、基端部20の他端から延びている。一対の雄型端子21,22の各先端部は、当該雄型端子21,22の雌型端子3への差し込み方向に位置ずれしており、一方の雄型端子21の長さは、他方の雄型端子22の長さよりも長い。なお、
図3中の矢印Sは、雄型端子21,22の雌型端子3への差し込み方向を表している。
【0020】
一対の雌型端子3は、上記バスバの一部であり、
図4に示すように、雄型端子21,22が差し込まれるスリット31を有する音叉形状に形成されている。また、一対の雌型端子3はそれぞれ別々のバスバに設けられている。なお、
図1,2においては、一対の雌型端子3が細長い棒状に描かれているが、同図では一対の雌型端子3の側面が描かれている。すなわち、
図1,2の雌型端子3は、
図4の雌型端子3を真横から見たものである。
【0021】
上記ショートピン2は、
図1に示すように、一対の雄型端子21,22が一対の雌型端子3に挟持されて上記電装品に電流が供給される接続位置と、
図2に示すように、一方の雄型端子21が一方の雌型端子3に挟持されかつ他方の雄型端子22が他方の雌型端子3と非接触となって前記電流を遮断(その結果、暗電流も遮断)する遮断位置と、にわたって矢印S方向(雄型端子21,22の雌型端子3への差し込み方向)に移動自在である。
【0022】
また、上記ショートピン2は、
図1の接続位置において、一対の雄型端子21,22が一対の雌型端子3に挟持されていることによってこれら一対の雌型端子3に保持されており、他部材によって保持されていない。さらに、上記ショートピン2は、
図2の遮断位置において、一方の雄型端子21が一方の雌型端子3に挟持されていることによって当該一方の雌型端子3に保持されており、他部材によって保持されていない。
【0023】
上述したように、ショートピン2は、前記接続位置及び前記遮断位置において少なくとも一方の雄型端子21が雌型端子3に挟持されていることによって当該雌型端子3に保持されていることから、電流遮断構造1及び電気接続箱100を小型化できる。
【0024】
さらに、ショートピン2は、背景技術の項で説明したようなヒューズと異なり設計自由度が高いため、一対の雄型端子21,22の長さを長く設計して一対の雌型端子3との接触代を大きくすることが可能である。そのために、ヒューズホルダ等の他部材を用いずとも、少なくとも一方の雄型端子21が雌型端子3に挟持されていることによって当該雌型端子3によりショートピン2を確実に保持することができ、部品点数を削減でき、コストを削減できる。
【0025】
また、上記フレーム4は、
図2の遮断位置において、ショートピン2が傾くことを規制するガイド部40を有している。ガイド部40は、一対の雄型端子21,22それぞれに沿う一対の壁41を有している。このようにフレーム4が、ガイド部40を有しているので、前記遮断位置の雄型端子21,22を雌型端子3に真っ直ぐ確実に差し込むことができる。また、前記遮断位置において他方の雄型端子22が他方の雌型端子3に意図せず接触してしまうことを防止できる。
【0026】
上記構成の電気接続箱100が搭載された自動車においては、通常はショートピン2が
図1の接続位置に位置付けられる。一方、当該自動車の出荷時等、バッテリから電装品への電流を遮断する場合には、ショートピン2を
図1の接続位置から
図2の遮断位置に引き上げる。この後、バッテリから電装品への電流供給を再開する場合には、
図2の遮断位置のショートピン2を矢印S方向に押圧して
図1の接続位置に位置付ける。
【0027】
また、
図2の遮断位置のショートピン2を
図1の接続位置に押圧する際、他方の雄型端子22は他方の雌型端子3のスリット31に押し込まれるが、一方の雄型端子21は常時一方の雌型端子3のスリット31に挿入された状態であるため、双方の雄型端子21,22をスリット31に押し込む場合よりも小さい挿入力でショートピン2を
図1の接続位置に位置付けることができる。さらに、この電流遮断構造1は、背景技術の項及び発明が解決しようとする課題の項で説明したヒューズホルダ等の他部材を省くことができるので、ショートピン2の抜き差しに要する操作力が小さくて済む(ヒューズホルダ等の他部材のロック状態を変更するための力が不要)。
【0028】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態にかかる「電流遮断構造」及び「電気接続箱」を
図5を参照して説明する。
図5において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
本実施形態の電流遮断構造及び電気接続箱は、第1の実施形態のショートピン2の代わりに
図5のショートピン102が用いられ、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。このショートピン102は、導電性の金属板から打ち抜かれて形成されており、基端部20から一対の雄型端子21,22と反対側に突出した把持部23を有している。このようにショートピン102が把持部23を有しているので、当該ショートピン102を接続位置(
図1参照)から遮断位置(
図2参照)に容易に引き上げることができる。
【0030】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態にかかる「電流遮断構造」及び「電気接続箱」を
図6を参照して説明する。
図6において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態の電流遮断構造201及び電気接続箱200は、第1の実施形態のフレーム4の代わりに
図6のフレーム204が用いられ、それ以外の構成は第1の実施形態と同一である。このフレーム204は、第1の実施形態で説明したガイド部40を有していない。
【0032】
上述した第1〜第3の実施形態では、ショートピン2,102の基端部20及び把持部23が露出している構成であったが、本発明において、ショートピンは、基端部20と把持部23が絶縁性の合成樹脂で覆われていても良い。
【0033】
上述した第1〜第3の実施形態では、雌型端子3が音叉形状であったが、本発明において、雌型端子は、ファストンタイプであっても良く、筒型であっても良い。
【0034】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
1,201 電流遮断構造
2,102 ショートピン
3 雌型端子
4,204 フレーム
21,22 雄型端子
23 把持部
40 ガイド部
100,200 電気接続箱