(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リード弁は、前記吐出孔を開くとき、前記リード弁の前記弁取付面段差部側端部に対向する部分が、弁頭部よりも先に前記弁押えに接触するように構成される、請求項1に記載の圧縮機。
前記リード弁の前記弁取付面の段差部側端部に対向する部分の幅寸法H2は、前記リード弁の前記可動起点から前記弁取付面の段差部側端部までの距離Lよりも大きく構成される、請求項1または2に記載の圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態の圧縮機について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は、一部断面で示した圧縮機を含む冷凍サイクル装置の構成を示している。
【0010】
図1に示す冷凍サイクル装置1は、圧縮機本体2とアキュムレータ3とを有して作動流体であるガス冷媒を圧縮する圧縮機4と、圧縮機本体2に接続されて圧縮機本体2から吐出された高圧のガス冷媒を凝縮して液冷媒にする放熱器としての凝縮器5と、凝縮器5に接続されて液冷媒を減圧する膨張装置6と、膨張装置6とアキュムレータ3との間に接続されて液冷媒を蒸発させる吸熱器としての蒸発器7とを有している。アキュムレータ3と圧縮機本体2とは、ガス冷媒が流れる吸込管8により接続されている。
圧縮機本体2は、円筒状に形成された密閉ケース9を有し、密閉ケース9内には、上部側に位置する電動機部10と、下部側に位置する圧縮機構部11とが収容されている。これらの電動機部10と圧縮機構部11とは、上下方向の中心線を有してその中心線回りに回転する回転軸12を介して連結されている。
【0011】
電動機部10は、圧縮機構部11を駆動する部分であり、回転軸12に固定された回転子13と、密閉ケース9に固定されて回転子13を囲む位置に配置された固定子14とを有している。回転子13には永久磁石(図示せず)が設けられ、固定子14には通電用のコイル(図示せず)が巻かれている。
【0012】
圧縮機構部11は、ガス冷媒を圧縮する部分であり、仕切板15を介して上下に位置する第1圧縮要素16aと第2圧縮要素16bとを有している。
【0013】
上側に位置する第1圧縮要素16aは、第1シリンダ17aを有し、この第1シリンダ17aの下端側が仕切板15により閉塞され、第1シリンダ17aの上端側が回転軸12を回転可能に軸支する第1の吐出孔形成部材である主軸受18aにより閉塞されている。第1シリンダ17a内には、第1シリンダ17aの上下両端が主軸受18aと仕切板15とにより閉塞されることにより第1シリンダ室19aが形成されている。第1シリンダ室19a及び後述する第2シリンダ室19bには回転軸12が貫通されており、回転軸12における第1シリンダ室19a内に位置する部分に第1偏心部20aが形成され、第1偏心部20aには第1ローラ21aが嵌合されている。第1ローラ21aは、回転軸12の回転時にその外周面を第1シリンダ17aの内周面に線接触させながら偏心回転するように配置されている。第1圧縮要素16aは、これらの第1シリンダ17a、第1偏心部20a、第1ローラ21a、第1シリンダ室19a内を二つの空間(後述する吸込室と圧縮室)に仕切る後述するブレード等により構成されている。
【0014】
下側に位置する第2圧縮要素16bは、上述した第1圧縮要素16aと同じ構成であり、第2シリンダ17bを有し、この第2シリンダ17bの上端側が仕切板15により閉塞され、第2シリンダ17bの下端側が回転軸12を回転可能に軸支する第2の吐出孔形成部材である副軸受18bにより閉塞されている。第2シリンダ17b内には、第2シリンダ17bの上下両端が仕切板15と副軸受18bとにより閉塞されることにより第2シリンダ室19bが形成されている。第2シリンダ室19bには回転軸12が貫通されており、回転軸12における第2シリンダ室19b内に位置する部分に第2偏心部20bが形成され、第2偏心部20bには第2ローラ21bが嵌合されている。第2ローラ21bは、回転軸12の回転時にその外周面を第2シリンダ17bの内周面に線接触させながら偏心回転するように配置されている。第2圧縮要素16bは、これらの第2シリンダ17b、第2偏心部20b、第2ローラ21b、第2シリンダ室19b内を二つの空間(後述する吸込室と圧縮室)に仕切る後述するブレード等により構成されている。
【0015】
吐出孔形成部材である主軸受18aには、第1圧縮要素16aにおいて圧縮されたガス冷媒が吐出される第1吐出孔22aが形成され、吐出孔形成部材である副軸受18bには、第2圧縮要素16bにおいて圧縮されたガス冷媒が吐出される第2吐出孔22bが形成されている。そして、主軸受18aには、第1吐出孔22aを開閉する第1吐出弁装置23a設けられ、副軸受18bには、第2吐出孔22bを開閉する第2吐出弁装置23bが設けられている。
さらに、主軸受18aには、第1吐出弁装置23aを覆う位置に配置され、第1吐出孔22aから吐出されたガス冷媒が流入する第1マフラ24aが取付けられている。また、副軸受18bには、第2吐出弁装置23bを覆う位置に配置され、第2吐出孔22bから吐出されたガス冷媒が流入する第2マフラ24bが取付けられている。第1マフラ24a内と第2マフラ24b内とは、副軸受18bと第2シリンダ17bと仕切板15と第1シリンダ17aと主軸受18aとを貫通して形成された連通路(図示せず)により連通されている。第1マフラ24aには、第1・第2マフラ24a、24b内に流入したガス冷媒を密閉ケース9内に流入させる連通孔25が形成されている。
【0016】
第1吐出弁装置23aは、第1吐出孔22aが形成された主軸受18aにおける第1吐出孔22aの周辺に形成された第1凹部26a内に収容されるとともに主軸受18aに固定されて第1吐出孔22aを開閉する第1リード弁27aと、主軸受18aに固定されて第1リード弁27aの最大開度を規制する第1弁押え28aとを有している。
【0017】
第2吐出弁装置23bは、上述した第1吐出弁装置23aと同じ構成であり、第2吐出孔22bが形成された副軸受18bにおける第2吐出孔22bの周辺に形成された第2凹部26b内に収容されるとともに副軸受18bに固定されて第2吐出孔22bを開閉する第2リード弁27bと、副軸受18bに固定されて第2リード弁27bの最大開度を規制する第2弁押え28bとを有している。
【0018】
図2に示すように、第1シリンダ17aには、先端部を第1ローラ21aの外周面に当接させ、第1ローラ21aの回転に伴って第1シリンダ室19a内を吸込室29と圧縮室30とに仕切るブレード31が設けられている。吸込室29には、一端に吸込管8が接続される吸込通路32の他端が接続されている。なお、図示は省略するが、第2シリンダ17bにも同様のブレードが設けられ、このブレードにより第2シリンダ室19b内が第2ローラ21bの回転に伴って吸込室と圧縮室とに仕切られている。
【0019】
図2及び
図3に示すように、第1リード弁27aは、一端に設けられて主軸受18aに固定される固定支持部33と、他端に設けられて第1吐出孔22aを開閉する弁頭部34と、これら固定支持部33と弁頭部34を繋ぐ長尺状のリード弁本体35と、リード弁本体35の両側に位置する一対のガイド部36とを有している。ガイド部36は、一端側が固定支持部33側に繋がり、他端側がスリット37を介してリード弁本体35の長手方向の側面に対向して延出している。なお、
図2及び
図3において、第1弁押え28aは省略されている。
【0020】
図4に示すように、第1弁押え28aは第1凹部26a内に収容され、第1リード弁27aに対向させるとともに固定具であるリベット39により第1リード弁27aと共締めされている。この第1弁押え28aは、固定支持部33に対向する側が平坦に形成され、他端側が第1吐出孔22aから離反する向きに湾曲して立ち上っている。
また、第1吐出弁装置23aの第1リード弁27aが配置される第1凹部26aの底部には、第1リード弁27aの弁頭部34が当接する弁座部41と、固定支持部33が当接する弁取付面42と、これら弁座部41と弁取付面42間に設けられ第1リード弁27aが接触しないように深さが深く形成された段差部40が設けられている。
段差部40を設けることで、第1凹部26aの底部と第1リード弁27aの全面が付着することを防ぎ、弁の応答性を保つとともに、弁座部41と弁取付面42を厳密に同一平面上にしなくても第1リード弁27aが変形することで弁座全面を確実に封止することができる。
なお、第2吐出弁装置23b側の第2凹部26bにも同様に、構成される。
【0021】
第1リード弁27aの可動起点35aにおける幅寸法“H1”は、(第1リード弁27aの)弁取付面42の段差部40側端部42aに対向する部分の幅寸法“H2”より小さく構成される。
ここで、第1リード弁27aの可動起点35aとは、第1弁押え28aが平坦部から立ち上がりを開始する位置と対向する位置を意味する。つまり、第1弁押え28aが立ち上がっている部分は、第1リード弁27aがその長手方向に直交する上下方向に対して可動することができる。この長手方向において、固定支持部33側から弁頭部34に向かって、最初に可動が可能となる点を、第1リード弁27aの可動起点という。
また、弁取付面42の段差部40側端部42aとは、第1凹部26a底部に配置される第1リード弁27aの固定支持部33が当接する面である弁取付面42において、隣接する段差部40と接する側の端部を意味している。
ここで、(第1リード弁27aの)弁取付面42の段差部40側端部42aに対向する部分の幅寸法“H2”とは、弁取付面42と段差部40の境目となる縁と、この縁に第1リード弁27aの幅方向両端部が接する点P、Pを結んだ線(段差部40側端部42a)において、対向する第1リード弁27aの幅方向両端部間の幅寸法を指している。
つまり、弁取付面42と段差部40の境界となる縁と、この縁に第1リード弁27aとが接する箇所における、第1リード弁27aの幅寸法を“H2”ということができる。
【0022】
言い換えると、第1リード弁本体27aは、固定支持部33が当接する弁取付面42に位置する可動起点35aでは幅狭に、弁取付面42の段差部40側端部42aから段差部40に対向する部分は幅広に、構成される。
【0023】
なお、第1リード弁27aを第1凹部26a内に収容した場合にガイド部36の外側面が第1凹部26aの側壁に当接してもよく、又は、僅かな隙間を有してもよい。
第1リード弁27aの主軸受18aへの固定は、例えば、第1リード弁27aの固定支持部33に形成された取付孔38にリベット39を挿通して第1弁押え28aと共にリベット締めすることにより行われる。
【0024】
図2ないし
図4では、第1吐出弁装置23aの第1リード弁27aと第1弁押え28aについてのみ説明したが、第2吐出弁装置23bの第2リード弁27bと第2弁押え28bも、第1リード弁27a、第1弁押え28aと同じ構成に形成されている。
【0025】
このような構成において、この圧縮機4においては、電動機部10に通電することにより回転軸12が中心線回りに回転し、回転軸12の回転により圧縮機構部11が駆動され、第1・第2圧縮要素16a、16bにおいてガス冷媒が圧縮される。
【0026】
圧縮されたガス冷媒の圧力が設定圧に達すると、第1・第2リード弁27a、27bが開弁されて圧縮されたガス冷媒が第1・第2吐出孔22a、22bから吐出され、吐出されたガス冷媒が第1・第2マフラ24a、24b内に流入する。第1・第2マフラ24a、24b内に流入したガス冷媒は、連通孔25から密閉ケース9内に流入する。
【0027】
圧縮されたガス冷媒の圧力が設定圧に達すると、第1・第2リード弁27a、27bが開弁されて圧縮されたガス冷媒が第1・第2吐出孔22a、22bから吐出され、吐出されたガス冷媒が第1・第2マフラ24a、24b内に流入する。第1・第2マフラ24a、24b内に流入したガス冷媒は、連通孔25から密閉ケース9内に流入する。
【0028】
第1リード弁27aは、第1凹部26a内に収容されてリベット締めされることにより主軸受18aに取付けられ、弁頭部34が第1吐出孔22aを閉弁している。
【0029】
第1の実施形態においては、リード弁本体35(第1リード弁27aおよび第2リード弁27b)の可動起点35aにおける幅寸法“H1”は、リード弁本体35の弁取付面42の段差部40側端部42aに対向する部分の幅寸法“H2”より小さく構成される。リード弁本体35の可動起点35aにおける幅寸法が小さく形成されることで、弁の開き始めの弁の剛性を低くすることができ、過圧縮損失を低減することができる。
【0030】
また、弁取付面42の段差部40側端部42aが、リード弁本体35の可動起点35aより弁座部41側に位置して設けられ、かつリード弁本体35の弁取付面42の段差部40側端部42aにおける幅寸法が大きく形成されているので、弁取付面42の段差部40側端部42aにおけるリード弁本体35の剛性を高め、開閉動作時にリード弁が変形することを防止することができる。
このため、リード弁のたわみやねじれが少なく信頼性が高い圧縮機を提供することができる。
【0031】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように拡張または変形することができる。
【0032】
ガイド部36はその一端側が固定支持部33側に繋がってリード弁本体35から分岐して設けられ、スリット37を介してリード弁本体35の側面に対向している。このため、第1吐出孔22aからのガス冷媒の吐出のためにリード弁本体35が上下動してもガイド部36は上下動しない。したがって、ガイド部36が第1凹部26aの側壁に当接しても、第1リード弁27aにより第1吐出孔22aを開閉する性能に関しては何ら問題を生じない。
加えて、第1リード弁27aは、第1吐出弁装置23aに形成された第1凹部26a内に設けられるとともに、固定時において第1凹部26aに対し固定具であるリベット39を中心とする回転方向の動きを規制するガイド部36が、第1リード弁27aと分岐して固定支持部33から弁座部41側に向かって設けられる。そして、ガイド部36の弁座部41側端部は、第1リード弁27aの可動起点と、弁取付面42の段差部40側端部42aとの間に位置させても良い。
【0033】
このように構成することで、第1リード弁27aの可動起点における幅寸法を小さくすることにより、第1リード弁27aの可動起点付近におけるガイド部36の形成が容易になる。したがって、ガイド部36により第1リード弁27aの開閉部を小さく形成できるため、弁応答性が向上する効果を得ることができる。また弁取付面42の段差部40側端部42aが、ガイド部36より弁座部41側にあるため、その部分における第1リード弁27aの幅寸法を容易に大きくでき、第1リード弁27aのたわみやねじれが少なく、信頼性の高い圧縮機を提供することができる。
なお、第2リード弁27bも同様の構成とすることができる。
【0034】
加えて、第1リード弁27aは、第1吐出孔22aを開弁するとき、第1リード弁27aの弁取付面42の段差部40側端部42aに対向する部分が、開度が最大になる前、すなわち弁頭部34よりも先に第1弁押え28aに接触するように構成しても良い。
このように構成することで、弁の開度が大きくなる高流量・高回転域において、第1弁押え28aに接触する第1リード弁27aの幅が大きくなり、弁剛性を上げ応答性を向上でき、弁の閉じ遅れをも防止することができる。したがって、圧縮機の性能と信頼性を向上することができる。
なお、第2リード弁27bも同様に、第2吐出孔22bを開弁する際の開度が全開にならないよう、開度が最大になる前に第2弁押え28bに接触するよう構成しても良い。
【0035】
また、第1リード弁27aの弁取付面42の段差部40側端部42aにおける幅寸法“H2”を、第1リード弁27aの可動起点35aから弁取付面42の段差部40側端部42aまでの距離“L”よりも大きく構成しても良い。換言すれば、H2よりLを小さくする。
このように構成することで、弁取付面42の段差部40側端部42aにおいて、第1リード弁27aの可動起点35aからの距離が小さいため、第1弁押え28aと弁取付面42との間のすきまが小さく、かつこの部分におけるリード弁の幅寸法を大きく形成しているため、第1リード弁27aのねじれ量を抑制することができる。したがって、より信頼性の高い圧縮機を提供することができる。
なお、第2リード弁27bも同様に構成しても良い。
【0036】
さらに、第1リード弁27aの可動起点35aの近傍の幅寸法は、所定の長さに亘り同一に形成しても良い。つまり、第1リード弁27aの固定支持部33側から弁頭部34に向かう弁取付面42の可動起点35a周辺において、所定の長さの幅同一部分を構成しても良い。
このように構成することで、弁押え28の精度等により可動起点35aにばらつきが生じた場合でも、弁が開く瞬間の弁剛性を同一にすることができ、過圧縮損失のばらつきのない、高品質の圧縮機を提供することができる。
なお、第2リード弁27bも同様に構成しても良い。
【0037】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の圧縮機によれば、吐出弁装置の信頼性を向上させ、性能を向上させた圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することが可能となる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。