(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びその他の耐火性骨材のいずれか1種以上と同時にキレート剤を添加する、請求項3又は4に記載の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、鋳造用水系塗型剤組成物は溶媒濃度が低いペースト状態で保存し、この状態で商品として流通され、管理されている。当該鋳造用水系塗型剤組成物は、鋳造メーカーにて使用時に溶媒で希釈され、スラリー状にして用いられる。しかし、従来の鋳造用水系塗型剤組成物は、保存時に時間とともに流動性が低下する場合があった。保存時に鋳造用水系塗型剤組成物の流動性が低下した場合、使用時に添加する溶媒の量を増やして流動性を上げることが考えられるが、溶媒の添加量を増やすと塗型剤の固形分が下がることから塗型の膜厚が薄くなり、鋳物に焼着欠陥が生じる場合があった。
【0007】
また、この鋳造用水系塗型剤組成物には、硫黄分の溶湯への侵入を防止して鋳物品質を向上させるために、耐火性骨材としてマグネシウム化合物や亜鉛化合物を有する耐火性骨材が使用されているが、これらの骨材を含む系においても流動性の低下が見られた。
【0008】
本発明は、保存中の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物、及びその製造方法、並びに鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、保存時に鋳造用水系塗型剤組成物の流動性が低下するのは、鋳造用水系塗型剤組成物がマグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する場合に生じる課題であることを見出し、当該課題を解決する手段を検討した結果、本発明に至った。
【0010】
本発明の鋳造用水系塗型剤組成物は、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物であって、更にキレート剤を含有する。
【0011】
本発明の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法は、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法であって、キレート剤を添加するキレート剤添加工程を有する。
【0012】
本発明の鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法は、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法であって、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材に対してキレート剤を添加して保存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保存時の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物、及びその製造方法、並びに鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<鋳造用水系塗型剤組成物>
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物は、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物であって、更に、キレート剤を含有する。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物によれば、保存時の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができる。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物が、このような効果を奏する理由は定かではないが以下のように考えられる。
【0015】
鋳造用水系塗型剤組成物が前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材及びベントナイトを含有すると時間とともに流動性が低下する場合があるが、これは、骨材から溶出したマグネシウムイオンが粘結剤であるベントナイトに作用し、当該ベントナイトの増粘効果を高めることが原因と考えられる。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物は、特定量のキレート剤を含有するため、キレート剤が優先的にマグネシウムイオンとキレートを形成し、ベントナイトへの作用を抑制するため、保存時の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができると考えられる。
【0016】
[マグネシウム化合物を有する耐火性骨材]
前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材は、鋳型の硬化剤に含まれる硫黄分が溶湯に侵入するのを防ぎ、鋳物品質を向上させる能力を持つという点で、塗型剤の骨材として有用に用いられている。前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材としては、マグネシウムの酸化物やケイ酸塩、炭酸塩が含まれるものが挙げられる。具体的には、マグネシア、タルク、炭酸マグネシウム、オリビンが例示でき、オリビンを有する場合がより好ましい。
【0017】
[その他の耐火性骨材]
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物は、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材以外の耐火性骨材を含有していてもよい。前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材以外の耐火性骨材としては、特に限定されないが、耐火性、経済性、および溶融金属との耐反応性の観点から、ムライト、シリカ、アルミナ、ジルコン、アルミナシリケート、黒鉛、黒曜石、および雲母からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でもシリカ、黒曜石、雲母、ムライト、および黒鉛(中でも鱗状黒鉛)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、シリカ、黒曜石、および雲母からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0018】
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物に用いられるマグネシウム化合物を有する耐火性骨材の平均粒径は、塗布作業性を向上させる観点、及び塗型の平面平滑性の観点から0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、5〜40μmが更に好ましい。なお、本明細書において、平均粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0019】
〔ベントナイト〕
本実施形態で用いられるベントナイトは、粘結剤としての役割の他、高温域においては焼結剤としての役割も果たす。前記ベントナイトとしては、ベントナイトの交換性陽イオンがナトリウムイオンであるナトリウムベントナイトや、ベントナイトの交換性陽イオンがカルシウムイオンであるカルシウムベントナイトが例示できる。
【0020】
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物のベントナイトの含有量は、塗型膜の厚みを適切な範囲に維持する観点、及びたれを低減する観点から、耐火性骨材(マグネシウム化合物を有する耐火性骨材とその他の耐火性骨材の合計、以下同様)100質量部に対して1.5質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が更に好ましい。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物のベントナイトの含有量は、耐火性骨材100質量部に対して15質量部以下が好ましく、12質量部以下がより好ましく、8.0質量部以下が更に好ましい。また、本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物のベントナイトの含有量は、塗型膜の厚みを適切な範囲に維持する観点、たれを低減する観点から、耐火性骨材100質量部に対して1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜12質量部がより好ましく、2.5〜8.0質量部が更に好ましい。
【0021】
〔キレート剤〕
前記キレート剤は、カチオンとキレートを形成するものであれば特に限定されない。前記キレート剤としては、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等の酢酸化合物、アルミのケイ酸塩等のケイ酸化合物が例示できる。アクリル酸系水溶性ポリマーが例示できる。当該アクリル酸系水溶性ポリマーを構成するアクリル酸系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等が例示できる。酸の部分は水系では一部又は全部がアミン塩又はアルカリやアルカリ土類の金属塩の形態となっていてもよい。塗型形成の観点から、アクリル酸塩を構成モノマーに有するものやクエン酸が好ましい。アクリル酸塩を構成モノマーに有するものの中では、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。当該ポリマーの重量平均分子量は、同様の観点から、1000〜100000が好ましく、2000〜70000がより好ましく、3000〜50000が更に好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0022】
前記鋳造用水系塗型剤組成物の前記キレート剤の含有量は、特に拘らないが、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下が好ましい。鋳造用水系塗型剤組成物の貯蔵安定性の観点から、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材中のマグネシウム化合物100質量部に対して0.2質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましく、塗型性能の低下防止の観点から、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましい。また、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材がオリビンである場合、前記鋳造用水系塗型剤組成物の前記キレート剤の含有量は、鋳造用水系塗型剤組成物の貯蔵安定性の観点、及び塗型性能の低下防止の観点から、前記オリビン中のマグネシウム化合物100質量部に対して0.2〜30質量部が好ましく、1.0〜10質量部がより好ましく、3.0〜6.0質量部が更に好ましい。マグネシウム化合物は、硫黄分の溶湯への侵入を防止して、鋳物品質を向上させる一方、保存安定性を低下させるものである。本実施形態では、鋳物品質向上のためにマグネシウム化合物を加え、保存安定性低下を防ぐ剤として、キレート剤を使用する。なお、本明細書において前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材中のマグネシウム化合物の質量とは、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材中のマグネシウム化合物を一律に酸化マグネシウム(MgO)と仮定した場合の当該酸化マグネシウムの質量を意味し、当該酸化マグネシウムの質量は蛍光X線分析等の方法により測定して求めることができる。
【0023】
〔溶媒〕
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物には、溶媒として水が用いられる。水以外の溶媒を併用してもよいが、安全性および経済性の観点から、溶媒中の水の含有量は98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、実質100質量%であることが更に好ましい。水以外の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびヘキサノールなどのアルコールの1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、コストおよび塗布作業性の観点からエタノールが好ましい。
【0024】
〔その他〕
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物は、従来の鋳造用水系塗型剤組成物に通常使用される粘結剤を含有してもよい。当該粘結剤としては、例えば、澱粉、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性高分子や各種の樹脂エマルションが例示できる。当該粘結剤の含有量は、塗膜強度と経済性の観点から、全耐火性骨材100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、10質量部以下が好ましい。
【0025】
前記鋳造用水系塗型剤組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、焼結剤、分散剤、界面活性剤、防腐剤等を含有してもよい。
【0026】
<鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法>
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法は、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法であって、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法であって、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及び他の耐火性骨材の中から選ばれる1種以上を投入するタイミングでキレート剤を添加する工程を有する。また、本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法は、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法であって、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材を投入するタイミングで、キレート剤を添加する工程を有する。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法によれば、保存中の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができる。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法が、このような効果を奏する理由は定かではないが前記鋳造用水系塗型剤組成物が保存中の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができる理由と同様の理由が考えられる。
【0027】
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法に用いられるマグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びキレート剤は、前記鋳造用水系塗型剤組成物のマグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びキレート剤と同様である。また、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びキレート剤以外のその他の成分についても前記鋳造用水系塗型剤組成物に用いられるその他の成分と同様である。
【0028】
〔マグネシウム化合物を有する耐火性骨材とキレート剤の添加タイミング〕
塗型剤製造工程において、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材とキレート剤の添加タイミングは、特に限定されないが、保存安定性の観点から、前記ベントナイトを添加する前に、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材と、前記キレート剤、及び水を添加し、混合するのが好ましい。混合する順序としては以下に示すような(a)〜(c)の態様がより好ましいものとして例示できる。
(a)前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、前記キレート剤、及び水を混合して得られた混合物を、前記ベントナイト及び水等を含有する塗型剤組成物に添加し、混合する。
(b)前記ベントナイト及び水等を含有する塗型剤組成物の混合前に、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材と前記キレート剤を添加し、残りの塗型剤組成物を加えて混合する。
(c)前記ベントナイト及び水等を含有する塗型剤組成物を混合した後、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材と前記キレート剤を添加し、混合する。
【0029】
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の製造方法では、好ましい形態として前記(a)〜前記(c)の方法を行うことができるが、鋳造用水系塗型剤組成物の保存安定性の観点から、前記(a)がより好ましい。マグネシウム化合物を有する耐火性骨材以外の耐火性骨材や他の添加剤等の添加順序に関しては特に限定はない。また、それらは一部を分割して製造工程の複数個所で添加しても構わない。
【0030】
<鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法>
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法は、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材、及びベントナイトを含有する鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法であって、前記マグネシウム化合物を有する耐火性骨材に対してキレート剤を添加して保存する。キレート剤の添加量は特に拘らないが、マグネシウム化合物100質量部に対して1.0〜10質量部添加して保存することが好ましい。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法によれば、保存中の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができる。本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法がこのような効果を奏する理由は定かではないが前記鋳造用水系塗型剤組成物が保存中の流動性の低下を抑制でき、保存安定性に優れる鋳造用水系塗型剤組成物を提供することができる理由と同様の理由が考えられる。
【0031】
本実施形態の鋳造用水系塗型剤組成物の保存方法に用いられるマグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びキレート剤は、前記鋳造用水系塗型剤組成物のマグネシウム化合物を有する耐火性骨材、ベントナイト、及びキレート剤と同様である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を具体的に示す実施例等について説明する。
【0033】
<鋳造用水系塗型剤組成物の調製>
〔実施例1〜3〕
マグネシウム化合物を有する耐火性骨材100質量部、ナトリウムベントナイト5.0質量部、増粘促進剤4.5質量部、粘結剤1.2質量部、水29.4質量部、キレート剤1.4質量部、防腐剤0.1質量部、顔料2質量部を以下の混練方法により混練し、鋳造用水系塗型剤組成物を得た。混練直後の針入度は何れも約300であった。なお、針入度は後述の方法により測定した。また、マグネシウム化合物を有する耐火性骨材はオリビン(平均粒径18μm)を使用し、キレート剤はポリアクリル酸部分ナトリウム中和物(花王社製ポイズ530:重量平均分子量(Mw)17000:中和度90%)を使用した。なお、重量平均分子量は下記方法により測定した。
【0034】
[重量平均分子量の測定条件]
・カラム(G4000PWXL+G2500PWXL)
・溶離液(0.2mo1/L リン酸バッファー/CH3CN;9/1)
・流量(1.0ml/min)
・カラム温度(40℃)
・検出器(CH1:RID、CH2:UVD)
・換算分子量標準(ポリエチレングリコール)
【0035】
[混練方法]
所定量の約1/3の水、ナトリウムベントナイト、及び防腐剤をプラネタリーミキサー(井上製作所社製)に投入し、混練した。得られた混練物に、さらに増粘促進剤を一括添加し、混練した。さらにこの混練物に、オリビン、骨材A及び骨材B(骨材Aと骨材Bの平均粒径0.6μm)、粘結剤、顔料を同時に添加しさらに目視で均一になるまで混練した。そして最後に黒鉛A(平均粒径97μm)及び黒鉛B(平均粒径32μm)、残りの水を加え、混練した。前記混練はすべて、常温で行った。マグネシウム化合物を有する耐火性骨材であるオリビン、骨材A、骨材B、黒鉛A、及び黒鉛Bの各種類と量は、以下の通りである。
・オリビン:(耐火性骨材全体に対して、29.3%)
・骨材A:結晶シリカ(22.4%)
・骨材B:ケイ酸ジルコニウム(17.9%)
・黒鉛A:鱗状黒鉛(9.9%)
・黒鉛B:土状黒鉛(20.5%)
【0036】
また、キレート剤は表1に記載のタイミングで添加した。表1に記載のタイミングの内容を以下に示す。
・タイミングA:黒鉛と同時に添加
・タイミングB:ナトリウムベントナイトと同時に添加
・タイミングC:オリビンと同時に添加
【0037】
〔実施例4〕
キレート剤の添加量を表1に記載の量に変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0038】
〔比較例1〕
キレート剤を添加しなかったこと以外は実施例1〜3と同様に行った。
【0039】
〔実施例5〕
混練方法を以下のように変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0040】
所定量の約1/3の水、オリビン、及びキレート剤をプラネタリーミキサー(井上製作所社製)に投入し、混練した。得られた混練物に、ナトリウムベントナイト、骨材A、骨材B、防腐剤、増粘促進剤を一括添加し、混練した。さらにこの混練物に、粘結剤、顔料を同時に添加しさらに目視で均一になるまで混練した。そして最後に黒鉛A(平均粒径97μm)、黒鉛B(平均粒径32μm)、残りの水を加え、混練した。前記混練はすべて、常温で行った。
【0041】
〔実施例6〕
混練方法を以下のように変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0042】
所定量の約1/3の水、ナトリウムベントナイト、及び防腐剤をプラネタリーミキサー(井上製作所社製)に投入し、混練した。得られた混練物に、さらに増粘促進剤を一括添加し、混練した。さらにこの混練物に、骨材A、骨材B(骨材Aと骨材Bの平均粒径0.6μm)、粘結剤、顔料を同時に添加しさらに目視で均一になるまで混練した。さらに黒鉛A(平均粒径97μm)、黒鉛B(平均粒径32μm)、残りの水を加え、混練した後、オリビン及びキレート剤を加え、混練した。前記混練はすべて、常温で行った。
【0043】
〔実施例7〕
キレート剤をポリアクリル酸部分ナトリウム中和物からクエン酸に変更したこと以外は実施例3と同様に行った。
【0044】
<評価方法>
〔平均粒径〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製LA−920)を用いて下記条件で測定した体積中位粒径(D50)を意味する。
(平均粒径測定条件)
・測定方法:フロー法
・分散媒:イオン交換水にヘキサメタリン酸ナトリウム(0.1質量%)を加えた溶媒
・分散方法:攪拌、装置に内蔵の超音波照射(3分間)
・試料濃度:2mg/100ml
【0045】
〔保存安定性〕
実施例1〜4、及び比較例1に係る混練直後のペースト状の鋳造用水系塗型剤組成物を加速試験下(50℃の恒温槽)で保存し、下記の方法で針入度低下率及び固形分低下率を測定することにより保存安定性を評価した。
【0046】
[針入度低下率]
コップ状容器に実施例1〜4、及び比較例1に係る混練直後のペースト状の鋳造用水系塗型剤組成物を充填して、器の口を擦りきって平らな塗型剤の面を出し、針をその面に重力を用いて刺し、針の刺さった長さを測った。同じ方法で5回測定して平均値を求め、混練直後の鋳造用水系塗型剤組成物の針入度とした。そして、前記加速試験下で1か月間保存したペースト状の鋳造用水系塗型剤組成物についても同様に針入度を測定し、下記の計算式により、実施例1〜4、及び比較例1それぞれにおける針入度低下率(%)を求めた。針入度低下率は値が小さいほど保存中の流動性の変化が少なく、保存安定性に優れることを意味する。表1に示す評価結果より、保存安定性を高めるには、タイミングC(オリビンと同時)での添加が最も効果的であることがわかる。
・針入度低下率(%)=100−(保存後の鋳造用水系塗型剤組成物の針入度/混練直後の鋳造用水系塗型剤組成物の針入度)×100
【0047】
【表1】
【0048】
[固形分低下率]
実施例3〜7、比較例1に係る混練直後のペースト状の鋳造用水系塗型剤組成物を水で希釈して、粘度が50ボーメのスラリー状にしてから固形分を測定した。粘度はボーメ比重計により測定し、固形分は、加熱して水分が蒸発した後の値を測定した。前記加速試験下で表2に記載の日数保存した、保存後のペースト状の鋳造用水系塗型剤組成物についても、同様の方法で濃度一定時の固形分を測定し、下記の計算式により、実施例3〜7、比較例1のそれぞれにおける固形分低下率(%)を求めた。固形分低下率は値が小さいほど保存安定性に優れ、鋳造に用いた場合に焼着欠陥をより抑制できることを意味する。評価結果を表2に示す。なお、表2中「別骨材」とは骨材Aと骨材Bを示し、「黒鉛」とは黒鉛Aと黒鉛Bを示す。
・固形分低下率(%)=100−(保存後の鋳造用水系塗型剤組成物の固形分/混練直後の鋳造用水系塗型剤組成物の固形分)×100
【0049】
【表2】