(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈取部で刈り取った刈取穀稈の脱穀装置への搬送時に、扱深さ検出センサを用いた扱深さ調節によって、適切な扱深さで脱穀する技術は、脱穀性能の向上に貢献している。しかしながら、圃場によっては、植立穀稈の周囲に植立穀稈より長く伸びた雑草が混在している場合があり、この雑草が刈取部で刈り取られ、扱深さ検出センサで検出される。その結果、扱深さ調節手段が雑草の長さで脱穀装置での扱深さを調節してしまい、本来の刈取穀稈の脱穀性能を低下させてしまうという問題が生じる。
【0005】
このような実情に鑑み、雑草が局所的に生育している圃場においても、植立穀稈の脱穀性能の低下をできる限り回避できるコンバインが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、圃場を走行しながら植立穀稈を収穫するコンバインであって、前記圃場から前記植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取穀稈を前記刈取部から脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置と、前記穀稈搬送装置に設けられた扱深さ調整機構と、前記扱深さ調整機構を用いて前記刈取穀稈の長さに基づく扱深さ調整制御を行う扱深さ制御部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体の地図座標である機体位置を算出する機体位置算出部と、前記機体に設けられ、収穫作業時に前記圃場を撮影する撮影部と、前記撮影部によって継時的に遂次取得された撮影画像の画像データが入力され、前記撮影画像における雑草生育領域を推定し、推定された前記雑草生育領域を示す認識出力データを出力する画像認識モジュールと、前記撮影画像が取得された時点の前記機体位置と前記認識出力データとから前記雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報を生成する雑草位置情報生成部と、
前記雑草位置情報、前記機体位置、及び前記穀稈搬送装置の搬送速度に基づいて前記雑草生育領域で刈り取られた雑草が前記扱深さ調整機構を通過するタイミング
を算出する雑草位置算出部と、前記雑草位置算出部が算出した前記タイミングに基づいて前記雑草が前記扱深さ調整機構を通過する間に雑草進入制御を実行する作業走行制御部とが備えられている点にある。
【0007】
本発明では、撮影画像に雑草が存在している場合、当該撮影画像である画像データから、画像認識モジュールによって雑草生育領域が推定される。さらには、撮影画像が取得された時点の地図座標で示された機体位置が機体位置算出部によって算出されているので、当該機体位置と、雑草生育領域を示す認識出力データとから、雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報が生成される。機体の地図座標である機体位置は、機体位置算出部によって算出されているので、機体における雑草の刈取り位置、及び当該刈取り位置から扱深さ調整機構までの雑草の搬送時間を考慮することで、雑草が扱深さ調整機構を通過するタイミングが決定される。この決定されたタイミングに基づいて、雑草が扱深さ調整機構を通過する間、特別な雑草進入制御を実行することにより、雑草が局所的に生育している圃場においても、雑草が混在する植立穀稈に対する脱穀性能の低下が抑制可能となる。
【0008】
本発明の特徴は、圃場を走行しながら植立穀稈を収穫するコンバインであって、前記圃場から前記植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取穀稈を前記刈取部から脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置と、前記穀稈搬送装置に設けられた扱深さ調整機構と、前記扱深さ調整機構を用いて前記刈取穀稈の長さに基づく扱深さ調整制御を行う扱深さ制御部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体の地図座標である機体位置を算出する機体位置算出部と、前記機体に設けられ、収穫作業時に前記圃場を撮影する撮影部と、前記撮影部によって継時的に遂次取得された撮影画像の画像データが入力され、前記撮影画像における雑草生育領域を推定し、推定された前記雑草生育領域を示す認識出力データを出力する画像認識モジュールと、前記撮影画像が取得された時点の前記機体位置と前記認識出力データとから前記雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報を生成する雑草位置情報生成部と、
前記雑草位置情報と前記機体位置算出部によって算出された前記機体位置とに基づいて前記刈取部が前記雑草生育領域を通過するタイミングを算出し、算出された前記タイミングに基づいて前記刈取部が前記雑草生育領域を通過する間
に雑草進入制御を実行する作業走行制御部とが備えられている点である。
【0009】
本発明では、
刈取部が雑草生育領域を通過するタイミングが算出され、そのタイミングに基づいて、刈取部が雑草生育領域を通過する間、雑草進入制御が実行される。この構成では、雑草の搬送時間などを考慮する必要がないので、制御が簡単となる利点がある。
なお、刈取部が雑草生育領域を通過するタイミングは、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて算出される地図上の機体位置と、この機体位置と刈取部との間の距離、及び雑草位置情報に含まれている雑草生育領域の地図上の位置とから正確に求めることができる。
【0010】
植立穀稈より背の高い雑草が扱深さ調整機構に進入すると、扱深さ調整機構は当該雑草を刈取穀稈とみなすため、扱深さ制御部は扱深さを雑草の長さに合わせて制御してしまう。これにより、調整された扱き深さは本来の刈取穀稈には適さなくなる。刈取穀稈の長さはそれほど急激には変動しないので、雑草が扱深さ調整機構に入り込むような事態が生じたときには、扱深さ調整機に基づく扱深さ制御を一時的に中断して、扱深さを変更しないことが好ましい。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記雑草進入制御の実行により、前記扱深さ調整制御が中断されるように構成されている。
【0011】
また、雑草は植立穀稈と混在して生育しているため、この雑草生育領域に対して刈取り作業を行った場合、雑草と刈取穀稈とを含めた処理量が増大し、刈取部、穀稈搬送装置、脱穀装置などの作業装置の負荷が増大する。このような過負荷を回避するためには、車速を低減することが好適である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記雑草進入制御の実行により、車速が低減されるように構成されている。
【0012】
本発明の特徴は、圃場を走行しながら植立穀稈を収穫するコンバインであって、前記圃場から前記植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取穀稈を前記刈取部から脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置と、前記穀稈搬送装置に設けられた扱深さ調整機構と、前記扱深さ調整機構を用いて前記刈取穀稈の長さに基づく扱深さ調整制御を行う扱深さ制御部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体の地図座標である機体位置を算出する機体位置算出部と、前記機体に設けられ、収穫作業時に前記圃場を撮影する撮影部と、前記撮影部によって継時的に遂次取得された撮影画像の画像データが入力され、前記撮影画像における雑草生育領域を推定し、推定された前記雑草生育領域を示す認識出力データを出力する画像認識モジュールと、前記撮影画像が取得された時点の前記機体位置と前記認識出力データとから前記雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報を生成する雑草位置情報生成部と、前記雑草生育領域で刈り取られた雑草が前記扱深さ調整機構を通過するタイミングが算出され、前記雑草が前記扱深さ調整機構を通過する間、雑草進入制御を実行する作業走行制御部と、を備え、前記雑草進入制御の実行により、車速が低減される点にある。
また、本発明の特徴は、圃場を走行しながら植立穀稈を収穫するコンバインであって、前記圃場から前記植立穀稈を刈り取る刈取部と、刈取穀稈を前記刈取部から脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置と、前記穀稈搬送装置に設けられた扱深さ調整機構と、前記扱深さ調整機構を用いて前記刈取穀稈の長さに基づく扱深さ調整制御を行う扱深さ制御部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体の地図座標である機体位置を算出する機体位置算出部と、前記機体に設けられ、収穫作業時に前記圃場を撮影する撮影部と、前記撮影部によって継時的に遂次取得された撮影画像の画像データが入力され、前記撮影画像における雑草生育領域を推定し、推定された前記雑草生育領域を示す認識出力データを出力する画像認識モジュールと、前記撮影画像が取得された時点の前記機体位置と前記認識出力データとから前記雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報を生成する雑草位置情報生成部と、前記刈取部が前記雑草生育領域を通過する間、雑草進入制御を実行する作業走行制御部と、を備え、前記雑草進入制御の実行により、車速が低減される点にある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る収穫機の一例としてのコンバインの実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態で、機体1の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義する。
図1に符号(F)で示す方向が機体前側、
図1に符号(B)で示す方向が機体後側である。機体1の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。
【0015】
図1に示すように、コンバインでは、左右一対のクローラ走行装置10を備えた機体1の前部に横軸芯X周りで昇降操作自在に刈取部2が連結されている。機体1の後部には、機体横幅方向に並ぶ状態で脱穀装置11と、穀粒を貯留する穀粒タンク12とが備えられている。機体1の前部右側箇所に搭乗運転部を覆うキャビン14が備えられ、このキャビン14の下方に駆動用のエンジン15が備えられている。
【0016】
図1に示すように、脱穀装置11は、刈取部2で刈り取られて後方に搬送されてくる刈取穀稈を内部に受け入れて、穀稈の株元を脱穀フィードチェーン111と挟持レール112とによって挟持搬送しながら穂先側を扱胴113にて脱穀処理する。そして、扱胴113の下方に備えられた選別部にて脱穀処理物に対する穀粒選別処理が実行され、そこで選別された穀粒が穀粒タンク12へ搬送され、貯留される。また、詳述はしないが、穀粒タンク12にて貯留される穀粒を外部に排出する穀粒排出装置13が備えられている。
【0017】
刈取部2には、倒伏した植立穀稈を引き起こす複数の引き起こし装置21、引起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の切断装置22、穀稈搬送装置23等が備えられている。穀稈搬送装置23は、株元が切断された縦姿勢の刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更させながら、機体後方側に位置する脱穀装置11の脱穀フィードチェーン111の始端部に向けて搬送する。
【0018】
穀稈搬送装置23は、切断装置22により刈り取られた複数条の刈取穀稈を刈幅方向中央に寄せ集めながら搬送する合流搬送部231、寄せ集めた刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する株元挟持搬送装置232、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する穂先係止搬送装置233、株元挟持搬送装置232の終端部から刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン111に向けて案内する供給搬送装置234等を備えている。
【0019】
図2に示すように、株元挟持搬送装置232は、刈取部2の支持フレームに横軸芯周りで揺動自在に支持されている。株元挟持搬送装置232は駆動操作機構235により上下揺動操作され、その揺動操作に伴って、搬送終端部が供給搬送装置234に対して穀稈の稈長方向に位置変更するように設けられている。駆動操作機構235は、駆動源として扱深さ調節用電動モータ236(以下、扱深さモータという)を有する。駆動操作機構235は、扱深さモータ236によって押し引き操作される操作ロッド237を備えている。
操作ロッド237の下端部が株元挟持搬送装置232の途中部に枢支連結されている。
【0020】
株元挟持搬送装置232の搬送終端部が供給搬送装置234から離れると、供給搬送装置234による刈取穀稈の株元挟持位置が、株元挟持搬送装置232による刈取穀稈の株元挟持位置に対して穂先側に変更されて、供給搬送装置234に受け渡される。その結果、刈取穀稈の脱穀装置11への入り込み深さ(扱深さ)が浅め(浅扱き側)に変更される。
【0021】
株元挟持搬送装置232の搬送終端部が供給搬送装置234に近づくと、供給搬送装置234による刈取穀稈の株元挟持位置が、株元挟持搬送装置232による刈取穀稈の株元挟持位置に近い位置になった状態で供給搬送装置234に受け渡される。その結果、刈取穀稈の脱穀装置11に対する扱深さが深め(深扱き側)に変更される。
【0022】
このように株元挟持搬送装置232の姿勢を変更することにより、脱穀装置11に対する刈取穀稈の扱深さを変更することができる。つまり、株元挟持搬送装置232と駆動操作機構235とにより、脱穀装置11に対する刈取穀稈の扱深さを変更可能な扱深さ調整機構3が構成されている。
【0023】
図3に示すように、穀稈搬送装置23にて搬送される刈取穀稈の稈長を検出する接触式の稈長検出装置30と、扱深さ制御部620とが備えられている。扱深さ制御部620は、稈長検出装置30の検出結果に基づいて、扱深さを調整する扱深さ調整制御を行う。この実施形態では、扱深さ制御部620は、脱穀装置11に対する刈取穀稈の扱深さが目標設定範囲内に維持されるように扱深さモータ236を制御する。
【0024】
図3に示すように、稈長検出装置30は、下向きに開放された略無底箱状に形成された装置本体部としての本体ケース31に一対の揺動式のセンサアーム32,33が備えられ、それら一対のセンサアーム32,33が刈取穀稈の穂先側箇所に接触作用して稈長を検知する構成となっている。一対のセンサアーム32,33は、搬送される刈取穀稈の稈長方向に離間する状態で、上部側箇所が本体ケース31に支持されるとともに下方側に向けて垂下する状態で設けられている。各センサアーム32,33は、本体ケース31の内部に設けられた横軸芯周りで前後方向(刈取穀稈の移動方向に相当)に揺動自在に、且つ、下向きの基準姿勢に復帰付勢される状態で支持されている。
【0025】
一対のセンサアーム32,33それぞれの上部の基端側箇所には、搬送される刈取穀稈が接触することによりセンサアーム32,33が基準姿勢から設定量以上揺動するとオン状態となり、センサアーム32,33の基準姿勢からの揺動量が設定量未満であればオフ状態となる検知スイッチ34,35が備えられている。
【0026】
一対の検知スイッチ34,35の出力が扱深さ制御部620に入力されている。扱深さ制御部620は、穂先側に位置する検知スイッチ35がオフ状態であり、且つ、株元側に位置する検知スイッチ34がオン状態となるように、扱深さモータ236の作動を制御する。
【0027】
すなわち、扱深さ制御部620は、一対の検知スイッチ34,35が共にオン状態であれば、株元挟持搬送装置232が浅扱ぎ側へ移動するように扱深さモータ236を作動させる。また、扱深さ制御部620は、一対の検知スイッチ34,35が共にオフ状態であれば、株元挟持搬送装置232が深扱ぎ側へ移動するように扱深さモータ236を作動させる。さらに、扱深さ制御部620は、一対の検知スイッチ34,35のうち穂先側に位置する検知スイッチ35がオフ状態で、株元側に位置する検知スイッチ34がオン状態であれば、扱深さモータ236の作動を停止してその状態を維持する。
【0028】
図1に示すように、キャビン14の天井部の前端に、カラーカメラを備えた撮影部70が設けられている。撮影部70の撮影視野の前後方向の広がりは、刈取部2の前端領域からほぼ地平線に達している。撮影視野の幅方法の広がりは、10m程度から数十mに達している。撮影部70によって取得された撮影画像は、画像データ化され、コンバインの制御系に送られる。
【0029】
撮影部70は、収穫作業時に圃場を撮影する。コンバインの制御系は、撮影部70から送られてきた画像データから雑草生育領域を認識対象物として認識する機能を有する。
図1では、正常な植立穀稈群が符号Z0で示され、雑草生育領域が符号Z1で示されている。
【0030】
さらに、キャビン14の天井部には、衛星測位モジュール80も設けられている。衛星測位モジュール80には、GNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信するための衛星用アンテナが含まれている。衛星測位モジュール80による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール80に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは別の場所に配置できる。
図1において、衛星測位モジュール80は、作図の便宜上、キャビン14の天井部における後部に配置されているが、例えば、切断装置22の左右中央部の直上方位置にできるだけ近づくように、天井部の前端部における機体中央側寄りの位置に配置されていると好適である。
【0031】
図4には、コンバインの機体1の内部に構築された制御系の機能ブロック図が示されている。この実施形態の制御系は、多数のECUと呼ばれる電子制御ユニットと、各種動作機器、センサ群やスイッチ群、それらの間のデータ伝送を行う車載LANなどの配線網から構成されている。報知デバイス91は、運転者等に作業走行状態や種々の警告を報知するためのデバイスであり、ブザー、ランプ、スピーカ、ディスプレイなどである。通信部92は、このコンバインの制御系が、遠隔地に設置されているクラウドコンピュータシステム100や携帯通信端末200との間でデータ交換するために用いられる。携帯通信端末200は、ここでは、作業走行現場における監視者(運転者も含む)が操作するタブレットコンピュータである。制御ユニット6は、この制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。衛星測位モジュール80からの測位データ、及び、撮影部70からの画像データは、配線網を通じて制御ユニット6に入力される。
【0032】
制御ユニット6は、入出力インタフェースとして、出力処理部6Bと入力処理部6Aとを備えている。出力処理部6Bは、車両走行機器群7A及び作業装置機器群7Bと接続している。車両走行機器群7Aには、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群7Bには、刈取部2、脱穀装置11、穀粒排出装置13、穀稈搬送装置23、扱深さ調整機構3における動力制御機器などが含まれている。
【0033】
入力処理部6Aには、走行系検出センサ群8Aや作業系検出センサ群8Bなどが接続されている。走行系検出センサ群8Aには、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、変速操作具などの状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群8Bには、刈取部2、脱穀装置11、穀粒排出装置13、穀稈搬送装置23における装置状態及び穀稈や穀粒の状態を検出するセンサが含まれている。さらには、作業系検出センサ群8Bには、上述した扱深さ調整機構3における検知スイッチ34,35も含まれている。
【0034】
制御ユニット6には、画像認識モジュール5、データ処理モジュール50、作業走行制御部である作業走行制御モジュール60、機体位置算出部66、報知部67、雑草位置算出部68が備えられている。
【0035】
報知部67は、制御ユニット6の各機能部からの指令等に基づいて報知データを生成し、報知デバイス91に与える。機体位置算出部66は、衛星測位モジュール80から逐次送られてくる測位データに基づいて、機体1の地図座標(又は圃場座標)である機体位置を算出する。この実施形態の雑草位置算出部68は、機体位置算出部66で算出された、通常はアンテナ位置である機体位置と、データ処理モジュール50によって算出される雑草生育領域の地図上の位置と、穀稈搬送装置23の搬送速度とに基づいて、刈取部2に刈り取られた雑草が扱深さ調整機構3を通過するタイミングを決定する。
【0036】
この実施形態のコンバインは自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能である。作業走行制御モジュール60には、走行制御部61と作業制御部62とに加えて、自動作業走行指令部63及び走行経路設定部64が備えられている。自動操舵で走行する自動走行モードと、手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択する走行モードスイッチ(非図示)がキャビン14内に設けられている。この走行モードスイッチを操作することで、手動操舵走行から自動操舵走行への移行、あるいは自動操舵走行から手動操舵走行への移行が可能である。
【0037】
走行制御部61は、エンジン制御機能、操舵制御機能、車速制御機能などを有し、車両走行機器群7Aに走行制御信号を与える。作業制御部62は、刈取部2、脱穀装置11、穀粒排出装置13、穀稈搬送装置23などの動きを制御するために、作業装置機器群7Bに作業制御信号を与える。さらに、作業制御部62には、
図3を用いて説明した扱深さ制御部620が含まれている。
【0038】
手動操舵モードが選択されている場合、運転者による操作に基づいて、走行制御部61が制御信号を生成し、車両走行機器群7Aを制御する。自動操舵モードが選択されている場合、自動作業走行指令部63によって与えられる自動走行指令に基づいて、走行制御部61は、操舵に関する車両走行機器群7Aや車速に関する車両走行機器群7Aを制御する。
【0039】
走行経路設定部64は、制御ユニット6、携帯通信端末200、クラウドコンピュータシステム100などのいずれかで作成された自動走行のための走行経路を、走行経路をメモリに展開する。メモリに展開された走行経路は、順次自動走行における目標走行経路として用いられる。この走行経路は、手動走行であっても、コンバインが当該走行経路に沿って走行するためのガイダンスのために利用することも可能である。
【0040】
自動作業走行指令部63は、より詳しくは、自動操舵指令及び車速指令を生成して、走行制御部61に与える。自動操舵指令は、走行経路設定部64によって走行経路と、機体位置算出部66によって算出された自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを解消するように生成される。車速指令は、前もって設定された車速値に基づいて生成される。さらに、自動作業走行指令部63は、作業制御部62に、自車位置や自車の走行状態に応じて、作業装置動作指令を与える。
【0041】
画像認識モジュール5には、撮影部70によって継時的に遂次取得された撮影画像の画像データが入力される。画像認識モジュール5は、この撮影画像における認識対象物が存在する存在領域を推定し、存在領域及び存在領域が推定された際の推定確率を含む認識出力データを、認識結果として出力する。画像認識モジュール5は、深層学習を採用したニューラルネットワーク技術を用いて構築されている。
【0042】
画像認識モジュール5による認識出力データの生成の流れが、
図5及び
図6に示されている。画像認識モジュール5には、RGB画像データの画素値が入力値として入力される。この実施形態では、推定される認証対象物は雑草である。したがって、認識結果としての認識出力データには、矩形で示されている雑草生育領域と、その雑草生育領域を推定した際の推定確率が含まれる。
【0043】
図5では、推定結果は模式化されており、雑草生育領域は符号F1を付与された矩形の枠で示されている。雑草生育領域は、それぞれ4つのコーナ点で規定されるが、そのような各矩形の4つのコーナ点の撮影画像上の座標位置も推定結果に含まれている。もちろん、認証対象物としての雑草が推定されなければ、雑草生育領域は出力されず、その推定確率はゼロとなる。
【0044】
なお、この実施形態では、画像認識モジュール5は、撮影画像において認識対象物(雑草)が撮影部70から遠くに位置するほど、当該認識対象物の推定確率は低減されるように内部パラメータを設定している。これにより、撮影部70から遠く離れているために分解能が低くなっている撮影領域における認識対象物の認識を厳しくし、誤認識を低減させている。
【0045】
データ処理モジュール50は、画像認識モジュール5から出力された認識出力データを処理する。
図4及び
図6に示すように、この実施形態のデータ処理モジュール50には、雑草位置情報生成部51と統計処理部52とが含まれている。
【0046】
雑草位置情報生成部51は、撮影画像が取得された時点の機体位置と認識出力データとから、認識対象物の地図上の位置を示す雑草位置情報を生成する。認識出力データに含まれている雑草が存在する地図上の位置は、雑草を示す矩形の4つのコーナ点の撮影画像上の座標位置(カメラ座標位置)を、地図上の座標に変換することで得られる。
【0047】
撮影部70は、所定時間間隔、例えば0.5秒間隔で撮影画像を取得し、その画像データを画像認識モジュール5に入力するので、画像認識モジュール5も、同じ時間間隔で、認識出力データを出力する。したがって、撮影部70の撮影視野に雑草が入っていた場合には、複数の認識出力データが同一の雑草に対する存在領域を含むことになる。その結果、同一の雑草に対する複数の雑草位置情報が得られる。その際、各元データである認識出力データに含まれている推定確率、つまり雑草位置情報に含まれる雑草の存在領域(雑草生育領域)の推定確率は、撮影部70と雑草との間の位置関係が相違することから、違う値となることが多い。
【0048】
したがって、この実施形態では、そのような複数の雑草位置情報が記憶され、記憶された複数の雑草位置情報のそれぞれに含まれる推定確率が統計的演算される。複数の認識対象物位置情報の推定確率に対する統計的な演算を用いて、推定確率群の代表値が求められる。その代表値を用いて、複数の認識対象物位置情報を、1つの最適認識対象物位置情報に補正することができる。そのような補正の一例は、各推定確率の算術平均値又は重み平均値あるいは中間値を基準値(代表値)として求め、その基準値以上の推定確率を有する存在領域(雑草生育領域)の論理和を求め、それを最適存在領域とする補正雑草位置情報を生成することである。もちろん、これ以外の統計的演算を用いて信頼性の高い1つの雑草位置情報を生成することも可能である。
【0049】
図6に示すように、このようにして求められた雑草生育領域の地図上の位置を示す雑草位置情報は、雑草位置算出部68に与られる。雑草位置算出部68には、機体位置算出部66からの機体位置の地図座標である機体位置も与えられる。雑草位置算出部68は、雑草位置情報と、機体位置と、穀稈搬送装置23の搬送速度とに基づいて、刈取部2に刈り取られた雑草が扱深さ調整機構3を通過する通過タイミングを決定する。雑草が扱深さ調整機構3を通過している間、雑草位置算出部68は、雑草進入フラグを扱深さ制御部620に与える。
【0050】
扱深さ制御部620は、標準制御モードと雑草進入制御モードとを有しており、通常は、標準制御モードが選択されており、作業走行の間、上述した扱深さ制御が実行される。
但し、雑草位置算出部68から雑草進入フラグが与えられると、標準制御モードから雑草進入制御モードに切り替わり、雑草進入制御が実行される。この実施形態では、雑草進入制御が実行されると、扱深さ制御が中断されるとともに、車速も低減される。もちろん、雑草進入制御において、扱深さ制御の中断又は車速の低減のいずれか一方だけが行われる構成を採用してもよい。
【0051】
なお、雑草位置情報生成部51で生成された雑草位置情報は、視覚的に分かりやすい表示のために、
図7に示すようなマップ化が可能である。
図7では、雑草位置情報をマップ化した雑草マップが例示されている。雑草位置情報において推定確率が相違する雑草生育領域が含まれている場合、
図7に示すように、推定確率値の所定範囲でパターン分けされた形態で雑草生育領域を表示することも可能である。
【0052】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0053】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、画像認識モジュール5が認識する認識対象物として植立穀稈より高く伸びた雑草群が設定されていたが、その他の認識対象物、例えば、倒伏穀稈群や人物なども設定されてもよい。その際には、作業走行制御モジュール60は、倒伏穀稈群や人物の認識に応答して、必要な制御をおこなうように構成される。
(2)上述した実施形態では、画像認識モジュール5は、深層学習タイプのニューラルネットワーク技術を用いて構築されている。これに代えて、その他の機械学習技術を用いて構築された画像認識モジュール5が採用されてもよい。
(3)上述した実施形態では、画像認識モジュール5、データ処理モジュール50、雑草位置算出部68は、コンバインの制御ユニット6に組み込まれていたが、その一部又は全部は、コンバインから独立した制御ユニット、例えば、携帯通信端末200などに構築可能である。
(4)
図4で示された各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合してもよいし、又はさらに複数の機能部に分けてもよい。