(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854736
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】芝生評価装置、芝生評価方法、及び芝生管理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/00 20060101AFI20210329BHJP
A01G 20/00 20180101ALI20210329BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
A01G1/00 301C
A01G1/12 Z
A01G7/00 603
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-175838(P2017-175838)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2019-52885(P2019-52885A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀雄
【審査官】
野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−197410(JP,A)
【文献】
特開2016−191207(JP,A)
【文献】
特開2000−065706(JP,A)
【文献】
特開2001−194282(JP,A)
【文献】
特開平09−191767(JP,A)
【文献】
特開2000−214011(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0290379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/64
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に設置された芝生の健全性を評価する芝生評価装置であって、
前記地面に下部が貫入される本体部と、
前記地面に下部が貫入された状態の前記本体部を貫入方向に対して傾けるように前記本体部に付与される外力を計測する外力計測部と、
前記外力の付与による前記本体部の回動角度が所定角度になるように規制する角度規制部と、を備える、芝生評価装置。
【請求項2】
前記外力計測部は、付与された前記外力の最大値を保存する最大値保存機能を有する、請求項1に記載の芝生評価装置。
【請求項3】
前記外力計測部は、前記本体部に対して回動自在に接続された引張力測定具である、請求項1又は2に記載の芝生評価装置。
【請求項4】
前記角度規制部は、
前記本体部に設けられ、前記本体部の下部が地面に貫入された状態で前記地面よりも上方に位置し、
前記外力の付与による前記本体部の回動角度が所定角度に達したときに前記地面に接触する接地部を有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の芝生評価装置。
【請求項5】
芝生が設置された地面に貫入して前記芝生の健全性を評価する芝生評価装置であって、
下部を地面に貫入可能な棒状の貫入部を有する本体部と、
前記貫入部の前記地面への貫入方向に交差する方向に張出すように前記本体部に設けられた側方張出部と、
前記本体部に対して回動可能に接続された引張力測定具と、を備える芝生評価装置。
【請求項6】
地面に設置された芝生の健全性を評価する芝生評価方法であって、
所定の器具の下部を所定の貫入方向で前記地面に貫入させる貫入工程と、
前記器具に外力を付与して前記器具を前記貫入方向に対して傾ける外力付与工程と、
前記外力を計測する外力計測工程と、を備え、
前記外力計測工程で得られた計測値に基づいて、前記芝生の健全性を評価する芝生評価方法。
【請求項7】
前記貫入工程では、
前記器具の前記貫入方向が、前記地面に対して略直交する方向である、請求項6に記載の芝生評価方法。
【請求項8】
前記外力付与工程では、
前記外力は、前記地面に略平行な方向への引張力であり、前記器具のうち前記地面の上方に位置する部位に付与される、請求項6又は7に記載の芝生評価方法。
【請求項9】
地面に設置された芝生の管理方法であって、
請求項6〜8の何れか1項に記載の評価方法による前記外力の計測値を管理基準として前記芝生を管理する芝生管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生評価装置、芝生評価方法、及び芝生管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この分野の技術として下記特許文献1に記載の装置が知られている。この装置は、インパクトユニットが下端に取付けられたシャフトを芝生の上で揺動させ、インパクトユニットを芝生に接触させることで、芝生の耐久性等を評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-214011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような特許文献1の手法では、比較的大掛りな装置を必要とし、芝生の状態を簡易に評価することは難しい。また、芝生へのダメージも懸念される。例えば、スポーツ用の芝生を管理する場合には、細かい間隔で多数の計測ポイントで芝生の健全性を評価することが好ましい。従って、評価の作業は、簡易に実行可能であり芝生に対して可能な限りダメージを与えないものであることが望まれる。
【0005】
本発明は、簡易に実行可能で芝生へのダメージが抑えられる芝生評価装置、芝生評価方法、及び芝生管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の芝生評価装置は、地面に設置された芝生の健全性を評価する芝生評価装置であって、地面に下部が貫入される本体部と、地面に下部が貫入された状態の本体部を貫入方向に対して傾けるように本体部に付与される外力を計測する外力計測部と、外力の付与による本体部の回動角度が所定角度になるように規制する角度規制部と、を備える。
【0007】
芝生においては、地面に張られた根の密度が芝生の健全性を示す指標になり得る。ここで、本発明の芝生評価装置の本体部の下部を地面に貫入させ、外力を付与して本体部を傾ける場合を考える。この場合、地面に張られた芝生の根の密度と、上記外力の大きさとの間には相関関係がある。すなわち、根の密度が高いほど必要な外力は大きく、根の密度が低いほど必要な外力は小さくなる。従って、上記の芝生評価装置によれば、地面に本体部の下部を貫入させ外力で所定角度傾け、その外力を計測するといった簡易な操作によって芝生の根の密度が定量的に評価可能であり、ひいては芝生の健全性が定量的に評価可能である。また、角度規制部によって本体部の回動角度が規制されるので、再現性良く上記の操作が可能になる。また、このとき損傷される芝生の面積は、本体部の下部の断面積よりもやや大きい程度と考えられ、芝生へのダメージも抑えられる。
【0008】
外力計測部は、付与された外力の最大値を保存する最大値保存機能を有することとしてもよい。この場合、本体部が外力で回動する間の外力の最大値を健全性の評価指標にすることができる。
【0009】
外力計測部は、本体部に対して回動自在に接続された引張力測定具であってもよい。この種の引張力測定具は、小型の汎用の測定具を用いて構成可能であるので、装置の取扱いや移動が容易になる。
【0010】
角度規制部は、本体部に設けられ、本体部の下部が地面に貫入された状態で地面よりも上方に位置し、外力の付与による本体部の回動角度が所定角度に達したときに地面に接触する接地部を有するようにしてもよい。この構成により、本体部の外力による回動角度を簡易な構成で規制することができる。
【0011】
本発明の芝生評価装置は、芝生が設置された地面に貫入して芝生の健全性を評価する芝生評価装置であって、下部を地面に貫入可能な棒状の貫入部を有する本体部と、貫入部の地面への貫入方向に交差する方向に張出すように本体部に設けられた側方張出部と、本体部に対して回動可能に接続された引張力測定具と、を備える。
【0012】
本発明の芝生評価方法は、地面に設置された芝生の健全性を評価する芝生評価方法であって、所定の器具の下部を所定の貫入方向で地面に貫入させる貫入工程と、器具に外力を付与して器具を貫入方向に対して傾ける外力付与工程と、外力を計測する外力計測工程と、を備え、外力計測工程で得られた計測値に基づいて、芝生の健全性を評価する。
【0013】
器具の下部を地面に貫入させ外力を付与して器具を傾ける場合、地面に張られた芝生の根の密度が高いほど必要な外力は大きく、根の密度が低いほど必要な外力は小さくなる。従って、上記の芝生評価方法によれば、地面に器具の下部を貫入させ外力で傾け、その外力を計測するといった簡易な操作によって芝生の根の密度が定量的に評価可能であり、ひいては芝生の健全性が定量的に評価可能である。また、このとき損傷される芝生の面積は、器具の下部の断面積よりもやや大きい程度と考えられ、芝生へのダメージも抑えられる。
【0014】
貫入工程では、器具の貫入方向が、地面に対して略直交する方向であるようにしてもよい。この場合、器具を外力で傾ける操作は、器具が地面に略直交する状態から開始されるので、芝生の捲れ上がり等が発生する可能性が低く、芝生へのダメージが抑えられる。
【0015】
外力付与工程では、外力は、地面に略平行な方向への引張力であり、器具のうち地面の上方に位置する部位に付与されることとしてもよい。器具の一部を地面に略平行に引っ張るという操作では、例えば器具を押す動作に比較して適切に外力を付与することができる。
【0016】
本発明の芝生管理方法は、地面に設置された芝生の管理方法であって、上記何れかの評価方法による外力の計測値を管理基準として芝生を管理する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易に実行可能で芝生へのダメージが抑えられる芝生評価装置、芝生評価方法、及び芝生管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る芝生評価装置を示す正面図である。
【
図2】(a)〜(c)は、芝生評価装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明に係る芝生評価装置、芝生評価方法、及び芝生管理方法の一実施形態について詳細に説明する。以下において、「右」、「左」、「上」、「下」等の語を位置関係の説明に用いる場合には、各図面に示される状態の左右方向、上下方向に対応させるものとする。
【0020】
本実施形態で評価対象又は管理対象とされる芝生50(
図2参照)は、スポーツ施設(例えば、野球場、サッカー場、ゴルフ場等)において地面に設置されたスポーツ用芝生である。芝生50は、スポーツ施設において人工的に造られた床土の上に設置され、所定の深さまで根を張っている。地面下に張った芝生50の根がマット状をなす層はルートマット層51と呼ばれ、ルートマット層51の厚さは有効土壌厚さと呼ばれる場合がある。スポーツ用芝生には、競技で作用する力によって容易に損傷したり剥離したりしないように、芝生の健全性の評価及び管理が重要である。ルートマット層51における芝生の根の密度は、芝生の健全性を示す指標になり得る。
【0021】
図1は実施形態に係る芝生評価装置1の正面図であり、
図2(a)〜(c)はその使用状態を示す図である。芝生評価装置1は、金属性の本体部3(器具)と、本体部3の上部に接続された荷重計5(外力計測部、引張力測定具)とを備えている。本体部3は金属棒材で形成されている。本体部3は、上下に直線状に延びる棒状の貫入部7と、貫入部7の上端にリング状に設けられたハンドル部9と、を有している。貫入部7は、例えば直径5mm程度の金属丸棒材で形成されている。更に本体部3は、貫入部7の上端から、左方に張出す側方ガイド部11(角度規制部、側方張出部)を有している。側方ガイド部11は貫入部7に交差する方向に直線状に延在する棒状の部分である。側方ガイド部11は貫入部7に直交してもよい。貫入部7、ハンドル部9、及び側方ガイド部11は、一体として本体部3を形成しており、貫入部7、ハンドル部9、及び側方ガイド部11は、互いに変位しない。
【0022】
荷重計5は、フック状の載荷部13と把手部15との間に作用する引張力を計測するものである。荷重計5としては、小型の汎用の機械式のバネ秤等を採用することができる。荷重計5の載荷部13はハンドル部9の左端に回動自在に接続されている。載荷部13とハンドル部9との接続構造の一例として、ハンドル部9の左端に小リング17が接合されており、小リング17と載荷部13とがスイベル金具19を介して接続されている。小リング17とスイベル金具19とのクリアランス、スイベル金具19の回転ジョイント、及びスイベル金具19と載荷部13とのクリアランスにより、荷重計5は本体部3に対して2軸方向に自在に回動することができる。なお、スイベル金具19に限られず、例えば、載荷部13と小リング17とが紐体などで接続されてもよい。
【0023】
続いて、上述の芝生評価装置1を用いた芝生評価方法について
図2を参照しながら説明する。この芝生評価方法では、以下に説明する貫入工程と、外力付与工程と、外力計測工程と、評価工程と、が順に実行される。以下に説明する例では、芝生50が設置された地面60は水平であるものとする。
【0024】
(貫入工程)
貫入工程では、
図2(a)に示されるように、地面60に対して本体部3の貫入部7の下部を貫入する。貫入方向は地面60に対して直交する方向(ここでは、鉛直下向き)とする。貫入部7の貫入深さL1は予め定められている。このように、貫入部7が貫入深さL1で地面60に直角に貫入されたとき、側方ガイド部11は地面60から上方に離れて位置する状態になる。貫入部7には、下端から距離L1の位置に目印21(
図1参照)が設けられている。これにより、作業者は、目印21を確認しながら、正確な貫入深さL1で貫入部7を貫入することができる。図に示されるように、作業者は、本体部3のハンドル部9を把持することで、当該貫入工程を容易に実行することができる。この貫入工程により、貫入部7の下部が芝生50のルートマット層51に進入する。ルートマット層51の性状が評価結果に正確に反映されるように、貫入深さL1は例えば5cmとされる。以下、貫入部7のうち地面60に貫入された部分を貫入部分7aと呼ぶ。
【0025】
(外力付与工程)
外力付与工程では、本体部3に外力を付与して当該本体部3を貫入方向(鉛直方向)に対して傾ける。具体的には、
図2(b)に示されるように、作業者は、荷重計5の把手部15を地面60と平行な方向(水平方向)にゆっくりと引っ張る。そうすると、本体部3は、荷重計5を介して引っ張られ、反時計回りに回動し、鉛直方向に対して傾倒する。また、本体部3は上記の回動のみならず、左方向に僅かに並進移動する。このとき、貫入部分7aはルートマット層51及び芝生50の表層の抵抗力を受けながら回動及び並進移動をすることになり、この抵抗力が作業者による把手部15の引張力に対応する。このような把手部15の引張操作は、
図2(c)に示されるように、引張方向を水平に維持しながら本体部3の回動角度が所定の角度αに達するまで継続され、角度αに達したときに終了される。
【0026】
ここで、本体部3の回動角度が角度αに達したことを作業者が正確に知るために、本体部3の側方ガイド部11が次のように設定されている。すなわち、上記引張操作によって本体部3が反時計回りに角度α回動したときに、側方ガイド部11の先端部11a(接地部)がちょうど地面60に接触するように設定されている。この設定を実現するためには、幾何学的な考察に基づいて側方ガイド部11の長さが適宜調整されればよい。
【0027】
上記の構成により、引張操作による本体部3の回動角度がちょうど角度αになるように規制される。また、側方ガイド部11の先端部11aが地面60に突き当たることにより、それ以上の本体部3の回動が防止される。作業者は、側方ガイド部11の先端部11aが地面60に達したときに、引張操作を終了すればよい。また、本体部3の過剰な回動が避けられるので、貫入部分7aが必要以上に芝生50を損傷すること(例えば、芝生50が捲れ上がる等)が避けられる。なお、角度αは、例えば20〜30°に設定される。
【0028】
(外力計測工程)
外力計測工程では、上記の外力付与工程で付与される外力の大きさが計測される。具体的には、引張操作が継続している間の引張力の最大値(以下「引張力最大値」)が取得される。すなわち、本体部3の貫入部分7aを地面60に鉛直に貫入させた状態から、本体部3の小リング17に水平の引張力を付与して本体部3を角度α傾けるまでの引張力の最大値が引張力最大値である。引張操作中の各瞬間における引張力は荷重計5への荷重として常時表示されるので、作業者は、引張操作中に荷重計5の荷重値表示を常時目視することで、引張力最大値を取得してもよい。
【0029】
また、荷重計5は、計測した荷重の最大値を保存する最大値保存機能を有してもよい。この場合、引張操作中に発生した引張力の最大値が保存され、保存された最大値を引張力最大値として得ることができる。従って、作業者が引張操作をしながら荷重計5の目盛りを読むという煩雑な操作が不要になる。例えば、荷重計5としては、
図1に示されるように、荷重目盛盤23と、荷重目盛盤23上を荷重に応じて機械的に移動する荷重指針27とを有するタイプのものを用いることができる。この場合、荷重目盛盤23上に、荷重指針27によって高荷重側に不可逆的に押し動かされるコマ(図示せず)などを設ければ、最大値保存機能が実現可能である。また、荷重計5として電子式の秤を採用してもよい。この場合、最大値保存機能は、電子式の秤に内蔵される制御プログラムによって実現されてもよい。
【0030】
(評価工程)
評価工程では、外力計測工程で得られた引張力最大値に基づいて芝生50の健全性が評価される。具体的には、引張力最大値と芝生の健全性との相関関係が事前の試験等によって既知になっている。例えば、引張力最大値がF2〜F3[N]の場合はスポーツ用芝生として適切に使用可能、引張力最大値がF1[N]未満の場合はスポーツ用芝生としては使用不可能、引張力最大値がF4[N]より大の場合は根詰まりのため更新処理が必要、といったような情報が相関関係として既知である。この既知の相関関係に照らして、外力計測工程で得られた引張力最大値に基づいて芝生の健全性が評価される。
【0031】
上記相関関係におけるF1,F2,F3,F4の数値は、本体部3の各部位の寸法等に依存するので、本体部3の仕様ごとに事前に試験を行って決定すればよい。すなわち、引張力最大値と芝生の健全性との相関関係は、
図1に示されるような貫入部分7aの長さL1、貫入部分7aの径D、貫入部7と小リング17との水平距離L2、貫入部分7aの上端(目印21)と小リング17との高低差L3等に依存すると考えられる。従って、本体部3の上記のような各部の寸法は適宜変更されてもよいが、この場合、寸法に対応した相関関係(F1〜F4の値)を事前の試験等で準備する必要がある。
【0032】
また、上記相関関係は、外力付与工程における初期状態は地面60と貫入部7とが直交した状態とする、外力付与工程における引張方向を地面60に平行とする、引張操作は本体部3の回動角度が角度αになるまで行う、といったような計測条件にも依存すると考えられる。従って、上記の計測条件は適宜変更されてもよいが、この場合、計測条件に対応した相関関係(F1〜F4の値)を事前の試験等で準備する必要がある。
【0033】
続いて、上述の芝生評価方法を用いた芝生管理方法について説明する。この芝生管理方法では、上述の芝生評価方法で得られる引張力最大値を管理基準として芝生が管理される。例えば、芝生管理方法では、スポーツ施設の芝生について、所定の間隔(例えば3m間隔)で設定された計測ポイントごとに上述の芝生評価方法による評価が行われる。例えば、競技中に頻繁に選手が存在する領域(例えば、野球の守備の定位置等)では、計測ポイントの間隔を狭くするようにしてもよい。引張力最大値がF2未満の領域又はF3より大の領域については芝生に対して必要な措置を行い、引張力最大値F2〜F3が維持されるように管理する。
【0034】
続いて、本実施形態の芝生評価装置1、芝生評価方法、及び芝生管理方法による作用効果について説明する。
【0035】
芝生においては、地面に張られた根の密度が芝生の健全性を示す指標になり得る。芝生評価装置1の貫入部分7aを地面60に貫入させ、外力で本体部3を傾ける場合には、地面60に張られた芝生50の根の密度と、上記外力の大きさとの間に相関関係があると考えられる。すなわち、根の密度が高いほど必要な外力は大きく、根の密度が低いほど必要な外力は小さくなると考えられる。
【0036】
従って、上述の芝生評価装置1及び芝生評価方法によれば、地面60に本体部3の下部を貫入させ外力で所定角度傾け、その外力を計測するといった簡易な操作によって、ルートマット層51における芝生50の根の密度が定量的に評価可能であり、ひいては芝生50の健全性が定量的に評価可能である。また、本体部3の側方ガイド部11によって本体部3の回動角度が規制されるので、再現性良く上記の操作が可能になる。また、上記の操作によって損傷される芝生50の面積は、貫入部分7aの断面積よりもやや大きい程度と考えられ、芝生50へのダメージも抑えられる。
【0037】
芝生評価装置1には、金属棒材からなる本体部3や小型の汎用の荷重計5といった比較的小型軽量の要素が使用されるので、取扱いや移動が容易である。従って、スポーツ用芝生の多数の計測ポイントを移動しながらの計測が容易になる。
【0038】
貫入工程では、貫入部分7aの貫入方向が、地面60に対して略直交する貫入方向で貫入部分7aを貫入している。これによれば、貫入部分7aが地面60に略直交する状態から外力付与工程が開始されるので、貫入部分7aの動きによって芝生50が捲れ上がる可能性が低く、芝生50へのダメージが抑えられる。
【0039】
外力付与工程では、本体部3の上部を地面60に略平行に引張ることで、本体部3を傾けるための外力を付与している。このように、本体部3を地面60に略平行に引っ張るといった操作では、例えば本体部3を押す動作に比較して適切に外力を付与することができる。
【0040】
本実施形態の芝生管理方法は、本実施形態の芝生評価方法による評価を用いることで、簡易に、かつ芝生へのダメージを抑えて、芝生を管理することができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0042】
例えば、実施形態では、評価及び管理の対象の芝生が天然芝生であることを前提に説明したが、本発明は人工芝生にも同様に適用可能である。また、実施形態では、荷重計5が本体部3に対して2軸方向に回動可能であるが、外力付与工程における引張方向を地面60と平行な方向に維持することができれば、1軸方向のみに回動可能であってもよい。例えば、
図2において紙面に直交する軸をもつヒンジを介して本体部3と荷重計5とが接続されてもよい。また、実施形態のように本体部3が一体に形成することは必須ではなく、本体部3は複数部材の組み合わせで構成されてもよい。
【0043】
また、貫入工程で地面60に直角に貫入部7を貫入することも必須ではない。すなわち、外力付与工程における外力付与前の初期状態としては、地面60と貫入部7とが直交していなくてもよい。例えば、外力付与工程は、鉛直方向から右側に角度α/2で傾斜した本体部3に対し、左側に角度α/2で傾斜するまで左方向への引張操作をする、といったものであってもよい。但しこの場合には、前述したように、上記の引張操作による引張力最大値と芝生の健全性との相関関係を事前の試験等で準備する必要がある。また、実施形態では貫入部分7aは丸棒形状であるが、この形状には限定されず、ルートマット層からの抵抗力を調整するために、貫入部分7aの形状が適宜調整されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…芝生評価装置、3…本体部(器具)、5…荷重計(外力計測部、引張力測定具)、11…側方ガイド部(角度規制部)、11a…先端部(接地部)、50…芝生、60…地面。