(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のタッチセンサの斜視図であり、
図2は、本実施の形態のタッチセンサの断面図である。
【0012】
図1および
図2に示すように、本実施の形態のタッチセンサ30は、センサホルダ32とセンサ部31とを有する。センサホルダ32は、中空絶縁部(円筒状の絶縁部)32aと、土台部32bと、を有する。中空絶縁部32aと土台部(弾性基部)32bとは、弾性変形可能な絶縁体により構成されている。なお、
図2中の二点鎖線は、中空絶縁部32aと土台部32bとの境界部分を示している。中空絶縁部32aと土台部32bとは、例えば、エラストマーを押し出し成形等することで一体として、長尺に形成することができる。
【0013】
中空絶縁部32aは、上記センサ部31を内包する。センサ部31は、円筒状をなす内側絶縁体(絶縁チューブ)31aと、内側絶縁体31aの内部に配置された2本の電極線(電極)31b、31cとを有する。各電極線31b、31cは、それぞれ、可撓性を有する導電ゴム等よりなる導電チューブ31dと、その内部の複数の銅線よりなる導電線31eを有する。そして、2本の電極線31b、31cは、内側絶縁体31aの内壁に2重螺旋構造となるように圧着されている。即ち、2本の電極線31b、31cは、内側絶縁体31aの内側において周方向に等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に配置されるとともに、互いの間隔(周方向の間隔)を一定に維持したまま、それぞれ螺旋状に延びている。別の言い方をすれば、2本の電極線31b、31cは、内側絶縁体31aの内側において、互いに離間した状態で撚り合わされた状態で配置されている。
【0014】
土台部32bは、中空絶縁部32aの長手方向に沿うよう一体に設けられ、貼付面32cを有する。この貼付面32cは、タッチセンサ30の外周面の一部で、帯状の平面部であり、中空絶縁部32aの長手方向の一端から他端に亘って形成されている。この貼付面32cを両面テープ33により被取付体と接着することにより、タッチセンサ30が被取付体(例えば、後述するブラケット40)に固定される(
図14参照)。
【0015】
なお、図中上下方向を高さ方向としたときに、中空絶縁部32aおよび土台部32bは、互いに高さ方向に重ねられ、土台部32bは、中空絶縁部32aと滑らかに連結されるように、一対の傾斜面TPを介して連結されている(
図1、
図2参照)。また、この高さ方向と交差する方向である図中左右方向を幅方向としたときに、中空絶縁部32aの幅寸法W1は、土台部32bの幅寸法W2よりも小さい(W1<W2)。
【0016】
両面テープ33は、例えば、支持体33bの両面に塗布された第1粘着剤33a、第2粘着剤33cと、第2粘着剤33cの一方の側を覆う剥離ライナー33dとを有する(
図1、
図2)。そして、第1粘着剤33aが、剥離ライナー33d上に位置するように捲回した状態で保存される。
【0017】
図3は、粘着剤と被着体の接着メカニズムを示す模式図である。
図3(a)に示す被着体35と粘着剤33aとが圧着荷重により接触し、粘着剤33aが濡れ広がる(
図3(b))。その後、所定の養生時間を置くと、粘着剤33aの表面の極性が変化し、粘着剤33aの構成分子と被着体35の構成分子との分子間力が大きくなり、粘着剤33aと被着体35とがより密着する。粘着剤33aの表面の極性の変化は、粘着剤33aの表面が疎水性から親水性になる変化である。この変化は、粘着剤33aの構成分子(高分子)の親水性の部位が粘着剤33aの表面に移動することにより生じる。
【0018】
図3(b)の右側の図は、粘着剤33aの表面が疎水性から親水性になる様子を示す模式図であり、
図3(d)は、疎水性セグメントと親水性セグメントとを有する粘着剤33aの構成図示す図である。
図3(d)において、疎水性セグメントは、直線で、親水性セグメントは、丸で示してある。例えば、
図3(d)に示すアクリル系粘着剤は、アクリル酸やアクリル酸エステルの重合体であり、親水性であるカルボニル基(C=O)とその両側の疎水性の基を有する。そして、接着当初、粘着剤33aの表面には、疎水性セグメントが存在しているが(
図3(b)の右上図)、次第に、粘着剤33aの表面に、親水性セグメントが出てくる(
図3(b)の右下図)。その結果、粘着剤33aの構成分子と被着体35の構成分子との分子間力が大きくなり、粘着剤33aと被着体35との接着性が高くなる(
図3(c))。
【0019】
しかしながら、本発明者が検討したところ、タッチセンサ30の貼付面32cに両面テープ(粘着剤33a)33が貼り付き難いということが判明した。タッチセンサ30は、前述したように、エラストマーのような弾性変形可能な絶縁体よりなり、このような材料は難粘着性であることが多い。特に、オレフィン系エラストマー(ブチルゴム、エチレンプロピレンなど)は、アクリル系粘着剤とSP値の差が大きく、アクリル系粘着剤が付きにくい。
例えば、ブチルゴムのSP値は7.7〜8.1、エチレンプロピレンのSP値は8であり、ポリメタクリル酸メチルのSP値は9.1〜9.5であり、その差は、1以上である。
【0020】
そこで、タッチセンサ30の貼付面32cにプラズマ処理を施し、タッチセンサ30の貼付面32cの表面を改質することで、タッチセンサ30の貼付面32cと両面テープ(粘着剤33a)33との接着性を向上させる。
図1、
図2において、32dは、プラズマ処理を施した、プラズマ処理部である。
【0021】
[実施例]
以下に、本実施の形態のタッチセンサの貼付面のプラズマ処理の具体的な実施例について説明する。
図4は、プラズマ処理工程を示す断面図である。
【0022】
まず、
図1に示すタッチセンサ30の土台部32bと同じ材料(オレフィン系エラストマー)からなるテストピースT準備する。このテストピースTの短辺方向の断面は矩形状である。このテストピースTの上面をタッチセンサ30の貼付面32cとし、プラズマ処理を施した。即ち、テストピースTの貼付面32cにプラズマ処理装置からプラズマ化した気体を吹き付けた。プラズマ処理装置(プラズマ照射装置)は、ケースCS内部に電極ELを有する。このケースCSと電極ELとの間に高電界を印加するとともに、ケースCS内に導入されたガスをプラズマ化しつつ、プラズマ化されたガスを貼付面32cに吹き付けた(
図4)。ここでは、ガスとして、大気(空気)を用い、プラズマ処理装置のノズル先端と貼付面32cとの距離は15mmとした。大気中には、酸素、窒素、二酸化炭素などが含まれる。プラズマ処理装置としては、プラズマトリート社製(FG5001)を用いた。なお、プラズマ処理を行っていないテストピースTの貼付面32cをサンプルS0(リファレンス)とした。
【0023】
以下の実施例1〜16および比較例1〜4の表面処理を行い、表面処理後の表面の状態を共焦点顕微鏡にて観察し、表面粗さを求めた。また、表面の硬度を測定した。また、せん断剥離強度を測定した。表面粗さは、ISO25178により求めた。また、硬度は、デュロメータA硬度計により求めた。また、せん断剥離強度は、テストピースTとSUS部材とをアクリル系粘着剤よりなる両面テープ(3M製GTシリーズ)を介して接着し、テストピースT側とSUS部材側を引っ張り、剥離した時点での引張強度を測定した。なお、プラズマ処理を行っていないテストピースTの貼付面32cであるサンプルS0(リファレンス)も、同様にして、共焦点顕微鏡にて観察し、表面粗さ、表面の硬度、せん断剥離強度を測定した。
【0024】
(実施例1)
プラズマ処理装置を300mm/sの速度でテストピースTの貼付面32c上に走査することにより表面処理を施し、サンプルS1とした。
【0025】
(実施例2)
実施例1の走査を2回行い、サンプルS2とした。
【0026】
(実施例3)
実施例1の走査を3回行い、サンプルS3とした。
【0027】
(実施例4)
実施例1の走査を4回行い、サンプルS4とした。
【0028】
(実施例5)
プラズマ処理装置を200mm/sの速度でテストピースTの貼付面32c上に走査することにより表面処理を施し、サンプルS5とした。
【0029】
(実施例6)
実施例5の走査を2回行い、サンプルS6とした。
【0030】
(実施例7)
実施例5の走査を3回行い、サンプルS7とした。
【0031】
(実施例8)
実施例5の走査を4回行い、サンプルS8とした。
【0032】
(実施例9)
プラズマ処理装置を100mm/sの速度でテストピースTの貼付面32c上に走査することにより表面処理を施し、サンプルS9とした。
【0033】
(実施例10)
実施例9の走査を2回行い、サンプルS10とした。
【0034】
(実施例11)
実施例9の走査を3回行い、サンプルS11とした。
【0035】
(実施例12)
実施例9の走査を4回行い、サンプルS12とした。
【0036】
(実施例13)
プラズマ処理装置を50mm/sの速度でテストピースTの貼付面32c上に走査することにより表面処理を施し、サンプルS13とした。
【0037】
(実施例14)
実施例13の走査を2回行い、サンプルS14とした。
【0038】
(実施例15)
実施例13の走査を3回行い、サンプルS15とした。
【0039】
(実施例16)
実施例13の走査を4回行い、サンプルS16とした。
【0040】
(比較例1)
プラズマ処理装置を10mm/sの速度でテストピースTの貼付面32c上に走査することにより表面処理を施し、サンプルS17とした。
【0041】
(比較例2)
比較例1の走査を2回行い、サンプルS18とした。
【0042】
(比較例3)
比較例1の走査を3回行い、サンプルS19とした。
【0043】
(比較例4)
比較例1の走査を4回行い、サンプルS20とした。
【0044】
(結果)
図5に、リファレンス、実施例1〜16および比較例1〜4のせん断剥離強度(kPa)を示す。
図5に示すように、実施例1〜16および比較例1〜4のプラズマ処理を行ったサンプル(S1〜S20)は、未処理のリファレンス(サンプルS0)よりせん断剥離強度が高かった。なお、サンプルS6、S10、S15においては、SUS部材と両面テープとの間が剥離した。
【0045】
また、実施例1〜4のサンプルS1〜S4から分かるように、走査回数が多くなるに伴い、せん断剥離強度が高くなる傾向が見られた。実施例13〜16(サンプルS13〜S16)についても類似の傾向が見られた。
【0046】
また、実施例1、5のサンプルS1、S5から分かるように、走査速度が遅くなるに伴い、せん断剥離強度が高くなる傾向が見られた。
【0047】
以上の事象から、プラズマに晒される時間が大きい方が、せん断剥離強度が高くなる傾向が見られる。しかしながら、比較例1〜4のサンプルS17〜S20に示すように、プラズマ処理装置を10mm/sと遅くした場合においては、せん断剥離強度は、未処理の場合より大きいものの、実施例1〜16(S1〜S16)と比較し、せん断剥離強度が低下している。
【0048】
このように、プラズマ処理条件において、好ましい範囲があることが判明した。
【0049】
図6に、リファレンス、実施例1〜16および比較例1〜4の表面(プラズマ処理面)の硬度を示す。
【0050】
図6に示すように、比較例1〜4のプラズマ処理を行ったサンプル(S17〜S20)については、表面(プラズマ処理面)の硬度が、リファレンス(S0)および実施例1〜16(S1〜S16)比べ著しく低下している。例えば、リファレンス(S0)の硬度が72であるのに対し、比較例1〜4(S17〜S20)の硬度は68以下である。
【0051】
図7に、リファレンス(S0)、実施例1(S1)、実施例5(S5)、実施例6(S6)、実施例9(S9)、実施例10(S10)、実施例13(S13)および比較例1(S17)の共焦点顕微鏡写真および表面粗さを示す。
【0052】
図7に示すように、比較例1(S17)については、表面粗さが、リファレンス(S0)、実施例1(S1)、実施例5(S5)、実施例6(S6)、実施例9(S9)、実施例10(S10)、実施例13(S13)と比較し、大きい。
【0053】
図8に、リファレンス(S0、未処理)、実施例1(S1、300mm/s)、実施例5(S5、200mm/s)、実施例9(S9、100mm/s)、実施例13(S13、50mm/s)および比較例1(S17、10mm/s)の表面の構成元素の分析結果(FT−IR分析結果)を示す。
【0054】
図8に示すように、リファレンス(S0、未処理)と比較し、実施例1(S1、300mm/s)、実施例5(S5、200mm/s)、実施例9(S9、100mm/s)、実施例13(S13、50mm/s)および比較例1(S17、10mm/s)においては、カルボニル基(C=O)が検出され(aで囲んだ部分)、プラズマに晒される時間が大きくなるにしたがって、カルボニル基(C=O)の検出量が大きくなる傾向が確認できた。
【0055】
また、リファレンス(S0、未処理)と比較し、実施例1(S1、300mm/s)、実施例5(S5、200mm/s)、実施例9(S9、100mm/s)、実施例13(S13、50mm/s)および比較例1(S17、10mm/s)においては、ヒドロキシル基(OH)が検出され(bで囲んだ部分)、プラズマに晒される時間が大きくなるにしたがって、ヒドロキシル基(OH)の検出量が大きくなる傾向が確認できた。
【0056】
なお、
図8においては、プラズマ処理装置の走査速度を400mm/sとしたサンプルについての分析結果も示した。
【0057】
(考察)
上記の結果から、プラズマ処理により、エラストマーの表面(貼付面32c)が改質され、両面テープとの接着強度が向上したと考えられる。特に、表面にカルボニル基(C=O)が付与され、エラストマーの表面がより親水性となることで、両面テープとの接着強度が向上したと考えられる。また、ヒドロキシル基(OH)の付与によっても、エラストマーの表面(32c)がより親水性となり、両面テープとの接着強度が向上したと考えられる。
【0058】
図9、
図10は、本実施の形態における粘着剤と被着体の接着メカニズムを示す模式図である。
図9(a)に示すようにエラストマーの表面には、ポリマーとして少なくとも炭素の直鎖構造を有する炭素化合物が存在し、このエラストマーの表面(32c)に、例えば、大気(空気)のような酸素を含有するガスを用いたプラズマ処理を施すと、
図9(b)に示すように、酸素分子プラズマや酸素原子プラズマが生じ、エラストマーと反応し、カルボニル基(C=O)が形成される(
図9(c))。また、ヒドロキシル基(OH)が形成される。カルボニル基(C=O)や、ヒドロキシル基(OH)の生成により、エラストマーの表面(32c)が改質される。即ち、より親水性となる。
【0059】
図10に示すように、その表面が改質されたエラストマー(
図10(a))に、
図10(b)に示すように、両面テープ33の粘着剤33a側を貼り付けると、エラストマーと粘着剤33aとが圧着荷重により接触し、粘着剤33aが濡れ広がる。その後、所定の養生時間を置くと、粘着剤33aの構成分子(高分子)の親水性の部位が粘着剤33aの表面に移動することにより粘着剤33aの表面の極性が変化する。即ち、粘着剤33aの表面が疎水性から親水性になる。ここで、本実施の形態においては、エラストマーの表面(32c)が改質され、より親水性となっているため、粘着剤33aの構成分子とエラストマーの構成分子との分子間力が大きくなり、粘着剤33aとエラストマーとがより密着することとなる。
【0060】
但し、比較例のように、プラズマ処理時間が大きくなりすぎると、エラストマーの表面が変質し、エラストマーの表面の硬度が低下するとともに、接着強度が低下したと考えられる。
【0061】
このように、プラズマ処理において、好適な範囲があり、例えば、プラズマ処理の程度を、エラストマーの表面の硬度やエラストマーの表面粗さを指標としてその範囲を規定することができる。
【0062】
例えば、硬度の低下が、リファレンス(S0)と比較し、3以下、より好ましくは、2以下となるように、プラズマ処理を行うことが好ましい。また、表面粗さが、3.2未満となるように、プラズマ処理を行うことが好ましい。
【0063】
(応用例1)
上記実施例においては、
図4に示すプラズマ処理装置を用い、プラズマ化されたガスを貼付面32cに吹き付けたが、他の構成のプラズマ処理装置を用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0064】
図11は、プラズマ処理工程を示す断面図である。このプラズマ処理装置(プラズマ照射装置)は、ケースCSおよび電極EL1、EL2を有する。そして、電極EL1、EL2は、ケースCSのノズルから突出している。この電極EL1、EL2間に高電界を印加し、ノズル先端の大気をプラズマ化することで、タッチセンサの貼付面32cのプラズマ処理を行ってもよい。
【0065】
このように、酸素の存在下においてプラズマ処理を施せば良く、
図4のように、酸素を含むガスをプラズマ雰囲気中を通し、プラズマ化した酸素分子または酸素原子をタッチセンサの貼付面32cに吹付けてもよく、
図11のように、酸素を含む雰囲気中に配置された電極間に電位を印加することにより、酸素の分子または原子をプラズマ化し、プラズマ化した酸素分子または酸素原子を貼付面32cに接触させてもよい。
【0066】
(応用例2)
図4に示すプラズマ処理装置において、ケースCSのノズル部を回転させながら、プラズマ化されたガスを貼付面32cに吹き付けてもよい。本発明者の検討によれば、種々のプラズマ処理装置を用いて表面処理を行い、タッチセンサの貼付面32cの接着性の向上が図れることを確認している。
【0067】
(応用例3)
本実施の形態においては、タッチセンサの貼付面32cにプラズマ処理を施したが、UV処理を行ってもよい。本発明者の検討によれば、UV照射処理によっても、表面にカルボニル基(C=O)や、ヒドロキシル基(OH)が付与されることが判明している。よって、UV処理によっても、タッチセンサの貼付面32cの接着性の向上が図れる。
【0068】
但し、UV処理の処理速度は、例えば、1.7〜20mm/s程度であり、プラズマ処理によれば、より高速での表面処理を行うことができ、UV処理より有効である。
【0069】
(応用例4)
図1、
図2に示すタッチセンサ30においては、土台部32bの幅寸法W2を中空絶縁部32aの幅寸法W1よりも大きくしたが、これらを同程度としてもよい(W1≒W2)。このように、タッチセンサ30の外形は適宜変更可能であり、タッチセンサ30の外周面に平坦な貼付面を有していればよい。そして、この貼付面に実施の形態1や実施例で説明したプラズマ処理を施せば良く、例えば、プラズマ処理の後において、貼付面の硬度と、タッチセンサ30の外周面のうち、貼付面以外の面の硬度との差は3以下である。
【0070】
(応用例5)
本実施の形態においては、タッチセンサの貼付面32cの構成材料として、オレフィン系エラストマー(ブチルゴム、エチレンプロピレンなど)を、両面テープ33の粘着剤33aとして、アクリル系粘着剤を例示したが、他の材料を用いてもよい。タッチセンサの貼付面32cの構成材料としては、ポリマーとして少なくとも炭素の直鎖構造を有する炭素化合物(炭素原子が直鎖に結合した構造部を有する高分子)であれば良く、また、粘着剤としては、疎水性セグメント(疎水性の部位)と親水性セグメント(親水性の部位)とを有する化合物であればよい。
【0071】
但し、オレフィン系エラストマー(ブチルゴム、エチレンプロピレンなど)は、汎用性があり、また、ブラケットに沿った変形や接着が可能であり、タッチセンサに用いて好適である。また、アクリル系粘着剤は、汎用性があり、タッチセンサに用いて好適である。
【0072】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1において説明したタッチセンサの適用箇所の一例について説明する。本実施の形態においては、車体のドアパネルにタッチセンサを適用する場合について説明する。
【0073】
タッチセンサ30はタッチセンサユニット20に組み込まれる。即ち、後述するように、タッチセンサ30のセンサ部31の一端(先端側)および他端(基端側)には、それぞれ必要な部品が取り付けられ、さらに、タッチセンサ30は、ブラケット40に取り付けられる。
【0074】
図12〜
図14はタッチセンサユニットの一部を示す斜視図である。
図12はタッチセンサユニットの一部であって、センサ部の先端側を示す斜視図である。
図12のA−A部のタッチセンサは、前述の
図2に対応する。
図13はタッチセンサユニットの一部であって、センサ部の基端側を示す斜視図である。
図14はタッチセンサユニットの一部であって、ブラケットへ固定されたタッチセンサの部分を示す斜視図である。
図15はタッチセンサユニットを備えたテールゲートの正面図、
図16は
図15の車両の後方側を側方から見た側面図である。
【0075】
タッチセンサユニット20のうち、センサ部31の先端側には、
図12に示すように、絶縁体よりなるセパレータSPと、1つの抵抗Rと、2つのかしめ部材SWと、が設けられている。そして、これらのセパレータSP、抵抗Rおよび各かしめ部材SWは、モールド樹脂MRの内部にインサート成形により埋設されている。
【0076】
抵抗Rの両端部には、長尺接続部P1と短尺接続部P2とが設けられている。そして、長尺接続部P1を短尺接続部P2に対して180度折り返すことで、長尺接続部P1および短尺接続部P2は、各電極線31b、31cの導電線31eに対して、各かしめ部材SWによりそれぞれ電気的に接続されている。このように、各電極線31b、31cの端部は、抵抗Rを介して互いに電気的に接続されている。
【0077】
なお、各かしめ部材SWは、電工ペンチ等のかしめ治具(図示せず)によりかしめられるもので、これにより抵抗Rは、各電極線31b、31cのそれぞれの導電線31eに強固に電気的に接続される。また、各かしめ部材SWは、セパレータSPを中心としてその両側に対称となるようにそれぞれ配置され、当該セパレータSPの部分において互いに短絡されることが防止されている。
【0078】
タッチセンサユニット20のうち、センサ部31の基端側には、
図13に示すように、一対の電極線31b、31cの基端側が配置されており、各電極線31b、31cの基端部分には、後述するコントローラ(13b、
図15参照)のメス型コネクタ(図示せず)に装着されるオス型コネクタ30aが設けられている。また、センサ部31の基端側には、グロメットGMが設けられている。
【0079】
図14に示すように、タッチセンサユニット20は、長尺の紐状に形成されたタッチセンサ30と、このタッチセンサ30を後述するテールゲート12(
図15、
図16参照)に固定するためのブラケット40と、を備えている。ブラケット40には、センサ部31の基端側(
図13参照)を、表面部40b側から裏面部側に引き出す引き出し部45が一体に設けられている。ここで、センサ部31(タッチセンサ30)の基端側にも、センサ部31の先端側と略同じ形状のモールド樹脂MRが設けられ、引き出し部45は、このセンサ部31の基端側に設けられたモールド樹脂MRと略同じ形状に形成されている。これにより、デザイン性を向上させつつ、センサ部31の基端側を覆い隠せるようにしている。
【0080】
図15および
図16に示す車両10は、所謂ハッチバックタイプの車両であり、当該車両10の後方側には、大きな荷物を車室内に出し入れし得る開口部11が形成されている。開口部11は、車両10の天井部の後方側に設けられたヒンジ(図示せず)を中心に回動されるテールゲート(開閉体)12により、
図16の実線矢印および破線矢印に示すように開閉される。
【0081】
また、本実施の形態に係る車両10には、パワーテールゲート装置13が搭載されている。パワーテールゲート装置13は、テールゲート12を開閉させる減速機付きのアクチュエータ13aと、操作スイッチ(図示せず)の操作信号に基づいてアクチュエータ13aを制御するコントローラ13bと、障害物BLの接触(外力の負荷)を検出する一対のタッチセンサユニット20と、を備えている。
【0082】
図15に示すように、タッチセンサユニット20は、固定対象物であるテールゲート12の車幅方向両側(図中左右側)にそれぞれ設けられている。より具体的には、一対のタッチセンサユニット20は、テールゲート12の車幅方向両側のドア枠の湾曲形状に沿わせて配置されている。つまり、一対のタッチセンサユニット20は、ドア枠の湾曲形状に倣って湾曲状態とされ、当該湾曲状態のもとで、テールゲート12にそれぞれ固定されている。これにより、開口部11とテールゲート12との間において、障害物BLがタッチセンサユニット20に接触すると、当該タッチセンサユニット20は直ぐに弾性変形される。
【0083】
そして、各タッチセンサユニット20は、それぞれコントローラ13bに電気的に接続されており、各タッチセンサユニット20の弾性変形時に発生する検出信号は、コントローラ13bに入力されるようになっている。コントローラ13bは、各タッチセンサユニット20からの検出信号の入力に基づいて、操作スイッチの操作に依らず閉駆動されているテールゲート12を開駆動させるか、または閉駆動されているテールゲート12をその場で停止させる。これにより、障害物BLの挟み込みが未然に防止される。
【0084】
ここで、前述したように、タッチセンサユニット20には、一対の電極線31b、31cが設けられ、その先端側(図中右側)には抵抗Rが電気的に接続されている。これにより、タッチセンサユニット20が弾性変形されていない状態では、一対の電極線31b、31cは互いに接触しておらず、コントローラ13bには、抵抗Rの抵抗値が入力される。つまり、コントローラ13bは、抵抗Rの抵抗値が入力されている場合には、障害物BLの挟み込みが無いと判断して、テールゲート12の閉駆動を継続して実行する。
【0085】
これに対し、タッチセンサユニット20に障害物BLが接触して、タッチセンサユニット20が弾性変形されると、一対の電極線31b、31cが互いに接触して短絡される。すると、コントローラ13bには、抵抗Rを介さない抵抗値(無限大)が入力されるようになる。これにより、コントローラ13bは抵抗値の変化を検出して、当該抵抗値の変化をトリガにテールゲート12を開駆動させるか、またはテールゲート12をその場で停止させる制御を実行する。
【0086】
[タッチセンサユニットの製造方法(組立方法)]
上記の車体のドアパネルにタッチセンサを適用する場合において、
図15、
図16に示すように、タッチセンサユニット20を構成するブラケット40は、ドアパネルの形状に応じた湾曲部を有する。このような湾曲部に沿って、タッチセンサ30を貼り付ける場合には、タッチセンサ30をエラストマーのような弾性変形可能な絶縁体で構成することが好ましい。この場合、実施の形態1および実施例で説明したように、両面テープ33とタッチセンサ30との接着性が低下し得るが、タッチセンサ30の貼付面32cにプラズマ処理を施すことにより、両面テープ33とタッチセンサ30との接着性が向上する。
【0087】
即ち、タッチセンサ30の先端側および基端側に、それぞれ前述の部品を組み込み、タッチセンサ30の貼付面32cにプラズマ処理を施す、次いで、貼付面32cに両面テープ33の一方を接着し、ライナーを外した後、ブラケット40に両面テープ33の他方を接着する(
図9、
図10、
図14参照)。
【0088】
このように、実施の形態1で説明したタッチセンサ30の貼付面32cの処理方法を用いてタッチセンサユニット20を製造することにより、タッチセンサ30の剥離を防止することができる。そして、このタッチセンサユニット20を車両に組み込むことで、障害物BLの検出を行うことができる。
【0089】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態や実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態や実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態や実施例における各構成要素の材質、形状、寸法、数、設置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。