(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンと電気モータとを備えるハイブリッド車や、電気自動車のような車両においては、車体上に搭載したバッテリを充電し、バッテリから供給される電気エネルギーを利用して推進力を発生する。一般に、バッテリ関連の電源回路は、200V以上の高電圧を扱う高電圧回路として構成されており、安全性確保ため、バッテリを含む高電圧回路は接地の基準電位点となる車体から電気的に絶縁された非接地構成となっている。
【0003】
非接地の高電圧バッテリを搭載した車両では、高電圧バッテリが設けられた系、具体的には、高電圧バッテリからモータに至るメインの電源系と車体との絶縁状態(地絡)を監視するために地絡検出装置が備えられている。地絡検出装置は、フライングキャパシタと呼ばれるコンデンサを利用した方式が広く用いられている。
【0004】
図11は、フライングキャパシタ方式の従来の地絡検出装置400の回路例を示す図である。本図に示すように地絡検出装置400は、非接地の高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出する装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。
【0005】
本図に示すように、地絡検出装置400は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1を備えている。また、計測経路を切り換えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御するために、検出用コンデンサC1の周辺に4つのスイッチS1〜S4を備えている。さらに、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当する計測用の電圧をサンプリングするためのスイッチSsを備えている。
【0006】
地絡検出装置400では、絶縁抵抗RLpおよびRLnを把握するために、V0計測期間→Vc1n計測期間→V0計測期間→Vc1p計測期間を1サイクルとして計測動作を繰り返す。いずれの計測期間とも、計測対象の電圧で検出用コンデンサC1を充電してから、検出用コンデンサC1の充電電圧の計測を行なう。そして、次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。
【0007】
V0計測期間では、高電圧バッテリ300電圧に相当する電圧を計測する。このため、スイッチS1、S2をオンにし、スイッチS3、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、抵抗R1、検出用コンデンサC1、抵抗R2が計測経路となる。
【0008】
検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時には、スイッチS1、S2をオフにし、スイッチS3、S4をオンにするとともに、スイッチSsをオンにして制御装置420でサンプリングを行なう。その後、次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時、検出用コンデンサC1の放電時の動作は他の計測期間においても同様である。
【0009】
Vc1n計測期間では、絶縁抵抗RLnの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチS1、S4をオンにし、スイッチS2、S3をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、抵抗R1、検出用コンデンサC1、抵抗R4、接地、絶縁抵抗RLnが計測経路となる。
【0010】
Vc1p計測期間では、絶縁抵抗RLpの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチS2、S3をオンにし、スイッチS1、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、高電圧バッテリ300、絶縁抵抗RLp、接地、抵抗R5、検出用コンデンサC1、抵抗R2が計測経路となる。
【0011】
これらの計測期間で得られたV0、Vc1n、Vc1pから算出される(Vc1p+Vc1n)/V0に基づいて、(RLp×RLn)/(RLp+RLn)を求めることができることが知られている。このため、地絡検出装置400内の制御装置420は、V0、Vc1n、Vc1pを測定することにより、絶縁抵抗RLp、RLnの合成抵抗を把握することができる。そして、絶縁抵抗RLp、RLnの合成抵抗が所定の判定基準レベル以下となった場合に、地絡が発生しているものとして判定し、警報を出力する。
【0012】
なお、各計測期間において、検出用コンデンサC1をフル充電とすると、V0計測期間では高電圧バッテリ300の電圧値が得られ、Vc1n計測期間、Vc1p計測期間では、単に高電圧バッテリ300を絶縁抵抗RLp、RLnで分圧した値が得られてしまい、上述の式で絶縁抵抗を算出することができない。このため、例えば、検出用コンデンサC1が50%程度充電される程度の時間を各計測期間の充電時間とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般に、高電圧バッテリ300の正極側電源ライン301と接地電極との間および負極側電源ライン302と接地電極との間には、電源の高周波ノイズを除去したり動作を安定化するために、それぞれYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)と呼ばれるコンデンサCYp、CYnが接続される。特に、高電圧バッテリ300が充電設備をはじめとした高電圧設備と接続される場合等には、大容量のYコンデンサが接続される。
【0015】
大容量のYコンデンサが接続された場合、地絡検出装置400において各計測を行なうときに、Yコンデンサに蓄積された電荷が検出用コンデンサC1に移動する等により計測値に影響を与えてしまうという問題がある。この影響を軽減するために検出用コンデンサC1の容量を大きくすると、その分充電速度が遅くなり、測定時間が長くなってしまうため好ましくない。
【0016】
また、従来の地絡検出装置400は、スイッチS1〜S4を、絶縁型のスイッチング素子である光MOS−FETを4個用いて構成している。しかしながら、光MOS−FETは、高価であるため地絡検出装置のコスト増を招いているという別の問題もある。
【0017】
そこで、本発明は、スイッチング素子に起因するコスト増を抑制するとともに、大容量Yコンデンサに対応したフライングキャパシタ方式の地絡検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である地絡検出装置は、高電圧バッテリと接続し、前記高電圧バッテリが設けられた系の絶縁抵抗低下を検出する地絡検出装置であって、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサと、前記高電圧バッテリの正極側と接地とを接続する正極側終端抵抗と、前記高電圧バッテリの負極側と接地とを接続する負極側終端抵抗と、一端が接地した正極側バイパス抵抗と、一端が接地した負極側バイパス抵抗と、前記検出用コンデンサの一端の接続先を、前記高電圧バッテリの正極側と接地側とで択一的に切り換える正極側C接点スイッチと、前記検出用コンデンサの他端の接続先を、前記高電圧バッテリの負極側と接地側とで択一的に切り換える負極側C接点スイッチと、前記高電圧バッテリの正極側と前記正極側バイパス抵抗との接続状態を切り換える正極側バイパススイッチと、前記高電圧バッテリの負極側と前記負極側バイパス抵抗との接続状態を切り換える負極側バイパススイッチと、前記正極側C接点スイッチが前記高電圧バッテリの正極側、前記負極側C接点スイッチが接地側、前記正極側バイパススイッチおよび前記負極側バイパススイッチが非接続の状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vpと、正極側C接点スイッチが接地側、前記負極側C接点スイッチが前記高電圧バッテリの負極側、前記正極側バイパススイッチおよび前記負極側バイパススイッチが非接続の状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vnとを比較し、充電電圧Vpの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、正極側絶縁抵抗が低下していると判定し、充電電圧Vnの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、負極側絶縁抵抗が低下していると判定する制御部と、を備える。
ここで、前記制御部は、充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、正極側C接点スイッチが前記高電圧バッテリの正極側、前記負極側C接点スイッチが接地側、前記正極側バイパススイッチが非接続、前記負極側バイパススイッチが接続の状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vpp、あるいは、正極側C接点スイッチが接地側、前記負極側C接点スイッチが前記高電圧バッテリの負極側、前記正極側バイパススイッチが接続、前記負極側バイパススイッチが非接続の状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vnnを計測し、前記充電電圧Vpから前記充電電圧Vppへの変化率が基準より小さい場合、あるいは、前記充電電圧Vnから前記充電電圧Vnnへの変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定することができる。
また、前記正極側C接点スイッチ、前記負極側C接点スイッチ、前記正極側バイパススイッチ、前記負極側バイパススイッチをツインリレーで構成してもよい。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である地絡検出装置は、高電圧バッテリと接続し、前記高電圧バッテリが設けられた系の絶縁抵抗低下を検出する地絡検出装置であって、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサと、前記高電圧バッテリの正極側と接地とを接続する正極側終端抵抗と、前記高電圧バッテリの負極側と接地とを接続する負極側終端抵抗と、一端が接地した正極側バイパス抵抗と、一端が接地した負極側バイパス抵抗と、第1状態で、前記高電圧バッテリの正極側と所定の正極側接続点とを非接続にするとともに前記高電圧バッテリの負極側と所定の負極側接続点とを非接続にし、第2状態で、前記高電圧バッテリの正極側と前記正極側接続点とを接続するとともに前記高電圧バッテリの負極側と前記負極側接続点とを接続するバイパスツインリレーと、第1状態で、前記検出用コンデンサの一端の接続先を前記高電圧バッテリの正極側にするとともに前記正極側接続点と前記正極側バイパス抵抗とを非接続にし、第2状態で、前記検出用コンデンサの一端の接続先を接地側にするとともに前記正極側接続点と前記正極側バイパス抵抗とを接続する正極側ツインリレーと、第1状態で、前記検出用コンデンサの他端の接続先を前記高電圧バッテリの負極側にするとともに前記負極側接続点と前記負極側バイパス抵抗とを非接続にし、第2状態で、前記検出用コンデンサの他端の接続先を接地側にするとともに前記負極側接続点と前記負極側バイパス抵抗とを接続する負極側ツインリレーと、前記正極側ツインリレーが第1状態、前記負極側ツインリレーが第2状態、前記バイパスツインリレーが第1状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vpと、前記正極側ツインリレーが第2状態、前記負極側ツインリレーが第1状態、前記バイパスツインリレーが第1状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vnとを比較し、充電電圧Vpの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、正極側絶縁抵抗が低下していると判定し、充電電圧Vnの方が小さく、小ささの度合いが所定の基準よりも大きい場合に、負極側絶縁抵抗が低下していると判定する制御部と、を備える。
ここで、前記制御部は、充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、前記正極側ツインリレーが第1状態、前記負極側ツインリレーが第2状態、前記バイパスツインリレーが第2状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vpp、あるいは、前記正極側ツインリレーが第2状態、前記負極側ツインリレーが第1状態、前記バイパスツインリレーが第2状態で前記検出用コンデンサをフル充電したときに得られる充電電圧Vnnを計測し、前記充電電圧Vpから前記充電電圧Vppへの変化率が基準より小さい場合、あるいは、前記充電電圧Vnから前記充電電圧Vnnへの変化率が基準より小さい場合に、両極で絶縁抵抗が低下していると判定することができる。
いずれの態様においても、前記制御部は、充電電圧Vp、充電電圧Vnの小さい方の小ささの度合いが所定の基準よりも大きくない場合に、充電電圧Vpの方が小さいときには、充電電圧Vppを計測し、充電電圧Vnの方が小さいときには、充電電圧Vnnを計測することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スイッチング素子に起因するコスト増を抑制するとともに、大容量Yコンデンサに対応したフライングキャパシタ方式の地絡検出装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の第1実施例に係る地絡検出装置100の構成を示すブロック図である。本図に示すように地絡検出装置100は、高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出するフライングキャパシタ方式の装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。
【0023】
高電圧バッテリ300は、車両走行の駆動用に用いられるバッテリである。高電圧バッテリ300は、リチウムイオン電池等のように充電可能なバッテリにより構成されており、図示しないバスバーを経由して放電し、インバータ等を介して接続された電気モータを駆動する。また、回生時や充電設備接続時には、バスバーを介して充電を行なう。
【0024】
一般に、高電圧バッテリ300の正極側電源ライン301と接地電極との間および負極側電源ライン302と接地電極との間には、電源の高周波ノイズを除去したり動作を安定化するために、それぞれYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)と呼ばれるコンデンサCYp、CYnが接続される。
【0025】
本図に示すように、地絡検出装置100は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1を備えるとともに、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置120を備えている。制御装置120は、あらかじめ組み込まれたプログラムを実行することにより、後述するスイッチ切り換え処理等の地絡検出装置100に必要とされる各種制御を行なう。
【0026】
また、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当する計測用の電圧をサンプリングするためのスイッチSsを備えている。スイッチSsの他端は、他端が接地されたコンデンサC2の一端および制御装置120のアナログ入力端子に接続している。ただし、スイッチSsの機能を制御装置120内に設けてもよい。
【0027】
制御装置120は、スイッチSsを制御して、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当するアナログレベルをアナログ入力端子から入力し、このアナログレベルに基づいて高電圧バッテリ300が設けられた系の絶縁抵抗の低下を検出する。
【0028】
第1実施例の地絡検出装置100は、計測経路を切り替えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御するために、4つのC接点スイッチ(正極側充放電スイッチS1、負極側充放電スイッチS2、正極側バイパススイッチSa、負極側バイパススイッチSb)を備えている。各C接点スイッチ(S1、S2、Sa、Sb)は、例えば、高耐圧−小信号のメカニカルリレーやリードリレーで構成することができる。なお、正極側バイパススイッチSa、負極側バイパススイッチSbは、後述するようにb接点をオープンとするため、C接点スイッチでなく、通常のメカニカルリレーやリードリレー等で構成してもよい。
【0029】
このように、第1実施例の地絡検出装置100は、地絡検出のための測定経路の切り換えスイッチに、コスト増の起因となる光MOS−FETを用いていないため、スイッチング素子に起因するコスト増を抑制することができる。以降の実施例についても同様である。
【0030】
地絡検出装置100において、正極側電源ライン301には、抵抗R1と正極側バイパススイッチSaのa接点とが接続している。正極側バイパススイッチSaのb接点はオープンであり、c接点は正極側バイパス抵抗Raを介して接地している。
【0031】
正極側バイパス抵抗Raは、絶縁抵抗値が地絡状態と判定される値よりも十分小さい抵抗値とする。正極側バイパススイッチSaがa接点に切り換えられると、正極側バイパス経路が形成され、正極側電源ライン301が正極側バイパス抵抗Raを介して接地されることになる。
【0032】
抵抗R1の他端は、正極側充放電スイッチS1のa接点と接続している。正極側充放電スイッチS1のb接点は、スイッチSsと抵抗R5とに接続している。抵抗R5の他端は接地している。正極側充放電スイッチS1のc接点は、順方向(正極から負極の方向)のダイオードおよび抵抗R0の経路と、逆方向のダイオードおよび抵抗R3の経路との並列経路を介して検出用コンデンサC1の正極板と接続している。
【0033】
負極側電源ライン302には、抵抗R2と負極側バイパススイッチSbのa接点とが接続している。負極側バイパススイッチSbのb接点はオープンであり、c接点は負極側バイパス抵抗Rbを介して接地している。
【0034】
負極側バイパス抵抗Rbは、絶縁抵抗値が地絡状態と判定される値よりも十分小さい抵抗値とし、正極側バイパス抵抗Raと同じ値とすることが望ましい。負極側バイパススイッチSbがa接点に切り換えられると、負極側バイパス経路が形成され、負極側電源ライン302が負極側バイパス抵抗Rbを介して接地されることになる。
【0035】
抵抗R2の他端は、負極側充放電スイッチS2のa接点と接続している。負極側充放電スイッチS2のb接点は、抵抗R4を介して接地している。負極側充放電スイッチS2のc接点は、検出用コンデンサC1の負極板と接続している。
【0036】
4つのC接点スイッチ(正極側充放電スイッチS1、負極側充放電スイッチS2、正極側バイパススイッチSa、負極側バイパススイッチSb)は、制御装置120により独立に切換制御される。
【0037】
さらに、本実施形態では各実施例とも、正極側電源ライン301と接地との間に正極側終端抵抗Rispを接続し、負極側電源ライン302と接地との間に負極側終端抵抗Risnを接続している。正極側終端抵抗Rispと負極側終端抵抗Risnとは同じ抵抗値とし、地絡と判定される絶縁抵抗値よりも十分大きいものとする。
【0038】
また、本実施形態では、検出用コンデンサC1をフル充電の状態で計測を行なう。大容量のYコンデンサ(CYp、CYn)が接続される場合であっても検出用コンデンサC1は大容量とする必要はなく、計測のためのフル充電時間を短くすることができる。また、以下に説明するように、抵抗による高電圧バッテリ300の分圧値を計測するため、Yコンデンサの安定を待つ必要がない。
【0039】
次に、上記構成の地絡検出装置100の動作について
図2のフローチャートを参照して説明する。上述のように、本実施形態では、検出用コンデンサC1をフル充電の状態で計測を行なう。このため、従来の絶縁抵抗算出とは異なる手法で地絡判定を行なう。
【0040】
まず、
図3(a)に示すように、正極側充放電スイッチS1をa接点側に切り換えて正極側電源ライン301に接続するとともに、負極側充放電スイッチS2をb接点側に切り換えて接地する。正極側バイパススイッチSa、負極側バイパススイッチSbはともにb接点側として、正極側電源ライン301、負極側電源ライン302ともバイパス経路を形成しない状態とする。
【0041】
この状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vpを計測する(S101)。ここで、充電電圧Vpは、
図3(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを抵抗Rpと抵抗Rnとで分圧したときに抵抗Rpに生じる電圧に相当する。なお、抵抗Rpは、正極側終端抵抗Rispと正極側絶縁抵抗RLpとの並列合成抵抗であり、抵抗Rnは、負極側終端抵抗Risnと負極側絶縁抵抗RLnとの並列合成抵抗である。
【0042】
検出用コンデンサC1の充電電圧Vpを計測する際には、正極側充放電スイッチS1、負極側充放電スイッチS2とも接点b側に切り換え、スイッチSsをオンにする。計測後には、スイッチSsをオフにして次の計測のために主として抵抗R5を利用して検出用コンデンサC1の放電を行なう。検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時、放電時の動作は他の経路の計測においても同様である。
【0043】
次に、
図4(a)に示すように、正極側充放電スイッチS1をb接点側に切り換えて接地するとともに、負極側充放電スイッチS2をa接点側に切り換えて負極側電源ライン302に接続する。正極側バイパススイッチSa、負極側バイパススイッチSbはともにb接点側として、正極側電源ライン301、負極側電源ライン302ともバイパス経路を形成しない状態とする。
【0044】
この状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vnを計測する(S102)。ここで、充電電圧Vnは、
図4(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを抵抗Rpと抵抗Rnとで分圧したときに抵抗Rnに生じる電圧に相当する。なお、充電電圧Vnの計測と充電電圧Vpの計測の順序は問わない。
【0045】
充電電圧Vpの方が充電電圧Vnより小さい場合(S103:Yes)は、その小ささの度合いが所定の基準より大きいとき、例えば、Vn/Vp>基準値Pのとき(S104:Yes)は、正極側絶縁抵抗RLpが低下していると判定する(S105)。
【0046】
これは、正極側終端抵抗Rispと負極側終端抵抗Risnとが同じ抵抗値であるため、充電電圧Vpが充電電圧Vnよりも小さいことは、正極側絶縁抵抗RLpが負極側絶縁抵抗RLnよりも小さいことを意味し、その度合いが大きいほど、正極側絶縁抵抗RLpが低下していると考えられるためである。
【0047】
同様に、充電電圧Vnが充電電圧Vpより小さい場合(S103:No)は、その小ささの度合いが所定の基準より大きいとき、例えば、Vp/Vn>基準値Pのとき(S110:Yes)は、負極側絶縁抵抗RLnが低下していると判定する(S111)。
【0048】
充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さい場合は、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも同程度に低下している可能性が少ないながらもある。そこで、充電電圧Vpが充電電圧Vnより小さい場合(S103:Yes)であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、例えば、Vn/Vp≦基準値Pのとき(S104:No)は、以下に説明する処理を行なう。
【0049】
すなわち、
図5(a)に示すように、正極側充放電スイッチS1をa接点側に切り換えて正極側電源ライン301に接続するとともに、負極側充放電スイッチS2をb接点側に切り換えて接地する。そして、正極側バイパススイッチSaはb接点側としたまま、負極側バイパススイッチSbをa接点側として、負極側バイパス経路を形成する。
【0050】
この状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vppを計測する(S106)。ここで、充電電圧Vppは、
図5(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを、抵抗Rpと、抵抗Rnと抵抗Rbとの並列合成抵抗と、で分圧したときに、抵抗Rpに生じる電圧に相当する。上述のように、抵抗Rbは、地絡と判定される絶縁抵抗値よりも十分小さい抵抗値である。
【0051】
そして、充電電圧Vpと充電電圧Vppとがほぼ同じとみなせる場合、例えば、充電電圧Vpから充電電圧Vppへの変化率(
(Vpp−Vp)/Vp)が基準値より小さい場合(S107:Yes)は、挿入された抵抗Rbの影響が小さいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定する(S109)。
【0052】
一方、充電電圧Vpと充電電圧Vppとがほぼ同じとみなせない場合、例えば、充電電圧Vpから充電電圧Vppへの変化率が基準値より大きい場合(S107:No)は、挿入された抵抗Rbの影響が大きいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定する(S108)。
【0053】
同様に、充電電圧Vnが充電電圧Vpより大きい場合(S103:No)であって、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さいとき、例えば、Vp/Vn<基準値Pのとき(S110:No)は、以下に説明する処理を行なう。
【0054】
すなわち、
図6(a)に示すように、正極側充放電スイッチS1をb接点側に切り換えて接地するとともに、負極側充放電スイッチS2をa接点側に切り換えて負極側電源ライン302に接続する。そして、負極側バイパススイッチSbはb接点側としたまま、正極側バイパススイッチSaをa接点側として、正極側バイパス経路を形成する。
【0055】
この状態で検出用コンデンサC1をフル充電して、このときの充電電圧Vnnを計測する(S112)。ここで、充電電圧Vnnは、
図6(b)に示すように、高電圧バッテリ300の電圧Vbを、抵抗Rpと抵抗Raとの並列合成抵抗と、抵抗Rnと、で分圧したときに、抵抗Rnに生じる電圧に相当する。上述のように、抵抗Raは、地絡と判定される絶縁抵抗値よりも十分小さい抵抗値である。
【0056】
そして、充電電圧Vnと充電電圧Vnnとがほぼ同じとみなせる場合、例えば、充電電圧Vnから充電電圧Vnnへの変化率(
(Vnn−Vn)/Vn)が基準値より小さい場合(S107:Yes)は、挿入された抵抗Raの影響が小さいときであるため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下していると判定する(S114)。
【0057】
一方、充電電圧Vnと充電電圧Vnnとがほぼ同じとみなせない場合、例えば、充電電圧Vnから充電電圧Vnnへの変化率が基準値より大きい場合(S113:No)は、挿入された抵抗Raの影響が大きいため、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnとも低下しておらず、正常である判定する(S108)。
【0058】
なお、上述の例では、充電電圧Vpと充電電圧Vnとの差が相対的に小さい場合、充電電圧Vpの方が小さければ充電電圧Vppを計測し、充電電圧Vnの方が小さければ充電電圧Vnnを計測するようにしていた。これは、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnのうち少しでも値の大きい方で抵抗Rbあるいは抵抗Raを並列接続させたときの充電電圧変化率を判定するためである。しかしながら、充電電圧Vp、充電電圧Vnの大小関係にかかわらず、相対差が小さいときには、充電電圧Vppあるいは充電電圧Vnnのいずれか一方を計測して両極の絶縁低下あるいは正常を判定するようにしてもよい。
【0059】
次に、本実施形態の第2実施例について説明する。
図7は、第2実施例に係る地絡検出装置100aの構成を示すブロック図である。第2実施例の地絡検出装置100aでは、4つのC接点スイッチのそれぞれを、1つの制御で同時に切り換わるツインリレーで構成している。
【0060】
すなわち、正極側充放電スイッチS1に代えて、正極側充放電ツインリレーSt1を用い、負極側充放電スイッチS2に代えて、負極側充放電ツインリレーSt2を用い、正極側バイパススイッチSaに代えて、正極側バイパスツインリレーStaを用い、負極側バイパススイッチSbに代えて、負極側バイパスツインリレーStbを用いている。ツインリレーは、例えば、1コイル2C接点のリレーを用いることができる。
【0061】
正極側充放電ツインリレーSt1、負極側充放電ツインリレーSt2には、ツインリレーの個々のリレーに並列に電流が分岐する経路を設けている。これにより、それぞれのリレーの通電電流が分流されるため、C接点スイッチの電流負荷を軽減することができる。正極側バイパスツインリレーSta、負極側バイパスツインリレーStbについてもa接点接続時に個々のリレーに分流するようにしてもよい。
【0062】
第2実施例における地絡判定手順および充電電圧Vp、充電電圧Vn、充電電圧Vpp、充電電圧Vnn計測のためのスイッチ切り替えは第1実施例と同様である。
【0063】
次に、本実施形態の第3実施例について説明する。
図8は、第3実施例に係る地絡検出装置100aの構成を示すブロック図である。第3実施例の地絡検出装置100bでは、3つのツインリレー(正極側ツインリレーSt3、負極側ツインリレーSt4、バイパスツインリレーSt5)を用いており、第2実施例よりもツインリレーの個数を減らすことができる。以下では、各ツインリレーの一方のリレーを第1のリレーと称し、連動する他方のリレーを第2のリレーと称する。
【0064】
第3実施例の地絡検出装置100bにおいて、正極側電源ライン301には、抵抗R1とバイパスツインリレーSt5の第1リレーのa接点とが接続している。バイパスツインリレーSt5の第1リレーのb接点はオープンであり、c接点は正極側ツインリレーSt3の第1リレーのb接点に接続している。正極側ツインリレーSt3の第1リレーのa接点はオープンであり、c接点は正極側バイパス抵抗Raを介して接地している。
【0065】
抵抗R1の他端は、正極側ツインリレーSt3の第2リレーのa接点と接続している。正極側ツインリレーSt3の第2リレーのb接点は、スイッチSsと抵抗R5とに接続している。抵抗R5の他端は接地している。正極側ツインリレーSt3の第2リレーのc接点は、順方向のダイオードおよび抵抗R0の経路と、逆方向のダイオードおよび抵抗R3の経路との並列経路を介して検出用コンデンサC1の正極板と接続している。
【0066】
負極側電源ライン302には、抵抗R2とバイパスツインリレーSt5の第2リレーのa接点とが接続している。バイパスツインリレーSt5の第2リレーのb接点はオープンであり、c接点は負極側ツインリレーSt4の第1リレーのb接点に接続している。負極側ツインリレーSt4の第1リレーのa接点はオープンであり、c接点は負極側バイパス抵抗Rbを介して接地している。
【0067】
抵抗R2の他端は、負極側ツインリレーSt4の第2リレーのa接点と接続している。負極側ツインリレーSt4の第2リレーのb接点は、抵抗R4を介して接地している。負極側ツインリレーSt4の第2リレーのc接点は、検出用コンデンサC1の負極板と接続している。
【0068】
第3実施例における地絡判定手順は第1実施例と同様である。
図9は、第3実施例における各計測時のスイッチ切り替えを説明する図である。すなわち、充電電圧Vpの計測時には、
図9(a)に示すように、正極側ツインリレーSt3をa接点に切り換え、負極側ツインリレーSt4をb接点に切り換えるとともに、バイパスツインリレーSt5をb接点に切り換える。これにより、
図3(b)に示した回路を形成することができる。
【0069】
充電電圧Vnの計測時には、
図9(b)に示すように、正極側ツインリレーSt3をb接点に切り換え、負極側ツインリレーSt4をa接点に切り換えるとともに、バイパスツインリレーSt5をb接点に切り換える。これにより、
図4(b)に示した回路を形成することができる。
【0070】
充電電圧Vppの計測時には、
図9(c)に示すように、正極側ツインリレーSt3をa接点に切り換え、負極側ツインリレーSt4をb接点に切り換えるとともに、バイパスツインリレーSt5をa接点に切り換える。これにより、
図5(b)に示した回路を形成することができる。
【0071】
充電電圧Vnnの計測時には、
図9(d)に示すように、正極側ツインリレーSt3をb接点に切り換え、負極側ツインリレーSt4をa接点に切り換えるとともに、バイパスツインリレーSt5をa接点に切り換える。これにより、
図6(b)に示した回路を形成することができる。
【0072】
次に、本実施形態の第4実施例について説明する。第4実施例は第3実施例の変形であり、検出用コンデンサC1の充電、放電経路となるダイオード等の部品数を削減した回路である。
図10は、第4実施例に係る地絡検出装置100cの構成を示すブロック図である。
【0073】
第4実施例の地絡検出装置100cにおいて、正極側電源ライン301には、抵抗R1とバイパスツインリレーSt5の第1リレーのa接点とが接続している。バイパスツインリレーSt5の第1リレーのb接点はオープンであり、c接点は正極側ツインリレーSt3の第1リレーのa接点に接続している。正極側ツインリレーSt3の第1リレーのb接点はオープンであり、c接点は正極側バイパス抵抗Raを介して接地している。
【0074】
抵抗R1の他端は、正極側ツインリレーSt3の第2リレーのa接点と接続している。正極側ツインリレーSt3の第2リレーのb接点は、スイッチSsと抵抗R5とに接続している。抵抗R5の他端は接地している。正極側ツインリレーSt3の第2リレーのc接点は、抵抗R0を介して検出用コンデンサC1の正極板と接続している。
【0075】
負極側電源ライン302には、抵抗R2とバイパスツインリレーSt5の第2リレーのa接点とが接続している。バイパスツインリレーSt5の第2リレーのb接点はオープンであり、c接点は負極側ツインリレーSt4の第1リレーのa接点に接続している。負極側ツインリレーSt4の第1リレーのb接点はオープンであり、c接点は負極側バイパス抵抗Rbを介して接地している。
【0076】
抵抗R2の他端は、負極側ツインリレーSt4の第2リレーのa接点と接続している。負極側ツインリレーSt4の第2リレーのb接点は、抵抗R4を介して接地している。負極側ツインリレーSt4の第2リレーのc接点は、検出用コンデンサC1の負極板と接続している。
【0077】
第4実施例における地絡判定手順および充電電圧Vp、充電電圧Vn、充電電圧Vpp、充電電圧Vnn計測のためのスイッチ切り替えは第3実施例と同様である。