(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854763
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】心房細動の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定する方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20210329BHJP
A61N 1/08 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
A61B5/04 312A
A61N1/08
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-534739(P2017-534739)
(86)(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-501884(P2018-501884A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015081193
(87)【国際公開番号】WO2016102685
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年11月14日
(31)【優先権主張番号】1463232
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520195774
【氏名又は名称】サブストレート ホールディングス
【氏名又は名称原語表記】SUBSTRATE HD
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バース,クレマン
(72)【発明者】
【氏名】サイツ,ジュリアン
【審査官】
福田 千尋
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0282227(US,A1)
【文献】
特表2008−504888(JP,A)
【文献】
特表2014−519367(JP,A)
【文献】
特表2007−537823(JP,A)
【文献】
特表2013−521966(JP,A)
【文献】
特開2012−170721(JP,A)
【文献】
Julien Seitz et al.,Automated Detection of Complex Fractionated Atrial Electrograms in Substrate-Based Atrial Fibrillation Ablation: Better Discrimination with a New Setting of CARTO Algorithm,Journal of Atrial Fibrillation,2013年 8月31日,Vol-6, Issue-2,pages 16-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24−5/398
A61N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動の永続化に伴いそうな各々の患者の心臓の範囲(以下、標的範囲)を、測定ウィンドウの間に前記患者の心臓で作られそれぞれ前記患者の心臓の範囲に対応しそれぞれ少なくとも1つの局部EGMとおそらく少なくとも1つのベースラインとを備える複数の局部記録から特定する、心房細動の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定する方法であって、
前記方法は、心臓の前記局部記録を使用する装置を制御し、前記局部記録を、対応する心臓の範囲を分類するために使用し、前記分類された心臓の範囲のマップを表示するものであり、
前記方法は以下の工程を備える:
−不整脈の基準周期であって、前記患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録のうち2つの局部EGM間での前記ベースラインの平均持続時間である基準周期を取得すること;
−局部記録ごとに:
・2つの局部EGM間のベースラインを決定すること;
・以下の中から少なくとも比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率中央値;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記範囲の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する範囲を分類すること;および
・そのマップ上に心臓の範囲または局所の分類が形成される、患者の心臓のマップを作成および表示すること。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録の前記ベースラインに関して算出されたすべての前記比率が第1の値よりも大きいまたは等しい場合に、1つの範囲は1つの非標的範囲として分類され、
そうでない場合に、前記範囲は真陽性または偽陽性の標的範囲として分類される方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が第2の値よりも小さいまたは等しい場合に、必要ならば前記第1の値よりも小さい場合に、1つの範囲は1つの真陽性または偽陽性の優先標的範囲として分類される方法。
【請求項4】
請求項2と3の組合せによって記載される方法において、
前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第1の値と前記第2の値との間にある第3の値と前記第2の値との間にある場合に、1つの範囲は1つの真陽性または偽陽性の二次標的範囲として分類され、
前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第3の値と前記第1の値との間にある場合に、前記範囲が真陽性または偽陽性の三次標的範囲として分類される方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、
前記心臓の前記範囲のそれぞれの前記分類は、繰り返し値の前記算出された比率のベースラインの前記対応する局部記録について繰り返しの関数でもあり、
前記範囲の標的範囲としての分類に至った前記比率の値に対応する前記繰り返しが証明される場合に、標的範囲は真陽性である方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、
前記心臓の前記範囲のそれぞれの前記分類は、前記対応する局部記録における脱分極の振幅値の平均の関数でもあり、
前記振幅値の平均が所定の閾値よりも低い場合に、標的範囲は真陽性である方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、
前記心臓の前記範囲のそれぞれの前記分類は、繰り返し値の算出された比率を使って前記ベースラインの前記対応する局部記録について繰り返しの関数でもあり、かつ前記対応する局部記録の脱分極における振幅値の平均の関数であり、
前記繰り返しが証明される場合ならびに前記振幅値の前記平均が所定の閾値より低い場合に、標的範囲は真陽性である方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、
前記心臓の前記局部記録のうち少なくともいくつかに関して、以下の工程をさらに備える:
−隣接範囲に対応する複数の局部記録から少なくとも1つの局所記録を取得し、前記隣接範囲は前記局所記録に対応ずる局所を形成し、何らの特定可能なベースラインを示さない前記局部記録は破棄されて前記局所記録は少なくとも1つの局所EGMを含むこと;
−局所記録ごとに、
・2つの局所EGM間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・前記AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記局所の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する局所を分類すること;
前記方法の他の工程は、
−局部記録を局所記録に、および
−範囲を局所に、
置き換えることによって実行される。
【請求項9】
心房細動の永続化に伴いそうな各々の患者の心臓の範囲(以下、標的範囲)を、測定ウィンドウの間に前記患者の心臓で作られそれぞれ複数の範囲を備える前記患者の心臓の局所に対応する複数の局所記録から特定する、心房細動の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定する方法であって、
前記方法は、心臓の前記局部記録を使用する装置を制御し、前記局所記録を、対応する心臓の範囲を分類するために使用し、前記分類された心臓の範囲のマップを表示するものであり、
前記方法は以下の工程を備える:
−不整脈の基準周期であって、前記患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録の2つの脱分極間での前記ベースラインの平均持続時間である基準周期を取得すること;
−局所記録ごとに:
・前記局所記録の前記脱分極間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記局所の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する局所を分類すること;および
・そのマップ上に心臓の範囲または局所の分類が形成される、患者の心臓のマップを作成および表示すること。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記平均比率または前記対応する局所記録の前記ベースラインに関して算出された前記比率のすべてが第1の値よりも大きいまたは等しい場合に、局所は非標的局所として分類され、
そうでない場合に、前記局所は真陽性または偽陽性の標的局所として分類される方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、
前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が第2の値よりも小さいまたは等しい場合に、必要ならば前記第1の値よりも小さい場合に、局所は真陽性または偽陽性の優先標的局所として分類される方法。
【請求項12】
請求項10と11の組合せにおいて記載される方法において、
前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第1の値と前記第2の値との間にある第3の値と前記第2の値との間にある場合に、局所は真陽性または偽陽性の二次標的局所として分類され、
前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第3の値と前記第1の値との間にある場合に、前記局所は真陽性または偽陽性の三次標的局所として分類される方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の方法において、
心臓の前記局所のそれぞれの前記分類が、繰り返し値の算出された比率を使って、前記ベースラインの前記対応する局所記録における繰り返しの関数でもあり、
前記繰り返しが証明される場合に、標的局所は真陽性である方法。
【請求項14】
請求項9から12のいずれか一項に記載の方法において、
心臓の前記局所のそれぞれの前記分類は、前記対応する局所記録における脱分極の振幅値の平均の関数でもあり、
前記振幅値の前記平均が所定の閾値よりも小さい場合に、標的局所が真陽性である方法。
【請求項15】
請求項9から12のいずれか一項に記載の方法において、
心臓の前記局所のそれぞれの前記分類は、繰り返し値の算出された比率を使って、前記ベースラインの前記対応する局所記録について前記繰り返しの関数でもあり、かつ、前記対応する局所記録における前記脱分極の前記振幅値の前記平均の関数であり、
前記繰り返しが証明される場合ならびに前記振幅値の前記平均が所定の閾値より大きい場合に、標的局所は真陽性である方法。
【請求項16】
心房細動の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定する装置であって、
デジタル解析装置およびデジタルマッパーを備え、
前記デジタル解析装置が、請求項1から15に記載のいずれかの方法を実行可能であり、
前記デジタルマッパーが、前記患者の前記心臓のマップであって、前記心臓の前記範囲の分類を作り出すマップを生成可能である装置。
【請求項17】
コンピュータプログラムであって、
一連の命令を備え、
その命令が、プロセッサによって実行される時に、請求項1から15のいずれか一項に記載の前記方法の前記工程を実行するコンピュータプログラム。
【請求項18】
記憶媒体であって、
請求項17に記載のコンピュータプログラムを備える非一過性かつコンピュータ可読な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不整脈に伴いそうな心臓の範囲(エリア)を特定する技術分野に関する。より詳細には、本発明は、心房細動(AF)の初期および永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AF)は、すなわち時には一般に「不整脈」と称されるものは、ごくありふれた最も複雑な心拍障害である。
【0003】
この心拍障害は、速く不規則な心拍によって反映される心房活動であって、極めて急速かつ無秩序な心房活動によって現れる。
【0004】
所定の時点で不整脈を示さない心臓では(
図1を参照)、心収縮は、洞結節(または洞房結節とも称される)を構成する右心房(OD)の上部に位置する一群の隔室(N
SA)の周期的な脱分極(隔室がその機能を果たすために心臓の活性化を促進する隔室の膜の電気極性の反転、心臓の場合には収縮)の過程から生じる。この脱分極は、2つの右心房および左心房OD、OGの全ての隔室に対して上から下へ徐々に規則正しく波のように急速に伝えられ、外見上の同期収縮を引き起こす。この伝達は、次いで房室結節(N
AV)に対して起こり、それから2つの右心室および左心室に対して起こり、その後に心房の収縮に関して微かに遅れて心室の収縮を誘発する。脱分極の伝達は規則的であり、そして脱分極の伝達は、次々に分割などされた光線が洞房結節から離れることによって示され、それから同様に分割などされた他の光線が発する房室結節に集まり得る(
図1の点線を参照)。
【0005】
心房細動がある場合(
図2を参照)、脱分極の伝達はもはや規則的なものではなく、脱分極は極めて急速かつ無秩序に心房OD、OG内に伝えられる。
【0006】
AFを起こすメカニズムは今日では周知であり、一般的には(左心房内の)1つ以上の肺静脈に由来する期外収縮である場合が多い。それに比べて、AFの永続化の原因になるメカニズムはあまり知られていない(不整脈を誘発させるようなサブストレイト)。
【0007】
多くの理論があるが、いちばんもっともらしいものの1つはロータR理論である。この理論にはループ状の経路に従う脱分極の伝達が伴われ、リエントリを伴っている。ロータは多かれ少なかれ多数存在し、交互に活性化され得る。
【0008】
心房細動はまた局所発生源に起因し、すなわち隔室が過剰興奮している範囲であって極めて急速な興奮頻度に至る範囲に起因し得る。
【0009】
近年、ヒトに関してこれらのロータおよび局所発生源に証拠を提供している:Narayan他著、「局所的発生源のアブレーションによる心房細動の治療:裏付け(局所的インパルスとロータ調節を持つまたは持たない従来の心房細動用のアブレーション)痕」、(仏語表題:「Traitement de la fibrillation atriale par l’ablation de sources localisees: CONFIRM (ablation conventionnelle pour la fibrillation atriale avec ou sans modulation d’impulsion focales ou de rotor)」)、J.Am.Coll.Cardiol誌、第60号、628頁〜636頁(2012年)およびHaissaguerre他著、「持続する心房細動におけるドライバー領域」(仏語表題:「Zones motrices dans la fibrillation atriale persistante」)、Circulation誌、2014年8月12日発刊130(7)号:530頁〜538頁。
【0010】
AFを治療するために、この異常なメカニズムの一因となる疑わしい範囲はアブレーションされる(疑わしい範囲の組織は最も一般的には高周波によって破壊されるが、その他のエネルギー源が使用可能である)。いくつかのAFサブストレイトアブレーション技術が提案され、今のところ民意を得ていない。
【0011】
さらに、細動の原因になるとの疑わしい組織を特定するための様々なアプローチが完成され、アブレーションを導いている。
【0012】
AFの原因になるとの疑わしい組織を特定するための第1のアプローチは、コンプレックス細分化電位(2004年にNademanee博士によって開発されたコンプレックス細分化心房電位図、すなわち頭字語でCFAE)の検出である:K.Nademanee他著、「心房細動のカテーテルアブレーションのための新たなアプローチ:電気生理学的サブストレイトのマッピング」(仏語表題:「Une nouvelle approche pour l’ablation par catheter dans la fibrillation atriale: cartographie du substrate electrophysiologique」) J.Am.Coll.Cardiol誌、2004年6月2日版;43(11)号:2044頁〜2053頁。
【0013】
今日、CFAEがこれらのロータの部位またはこれらの局所発生源の部位で記録された電気信号に対応していることが強く疑われている。刊行物によれば、このアプローチによって症例の99%のAFが阻止可能になるとともに症例の95%のAFが阻止可能になる:K.Nademanee, ibidem;J.Seitz他著、「心房細動内の活発または不活発な肺静脈:肺静脈隔離は常に不可欠か?」(仏語表題:「Veine pulmonaire active ou passive dans la fibrillation atriale: l’isolement de veines pulmonaires est−il toujours essentiel?」)、Heart Rhythm誌、2014年4月版、11(4)号:579頁〜586頁。Nademanee博士によって開発された技術もまた最良の速効性かつ長期的(発表済み)結果を与えるものでもある。
【0014】
しかしながら、多くのCFAEは外的影響を受けると言われ、そのアブレーションは無意味および/または効果なく、有害でさえある。有効なCFAEは現在、専門技師の視覚解析によってのみ、外的影響を受けるCFAEと区別され得る。残念ながら、CFAEの視覚解析は、専門外の技師には困難であるため、再現性の低下を招いている。
【0015】
その理由のため、自動CFAE検出ソフトウェアパッケージが開発されている(バイオセンス・ウェブスター・アンド・セイント・ジュード・メディカル)。これらのソフトウェアパッケージは心房の範囲ごとに電位図または電気記録図(EGM)を解析する。区域当たりの解析時間(バイオセンス・ウェブスター製のソフトウェアでは2.5秒)中に、ベースライン(電位図)に対する偏位間の時間(一般にはミリ秒単位)が測定される。次いで、いくつかのアルゴリズムは実行でき、その測定結果は開業医をガイドするためにカラーコードを用いて表示され得る:
−範囲ごとに表示された色が、解析時間中に記録された2つのCFAE間で最も短い間隔の持続時間の値に対応するSCI(最短コンプレックス間隔)アルゴリズム;
−範囲ごとに表示された色が、解析時間中に記録された2つのCFAE間の間隔数に対応するICL(間隔信頼水準)アルゴリズム;
−範囲ごとに表示された色が、解析時間中に記録された2つのCFAE間のすべての間隔の持続時間の平均値に対応するACI(平均コンプレックス間隔)アルゴリズム。
【0016】
残念ながら、これらのソフトウェアパッケージは以下を含む多くの欠点を呈している。
−これらのソフトウェアパッケージはNademanee博士が規定したCFAEという用語の定義を用いているが、その定義は不整脈の残留感覚を反映した興味深い細分化電位を十分的確には定義しておらず、非常に多くの誤検出を招き、究極的には非常に多くの無意味なアブレーションを招いている。実際に、この解析を使って、電位図とベースラインとの持続時間を区別せずに、2つの電気偏位(事象)(一般には「周期」とも称される)間の時間を測定することだけが考慮されている。
−標的間隔の検出閾値は、患者ごとに固有の心房細動の頻度(または周期)を考慮せずに、絶対的に定義されている。心房細動の頻度は心房電位の細分化への直接の影響を持つ(頻度が早ければ早いほど、ますます電位が細分化される)、Konings他著、「ヒトに関して電気的に誘発された心房細動の間に単極性の心房電位図を構成」(仏語表題:「Configuration d’electrogrammes atriaux unipolaires pendant la fibrillation atriale induite electriquement chez l’Homme」)、Circulation誌、1997年、第95号:1231頁〜1241頁。
−それら検出閾値は、一拍一拍測定された事象の繰り返しの有無を考慮していない。
−それら検出閾値は、電位図の解析では、振幅が所定の閾値を超える電位を考慮していない。(バイオセンス・ウェブスターが行っているように)電圧を考慮することは重要であるが、周期の解析において振幅が大きい偏位を排除することは問題を招きかねない。実際に、電位図の解析に関心をひく所定の閾値を超える振幅の電位を有することが時々可能である。
【0017】
このように、アブレーションされる心臓の範囲(AFの不整脈を誘発させるようなサブストレイト)を特定する際に、より多くの開業医を補助し得るこれらの自動的な方法は、今日でもまだ十分に効率的ではない。
【0018】
別のマッピング技術はNarayan他によって開発されている(「局部発生源のアブレーションによる心房細動の治療:裏付け(局所的インパルスとロータ調節を持つまたは持たない従来の心房細動用のアブレーション)痕」、J.Am.Coll.Cardiol誌、第60号、628頁〜636頁(2012年))。後者の目的は直接、ロータを検出することである。この方法は、ロータおよび局所発生源を検出するために、カテーテルを使って挿入された大型の多重電極プローブ(心房ごとに64個の電極)によって心房のそれぞれに関しての同時解析からなり、そのような電極によって2つの心房の全体的または「全景的」な解析(局所的でない解析)を可能にしている。
【0019】
しかしながら、これらのロータおよび局所発生源の位置決めマップを用いて得られた結果は当てにならない。実際に、上述の論文は正常律動(洞調律とも称される)に対して52%の回復率を示している。
【0020】
この方法の低い結果は恐らく、この全体的な視野における精度の欠如に関連しているが、僅かな精度であっても電位の形態(すなわち電位図)が考慮されないという事実と、断片化した電位の事例では電気的な伝達を再現する難しさとに関連している。
【0021】
2014年の2つの国際会議(サイツおよびバーズ、2014年、心臓リズム学会、サンフランシスコ、ならびに2014年、ISCAT、パリ)で示されたつい最近のアプローチは、多電極プローブを用いて局所的なビジュアルマッピングを作成することからなる。ロータとその遅い基本的な伝導とを検出するために、このアプローチは断片化の分析と活性化の分析とを可能にする。この技術は、AFの96%の停止をもつ非常に良好な結果と、良好な再現率(7人の技師)とを示している。
【0022】
残念なことに、この方法に係る解析は、結果が技師に依存する視覚的な解析である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の1つの目的は、上記の先行技術の欠点のうち少なくとも1つを軽減することである。
【0024】
特に、本発明の1つの目的は、治療を選択する際に開業医を支援するため、現在可能な方法よりもっと確実に心房細動(AF)の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定する方法を提案することである。
【0025】
そのため、本発明が提案する方法は、心房細動の永続化に伴いそうな患者の心臓の範囲(以下、標的範囲)を、測定ウィンドウの間に前記患者の心臓で作られそれぞれ前記患者の心臓の範囲に対応しそれぞれ少なくとも1つの局部電位図とおそらく少なくとも1つのベースラインとを備える複数の局部記録から特定する方法であって、前記方法は以下の工程を備える:
−不整脈の基準周期であって、前記患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録のうち2つの局部電位図の間での前記ベースラインの平均持続時間である基準周期を取得すること;
−局部記録ごとに:
・2つの局部電位図の間のベースラインを決定すること;
・以下の中から少なくとも比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率中央値;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記範囲の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する範囲を分類すること。
【0026】
本発明は、電気信号の精密な解析を可能にし、心房の異なる局所内で記録されたAFの基準周期の百分率の定量化を通してアブレーションによって標的にされる発生源を決定するようにする。AFの基準周期を考慮することによって、上記の問題点の多くを克服することが可能になる。
【0027】
さらに、前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録の前記ベースラインに関して算出されたすべての前記比率が第1の値よりも大きいまたは等しい場合に、1つの範囲は1つの非標的範囲として分類可能であり、そうでない場合に、前記範囲は真陽性または偽陽性の標的範囲として分類される。
【0028】
さらに、または代替として、前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が第2の値よりも小さいまたは等しい場合に、必要ならば前記第1の値よりも小さい場合に、1つの範囲は1つの真陽性または偽陽性の優先標的範囲として分類可能である。
【0029】
さらに、または代替として、前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第1の値と前記第2の値との間にある第3の値と前記第2の値との間にある場合に、1つの範囲は1つの真陽性または偽陽性の二次標的範囲として分類可能であり;前記平均比率、前記比率中央値、または前記対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第3の値と前記第1の値との間にある場合に、前記範囲が真陽性または偽陽性の三次標的範囲として分類される。
【0030】
さらに、または代替として、前記心臓の前記範囲のそれぞれの前記分類は、以下の態様の1つに従って実施可能である:
−それは、繰り返し値の前記算出された比率を使って前記ベースラインの前記対応する局部記録について繰り返しの関数でもあり;前記範囲の標的範囲としての分類に至った前記比率の値に対応する前記繰り返しが証明される場合に、標的範囲は真陽性である;
−それは、前記対応する局部記録における脱分極の振幅値の平均の関数でもあり;前記振幅値の平均が所定の閾値よりも低い場合に、標的範囲は真陽性である;
−それは、繰り返し値の算出された比率を使って前記ベースラインの前記対応する局部記録について繰り返しの関数でもあり、かつ前記対応する局部記録の脱分極における振幅値の平均の関数であり;前記繰り返しが証明される場合ならびに前記振幅値の前記平均が所定の閾値より大きい場合に、標的範囲は真陽性である。
【0031】
さらに、または代替として、本発明は、前記心臓の前記局部記録のうち少なくともいくつかに関して、以下の工程を備える:
−隣接範囲に対応する複数の局部記録から少なくとも1つの局所記録を取得し、前記隣接範囲は前記局所記録に対応ずる局所を形成し、何らの特定可能なベースラインを示さない前記局部記録は破棄されて前記局所記録は少なくとも1つの局所電位図を含むこと;
−局所記録ごとに、
・2つの局所電位図の間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・前記AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記局所の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する局所を分類すること;
前記方法の他の工程は、
−局部記録を局所記録に、および
−範囲を局所に、
置き換えることによって実行される。
【0032】
この最新のモダリティはマルチトラック解析に対応しており、すなわち、その解析は具体的には同時に幾つかの記録(それぞれが1本のトラック上に記録される)上で行われる。
【0033】
本発明の別の態様では、後者は、その比率を考慮することによっても、シングルトラック解析を伴わずにマルチトラック解析を行うことを提案している。これが反映される方法は、心房細動の永続化に伴いそうな患者の心臓の範囲(以下、標的範囲)を、測定ウィンドウの間に前記患者の心臓で作られそれぞれ複数の範囲を備える前記患者の心臓の局所に対応する複数の局所記録から特定する方法であって、前記方法は以下の工程を備える:
−不整脈の基準周期であって、前記患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録の2つの脱分極間での前記ベースラインの平均持続時間である基準周期を取得すること;
−局所記録ごとに:
・前記測定ウィンドウの間に前記局所記録の前記脱分極間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の平均比率;
ベースラインごとに不整脈の前記基準周期に対する前記ベースラインの前記持続時間の比率;
・AFの前記永続化に伴う度合いであって、算出された前記比率または複数の比率の関数である前記局所の関与の度合いに応じて前記心臓の前記対応する局所を分類すること。
【0034】
さらに、前記平均比率または前記対応する局所記録の前記ベースラインに関して算出された前記比率のすべてが第1の値よりも大きいまたは等しい場合に、局所は非標的局所として分類可能であり、そうでない場合に、前記局所は真陽性または偽陽性の標的局所として分類される。
【0035】
さらに、または代替として、前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が第2の値よりも小さいまたは等しい場合に、必要ならば前記第1の値よりも小さい場合に、局所は真陽性または偽陽性の優先標的局所として分類可能である。
【0036】
さらに、または代替として、前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第1の値と前記第2の値との間にある第3の値と前記第2の値との間にある場合に、局所は真陽性または偽陽性の二次標的局所として分類可能であり;前記平均比率または前記対応する局所記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が前記第3の値と前記第1の値との間にある場合に、前記局所は真陽性または偽陽性の三次標的局所として分類される方法。
さらに、または代替として、心臓の前記局所のそれぞれの前記分類が、以下の態様のうち1つに従って実施可能である:
−それは、繰り返し値の算出された比率を使って、前記ベースラインの前記対応する局所記録における繰り返しの関数でもあり;前記繰り返しが証明される場合に、標的局所は真陽性である。
−それは、前記対応する局所記録における脱分極の振幅値の平均の関数でもあり;前記振幅値の前記平均が所定の閾値よりも小さい場合に、標的局所が真陽性である。
−それは、繰り返し値の算出された比率を使って、前記ベースラインの前記対応する局所記録について前記繰り返しの関数でもあり、かつ、前記対応する局所記録における前記脱分極の前記振幅値の前記平均の関数であり;前記繰り返しが証明される場合ならびに前記振幅値の前記平均が所定の閾値より大きい場合に、標的局所は真陽性である。
【0037】
本発明の別の態様よれば、装置は、心房細動の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定するために提案され、デジタル解析装置およびデジタルマッパーを備え、前記デジタル解析装置が前記方法を実行可能であり;前記デジタルマッパーが、前記患者の前記心臓のマップであって、前記心臓の前記範囲の分類を作り出すマップを生成可能である。
【0038】
前記方法の前記工程は、プロセッサによって実行される時に、一連の命令を備えたコンピュータプログラムによって実行可能である。
【0039】
このコンピュータプログラムは、非一過性かつコンピュータ可読な記憶媒体において格納可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
他の目的、特徴および利点は、例示的かつ非制限的に与えられた図面を参照しつつ、以下の詳細な記載を読むことにより明らかになるであろう。
【
図1】心不整脈を発症していない心臓の隔室の脱分極の伝播を示す図である。
【
図2】心不整脈を発症しロータRを示す心臓の隔室の脱分極の伝播を示す図である。
【
図4】健常な範囲での電位図の例(複雑でなく、狭い幅をもち、広いスペースの脱分極)を示す。
【
図5】連続するCFAEに対応する複雑な電位図の例、すなわち特定可能なベースラインを有しない例を示す。
【
図6】反復的に(分離せずに)不整脈の基準周期よりも少ない持続時間のベースラインの相次ぐ連続をもち反復的非連続的に断片化した電位図(「CFAEトレイン」と称される)の例を示す。
【
図7】短いベースライン(従って、長い脱分極事象の持続時間)を持つが、分離している(経時的に安定性のない)断片化した電位図の例を示す。
【
図8】不整脈の基準周期より少ない持続継続のベースラインをもち非断片化した電位図の例(「ラピッドファイア」と称される)を示す。
【
図9】局所的な電位図を得ることができる患者の心臓の一局所に対応する1セットの局部的な電位図を示す。
【
図10】本発明に係る装置であって、心不整脈に伴いそうな心臓の範囲を特定する装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
シングルトラック解析
本明細書の記載は、測定ウィンドウの間に、2つの電極(すなわち双極子)間に配置された心臓の範囲の電気的活性(電位)を記録することを必然的に含む。心臓の電気的活性は、ベースラインに対して1つ以上の脱分極によって現れる。このため、記録は一般的に、脱分極を描く実線によって、すなわちベースラインからの偏位によって表され、そのベースはいくぶん広く、その振幅もいくぶん大きい(
図4を参照)。2つの脱分極の間に、ほんの僅かに変動する部分が一般的にはある。そのような部分がベースラインである。ベースラインに対する脱分極は「電位図」またはEGMと呼ばれる。さらに、35ミリ秒未満、優先的には30ミリ秒未満の持続時間が2つの脱分極を分離する場合には、これらの2つの脱分極は、1つの同じEGMに属する脱電極の相次ぐ連続として分析のために考慮される。
【0042】
記録は、一連の生の測定値すなわち測定中または測定後に処理されずに得られるようなものになることがある。記録は、具体的には記録が行われる部屋の周辺ですら室内にある機器によるノイズを除去するため、測定の実施中または実施後のいずれかで事前に処理された一連の測定値であることが好ましい。実際に、心臓の電気的活性は、対応する範囲をカバーする一対の電極(双極子とも称される)を用いて測定される。本明細書の記載のすべての理解を簡単にするため、局部記録は局所記録と区別される。局部記録は、測定によって、特に双極子を用いることによって得られる。局所記録は、局所を形成する心臓の隣接範囲に対応する複数の局部記録の加算または減算によって得られる(後述のマルチトラック解析を参照)。同様に、局部EGMは局所EGMと区別される。局部EGMは局部記録のEGMである一方、局所EGMは局所記録のEGMである。
【0043】
図3を参照すると、本発明に係る、AF(心不整脈とも称される)の永続化に伴いそうな心臓の範囲を特定するための方法が以下に記載される。好適な実施形態では、その方法は心臓の心房の一方または両方(左心房および右心房)で実施される。
【0044】
この方法は、測定中に患者の心臓において作成されそれぞれ患者の心臓の範囲に対応する複数の局部記録から実施される。それぞれの局部記録は少なくとも1つの局部EGMからなる。さらに、それは少なくとも1つのベースラインをも示すことができる。
【0045】
測定ウィンドウは測定された持続時間の時間窓であり、不整脈の幾つかの周期(例えば不整脈の2つの基準周期より多く)を記録できるのに十分に長く選択される。測定ウィンドウは、有利には2秒より長く、好ましくは2.5秒以上である。測定ウィンドウは、時間的に途切れなく連続するかまたは時間的に連続しないかのいずれかである。そのため、測定ウィンドウは、有利には2秒より長い持続時間、好ましくは測定が心臓の同じ範囲で行われる2.5秒以上の持続時間をともに有する2つの時間間隔になることもあり得る。測定は、精度を向上させるため、それぞれの範囲を繰り返すことが可能である。
【0046】
測定ウィンドウはもちろん、持続時間と測定瞬間との両方の観点から考慮された局部記録または局所記録のすべてに対して同じである。
【0047】
より実質的には、一部分をベースラインと見なすことが可能であるのは、すべての部分にわたって測定された電位の値が、その機器およびその環境に対して観測された(特に事前に測定された)ノイズの少なくとも最大レベルに大体等しい、有利には0.01mVまで増大され観測された最大ノイズと等しい下方閾値より小さい場合である。下方閾値は、好ましくは0.02mVから0.04mVであり、さらに好ましくは約0.02mVである。脱分極は、その(幾つかのピークを持つ複雑な活性)間に挿入されたベースラインと一緒でなく分離され(「健常な」組織の正常な電気的活性に大体対応し、要するに非断片化し電位が存在する)または分類され得る。このように、1つのベースラインは1つの脱分極の終了時から始まり、別の後続の脱分極の開始時に終了する。
【0048】
より詳細には、健常な範囲で測定された局部記録は、極僅かに変動するとともに持続時間が概して120ミリ秒より長いベースラインによって示された基礎活性と、これに続く測定された電位(持続時間は概して40ミリ秒未満である)の増幅(脱分極)の著しい短時間の変化をもたらす著しい活性(EGM)とからなる相次ぐ連続した周期を呈する(
図4)。周期の持続時間は実質的に一定である。
【0049】
一方で、いくつかの記録は、健常な局部記録の形態から離れた所で移動する形態を呈するかもしれない。これらの異常形態の記録は脱分極の分割を示しており、すなわち、これらの記録は少なくとも1つのEGMを示し、その少なくとも1つのEGMは同一と見なせる中間的なベースラインを持たずに急速に(大体2ミリ秒〜35ミリ秒の間の時間に)あとに続く3つより多い脱分極から成り、これらの非分離の脱分極は下方の振幅でもある。この種のEGMはコンプレックス細分化心房EGMと呼ばれる(頭字語のCFAEによっても既知)。
【0050】
しかしながら、CFAEは、心臓の電気的活性の異常事象の信号であるけれども、AFの永続化において心臓の対応する範囲の活性または非活性の性状を少しも早まった判断をしない。
【0051】
2つのタイプのいわゆる活性CFAEは以下のように区別され得る:
−50ミリ秒以上の持続時間を有するCFAEの相次ぐ連続であるCFAEトレイン(
図6);
−ベースラインの事実上の欠如をもつ脱分極の相次ぐ連続である途切れない連続のCFAE(
図5)。
【0052】
他の記録は、健常な脱分極に似ているが、脱分極間ではベースラインの持続時間が絶えず短く大体120ミリ秒未満であるEGMを示すかもしれない(
図8)。測定された電位の振幅は健常な脱分極で測定された電位の振幅よりも大体小さい;それらは分断されず、それらの幅は大体35ミリ秒未満である。これらのEGMはラピッドファイアEGM、すなわち、より一般的にはラピッドファイアと呼ばれる。
【0053】
測定値は当業者にとって既知の異なる方法で得ることができる。例えば、測定値は、開業医にとって興味深い心臓の範囲まで一対の電極を患者の身体に挿入することにより得られ、選択された時間ウィンドウの間中この範囲の電気的活性が記録される。その範囲の位置もまた記録される。時間ウィンドウの終了時には、その一対の電極は開業医にとって興味深い別の範囲に移動され、その記録が今の他の範囲で行われる。これが心臓の複数の範囲に渡って繰り返され、心臓のメッシングを形成する。
【0054】
代替として、その記録は、複数の電極対から成る多電極プローブを用いて行うことができ、それによって心臓の複数の範囲の電気的活性が同時に記録可能になる。これにより、開業医にとって興味深い幾つかの範囲(局所EGMの作成を可能にする)の同時記録のみならず、心臓の全範囲のより早くより正確な記録が可能になる。さらに、測定時間が減少するので、心臓のより精密なメッシングをさらに得ることが可能である。
【0055】
この記録は、本発明の方法による測定の直後または格納された未決定分析の直後に用いることができる。
【0056】
本発明の方法の具体的な特徴は、患者に関して取られた1つ以上の局部記録に渡って測定された不整脈の基準周期を考慮して、この周期に対するこの患者の局部記録を解析することである。その理由は、この方法が患者の不整脈の基準周期を取得することを含んでいるからである。
【0057】
不整脈の基準周期は、患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録の2つのEGM間のベースラインの平均持続時間である。有利には、不整脈の基準周期は、心臓の「健常な」範囲、すなわち持続時間が概して40ミリ秒を超えない単純な電位(その範囲の組織を形成する隔室の膜の正常な脱分極)を持ち少なくとも0.5mVの振幅の電圧を示す範囲に対応する局部記録において少なくとも2つの異なる時点で取得されたベースラインから決定される。これら健常な範囲では、脱分極は極めて瞬間的であり(その時間は概して40ミリ秒を超えない)、ベースラインの持続時間が組織における電気的活性の総周期と大きな相関関係を示すようになり、したがって周期という用語を使用する。不整脈の基準周期は、(必要ならば自然発生的または意図的に誘発された)心房細動における患者の右心房、左心房または冠状静脈洞で測定される。多くの場合、この基準周期は、左心耳(活動が概して健常である左心房内の最も小さい嚢)で測定される。
【0058】
不整脈の基準周期は好ましくは、1つ以上の健常な局部記録におけるベースライン持続時間の(例えば、少なくとも10周期の、ちょうど20周期の)平均である。
【0059】
一般には、不整脈の基準周期は、患者ごとに異なっている。さらに、その持続時間は、不整脈の複雑さに依存し、いくぶんか心房の病的な状態に依存し、および抗不整脈薬の存在に依存する。一般には、不整脈の基準周期は、約110ミリ秒から約400ミリ秒の間(大体約140ミリ秒から約220ミリ秒の間)にある。
【0060】
測定ウィンドウは、有利には、不整脈の2つの基準周期に対応する局部記録内の少なくとも2つのEGM、好ましくは2つより多いEGM(すなわち、それらの持続時間は医学的な観点から等価である)の観測を可能にするような方法で選択される。
【0061】
この方法もまた、局部記録ごとに、2つの局部EGM間のベースラインを決定すること、および不整脈の基準周期に対して以下の少なくとも1つの比率を算出することからなる:
−ベースラインごとに、不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の比率を算出(すなわち、この選択肢を選ぶ場合、比率は特定されたベースラインごとに算出されることを意味する);
−不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の平均比率;
−不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の比率中央値。
【0062】
このように、本発明に係る方法は、分母が不整脈の基準周期である比率の算出にあり、ついにはその比率の自動的な定量化を終わらせる。
【0063】
この方法は、心房細動の永続化に伴う度合いに応じて範囲のそれぞれを分類することをも含んでいる。範囲の関与の度合いは、対応する局部記録に関して算出された比率または複数の比率の関数である。
【0064】
この方法は最終的には、その分類から標的の範囲を特定することを含む。
【0065】
その範囲は、関与の度合いの異なる尺度に応じて分類することができる。これらの尺度は、いくぶん精密なものであり得る。
【0066】
例えば、対応する局部記録のベースラインに関して算出された平均比率または全比率が第1の値より大きいならば、1つの範囲は1つの非標的範囲として分類され、そうでないならば、真陽性でも偽陽性でも、1つの範囲は1つの標的範囲として分類される。
【0067】
換言すると、対応する非標的範囲は、低い関与の度合いを持ち、不整脈に対して不活発な範囲である。真陽性または偽陽性の標的範囲は、分断されていないならばCFAE(途切れなく連続するCFAEまたは「CFAEトレイン」)またはラピッドファイアを持つ局部記録を一般に呈する(それぞれ
図5、6および8を参照)。
【0068】
別の例として、対応する局部EGMのベースラインに関して算出された平均比率または少なくとも1つの比率が第2の値以下である場合に、必要ならば第1の値より小さい場合に、1つの範囲は1つの真陽性または偽陽性の優先標的範囲として分類される。
【0069】
換言すれば、局部記録においてベースラインが特定できないならば(算出された比率がゼロ)、または算出された比率が低いならば(例えば35%未満)、対応する範囲は、AFの永続化に伴う極めて強い度合いを持つ(
図5を参照)。実際に、そのような範囲はおそらく、ゆっくりした伝導の範囲(ロータのサブストレイト)であり、もしかすると優先標的範囲に対応するロータの源または少なくともその一部分である。ロータまたはリエントリさえも、電気回路を形成するループ内で電気的な脱電極が伝播される現象を特徴付け、その電気的な脱電極は心臓のある範囲から別の範囲へ正常に伝播され後者を鼓動させるようにしている(冒頭で上述したように)。この電気回路は自身を維持し、不整脈を永続させる。そのような現象が生じるため、電気的な伝導の減速(ゆっくりした伝導)が必要である。
【0070】
第1および第2の値を用いる場合、算出比率がこれらの2値の間にある範囲は、真陽性または偽陽性の標的範囲として分類される。
【0071】
換言すると、対応する範囲は、関与の平均的な度合いが高い。
【0072】
別の例として、分類をさらに改善することができる。そのため、以下の場合に、1つの範囲は真陽性または偽陽性の二次標的範囲として分類される:
−平均比率または比率中央値が第2の値より低い、または対応する局部記録のベースラインに関して算出された比率のいずれもが第2の値より低くない場合;
−平均比率、比率中央値、または対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が、第1の値と第2の値との間にある第3の値と第2の値との間にある場合。
【0073】
この範囲は、次いで、以下の場合、真陽性または偽陽性の三次標的の範囲として分類される:
−平均比率または比率中央値が第2の値より低く、または対応する局部記録のベースラインに関して算出された比率のいずれもが第2の値より低くない場合;
−平均比率、比率中央値、または対応する局部記録のベースラインに関して算出された少なくとも1つの比率が、第3の値と第1の値の間にある場合。
【0074】
第1、第2および第3の値の数値は、患者や測定環境等のニーズに応じて選択される。有利には、上記の例に関する値は、以下の通りである。
【0075】
それにも関わらず、これらの値は表示にすぎず、開業医は症例に応じて他の値を決定できるであろう。
【0076】
このように、優先的に、その分類は、優先標的、二次標的、三次標的、および非標的(関与の度合いが次第に低くなる)の少なくとも4つの基本レベルを含む。これらのレベルのそれぞれは細分できる。基本レベルの細分の数は必ずしも同じではない。
【0077】
(関与の度合いが極めて高い)優先標的範囲は、AFの永続化の原因であると疑われるため、優先事項としてアブレーションされる必要がある範囲である。
【0078】
このように、それらがAFの永続化の原因になる確率は極めて高い。
【0079】
(関与の度合いが高から中の)二次および三次の標的範囲は、恐らくアブレーションされる範囲であり、開業医は、そのようにするか否かを特に優先標的のアブレーション結果の関数として選択するが、それらの分類は、心不整脈の永続化および/または初期における責任のうち高度から中度の疑わしさをさし示す。このように、それらがAFの永続化の原因になる確率は高から中である。
【0080】
非標的範囲は、関与の度合いが低い範囲であり、AFの永続化の原因となる確率が極めて低いためにアブレーションされるべきでない範囲である。
【0081】
この方法の信頼度は、以下の工程に伴う追加的な基準によって高めることができる。これらの工程によって標的範囲の真陽性と偽陽性とを区別することが可能になる。
【0082】
第1の変形では、心臓の範囲のそれぞれを分類することは、繰り返し値の算出比率を使ってベースラインの対応する局部記録における繰り返しの関数でもあり、もし繰り返しが証明されるならば、標的範囲は真陽性である。
【0083】
繰り返しという用語は、ベースラインの持続時間が互いに対してプラスまたはマイナス15%、優先的には10%、より優先的には5%に等しいことを意味している。
【0084】
換言すると、対応する局部記録における異常な事象(異常な局部EGM)の発生には一時的な安定がある。分類の特定を可能にしているものは、この一時的な安定である。この一時的な安定は、少なくとも3つの連続するベースライン(優先的には少なくとも4つ、またはさらに少なくとも5つの連続するベースライン)の間、優先的に維持される。偽陽性標的範囲は、その後に、非標的範囲に変化する。
【0085】
別の変形では、心臓の範囲のそれぞれの分類は、対応する局部記録の脱分極の振幅値(すなわち「電圧」)の平均の関数でもあり、もし振幅値の平均が所定の閾値(大体0.6mV)より低いならば、標的範囲は真陽性であり、もしそうでないならば、その標的範囲は偽陽性である。偽陽性標的範囲は、その後に、非標的範囲に変化する。
【0086】
上記の2つの変形は有利には組み合わせることができる。この場合、心臓の範囲のそれぞれの分類は、繰り返し値の算出比率と、対応する局部EGMの脱分極における振幅値の平均の算出比率とを使ってベースラインの対応する局部記録における繰り返しの関数でもあり、もし繰り返しが証明され、かつ、もし振幅値の平均が所定の閾値よりも低いならば、標的範囲は真陽性であり、もしそうでなければ、標的範囲は偽陽性である。偽陽性標的範囲は、その後に、非標的範囲に変化する。
【0087】
さらに、この方法は、特にCFAEトレインとラピッドファイアとを区別するために、局部EGMの持続時間を考慮することもできる。そのため、その分類は、優先、二次、または三次であろうとなかろうと、局部EGMの継続時間、特に真陽性または偽陽性の標的範囲に対応する記録の持続時間の関数でもある。もしEGMの持続時間が所定の局部EGMの閾値の持続時間より短いならば、そのEGMは、ラピッドファイアとして分類され、もしそうでなければ、局部EGMはCFAEトレインとして分類される。所定の局部EGMの閾値の持続時間は一般に、45ミリ秒未満、優先的には35ミリ秒未満、より優先的には30ミリ秒未満になるように選択される。CFAEトレインとラピッドファイアとの区別はとりわけ研究の目的において有用なものとなり得る。この方法は、患者の心臓のマップ上で分類を形成することをも含んでいる。この形成は、患者の心房のマップ上にその範囲の関与の度合いを表示するための可能な方法のすべてを含んでおり、例えば、関与の2つの度合いは、2つの異なる色、1つの同じ色の2つの異なる陰影、2つの異なるパターンによって、さらに点滅の有無、点滅の回数等の動的な手段によっても異なるかもしれない。
【0088】
この方法は、こうして得られた心房のマップを表示する工程を含むこともできる。表示された心房のマップは、電気的活性が測定された心房の範囲のすべてを、あるいはそれらの幾つかを示すことができる。例えば、関与の度合いが極度に高い範囲、関与の度合いが高い範囲、関与の度合いが低い範囲、またはそれらの混在を選択することが可能である。
【0089】
以上では、方法はシングルトラック解析に対応し、すなわち局部記録は個別に分類されている。
【0090】
マルチトラック解析
シングルトラック解析は満足な結果をもたらすが、これらは、以下に述べるマルチトラック解析を使用して、特にシングルトラック解析で非標的として分類された範囲に関して、さらに高めることができる。
【0091】
マルチトラック解析は主に、ロータが生じている心臓の局所を特定することからなる。実際に、局所の範囲をシングルトラック解析する際には、算出比率が第1の値より高いため、真陽性または偽陽性であろうとなかろうと、範囲が標的として分類されない一方、実は、ロータが存在するため、AFを示す事象のすべてが幾つかの隣接範囲を組み合わせた局所に渡って分布される。
【0092】
この可能性を考慮するため、この方法は、隣接範囲(
図9参照)に対応する複数の局部記録から、特に複数の局部記録の付加(または対応するベースラインの削除)によって、少なくとも1つの局所記録を生成することを含むことが可能である。隣接範囲は、その後に、局所記録に対応する局所を形成する。
【0093】
「付加(付加する)」という用語は、ここでは関係する局部記録に対応する測定値を付加する行為または相互に関係する局部記録を重ね合わせる行為を意味するように理解されるべきである。
【0094】
こうして、
図9で分かるように、局部記録を付加して局所記録を生成するとき、局所EGMは、少なくとも1つの局部EGMから得られ形成される(複数の局部EGMの場合、それぞれの局部EGMは、相互に区別された1つの局部記録の上にある)。このため、これらの局所EGMは、局部EGMの持続時間より長いまたは等しい持続時間を呈する。
【0095】
この局所記録のために得られたベースラインは、不整脈の基準周期に関して解析される。しかしながら、明確に述べなければならないことは、何らの特定可能なベースラインも示さない局部記録は破棄されなければならないことである(対応する範囲は、シングルトラック解析に従った優先標的の範囲である)。残りの説明はこのすぐ前のコメントを考慮している。
【0096】
この方法は、次いで、局部記録を局所記録に置き換えることによって実行される。換言すると:
−局所記録ごとに、この方法は以下を備える:
・局所記録における2つの脱分極間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
ベースラインごとに不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間;
不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の平均比率または比率中央値;
・AFの永続化に伴う度合いであって、算出された比率または複数の比率の関数である局所の関与の度合いに応じて心臓の対応する局所を分類すること。
【0097】
この方法は、対応する範囲の局部記録を付加すること(またはベースラインを削除すること)によってではなく、その局所の範囲のすべての局部記録がベースラインの一部または全てを示す部分を局部記録において決定することによってのみ局所記録が実際に得られる場合をも含んでいる。
【0098】
上記された他の工程は、ここでは、局所記録に対しても適用可能である。そのため、それは、局部記録を局所記録に置き換え、および心臓の範囲を心臓の局所に置き換えるのに十分である。
【0099】
さらに、この方法は計算結果を局部記録上に保存することによって実行可能である。換言すると、この方法の工程は局所記録からのみ実行される。
【0100】
したがって、このような方法は、心房細動の永続化に伴いそうな患者の心臓の局所を、以後では標的局所を、特定する方法である。この方法は、測定ウィンドウの間に患者の心臓に関して行われそれぞれ患者の心臓の1つの局所に対応する複数の局所記録から開始し、その方法は以下の工程を含む:
−不整脈の基準周期であって、患者の心臓の健常な範囲に対応する局部記録のうち2つの脱分極間のベースラインの平均持続時間である基準周期を取得すること;
−局所記録ごとに:
・局所記録における2つの脱分極間のベースラインを決定すること;
・以下のうち少なくとも1つの比率を算出すること:
不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の平均比率;
ベースラインごとに、不整脈の基準周期に対する持続時間の比率;
・AFの永続化に伴う度合いであって、算出された比率または複数の比率の関数である局所の関与の度合いに応じて、心臓の対応する局所を分類すること。
【0101】
ここで再び、局所記録は、所定の局所における心臓の範囲の局部記録の付加(または対応するベースラインの削除)によって得られ、何ら特定可能なベースラインを示さない局部記録は破棄されなければならない点に留意しなければならない(それらは優先標的の範囲に対応しているため、シングルトラック解析の部分での説明を参照)。
【0102】
ここでもまた、上記された他の工程は局所記録に関しても適用可能である。そのため、それは、局部記録を局所記録に置き換え、および心臓の範囲を心臓の局所に置き換えるのに十分である。
【0103】
有利には、局所による範囲の寄せ集めは、1つの局所が複数の隣接範囲、一般に少なくとも5つの範囲、好ましくは少なくとも10の範囲、さらに好ましくは20から50の範囲を含むような方法で行われる。
【0104】
このような場合、2つの範囲は、それらの範囲の中心間で取られた距離であって、少なくとも4mm、好ましくは2mm未満の距離を置いて分離されている。
【0105】
好ましくは、マルチトラック解析は、測定値が多電極プローブで記録される時に行われる。この場合、多電極プローブの電極でカバーされる広さが、表面積が優先的に約7cm
2のオーダーである局所を構成すると考えることは、可能でありかつ容易である。
【0106】
局所記録は、任意の測定ウィンドウに渡って生成可能であるが、その一部分に渡っても生成可能である。換言すると、それは最初の脱分極であり、その最初の脱分極は1つのベースラインに先行され、そのベースラインは局所の範囲における全ての局部記録のうち特定可能な最初の局部記録上のベースラインに続く脱電極のすぐ後である。
【0107】
この方法は2つの異なるEGM間の遅延をも考慮しており、実際に、後者は2つの双極子(それぞれの双極子が範囲のEGMの測定を可能にしている)の間の距離の関数である。次に、比率の算出(値)がこの遅延に釣り合わされるだろう。さらに、同じ局所の2つの範囲の間の距離が約2cm、さらに3cmを超えないことは好ましいが、必ずしも必要ではない。
【0108】
仮に表面積の大きいプローブが用いられると、打開策は限界優先標的の比率を距離に適合させなければならない。
【0109】
実際に、これらのリエントリが不安定であり、それ故に局所において局部的に移動しやすいと考えると、もしプローブの表面積が7cm
2を超えないならば、局所EGMの比率の算出(値)を電極双極子間の距離の関数として重み付けする必要はない。
【0110】
装置
図10を参照すると、心不整脈に伴いそうな心臓の範囲を特定する装置1は以下で記載される。この装置1は上記の方法を実行可能である。
【0111】
この装置1はデジタル解析器2とデジタルマッパー3とからなる。デジタル分析器2は以下を受け取ることが可能である:
−不整脈の基準周期であって、患者の心臓の健常な範囲に対応する局部EGMの2つの脱分極間のベースラインにおける平均持続時間;
−測定ウィンドウの間に患者の心臓に対して行われそれぞれ患者の心臓の範囲に対応する複数の局部EGMまたはEGM。
そのため、デジタル解析器2は、受信モジュールを含むことができる。
【0112】
デジタル解析器2は、心臓の隣接範囲に対応する複数の局部EGMから局所EGMを生成することが可能である。そのため、デジタル解析器2は局所EGFM生成装置を含むことができる。
【0113】
デジタル解析器2は、局部のEGMもしかしたら局所のEGMにおいて2つの脱分極間のベースラインを決定することもできる。
【0114】
デジタル解析器2は、局部または局所のEGM用に、以下のうち少なくとも1つの比率を算出することも可能である:
・不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の平均比率;
・ベースラインごとに、不整脈の基準周期に対するベースラインの持続時間の比率。
そのため、デジタル解析器2はコンピュータを含むことができる。
【0115】
デジタル解析器2は、局部または局所のEGM用に、AFの永続化に伴う度合いであって、算出された比率または複数の比率の関数である範囲または局所の関与の度合いに応じて、心臓の対応する範囲または局所を分類することも可能である。その分類の詳細は、この方法を記述する部分において上述されている。その分類を行うために、デジタル解析器2は分類装置を含むことができる。
【0116】
デジタルマッパー3は、患者の心臓のマップを作成することが可能であり、そのマップ上に心臓の範囲または局所の分類が形成される。
【0117】
この装置は患者の心臓のマップを表示するための表示装置4をさらに含む。
【0118】
コンピュータプログラム
上記の方法はコンピュータプログラムによって実行することができる。このコンピュータプログラムは一連の命令を含み、それらの命令はプロセッサによって実行される時に上記方法の工程を実行する。
【0119】
このコンピュータプログラムは、非一過性かつコンピュータ可読の記憶媒体に保存することができる。この種類の記憶媒体は、例えば、CD、DVD、USBキー、SIMカード等であり得る。