(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記腫瘍が固形腫瘍であり、前記抗癌剤が抗腫瘍剤であり、浸透性の増加が腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みの増加によって測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記腫瘍が固形腫瘍であり、前記抗癌剤が免疫療法剤であり、浸透性の増加が腫瘍または腫瘍間質における浸潤性リンパ球の存在の増加によって測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記腫瘍が固形腫瘍であり、前記抗癌剤が放射線であり、浸透性の増加が、画像診断によって測定される腫瘍の大きさの減少によって測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
前記腫瘍が固形腫瘍であり、前記抗癌剤が遺伝子治療剤であり、浸透性の増加が、腫瘍の微小環境における腫瘍内の免疫反応の増加によって測定される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
MUC1に特異的な前記抗体の重鎖可変領域が配列番号:1を含む核酸によってコードされ、MUC1に特異的な前記抗体の軽鎖可変領域が配列番号:2を含む核酸によってコードされる、請求項1に記載の方法。
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域が配列番号:3を含む核酸によってコードされ、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域が配列番号:4を含む核酸によってコードされる、請求項1に記載の方法。
前記間質周囲の浸透性の増加により、a)抗癌剤の治療指数の増加;b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善;c)腫瘍間質の浸透性の増加;および、d)腫瘍間質の枯渇がもたらされる、請求項1に記載の方法。
抗癌剤の投与の前に、それを必要とする被験体において腫瘍周囲間質の浸透性を増加させることにより癌を治療するための医薬品であって、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する癌抗原に特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を含む医薬品であって、
前記IgE抗体が、MUC1に特異的な抗体であり、
前記治療用IgE抗体を含む前記医薬品は、前記抗癌剤の投与の少なくとも4時間から2週間前に投与されるためのものであり、
前記間質周囲の浸透性の増加により、前記医薬品を投与しない場合と比較して、投与される前記抗癌剤の量の減少がもたらされる、医薬品。
前記腫瘍が固形腫瘍であり、前記抗癌剤が抗腫瘍剤であり、浸透性の増加が腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みの増加によって測定される、請求項16〜19のいずれか1項に記載の医薬品。
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域が配列番号:1を含む核酸によってコードされ、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域が配列番号:2を含む核酸によってコードされる、請求項16に記載の医薬品。
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域が配列番号:3を含む核酸によってコードされ、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域が配列番号:4を含む核酸によってコードされる、請求項16に記載の医薬品。
前記間質周囲の浸透性の増加により、a)抗癌剤の治療指数の増加;b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善;c)腫瘍間質の浸透性の増加;および、d)腫瘍間質の枯渇がもたらされる、請求項16に記載の医薬品。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原に特異的な少なくとも1つのIgE抗体またはそれらの組合せの有効量を被験者に投与することを含む、被験体における腫瘍の周囲の間質の浸透性を高める方法が提供される。
【0004】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を被験者に同時投与する工程を含む、腫瘍への抗癌剤の送達を増加させる方法が提供される。
【0005】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を被験者に同時投与する工程を含む、癌を治療する方法が提供される。
【0006】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を腫瘍と接触させる工程を含む、腫瘍の成長を抑制する方法が提供される。
【0007】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を被験者に同時投与する工程を含む、被験者における腫瘍への抗癌剤の送達を増加させる方法が提供される。
【0008】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を腫瘍と接触させる工程を含む、固形腫瘍周囲の間質を調節する方法が提供される。
【0009】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を、抗癌剤と組み合わせて被験体に投与する工程を含む、被験体における腫瘍の抗癌剤に対する感受性を増強する方法が提供される。
【0010】
IgE抗体は、癌抗原または腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的であり得る。
【0011】
本方法は、被験者に抗癌剤を投与することをさらに含むことができる。
【0012】
抗癌剤は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、放射線、光増感剤、遺伝子治療薬およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0013】
IgE抗体および抗癌剤は、同時に、または連続的に投与されてもよい。
【0014】
IgE抗体は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、光増感剤、または遺伝子治療剤から選択することができる抗癌剤と同時に、および、同一の組成物として投与することができる。
【0015】
IgE抗体は、抗癌剤に結合されていてもよい。
【0016】
IgE抗体および抗癌剤は、連続的に投与されてもよい。
【0017】
IgE抗体および抗癌剤は、連続的に投与されてもよく、ここで、前記治療用のIgE抗体は、少なくとも抗癌剤の投与の約1分〜約2週間前または後に投与され得る。
【0019】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みの増加により、抗腫瘍剤の腫瘍への送達の増加を測定することができる。
【0020】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は免疫療法剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質における浸潤性リンパ球の存在の増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0021】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は放射線であってもよく、浸透性の増加は、画像診断により測定された腫瘍の大きさの減少によって測定することができる。
【0022】
腫瘍は、固形腫瘍であってもよく、前記抗癌剤は遺伝子治療薬であってもよく、腫瘍への遺伝子治療薬の送達の増加は、腫瘍の微小環境における免疫応答の増加によって測定することができる。
【0023】
IgE抗体は、MUC1に特異的な抗体であってもよい。
【0024】
MUC1に特異的な抗体は、配列番号:5から選択されるMUC1のエピトープに結合し得る。
【0025】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:1を含む核酸によってコードされ得、一方、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:2を含む核酸によりコードされ得る。
【0026】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:3を含む核酸によってコードされ得、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:4を含む核酸によりコードされる。
【0027】
MUC1に特異的な抗体は、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
腫瘍は、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌または肺癌であってもよい。
【0029】
腫瘍は、インビボまたはインビトロであってよい。
【0030】
間質周囲の浸透性の増加は、a)抗癌剤の治療指数の増加、b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善、c)治療に使用される抗癌剤の量の減少、d)腫瘍間質の浸透性の増加、およびe)腫瘍間質の枯渇、をもたらす。
【0031】
抗癌剤は、IgE抗体を腫瘍に接触できた後、腫瘍と接触させてもよい。
【0032】
抗癌剤は、IgE抗体が腫瘍と接触できる前に腫瘍と接触させてもよい。
【0033】
抗癌剤は、IgE抗体と同時に被験者に投与されてもよい。
【0034】
IgE抗体は、腫瘍間質に関連する抗原に特異的であり得る。
【0035】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を、それを必要とする被験体における固形腫瘍周囲の間質の浸透性を向上させるために使用する方法が提供される。
【0036】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を、それを必要とする被験体における抗癌剤の腫瘍への送達を増加させるために使用する方法が提供される。
【0037】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を、それを必要とする被験体における癌の治療のために使用する方法が提供される。
【0038】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を、それを必要とする被験体における腫瘍の成長を抑制するために使用する方法が提供される。
【0039】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加するために使用する方法が提供される。
【0040】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を、それを必要とする被験体における固形腫瘍の周囲の間質を調節するために使用する方法が提供される。
【0041】
別の実施形態によれば、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を、抗癌剤と組み合わせて、それを必要とする被験体における抗癌薬に対する腫瘍の感受性を増強するために使用する方法が提供される。
【0042】
IgE抗体は、癌抗原または腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的であり得る。
【0043】
使用は、抗癌剤の使用をさらに含むことができる。
【0044】
抗癌剤は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、放射線、光増感剤、遺伝子治療薬およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0045】
IgE抗体および抗癌剤は、同時にまたは連続的に投与することができる。
【0046】
IgE抗体は、抗癌剤と同時に、および、同一の組成物として投与することができ、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤、免疫療法剤、光増感剤、または遺伝子治療剤から選択することができる。
【0047】
IgE抗体は、抗癌剤に結合されていてもよい。
【0048】
IgE抗体および抗癌薬は、連続的に投与されてもよい。
【0049】
IgE抗体および抗癌剤は、連続的に投与されてもよく、ここで、治療用のIgE抗体は、少なくとも抗癌剤の投与の約1分〜約2週間前または後に投与され得る。
【0051】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤であってもよく、浸透性の増加は、腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取込みの増加によって測定することができる。
【0052】
腫瘍は固体腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は免疫療法剤であってもよく、浸透性の増加は、腫瘍または腫瘍間質における浸潤性リンパ球の存在の増加によって測定することができる。
【0053】
腫瘍は固体腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は放射線であってもよく、画像診断により測定された腫瘍の大きさの減少によって、浸透性の増加を測定することができる。
【0054】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は遺伝子治療薬であってもよく、腫瘍の微小環境における免疫応答の増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0055】
IgE抗体は、MUC1に特異的な抗体であってもよい。
【0056】
MUC1に特異的な抗体は、配列番号:5から選択されるMUC1のエピトープに結合し得る。
【0057】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:1を含む核酸によってコードされ得、ここで、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:2を含む核酸によりコードされ得る。
【0058】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:3を含む核酸によってコードされ得、ここで、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:4を含む核酸によりコードされ得る。
【0059】
MUC1に特異的な抗体は、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0060】
腫瘍は、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌または肺癌であってもよい。
【0061】
腫瘍はインビボまたはインビトロであってもよい。
【0062】
間質周囲の浸透性の増加は、a)抗癌剤の治療指数の増加、b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善、c)治療に使用される抗癌剤の量の減少、d)腫瘍間質の浸透性の増加、およびe)腫瘍間質の枯渇、をもたらす。
【0063】
抗癌剤は、前記IgE抗体の後に使用することができる。
【0064】
抗癌剤は、IgE抗体の前に使用することができる。
【0065】
抗癌剤は、IgE抗体と同時に使用することができる。
【0066】
IgE抗体は、腫瘍間質に関連する抗原に特異的であり得る。
【0067】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍周囲の間質の浸透性を増加させるための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物が提供される。
【0068】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を含む組成物が提供される。
【0069】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における癌の治療に使用するための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を含む組成物が提供される。
【0070】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍の成長を抑制するのに使用するための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を含む組成物が提供される。
【0071】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量、および、少なくとも1つの抗癌剤を含む組成物が提供される。
【0072】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における固形腫瘍周囲の間質を調節するための組成物であって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を含む組成物が提供される。
【0073】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における抗癌剤に対する腫瘍の感受性を増強するための組成物であって、抗癌剤と組み合わせて、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量を含む組成物が提供される。
【0074】
IgE抗体は、癌抗原または腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的であり得る。
【0076】
前記組成物は抗癌剤をさらに含んでいてもよい。
【0077】
抗癌剤は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、放射線、光増感剤、遺伝子治療薬およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0078】
IgE抗体および抗癌剤は同時に投与されてもよい。
【0079】
IgE抗体は、抗癌剤に結合されていてもよい。
【0080】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取込みの増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0081】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は免疫療法剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質における浸潤性リンパ球の存在の増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0082】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は放射線であってもよく、画像診断により測定された腫瘍の大きさの減少によって、浸透性の増加を測定することができる。
【0083】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は遺伝子治療薬であってもよく、腫瘍の微小環境における免疫応答の増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0084】
IgE抗体はMUC1に特異的な抗体であってもよい。
【0085】
MUC1に特異的な抗体は、配列番号:5から選択されるMUC1のエピトープに結合することができる。
【0086】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:1を含む核酸によってコードされ得、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:2を含む核酸によりコードされ得る。
【0087】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:3を含む核酸によってコードされ得、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:4を含む核酸によりコードされ得る。
【0088】
MUC1に特異的な抗体は、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0089】
腫瘍は、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌または肺癌であってもよい。
【0090】
腫瘍は、インビボまたはインビトロであってよい。
【0091】
前記間質の周囲の浸透性の増加は、a)抗癌薬の治療指数の増加;b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善;c)治療に使用する抗癌剤量の減少;d)腫瘍間質の浸透性の増加;およびe)腫瘍間質の枯渇、をもたらし得る。
【0092】
抗癌剤は、前記IgE抗体の後に使用することができる。
【0093】
抗癌剤は、IgE抗体の前に使用することができる。
【0094】
抗癌剤は、前記IgE抗体と併用することができる。
【0095】
IgE抗体は、腫瘍間質に関連する抗原に特異的であり得る。
【0096】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍周囲の間質の浸透性を増加させるために使用するキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量とキットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0097】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0098】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における癌の治療に使用するためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0099】
別の実施形態によれば、それを必要とする患者における癌腫瘍の成長を阻害するために使用するキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0100】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加するためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0101】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加するためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示、が含まれているキットが提供される。
【0102】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における固形腫瘍周囲の間質を調節するためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0103】
別の実施形態によれば、それを必要とする被験体における抗癌剤に対する腫瘍の感受性を増強するためのキットであって、癌抗原、腫瘍の間質内またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的な少なくとも1つのIgE抗体の有効量;少なくとも1つの抗癌剤;および、キットの使用方法に関する指示を含むキットが提供される。
【0104】
IgE抗体は、癌抗原または腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的であり得る。
【0105】
キットは、抗癌剤をさらに含むことができる。
【0106】
抗癌剤は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、放射線、光増感剤、遺伝子治療薬およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0107】
IgE抗体および抗癌剤は同時に投与されてもよい。
【0109】
IgE抗体は、抗癌剤に結合されていてもよい。
【0110】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取込みの増加により、浸透性の増加を測定することができる。
【0111】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は免疫療法剤であってもよく、腫瘍または腫瘍間質中の浸潤性リンパ球の存在の増加により、浸透性の増加が測定される。
【0112】
腫瘍は固体腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は放射線であってもよく、画像診断により測定された腫瘍の大きさの減少によって浸透性の増加を測定することができる。
【0113】
腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は遺伝子治療薬であってもよく、前記腫瘍の微小環境における免疫応答の増加により、前記浸透性の増加を測定することができる。
【0114】
IgE抗体は、MUC1に特異的な抗体であってもよい。
【0115】
MUC1に特異的な抗体は、配列番号:5から選択されるMUC1のエピトープに結合することができる。
【0116】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:1を含む核酸によってコードされ得、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:2を含む核酸によりコードされ得る。
【0117】
MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は配列番号:3を含む核酸によってコードされ得、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は配列番号:4を含む核酸によりコードされ得る。
【0118】
MUC1に特異的な抗体は、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEまたはそれらの組み合わせであってもよい。
【0119】
腫瘍は、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌または肺癌であってもよい。
【0120】
腫瘍は、インビボまたはインビトロであってよい。
【0121】
間質周囲の浸透性の増加は、a)抗癌剤の治療指数の増加;b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善;c)治療に使用する抗癌剤量の減少;d)腫瘍間質の浸透性の増加;およびe)腫瘍間質の枯渇、をもたらす。
【0122】
抗癌剤は、IgE抗体の前に使用することができる。
【0123】
抗癌剤は、前記IgE抗体と併用することができる。
【0124】
IgE抗体は、腫瘍間質に関連する抗原に特異的であり得る。
【0125】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのIgE抗体を含む組成物;および、少なくとも1つの化学療法薬を含む組み合わせが提供され、ここで、前記組み合わせは、当該抗癌剤を単独で投与した場合の抗癌剤の腫瘍への送達と比較して、被験体における腫瘍への抗癌剤の送達を増加させる。
【0126】
本発明は、腫瘍の部位、特に固体腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための組成物および方法を提供する。一実施形態において、本発明によるIgE抗体と抗癌剤の組み合わせによって、例えば固形腫瘍の部位への抗癌剤の送達が増加する。一実施形態において、本発明によるIgE抗体と抗癌剤の組み合わせによって、腫瘍の抗癌剤に対する応答性および感受性が増強される。
【0127】
本発明の主題の特徴および利点は、添付図面に示すように、選択された実施形態の以下の詳細な説明を鑑みて、より明らかになるであろう。理解されるであろう通り、開示され、特許請求される発明の主題は、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な点で修正することができる。したがって、図面および説明は、限定的なものではなく本質的に例示的なものと見なされるべきであり、本発明の主題の全範囲は特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0129】
本発明の好ましい実施形態の説明は、以下の通りである。
【0130】
(I.定義)
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定の量の特定の成分を含む製品、ならびに、特定の量の特定の成分の組合せから直接的または間接的に由来する任意の製品をも包含することが意図される。薬学的組成物または他の組成物に関するこのような用語は、一般的に、活性成分と担体を構成する不活性成分とを含む製品、ならびに、二以上の任意の成分の組み合わせ、錯体化もしくは凝集、一または複数の成分の解離、または、一または複数の成分の他の種類の反応または相互作用に直接的または間接的に由来する任意の製品をも包含することを意図する。したがって、本発明の一般的な医薬組成物または他の組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを混合することにより製造される任意の組成物を包含する。「薬学的に許容可能な」または「許容可能な」とは、担体、希釈剤または賦形剤は、配合物の他の成分と相溶性でなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならないことを意味する。
【0131】
いくつかの実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、連邦または州政府の規制当局によって承認されていること、または、動物、特にヒトに使用するための、米国薬局方または他の一般に認識されている薬局方に掲載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬が投与される際の希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを意味する。
このような薬学的担体は、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等といった、石油、動物、植物、または合成由来のものを含む、水および油等の無菌液体であり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好ましい担体である。生理食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液は、液体担体、特に注射可能な溶液としても使用することができる。好適な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が含まれる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態をとることができる。組成物は、伝統的な結合剤およびトリグリセリドのような担体を用いて、坐薬として処方することができる。経口製剤は、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的な担体を含むことができる。適切な医薬担体の例は、E.W.Martin著の“Remington's Pharmaceutical Sciences”に記載されている。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するために、好ましくは精製形態で、適切な量の担体と共に、治療上有効な量の抗体またはそのフラグメントを含有する。処方は、投与方法に適合させるべきである。
【0132】
本発明の文脈において使用される「抑制する」、「抑制」または「抑制すること」という用語は、遅らせたり、抑制したり、制限したり、防止したりすることを意味する。例えば、本明細書で使用されるような腫瘍細胞の「成長を阻害すること」は、腫瘍細胞の増殖を遅らせること、阻害すること、抑制すること、低減すること、または防止することを意味する。
【0133】
本明細書で使用される「投与」という用語は、癌抗原、腫瘍の間またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的なIgE抗体を含有する組成物を単独で、または少なくとも1つの抗癌剤と組み合わせて暴露または接触させることをもたらす任意の処置を意味する。本明細書で使用されるように、投与は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで行うことができる。例えば、注射または内視鏡を介して組成物を投与してもよいまた、投与は本発明による組成物を細胞へ直接適用することをも含む。例えば、手術の過程において、腫瘍細胞を組成物に暴露させることができる。本発明の一実施形態によれば、これらの暴露される細胞(または腫瘍)は、手術部位および/または細胞を洗浄または灌水することにより、または癌抗原、腫瘍の間またはその周囲に存在する抗原、またはそれらの組合せに特異的なIgE抗体を少なくとも1つの抗癌剤と共に、個別にまたは混合物として直接的に腫瘍内へ注射することにより、本発明の組成物に直接暴露されてもよい。
【0134】
「エピトープ」という用語は、抗体によってその結合領域の1つまたは複数において認識され、結合され得る抗原の部分を意味することが意図される。エピトープは、一般に、アミノ酸または糖側鎖のような、分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。一実施形態では、抗原のエピトープは反復エピトープである。一実施形態では、抗原のエピトープは非反復性エピトープである。
【0135】
「治療用IgE抗体」または「IgE抗体」という用語はFcエプシロン(ε)定常領域と、抗原(例えば、癌抗原や腫瘍間質内または周囲に存在する抗原)に特異的で、標的細胞上や循環系中の抗原に結合して患者に治療効果をもたらす少なくとも一つの抗原結合領域からなる様々な領域とを含む抗体を含むが、それに限定されない。一実施形態では、抗原は、被験体に存在する未変性のIgEの正常な生理的標的となるアレルゲンまたは他の抗原ではない。1つの態様において、治療用IgE抗体またはIgE抗体は、モノクローナル抗体である。1つのクラスの治療用IgEモノクローナル抗体は、本明細書中に参照により援用する米国特許出願第13/456492号明細書に記載されている。
【0136】
別の実施形態において、用語「治療用IgE抗体誘導体」または「IgE抗体誘導体」は、F(ab)
2やF(ab)、DabなどのIgE抗体の断片;IgE抗体の反応性部分を表す単鎖抗体;IgEエフェクター機能を媒介する分子に融合した抗原結合ペプチド;および上記のいずれかの断片の模倣体を含むがこれらに限定されないIgE治療抗体またはIgE抗体の誘導体を指す。参照の便宜上、「治療用IgE抗体」または「IgE抗体」という用語は、本明細書において、IgE抗体およびIgE抗体誘導体の両方を総称的に言及するために使用される。
【0137】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、分子組成が単一な抗体の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す。本発明のモノクローナル抗体は、宿主被験体がヒトである場合、ヒトfcε受容体を結合するために、好ましくは、キメラであり、ヒト化され、または、完全ヒト型である。ヒト化および完全ヒト型抗体はまた、宿主被験者がヒトである場合、マウス成分、例えば、キメラ抗体への免疫原性を低減するのにも有用である。モノクローナル抗体の製造方法は、当該技術分野において周知である。治療用IgEモノクローナル抗体は、本明細書中で参照されているUSSN13/456492に記載されている。
【0138】
用語「抗原結合領域」は、抗原と相互作用し、抗体に対して抗原に対する特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含有するIgE抗体の部分を意味する。抗体領域は、抗原結合残基の適切な立体構造を維持するのに必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。
【0139】
「抗原」は、抗体によって結合されることができ、さらに、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するように動物を誘導することができる分子または分子の一部である。一実施形態では、抗原は、本発明のIgE抗体によって結合されて、免疫複合体を形成することができ、この免疫複合体は、抗原に対して特異的なIgE媒介性免疫応答をそのような免疫応答を開始できる患者において誘導することができる。本明細書で使用されるように、「(当該)免疫応答を開始可能な患者」は、投与された本発明のIgE抗体に対して受容体親和性を有する機能性T細胞、肥満細胞、好塩基球、好酸球、単球、マクロファージおよび樹状細胞を有するヒト患者または他の動物のような被験体であり、その免疫系において機能性T細胞、肥満細胞、好酸球および樹状細胞の生成を可能にするヒトIgEと結合することができるfcε受容体を含まない非ヒト動物モデルとは区別される。
【0140】
本明細書で使用される「抗癌剤」という用語は、化学療法薬;免疫療法剤(ペプチドワクチン等);放射線療法;光増感剤(光線力学的治療);ならびに、免疫応答修飾子を含むプラスミドおよびベクターのような遺伝子治療薬といった抗腫瘍剤を含むが、それらに限定されるものではない。「薬剤」は、単一の化合物であってもよいし、2種類以上の化合物の組合せまたは組成物であってもよいことも理解されるべきである。
【0141】
本明細書で使用される「抗腫瘍剤」は、癌の発症を抑制し、かつ食い止める薬剤である。抗腫瘍剤には、化学療法剤、モノクローナル抗体、およびキナーゼ阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
「免疫療法剤」という用語は、免疫調節因子、サイトカイン、増殖因子、免疫調節抗体、ワクチン、および免疫賦活剤を意味する。例として、IL2、GMCSF、αインターフェロン、βインターフェロン、イピリムマブ、ベバシズマブ、オレゴボマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、シプロイセルT、α樹状細胞、養子性T細胞療法、サポニン、およびTLRアゴニスト(例えば、polylC、polylCLC(Hiltonol(登録商標))等のTLR3アゴニスト;TLR4アゴニスト)、抗PD−1抗体、抗PDL−1、抗CTLA−4抗体、またはこれらの受容体の分子阻害剤等の免疫恒常性チェックポイント阻害剤が含まれる。免疫恒常性チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント分子に向けられたモノクローナル抗体(mAb)であり、免疫細胞上で発現され、シグナルを媒介して過剰な免疫反応を減衰させる。実施形態によれば、免疫恒常性チェックポイント阻害は、阻害型免疫受容体CTLA−4、PD−1及びPDL−1に向けられた阻害性モノクローナル抗体を用いて実施されることができる。いくつかの実施形態によれば、このような阻害剤は、進行型の黒色腫を有する患者のための成功した治療方法として出現した。一実施形態によれば、免疫恒常性チェックポイント阻害剤は、抗CTLA−4、抗PD−1、および/または抗PDL−1抗体のうちの一つであってもよい。一実施形態によれば、抗CTLA−4抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブまたはそれらの組合せであってよい。別の実施形態によれば、抗PDL−1抗体は、B7−H1抗体、BMS−936559抗体、MPDL3280A(アテゾリズマブ)抗体、MEDI−4736抗体、MSB0010718C抗体、またはそれらの組合せであってもよい。別の実施形態によれば、抗PD−1抗体は、ニボルマブ抗体、ペムブロリズマブ抗体、ピジリズマブ抗体、またはそれらの組み合わせであってもよい。さらに、PD−1は、PD−L2−IgG組換え融合タンパク質であるAMP−224を標的とすることもできる。免疫応答における阻害経路のさらなるアンタゴニストは、臨床開発を通じて進歩している。IMP321は、腫瘍に対する免疫応答を増加させるために使用される、可溶性LAG−3Ig融合タンパク質およびMHCクラスIIアゴニストである。LAG3は、免疫チェックポイント分子である。リリルマブはKIR受容体に対するアンタゴニストであり、BMS986016はLAG3のアンタゴニストである。第3の阻害性チェックポイント経路は、チェックポイント阻害のための有望なターゲットであるTIM−3−ガレクチン−9経路である。RX518は、調節T細胞、エフェクターT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、および活性化された樹状細胞を含む複数種類の免疫細胞の表面に発現されるTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであるグルココルチコイド誘導腫瘍壊死因子受容体(GITR)を標的とし、活性化する。
【0143】
本明細書で使用される「光増感剤」という用語は、一般的に非毒性の感光性化合物で、選択的に光に暴露されたときに、標的とされた悪性細胞および他の罹患細胞に毒性を示すようになる、光線力学療法(PDT)に有用な薬物を意味する。本発明により有用なそのような光増感剤化合物の例としては、英国特許第2442915号明細書および米国特許出願公開第2002/0155089号明細書に記載されているものが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0144】
本明細書で使用される「遺伝子治療薬」という用語は、一過性の遺伝子発現および翻訳、または、コードされた遺伝子産物(しばしば、成長因子および腫瘍抗原である)のより長期的な発現のための遺伝物質の組み込み、のいずれかを達成する意図をもって患者に投与される核酸構造物を意味する。例としては、Garnettら著Curr. Pharm Des. 12(3):351 -61(2006年)に記載されたTRICOMベクター、および、アデノ随伴ベクタープラスミド(AAV)が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本明細書で使用される「腫瘍」という用語は、細胞または組織の異常な成長をいい、良性(すなわち、非癌性)の成長および悪性(すなわち、癌性の)成長を含むものと理解される。「腫瘍」という用語は、腫瘍を意味するか、または、腫瘍に関連している。「腫瘍」は、本明細書において用語「癌」と同義的に使用される。
【0146】
化学療法剤に関して本明細書で使用される「治療指数」(TI)という用語は、LD
50/ED
50の比である。化学療法組成物の治療効果および生じ得る毒性は、細胞培養物または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定することができる(例えば、ED
50、すなわち、集団の50%において治療的に有効な用量;および、LD
50、すなわち、集団の50%に対して致死的な用量)。一実施形態では、化学療法剤の治療指数は、本発明によるIgE抗体と共投与された場合、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、より少なくとも約10倍あるいはそれ以上増加する。ヒトにおいて、治療指数はTD
50/ED
50として定義され、ここで、TD
50は中毒量中央値である。多くの抗腫瘍剤は高度の毒性があり、治療濃度域が狭いため、薬剤に対する全身暴露を減少させながら、病状部位へのこれらの薬剤の送達を改善することは臨床管理における望ましい改善であり、毒性を低減しつつ薬剤の治療効果が維持または改善されることとなる。
【0147】
「抗癌剤の送達を増加させる」という用語は、固形腫瘍のような腫瘍の部位への抗癌剤の送達が、本発明によるIgE抗体との同時投与をせずに抗癌剤を投与する場合と比較して、本発明による抗癌剤とIgE抗体との共投与の結果として増加することを意味する。
【0148】
適切なアッセイから得られた比較データは、治療指数が増加されたか否かを決定する際に使用される。一実施形態では、間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みによって測定される通り、化学療法剤等の抗腫瘍剤の腫瘍への送達は増加する。一実施形態では、腫瘍または間質における腫瘍浸潤性リンパ球の存在の増加によって測定される通り、腫瘍への免疫療法剤の送達は増加する。一実施形態では、腫瘍または間質における腫瘍浸潤性リンパ球の存在の増加によって測定される通り、腫瘍への放射線の送達は増加する。一実施形態では、画像診断において腫瘍サイズの減少によってモニタリングされる通り、腫瘍への光増感剤の送達は増加する一実施形態では、被験体における標的免疫応答によって測定される通り、免疫応答修飾因子を含むプラスミドおよびベクターのような遺伝子治療薬の送達は増加する。
【0149】
本明細書で使用される「抗癌剤の少なくとも1つの副作用を改善する」という用語は、(a)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の大きさおよび/または持続時間を減少させること;および/または、(b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用を完全に排除すること;および/または(c)本発明のIgE組成物を投与しないと生じる1つ以上の副作用の発症を防止すること、を含む。このような抗癌剤の副作用は、腎毒性、神経毒性、聴器毒性、骨髄機能抑制、脱毛症、体重減少、嘔吐、悪心および免疫抑制を含むが、これらに限定されるものではない。特定の抗癌剤の1つ以上の副作用の改善は、当業者による日常的な実験方法によって容易に測定することができる。
【0150】
本明細書で使用される場合、「腫瘍の抗癌剤に対する応答性および感受性を増強する」こととは、腫瘍細胞を抗癌剤による治療に対してさらに感受性を与えることを意味する。抗癌剤に対する効果が増強された腫瘍細胞は、臨床分野における抗腫瘍剤の活性を測定するための標準的な技術によって測定される通り、細胞の生存性または腫瘍の大きさについて測定可能な程度に高い減少を示す。臨床結果の標準的な測定には、本発明の方法に従って、増強組成物(例えば、IgE抗体)の非存在下で抗癌剤を同じ投与量で曝露された癌細胞と比較した場合におけるヒト患者および動物モデルにおける標的病変の総解剖学的または放射線学的測定、成長速度の測定、無増悪生存期間および全生存期間の測定を含む。
【0151】
本明細書で使用される「化学療法剤」という用語は、癌細胞を破壊し、もしくは癌細胞に悪影響を及ぼすために被験体に投与される薬剤である。
【0152】
本明細書で使用される「癌」という用語は、患者の身体内の細胞が、異常で、制御されていない増殖を経験する状態を意味するために使用される。異常細胞(本明細書では「癌細胞」とも呼ばれる)は増殖して固形腫瘍を形成し、または増殖して多数の細胞(例えば、白血病)を形成することができる。なお、癌とは患者の細胞の異常で制御されていない増殖であるから、当該用語は細胞の正常な増殖を包含しない。
【0153】
「被験体」は、ヒト被験者であることが好ましいが、自己免疫反応の調節が所望される動物モデルを含む、任意の哺乳動物であってもよい。対象となる哺乳動物は、例えば、マウス、ラット等のげっ歯類;例えば、ブタ、ウマ、ウシ等の家畜類;例えば、イヌ、ネコ、および霊長類等のペット類を含むが、これらに限定されるものではない。被験体は、本明細書中において「患者」と呼ばれることもある。当該「被験体」は、機能性肥満細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、樹状細胞、およびランゲルハンス細胞を有する。ヒトにおいて、これらの細胞の全ては、投与された本発明によるIgE抗体に対する、IgE高親和性受容体(FCεRI)を発現する。
【0154】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、少なくとも1つの症状または障害、疾患、疾病、または他の病態(本明細書では集合的に「病態」と呼ぶ)の他の態様の緩和、治癒または予防、または病態の重篤度の低下等を包含する。本発明の組成物は、実行可能な治療剤を構成するために、完全な治癒に影響を与えたり、疾患のあらゆる症状または徴候を根絶したりする必要はない。
【0155】
関連分野で認識されているように、治療薬として使用される薬物は、有用な治療薬としてみなされるために、所与の疾患状態の重篤度を減少させることができるが、疾患の発現を全て解消する必要はない。有益な、あるいは所望の臨床結果は、症状の緩和、疾患の程度の減少、病状の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延または鈍化、疾病状態の改善又は緩和、寛解(部分的であるか全部であるか、検出可能か否かを問わず)、疾患の再発の予防を含むがこれらに限定されるものではない。同様に、予防的に施される治療は、実行可能な予防剤を構成するために、病態の発症の予防に完全に有効である必要はない。被験体において単純に疾患の影響を軽減するか(例えば、症状の数または重症度を減らすことによって、または、別の治療の有効性を高めることによって、または別の有益な効果を生じさせることによって)、または疾患が起こるかまたは悪化する可能性を低減すれば十分である。
【0156】
「治療」とは、治療を受けない場合に予想される生存と比較して生存を長くすることができることをも意味し得る。一実施形態では、治療上有効な量の組成物が患者に投与されたことの兆候は、特定の障害の重症度を反映する指標のベースラインよりも持続的に改善されることである。
【0157】
本発明の組成物の「治療上の有効量」とは、任意の医療処置に適用可能な妥当な利益/リスク比率において、治療された被験体に対して治療効果を付与する組成物の量を意味する。治療効果は、本明細書で使用される通り、患者を「治療」するのに十分である。
【0158】
本明細書で使用される場合、「共投与」または「組合せ」での投与という用語は、少なくとも1つのIgE抗体と組み合わせて、少なくとも1つの抗癌剤を被験体に投与することを意味する。抗癌剤とIgE抗体は、本明細書に開示された方法にしたがって、同時に、別個に、または連続的に投与することができる。
【0159】
本明細書で使用される「IgE抗体の間質調節量」という語句は、腫瘍内で反応を引き起こすのに十分な量のIgE抗体を意味し、例えば、著しい全身免疫反応を引き起こすことなく、腫瘍間質の枯渇および/または間質浸透性の増加を可能にすることを意味する。
【0160】
本明細書で使用される「IgE抗体の有効量」という語句は、例えば、著しい全身免疫反応を引き起こすことなく、腫瘍間質の枯渇および/または間質浸透性の増加などの腫瘍における反応を引き起こすのに十分な量のIgE抗体を意味する。
【0161】
本明細書で使用される場合、腫瘍間質の「枯渇」は、本発明による治療用IgE抗体との接触前の腫瘍間質と比較した腫瘍間質のサイズの減少、および、悪性細胞と間質および投与された抗腫瘍剤との相互作用が基本的に変化するような間質の栄養能力の改変を含む。変化には、腫瘍の第三空間に抗腫瘍剤の蓄積をもたらし得る腫瘍間質における細胞からの漏出の増加が含まれ得るが、間質構造の改変、繊維足場の破壊、宿主応答を標的とする腫瘍の浸潤の増強をも含むことができる。
【0162】
本明細書で使用される「間質浸透性の増加」という用語は、腫瘍空間への血管漏出の変化、例えば、T細胞の腫瘍微小環境への浸潤能力を含む。例えば、腫瘍モデル、マウスに同所的に配置された同系膵臓癌、サンプルの皮下腫瘍成長モデルにおいて、本発明による処置の前後で様々な分子量(MW)のデキストランを画像化することができ、効果の大きさとMWサイズの制限をキャラクタライズできる標識されたデキストランについて複数のカットオフを使用することにより、腫瘍空間への血管漏出の変化を実証することができる。別の例では、動物にワクチン接種し、腫瘍特異的T細胞の誘導を実証することができ、それらのT細胞を除去し、それらを自己T細胞療法として培養し、IgE投与有り、または、IgE投与無しで、それらを注入し、これらのT細胞が腫瘍に定着する能力の変化を実証することができる。これはまた、エクスビボT細胞療法アプローチを使用して、またはワクチン接種動物自体において単に実験的に行うことができる読み出す情報は、T細胞の浸潤であり、最終的には外因性細胞イメージングモダリティを標識することによる動物の生存を利用することができる。
【0163】
本明細書で使用される「腫瘍間質」は、癌細胞を囲む線維性組織をいう。これは、一般に、線維芽細胞、マスト細胞、炎症性細胞および血管細胞から形成され、さらに、筋線維芽細胞の存在により特徴付けられる。
【0164】
本発明を詳細に説明する前に、いくつかの用語を定義する。本明細書で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0165】
ここで、「好ましくは」、「一般的に」、「典型的に」といった用語は、本明細書において、特許請求された本発明の範囲を限定するためには用いられず、また、特定の特徴が特許請求された本発明の構造や機能にとって重大であること、必要不可欠であること、さらには重要であることを示唆するためには用いられない。むしろ、これらの用語は、単に本発明の特定の実施形態において利用することができる、または利用することができない代替の特徴、または追加の特徴を強調することが意図されている。
【0166】
ここで、本発明を説明し、定義する目的で、本明細書では、「実質的に」という用語は、定量的な比較、価値、測定、または他の表現に起因する不確実性の固有の程度を表すために使用される。用語「実質的に」はまた、本明細書において、発明の主題の基本機能に変化をもたらさずに、定量的表現が記載された参照と異なりうる程度を表すために利用される。
【0167】
(II.組成および方法)
一実施形態によれば、本発明の組成物および方法は、癌細胞、特に固形腫瘍に関連する癌細胞への抗癌剤の送達を増加させるために使用することができ、ここで、この方法は、治療有効量の少なくとも1つのIgE抗体および少なくとも1つの抗癌剤の被験体への共投与の工程を含む。抗癌剤およびIgE抗体は、別々の、または、組み合わせた製剤のいずれかで同時に、または、異なる時間に、任意の順序で、数分、数時間、数日または数週間の間隔でよいが、何らかの方法で共同に作用して望ましい治療反応を提供するようにして、連続的に投与することができる。
【0168】
固形腫瘍などの腫瘍に対する抗癌剤の送達は、本発明によるIgE抗体の共投与の非存在下での同じ抗癌剤の送達と比較して増加する。一実施形態では、間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みによって測定される通り、化学療法剤などの抗腫瘍剤の腫瘍への送達は増加する。一実施形態では、腫瘍または間質における腫瘍浸潤リンパ球の存在の増加によって測定される通り、腫瘍への免疫療法剤の送達は増加する。一実施形態において、画像診断において腫瘍サイズの減少によって測定される通り、腫瘍への放射線の送達は増加する。一実施形態では、画像診断における腫瘍サイズの減少によってモニタリングされる通り、光増感剤の腫瘍への送達は増加する。一実施形態では、免疫応答によって測定される通り、腫瘍に対する免疫応答修飾因子を含むプラスミドおよびベクターのような遺伝子治療剤の送達は増加する。
【0169】
全ての腫瘍は間質を有し、栄養補助および廃棄物の除去のために間質を必要とする。白血病の場合、血漿は間質として機能するが、追加の間質応答、血管新生が骨髄に発生する可能性がある。体腔内で腫瘍が増殖すると、血漿滲出液(例えば、腹水)が間質をもたらす。固形腫瘍では、間質には、結合組織、血管、および非常にしばしば炎症細胞が含まれ、それらのすべてが悪性細胞と正常な宿主組織との間に介在する。すべての腫瘍において、間質は大部分が宿主の産物であり、腫瘍細胞−宿主相互作用の結果として誘導される。固形腫瘍は、それらのタイプまたは細胞起源にかかわらず、1〜2mmの最小サイズを超えて成長する場合、間質を必要とする。固形腫瘍の間質はまた、炎症細胞の流入を制限し得るか、または腫瘍細胞の流出(侵襲)を制限し得る。したがって、間質は、腫瘍増殖に必要な生命線を提供すると同時に、流体、気体、および細胞の相互交換を阻害し、かつ調節し得る障壁を課す。
【0170】
腫瘍の生存および成長にとって新しい血管形成が並はずれて重要であるため、当然のことながら、腫瘍の血管新生に重点が置かれた。しかしながら、この重点は、他の腫瘍間質成分を過小評価するという不運な傾向を伴う。血管は、腫瘍間質の1つの成分に過ぎない。実際、多くの腫瘍において間質の大部分は間質結合組織を含み、血管は間質塊のわずかな成分でしかない。大部分において、腫瘍間質は、循環血液および隣接する宿主結合組織に由来する要素によって形成される。
【0171】
したがって、固形腫瘍では、間質は栄養源および障壁の両方として作用することができるが、間質は腫瘍と混ざり、正常組織から除去された腫瘍の測定および画像にある程度含まれる。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、本発明に従って使用されるIgE抗体は、間質組織の基本的な生物学的特性を改変し、改変された炎症環境を作り出し、当該改変された炎症環境が、抗癌治療の単位用量あたりの増大した送達で細胞および化学物質のこの空間への送達を促進し得る。腫瘍および周囲間質に対するIgEの効果の定量方法は、当該技術分野で使用される腫瘍サイズの標準的な測定であり得るが、細胞構造の形態比較、腫瘍微小環境において産生される局所的サイトカイン、ケモカインおよびメディエーターの測定でもあり得る。
【0172】
本発明の併用療法計画は、抗癌治療計画を増強する多くの利益を提供する。このような利点の1つとして、疾患を治療するのに必要な抗癌剤の量を減少させることが含まれる。一実施形態では、本発明によるIgE抗体と抗癌剤との組み合わせは、抗癌剤の少なくとも1つの副作用を改善する。一実施形態では、本発明に従ってIgE抗体を化学療法剤である抗癌剤と組み合わせると、化学療法剤の治療指数が増加する。一実施形態では、本発明に従ってIgE抗体を抗癌剤と組み合わせると、例えば、腫瘍間質を枯渇させることによって腫瘍周囲の間質を調節する。一実施形態では、本発明に従ってIgE抗体を抗癌剤と組み合わせると、腫瘍周囲の間質の浸透性が増大する。抗癌治療計画において本発明の組成物および方法により提供される他の利点は当業者にとって明らかであろう。
【0173】
一実施形態では、IgE抗体は、腫瘍間質内およびその周囲に見出される抗原を含む、腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的である。腫瘍間質に関連する標的抗原は、正常細胞または腫瘍起源であり得る。膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌および肺癌などの難治性癌に関連する腫瘍は、間質が豊富であることが知られている。
【0174】
例えば、正常な生体内に存在するコラーゲンは、炎症組織および腫瘍間質組織においてよく発達している。IV型コラーゲンは腫瘍血管の周囲で豊富であり、一方、腫瘍細胞と腫瘍血管との間ではI型コラーゲンおよびII型コラーゲンが優勢である。エラスチン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニンも腫瘍間質に存在する。これらのタンパク質は本発明によるIgEのための標的を提供する。
【0175】
さらに、腫瘍の微小環境において、抗原は、本発明によるIgE抗体が標的とすることができる間質細胞上に誘導または上方制御される。そのような標的としては、癌関連線維芽細胞(CAF)、腫瘍内皮細胞(TEC)および腫瘍関連マクロファージ(TAM)が含まれるが、これらに限定されない。癌関連線維芽細胞(CAF)の例としては、炭酸脱水酵素IX(CAIX);線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPα);MMP−2およびMMP−9を含むマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍内皮細胞(TEC)標的抗原の例には、VEGFR−1,2および3を含む血管内皮増殖因子(VEGF);CD−105(エンドグリン)、TEM1およびTEM8を含む腫瘍内皮マーカー(TEM);MMP−2;サバイビン;および前立腺特異的膜抗原(PMSA)が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍関連マクロファージ抗原の例には、CD105;MMP−9;VEGFR−1、2、3およびTEM8が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
一実施形態では、IgE抗体は、腫瘍細胞上に位置する標的抗原、例えば、VEGFR−2、MMP、サバイビン、TEM8およびPMSAに特異的であり得る。一実施形態では、IgE抗体は、当該分野で公知の任意のタイプの癌抗原に特異的である。癌抗原は、上皮癌抗原(例えば、乳癌、胃腸癌、肺癌)、前立腺特異的癌抗原(PSA)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)、膀胱癌抗原、肺(例えば、小細胞肺)癌抗原、結腸癌抗原、卵巣癌抗原、脳癌抗原、胃癌抗原、腎細胞癌抗原、膵臓癌抗原、肝癌抗原、食道癌抗原、頭頸部癌抗原、または結腸直腸癌抗原であり得る。癌抗原は、リンパ腫抗原(例えば、非ホジキンリンパ腫またはホジキンリンパ腫)、B細胞リンパ腫癌抗原、白血病抗原、骨髄腫(すなわち多発性骨髄腫または形質細胞性骨髄腫)抗原、急性リンパ芽球性白血病抗原、慢性骨髄性白血病抗原、または急性骨髄性白血病抗原であり得る。
【0177】
他の癌抗原としては、多発性骨髄腫およびいくつかのB細胞リンパ腫を含む、膵臓、結腸、乳房、卵巣、肺、前立腺、頭頸部の全てのヒト腺癌に見られるムチン−1タンパク質またはペプチド(MUC−1);メラノーマおよび大腸癌に関連する突然変異型B−Raf抗原;ヒト上皮増殖因子受容体−2(HER−2/neu)抗原;肺癌、頭頚部癌、結腸癌、直腸結腸癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、卵巣癌、脳癌および膀胱癌に関連する上皮増殖因子受容体(EGFR)抗原;アンドロゲン−非依存性の前立腺癌において一般的に発現する前立腺特異的抗原(PSA)および/または前立腺特異的膜抗原(PSMA);メラノーマ癌胎児性(CEA)抗原に関連するgp−100(グリコプロテイン100);ルイスA血液型物質に関係し、直腸結腸癌に関連する炭水化物抗原19.9(CA19.9);MART−1等のメラノーマ癌抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
したがって、実施形態において、IgE抗体は、任意の適切な抗体であり得る。他の実施形態によると、IgE抗体は、例えば、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEであり得る。別の実施形態によれば、IgE抗体は、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体または完全ヒト型モノクローナル抗体であり得る。
【0179】
抗原に対するマウス抗体などの抗体を産生させるための方法および選択された抗体が固有の抗原エピトープに結合するかどうかを判定するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0180】
所望の抗体のスクリーニングは、例えばラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫放射線測定アッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば、金コロイド、酵素、放射性同位体標識を利用したもの)、ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集アッセイ)、補体固定アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイ等の当業者にとって周知の技術によって達成される。イムノアッセイにおける結合を検出するための多くの手段が当該技術分野において知られており、それらは本発明の範囲内である。
【0181】
モノクローナル抗体の調製のためには、培養中の連続細胞系による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いることができる(例えば、Antibodies--A Laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York, 1988参照)。これらには、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunology Today, 4:72)、およびヒトモノクローナル抗体を産生するEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)と同様に、KohlerおよびMilsteinによって最初に開発されたハイブリドーマ技術(1975, Nature 256:495-497)が含まれるが、これらに限定されない。本発明のさらなる実施形態において、モノクローナル抗体は、最近の技術(国際出願番号PCT/US90/02545)を利用して、無菌動物において産生され得る。本発明によれば、ヒト抗体は、ヒトハイブリドーマ(Cote et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:2026-2030)を用いて、またはヒトB細胞をEBVウイルスin vitroで形質転換すること(Cole et al., 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77-96)により、使用することができ、また、取得することができる。実際、本発明によれば、「キメラ抗体」の作製するために開発された技術(Morrison et al., 1984, J. Bacteriol. 159: 870; Neuberger et al., 1984, Nature 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature 314: 452-454)は、ポリペプチドに特異的なマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングすることにより、使用することができ、このような抗体は本発明の範囲内である。
【0182】
一実施形態では、本発明で使用される抗体は、配列番号:1を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域;配列番号:2を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域およびそれらの任意の組合せから選択される核酸配列を含むIgEモノクローナル抗体であり、ここで、重鎖および軽鎖はそれぞれヒトイプシロン重鎖およびカッパ軽鎖遺伝子に移植される。
【0183】
一実施形態では、本発明で使用される抗体は、配列番号:3を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域;配列番号:4を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域およびそれらの任意の組合せから選択される核酸配列を含むIgEモノクローナル抗体であり、ここで、重鎖および軽鎖はそれぞれヒトイプシロン重鎖およびカッパ軽鎖遺伝子に移植される。
【0184】
一実施形態では、本発明は、VU−3C6ハイブリドーマからクローン化され、ヒトIgカッパ軽鎖およびイプシロン重鎖遺伝子にそれぞれ移植されたIgGの軽鎖および重鎖の可変領域を含むモノクローナル抗体3C6.hIgEを提供する。VU−3C6は、腺上皮から生じた腫瘍に過剰発現する低グリコシル化形態のムチンであるヒトムチン1(hMUC1)を標的とする。一実施形態では、本発明は、3C6.hIgEが特異的であるMUC1アイソフォームとは異なるアイソフォームのMUC1に特異的なIgE抗体である4H5.hIgEを含む。
【0185】
一実施形態では、本発明の抗体は、配列番号:1を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域、および配列番号:2を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体3C6.hIgEである。
【0186】
一実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体4H5.hIgEである。
抗体4H5.hIgEは、配列番号:3の核酸によってコードされる重鎖可変領域、および配列番号:4の核酸によってコードされる軽鎖可変領域を有し、これらはヒトIgカッパ軽鎖およびイプシロン重鎖に移植される。
【0187】
一実施形態では、腫瘍関連抗原に特異的な治療用モノクローナル抗体は、MUC1のエピトープに特異的なIgEモノクローナル抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は、MUC1のアミノ酸配列STAPPAHGVTSAPDTRPAPG(配列番号:5)を含むMUC1のエピトープに特異的である。正確なエピトープは、MUC1の外部ドメインを特徴付ける20個のアミノ酸反復配列のうちの1つに位置する。一実施形態では、本発明の抗体は、STAPPAHGVTSAPDTRPAPG(配列番号:5)で定義されるエピトープでMUC1に結合することができる。
【0188】
一実施形態では、本発明による腫瘍関連抗原に特異的な治療用モノクローナル抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびウェスタンブロットによって同定される陽性トランスフェクトーマによって発現される。陽性トランスフェクトーマは、生産性を最高にするために限界希釈法によってクローン化され、抗体産生のために選択される。本明細書で使用される「トランスフェクトーマ」は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびNS/O骨髄腫細胞等の、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞を含む。そのようなトランスフェクトーマの方法論は、当該技術分野において周知である(Morrison, S. (1985) Science, 229:1202)。以前に公表された、マウス/ヒトキメラまたはヒト化抗体を産生するために使用された手法は、様々なヒトキメラ抗体または抗体融合タンパク質の産生に成功した(Helguera G, Penichet ML., Methods Mol. Med. (2005) 109:347-74)。
【0189】
一般に、キメラマウス−ヒトモノクローナル抗体(すなわち、キメラ抗体)は、当該技術分野で知られている組換えDNA技術によって製造することができる。例えば、マウス(または他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードする遺伝子を制限酵素で消化してマウスFcをコードする領域を除去し、ヒトFc定常領域をコードする遺伝子の相当部分で置換する。(Robinson et al., International Patent Publication PCT/US86/02269; Akira, et al., European Patent Application 184,187; Taniguchi, M., European Patent Application 171, 496; Morrison et al., European Patent Application 173,494; Neuberger et al., International Application WO 86/01533; Cabilly et al. U.S. Pat. No. 4,816,567; Cabilly et al., European Patent Application 125,023; Better et al. (1988 Science, 240:1041-1043); Liu et al. (1987) PNAS, 84:3439-3443; Liu et al., 1987, J. Immunol., 139:3521-3526; Sun et al. (1987) PNAS, 84:214-218; Nishimura et al., 1987, Canc. Res., 47:999-1005; Wood et al. (1985) Nature, 314:446-449; and Shaw et al., 1988, J. Natl Cancer Inst., 80:1553-1559を参照)。
【0190】
キメラ抗体は、抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域由来の相当する配列で置換することによって、さらにヒト化することができる。ヒト化キメラ抗体の一般的な総説は、Morrison, S. L., 1985, Science, 229:1202-1207 and by Oi et al., 1986, BioTechniques, 4:214によって提供される。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つからの免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離、操作および発現することを含む。そのような核酸の供給源は当業者にとって周知であり、例えば、抗GPII
bIII
a抗体産生ハイブリドーマである7E3から得ることができる。次いで、キメラ抗体またはその断片をコードする組換えDNAを適切な発現ベクターにクローニングすることができる。あるいは、適切なヒト化抗体は、CDR置換によって製造することもできる(U.S. Pat. No. 5,225,539; Jones et al. 1986 Nature, 321:552-525; Verhoeyan et al. 1988 Science, 239:1534; and Beidler et al. 1988 J. Immunol., 141:4053-4060)。
【0191】
本発明の例示的な抗腫瘍剤には、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミドおよびイホスファミド)、アジリジン(例えば、チオテパ)、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチンおよびストレプトゾシン)、白金複合体(例えば、カルボプラチンおよびシスプラチン)、非古典的なアルキル化薬(例えば、ダカルバジンおよびテモゾロミド)、葉酸アナログ(例えば、メトトレキサート)、プリンアナログ(例えば、フルダラビンおよびメルカプトプリン)およびアデノシンアナログ(例えば、クラドリビンおよびペントスタチン)、ピリミジンアナログ(例えば、フルオロウラシル(単独またはロイコボリンとの組み合わせ)およびゲムシタビン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、ブレオマイシンおよびドキソルビシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、微小管薬剤(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル)、カンプトテシンアナログ(例えば、イリノテカンおよびトポテカン)、酵素(例えば、アスパラギナーゼ)、サイトカイン(例えば、インターロイキン2およびインターフェロンα)、単クローン抗体(例えば、トラスツズマブおよびベバシズマブ)、組換え型毒素および免疫毒素(例えば、組換え型コレラ毒素−BおよびTP−38)、癌遺伝子治療、理学療法(例えば、高熱、放射線療法および手術)および癌ワクチン(例えば、抗テロメラーゼワクチン)からなる群から選択される1または複数の薬剤が含まれる。
【0192】
また、抗腫瘍剤は作用機構によって例えば、以下の群に分類される:ピリミジン類似体(5‐フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸拮抗物質および関連する阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))等の代謝拮抗薬/抗癌薬;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)等の天然物を含む抗増殖性/有糸分裂阻害薬、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポシロンおよびナベルビン、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)等の微小管阻害剤、DNA損傷薬剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホアミドおよびエトポシド(VP16));ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン等の抗生物質;酵素(全身的にL−アスパラギンを代謝して自らアスパラギンを合成する能力のない細胞から奪うL−アスパラギナーゼ);抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびその類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホン酸塩−ブスルファン, ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)およびその類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジン(DTIC)等の抗増殖性/抗有糸分裂アルキル化薬;葉酸類似体(メトトレキサート)等の抗増殖性/抗有糸分裂代謝拮抗薬;白金配位複合体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害薬(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩およびその他のトロンビン阻害剤);血栓溶解薬(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗転移薬剤;抗分泌性薬剤(ブレフェルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子(血管内皮増殖因子)阻害剤、線維芽細胞増殖因子(線維芽細胞増殖因子)阻害剤);アンジオテンシン受容体拮抗薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導物質(トレチノイン);哺乳類ラパマイシン標的タンパク質阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、副腎皮質ステロイド(コルチゾン、デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、およびプレドニソロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導物質、コレラ毒素、リシン、シュードモナス外毒素、百日咳菌アデニル酸シクラーゼ毒素またはジフテリア毒素等の毒素、およびカスパーゼ活性化因子;およびクロマチン破壊剤。化学療法剤の好ましい投薬量は、現在処方されている投薬量と一致する。本発明の方法によれば、化学療法剤の投与量は、本発明によるIgEの共投与のために以前必要であった投与量よりも低くてもよい。
【0193】
さらなる抗腫瘍剤はまた、従来の化学療法の標的である、望ましくない細胞増殖に寄与する細胞成分の発現を阻害する化合物およびアンチセンスRNA、RNAiまたは他のポリヌクレオチドであり得る。このような標的は、単に例示すると、増殖因子、成長因子受容体、細胞周期調節タンパク質、転写因子、またはシグナル伝達キナーゼである。
【0194】
本発明による組成物および方法は、種々のタイプの癌に罹患している患者に治療的利益を提供するために有用である。このような癌には、膵臓癌、胃癌(胃腸管癌)、結腸直腸癌および肺癌が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法によって治療される他のタイプの癌としては、骨肉腫、食道癌、肺癌、中皮腫、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、結腸直腸癌、直腸癌、疝痛癌、尿路上皮癌、乳癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌、甲状腺癌、精巣腫瘍、カポジ肉腫、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、喉頭癌、咽頭癌、筋肉腫、皮膚癌、等が挙げられる。
【0195】
一実施形態では、本発明の組成物は、誘導化学療法、一次(術前)化学療法、および補助化学療法を含む化学療法が必要である場合に有用である。加えて、化学療法は、癌の治療における外科手術の補助としてたびたび必要とされる。補助剤設定における化学療法の目的は、原発腫瘍が抑制されている場合に、再発のリスクを低減し、無病生存期間を延長することである。化学療法は、結腸癌、肺癌および乳癌の治療補助として、しばしば疾病が転移性である場合に利用される。したがって、本発明の化合物は、放射線治療および/または化学療法と併用した癌の治療において手術後に有用である。
【0196】
別の実施形態では、本発明は、抗癌剤の少なくとも1つの副作用を改善する方法であって、被験体に治療上有効な量の少なくとも1つのIgE抗体と少なくとも1つの抗癌剤を投与するステップを含む方法を提供する。本発明の組成物および方法により改善される副作用には、腎毒性、神経毒性、耳毒性、骨髄機能抑制、脱毛症、体重減少、嘔吐、悪心および免疫抑制が含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
一実施形態では、本発明の組成物および方法は、薬剤が本発明のIgE抗体と組み合わせて与えられる場合、抗癌剤に対する腫瘍の応答性および感受性を増強する。一実施形態では、本発明の組成物および方法は、インビボおよびインビトロで腫瘍の増殖を阻害または低減する。本明細書中で使用される場合、腫瘍の成長を「阻害する」または「減少させる」とは、当業者に公知の方法を用いて測定されるように、細胞増殖の量を減速させるか、減少させるか、例えば、本出願の方法および組成物の投与を受けていない分裂細胞と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%低下させることを意味する。一実施形態では、本発明の組成物および方法は、インビボおよびインビトロで腫瘍のサイズを減少させる。本明細書中で使用される場合、腫瘍の「サイズの減少」とは、本出願の方法および組成物に供されない腫瘍と比較した場合、画像診断のような既知の方法を使用して測定される通り、腫瘍サイズ、容積またはバルク全体を、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%減少させることを意味する。
【0198】
本発明による有効なIgE抗体の量および治療的に有効量の抗癌剤の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、最適な投与量範囲を同定することに役立てるために、インビトロアッセイを任意に採用してもよい。製剤に使用される正確な用量は、投与経路および疾患または障害の重篤度にも依存し、施術者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から誘導された用量反応曲線から推定することができる。選択された投与量レベルはまた、使用される特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物、および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、体調、全般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野において周知の同様の因子のような要因にも依存する。
【0199】
本明細書で使用される場合、被験体に「投与する」とは、IgE抗体および/または抗癌剤を含む組成物を、腫瘍間質を含む所定の細胞、細胞、または組織に暴露または接触させることになる任意の処置を意味する。本明細書中で使用される場合、「投与」は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボで行われ得る。例えば、組成物は、注射または内視鏡によって投与することができる。投与はまた、本発明による組成物を細胞へ直接適用することも含む。例えば、手術の過程で、腫瘍細胞が曝露され得る。本発明の一実施形態によれば、これらの曝露された細胞(または腫瘍)は、例えば手術部位および/または細胞を洗浄または灌注することによって、本発明の組成物に直接曝露され得る。
【0200】
本発明の方法によれば、IgE抗体および抗癌剤は、別々のまたは組み合わせた製剤のいずれかによって同時に、または数分、数時間または数日ごとに分離した異なる時間で連続的に投与されるが、何らかの方法で一緒に作用して所望の治療応答をもたらす。
【0201】
本発明のいくつかの実施形態では、一または複数の抗癌剤は、一または複数のIgE抗体の投与の前または後の2週間、1週間、48時間、36時間、24時間、18時間、12時間、10時間、8時間、6時間、4時間、1時間、30分、5分、または1分のうちの任意の期間で被験体に投与される。本発明のいくつかの実施形態では、一または複数の抗癌剤が、一または複数のIgE抗体の投与と同時に、適切な場合には単独の組成物で、あるいは別個の組成物で被験体に投与される。
【0202】
一実施形態では、IgE抗体は、例えば、公知の技術を用いて化学療法剤に結合される。このようなコンジュゲートの腫瘍指向性送達は、化学療法から生じ得る潜在的な非特異的毒性を最小限に抑えることによって治療上の利益をさらに高める。
【0203】
本発明の方法によれば、IgE抗体を含む組成物、および、例えば化学療法剤を含む組成物は(同じか異なるかにかかわらず)、任意の免疫学的に適切な経路によって患者に投与され得る。例えば、IgE抗体は、静脈内、皮下、腹腔内、くも膜下腔内、膀胱内、皮内、筋肉内、またリンパ内経路によって患者に導入することができる。組成物は、溶液剤、錠剤、エアロゾル剤、または多相製剤形態であり得る。リポソーム、長循環リポソーム、免疫リポソーム、生分解性微粒子、ミセル等も、担体、ビヒクルまたは送達系として使用することができる。さらに、当該分野で周知のエクスビボの手順を使用して、患者由来の血液または血清を患者から除去することができ、場合により、患者の血液中の抗原を精製することが望ましいことがあり、次いで血液または血清を本発明の組成物と混合してもよく、処理された血液または血清は患者に戻される。本発明は、組成物を患者に導入する特定の方法に限定されるべきではない。
【0204】
投与は、1回、複数回、および長期間にわたって行うことができる。一実施形態では、本発明による組合せ治療計画では、1日当たり少なくとも1回、週に少なくとも1回、2週間ごとに少なくとも1回、4週間ごとに少なくとも1回、6週間ごとに少なくとも1回、8週間ごとに少なくとも1回、10週ごとに少なくとも1回、14週間ごとに少なくとも1回、16週間ごとに少なくとも1回、18週間ごとに少なくとも1回投与できる。
本組成物の、注射のための希釈技術を含む、医薬組成物を投与するための実際の方法および手順は、当業者にとって周知であるか、または明らかであろう。
【0205】
一般に、投与されるIgE抗体の治療上有効な量は、例えば、1回以上投与されるのか毎日投与されるのかにかかわらず、患者の体重に対して約0.001〜約50mg/kgの範囲であり、好ましくは約0.005〜25mg/kg、好ましくは約0.005〜20mg/kg、好ましくは約0.005〜15mg/kg、好ましくは約0.005〜約10mg/kg、好ましくは約0.005〜5mg/kg、好ましくは約0.005〜1mg/kgであろう。しかしながら、他の投薬計画が有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術によって容易に監視される。好ましい一実施形態において、IgE抗体は、0.010〜0.1mg/mlの濃度で1〜4ml/分の速度で30分間静脈内投与される。
【0206】
一実施形態では、約1μgのIgEのような、注入または注射によって投与されるIgE抗体の量は、好ましくは約1ng/mlの血清濃度を達成する。一実施形態では、投与されるIgEの量は、ピコグラム/kg〜約100μg/kgの範囲である。
【0207】
本明細書中の化学療法剤は、典型的には、現在の臨床診療において使用される投与量および投与経路に従って投与される。例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、Adrucil(登録商標)は、乳癌、肛門、食道、膵臓および胃癌を含む胃腸癌、頭頸部癌、肝臓癌および卵巣癌の治療用に臨床的に使用され、典型的には、注射、ボーラス注射または連続静脈内注入として静脈内投与される。時間および予定の量は、癌の種類および段階、患者の治療歴および全体的な状態、ならびに診療医よって典型的に考慮される他の要因によって異なる。好ましくは、化学療法を含む抗腫瘍剤の投与に関しては、臨床腫瘍学会臨床治療ガイドラインが守られる。
【0208】
好ましくは、本発明の治療用組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。「薬学的に許容される担体」とは、投与される患者にとって生理学的に許容される担体を意味する。薬学的に許容される担体の例の一つは生理食塩水である。他の薬学的に許容される担体およびそれらの製剤は、周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)に一般的に記載されている。
【0209】
本発明の組成物を投与するために使用される製剤、用量および治療手順は、癌のタイプおよびステージ、ならびに臨床診療において典型的に考慮される他の因子に依存して変化し、当業者によって容易に決定され得る。任意の生理学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と、所望の程度の純度を有する抗体を凍結乾燥製剤または水溶液の形態で混合することによって、IgE抗体単独または化学療法剤と組み合わせた治療用製剤が保管用に調製される。
【0210】
許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量および濃度においてレシピエントに無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0211】
製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な2つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものを含有してもよい。例えば、免疫抑制剤をさらに提供することが望ましい場合がある。そのような分子は、意図された目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0212】
活性成分はまた、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中において、例えば、コアセルベーション技術(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル)によって、または、界面重合(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)によって、それぞれ調製されたマイクロカプセルに閉じ込められてもよい。
【0213】
インビボ投与のために使用される製剤は無菌である。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。徐放性製剤を調製することもできる。徐放性製剤の適切な例としては、抗体改変体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、ここで当該マトリックスは例えばフィルムまたはマイクロカプセル等の成形品の形態である。
【0214】
(III.追加の実施形態)
特定の科学的理論に限定されるものではないが、IgE抗体は、間質浸透性を増加すること、および/または腫瘍周囲の間質の枯渇することができるが、これに限定されず、腫瘍微小環境を調節することができると考えられる。間質サイズの減少および/または間質浸透性の増加は、腫瘍の治療における化学療法および/または放射線療法の有効性を増強し、それによって疾患を効果的に治療するために必要な化学療法および/または放射線の量を減少させることが示されている。いかなる理論にも限定されるものではないが、本発明の間質調節量のIgE抗体は、腫瘍間質等の腫瘍または腫瘍の近傍および腫瘍の微小環境にある抗原と結合することで過敏症反応を指令し、肥満細胞、好塩基球、マクロファージおよび好酸球を含むエフェクター細胞を腫瘍箇所にもたらし、被験体において全身性過敏症および/またはアナフィラキシーを起こすことなく、局所の細胞活性化を伴う局所アレルギー性炎症反応を誘導することができると考えられる。
【0215】
したがって、一実施形態では、本発明は、腫瘍間質を間質調節量(すなわち、有効量)の少なくとも1つのIgE抗体と接触させる工程を含む、腫瘍周囲の間質を調節する方法も提供する。本明細書で使用される場合、「腫瘍間質と接触する」という語句は、IgE抗体が腫瘍および腫瘍間質に十分に近接して存在し、腫瘍微小環境においてその間質調節効果を発揮し、それにより間質の枯渇、間質の浸透性の増加またはその両方を引き起こすことができることを意味する。一実施形態では、IgE抗体を腫瘍と接触させた後、さらにより好ましくは、IgE抗体と接触させた結果、間質枯渇または間質浸透性が最大になる期間において、腫瘍を、抗腫瘍剤、放射線、免疫療法剤、光増感剤、または遺伝子治療剤などの抗癌剤とも接触させる。
【0216】
一実施形態では、間質調節量(すなわち、有効量)のIgE抗体との接触後、間質枯渇および/または浸透性が最大化される期間中に抗癌剤を投与する。一実施形態では、間質枯渇および/または間質浸透性は、間質調節(すなわち有効)量のIgE抗体の投与後2〜6日の範囲、好ましくは、間質調節(すなわち有効)量のIgE抗体の投与後3〜4日の範囲で最大化される。
【0217】
別の実施形態では、腫瘍が観察され、腫瘍特異的IgE処置または対照IgE処置は、腫瘍が可視になった後にのみ投与され得る。次いで、動物は、特定の抗腫瘍剤とIgEの投与後、数時間から数日間治療される。いくつかの動物において、腫瘍間質に対するIgE処置の効果は、抗腫瘍療法の直前に測定されるが、他の動物においては、治療が投与され、抗腫瘍剤に対する反応という点での臨床結果は、定量的な腫瘍の経時成長と生存によって測定され、腫瘍抗原特異的IgE治療がなされた動物と非特異的IgE治療群と抗体治療無しの対照群とで比較されるであろう。
【0218】
他の実施形態では、本発明はまた、それを必要とする被験体において、抗癌剤の腫瘍への送達を増加させるため、および/または、固形腫瘍周囲の間質を調節するため、および/または、固形腫瘍周囲の間質の浸透性を増加させるための、および/または、腫瘍の抗癌剤への感受性を高めるための、癌抗原、腫瘍間質周囲に存在する抗原およびそれらの組み合わせに特異的な少なくとも1つのIgE抗体、および、少なくとも1つの抗癌剤の治療有効量の対応する使用を包含する。
【0219】
他の実施形態によれば、本発明は、それを必要とする被験体における、腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための、および/または、腫瘍の成長を阻害するための、および/または、腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための、および/または、固形腫瘍周囲の間質を調節するための、および/または、固形腫瘍周囲の間質の浸透性を増加させるための対応する組成物、および/または、それを必要とする被験体における腫瘍の抗癌剤への感受性を高めるため組成物を含み、当該組成物は、癌抗原、腫瘍間質周囲に存在する抗原およびそれらの組み合わせに特異的な少なくとも1つのIgE抗体、および、少なくとも1つの抗癌剤の治療有効量を含む。
【0220】
他の実施形態によれば、本発明は、それを必要とする被験体における、腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための、および/または、腫瘍の成長を阻害するための、および/または、腫瘍への抗癌剤の送達を増加させるための、および/または、固形腫瘍周囲の間質を調節するための、および/または、固形腫瘍周囲の間質の浸透性を増加させるための対応するキット、および/または、それを必要とする被験体における腫瘍の抗癌剤への感受性を高めるためキットを含み、当該キットは、癌抗原、腫瘍間質周囲に存在する抗原およびそれらの組み合わせに特異的な少なくとも1つのIgE抗体、および、少なくとも1つの抗癌剤の治療有効量、ならびにキットの使用方法に関する指示書を含む。
【0221】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体は、癌抗原または腫瘍の微小環境に関連する抗原に特異的であり得る。
【0222】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤は、抗腫瘍剤、免疫療法剤、放射線、光増感剤、遺伝子治療剤およびそれらの組み合わせから選択され得る。
【0223】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体および抗癌剤は、同時または連続的に投与することができる。
【0224】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体は抗癌剤と同時に、および、同じ組成物として投与することができ、ここで、抗癌剤は抗腫瘍剤、免疫療法剤、光増感剤、または遺伝子治療剤から選択される。
【0225】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体は、抗癌剤に接合され得る。
【0226】
使用、組成物および/またはキットのこれらの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体および抗癌剤は連続的に投与することができる。
【0227】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体および抗癌剤は、連続的に投与されてもよく、ここで、IgE抗体は、抗癌剤の投与の少なくとも約1分〜約2週間前または後に投与され得る。
【0228】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、腫瘍は固形腫瘍であってもよく、抗癌剤は抗腫瘍剤であり、抗腫瘍剤の腫瘍への送達の増加は、腫瘍または腫瘍間質における異なるサイズのポリデキストランの取り込みの増加によって測定される。
【0229】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は免疫療法剤であってもよく、腫瘍への免疫療法剤の送達の増加は、腫瘍または腫瘍間質に浸潤するリンパ球の存在の増加によって測定される。
【0230】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は放射線であり、腫瘍への放射線の送達の増加は、画像診断によって測定された腫瘍のサイズの減少によって測定され得る。
【0231】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、腫瘍は固形腫瘍であってもよく、ここで、抗癌剤は遺伝子治療剤であってもよく、腫瘍への遺伝子治療剤の送達の増加は、腫瘍の微小環境における免疫応答の増加によって測定され得る。
【0232】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体はMUC1に特異的な抗体であってもよい。
【0233】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、MUC1に特異的な抗体は、配列番号:5から選択されるMUC1のエピトープに結合し得る。
【0234】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は、配列番号:1を含む核酸によってコードされてもよく、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:2を含む核酸によってコードされていてもよい。
【0235】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、MUC1に特異的な抗体の重鎖可変領域は、配列番号:3を含む核酸によってコードされていてもよく、MUC1に特異的な抗体の軽鎖可変領域は、配列番号:4を含む核酸によってコードされてもよい。
【0236】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、MUC1に特異的な抗体は、mAb 3C6.hIgE、mAb 4H5.hIgEまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0237】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、癌は、膵臓癌、胃癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌または肺癌であり得、腫瘍はインビボまたはインビトロであり得る。
【0238】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤の送達の増加により、a)抗癌剤の治療指数の増加;b)抗癌剤の少なくとも1つの副作用の改善;c)治療に使用される抗癌剤の量の減少;d)腫瘍間質の浸透性の増加;e)腫瘍間質の枯渇が生じる。
【0239】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、腫瘍を抗癌剤と接触させることがさらに含まれ得る。
【0240】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤は、IgE抗体が腫瘍と接触した後に腫瘍と接触し得る。
【0241】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤は、IgE抗体が腫瘍と接触する前に腫瘍と接触し得る。
【0242】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、被験体に抗癌剤を投与することがさらに含まれ得る。
【0243】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤は、IgE抗体が被験体に投与された後、またはIgE抗体が被験体に投与される前に、被験体に投与され得る。
【0244】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、抗癌剤は、IgE抗体と同時に被験体に投与され得る。
【0245】
これらの使用、組成物および/またはキットの実施形態のいくつかによれば、IgE抗体は、腫瘍間質または癌抗原に関連する抗原に特異的であり得る。
【0246】
(IV.均等物)
当業者は、日常的な実験方法のみを用いて、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができる。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【実施例】
【0247】
(V.実施例)
以下の実施例は、本発明の特に好ましい特定の実施形態をさらに説明することを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
<膵臓癌の皮下腫瘍モデルにおける抗MUC1−IgE抗体の血管浸透性の検討>
【0248】
この治療方法の原理を最初に確立するためには、適切な特異性を有する抗体、および、腫瘍抗原に寛容な動物において評価される腫瘍抗原発現腫瘍モデルが必要とされる。
ヒトMUC1遺伝子を遺伝子導入したPanc02腫瘍細胞株(hMUC1−panc02)を選択する。
panc02腫瘍はBL6マウスと同系であり、hMUC1−panc02はヒトMUC1を遺伝子導入したBL6.Tgマウスと完全に同系である。
実証実験に使用される抗体は、上記の抗MUC1−IgE抗体:3C6.hIgEである。
【0249】
<実験計画>
【0250】
1)ヒトMUC1およびヒトFcεRIアルファ鎖の両方のためのヒト導入遺伝子を有する二重ヒトトランスジェニックC57BL6/Jマウスに、1×10
6 hMUC1−panc02細胞を皮下接種した。これらのマウスでは、高親和性IgEレセプターであるFcεRIαのα−サブユニットをコードする内因性遺伝子が破壊され、当該マウスはヒトFcεRIαプロモーターの制御下においてヒトホモログの遺伝導入体である(Dombrowicz et al., 1996 J Immunol 157:1645-1651)。FcεRIα発現が肥満細胞および好塩基球に限定される野生型マウスとは対照的に、hFcεRI Tg
+マウスにおけるFcεRIαの発現の範囲は、ヒトにおいて見られるものと類似する。肥満細胞および好塩基球に加えて、hFcεRI Tg
+マウス(およびヒト)において、FcεRIは好酸球、単球、ランゲルハンス細胞、B細胞および好酸球上に発現される(Kinet, J. P. 1999 Annu Rev Immunol 17:931-972; Kayaba et al., 2001 J Immunol 167:995-1003)。hFcεRIα遺伝子産物は、マウスβおよびγサブユニットと複合体を形成して機能的4鎖受容体(αβγ2)を形成する能力を有する。hFcεRI Tg
+マウスは、ヒトIgE抗体およびアレルゲンに対するアナフィラキシー反応を呈する(Dombrowicz et al., 1996、上記参照)。したがって、これらの動物では、ヒトおよび高等霊長類に典型的な間質調節に関与する骨髄系細胞の全範囲が取り込まれ、ヒト悪性腫瘍の治療のために考えられる完全な原理を実証する。
【0251】
2)腫瘍が700〜1000cm
3のサイズに達した後、デキストラン、Alexa fluor(登録商標)647(10,000ダルトン)と共に抗MUC1−IgE(25μg/マウス)を尾静脈(100μL/注射)に注射する。対照動物には、デキストラン、Alexa fluor(登録商標)647のみを注射する。
【0252】
3)デキストラン、Alexa fluor(登録商標)647の免疫蛍光が、処置後0分、30分、2時間、4時間、8時間および24時間で動物に観察される。
【0253】
図1は本実施例の実験設計図を示し、
図2は30分後に現れる光染色、2時間後および4時間後の染色の増加を示す。抗MUC1−IgEが存在しない場合、染色は検出されない。
図3は、デキストラン、Alexa fluor(登録商標)647と共に抗MUC1−IgEの注射した後0、4、8、12および24時間後に(腫瘍について)蛍光強度を測定する反復実験を示す。この場合もやはり、注射直後(0時間後)に染色は観察されないが、染色は注射後4時間で容易に明らかになり、注射後8時間および12時間で減少する。注射後4、8または24時間において、肝臓組織および脾臓組織では染色は観察されない。
図4は、実験過程における蛍光強度の定量を示しており、蛍光強度は注射後約4時間でピークに達することを示している。
(実施例2)
<MUC1−PANC02腫瘍におけるマスト細胞およびニュートロフィル染色>
次に、肥満細胞による腫瘍への浸潤を、腫瘍組織においてトルイジンブルー染色を行うことによって評価する。対照的に、ヘマトキシリンおよびエオシン染色を、腫瘍組織切片における好中球(多葉核細胞)の浸潤の測定に使用した。
図5は、0時間後では、マスト細胞は腫瘍組織中に観察され得ないが、注射後4時間後では、マスト細胞の出現が検出され得、これは注射後8時間にピークを示し、注射後少なくとも24時間は残存した。これらの結果は、注射後に腫瘍に動員されたマスト細胞の数が増加していることを示している。一方、
図6は、注射後の腫瘍における好中球の数に著しいな変化がなかったことを示す。
(実施例3)
<抗腫瘍応答の増強能力>
【0254】
再度、ヒトMUC1およびヒトFcεRIアルファ鎖の両方のためのヒト導入遺伝子を有する二重ヒトトランスジェニックC57BL6/Jマウスに、膵臓腫瘍細胞においてヒトMUC1を発現する合計3×10
5のhMUC1−Panc02細胞を同所的に接種した。治療は、
図7に示した実験計画に従って、腫瘍細胞の注射の7日後に開始した。実験では、対照群(0.9%生理食塩水)、ゲムシタビン単独群、抗PDL−1、ポリ(I:C)(ヒルトノール(登録商標))および抗hMUC1−IgEを投与した群、ならびに、抗PDL−1、ポリ(I:C)(ヒルトノール(登録商標))、抗hMUC1−IgEおよびゲムシタビンを投与した群を含めた6匹の動物からなる群が4つ含まれる。具体的には、処置は次のようにして実施した:抗hMUC1−IgE(20μg)および/またはゲムシタビンを7、17および27日目に投与した。一緒に投与する場合、抗hMUC1−IgE注射後4時間にゲムシタビンを投与した。ポリ(I:C)(ヒルトノール(登録商標))(50μg)は、8、13、18、23、28、33日目に投与され、抗PD−L1(200μg)は9、11、14、16、19、21、24、26、29、31、34日目に投与された。
【0255】
実験動物取扱要項に従って、マウスの保有する同所性腫瘍を、動物が屠殺されるまで増殖させ、動物が瀕死状態になったときに腫瘍を採取した。
【0256】
結果は
図8に示され、抗MUC1−IgEと抗癌剤(すなわち、抗PDL−1、ポリ(I:C)およびゲムシタビン)との組み合わせ治療により、ほぼ108日間の検証期間にわたって生存率が増加した。他の治療条件の動物のいずれも、同じ検証期間にわたって同様の生存パターンを有しておらず、時には同じ期間にわたってより急勾配の生存曲線を示した。
【0257】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用したすべての米国特許および公開または非公開の米国特許出願は、参考として援用される。本明細書で引用したすべての公開外国特許および特許出願は、本明細書において参照として援用される。本明細書で引用した他の公開文献、文書、原稿および科学文献は、本明細書において参照として援用される。
【0258】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して具体的に示され、記載されたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更がなされ得るということが当業者に理解されるであろう。また、本明細書に記載された実施形態は相互排他的ではなく、様々な実施形態からの特徴は、本発明に従って全体的にまたは部分的に組み合わせられてもよいことも理解されるべきである。
[配列表]
配列番号:1
<120>3C6.HIgE 重鎖可変領域
<212>DNA
GCCGCCACCATGTACTTGGGACTGAACTGTGTATTCATAGTTTTTCTCTTAAATGGTGTCCAGAGTGAAGTGAAGCTTGAGGAGTCTGGAGGAGGCTTGGTGCAACCTGGAGGATCCATGAAACTCTCTTGTGCTGCCTCTGGATTCACTTTTAGTGACGCCTGGATGGACTGGGTCCGCCAGTCTCCAGAGAAGGGGCTTGAGTGGGTTGCTGAAATTAGAAGCAAAGCTAATAATCATGCAACATACTATGCTGAGTCTGTGAAAGGGAGGTTCACCATCTCAAGAGATGTTTCCAAAAGTAGTGTCTACCTGCAAATGAACAACTTAAGAGCTGAAGACACTGGCATTTATTACTGTACCAGGGGGGGGTACGGCTTTGACTACTGGGGCCAAGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCAGGTAAGTG
配列番号:2
<120>3C6.hIgE 軽鎖可変領域
<212>DNA
GCCGCCACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTGATGTTCTGGATTCCTGCTTCCAGCAGTGATGTTTTGATGACCCAAACTCCACTCTCCCTGCCTGTCAGTCTTGGAGATCAAGCCTCCATCTCTTGCAGATCTAGTCAGAGCATTGTACATAGTAATGGAAACACCTATTTAGAATGGTACCTGCAGAAACCAGGCCAGTCTCCAAAGCTCCTGATCTACAAAGTTTCCAACCGATTTTCTGGGGTCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCAGGGACAGATTTCACACTCAAGATCAGCAGAGTGGAGGCTGAGGATCTGGGAGTTTATTACTGCTTTCAAGGTTCACATGTTCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAACGTAAGT
配列番号:3
<120>4H5.hIgE モノクローナル抗体重鎖可変領域
<212>DNA
GCCGCCACCATGGGATGGAGCTGTATCATGCTCTTTTTGGTAGCAACAGCAACAGGTGTCCACTCCCAGGTCCAACTGCAGCAGTCTGGGGCTGAACTGGTGAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACCTTCACCAGCTACTATATGTACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATTGGAGAGATTAATCCTAGCAATGGTGGTACTGACTTCAATGAGAAGTTCAAGAGCAAGGCCACACTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCATACATGCAACTCAGCAGCCTGACATCTGCGGACTCTGCGGTCTATTACTGTACAAGGGGGGGTGATTACCCCTGGTTTGCTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCAGGTAAGT
配列番号:4
<120>4H5.hIgE モノクローナル抗体重鎖可変領域
<212>DNA
GCCGCCACCATGGATTCACAGGCCCAGGTTCTTATGTTACTGCTGCTATGGGTATCTGGTACCTGTGGGGACATTGTGATGTCACAGTCTCCATCCTCCCTAGCTGTGTCAGTTGGAGAGAAGGTTACTATGAGCTGCAAGTCCAGTCAGAGCCTTTTATATAGTAGCAATCAAAAGAACTACTTGGCCTGGTACCAGCAGAAACCAGGGCAGTCTCCTAAACTGCTGATTTACTGGGCATCCACTAGGGAATCTGGGGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTGTGAAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGCAATATTATAGCTATCCTCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAACGTAAGT
配列番号:5
<120>MUC1エピトープのアミノ酸配列
<212>アミノ酸
STAPPAHGVTSAPDTRPAPG