特許第6854766号(P6854766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6854766チロシンキナーゼ阻害剤を用いる組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854766
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】チロシンキナーゼ阻害剤を用いる組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20210329BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20210329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61K31/506ZMD
   A61P9/00
   A61P43/00 111
【請求項の数】9
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2017-539224(P2017-539224)
(86)(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公表番号】特表2018-504416(P2018-504416A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】US2016014882
(87)【国際公開番号】WO2016123086
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2019年1月7日
(31)【優先権主張番号】62/107,553
(32)【優先日】2015年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/250,052
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503469393
【氏名又は名称】イエール ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ベネット アントン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ−スン
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/006492(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0123539(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/110198(WO,A1)
【文献】 MARIN, Talita M. et al.,Journal of Clinical Investigation,2011年 3月 1日,Vol. 121, No. 3,pp. 1026-1043,DOI: 10.1172/JCI44972
【文献】 ENG, C. P. et al.,The Journal of Antibiotics,1984年,Vol. 37, Issue 10,pp. 1231-1237,DOI: 10.7164/antibiotics.37.1231
【文献】 LEE, Nancy et al.,BMC Pharmacology,2009年 4月15日,Vol. 9,Article No. 8,DOI: 10.1186/1471-2210-9-8
【文献】 HASINOFF, Brian B. and PATEL, Daywin,Toxicology and Applied Pharmacology,2010年12月 1日,Vol. 249, Issue 2,pp. 132-139,DOI: 10.1016/j.taap.2010.08.026
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 35/00−51/12
A61P 1/00−43/00
C12N 9/00− 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態を治療するための薬学的組成物であって、低投与量ダサチニブ含み、ダサチニブが、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、かつ該対象の少なくとも1つの心機能を改善し、該低投与量が、ダサチニブの化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲であり、対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態が、神経線維腫症1型、ヌーナン症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群 (レオパード症候群)、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、およびレギウス症候群からなる群より選択されるRASオパシーに関連している心血管の疾患または病態である、薬学的組成物。
【請求項2】
対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態が先天性心疾患である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
心機能が、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化からなる群より選択される、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
対象が小児科患者である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
小児科対象が12才未満である、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
対象が18才より年上である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
チロシンリン酸化の異常なレベルが、チロシンリン酸化タンパク質ゼロ関連(PZR)の異常なレベルを含む、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
低投与量のダサチニブが、PZRチロシンリン酸化を減少させる、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
低投与量のダサチニブが、心臓組織における抗線維化効果を対象にもたらす、請求項1または2項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年11月3日に出願された米国仮出願第62/250,052号および2015年1月26日に出願された米国仮出願第62/107,553号に対して優先権を主張し、これらの内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたGM099801のもとで、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
心血管疾患は、著しい進歩にもかかわらず、世界的に男性と女性の両方の死亡原因の第1位である。世界保健機関(WHO)の報告によれば、2030年までに毎年2360万人の人が、心血管疾患が原因で死亡すると概算されている。
【0004】
RAS-MAPK経路は、ヒトの成長および発達にとって重大な意味を持っている。このシグナル伝達カスケードの様々な段階における異常は、神経-心臓-顔-皮膚症候群またはRASオパシー、すなわち重複しているが別個の表現型を有している障害群をもたらす。RASオパシー患者は、様々な程度の知的障害、成長不良、相対的大頭症、外胚葉異常、異形症の特徴、およびある種の悪性腫瘍のリスク増大を示す。顕著な遺伝子座異質性が、RASオパシーの多くで認められる。
【0005】
先天性心疾患(CHD)は、新生児で認められる最も一般的な欠陥であり、生児出生の約1%で起こる。アメリカ合衆国では100万人を超える人が、何らかの形態のCHDを有しており、その大半が、心機能の低下を予防するために継続的なモニタリングおよび治療を必要とする。AVCDは、房室弁ならびに心房中隔および心室中隔の様々な異常を含む。完全型では、1つの共通房室弁および心室中隔の入口部分で後壁側(posterior)心室中隔欠損と融合した心房中隔欠損(一次孔)が認められる。不完全型では、2つの個別の右房室弁および左房室弁が存在し、クレフトができた僧帽弁および心房中隔欠損(一次孔)を伴い、心室中隔交通(ventricular septal communication)はない。クレフトができた僧帽弁は、AVCDの重症度の低い型とみなされている。AVCDはまた、ダウン症候群の子供で認められる最も一般的なCHDであり、染色体障害およびメンデル型遺伝病という状況における心外性異常と最も高い頻度で関連している構造的心臓欠陥の内の1つである。独特な解剖学的特徴が、NSに関連したAVCDで見出されている。実際、通常はこの欠陥は不完全型のものであり、付属的な線維組織および/または左室の異常な乳頭筋による僧帽弁の異常な差し込み(insertion)が原因で、最終的に大動脈弁下狭窄症を伴う。
【0006】
先天性心疾患(CHD)は、RASオパシー、すなわちRAS-MAPK経路の異常を有している障害群に冒された患者の約60〜86%で発生する。肺動脈弁狭窄症(PVS)および肥大型心筋症は、RASオパシーとの明確な関連を示している最も一般的な欠陥である。多発性黒子を伴うヌーナン症候群(NSML)におけるCHDの範囲はさらに広く、房室管欠陥(AVCD)のファミリーは、3番目に多くみられる心臓欠陥である。
【0007】
心血管疾患およびRASオパシーに関連する先天性心疾患のほとんどの患者は、何年にもわたって治療を必要とする。特に、RASオパシーに関連する先天性心疾患は、通常、低い死亡率と関連付けられている。したがって、心疾患に対して最大効果を有している低リスクの治療法を用いて、患者の心血管疾患を治療する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
後述するように、本発明は、Srcファミリーチロシンキナーゼおよびそれらの基質のリン酸化などの異常なタンパク質チロシンリン酸化を阻害するための組成物および方法を含む。
【0009】
1つの局面において、本発明は、対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、先天性心疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0011】
さらに別の局面において、本発明は、異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している、RASオパシーに関連する心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0012】
さらに別の局面において、本発明は、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を含む組成物であって、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化を減少させ、それを必要とする対象の少なくとも1つの心機能を改善することができる、組成物を含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、本明細書において説明する組成物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を含む。
【0014】
さらに別の局面において、本発明は、対象における心血管の疾患または病態を治療するための医薬の製造における、本明細書において説明する組成物の使用を含む。
【0015】
本明細書において詳細に叙述する本発明の上記の局面または他の任意の局面の様々な態様において、先天性心疾患は、RASオパシー、例えば、神経線維腫症1型、ヌーナン症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(レオパード症候群)、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、およびレギウス症候群からなる群より選択されるRASオパシーに関連している。1つの態様において、心血管の疾患または病態は、先天性心疾患である。
【0016】
別の態様において、低投与量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲である。
【0017】
別の態様において、心機能は、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化からなる群より選択される。
【0018】
別の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ(semananib)、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群より選択される。さらに別の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体からなる群より選択されるSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0019】
別の態様において、対象は、小児科患者、例えば12才未満の小児科対象である。さらに別の態様において、対象は、18才より年上である。
【0020】
別の態様において、チロシンリン酸化の異常なレベルは、チロシンリン酸化タンパク質ゼロ関連(Protein Zero-Related)(PZR)の異常なレベルを含む。そのような態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、PZRチロシンリン酸化を減少させる。さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、心臓組織における抗線維化効果を対象にもたらす。さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、膜貫通型糖タンパク質タンパク質ゼロ関連(PZR)のような膜貫通型糖タンパク質の異常なチロシンリン酸化を減少させる。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、心臓組織における抗線維化効果をもたらす。
[本発明1001]
対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、該チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、かつ該対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法。
[本発明1002]
先天性心疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、該チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、かつ該対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法。
[本発明1003]
異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している、RASオパシーに関連する心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、該チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、かつ該対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法。
[本発明1004]
先天性心疾患がRASオパシーに関連している、本発明1002の方法。
[本発明1005]
心血管の疾患または病態が先天性心疾患である、本発明1003の方法。
[本発明1006]
RASオパシーが、神経線維腫症1型、ヌーナン症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群 (レオパード症候群)、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、およびレギウス症候群からなる群より選択される、本発明1003または1004のいずれかの方法。
[本発明1007]
低投与量が、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲である、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1008]
心機能が、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化からなる群より選択される、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1009]
チロシンキナーゼ阻害剤が、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ(semananib)、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群より選択される、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1010]
チロシンキナーゼ阻害剤がSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤である、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1011]
Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤が、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
対象が小児科患者である、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1013]
小児科対象が12才未満である、本発明1012の方法。
[本発明1014]
対象が18才より年上である、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1015]
チロシンリン酸化の異常なレベルが、チロシンリン酸化タンパク質ゼロ関連(PZR)の異常なレベルを含む、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1016]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、PZRチロシンリン酸化を減少させる、本発明1015の方法。
[本発明1017]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、心臓組織における抗線維化効果を対象にもたらす、本発明1001〜1003のいずれかの方法。
[本発明1018]
チロシンリン酸化を減少させ、かつそれを必要とする対象の少なくとも1つの心機能を改善することができる低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を含む、組成物。
[本発明1019]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、膜貫通型糖タンパク質の異常なチロシンリン酸化を減少させる、本発明1018の組成物。
[本発明1020]
膜貫通型糖タンパク質がタンパク質ゼロ関連(PZR)である、本発明1019の組成物。
[本発明1021]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、該チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲である、本発明1018の組成物。
[本発明1022]
心機能が、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化からなる群より選択される、本発明1018の組成物。
[本発明1023]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群より選択される、本発明1018の組成物。
[本発明1024]
チロシンキナーゼ阻害剤がSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤である、本発明1018の組成物。
[本発明1025]
Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤が、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体からなる群より選択される、本発明1024の組成物。
[本発明1026]
低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤が、心臓組織における抗線維化効果をもたらす、本発明1018の組成物。
[本発明1027]
本発明1018の組成物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[本発明1028]
対象における心血管の疾患または病態を治療するための医薬の製造における、本発明1018の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の好ましい態様についての以下の詳細な説明は、添付図面と共に読むと、さらに良く理解されるであろう。本発明を例示する目的で、現在好ましい態様が、図面において示される。しかし、本発明は、図面で示される態様とまさに同じ手配および手段に限定されないことを理解すべきである。
【0022】
図1A】Ptpn11D61G/+マウスの心臓中の差次的にチロシルリン酸化されたタンパク質のプロテオミクス解析の図である。Ptpn11D61G/+マウスの心臓中の低チロシルリン酸化タンパク質および高チロシルリン酸化タンパク質の分類。
図1B】野生型マウス心臓およびPtpn11D61G/+マウス心臓中のホスホチロシンを含む各ペプチドの比をlog2変換した値を示すグラフである。
図1C】差次的に高チロシルリン酸化されたペプチドのヒートマップである(リン酸化部位はMSによって特定し、括弧内に記載している)。
図1D】ディファレンシャルプロテオミクスによる、チロシン242を含むPZR(上のパネル)およびチロシン264を含むPZR(下のパネル)の抽出イオンクロマトグラムの画像およびペプチド配列のパネルである。
図1E】様々な脊椎動物中のタンパク質ゼロ関連(PZR)のC末端のアミノ酸配列を示す。免疫受容体チロシンベース抑制モチーフ(ITIM;S/I/V/LXYXXI/V/L)のコンセンサス配列をボールド体で示しており、チロシン残基は、赤色で表し適切なアミノ酸番号を付している。ヒト(Homo sapiens)、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、イヌ(Canis lupus familiaris)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、ニワトリ(Gallus gallus)に由来するPZR C末端の配列を示している。
図2A】PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているブロットのパネルである。C2C12細胞に、空ベクターまたは活性化されたグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-Shp2E76Aと、空ベクター(ベクター)、野生型ヒトPZR(WT)、またはチロシン241が変異したPZR(Y241F)、チロシン263が変異したPZR(Y263F)、もしくは両方が変異したPZR(2YF)のいずれかとを同時トランスフェクトした。抗pPZR(Y241もしくはY263)抗体、抗PZR抗体、または抗Shp2抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。
図2B】PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているブロットのパネルである。HEK-293細胞に、空ベクター(ベクター)または活性化されたShp2E76Aと、空ベクター(ベクター)、野生型ゼブラフィッシュPZR(WT)、またはチロシン236が変異したPZR(Y241F)、チロシン258が変異したPZR(Y263F)、もしくは両方が変異したPZR(2YF)のいずれかとを同時トランスフェクトした。抗pPZR(Y241もしくはY263)抗体、抗PZR抗体、または抗Shp2抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図2C】PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているブロットのパネルである。HUVECを、対照としてのGFP、野生型Shp2、またはShp2E76Aのいずれかを発現するアデノウイルスに感染させた。抗pPZR(Y241またはY263)抗体、抗トータルPZR抗体、および抗Shp2抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。
図2D】PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているブロットのパネルである。HEK-293細胞に、空ベクター、野生型Shp2(WT)、または図に示したShp2変異体(活性化Shp2、E76A;ヌーナン症候群(NS)変異体、N308D;もしくは多発性黒子を伴うヌーナン症候群(NSML)変異体、Y279CおよびT468M)を一過性にトランスフェクトした。抗pPZR(Y241またはY263)抗体、抗PZR抗体、および抗Shp2抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図2E】PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているブロットのパネルである。HEK-293T細胞に、空ベクター、野生型Shp2、Shp2D61G(NS変異体)、またはShp2A462T(NSML変異体)と共にHAタグ付きゼブラフィッシュPZRをトランスフェクトした。抗HA抗体を用いて細胞溶解物を免疫沈降させ、抗Shp2抗体および抗HA抗体を用いて免疫複合体をイムノブロットした。抗pPZR(Y241およびY263)抗体、抗Shp2抗体、および抗HA抗体を用いて、全細胞溶解物(WCL)をブロットした。
図3A】Ptpn11D61G/+マウスの心臓中のPZRチロシルリン酸化を示す。心臓は、5週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。pPZR(Y263)抗体およびトータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン264のリン酸化は、遺伝子型1つにつきn=5である。いずれのデータも、平均値±平均値の標準誤差(SEM)を表す。**、P<0.01。
図3B】Ptpn11D61G/+マウスの皮質中のPZRチロシルリン酸化を示す。皮質は、5週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。pPZR(Y263)抗体およびトータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン264のリン酸化は、遺伝子型1つにつきn=5である。いずれのデータも、平均値±平均値の標準誤差(SEM)を表す。***、P<0.001。
図3C】Ptpn11Y279C/+の心臓中のPZRチロシルリン酸化を示す。心臓は、8週齢のWTマウスおよびPtpn11Y279C/+マウスから単離した。pPZR(Y263)抗体およびトータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン264のリン酸化は、遺伝子型1つにつきn=5である。いずれのデータも、平均値±平均値の標準誤差(SEM)である。*、P<0.05。
図3D】Ptpn11Y279C/+マウスの皮質中のPZRチロシルリン酸化を示す。皮質は、8週齢のWTマウスおよびPtpn11Y279C/+マウスから単離した。pPZR(Y263)抗体およびトータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン264のリン酸化は、遺伝子型1つにつきn=5である。いずれのデータも、平均値±平均値の標準誤差(SEM)である。***、P<0.001。
図4A】Ptpn11D61G/+マウスの肝臓中のPZRチロシルリン酸化を示す。肝臓は、5週齢の野生型マウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。抗pPZR(Y263)抗体および抗トータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン263のリン酸化レベルの濃度測定解析を行った。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た平均値±SEMを表している。
図4B】Ptpn11D61G/+マウスの腎臓中のPZRチロシルリン酸化を示す画像およびグラフである。腎臓は、5週齢の野生型マウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。抗pPZR(Y263)抗体および抗トータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン263のリン酸化レベルの濃度測定解析を行った。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た平均値±SEMを表している。**、P<0.01(WT対NS)。
図4C】Ptpn11D61G/+マウスの脾臓中のPZRチロシルリン酸化を示す画像およびグラフである。脾臓は、5週齢の野生型マウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。抗pPZR(Y263)抗体および抗トータルPZR抗体を用いて、組織溶解物をイムノブロットした。PZR中のチロシン263のリン酸化レベルの濃度測定解析を行った。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た平均値±SEMを表している。***、P<0.001(WT対NS)。
図5A】Ptpn11D61G/+マウスの心臓中のERKリン酸化およびAktリン酸化を示すイムノブロットのパネルである。心臓は、5週齢の野生型マウスおよびPtpn11D61G/+マウス(AおよびB)から単離した。抗Shp2抗体、抗pERK1/2抗体、抗トータルERK1/2抗体、抗pAkt抗体、および抗Akt抗体を用いるイムノブロッティングに組織溶解物を供した。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た、pERK1/2およびpAktについての濃度測定解析の平均値±SEMを表す。
図5B】Ptpn11D61G/+マウスの皮質中のERKリン酸化およびAktリン酸化を示す画像のパネルである。皮質は、5週齢の野生型マウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。抗Shp2抗体、抗pERK1/2抗体、抗トータルERK1/2抗体、抗pAkt抗体、および抗Akt抗体を用いるイムノブロッティングに組織溶解物を供した。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た、pERK1/2およびpAktについての濃度測定解析の平均値±SEMを表す。
図5C】Ptpn11Y279C/+マウスの心臓中のERKリン酸化およびAktリン酸化を示す画像のパネルである。心臓は、8週齢の野生型マウスおよびPtpn11Y279C/+マウスから単離した。抗Shp2抗体、抗pERK1/2抗体、抗トータルERK1/2抗体、抗pAkt抗体、および抗Akt抗体を用いるイムノブロッティングに組織溶解物を供した。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た、pERK1/2およびpAktについての濃度測定解析の平均値±SEMを表す。
図5D】Ptpn11Y279C/+マウスの皮質中のERKリン酸化およびAktリン酸化を示す画像のパネルである。皮質は、8週齢の野生型マウスおよびPtpn11Y279C/+マウスから単離した。抗Shp2抗体、抗pERK1/2抗体、抗トータルERK1/2抗体、抗pAkt抗体、および抗Akt抗体を用いるイムノブロッティングに組織溶解物を供した。結果は、遺伝子型1つにつき5匹のマウスから得た、pERK1/2およびpAktについての濃度測定解析の平均値±SEMを表す。
図6A】PZRのY241およびY263のリン酸化に対するSrcファミリーキナーゼの影響を示すブロットのパネルである。HEK-293細胞に、図に示したShp2変異体を一過性にトランスフェクトし、対照としてのジメチルスルホキシド(DMSO)または5μMのSU6656のいずれかで処理した。抗Shp2抗体、抗pSrc(Y416)抗体、抗Src抗体、抗pPZR(Y241またはY263)抗体、および抗トータルPZR抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図6B】PZRのY241およびY263のリン酸化に対するSrcファミリーキナーゼの影響を示すブロットのパネルである。NIH 3T3細胞を、図に示した濃度のDMSO、PP2、またはSU6656の存在下で、対照としてのGFPまたは構成的に活性なShp2E76Aのいずれかを発現するアデノウイルスに感染させた。抗Shp2抗体、抗pSrc(Y416)抗体、抗Src抗体、抗pPZR(Y241またはY263)抗体、および抗トータルPZR抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図7A】Srcキナーゼが、NS-Shp2またはNSML-Shp2に誘導されるPZR高チロシルリン酸化を媒介したことを示すブロットである。SYF細胞(Src-/-Fyn-/-Yes-/-MEF)およびSrc+/+細胞(野生型Srcを発現するSYF細胞)を、GFPまたはShp2E76Aのいずれかを発現するアデノウイルスに感染させた。抗Shp2抗体、抗pSrc(Y416)抗体、抗pPZR(Y241またはY263)抗体、抗PZR抗体、および抗Src抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図7B】Srcキナーゼが、NS-Shp2またはNSML-Shp2に誘導されるPZR高チロシルリン酸化を媒介したことを示すブロットである。SYF細胞に、野生型c-Srcまたはキナーゼデッドc-SrcK295R/Y527F(KR/YF)を一過性にトランスフェクトし、GFP、野生型Shp2、またはShp2E76Aのいずれかを発現するアデノウイルスに感染させた。抗Shp2抗体、抗pSrc(Y416)抗体、抗pPZR(Y241またはY263)抗体、抗PZR抗体、および抗Src抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。
図7C】SrcキナーゼがPZR高チロシルリン酸化を誘導したことを示すブロットである。HEK-293細胞にFlagタグ付ヒトPZRをトランスフェクトした。抗Flag抗体を用いて細胞溶解物を免疫沈降させた。これらの免疫沈降物を、Src組換えタンパク質を用いるインビトロSrcキナーゼアッセイ法に供した。この反応生成物を、抗pPZR(Y241またはY263)抗体を用いてイムノブロットした。
図7D】SrcファミリーキナーゼがPZR高チロシルリン酸化を誘導したことを示すブロットである。HEK-293細胞に、構成的に活性なSrc変異体と、HAタグ付き野生型ゼブラフィッシュPZR(WT)、チロシン236が変異したPZR(Y241F)、チロシン258が変異したPZR(Y263F)、または両方が変異したPZR(2YF)のいずれかとを同時トランスフェクトした。抗pPZR(Y241またはY263)抗体および抗HA抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。
図8図8Aは、NS/NSMLに関連するShp2変異体とのSrc複合体形成の増大を示すブロットおよびグラフである。HEK-293細胞に、Shp2 WTおよび図に示したShp2変異体のいずれかを一過性にトランスフェクトした。抗c-Src抗体を用いて細胞溶解物を免疫沈降させ(IP)、抗Shp2抗体および抗Src抗体を用いて免疫複合体をイムノブロットした(IB)。グラフは、3回の独立した実験から得られた、濃度測定解析の平均値±SEMを表す。統計的有意性は、Shp2変異体をWTと比較するダネット検定を用いて導いた。*、P<0.05;**、P<0.01。図8Bは、NS/NSMLに関連するShp2変異体およびPZRとのSrc複合体形成の増大を示すブロットの画像である。HEK-293細胞に、Shp2 WTまたはE76A変異体もしくはY279C変異体と、空ベクター(ベクター)、WTヒトPZR、またはPZR 2YF変異体のいずれかとを同時トランスフェクトした。抗pPZR(Y241もしくはY263)抗体または抗Shp2抗体を用いて、細胞溶解物をイムノブロットした。ERK1/2をローディングコントロールとして使用した。抗Src抗体、抗Shp2抗体、および抗PZR抗体を用いて、免疫複合体をイムノブロットした。
図9】NS変異体およびNSML変異体がPZRチロシルリン酸化に与える影響に関するモデルの図解である。
図10】ダサチニブの投与を示す画像のパネルである。雄Ptpn11D61G/+マウスに、図に示した用量のダサチニブまたはDMSO対照を腹腔内(i.p.)注射し、24時間後にマウスを犠死させ、心臓組織を採取し、指定の抗体を用いてイムノブロットした。
図11図11Aは、NSマウスモデルでのダサチニブ出生前投与計画を示す図である。動物がE7.5で子宮内にいる時点から生後9日目(P9)までの間、妊娠中の母マウスにダサチニブを毎日投与した。生後10日目(P10)から、毎日注射することによって46日間(P56)、マウスにダサチニブを直接的に与えた。マウスの心機能をP42およびP56の時点で評価した。図11Bは、NSマウスモデルでのダサチニブ出生後投与計画を示す図である。P10から開始して32日間(P42)、ダサチニブをマウスに毎日投与し、14日間(P56)、中断した。マウスの心機能をP42およびP56の時点で評価した。
図12A】NSマウスを出生前にダサチニブで処置すると心機能が改善することを示すグラフのパネルである。本明細書において説明するプロトコールに従って、妊娠中のマウスにダサチニブ(0.1mg/kg)を腹腔内注射した。各群のマウスの数を図に示している。統計的有意性は、二元配置ANOVA検定に基づき、*;P<0.05、**;P<0.01、***;P<0.001によって示している。LV vol;s - 収縮期の左室容積(Left ventricular volume in systole)、LV vol;d - 拡張期の左室容積(Left ventricular volume in diastole)、FS - 短縮率(Fractional shortening)、およびEF - 駆出率(Ejection fraction)。
図12B】出生後のNSマウスをダサチニブで処置すると心機能が改善することを示すグラフのパネルである。本明細書において説明するプロトコールに従って、P10から開始して、NSマウスにダサチニブ(0.1mg/kg)を腹腔内注射した。32日間の処置後、マウスの心機能を評価した。各群のマウスの数を図に示している。統計的有意性は、二元配置ANOVA検定に基づき、*;P<0.05、**;P<0.01、***;P<0.001によって示している。LV vol;s - 収縮期の左室容積(Left ventricular volume in systole)、LV vol;d - 拡張期の左室容積(Left ventricular volume in diastole)、FS - 短縮率(Fractional shortening)、およびEF - 駆出率(Ejection fraction)。
図12C】ダサチニブ処置の休止後に心機能の改善が維持されたことを示すグラフのパネルである。図1Bに示すプロトコールに従って、P10から開始して、NSマウスにダサチニブ(0.1mg/kg)を腹腔内注射した。ダサチニブを32日間与えたマウスの心機能を、2週間後に再評価した。各群のマウスの数を図に示している。統計的有意性は、二元配置ANOVA検定に基づき、*;P<0.05、**;P<0.01、***;P<0.001によって示している。LV vol;s - 収縮期の左室容積(Left ventricular volume in systole)、LV vol;d - 拡張期の左室容積(Left ventricular volume in diastole)、FS - 短縮率(Fractional shortening)、およびEF - 駆出率(Ejection fraction)。
図13-1】c-Srcキナーゼがヌーナン症候群についての推定上の標的であることを示す画像のパネルである。図13aは、ヒトShp2の野生型完全長構築物、N+C-SH2構築物、およびPTPドメイン構築物の概略図である。図13bは、HEK-293T細胞中にFlag-Shp2完全長、N+C、またはPTPドメインを同時トランスフェクトされたMyc-Src完全長の検出を示す画像である。タンパク質間の相互作用を免疫沈降法によって明らかにした。図13cは、精製したShp2のHisタグ付きPTPドメインと共に4℃で一晩インキュベートした、精製したc-SrcのGST-SH3ドメインの検出を示す画像である。GSTセファロースビーズを用いてタンパク質を固定し、SDS-PAGEによって分離した。抗His抗体を用いるイムノブロッティングによって、GST複合体中のHis-PTPドメインを検出した。WCL:全細胞溶解物(whole cell lysate)、IP:免疫沈降法(immunoprecipitation)、IB:イムノブロッティング(immunoblotting)。
図13-2】c-Srcキナーゼがヌーナン症候群についての推定上の標的であることを示す画像のパネルである。図13dは、Src(Y416)のリン酸化レベルを示す画像である。図に示した濃度のダサチニブと共に18時間インキュベートした、Ptpn11D61G/+マウスに由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)。抗p-Src(Y416)抗体、抗Src抗体、抗p-ERK1/2抗体、および抗ERK1/2抗体を用いて、全細胞溶解物をイムノブロットした。ホスホ特異的PZR抗体を用いて、PZRのチロシルリン酸化を測定し、PZRとShp2の分子相互作用を免疫沈降法によって明らかにした。図13eは、Src(Y416)のリン酸化レベルを示すグラフである。図13fは、ERK1/2のリン酸化レベルを示すグラフである。図13gは、チロシン241におけるPZRリン酸化の量を示すグラフである。図13hは、濃度測定によって解析したチロシン263の量を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+のMEFと比べた有意性を示している(各条件についてn=3;一元配置ANOVA検定)。
図13-3】c-Srcキナーゼがヌーナン症候群についての推定上の標的であることを示す画像のパネルである。図13iは、抗Shp2抗体、抗p-ERK1/2抗体、抗ERK1/2抗体、抗p-Src(Y416)抗体、抗Src抗体、抗p-PZR(Y263)抗体、および抗PZR抗体を用いてイムノブロットした心臓組織を示す画像である。3週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにビヒクルまたはダサチニブ(0.1、0.5、もしくは1.0mg/kg)を腹腔内注射した。18時間後に心臓組織を単離し、組織溶解物をイムノブロットした。図13jは、ERK1/2のチロシルリン酸化を示すグラフである。図13kは、Srcのチロシルリン酸化を示すグラフである。図13lは、PZRのチロシルリン酸化を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+の心臓組織と比べた有意性を示している(各条件についてn=3;一元配置ANOVA検定)。
図14-1】ダサチニブがPtpn11D61G/+マウスの心機能を改善することを示す画像のパネルである。図14aは、Ptpn11D61G/+マウスへのダサチニブ出生前投与の概略図である。図14bは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での代表的な心エコー画像を示す画像のパネルである。図14cは、P42時点の心エコー図から測定した駆出率(%)(EF)を示すグラフである。図14dは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での代表的な心エコー画像を示す画像のパネルである。図14eは、P56時点の心エコー図から測定した駆出率(%)(EF)を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(各群についてn=10〜16;二元配置ANOVA検定)。
図14-2】ダサチニブがPtpn11D61G/+マウスの心機能を改善することを示す画像のパネルである。図14fは、Ptpn11D61G/+マウスへのダサチニブ出生前投与の概略図である。図14gは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での代表的な心エコー画像を示す画像のパネルである。図14hは、P42時点の心エコー図から測定した駆出率(%)(EF)を示すグラフである。図14iは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での代表的な心エコー画像を示す画像のパネルである。図14jは、P56時点の心エコー図から測定した駆出率(%)(EF)を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(各群についてn=10〜16;二元配置ANOVA検定)。
図14-3】ダサチニブがPtpn11D61G/+マウスの心機能を改善することを示す画像のパネルである。図14kは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスの観血的血行動態調査から得られた、P56時点の動脈収縮期圧を示すグラフである。図14lは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の拡張期圧を示すグラフである。図14mは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の平均動脈圧(MAP)を示すグラフである。図14nは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の左室血圧(LV圧)を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(各群についてn=10〜16;二元配置ANOVA検定)。
図15-1】ダサチニブによって救われたPtpn11D61G/+マウスの心筋症および心臓の線維化を示す画像のパネルである。図15aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P56時点の心臓重量を示すグラフである(各群についてn=8〜9)。図15bは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P56時点の心臓重量(H.W.)と体重(B.W.)の比を示すグラフである(各群についてn=8〜9)。図15cは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから得たP56時点の心臓をマッソンの三色染色法で染色した縦断面の代表的な画像を示す画像のパネルである(スケールバー=2mm)。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(二元配置ANOVA検定)。
図15-2】ダサチニブによって救われたPtpn11D61G/+マウスの心筋症および心臓の線維化を示す画像のパネルである。図15dは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから得たP56時点の左室をマッソンの三色染色法で染色した画像を示す画像のパネルである(スケールバー=200μm)。図15eは、線維症マーカー遺伝子Col1a2の相対的発現を示すグラフである。出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウス(P56)から、全心臓RNAを単離した。図15fは、線維症マーカー遺伝子であるCol3a1の相対的発現を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(二元配置ANOVA検定)。
図15-3】ダサチニブによって救われたPtpn11D61G/+マウスの心筋症および心臓の線維化を示す画像のパネルである。図15gは、心臓の胎仔性遺伝子であるMyh6(αMHC)の相対的発現を示すグラフである。図15hは、心臓の胎仔性遺伝子であるMyh7(βMHC)の相対的発現を示すグラフである。図15iは、心臓の胎仔性遺伝子であるAnfの相対的発現を示すグラフである。図15jは、心臓の胎仔性遺伝子であるBnpの相対的発現を示すグラフである。これらの遺伝子は、定量的RT-PCRによって測定した(各群についてn=6)。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(二元配置ANOVA検定)。
図16-1】ダサチニブで処置したPtpn11D61G/+マウスから得た心筋細胞が、興奮収縮連関の間に正常なCa2+シグナル伝達を示したことを示す画像のパネルである。図16aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した心筋細胞において測定されたCa2+興奮収縮連関を示す画像である。カルシウムトランジェントのトレース(上)および対応する筋節長(leng)短縮のトレース(下)についての、心筋細胞動態の代表的なトレース。図16bは、相対的カルシウム放出(Rmag Ca2+)のデータの要約を示すグラフである。図16cは、筋節短縮の割合を示すグラフである(n=各群について3匹のマウスから得た細胞111〜162個)。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001(二元配置ANOVA検定)。
図16-2】ダサチニブで処置したPtpn11D61G/+マウスから得た心筋細胞が、興奮収縮連関の間に正常なCa2+シグナル伝達を示したことを示す画像のパネルである。図16dは、抗SERCA2A抗体、抗トロポニンI(tTnI)抗体、抗トロポニンT(tTnT)抗体、および抗チューブリン抗体を用いてイムノブロットした心臓組織を示す画像である。出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから心臓組織を単離し、組織溶解物をイムノブロットした。図16eは、SERCA2A発現を示すグラフである。図16fは、トロポニンI発現を示すグラフである。図16gは、トロポニンTを示すグラフである。チューブリンを用いて標準化した後、発現を統計学的に評価した(各群についてn=6)。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001(二元配置ANOVA検定)。
図17-1】インビトロでのNSシグナル伝達に対するダサチニブの影響を示す画像のパネルである。Ptpn11D61G/+マウスに由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)を、ダサチニブと共に18時間インキュベートした。抗Shp2抗体、抗p-Src(Y416)抗体、抗Src抗体、抗p-Raf1(Y341)抗体、抗Raf1抗体、抗p-MEK1/2抗体、抗MEK1/2抗体、抗p-ERK1/2抗体、抗ERK1/2抗体、抗p-JNK抗体、抗JNK抗体、抗p-p38抗体、抗p38抗体、抗p-Akt抗体、および抗Akt抗体を用いて、全細胞溶解物をイムノブロットした(図17a)。Raf1(Y341)(図17b)およびMEK1/2(図17c)のリン酸化レベルを統計学的に評価した。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+MEFと比べた有意性を示している(各条件についてn=3;一元配置ANOVA検定)。
図17-2】インビトロでのNSシグナル伝達に対するダサチニブの影響を示す画像のパネルである。Ptpn11D61G/+マウスに由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)を、ダサチニブと共に18時間インキュベートした。JNK(図17d)およびAkt(S473)(図17e)のリン酸化レベルを統計学的に評価した。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+MEFと比べた有意性を示している(各条件についてn=3;一元配置ANOVA検定)。Ptpn11D61G/+マウスに由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)を、STI-571(図17f)またはShp2阻害剤(図17g)と共に18時間インキュベートした。ホスホ特異的PZR抗体を用いて、PZRのチロシルリン酸化を測定した。
図18-1】インビボでのNSシグナル伝達に対するダサチニブの影響を示す画像のパネルである。3週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにビヒクルまたはダサチニブ(0.1、0.5、もしくは1.0mg/kg)を腹腔内注射した。図18aは、p-Raf1(Y341)抗体、Raf1抗体、p-MEK1/2抗体、MEK1/2抗体、p-JNK抗体、JNK抗体、p-p38抗体、p38抗体、p-Akt(S473)抗体、およびAkt抗体を用いてイムノブロットした心臓組織を示す画像である。18時間後に心臓組織を単離し、組織溶解物をイムノブロットした。
図18-2】インビボでのNSシグナル伝達に対するダサチニブの影響を示す画像のパネルである。3週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにビヒクルまたはダサチニブ(0.1、0.5、もしくは1.0mg/kg)を腹腔内注射した。図18bは、Raf1(Y341)のリン酸化レベルを示すグラフである。図18cは、MEK1/2のリン酸化レベルを示すグラフである。図18dは、JNKのリン酸化レベルを示すグラフである。図18eは、p38のリン酸化レベルを示すグラフである。図18fは、Akt(S473)のリン酸化レベルを示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+マウスと比べた有意性を示している(各条件についてn=3;一元配置ANOVA検定)。
図19】出生後ダサチニブ投与によって、Ptpn11D61G/+マウスの全身の成長が改善しなかったことを示す画像のパネルである。図19aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスの成長曲線を示すグラフである。処置群間の差は、3週齢から8週齢まで有意であった(p<0.001、二元配置ANOVA検定)。図19bは、P42に測定した体重を示すグラフである。図19cは、P42に測定した体長を示すグラフである。図19dは、P56に測定した体重を示すグラフである。図19cは、P42に測定した体長を示すグラフである。図19eは、P56に測定した体長を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(各群についてn=10〜16;二元配置ANOVA検定)。
図20-1】顔異形症の特徴が、ダサチニブで処置したPtpn11D61G/+マウスで変化しなかったことを示す画像のパネルである。図20aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での頭蓋骨および下顎の代表的画像のパネルである。
図20-2】顔異形症の特徴が、ダサチニブで処置したPtpn11D61G/+マウスで変化しなかったことを示す画像のパネルである。図20bは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での頭蓋骨長から得た測定値を示すグラフである。図20cは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での頭蓋骨幅から得た測定値を示すグラフである。図20dは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での頭蓋骨長と頭蓋骨幅の比から得た測定値を示すグラフである。図20eは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での眼角間距離(intercantal distance)(ICD)から得た測定値を示すグラフである。図20fは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点での下顎長から得た測定値を示すグラフである。図20gは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での頭蓋骨長から得た測定値を示すグラフである。図20hは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での頭蓋骨幅から得た測定値を示すグラフである。図20iは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での頭蓋骨長と頭蓋骨幅の比から得た測定値を示すグラフである。図20jは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での眼角間距離(ICD)から得た測定値を示すグラフである。図20kは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点での下顎長から得た測定値を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(各群についてn=10〜16;二元配置ANOVA検定)。
図21-1】出生後ダサチニブ処置によってPtpn11D61G/+マウスの脾腫表現型はなくならなかったことを示す画像のパネルである。図21aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置した8週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから得たP56時点の脾臓をH&E染色した代表的組織画像のパネルである(スケールバー=200μm)。
図21-2】出生後ダサチニブ処置によってPtpn11D61G/+マウスの脾腫表現型はなくならなかったことを示す画像のパネルである。図21bは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P42時点の脾臓重量を示すグラフである。図21cは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P42時点の脾臓重量と体重の比を示すグラフである。図21dは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P56時点の脾臓重量を示すグラフである。図21eは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P56時点の脾臓重量と体重の比を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;***、p<0.001。(各群についてn=7〜10;二元配置ANOVA検定)。
図22】ダサチニブが肝損傷を誘発しないことを示す画像のパネルである。図22aは、出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置した8週齢のWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから得たP56時点の肝臓をH&E染色した代表的組織画像のパネルである(スケールバー=200μm)。図22bは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P42時点の血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の酵素活性を示すグラフである。図22cは、ビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスにおいて測定された、P56時点の血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の酵素活性を示すグラフである。データはいずれも、平均値±SEMを示す。*、p<0.05;***、p<0.001。(各群についてn=7〜10;二元配置ANOVA検定)。
図23】SrcのSH3ドメインとShp2のPTPドメインの間の分子相互作用を示す画像である。精製したc-SrcのGSTタグ付きSH3ドメインを、精製したShp2のHisタグ付きPTPドメインと共に4℃で一晩インキュベートした。GSTセファロースビーズを用いてタンパク質を固定し、SDS-PAGEによって分離した。抗His抗体を用いるイムノブロッティングによって、GST複合体中のHis-PTPドメインを検出した。
図24】NS-Shp2によって誘導されるPZR高リン酸化がShp2ホスファターゼ活性にもc-Ablキナーゼ活性にも依存しないことを示す画像のパネルである。Ptpn11D61G/+マウスに由来するマウス胚線維芽細胞(MEF)を、STI-571(図24a)またはShp2阻害剤(図24b)と共に18時間インキュベートした。ホスホ特異的PZR抗体を用いて、PZRのチロシルリン酸化を測定した。
図25】ダサチニブ処置後にNSML(Y279C/+)マウスにおいて心筋症および線維症の分子マーカーが改善したことを示すグラフのパネルである。出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置した(0.1mg/kg/日)WTマウスおよびPtpn11Y279C/+マウス(P42)から、全心臓RNAを単離した。線維症マーカー遺伝子であるCol1a2(図25a)およびCol3a1(図25b)、心筋症マーカーANP(図25c)、ならびに心臓の胎仔性遺伝子であるMyh6(aMHC)(図25d)、Myh7(bMHC)(図25e)、ならびにMyh6/Myh7比(図25f)を、定量的RT-PCRによって測定した(各群についてn=6)。データはいずれも、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001。(二元配置ANOVA検定)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
定義
他に規定されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有している。本明細書において説明されるものと同様または等価な任意の方法および材料を、本発明を検証するための実践において使用してよいが、好ましい材料および方法を本明細書において説明する。本発明を説明し請求するにあたって、以下の専門用語を使用する。
【0024】
また、本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することだけを目的とし、限定することを意図しないことも理解すべきである。
【0025】
本明細書において使用される場合、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)の文法上の対象物に言及するために使用される。例えば、「エレメント(an element)」とは、1つのエレメントまたは複数のエレメントを意味する。
【0026】
本明細書において使用される場合、量および時間の継続期間などの測定可能な値に言及する際、「約(about)」という用語は、指定された値の±20%または10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、もしくは0.01%以内の変動を包含することを意図しており、そのような変動は、開示される方法を実施するのに適切である。文脈から特に明らかでない限り、本明細書において提供される数値はすべて、約(about)という用語で修飾される。
【0027】
「異常なタンパク質チロシンリン酸化」という句は、1種もしくは複数種の標的タンパク質の高リン酸化もしくは低リン酸化および/または異常なプロテインキナーゼ活性を意味する。1つの態様において、異常なタンパク質チロシンリン酸化は、対照と比較される。
【0028】
「心血管の疾患または病態」という用語は、限定されるわけではないが、神経伝導障害、血栓形成傾向、アテローム性動脈硬化症、狭心症、高血圧、動脈硬化症、心筋梗塞、鬱血性心不全、心筋症、高血圧、動脈狭窄症および静脈狭窄症、弁膜症、心筋炎、ならびに不整脈を含む、心血管系を冒す任意の疾患または病態を意味する。心血管疾患の病態には、心臓ならびに中心または末梢の動脈および静脈の血管系に関連する疾患状態の任意の臨床症状も含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、該臨床症状には、疼痛、衰弱、高血圧、血漿コレステロールの上昇、血漿脂肪酸の上昇、頻脈、徐脈、異常な心電図、外出血または内出血、頭痛、めまい、悪心、および嘔吐が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0029】
「心機能」という用語は、心臓の活動、または活動を行うための心臓の細胞もしくは組織の相互作用を意味する。心機能の例には、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、必要とされる組織への血液および栄養素の適切な送達が含まれるが、それらに限定されるわけではない。異常な心機能(組織への血液および栄養素の不適切な送達)は、限定されるわけではないが、血圧変化、血栓症、心電図の変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、肥大、発育不全、心不全(心室不全(左または右))、鬱血性心不全、および心停止などの問題を招き得る。心機能の改善には、限定されるわけではないが、筋原線維の組織崩壊、異常な心筋細胞収縮性、心臓の線維化、異常な血圧、過度の血圧変化、血栓症、心電図の変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、および鬱血性心不全などの少なくとも1種の異常な心機能の改善、除去、または予防が含まれ得る。
【0030】
本開示において、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(containing)」、および「有している(having)」などは、米国特許法でそれらに与えられている意味を有することができ、「含む(includes)」および「含んでいる(including)」などを意味することができる。同様に、「から本質的になっている(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」も、米国特許法で与えられている意味を有しており、この用語は非限定的であり、挙げられるもの(that)の基本的または新規の特徴が、挙げられるものより多くのものが存在することによって変わらない限り、挙げられるものより多くのものが存在することを許容するが、先行技術の態様は除外する。
【0031】
「先天性心疾患」とは、出生前に起こる心血管構造体中の異常を含む、心血管の部類を意味する。
【0032】
「有効量」とは、未治療の患者と比べて、疾患の少なくとも1つの症状を軽減または改善するのに必要とされる量を意味する。ある疾患の治療的処置に使用される活性化合物の有効量は、投与様式、対象の年齢、体重、および全体的健康状態によって変動する。
【0033】
本明細書において使用される場合、「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0034】
「断片」とは、ポリヌクレオチドまたは核酸分子の一部分を意味する。好ましくは、この部分は、参照核酸の全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、または100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1500個、2000個、または2500個(および中間の任意の整数値)のヌクレオチドを含んでよい。核酸分子に適用される場合、断片とは、大型の核酸の部分配列を意味する。核酸分子の「断片」は、少なくとも約15ヌクレオチド;例えば、少なくとも約50ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド;少なくとも約100〜約500ヌクレオチド、少なくとも約500〜約1000ヌクレオチド、少なくとも約1000ヌクレオチド〜約1500ヌクレオチド;もしくは約1500ヌクレオチド〜約2500ヌクレオチド;または約2500ヌクレオチド(および中間の任意の整数値)の長さであってよい。
【0035】
「低投与量」とは、心疾患、先天性心疾患、心不全、または同様の病態以外の適応症に対して典型的に処方される投与量より少ない、治療的に有効な投与量を意味する。1つの態様において、低投与量は、化学療法投与量より少ない。別の態様において、低投与量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量より少なく、その約200分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、少なくとも1つの心機能を改善する。ダサチニブは、約20mg/kgの投与量で、マウスの腫瘍発生を予防する際に有効であることが示されている(Kantarjian, H. et al. Dasatinib versus imatinib in newly diagnosed chronic-phase chronic myeloid leukemia. N Engl J Med 362, 2260-2270 (2010))。ヒトでのダサチニブの治療的効果は、約2mg/kg、すなわちマウスでの約24mg/kgと同等の用量であると報告されている(Yu, E. Y. et al. Phase II study of dasatinib in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer. Clinical cancer research : an official journal of the American Association for Cancer Research 15, 7421-7428 (2009)およびApperley, J. F. et al. Dasatinib in the treatment of chronic myeloid leukemia in accelerated phase after imatinib failure: the START a trial. J Clin Oncol 27, 3472-3479, doi:10.1200/JCO.2007.14.3339 (2009))。ダサチニブの0.1mg/kgという少ない用量(治療的用量の約200分の1)が、CHDに関連心臓疾患を治療するのに十分であった。
【0036】
「単離された(isolated)」、「精製された(purified)」、または「生物学的に純粋な(biologically pure)」という用語は、天然の状態で存在する場合に通常は物質に付随する構成要素を、様々な程度で含まない物質に関する。「単離する(isoalte)」とは、元の供給源または環境からの分離の程度を意味する。「精製する(purify)」とは、単離より高い分離の程度を意味する。「精製された」または「生物学的に純粋な」タンパク質は、任意の不純物が、そのタンパク質の生物学的特性に具体的に影響を及ぼすことも、他の有害な結果を引き起こすこともないように、他の物質が十分に取り除かれている。すなわち、核酸またはペプチドは、細胞性物質、ウイルス性物質、および組換えDNA技術によって作製される場合の培地も、ならびに化学合成される場合の化学的前駆体および他の化学物質も実質的に含まない場合、精製されている。純度および均質性は、典型的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーを用いて測定される。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを示し得る。修飾、例えば、リン酸化またはグリコシル化に供されることができるタンパク質の場合、異なる修飾によって、別々に精製できる異なる単離タンパク質が生じ得る。
【0037】
「薬学的に許容される」とは、薬理学的/毒物学的観点から患者に許容され、かつ組成、調剤、安定性、患者の許容性、および生物学的利用能に関する物理的/化学的観点から製薬薬剤師に許容されるような特性および/または物質に関する。「薬学的に許容される担体」とは、有効成分の生物活性の有効性に干渉せず、かつそれが投与される宿主に対して毒性ではない媒体を意味する。
【0038】
本明細書において使用される場合、「薬学的組成物」または「薬学的に許容される組成物」という用語は、本発明の範囲内で有用な少なくとも1種の化合物または分子と薬学的に許容される担体との混合物を意味する。薬学的組成物は、患者への化合物または分子の投与を容易にする。限定されるわけではないが、静脈内投与、経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、眼への投与、肺投与、および局所的投与を含む、化合物または分子を投与する多数の技術が、当技術分野にはある。
【0039】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の範囲内で有用な化合物または分子を、意図した機能をそれが果たし得るように患者体内または患者に運搬または輸送するのに関与している、薬学的に許容される物質、組成物、または担体、例えば、液状もしくは固形の増量剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒、または封入材を意味する。典型的には、このような構築物は、身体の1つの器官または部分から、身体の別の器官または部分へと運搬または輸送される。各担体は、本発明の範囲内で有用な化合物を含む、製剤の他の成分と共存でき、患者に害を与えないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体としての機能を果たし得る物質のいくつかの例には、糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;界面活性剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張性生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに薬学的製剤中で使用される他の非毒性の共存可能な物質が含まれる。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、本発明の範囲内で有用な化合物の活性と共存可能であり、かつ患者に生理学的に許容される、任意およびすべての被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤なども含む。補助的な活性化合物もまた、組成物中に混合されてよい。「薬学的に許容される担体」は、本発明の範囲内で有用な化合物または分子の薬学的に許容される塩をさらに含んでよい。本発明の実践に際して使用される薬学的組成物に含まれてよい他の付加的な成分は、当技術分野において公知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)で説明されている。
【0040】
「ミエリンタンパク質ゼロ様タンパク質1」または「MPZL1」とも呼ばれる「タンパク質ゼロ関連」または「PZR」とは、免疫グロブリンスーパーファミリー細胞表面タンパク質であるタンパク質を意味する。PZRは、Shp2への結合を担っている2つの免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む。リン酸化されると、PZRはShp2に特異的に結合して、その結果、Shp2のチロシンホスファターゼ活性を活性化することができる。一度活性化されると、Shp2のチロシンホスファターゼ活性は、細胞シグナルを伝達する下流の基質を脱リン酸化する働きをする。Shp2はまた、他の分子/活性を特定の複合体に動員する足場またはアダプタータンパク質として作用することによっても、シグナルを伝達することができる。Shp2は、触媒に依存する様式と触媒に依存しない様式の両方で、シグナル伝達を制御することができる。
【0041】
PZR1bと呼ばれるPZRの1種のアイソフォームは、ITIMを欠いており、完全長PZRおよびそのShp2動員に対してドミナントネガティブな作用を有している。例示的なPZR配列には、GenBankアクセッション番号NM_001146191およびNP_001139663で見出されるヒトPZRまたはその断片、ならびにNM_001001880もしくはNP_001001880で見出されるマウスPZR配列またはその断片が含まれる。PZRについて公知である情報の多くは、接着を介した細胞シグナル伝達および細胞遊走におけるその役割に関する。しかし、PZRが病態生理学的細胞シグナル伝達に関与しているかどうかは不明のままであり、引き続き、任意のヒト疾患についての標的としてのPZRの妥当性は、まだ理解されていない。
【0042】
「RASオパシー」とは、Ras/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の構成要素または調節因子をコードする遺伝子の生殖系列変異によって引き起こされる遺伝的症候群のグループを意味する。これらの症候群には、神経線維腫症1型、ヌーナン症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、およびレギウス症候群が含まれる。Ras/MAPK経路は、正常な発達にとっていずれも不可欠である細胞周期ならびに細胞の増殖、分化、および老化を調節する際にきわめて重要な役割を果たす。共通の潜在的なRas/MAPK経路調節不全が原因で、RASオパシーは、多数の重複する表現型特徴を示す。いくつかの場合において、これらの重複する表現型は、MAPKそれ自体とは無関係に作動するメカニズムによって存在し得るか、または引き起こされ得る。本明細書において説明するPZR/Shp2複合体は、Rasの上流に位置する。
【0043】
ヌーナン症候群(NS)は、アメリカ合衆国において約1:1,000〜2,500生児出生の発病率で起こる、常染色体優性障害である。NSで最も多く認められる心臓欠陥は、肺動脈弁狭窄症、心房中隔欠損症、および肥大型心筋症であり、それぞれの重症度は、軽度のものから生命を脅かすものまで及ぶ。多発性黒子を伴うヌーナン症候群 (NSML)は、「ヌーナンに似た」外見、ならびに多発性黒子、電気伝導の異常、両眼隔離、肺動脈弁狭窄症、異常生殖器、発育遅延、および難聴を含む、NSと同様の表現型を有している珍しい常染色体優性障害である。NSに関連する変異は、ホスファターゼ活性の増大を招く。NSMLに関連する変異は、ホスファターゼ活性の低下を招く。
【0044】
「参照」とは、標準物質または対照を意味する。「参照」とは、比較のための基準として使用される、定められた標準物質または対照である。
【0045】
本明細書において使用される場合、「試料」または「生物試料」とは、スクリーニング方法または処置が望まれる関心対象の細胞(例えば、癌またはその腫瘍細胞)を含み得る、任意のものを意味する。試料は、生物試料、例えば、生体液または生体組織であってよい。1つの態様において、生物試料は、肺動脈内皮細胞を含む組織試料である。このような試料は、多様な細胞、タンパク質、および遺伝物質を含んでよい。生体組織の例には、器官、腫瘍、リンパ節、動脈、および個々の細胞も含まれる。生体液の例には、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、または羊水などが含まれる。
【0046】
「Srcファミリーチロシンキナーゼ」または「SFK」は、タンパク質基質のチロシン残基へのリン酸基の付加を触媒する酵素ファミリーである。c-Srcは、SFKファミリーの1つのメンバーに相当する。
【0047】
「Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤」とは、Srcファミリータンパク質基質上のチロシン残基のリン酸化を減少させるか、または妨げる分子を意味する。Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤は、チロシルリン酸化を妨害し、おそらくはチロシンキナーゼもしくはリン酸基より高い結合効率でチロシンキナーゼもしくはチロシン残基に結合し、かつ/またはチロシン残基へのリン酸基の有効な結合を妨げて、リン酸化を減少させるか、もしくは妨げることができる。Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤には、低分子Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、Srcファミリーチロシンキナーゼアンタゴニスト、中和抗体、ならびに阻害性のペプチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。低分子Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤の例には、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
「Src相同2(SH2)ドメインを含む(SH2)タンパク質チロシンホスファターゼ-2」または「Shp2」は、チロシン特異的ファミリーのタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)のメンバーである。Shp2は、タンパク質のチロシン脱リン酸化を触媒するチロシンホスファターゼである。ヒト遺伝子PTPN11の変異が、ヌーナン症候群症例の約半分およびNSML症例の約10分の1の原因となっていることが判明している。
【0049】
「対象」または「患者」は、その中で使用される場合、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であってよい。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウス哺乳動物などの家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0050】
「膜貫通型糖タンパク質」という用語は、細胞膜の内外にまたがる膜タンパク質を意味する。1つの態様において、膜貫通型糖タンパク質は、PZRのような免疫グロブリンスーパーファミリー細胞表面タンパク質を含む。
【0051】
本明細書において使用される場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、および「治療(treatment)」などの用語は、障害および/またはそれに関連する症状を軽減または改善することを意味する。障害または病態を治療するということは、その障害、病態、またはそれに関連する症状が完全に良くなるか、またはなくなることを、除外はしないが不可欠とはしないことが、認識されると考えられる。
【0052】
「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、タンパク質基質上のチロシン残基のリン酸化を減少させるか、または妨げる分子を意味する。チロシンキナーゼ阻害剤は、チロシルリン酸化を妨害し、おそらくはチロシンキナーゼもしくはリン酸基より高い結合効率でチロシンキナーゼもしくはチロシン残基に結合し、かつ/またはチロシン残基へのリン酸基の有効な結合を妨げて、リン酸化を減少させるか、もしくは妨げることができる。チロシンキナーゼ阻害剤には、低分子チロシンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼアンタゴニスト、中和抗体、ならびに阻害性のペプチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。低分子チロシンキナーゼ阻害剤の例には、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0053】
本明細書において提供される範囲は、その範囲内の値のすべてに代わる簡略表現であることが理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群に由来する任意の数、数の組合せ、または部分範囲を含むと理解される。
【0054】
本明細書における変動要素(variable)または局面に関する一態様の説明は、任意の単一の態様としてのその態様、または他の任意の態様もしくはそれらの一部分と組み合わせられたその態様を含む。
【0055】
本明細書において提供される任意の組成物または方法は、本明細書において提供される他の組成物および方法のいずれか1つまたは複数と組み合わせられてよい。
【0056】
組成物
異常なタンパク質チロシンリン酸化、例えば、Srcファミリーチロシンキナーゼおよびそれらの基質のリン酸化は、心血管疾患に罹患している対象において変化していることが発見されている。異常なタンパク質チロシンリン酸化が、RASオパシーのようなある種の疾患に罹患している対象において変化していることも、発見されている。チロシンキナーゼ活性を阻害すると、心疾患が治療され、少なくとも1つの心機能が改善する。阻害により、RASオパシーに関連する先天性心欠陥を有している対象の心血管機能も改善する。本発明は、Srcファミリーチロシンキナーゼのようなチロシンキナーゼを阻害して少なくとも1つの心機能を改善し、それによって、チロシンリン酸化を妨げるか、または減少させる、組成物を含む。1つの局面において、本発明は、チロシンリン酸化を減少させ、それを必要とする対象の少なくとも1つの心機能を改善する低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を含む、組成物を含む。
【0057】
1つの態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、Srcファミリーチロシンキナーゼおよびタンパク質ゼロ関連(PZR)などの膜貫通型糖タンパク質の異常なチロシンリン酸化を減少させる。
【0058】
1つの態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約500分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約400分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約35分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約50分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約100分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約150分の1〜約250分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲である。低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1、30分の1、35分の1、40分の1、45分の1、50分の1、55分の1、60分の1、65分の1、70分の1、75分の1、80分の1、85分の1、90分の1、95分の1、100分の1、105分の1、110分の1、115分の1、120分の1、125分の1、130分の1、135分の1、140分の1、145分の1、150分の1、155分の1、160分の1、165分の1、170分の1、175分の1、180分の1、185分の1、190分の1、195分の1、200分の1、205分の1、210分の1、215分の1、220分の1、225分の1、230分の1、235分の1、240分の1、245分の1、250分の1、255分の1、260分の1、265分の1、270分の1、275分の1、280分の1、285分の1、290分の1、295分の1、300分の1、およびそれらの間の任意の倍率変化(fold change)であってよい。いくつかの態様において、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量は、70kgの成人に対して約75〜約170mg/日または約1.1〜約2.4の範囲である。
【0059】
別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群より選択される。別の態様において、組成物は、本明細書において開示するチロシンキナーゼ阻害剤の内の複数を含む。
【0060】
さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、限定されるわけではないが、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体からなる群より選択される阻害剤である。別の態様において、組成物は、少なくとも1種のSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤を含む。
【0061】
別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、少なくとも1つの心機能を改善する。心機能には、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。異常な心機能は、限定されるわけではないが、血圧変化、血栓症、心電図の変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、心不全(心室不全)、鬱血性心不全、および心停止などの問題を招き得る。心機能の改善には、限定されるわけではないが、筋原線維の組織崩壊、異常な心筋細胞収縮性、正常に調節されないSERCA2A発現、心臓の線維化、異常な血圧、過度の血圧変化、血栓症、心電図の変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、および鬱血性心不全などの少なくとも1種の異常な心機能の改善、除去、または予防が含まれ得る。
【0062】
さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、抗線維化効果をもたらす。心筋中の線維性構成要素のレベル上昇は、心不全の進行と関連付けられている。低投与量でチロシンキナーゼを阻害すると、心筋中の線維性構成要素の蓄積が減少する。
【0063】
異常なタンパク質チロシンリン酸化を減少させる組成物もまた、本発明に含まれる。ある種の疾患、例えば、先天性心疾患のような心血管の疾患または病態は、異常なタンパク質チロシンリン酸化を特徴とする。したがって、タンパク質ゼロ関連またはPZRのような1種または複数種の膜貫通型糖タンパク質のチロシンリン酸化を妨げるか、または減少させる処置は、本発明に含まれる。別の局面において、本発明は、心血管の疾患または病態に関連する異常なタンパク質チロシンリン酸化を減少させることができる組成物を含む。さらに別の局面において、本発明は、先天性心疾患に関連する異常なタンパク質チロシンリン酸化を減少させることができる組成物を含む。さらに別の局面において、本発明は、RASオパシーに関連する心血管の疾患または病態に関連する異常なタンパク質チロシンリン酸化を減少させることができる組成物を含む。
【0064】
方法
本発明はまた、それを必要とする対象において心血管の疾患または病態を予防または治療するための方法を含む。本明細書において説明するように、異常なチロシンリン酸化を抑制すると、心血管の疾患または病態が予防され、かつ/または治療される。低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を含む組成物を、小児科対象のようなそれを必要とする対象に投与して、心血管の疾患または病態を予防または治療するために異常なレベルのチロシンリン酸化を減少させる。
【0065】
1つの局面において、本発明は、対象における異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0066】
別の局面において、本発明は、先天性心疾患を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、チロシンリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0067】
さらに別の局面において、本発明は、異常なタンパク質チロシンリン酸化を有している、RASオパシーに関連する心血管の疾患または病態を治療する方法であって、それを必要とする対象に低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含み、チロシンキナーゼ阻害剤が、タンパク質ゼロ関連(PZR)チロシルリン酸化の異常なレベルを低下させ、対象の少なくとも1つの心機能を改善する、方法を含む。
【0068】
1つの態様において、本明細書において説明する方法における心血管の疾患または病態は、RASオパシー、例えば、限定されるわけではないが、神経線維腫症1型、ヌーナン症候群、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(レオパード症候群)、毛細血管奇形-動静脈奇形症候群、コステロ症候群、心臓-顔-皮膚症候群、およびレギウス症候群からなる群より選択されるRASオパシーに関連している先天性心疾患または心血管の疾患もしくは病態である。
【0069】
別の態様において、方法は、小児科患者である対象にチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含む。小児科対象は、18才未満であることができる。小児科対象は、12才未満であることができる。小児科対象は、10才、9才、8才、7才、6才、5才、4才、3才、2才、および1才未満であることができる。別の態様において、対象は、12才未満の小児科患者である。代替の態様において、方法は、18才より年上である対象にチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含む。
【0070】
1つの態様において、方法は、Srcファミリーチロシンキナーゼおよびタンパク質ゼロ関連(PZR)などの膜貫通型糖タンパク質の異常なチロシンリン酸化を減少させる低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階を含む。1つの態様において、チロシンリン酸化の異常なレベルは、チロシンリン酸化タンパク質ゼロ関連(PZR)の異常なレベルを含む。
【0071】
別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階は、限定されるわけではないが、筋原線維の組織化、心筋細胞の収縮性、SERCA2A発現、および心臓の線維化などの心機能を改善する。別の態様において、心機能の改善には、限定されるわけではないが、筋原線維の組織崩壊、異常な心筋細胞収縮性、正常に調節されないSERCA2A発現、心臓の線維化、異常な血圧、過度の血圧変化、血栓症、心電図の変化、不整脈、心筋炎、心膜炎、心筋梗塞、心筋症、および鬱血性心不全などの少なくとも1種の異常な心機能の改善、除去、または予防が含まれ得る。さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤を投与する段階は、抗線維化効果を対象にもたらす。
【0072】
1つの態様において、本明細書において説明する方法で使用される低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の用量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約500分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約400分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約35分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約50分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約100分の1〜約300分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約150分の1〜約250分の1の範囲である。別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤の量は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約175分の1〜約250分の1の範囲である。低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量の約25分の1、30分の1、35分の1、40分の1、45分の1、50分の1、55分の1、60分の1、65分の1、70分の1、75分の1、80分の1、85分の1、90分の1、95分の1、100分の1、105分の1、110分の1、115分の1、120分の1、125分の1、130分の1、135分の1、140分の1、145分の1、150分の1、155分の1、160分の1、165分の1、170分の1、175分の1、180分の1、185分の1、190分の1、195分の1、200分の1、205分の1、210分の1、215分の1、220分の1、225分の1、230分の1、235分の1、240分の1、245分の1、250分の1、255分の1、260分の1、265分の1、270分の1、275分の1、280分の1、285分の1、290分の1、295分の1、300分の1、およびそれらの間の任意の倍率変化であってよい。いくつかの態様において、チロシンキナーゼ阻害剤の化学療法投与量は、70kgの成人に対して約75〜約170mg/日または約1.1〜約2.4の範囲である。
【0073】
さらに別の態様において、低投与量のチロシンキナーゼ阻害剤は、アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セジラニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、レスタウルチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、セマナニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、テムシロリムス、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、およびベムラフェニブからなる群より選択される。別の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、Srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、限定されるわけではないが、A419259、AP23451、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、AZM475271、BMS354825、CGP77675、CU201、ENMD2076、KB SRC 4、KX2361、KX2-391、MLR 1023、MNS、PCI-32765、PD166285、PD180970、PKC-412、PKI166、PP1、PP2、SRN 004、SU6656、TC-S7003、TG100435、TG100948、TX-1123、VAL 201、WH-4-023、XL 228、アルテヌシン、ボスチニブ、ダムナカンタール、ダサチニブ、ハービマイシンA、インジルビン、ネラチニブ、ラベンダスチンA、ペリチニブ、ピセアタンノール、サラカチニブ、SrcI1、およびそれらの類似体である。別の態様において、組成物は、本明細書において開示するチロシンキナーゼ阻害剤の内の複数を含む。さらに別の態様において、組成物は、少なくとも1種のSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤を含む。そのような態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、一緒にもしくは逐次的に、異なる投与経路によって、または同じ薬学的組成物中もしくは異なる薬学的組成物中で、投与されてよい。
【0074】
本明細書において開示する方法および組成物はまた、異常なタンパク質チロシンリン酸化を特徴とする心血管の疾患または病態を有している対象の心血管の疾患または病態の治療法としても有用である。
【0075】
薬学的組成物
本発明はまた、本発明の方法を実践するための本発明の薬学的組成物の使用も包含する。1つの局面において、本発明は、本明細書において説明する組成物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を含む。別の局面において、本明細書において説明する組成物は、それを必要とする対象の心血管の疾患または病態を治療するための医薬を製造する際に使用される。さらに別の局面において、本発明は、心血管の疾患または病態の治療の際に使用される別の治療物質と組み合わせた本明細書において説明する組成物を含む、薬学的組成物を含む。このような薬学的組成物は、対象に投与するのに適した形態で提供されてよく、かつ1種もしくは複数種の薬学的に許容される担体、1種もしくは複数種の付加的な成分、またはこれらのいくつかの組合せを含んでよい。本明細書において説明する組成物は、当技術分野において周知であるように、生理学的に許容される塩、例えば、生理学的に許容される陽イオンまたは陰イオンと組み合わせた、本発明で企図される化合物を含んでよい。
【0076】
本発明の方法で有用である薬学的組成物は、吸入、経口、直腸、膣、非経口、局所、経皮、肺、鼻腔内、口腔内、眼、くも膜下腔内、静脈内、または別の投与経路向けに適切に開発され得る。他の企図される製剤には、発射される(projected)ナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分を含む封じ直した赤血球、および免疫学に基づく製剤が含まれる。投与経路は、当業者に容易に明らかになると考えられ、治療される疾患のタイプおよび重症度、ならびに治療される動物患者またはヒト患者のタイプおよび年齢を含む任意の数の因子に応じて変わると考えられる。
【0077】
本明細書において説明する薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で公知であるか、または今後開発される任意の方法によって調製されてよい。通常、このような調製(preparatory)方法は、有効成分を担体または1種もしくは複数種の他の補助成分と混合し、次いで、必要な場合または望ましい場合には、その産物を所望の単回投与単位または多回投与単位に成形または包装する段階を含む。
【0078】
1つの態様において、本発明の組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化される。1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の少なくとも1種の本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む。有用である薬学的に許容される担体には、グリセロール、水、生理食塩水、エタノール、ならびに他の薬学的に許容される塩溶液、例えばリン酸および有機酸の塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらおよび他の薬学的に許容される担体の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1991, Mack Publication Co., New Jersey)において説明されている。
【0079】
本発明の実践は、別段の定めが無い限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を使用し、これらは当業者の理解し得る範囲に十分収まる。このような技術は、“Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, fourth edition (Sambrook, 2012); “Oligonucleotide Synthesis” (Gait, 1984); “Culture of Animal Cells” (Freshney, 2010); “Methods in Enzymology” “Handbook of Experimental Immunology” (Weir, 1997); “Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells” (Miller and Calos, 1987); “Short Protocols in Molecular Biology” (Ausubel, 2002); “Polymerase Chain Reaction: Principles, Applications and Troubleshooting”, (Babar, 2011); “Current Protocols in Immunology” (Coligan, 2002)などの文献で十分に説明されている。これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの作製に応用可能であり、したがって、本発明をなす際および実践する際に検討されてよい。特定の態様のために特に有用な技術を、以下のセクションで考察する。
【実施例】
【0080】
以下の実験例を参照することによって、本発明を詳細にさらに説明する。これらの例は、例証のために提供されるにすぎず、別段の指定が無い限り、限定的であることを意図しない。したがって、本発明は、以下の例に限定されると解釈されるべきでは決してなく、正しくは、本明細書において提供される教示の結果として明らかになる任意およびすべての変形例を包含すると解釈されるべきである。
【0081】
さらなる説明がなくても、当業者は、前述の説明および以下の例示的な例を用いて、本発明の化合物を作製および利用し、特許請求の範囲の方法を実践できると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の態様を具体的に示し、限定的であると決して解釈されるべきではない。
【0082】
ヌーナン症候群(NS)は、Shp2をコードするPTPN11遺伝子の活性化変異が原因で生じる常染色体優性障害であり、先天性心疾患、低身長、および顔異形症となって現れる。Shp2シグナル伝達の複雑さは、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(NSML)患者が、PTPN11不活性化変異を有しているにもかかわらず、NSに類似した症状を示すという観察結果によって例示される。「タンパク質ゼロ関連」(PZR)は、細胞外マトリックスと連係して細胞遊走を促進する膜貫通型糖タンパク質であり、NSおよびNSMLのマウスモデルにおいて、主要な高チロシルリン酸化(hyper-tyrosyl-phosphorylated)タンパク質として同定された。PZR高チロシルリン酸化は、ホスファターゼに依存しない様式で、NSおよびNSMLのShp2へのSrc動員の増強によって促進された。したがって、PZRは、NSおよびNSMLの標的であると特定された。PZRを介したShp2の膜への動員の増強は、これらのPTPN11変異の一部重複する病態生理学的特徴を管理する(direct)ための共通メカニズムとして働いた。
【0083】
本明細書において開示する実験を行う際に使用される材料および方法を、以下に説明する。
【0084】
抗体、化学物質、細胞株、および発現試薬。ウサギモノクローナルホスホ-PZR(Y241)抗体およびウサギモノクローナルホスホ-PZR(Y263)抗体は、Cell Signalingと共同で作製した。マウスモノクローナルSrc抗体、ウサギポリクローナルSrc抗体、ウサギポリクローナルホスホ-ERK1/2(T202 Y204)、マウスモノクローナルERK1/2抗体、ウサギポリクローナルホスホ-Akt(S473)抗体、およびマウスモノクローナルAkt抗体は、Cell Signalingから購入した。ウサギポリクローナルShp2抗体およびウサギポリクローナルERK1/2抗体は、Santa Cruz Biotechnologyから購入した。マウスモノクローナルShp2抗体は、BD Bioscienceから購入した。マウス抗ホスホチロシン抗体4G10(05-321)はMerck Milliporeから、ウサギ抗GFP(TP401)はAcrisから、マウス抗HA.11クローン16B12はCovanceから入手した。ウサギポリクローナルPZR(105-6)は、Z. J. Zhaoが寛大に提供して下さった。Srcファミリーキナーゼ阻害剤PP2およびSU6656は、Calbiochemから購入した。HEK-293細胞、NIH 3T3細胞、SYF(Src-/-Yes-/-Fyn-/-マウス胚線維芽細胞(MEF))細胞、およびSrc++(Srcを過剰発現するSYF)細胞はATCCから購入し、37℃、5%CO2インキュベーターにおいて、増殖培地(1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))中で増殖させた。野生型Shp2を含む複製欠損アデノウイルス(Ad)構築物(Ad-Shp2 WT)、E76A機能獲得型Shp2変異体を含む複製欠損アデノウイルス(Ad)構築物(Ad-Shp2E76A)、および緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む複製欠損アデノウイルス(Ad)構築物(Ad-GFP)を、以前に説明されているようにして調製した(Eminaga, S., et al., J. Biol. Chem., 283:15328-15338)。NIH 3T3細胞およびSYF細胞を、感染多重度(MOI)が50となる量のアデノウイルスに感染させた。SrcWTを含むpJ3ΩベクターおよびK295R/Y527FドミナントネガティブSrc変異体(SrcK295R/Y527F)を含むpJ3Ωベクターは、以前に説明されている(Fornaro, M., et al., J. Cell Biol., 175:87-97)。Shp2 WT、機能獲得型/ヌーナン症候群のShp2変異体(Shp2E76AおよびShp2N308D)、ならびに多発性黒子を伴うヌーナン症候群のShp2変異体(Shp2Y279CおよびShp2T468M) をコードするpIRES-GFPプラスミドは、以前に説明されている(Kontaridis, MI, et al., J. Biol. Chem., 281:6785-6792)。ゼブラフィッシュShp2変異体は、以前にクローニングされている(Jopling, C., et al., PLoS Genet., 3:e225)。ゼブラフィッシュPZR(zPZR)は、ゼブラフィッシュ胚cDNA(尾芽胚期(bud stage)から受精後48時間目(hpf)まで)からネステッドPCRによってクローニングした。zPZR ITIMのY236F、Y258F、およびY236F Y258F変異体は、部位特異的変異誘発を用いて作製した。RPTPaシグナル配列およびヘマグルチニン(HA)タグをzPZRのN末端に組み入れた。HEK-293細胞およびSYF細胞中へのDNAトランスフェクションは、製造業者のプロトコールに従ってリポフェクタミン2000を用いて実施した。
【0085】
MS解析。以前に説明されているようにして(Rikova, K., et al., Cell, 131:1190-1203)、PhosphoScan法を実施した。野生型マウス心臓およびShp2変異体(ヌーナン症候群)マウス心臓をホモジナイズし、超音波処理し、かつ遠心分離して細胞片を除去した。ProteinPlusクーマシー試薬(Pierce)を用いて、各組織のタンパク質総量を標準化し、タンパク質を還元し、アルキル化し、トリプシン(Worthington)を用いて一晩消化した。Sep-PakクラシックC18カートリッジ(Waters)を用いる固相抽出によって、得られたペプチドを非ペプチド物質から分離した。凍結乾燥ペプチドを再溶解し、pY-100ホスホチロシン抗体(9411; Cell Signaling Signaling Technology)を用いるイムノアフィニティー精製によって、ホスホペプチドを濃縮した。0.15%トリフルオロ酢酸(TFA)でペプチドを溶出させ、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)解析の直前に、C18スピンチップを用いて濃縮した。各試料について2つ1組の注入を実行して解析レプリケートを作製し、各試料からのタンデムMS(MS/MS)同定の数を増やした。Magic C18 AQ逆相樹脂を詰めた10cm×75μmのPicoFritキャピラリーカラム上に直接、ペプチドを添加した。280nl/分で送達される、0.125%ギ酸中アセトニトリルの45分の直線勾配を用いて、カラムを展開した。タンデム質量スペクトルは、Top 10法、ダイナミックエクスクルージョン(dynamic exclusion)反復数1、および反復期間30秒を用いて、XCaliburを実行するLTQ-Orbitrap XL質量分析計を用いて集めた。MSスペクトルは、質量分析計のOrbitrap構成部分において集め、MS/MSスペクトルはLTQ部分において集めた。SEQUESTおよびCoreプラットフォーム(Gygi Lab, Harvard University)を用いて、MS/MSスペクトルを処理した。検索は、偽陽性率を推定するために全検索について逆方向の偽データベース(reverse decoy database)を含めて、マウスNCBIデータベースに対して実施した。Coreの線形判別解析モジュールにおいて0.98の精度カットオフを用いて、ペプチドの帰属を得た。システインカルボキサミドメチル化を静的改変(static modification)と指定し、メチオニン酸化ならびにセリン、トレオニン、およびチロシンのリン酸化は許容した。質量確度(5ppm)フィルターおよびペプチド中のホスホチロシンの存在を利用して、結果をさらに絞り込んだ。Progenesis v4.1(Nonlinear Dynamics)を用いて、非標識定量を実施した。結果の正確さを確実にするために、少なくとも2.0倍変化したペプチドすべてについて、ペプチド存在量データをProgenesisにおいて手作業で再検討した。
【0086】
動物の取扱い - Ptpn11D61G/+マウスは、Benjamin Neel博士(University of Toronto, Toronto)から提供され、以前に説明されていたようにして遺伝子型を同定した(Araki T, Mohi MG, Ismat FA, Bronson RT, Williams IR, Kutok JL, Yang W, Pao LI, Gilliland DG, Epstein JA, Neel BG. 2004. Mouse model of Noonan syndrome reveals cell type- and gene dosage-dependent effects of Ptpn11 mutation. Nat Med 10:849-857)。簡単に説明すると、Ptpn11D61G/+雄マウスをWT C75BL/6 x SV129雌マウスと交雑させ、それらの子孫をPCRおよびD61G対立遺伝子に対するAgeIを用いた消化によって遺伝子型同定した。
【0087】
ダサチニブ処置 - N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[6-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-2-メチル-4-ピリミジニル]アミノ]-5-チアゾールカルボキサミド一水和物(ダサチニブ、BMS-354825)をBiovisionから購入した。ダサチニブを濃度10mg/mlでDMSOに溶解し、次いで、ビヒクル(1×ダルベッコPBS)に濃度200μg/mlで再懸濁した。出生後10日目から始めて生後6週目まで(P42)、WT雄マウスおよびPtpn11D61G/+雄マウスにダサチニブ(0.1mg/kg、腹腔内)を毎日注射した。その後、注射を2週間継続するか、または中断した。ビヒクルを注射されたマウスが対照としての機能を果たした。体重を毎週測定し、P42(6週目)およびP56(8週目)に心エコーを実施した。動物の取扱いは、イェール大学の施設内動物管理使用委員会(The Yale University Institutional Animal Care and Use Committee)の認可を受けた。
【0088】
心エコー調査 - 心臓の大きさおよび機能を、Vevo770コンソールを用いて心エコーによって解析した。イソフルラン(O2中0.2%)を吸入させて、マウスに軽く麻酔をかけた。測定値はすべて、3〜6回の連続した心周期から取得し、それらの平均値を解析に使用した。拡張末期(d)と収縮末期(s)の両方における心室中隔壁(IVS)、左室内径(LVID)、および左室後壁厚(LVPW)を、TモードトレーシングおよびMモードトレーシングから測定した。拡張期測定は、米国心エコー図学会(the American Society of Echocardiography)の最先端の方法を用いて実施した。TMモード測定値について、左室拡張末期容積(LV vol,d)および左室収縮末期容積(LV vol,s)を計算した。駆出率(EF)(%)は、[(LVvol,d-LVvol,s)/VLvol,d]×100によって計算し、短縮率(%)は、[(LVID,d-LVID,s)/LVID,d]×100によって計算した。
【0089】
統計学的解析 - 統計値は、平均値±s.e.mとして提示している。二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)検定を用いて、P値を算出した。統計学的解析はいずれも、GraphPad Prism 5を用いて実施した。いずれの調査についても、0.05未満のP値を有意とみなした。
【0090】
本明細書において開示する実施例2の実験を行う際に使用される材料および方法を、以下に説明する。
【0091】
抗体、化学物質、細胞株、およびプラスミド - 以下の抗体を、記載したようにイムノブロッティング(IB)または免疫沈降法(IP)いずれかのために使用した。マウスモノクローナルFlag抗体(F1804、IP-1:100、IB-1:1,000)およびマウスモノクローナルビオチン標識Flag抗体(F9291、IB-1:1,000)は、Sigmaから入手した。マウスモノクローナルMyc抗体(sc-40、IP-1:100、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルビオチン標識Myc抗体(sc-40B、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルShp2抗体(sc-280、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルp38抗体(sc-535、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルGST抗体(sc-138、IB-1:1,000)は、Santa Cruz Biotechnologyから入手した。ウサギモノクローナルホスホ-PZR抗体(Y241;8181番、IB-1:1,000)、ウサギモノクローナルホスホ-PZR抗体(Y263;8088番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-Src抗体(Y416;2101番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルSrc抗体(2110番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルRaf1抗体(12552番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-MEK1/2抗体(S217/221;9154番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルMEK1/2抗体(4694番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-ERK1/2抗体(T202/Y204;9101番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルERK抗体(9107番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-p38抗体(T180/Y182;9215番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-JNK抗体(T183/Y185;4668番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルJNK抗体(3708番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルホスホ-Akt抗体(S473;9271番、IB-1:1,000)、マウスモノクローナルAkt抗体(2967番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルSERCA2A抗体(9580番、IB-1:1,000)、ウサギポリクローナルトロポニンI抗体(4002番、IB-1:1,000)は、Cell Signalingから購入した。ウサギポリクローナルホスホ-Raf1抗体(Y341;ab192820、IB-1:1,000)およびウサギポリクローナルαチューブリン抗体(ab4074、IB-1:1,000)は、Abcamから入手した。マウスモノクローナルShp2抗体(610622番、IB-1:1,000)は、BD Bioscienceから購入した。マウスモノクローナルHis抗体(11922416番、IB-1:1,000)はRocheから入手した。ウサギポリクローナルトロポニンT(MS-295、IB-1:1,000)は、Thermo Scientificから入手した。ウサギポリクローナルPZR抗体(IB-1:1,000)は、Z. J. Zhaoが寛大に提供して下さった。ダサチニブはBiovisionから購入し、STI-571はLKT laboratoriesから入手した。Shp2ホスファターゼ阻害剤は、Z.-Y. Zhang(Indiana University)が寛大に提供して下さった。HEK-293T細胞はATCCから購入し、マウス胚線維芽細胞(MEF)はWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスから単離した。細胞は、37℃、5% CO2インキュベーターにおいて、増殖培地(1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM))中で増殖させた。ヒトSrc構築物、ならびにPtpn11完全長構築物、N+C構築物、およびPTP構築物をPCRによって作製し、pCMV-3Tag4aベクターおよびpCMV-Tag2bベクター(Clontech laboratories)中にクローニングした。HEK-293T細胞中へのDNAトランスフェクションは、製造業者のプロトコールに従ってリポフェクタミン3000(Invitrogen)を用いて実施した。
【0092】
免疫沈降法およびイムノブロッティング - 細胞または心臓組織を氷上で溶解緩衝液(25mM Tris-HCl、pH7.4、136mM NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1% Nonidet P-40、1mM Na3VO4、10mM NaF、1mMベンズアミジン、1mM PMSF、1μg/mlペプスタチンA、5μg/mlアプロチニン、および5μg/mlロイペプチン)に溶解した。細胞または組織溶解物を4℃で30分間インキュベートし、14,000rpm、4℃で10分間遠心分離することによって清澄にした。製造業者の取扱い説明書(Pierce)に従ってBCA試薬を用いて、タンパク質濃度を測定した。免疫沈降法の場合、溶解物500μgを1μgの指定の抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。4℃で4時間、プロテインAセファロースビーズまたはプロテインGセファロースビーズのいずれかの表面で免疫複合体を回収し、同じ溶解緩衝液で3回洗浄し、次いで、試料緩衝液中で5分間、95℃まで加熱した。全溶解物または免疫複合体をSDS-PAGEおよびイムノブロッティングに供した。高感度ケミルミネッセンス法検出またはOdyssey Imaging Systemを用いて、抗体結合部位を可視化した。
【0093】
インビトロGSTプルダウンアッセイ法 - 細菌由来の精製されたGST-Src SH3およびHis -Shp2 PTPは、T. Boggon (Yale University)によって提供された。プルダウンアッセイ法は、His-Shp2 PTPまたはFlagタグ付きShp2を過剰発現するHEK-293細胞溶解物のいずれかと共にGST-Srcタンパク質SH3を含む溶解緩衝液1ml中で、4℃で一晩実施した。SH3が結合したShp2タンパク質を、BSAでコーティングしたGST-セファロースビーズを用いて4℃で1時間、アフィニティー精製した。Srcタンパク質のSH3とShp2タンパク質との相互作用を、抗His抗体または抗Flag抗体および抗GST抗体を用いるイムノブロッティングによって検査した。
【0094】
動物の取扱い - Ptpn11D61G/+マウスは、Benjamin Neel博士(University of Toronto, Toronto)によって提供され、以前に説明されていたようにして遺伝子型を同定した9。簡単に説明すると、Ptpn11D61G/+雄マウスを野生型C75BL/6 x SV129雌マウスと交雑させ、それらの子孫をPCRおよびD61G対立遺伝子に対するAgeIを用いた消化によって遺伝子型同定した。ダサチニブ(Biovision)をビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水に溶かした1% DMSO)中に懸濁した。出生前処置のために、妊娠中のマウスに毎日ダサチニブを腹腔内注射(0.1mg/kg体重)し、これは妊娠7.5日目(E7.5)に始めて、出生後9日目まで(授乳中の雌に)継続した。ビヒクルを注射されたマウスが対照としての機能を果たした。P10に始めて、生後8週目まで、ダサチニブまたはビヒクルのみを仔マウスに毎日、直接(腹腔内)注射した。出生後処置のために、P10から生後6週目まで、ダサチニブを仔マウスに(腹腔内)注射した;注射は2週間中断した。動物の取扱いは、イェール大学の施設内動物管理使用委員会の認可を受けた。
【0095】
組織学的検査 - ビヒクルまたはダサチニブで処置した野生型マウスおよびNSマウスから、心臓、肝臓、および脾臓を単離した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶かした4%パラホルムアルデヒドで組織を固定し、パラフィン切片のために加工処理し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)またはマッソンの三色染色法を用いて染色した。明視野顕微鏡(Olympus BX51, Yale Liver Center)のもとで組織画像を得た。
【0096】
心エコー - 酸素中1%イソフラン(isofurane)を含む密閉したプラスチック製容器中で、無動になるまでマウスに麻酔をかけ、次いで、温められた処置台(procedure board)(37°C)上に移した。処置の間ずっと、イソフルラン気化器に連結されたノーズコーンによって1%イソフルランを供給して、動物に麻酔をかけたままにした。マウスの胸の上にスキャンヘッドを置き、安定な画像シグナル(BモードとMモードの両方)を取得し、Vevo 770(VisualSonics)を用いてデータを解析した。Mモード画像を用いて、収縮期および拡張期(distolic)の左室の周壁(peripheral wall)厚、心腔(chamber)の直径、および心室間の壁の厚さを測定した。駆出率(EF)(%)および短縮率(FS)(%)を算出した。
【0097】
血行動態調査 - ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)を腹腔内注射することによって、麻酔を導入した。動物を温かいパッドの上に置き、頸部に切開部を作った。右側頸動脈を露出させ、1.9フレンチの先端トランスデューサ付きカテーテル(Millar Inc., Houston, TX)を動脈に挿入し、その後、左室内に進めた。高忠実度の正、負のdp/dtを含む左室圧および心拍数を、基本条件下で測定した。データを記録し、LabChartソフトウェアを用いて解析した。
【0098】
RNA抽出および定量的リアルタイムPCR解析 - 製造業者の取扱い説明書に従ってRNeasyキット(Qiagen, CA)を用いて、マウス心臓からRNAを単離した。逆転写酵素PCRキット(Applied Biosystems, CA)を用いて合計1μgのRNAを逆転写して、cDNAを作製した。下記のプライマー対と共にApplied Biosytems 7500 FastリアルタイムPCRシステムおよびSYBRグリーン遺伝子発現マスターミックスを用いて、3つ1組でリアルタイム定量PCRを実施した。
【0099】
相対的遺伝子発現レベルはいずれも、ΔCT法を用いて解析し、18S rRNA発現に対して標準化した。
【0100】
単細胞解析のための心臓組織の酵素消化 - Xianghua Xu, et al. J Vis Exp. 2009; (28):1308を改変したランゲンドルフ手順によって、8週齢のマウスから心筋細胞を単離した。手短に言えば、心臓を素速く摘出し、カニューレ処置してランゲンドルフ装置に取り付けた。ランゲンドルフ装置において、37℃のCa2+を含まない灌流緩衝液(25mM HEPES中、118mM NaCl、4.8mM KCl、2.0mM KH2PO4、2.55mM MgSO4、10mM BDM、および10mMグルコース)を心臓に灌流させた。組織を消化するために、0.5mg/mLリベラーゼTH(Roche Applied Science, Penzberg, Germany)を含む緩衝液を心臓に灌流させた。約10分後、ランゲンドルフ装置から心臓を取り外し、右室および心房を除去した。左室を単離し、切断して細片にし、機械撹拌しながら5〜10分間、37℃の消化溶液でさらに消化し、次いで、徐々に粉砕して個々の細胞を遊離させた。残存している組織の大きな塊は、新鮮な消化緩衝液に移して、上記のプロセスを6回まで、または全組織が消化されるまで、繰り返した。穏やかな遠心分離によって細胞をコラゲナーゼから取り除き、いくつかの洗浄段階のFBS含有緩衝液に再懸濁し、高濃度CaCl2溶液を段階的に添加することによって、徐々にカルシウム(0.05〜1.1mM)を再導入した。画像化の前に少なくとも1時間、細胞を静置した。
【0101】
心筋細胞機能の特徴付け - 心筋細胞を、タイロード液(150mM中:NaCl:140、KCl:5.4、CaCl2:1.8、MgCl2:1、HEPES:25mM、グルコース:10mM)中で画像化した。カルシウム蛍光画像法のために、2.5μM Fura-2 AMを追加しプルロニック酸(20%w/v)を添加した(complimented)タイロードを暗所で15分間、細胞ペレットに負荷した。15分間の負荷後、細胞を新しいタイロード液に再懸濁し、画像化するまで安定させた。心筋細胞のCa2+トランジェントおよび無負荷短縮性収縮(unloaded shortening contraction)を、恒温灌流槽(Cell MicroControls, Norfolk, VA)を備えた倒立顕微鏡(Nikon Eclipse, Chiyoda, Tokyo)を用いて、37℃タイロード液の常時灌流下で測定した。細胞を1Hzで電界刺激した。筋節長カメラシステム(HVSL, Aurora Scientific, Ontario, Canada)を用いて、収縮事象をリアルタイムで画像化した。刺激された際に収縮した、筋節の横紋がはっきりとしている桿状細胞のみを、測定のために選択した。10回の連続した拍動の間、筋節の長さを測定および記録し、続いて、全拍動を平均して単一の波形を作成した。RatioMaster蛍光システム(PTI, Birmingham, NJ)によって100Hzの総括速度(overall rate)で発生させた励起波長340nmと380nmを交互に用いて、カルシウムトランジェントの測定値を同時に記録した。蛍光発光を中心波長510nmで選別し(filtered)、定量して、交互の励起波長に対する応答(それぞれF340およびF380)を得た。Ca2+トランジェントは、各時点の2種の蛍光強度の補間比(interpolated ratio)(F340/F380)として報告した。データは、DAP5216aデータ獲得システム(Microstar Laboratories, Bellevue, WA)を用いて記録し、MATLAB(MathWorks, Natick, MA)で記述されたカスタムソフトウェアを用いて処理した。ピーク筋節長短縮(ピークSL短縮(Peak SL shortening))、ピーク短縮までの時間(TTP)、再び50%長くなるまでの時間(RT50)、カルシウムトランジェントの大きさ(Ca2+Rmag:最大F340/F380-最小F340/F380)、およびカルシウムの減衰速度Tau(TauCa2+)をコンピューターで計算した。
【0102】
統計学的解析 - いずれのデータも、平均値±平均値の標準誤差(SEM)を表す。グループ間の差異は、GraphPad Prism 6統計ソフトウェアプログラムによって、チューキーの多重比較と共に分散分析(ANOVA)を用いて評価した。
【0103】
本明細書において開示する実験の結果を以下に説明する。
【0104】
実施例1:チロシンキナーゼ治療介入(intervention)を用いてRASオパシーによる心臓疾患を標的とする
図1Aは、Ptpn11D61G/+マウスの心臓中の差次的にチロシルリン酸化されたタンパク質のプロテオミクス解析の図である。
【0105】
図1Bは、野生型マウス心臓およびPtpn11D61G/+マウス心臓中のホスホチロシンを含む各ペプチドの比をlog2変換した値を示すグラフである。図1Cは、差次的にチロシルリン酸化されたペプチドのヒートマップである(リン酸化部位は、MSによって特定し、括弧内に示している)。図1Dは、ディファレンシャルプロテオミクスによる、チロシン242を含むPZR(上のパネル)およびチロシン264を含むPZR(下のパネル)の抽出イオンクロマトグラムの画像およびペプチド配列のパネルである。図1Eは、様々な脊椎動物におけるPZRのC末端のアミノ酸配列を示す。ヌーナン症候群変異体(Shp2D61G/+)のノックイン変異を有しているマウスの心臓に関する包括的なホスホチロシルプロテオミクスにより、チロシルリン酸化タンパク質の調節の変化が明らかになる。MS解析は、これらのマウスにおいて最も大量に高チロシルリン酸化されているタンパク質がPZRであることを示している。チロシル残基264および242は、ヌーナン症候群(Shp2D61G/+)マウスの心臓中で増加したPZRチロシルリン酸化部位であると同定された。PZRチロシン242および264は、進化の間に高度に保存されていることを考慮すると、PZRの機能にとって重要である可能性が高い。これらの結果から、PZRチロシルリン酸化の増加が、ヌーナン症候群に関係する心臓疾患の発病の際にある役割を果たしている可能性があることが示唆される。これらの結果から、Y242およびY264が、このNSマウスモデルにおけるPZR高チロシルリン酸化部位であることが確認された。
【0106】
図2A〜2Eは、PZRチロシルリン酸化の特徴付けを示しているイムノブロットを示す。NS変異体およびNSML変異体によるPZR高チロシルリン酸化部位の形態(conformation)。マウス中に存在するチロシルリン酸化部位においてPZRのリン酸化耐性変異体が発現すると、ホスホ特異的な抗PZR(Y242)および抗PZR(Y263)を用いて検出されるように、培養細胞においても、リン酸化される能力が損なわれる。NS患者またはNSML患者のいずれかで認められるものに相当するShp2変異体は、Y241およびY263においてPZR高チロシルリン酸化を誘導することができる。同様に、ゼブラフィッシュPZRも、同等の残基においてチロシルリン酸化されることができる同一の特性を示す。これらの結果から、NSまたはレオパード症候群に関連するShp2変異体が様々な細胞株においてPZR高リン酸化を誘導することが示唆された。
【0107】
図3A〜3Dは、Ptpn11D61G/+マウスおよびPtpn11Y279C/+マウスの心臓および皮質におけるPZRチロシルリン酸化を示す。部位特異的なホスホ-PZR抗体を用いて、本発明者らは、Shp2D61G/+対立遺伝子のノックイン変異を発現するマウスが、心臓および皮質においてPZRチロシルリン酸化の増加を示すことを示している。同様に、Shp2Y279C/+対立遺伝子のノックイン変異を発現するマウスも、心臓および皮質においてPZRチロシルリン酸化の増加を示す。これらの結果から、それぞれホスファターゼ触媒活性が増強および低減しているNS変異とNSML変異の両方とも、PZRチロシルリン酸化を増加させることができることが実証される。これらの結果から、PZRがNSとNSMLの両方にとっての標的であることが実証され、PZRがこれらのRASオパシーの新規の共通のシグナル伝達構成要素に相当することが示唆される。これらの結果から、NSモデルマウスおよびNSMLモデルマウスの心臓および皮質における例の(that)PZR高チロシルリン酸化が示された。これらのインビボデータは、コンピューターでの実験(図1A〜1E)およびインビトロ実験(図2A〜2E)が正しいことを裏付けた。
【0108】
図4A〜4Cは、Ptpn11D61G/+マウスの肝臓、腎臓、および脾臓におけるPZRチロシルリン酸化の画像およびグラフを示す。PZRは、Ptpn11D61G/+マウスの肝臓、腎臓、および脾臓において高チロシルリン酸化されている。これらの結果により、NSマウスの様々な組織におけるPZR高チロシルリン酸化が示された。
【0109】
図5A〜5Dは、Ptpn11D61G/+マウスおよびPtpn11Y279C/+マウスの心臓および皮質におけるERKおよびAktのリン酸化の画像を示す。Ptpn11D61G/+マウスの心臓および皮質におけるERKおよびAKTのリン酸化状態は、野生型のものに対して実質的な(substantive)差を示さないが(despite)、同様の条件下で、PZRは高チロシルリン酸化されている(図3A〜3Dを参照されたい)。これらの結果から、NSマウスまたはNSMLマウスの間で、Shp2、ホスホ-ERK1/2、およびホスホ-Aktの基礎レベルに明らかな差が観察されないことが暗に示された(implicated)。さらに、これらの結果から、心臓および皮質におけるMAPKおよびAKTのシグナル伝達に対するこれらのRASオパシーの影響が、PZR高チロシルリン酸化を推進するものとは異なることが示された。
【0110】
図6A〜6Bは、NS/NMLS-Shp2を介したPZRのY241およびY263リン酸化に対するSrcファミリーキナーゼの影響を示すブロットである。NSおよびNMLSに関連する変異体はPZR高チロシルを誘導し、これは、SFK阻害剤SU6656で細胞を前処理すると阻害され得る。これらの結果から、SFKがPZRのY241とY263の両方をリン酸化できることが示唆された。さらに、これらの結果から、NS-Shp2変異体およびNSML-Shp2変異体によって誘導されるPZR高チロシルリン酸化がSrcファミリーキナーゼに依存性であることが示された。
【0111】
図7A〜7Bは、SrcキナーゼがNS/LS-Shp2に誘導されるPZR高チロシルリン酸化を媒介したことを示すブロットである。図7C〜7Dは、SrcキナーゼがPZR高チロシルリン酸化を媒介したことを示すブロットである。これらの図は、PZRチロシルリン酸化に対するチロシンキナーゼ阻害活性の影響の比較を示す。活性化Shp2(Shp2-E76A)変異体を発現している細胞に、チロシンキナーゼ阻害剤であるPP2およびSU6656を投与した。PP2とSU6656の両方とも、Shp2-E76Aに誘導されるPZR高チロシルリン酸化を阻害することができるが、SU6656の方が効果的であった。PZR高チロシルリン酸化は、1μMのSU6656で完全に阻害されたのに対し、PP2の場合は5μMで阻害された。これらの結果によって、SrcファミリーキナーゼがPZRリン酸化を担っているという考えが裏付けられた。重要なことには、SrcによるPZRリン酸化は、Shp2がPZRと相互作用するための結合部位(pY241/pY263)を作り出した。これらの結果は、c-SrcがPZRのShp2結合部位を直接的にリン酸化することを暗に示した。
【0112】
ヌーナン症候群では、SrcによるY241およびY263のリン酸化増加の結果、有害な高レベルのPZR/Shp2複合体が生じた。PZR/Shp2複合体は、これらの患者において先天性(congeneital)心疾患の発症を促進するメカニズムであると提唱されている。
【0113】
図8A〜8Bは、NS/NSMLに関連するShp2変異体およびPZRとのSrc複合体形成の増大を示している。図8Aは、NSまたはNSMLのいずれかを引き起こすことが公知である変異型のShp2が、野生型Shp2と比べて高い親和性でc-Srcに結合できることを示す。さらに、これらの結果は、c-SrcがPZRのShp2結合部位を直接的にリン酸化したことも示唆する。
【0114】
図9は、NS-Shp2変異体およびNSML-Shp2変異体がPZRチロシルリン酸化に与える影響に関するモデルの図解である。このモデルは、NSマウスモデルとNSMLマウスモデルの両方の心臓においてPZRのShp2結合部位が高チロシルリン酸化されているのが観察された実験データに基づいている。PZRチロシルリン酸化の増加により、PZRへのShp2結合の増加が促進された。図は、極めて近くにある他の潜在的なSrc基質と同様に、PZRチロシルリン酸化が増大するとPZRへのShp2動員が増加して、さらにPZRチロシルリン酸化が促進されることを提唱している。
【0115】
さらに、NS変異体およびNSML変異体は、チロシンキナーゼであるSrcとも、高い親和性で相互作用した。まとめると、これらの相手を選ばない相互作用の結果、PZRからの下流シグナル伝達が機能不全に陥り、このことが先天性心疾患の発症の一因となった。Srcチロシンキナーゼ活性の邪魔をする(intervening)ことによって、PZR/Shp2複合体が減少し、PZRおよびおそらくは他の標的からの変化したシグナル伝達が訂正されると提唱されている。
【0116】
図10は、ダサチニブの投与を示す画像のパネルである。雄Ptpn11D61G/+マウスに、指定用量のダサチニブまたはDMSO対照を腹腔内(intrapertinoeally)注射した。24時間後、マウスを犠死させ、心臓組織を採取し、トータルPZR抗体およびpY(263)-PZR抗体を用いてイムノブロットした。これらの結果から、NSマウスへのダサチニブ注射が、PZRチロシルリン酸化を低減させるのに有効であることが示された。
【0117】
図11Aは、NSマウスモデルでのダサチニブ出生前投与計画を示す図である。動物がE7.5で子宮内にいる時点から生後9日目(P9)までの間、妊娠中の母マウスにダサチニブを毎日投与した。生後10日目(P10)から、毎日注射(腹腔内)することによって6週間(P42)および8週間(P56)、NSマウスにダサチニブを直接的に与えた。
【0118】
図11Bは、NSマウスモデルでのダサチニブ出生後投与計画を示す図である。生後10日目(P10)から開始して6週間(P42)、ダサチニブをNSマウスに毎日投与し、6週間後、治療をやめ、心機能を測定した。その後、ダサチニブ処置を2週間中止した後に、この同じマウス群を評価した。
【0119】
図11Aおよび11Bにおいて、これらのマウスの心機能を6週目および8週目に評価した。これらの図は、NSマウスに対する出生前または出生後のダサチンブ(Dasatinb)処置戦略を説明したものである。本明細書において説明する投与計画は、NSに関係する心臓疾患に治療的介入するためのダサチニブの有効性についての3つの局面を試験するために設計された。NSは発達障害であるため、図11Aに示す第1の投与計画では、発達中の胚に投与された場合に治療的効果を発揮する際のダサチニブの有効性を試験した。第2の評価では、生後に投与された場合に、NSに関係する心臓疾患を治療する際のダサチニブの有効性を明らかにした。治療用量のダサチニブを生後に患者に投与できることが理解されているため、この戦略は、心臓疾患の転帰と、より密接に関連していた。この投与戦略は、子宮内合併症のリスクを軽減すると思われる。最後に、第3の試験は、治療によって心機能が改善した場合、治療を継続するためにダサチニブ投与が必要であることを確かめることを意図した。
【0120】
図12Aは、NSマウスを出生前にダサチニブで処置すると心機能が改善することを示すグラフのパネルである(P42、図11Aで認められる)。図12Bは、NSマウスを出生後にダサチニブで処置すると心機能が改善することを示すグラフのパネルである(P42)。図12Cは、ダサチニブ処置の休止後に心機能の改善が維持されたことを示すグラフのパネルである(P56、図11Bで認められる)。これらの結果は、NSの発病にSrcシグナル伝達が関与していることの証拠を与えた。
【0121】
これらの実験の結果から、低用量のダサチニブ(本明細書において、癌治療に有効であると判明している量よりも少ない用量と定義される)が、NSマウスの心機能を改善する際に有効であることが実証された。図12Aにおいて、これらの結果から、駆出率(EF)および短縮率(FS)に基づいて評価したところ、妊娠マウスにダサチニブを注射した場合、心臓機能は、野生型のパラメーターまで完全に回復していることが実証された。図11Bにおいて、ダサチニブは、発生後に投与された場合でさえ、有効であることが示された。この処置は、NSマウスの心機能を完璧に直す機能性を依然として発揮した。これらの結果から、RASオパシー患者の先天性心疾患を治療するためのダサチニブの治療的投与は、発生後投与によって、実質的に低いリスクで行えることが示された。最後に、図11Cは、有効な心機能性が達成された後に2週間、ダサチニブを休止したところ、心機能が継続して維持されたことを示す。これらの結果から、ひとたび有効な治療法が達成され心臓機能性が回復すると、ダサチニブに継続的に曝露する必要は無用であることが実証された。
【0122】
実施例2:ダサチニブによる、ヌーナン症候群(NS)マウスモデルの心臓欠陥の選択的救済
Shp2は、2つのSrc相同2(SH2)ドメイン、すなわちタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ドメインおよびカルボキシ末端尾部から構成されている。NSに関連するShp2(NS-Shp2)変異は、アミノ末端のSH2ドメインとPTPドメインの間の境界を占有するアミノ酸残基中でしばしば起こる。結果として生じる変異は、触媒作用を促進する、より「開放的な」立体配置に有利なように、SH2ドメインとPTPドメインの間に存在する自己抑制的な「閉鎖的な」高次構造を乱す。
【0123】
タンパク質ゼロ関連タンパク質(PZR)、すなわち、そのC末端に2つの免疫受容体チロシンベース抑制モチーフ(ITIM)を含む膜貫通型糖タンパク質は、c-Src基質として働き、かつNSマウスモデルの心臓において、主要な高チロシルリン酸化タンパク質およびShp2結合標的となる。NS-Shp2変異体は、c-Srcに対して高い親和性で相互作用して、PZR複合体形成を通してc-Srcを無差別に標的とする能力をこれらの変異体に与える。NSによるCHDのモデルとしてゼブラフィッシュを用いて、PZR-Shp2-Src複合体形成が、NSによるCHDにおける異常なシグナル伝達を促進することが提唱された。
【0124】
この仮説に決定的に重要であるのは、NS-Shp2変異体が、c-Srcとの相互作用の強まりを示して、c-Srcを介したシグナル伝達の増加をもたらす能力である。Shp2とc-Srcの相互作用の強まりという性質は、さもなければ「閉鎖的な」高次構造において露出していないShp2のPTPドメイン内の結合表面の露出が増大した結果として起こる可能性が高い。Shp2は、c-SrcのSH3ドメインを介してc-Srcとの複合体を形成することが示されているが、c-Srcが相互作用するShp2領域はまだ確定されていない。
【0125】
このことに取り組むために、一連のShp2欠失変異体を設計し(図13a)、HEK-293T細胞に同時トランスフェクトし、同時免疫沈降によって複合体形成を調べた(図23)。予想されたとおり、完全長Shp2は、c-Srcとの複合体中で検出されたのに対し、PTPドメインを欠くShp2の欠失変異体は、相互作用できなかった(図13b)。さらに、インビトロ結合アッセイ法によって、Shp2のPTPドメインとc-SrcのSH3ドメインが直接的に相互作用することが確かめられた(図13c)。
【0126】
この相互作用はShp2のPTPドメイン内で起こるため、NS-Shp2変異体の「開放的な」高次構造は、野生型Shp2と比べて、c-SrcのSH3ドメインとの安定性の高い相互作用を確立する準備が整っていると考えられている。したがって、NS-Shp2変異体は、PZRを介して膜においてc-Srcと複合体をより安定に形成し、このことが、c-Srcを介した異常なシグナル伝達の推定されるメカニズムであると以前に提唱されている。重要なことには、これらの観察結果によって、c-SrcまたはSrcファミリーキナーゼ(SFK)メンバーが、候補としてShp2によるNS発病と関係づけられる。
【0127】
SFKがNS発病に関与しているかどうかを試験するために、c-Srcの阻害によってShp2-NSシグナル伝達が改善するかどうかを試験する目的で、c-Srcを薬理学的に阻害した。c-Srcを阻害するために、ダサチニブ(スプリセル(著作権))、すなわち慢性骨髄性白血病の治療用に認可されている二重Abl-Srcキナーゼ阻害剤を使用した。NSマウスから単離したマウス胚線維芽細胞(MEF)をダサチニブで処置すると、c-Src、ERK1/2、およびPZRのチロシルリン酸化が妨害された(図13d〜13hおよび24)。
【0128】
ダサチニブによってPZRチロシルリン酸化を阻害した場合もまた、PZR/Shp2複合体形成が妨害された(図13d)。さらに、NS由来MEF中のRaf-1、MEK1、JNK、およびAktも、ダサチニブによって阻害された(図17)。
【0129】
BCR-Ablキナーゼ阻害剤であるSTI-571(グリベック(著作権))は、PZRチロシルリン酸化を減らす効果が無かったことから、PZRチロシルリン酸化の阻害およびPZR/Shp2複合体の妨害が、Ablではなくc-Srcに対するダサチニブの効果の結果である可能性が高いことが示唆された(図17)。さらに、Shp2阻害剤は、NS-Shp2を介したPZR高チロシルリン酸化を妨害しなかった(図17)ことから、NS-Shp2を介したc-Src PZRチロシルリン酸化が、Shp2のホスファターゼ活性とは無関係に起こることが示唆された。
【0130】
NSによるc-SrcおよびPZRのチロシルリン酸化に対するインビボでのダサチニブの影響を調査するために、Shp2のAsp61の位置がGly61になるノックイン変異(D61G)を含むマウスにダサチニブを注射した(Araki et al Nat Med 10, 849-857 (2004))。本明細書において「NSマウス」と呼ぶ、PtpN11D61G/+についてヘテロ接合性のマウスは、低身長、頭蓋顔面異常、骨髄増殖性疾患、およびCHDを含む、ヒト疾患の多くの特徴を再現する。
【0131】
ダサチニブは、マウスの腫瘍発生を予防するにあたって約20mg/kgの投与量で有効であることが示されている(Shah et al., Science 305, 399-401(2004))。ヒトでのダサチニブの治療的効果は、約2mg/kg、すなわち、マウスでの約24mg/kgと等価な用量であることが報告されている(Kantarjian et al., N Engl J Med 362, 2260-2270 (2010)、Yu et al., Clinical Cancer Research 15, 7421-7428 (2009)、Apperley J Clin Oncol 27, 3472-3479 (2009))。0.5mg/kgという少ないダサチニブ用量が、3週齢NSマウスの心臓においてc-Srcチロシルリン酸化とPZRチロシルリン酸化の両方を有意に阻害するのに十分であった(図13i〜13l)。特に、これらの用量のダサチニブ(0.1〜0.5mg/kg)では、3週齢NSマウスの心臓において、ERK1/2リン酸化(図13i〜13l)も、Raf-1も、MEK1も、p38MAPKも、JNKも、影響を受けなかった(図18)。これらの結果から、有効な化学療法用量(慢性骨髄性(myelogous)白血病成人患者の場合、約100〜140mg/日または約1.4〜2.0mg/kg/日)と比べて、最小で250分の1の用量のダサチニブが、NSマウスの心臓におけるPZRチロシルリン酸化を阻害できることが示される。
【0132】
さらに、NSマウスの心臓において、PZRチロシルリン酸化のダサチニブによる阻害は、ERK1/2リン酸化の阻害と連動していなかった(図13)。それゆえ、低用量のダサチニブは、ERK1/2経路とは無関係に、NS-Shp2シグナル伝達の邪魔をした。
【0133】
妊娠中の母マウスにダサチニブを投与し、NSマウスにおける心臓欠陥の改善を評価した。胎生期7日目に始めて、出生後9日目まで(授乳中の雌に)、NSマウスと交雑させた野生型妊娠マウスに0.1、0.5、または1.0mg/kgのダサチニブを毎日腹腔内(interperitoneally)投与した。出生後10日目(P10)以降、個々の仔マウスへの直接的な毎日のダサチニブ注射を再開し、生後8週目(P56)まで行った(図14a)。0.5mg/kg/日および1.0mg/kg/日のダサチニブ処置は胎生致死を示したが、0.1mg/kg/日のダサチニブ処置では、観察可能な有害作用はなかった(表1)。
【0134】
心エコーおよび観血的血行動態に基づいて、6週目および8週目にNSマウスの心機能を検査した。無処置のNSマウスの駆出率(EF)および短縮率(FS)は、ビヒクルで処置した野生型マウスと比べて、有意に35%減少した(P<0.01)。しかし、ダサチニブで処置したNSマウスは、P42時点で、ビヒクルで処置したNSマウスと比べて、心機能の完全な回復を示した(図14bおよび14c、ならびに表2)。しかし、ダサチニブをさらに2週間継続して投与すると、野生型マウスとダサチニブで処置したNSマウスの両方で、心不全が誘発された(図14d〜14eおよび表3)。これらのデータから、子宮内ダサチニブ処置が、NSマウスで観察される損なわれた心機能を救済できることが示唆される。したがって、c-Src活性は、Shp2-NS CHDの症状発現の一因となる。
【0135】
(表1)出生前にダサチニブで処置したPtpn11D61G/+×WT繁殖動物(breeder)からの子孫
【0136】
(表2)出生前にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点の心エコーパラメーター
データは、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;**、p<0.01は、ビヒクルで処置したWTマウスと比べた有意性を示す。††、p<0.01は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+マウスと比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。IVS、心室内中隔壁厚(Intraventricular septum wall thickness);LVID、左室内径(left ventricular internal dimension);LVPW、左室後壁厚(left ventricular posterior wall thickness);LV vol、左室容積(left ventricle volume);EF、駆出率(ejection fraction);FS、短縮率(fractional shortening);d、拡張期(diatole);s、収縮期(systole)。
【0137】
(表3)出生前にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の心エコーパラメーター
データは、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したWTマウスと比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。IVS、心室内中隔壁厚(Intraventricular septum wall thickness);LVID、左室内径(left ventricular internal dimension);LVPW、左室後壁厚(left ventricular posterior wall thickness);LV vol、左室容積(left ventricle volume);EF、駆出率(ejection fraction);FS、短縮率(fractional shortening);d、拡張期(diatole);s、収縮期(systole)。
【0138】
ダサチニブは、発生後にCHDに対するNS-Shp2の影響を小さくする際に有効であった。NSマウスをP10からP42までダサチニブ(0.1mg/kg/日)で処置した(図14f)。CHDを呈することに加えて、NSヒトおよびNSマウスは、発育遅延、顔異形、およびヒト疾患のものに似た脾腫を示す。NSマウスは、発育低下、顔異形、および脾腫を示すことが判明したが、ダサチニブ処置では、これらのNSに関係する病変のどれも改善しなかった(図19〜21)。さらに、肝損傷の証拠は、ダサチニブで処置した野生型マウスでもNSマウスでも、認められなかった(図22)。
【0139】
しかし、心臓パラメーターを検査した際、EFおよびFSといった指標に基づいて判定されるように、ダサチニブで処置したNSマウス(P42)は、完全に回復した心機能性を有していた(図14gおよび14hならびに表4〜5)。珍しいことに、もっと後の時点、すなわちダサチニブ処置を2週間中断した後にNSマウスの心機能を評価した際、ビヒクルで処置した野生型対照と比べて同レベルの心機能改善が観察された(図14iおよび14j)。その他の心臓パラメーターも、観血的血行動態に基づいて評価し、これらの結果から、ダサチニブで処置したNSマウスにおいて大動脈血圧および左室圧が有意に回復していることが示された(図14k〜14nおよび表6)。
【0140】
総合すれば、これらのデータから、CMLの治療薬として使用する場合の治療量以下である用量で、NSマウスに発生後に投与した場合、ダサチニブが、NSマウスの心不全を予防するための選択的有効性を提供することが実証される。興味深いことに、ダサチニブを除去してもNSマウスの心機能の回復は逆戻りしなかったことから、心機能の改善は一時的ではないと思われる。
【0141】
(表4)出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP42時点の心エコーパラメーター
データは、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;**、p<0.01は、ビヒクルで処置したWTマウスと比べた有意性を示す。†、p< 0.05は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+マウスと比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。IVS、心室内中隔壁厚(Intraventricular septum wall thickness);LVID、左室内径(left ventricular internal dimension);LVPW、左室後壁厚(left ventricular posterior wall thickness);LV vol、左室容積(left ventricle volume);EF、駆出率(ejection fraction);FS、短縮率(fractional shortening);d、拡張期(diatole);s、収縮期(systole)。
【0142】
(表5)出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の心エコーパラメーター
データは、平均値±SEMを表す。***、p<0.001は、ビヒクルで処置したWTマウスと比べた有意性を示す。†、p<0.05;†††、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+マウスと比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。IVS、心室内中隔壁厚(Intraventricular septum wall thickness);LVID、左室内径(left ventricular internal dimension);LVPW、左室後壁厚(left ventricular posterior wall thickness);LV vol、左室容積(left ventricle volume);EF、駆出率(ejection fraction);FS、短縮率(fractional shortening);d、拡張期(diatole);s、収縮期(systole)。
【0143】
(表6)出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の血行動態解析パラメーター
データは、平均値±SEMを表す。**、p<0.01;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したWTマウスと比べた有意性を示す。†、p<0.05;††、p<0.01は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+マウスと比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。
【0144】
ダサチニブで処置したNSマウスで示される心臓表現型の性質をさらに正確に深く理解するために、これらの心臓の肉眼形態学的および組織学的検査を行った。NSマウスは、野生型マウスと比べて心臓重量が小さい(図15a)。体重に対する心臓重量の比は、NSマウスにおいて有意に上昇していた(図15b)。組織学的解析によって、NSマウスが拡張型心筋症(DCM)を患っていることも明らかになった。これは、収縮期の有意に減少した左室中隔壁厚および増加した左室(left ventricular chamber)の直径によって示された(図15cおよび表4)。
【0145】
予想されたとおり、心臓組織の組織学的検査により、ビヒクルで処置したNSマウスの左室壁において、無秩序な筋原線維構造が明らかになった(図15d)。対照的に、ダサチニブで処置したNSマウスは、ビヒクルで処置した野生型マウスのものと本質的に同じレベルまでの、これら病理学的心臓表現型すべての大きな回復を示した(図15a〜15d)。
【0146】
機能不全に陥った心臓の別の顕著な特徴は、心臓の線維化が起こることである。ダサチニブ処置によって、NS心臓の心不全が予防されるという概念と一致して、ダサチニブで処置したNSマウス心臓における線維症は、ビヒクルで処置した野生型マウスと組織レベルで比べて著しく軽減しており、線維症遺伝子Col1a2およびCol3a1のmRNA発現レベルの低下と一致していた(図15d〜15f)。Col1a2遺伝子およびCol3a1遺伝子によってコードされるコラーゲンのような線維性成分の沈着は、心不全に関連している。したがって、Col1a2およびCol3a1の発現の低下は、低用量ダサチニブ処置によって心不全が治ることと矛盾しない。
【0147】
心臓の構造タンパク質、例えばαミオシン重鎖(MYH6)およびβミオシン重鎖(MYH7)の遺伝子の再発現は、心筋症の徴候である。特に、MYH6の不活性化およびMYH7の活性化は、心筋症の発症を後押しする(support)心臓リプログラミングの特徴を表している(Morita et al., J Clin Invest 115 (2005))。ビヒクルで処置したNSマウスにおけるMYH6発現は、野生型マウスと比べて有意に下方調節されていた。ダサチニブ処置の結果、野生型マウスおよびNSマウスで、同等レベルのMYH6発現が得られた(図15g)。MYH7は、ビヒクルで処置したNSマウスにおいて顕著に再発現されており、これは、ダサチニブ処置後、完全に正常化してビヒクル処置野生型レベルまで戻った(図15h)。
【0148】
心房性ナトリウム(naturietic)利尿ペプチド(Anp)および脳性ナトリウム利尿ペプチド(Bnp)を評価することによって、NSマウスの心不全を改善するダサチニブの効果をさらに強く裏付けた。Anp mRNA発現レベルとBnp mRNA発現レベルの両方とも、ビヒクルで処置した野生型対照と比べて、NSマウスにおいて有意に上方調節されていた(図15iおよび15j)。対照的に、ダサチニブで処置したNSマウスは、AnpとBnpの両方のmRNA発現レベルの上昇から完全に救出されていた(図15iおよび15j)。まとめると、これらの結果から、Srcファミリーキナーゼ活性が、NSに関連するCHDの発症において肝要な役割を果たしているという結論が裏付けられる。
【0149】
NS心機能に対するダサチニブの効果が心筋に固有であるかどうかを判定するために、ビヒクルおよびダサチニブで処置した野生型マウスおよびNSマウスから単離した心筋細胞において、カルシウム(Ca2+)を介した力の動態(force dynamics)を測定した。単離した心筋細胞を、電気的ペーシング下でのCa2+ハンドリングおよび収縮速度論について同時に特徴決定した。NS心筋細胞の相対的カルシウム放出率(RmagCa2+)は、野生型心筋細胞と比べて55%高く、この差は、ダサチニブで処置したNSマウスでは実質的に改善していた(図16aおよび16b)。
【0150】
ビヒクルで処置したNSマウスから得た心筋細胞は、収縮性の不足を示し、ピーク短縮は、ビヒクルで処置した野生型マウスより22%小さかった(図16aおよび16c)。この結果は、これらの同じ心筋細胞において、野生型と比べて著しく顕著なCa2+放出増加が観察されるという観点から、印象的であり、ビヒクルで処置したNS細胞では筋フィラメントCa2+の感受性が低下していることを示唆する。しかし、NS心筋細胞における筋節の短縮率は顕著に低くなっており、野生型心筋細胞の場合より22%低かった(図16a〜16cおよび表7)。重要なことには、これらの差は、ダサチニブで処置したNSマウスから単離した心筋細胞では完全になくなっていた(restored)(図16a〜16cおよび表7)。
【0151】
カルシウムハンドリングおよび収縮性の変化の分子メカニズムを、筋小胞体(sarco(endo)plasmic reticulum)Ca2+-ATPアーゼ2(SERCA2A)についてのイムノブロッティングによって調査した。心筋中で、SERCA2Aは、収縮機構へのカルシウム送達を担う主要アイソフォームである。心不全の顕著な特徴は、SERCA2A発現の低下であり、これにより、収縮性タンパク質へのCa2+送達に欠陥が生じ、したがって、収縮力が低下する。
【0152】
印象的なことには、ビヒクルで処置したNSマウスの心臓は、野生型と比べて、有意に低下したSERCA2Aタンパク質発現ならびに増大したTnIおよびTnT発現を示した(図16d〜16g)。ダサチニブで処置したNSマウスにおける心機能の回復と一致して、ダサチニブで処置したNSマウスから単離した心臓組織は、完全に正常化したSERCA2A発現レベルを示した(図16dおよび16e)。
【0153】
収縮性を維持するための代償メカニズムの結果として心不全時に起こる継続的リモデリングの結果、収縮性タンパク質であるトロポニンT(TnT)およびトロポニンI(TnI)が上方調節される。ビヒクルで処置したNSマウスでは、ビヒクルで処置した野生型マウスと比べて、TnTとTnIの両方が有意に増加していた(図16d、16f、および16g)。ダサチニブで処置したNSマウスは、TnTとTnIの両方の発現レベルが、ビヒクルで処置した野生型マウスと同等のレベルまで戻ったことから、機能不全に陥った心臓の表現型の完全な回復を示していた(図16d、16f、および16g)。まとめると、これらの知見から、ダサチニブによる発生後処置をNSマウスモデルに施すと、心筋の収縮機能障害が緩和されることがはっきりと実証される。
【0154】
(表7)出生後にビヒクルまたはダサチニブで処置したWTマウスおよびPtpn11D61G/+マウスのP56時点の心臓から単離した心筋細胞のCa2+興奮収縮連関パラメーター
データは、平均値±SEMを表す。*、p<0.05;***、p<0.001は、ビヒクルで処置したWT心筋細胞と比べた有意性を示す。†、p<0.05;†††、p<0.001は、ビヒクルで処置したPtpn11D61G/+心筋細胞と比べた有意性を示す。p値はすべて、二元配置ANOVA(チューキーの多重比較)を用いて導いた。TTP、ピークまでの時間(Time to peak);RT50、最大緊張(peak tension)から50%弛緩までの時間;RT90、最大緊張から90%緩和までの時間。
【0155】
膜貫通型糖タンパク質PZRが、NSマウス心臓中で最も異常に高チロシルリン酸化されたタンパク質であることが以前に明らかにされた(Eminaga et al., J Biol Chem 283, 15328-15338 (2008))。PZRは、Shp2結合タンパク質でありSFK基質である。PZR高チロシルリン酸化は、NSを介したSrcシグナル伝達の増強の直接的結果である。これらのデータから、NSに関係するCHDが伝播する(propogation)際にc-Srcが機能していることが示唆される。
【0156】
図25a〜25fに示すデータは、野生型(WT)マウスおよびNSML(Ptpn11Y279C/+)マウスでの出生後10日目(P10)から始まる6週間(P42)のダサチニブ処置に相当する。Ptpn11Y279C/+はKontaridis博士(Beth Israel Deaconess Hospital, Boston, MA)から入手し、説明されているようにして(Marin, et al, J Clin. Invest., 121:1026-1043(2011))繁殖させた。ビヒクルまたは用量0.1mg/kg/日のダサチニブのいずれかでマウスを6週間処置し、その後、ダサチニブ処置を中断し、2週間後にマウスを犠死させた。調査の完了時に、野生型マウスおよびPtpn11Y279C/+マウスを犠死させ、心臓から得た全RNAを単離し、心筋症の発症に関与している遺伝子Myh6およびMyh7、ならびに心臓の線維症の発症に関与している遺伝子col1a2およびCol3a1についてのmRNA発現を検出するために、qPCRを実施した。
【0157】
図に示したように、ビヒクルで処置したPtpn11Y279C/+マウスは、ANP、Myh6、およびMyh7の発現増大によって証明されるように、組織心筋症の徴候を6週齢までに既に示し始めた(図25dおよび25e)。さらに、ビヒクルで処置した野生型マウスと比べて、Ptpn11Y279C/+マウスでは心臓の線維化が付随的に増加した(図25aおよび25b)。しかし、ダサチニブで処置したPtpn11Y279C/+マウスは、ANP、Myh6、およびMyh7の発現の野生型レベルまでの完全な回復を示した。意義あることだが、ダサチニブで処置したPtpn11Y279C/+マウスでは、胎児/成体ミオシン収縮性遺伝子の切り換えを表すMyh6/Myh7比もまた、野生型レベルに回復していた(図25f)。まとめると、これらのデータから、多発性黒子を伴うヌーナン症候群(NSML)に関係する心筋症を分子レベルで治すにあたっての低用量ダサチニブ処置の有効性が実証される。
【0158】
これは、NSの発病にc-Srcシグナル伝達が関与していることについての最初の証拠である。他のグループは、Shp2がホスファターゼ依存的にSFKの上流に位置することを報告している(Zhang et al., Mol Cell 13, 341-355 (2004))。本明細書では、PTP-Shp2/Src-SH3結合の増大および局在化を実現してc-Srcシグナル伝達を促進するNS-Shp2変異体の「開放的な」高次構造を引き起こす独特なメカニズムを実証する。CML治療に必要とされる治療量以下の用量のダサチニブを発生後に投与することが、心臓の収縮性および機能を回復するのに十分であった。これらのデータは、c-SrcがNSによる発病の中心的媒体であることを強く示唆する。低用量のダサチニブでは、Src経路が選択的に影響を受けると思われ、ERK1/2シグナル伝達は、少なくとも心筋において、阻害されたが無視できる程度であった。しかし、ダサチニブ処置の影響を受ける心臓の特定の細胞のサブセット中にERK1/2が存在することが想像できる。
【0159】
重要なことには、ダサチニブで処置したNSマウスから単離した心筋細胞のカルシウムを介した収縮連関の解析により、これらの細胞が作用部位(この作用部位を介して、ダサチニブによるc-Src阻害が収縮機構に対する効果を発揮する)であることがはっきりと実証された。以前の観察結果と一致して、NS-Shp2変異体は、心筋中のCa2+シグナル伝達を増加させた(Uhlen,et al. PNAS 103, 2160-2165 (2006))。興味深いことに、NSマウス由来の心筋は収縮性の低下を示したことから、Ca2+を介した力収縮のレベルでの感受性の低下が示唆された。感受性の低下は、少なくともある程度、SERCA2A発現レベルの低下によって説明することができる。
【0160】
要約すれば、PTPN11の媒介によるCHDを治療するための新規かつ予期しない治療戦略が、本明細書において説明される。これらのデータから、Srcファミリーのキナーゼが、PTPN11に関係するCHDをもたらす標的クラスであると特定される。「低用量」のダサチニブまたは他のc-Src阻害剤の治療戦略は、心疾患を治療するための新しい道を切り開く可能性がある。
【0161】
他の態様
本明細書において、変動要素の任意の定義における要素の一覧表の記載は、任意の単一の要素または列挙された要素の組合せ(もしくは部分的組合せ)としてのその変動要素の定義を含む。本明細書における態様の記載は、任意の単一の態様としてのその態様、または他の任意の態様もしくはそれらの一部分と組み合わせられたその態様を含む。
【0162】
本明細書に引用される、それぞれおよびすべての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、ここに、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。特定の態様に関して本発明を開示したが、本発明の他の態様および変形態様が、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような態様および等価な変形態様すべてを含むと解釈されるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19
図20-1】
図20-2】
図21-1】
図21-2】
図22
図23
図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]