(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法では、孔部が形成された離型フィルムを第1型と第2型との間に搬送する。すなわち、離型フィルムには、第1型と第2型との間に搬送される前に、成形型の外で孔部が形成されている。この孔部を介して、第1型に設けられた吸引口から気体を吸引することにより、成形対象物を保持部に保持する。
【0013】
成形型の外で孔部を形成する方法及び装置には、以下の2つの態様のいずれか一方又は両方を使用することができる。第1の態様では、樹脂成形装置内であって成形型の外に孔部形成部を設けておき、この孔部形成部で離型フィルムに孔部を形成する。孔部形成部としては、離型フィルムに刃でスリット(細長い孔、切れ込み)を入れるものや、離型フィルムに針等を押し当てて穿孔するもの、離型フィルムにプラズマを照射することで微小な孔を形成するもの等を用いることができる。第2の態様では、(樹脂成形装置には孔部形成部を設けず)予め樹脂成形装置の外で孔部を形成した離型フィルムを用いる。樹脂成形装置の外で孔部を形成した離型フィルムとしては、第1の態様と同様の方法で孔部を形成する操作を樹脂成形装置の外で行った離型フィルムや、多孔質フィルムや不織布のように通気性を有する素材から成る離型フィルムが挙げられる。
【0014】
孔部は、気体が通過可能であればよく、形状及び大きさは特に限定されない。離型フィルムの材料の一部が除去された貫通孔、離型フィルムの切れ目、多孔質材の孔、不織布の繊維の隙間等を孔部として用いることができる。
【0015】
離型フィルムを第1型と第2型との間に搬送した際に、保持部の吸引口と離型フィルムに形成された孔部の位置を合わせる必要はない。これら吸引口と孔部の位置が合っていなくとも、孔部から、保持部と離型フィルムの隙間を介して吸引口に気体を吸引することができる。吸引口から吸引する気体は、通常は空気であるが、成形型の周囲に窒素やアルゴン等の不活性ガス、あるいはその他の空気以外の気体を導入した場合には、それらの気体を吸引してもよい。
【0016】
本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法によれば、成形型の位置で離型フィルムに穿孔するため、成形型の構造が複雑化したり、成形型を破損しないように精度が求められたりすることがなく、生産効率の向上を図ることができる。
【0017】
また、従来は離型フィルムを第1型と第2型との間に搬送した後に行っていた、離型フィルムに穿孔する工程が不要となるため、生産効率を高くすることができる。
【0018】
さらに、成形型内で離型フィルムに穿孔することが無いため、離型フィルムの滓が樹脂に混入することを防止することができ、樹脂成形品の品質を高くすることができる。
【0019】
近年、成形対象物よりも外側まで樹脂成形を行うオーバーモールドと呼ばれる手法が用いられている。オーバーモールドは、樹脂封止されるチップより外側にも配線や入出力端子を設けるFO-WLP(Funout-Wafer Level Package)やFO-PLP(Funout-Panel Level Package)等の樹脂成形品を生産する際等に用いられる。オーバーモールドを行うと意図的に成形対象物の外側までが成形範囲となる。本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法により、成形対象物の周囲の樹脂が成形型に付着することなく、高い生産効率及び高い品質で、オーバーモールドを用いた樹脂成形品を生産することができる。
【0020】
本発明に係る樹脂成形装置はさらに、前記離型フィルムに設けられた位置検出用マークの位置を検出する位置検出センサを備えることができる。また、本発明に係る樹脂成形品製造方法において、前記離型フィルムに設けられた位置検出用マークの位置を検出し、該位置検出用マークの位置に基づいて、前記搬送工程において、前記離型フィルムの前記孔部が形成された位置を、前記成形対象物を保持する位置に合わせる、という構成を取ることができる。これにより、成形型のうち成形対象物を保持する位置以外の部分に孔部が配置されることを抑え、成形型に樹脂が付着することをより生じ難くすることができる。
【0021】
本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法において、成形対象物と接触する離型フィルムの面に粘着剤が塗布されていてもよい。これにより、成形対象物と離型フィルムが粘着剤で接着され、成形対象物を保持部に保持することができる。
【0022】
以下、
図1〜
図11を用いて、本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法のより具体的な実施形態を説明する。
【0023】
(1) 本実施形態の樹脂成形装置の構成
図1に、本実施形態の樹脂成形装置10を示す。樹脂成形装置10は、圧縮成形を行う装置であって、基盤111と、基盤111上に立設された4本(
図1には2本のみ示す)のタイバー112と、上下に移動可能なようにタイバー112に保持された可動プラテン121と、タイバー112の上端に固定された固定プラテン122と、基盤111上に設けられた、可動プラテン121を上下動させるトグルリンク113とを備える。可動プラテン121の上面と固定プラテン122の下面の間には、上型(第1型)151と下型(第2型)152を有する成形型15が配置されている。上型151と固定プラテン122の下面との間には、上型151寄りにヒータ141が、固定プラテン122寄りに断熱材142が、それぞれ設けられている。下型152と可動プラテン121の上面との間にも同様に、下型152寄りにヒータ141が、可動プラテン121寄りにに断熱材142が、それぞれ設けられている。
【0024】
なお、タイバー112(棒材)の代わりに、基盤111上に対向して立設された1対の板状部材であるホールドフレーム(登録商標)を用いてもよい。
【0025】
上型151の下面には、成形対象物を保持する保持部16が設けられている。保持部16は、成形対象物Sと接触する平面である成形対象物接触面161と、成形対象物接触面161に設けられた吸引口162を有する。吸引口162は、気体吸引管163を介して、第1の吸引機構(図示せず)に接続されている。第1の吸引機構として、例えば真空ポンプを用いることができる。
【0026】
また、上型151には予備吸引系統165が設けられている。予備吸引系統165は、吸引口162及び気体吸引管163とは別に設けられ、成形対象物接触面161に設けられた開口から、前記第1の吸引機構とは別の第2の吸引機構(図示せず)により気体を吸引するものである。第2の吸引機構として、例えば真空エジェクタ、又は(第1の吸引機構とは別に設けた)真空ポンプを用いることができる。
【0027】
下型152は、平面形状(上面視)で長方形の枠から成る側面部材1521と、側面部材1521の枠内に装入された直方体の底面部材1522と、側面部材1521の下面に設けられた弾性部材1523を有する。これら側面部材1521及び底面部材1522で囲まれた空間が、樹脂材料が供給されるキャビティCとなる。なお、側面部材1521及び底面部材1522の平面形状は、製造する樹脂成形品の形状に応じて長方形以外の円形等の形状とすることができる。
【0028】
成形型15の外の、上型151を挟んだ2つの側方には、上型151と下型152との間に上型離型フィルムFU(上記離型フィルムに相当)を搬送する搬送部17が配置されている。搬送部17は、前記2つの側方の一方に配置された第1リール171と、他方に配置された第2リール172と、これらを回転させる回転機構(図示せず)を有する。搬送部17には、長尺の上型離型フィルムFUが取り付けられる。上型離型フィルムFUは、第1リール171に巻回し、第1リール171から引き出して保持部16の直下を通過させ、該上型離型フィルムFUの端部に接続された空芯を第2リール172に固定することにより、搬送部17に取り付ける。回転機構は、
図1に示した方向から見て、第1リール171に対して時計回りにトルクT1を付与すると共に、第2リール171に対して反時計回りにトルクT2を付与する。トルクT2はトルクT1よりも大きくする。これにより、上型離型フィルムFUは張力が付与された状態で、第2リール171に巻き取られてゆくと共に、使用されていない部分が孔部形成部18側から保持部16の直下に引き出されるようになっている。上型離型フィルムFUの送り量は、第2リール172の回転量、又は第2リール172を回転させる回転機構における回転量に基づいて制御することができる。
【0029】
第1リール171から上型離型フィルムFUが引き出される箇所の直上には、上型離型フィルムFUに孔部(スリット、細長い開口、切れ込み)を形成する孔部形成部(スリット形成装置)18が設けられている。孔部形成部18は、上型離型フィルムFUが引き出される方向に向けられた刃181が設けられると共に、この刃を上下させる刃移動機構182が設けられている。
【0030】
下型152の側方には、側面部材1521及び底面部材1522のキャビティC内面及び側面部材1521の上面の大きさに合わせて切断された離型フィルム(下型離型フィルム)を該下型152の上に搬送する下型離型フィルム搬送部(図示省略)が設けられている。下型152の側面部材1521と底面部材1522の隙間からは、第1の吸引機構によって気体を吸引することができ、この気体の吸引によって、側面部材1521の内側面及び底面部材1522の上面、すなわちキャビティCの内面が下型離型フィルムによって覆われるようになっている。なお、この下型離型フィルムは、本発明における孔部が形成された離型フィルムとは異なる。
【0031】
(2) 本実施形態の樹脂成形装置の動作及び本実施形態の樹脂成形品製造方法
図2〜
図7を用いて、樹脂成形装置10の動作及び本実施形態の樹脂成形品製造方法を説明する。
【0032】
まず、上型151と下型152を上下に離した型開きの状態で、搬送部17の第1リール171に時計回りのトルクT1を付与すると共に第2リール172に反時計回りのトルクT2(>T1)を付与することにより、上型離型フィルムFUに張力が付与された状態で第1リール171から上型離型フィルムFUを引き出し、孔部形成部18で上型離型フィルムFUに孔部Hを形成する。続いて、搬送部17は、孔部Hが形成された上型離型フィルムFUを上型151と下型152との間に搬送し、上型151の保持部16及びその周囲に張設する(
図2)。孔部形成部18では、上型離型フィルムFUのうち保持部16に張設されたときに該保持部16に配置される部分が刃181の直下を通過する間、刃移動機構182により刃181を降下させて上型離型フィルムFUに接触させ、その通過後に、刃移動機構182により刃181を上昇させる。これにより、上型離型フィルムFUが引き出される方向に延びるスリット状の孔部Hが形成される(
図3)。
図3では、孔部形成部18に刃181を3個設けることによって孔部Hを3個(3本)形成した例を示すが、孔部Hの個数はこれには限定されない。
【0033】
上型151に上型離型フィルムFUを張設するのと同時(なお、同時であることは必須ではない)に、下型離型フィルム搬送部により、側面部材1521及び底面部材1522のキャビティC内面及び側面部材1521の上面の大きさに合わせて切断された下型離型フィルムFDを下型152の上に搬送する。この状態で、側面部材1521と底面部材1522の隙間から気体(空気)を吸引することにより、
図2に示したように、キャビティCの内面が下型離型フィルムFDによって覆われる。
【0034】
次に、成形対象物Sを、成形型15の外側から成形対象物Sを保持部16の成形対象物接触面161に移動させ、上型離型フィルムFUを介して成形対象物接触面161に接触させる。ここで成形対象物Sは、本実施形態では複数個の電子部品が実装された実装面を下側に向けた基板とする。成形対象物Sの移動には、成形対象物Sを横方向及び上下に移動させる成形対象物搬送機構(図示せず)を用いる。この状態で、第1の吸引機構を用いて吸引口162から孔部Hを介して成形対象物Sと上型離型フィルムFUの間の気体(空気)を吸引することにより、上型離型フィルムFUを介して成形対象物Sを保持部16に保持させる(
図4)。それと共に、第2の吸引機構を用いて予備吸引系統165からも気体を吸引する。これにより、第1の吸引機構と第2の吸引機構のいずれか一方が故障等で停止しても、他方で気体の吸引が継続されるため、成形対象物Sが保持部16から落下することが防止される。なお、成形対象物Sが保持部16に保持される際には、上型離型フィルムFUは搬送部17により張設された状態となっている。
【0035】
また、樹脂材料搬送機構(図示せず)をキャビティCの直上に配置し、樹脂材料PをキャビティC内に供給する(
図4)。あるいは、成形対象物搬送機構と樹脂材料搬送機構を一体化したものを用いて、保持部16への成形対象物Sの保持とキャビティC内への下型離型フィルムFD及び樹脂材料Pの供給を同時に行ってもよい。
【0036】
上型151及び下型152は、ヒータ141により予め加熱しておく。キャビティC内に供給された樹脂材料Pは、下型152の熱により溶融又は軟化する。
【0037】
次に、トグルリンク113により可動プラテン121を上昇させる。これにより、まず、上型151と下型152が当接する。さらにトグルリンク113により可動プラテン121を上昇させることによって、下型152が上型151に強く押しつけられ、型締めされる(
図5)。この状態を保持している間に、樹脂材料Pが熱によって硬化し、樹脂成形品(樹脂封止品)PMが形成される。
【0038】
その後、トグルリンク113によって可動プラテン121を下降させることにより、成形型15を型開きする。これにより、樹脂成形品PMは、保持部16に保持されたままの状態で、下型152から離型される(
図6)。その際、キャビティCの内面が下型離型フィルムFDによって覆われていることにより、下型152からの樹脂成形品PMの離型をスムーズに行うことができる。
【0039】
続いて、吸引口162及び予備吸引系統165からの気体の吸引を停止し、樹脂成形品PMを保持部16から取り外す。ここで、オーバーモールドを行った場合のように、樹脂成形品PMの樹脂が成形対象物(基板)Sの外側まで成形したとしても、上型離型フィルムFUが保持部16及びその周囲に張設されているため、樹脂が上型151に付着することなく、樹脂成形品PMをスムーズに取り出すことができる。以上の操作により、1個の樹脂成形品PMの製造が完了する。
【0040】
本実施形態の樹脂成形装置10及び樹脂成形品製造方法によれば、上型離型フィルムFUを上型151と下型152の間に搬送する操作の中で、成形型15の外において上型離型フィルムFUに孔部Hを形成することにより、離型フィルムを張設した後に孔部Hを形成する工程が不要となるため、生産効率を高くすることができる。また、成形型15の外で孔部Hを形成することにより、上型離型フィルムFUの滓がキャビティCに落下して樹脂成形品PMに混入することを抑え、樹脂成形品PMの品質を高くすることができる。
【0041】
(3) 変形例
樹脂成形装置10では孔部形成部18としてスリット状の孔部Hを形成するものを用いたが、その代わりに、上型離型フィルムFUに円形の孔部H(
図8参照)を形成する孔部形成部を用いてもよい。この孔部形成部は、刃181の代わりに針を設け、刃移動機構182の代わりに針を上下させる針移動機構を設けたものとすることができる。上型離型フィルムFUのうち、保持部16に張設されたときに該保持部16に配置されることとなる部分が針の直下を通過する間、針移動機構により針の上下を繰り返すことことにより、複数の孔部Hを有する上型離型フィルムFUが作製される。孔部形成部に設ける針の本数、及び上型離型フィルムFUに形成する孔部Hの個数は特に限定されない。
【0042】
樹脂製のフィルムにプラズマを照射することによって該フィルムを多孔質膜に改質するプラズマ照射装置が知られている。例えば、フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン製のフィルムにプラズマ照射装置からアルゴンプラズマを照射することにより、孔径が0.5〜2μm程度の円形小孔を多数有するガス透過膜として使用することができる多孔質膜を作製することができる。本発明において、このようなプラズマ照射装置を孔部形成部として用いることができる。具体的には、上記実施形態の樹脂成形装置10において孔部形成部18の代わりにこのようなプラズマ照射装置(孔部形成部)18A(
図9)を配置する。そのうえで、保持部16及びその周囲に上型離型フィルムFUを張設する際に、上型離型フィルムFUのうち、保持部16に張設されたときに該保持部16に配置されることとなる部分がプラズマ照射装置18Aを通過する間、プラズマ照射装置18Aから上型離型フィルムFUにプラズマPLを照射することにより、該部分に多数の孔を形成することができる。
【0043】
あるいは、樹脂成形装置内には孔部形成部を設けることなく、樹脂成形装置の外でスリット状や円形状等の孔部を形成した離型フィルムを用いてもよい。あるいは、例えば不織布のように通気性を有する素材を含むフィルムを本発明で用いる離型フィルムとしてもよい。これらの場合、樹脂成形装置内のうち成形型15の外のみならず、成形型15内においても孔部形成部が無いという点で、従来の樹脂成形装置及び樹脂成形品製造方法と相違する。
【0044】
予め樹脂成形装置の外で孔部を形成した離型フィルムを用いる場合には、成形型で成形対象物Sを保持する領域以外には孔部が形成されていないことが望ましい。このように吸着領域以外に孔部が形成されていない離型フィルムFAを用いる場合には、離型フィルムFAのうち孔部が形成されている孔部形成領域HAとの間で所定の位置関係にある箇所に位置検出用マークMK(
図10(a))を設け、樹脂成形装置に該位置検出用マークMKを検出する位置検出センサ19を設けると良い(
図10(b))。このような構成によれば、位置検出センサ19で位置検出用マークMKを検出することにより、離型フィルムFAのうち孔部形成領域HAの位置を樹脂成形装置の制御部が認識して、成形型で成形対象物Sを保持する領域に孔部形成領域HAの位置を合わせるように離型フィルムFAを搬送することができる。
【0045】
位置検出用マークMKの形状は特に限定されない。また、位置検出用マークMKの位置も(孔部形成領域HAとの間で予め定められた位置関係にあれば)特に限定されず、孔部形成領域HA内にあってもよいし、孔部形成領域HAの外にあってもよい。位置検出センサ19の位置は、
図10(b)に示した例では離型フィルムFAが成形型15(同図では上型151のみを示す)に搬送される手前である、成形型15よりも第1リール171寄りに配置したが、成形型15よりも第2リール172に配置することも可能である。
【0046】
位置検出センサ19には、例えば、発光素子と該発光素子から発せられた光を受光する受光素子とを含む光学センサを用いることができる。このような光学センサとして、発光素子から発せられ離型フィルムで反射した光を受光素子で受光する反射型光学センサや、発光素子から発せられ離型フィルムを透過した光を受光素子で受光する透過型光学センサを用いることができる。
【0047】
なお、上記位置検出センサ19を用いることなく、搬送部17の動作に基づいて離型フィルムFAの位置を検出すると共に搬送部17が搬送する離型フィルムFAの長さを搬送制御部で制御するようにしてもよい。具体的には、離型フィルムFAを第1リール171及び第2リール172に取り付ける際に成形型15に対する位置合わせを行ったうえで、第2リール172の回転量又は回転機構の回転量に基づいて、搬送制御部を用いて離型フィルムFAの送り量の検出及び制御を行う。これにより、離型フィルムFAの孔部形成領域HAの位置を制御部が認識して、成形型で成形対象物Sを保持する領域に孔部形成領域HAの位置を合わせるように離型フィルムFAを搬送することができる。
【0048】
本実施形態の樹脂成形装置10及び樹脂成形品製造方法で使用する上型離型フィルムFUや離型フィルムFAの成形対象物Sと接触する面には、粘着剤が塗布されていてもよい。これにより、保持部16に上型離型フィルムFU(又は離型フィルムFA)を介して成形対象物Sを保持させた際に、上型離型フィルムFU(同上)と成形対象物Sが粘着剤で接着され、成形対象物Sを保持部16に保持させることができる。
【0049】
本実施形態の樹脂成形装置10及び樹脂成形品製造方法では、第1リール171に巻回された上型離型フィルムFUを該第1リール171から引き出して使用するが、その代わりに、成形型15の外で予め、上型151の保持部16及びその周囲に張設する範囲に合わせた大きさにフィルムを切断した後に気体通過部を形成した上型離型フィルムや、あるいは気体通過部を形成したフィルムや通気性のある材質から成るフィルムを前記大きさに切断した上型離型フィルムを用いてもよい。この場合、切断済みの上型離型フィルムを成形対象物の上に載置した状態で、成形対象物搬送機構によって成形対象物を保持部16に搬送し、吸引口162から気体を吸引することで上型離型フィルム及び成形対象物を成形対象物接触面161に吸着させることによって、上型離型フィルムを介して成形対象物を保持部16に保持させることができる。この場合、長方形以外の円形等の平面形状を有する上型離型フィルムを用いることができる。
【0050】
本実施形態の樹脂成形装置10では圧縮成形を行う成形型15を用いたが、移送成形を行う成形型においても、樹脂成形装置10と同様の保持部16を有する上型151、搬送部17、及び孔部形成部(プラズマ照射装置18Aを含む)18を用いることができる。
【0051】
図11に、本実施形態の樹脂成形装置を有する樹脂成形ユニット50を示す。樹脂成形ユニット50は、1台の成形対象物搬出入モジュール51、1台又は複数台の成形モジュール52、及び1台の樹脂材料供給モジュール53を有する。成形対象物搬出入モジュール51は、成形対象物Sを外部から搬入すると共に、樹脂成形品PMを外部に搬出する装置であって、成形対象物受入部511及び樹脂成形品保持部512を有する。成形モジュール52は、1台につき、前述の樹脂成形装置10を1組備える。
図11には成形モジュール52が3台示されているが、樹脂成形ユニット50には成形モジュール52を任意の台数設けることができる。また、樹脂成形ユニット50を組み上げて使用を開始した後であっても、成形モジュール52を増減することができる。樹脂材料供給モジュール53は、樹脂成形に用いる樹脂材料を、樹脂材料供給モジュール53から成形モジュール52に移送するための樹脂材料移送トレイ58に供給する樹脂材料供給装置531を有する。
【0052】
樹脂成形ユニット50には、成形対象物搬出入モジュール51、1又は複数台の成形モジュール52、及び樹脂材料供給モジュール53を貫くように、成形対象物S、樹脂材料移送トレイ58、及び樹脂成形品を搬送する主搬送装置56が設けられている。また、各モジュール内には、主搬送装置56と当該モジュール内の装置との間で成形対象物S、樹脂材料移送トレイ58、及び樹脂成形品PMを搬送する副搬送装置57が設けられている。
【0053】
搬送部17を用いて上型離型フィルムFUを上型151と下型152の間に搬送する場合には、各成形モジュール52内に設けられた上型離型フィルム張設装置17の第1リール171に長尺の上型離型フィルムFUをセットすると共に第2リール172に巻き取り用の空芯をセットし、使用済みの上型離型フィルムFUを第2リール172に巻き取る。一方、切断済みの上型離型フィルムを上型151と下型152の間に搬送する場合には、主搬送装置56及び副搬送装置57を用いて、成形対象物搬出入モジュール51から各成形モジュール52に上型離型フィルムを供給すると共に、使用済みの上型離型フィルムを樹脂材料供給モジュール53に移送する。
【0054】
その他、樹脂成形ユニット50は、上記各モジュールを動作させるための電源及び制御部(いずれも図示せず)を有する。
【0055】
以下、樹脂成形ユニット50の動作を説明する。成形対象物Sは操作者によって成形対象物搬出入モジュール51の成形対象物受入部511に保持される。また、上型離型フィルムFUは操作者によって上記のように上型離型フィルム張設装置17にセットされる。
【0056】
まず、成形モジュール52のうちの1台において、樹脂成形装置10の搬送部17により上型離型フィルムFUを上型151と下型152の間に搬送する。また、キャビティCの内面を下型離型フィルムFDで覆う。次に、主搬送装置56及び副搬送装置57により、成形対象物Sを成形対象物受入部511から、成形モジュール52のうちの1台にある樹脂成形装置10に搬送し、該樹脂成形装置10の保持部16の直下に配置する。そして、前述のように成形対象物Sを保持部16に保持させる。続いて、樹脂材料供給装置531から樹脂材料移送トレイ58に樹脂材料を供給し、主搬送装置56及び副搬送装置57により、成形対象物Sを保持部16に保持させた成形モジュール52に樹脂材料移送トレイ58を移動させ、該成形モジュール52の下型152のキャビティCに樹脂材料移送トレイ58から樹脂材料Pを供給する。
【0057】
その後、樹脂材料PがキャビティCに供給された成形モジュール52では、上型151と下型152を型締めして樹脂成形がなされる。この樹脂成形の間に、他の成形モジュール52に対して、離型フィルムの張設、成形対象物Sの取り付け、及びキャビティCへの樹脂材料の供給を行うことにより、該成形モジュール52で樹脂成形を行う準備を整える。
【0058】
1台の成形モジュール52の樹脂成形装置10内で樹脂材料Pが硬化した後、上型151と下型152を型開きし、樹脂成形品PMをキャビティCから離型する。さらに、樹脂成形品PMを保持部16から取り外し、主搬送装置56及び副搬送装置57により、樹脂成形品PMを成形対象物搬出入モジュール53の樹脂成形品保持部512に搬送する。操作者は適宜、樹脂成形品PMを樹脂成形品保持部512から取り出す。