特許第6854800号(P6854800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854800
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】型締装置及び射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20210329BHJP
   B29C 33/22 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B29C45/64
   B29C33/22
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-246996(P2018-246996)
(22)【出願日】2018年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-217753(P2019-217753A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-113406(P2018-113406)
(32)【優先日】2018年6月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 友則
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−109415(JP,A)
【文献】 特開昭63−104770(JP,A)
【文献】 特許第4976995(JP,B2)
【文献】 実開平01−156012(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1153439(KR,B1)
【文献】 実開平02−041919(JP,U)
【文献】 特開平03−193308(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1521826(KR,B1)
【文献】 特開昭62−057753(JP,A)
【文献】 特開2009−285841(JP,A)
【文献】 実開平04−033515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床又は機台に固定されるベッドと、
このベッドに固定される圧受盤と、
この圧受盤より下に配置され、ハーフナット位置調整手段で昇降される牽引盤と、
前記圧受盤より上に配置され、型開閉手段で昇降される可動盤と、
この可動盤から下げられ前記圧受盤及び前記牽引盤を貫通するタイバーと、を備えており、
前記圧受盤と前記可動盤との間に配置した金型を型締めする型締装置であって、
前記タイバーの下端部に係合部が設けられ、前記牽引盤の下に前記係合部に係合するハーフナットが設けられており、
前記タイバーは、最大型開時には、下端面が前記牽引盤に収納されることを特徴とする型締装置。
【請求項2】
請求項1記載の型締装置であって、
前記ベッドは、カバーで囲われており、
このカバー内に前記ハーフナットが収納され、このハーフナットの作動を監視するハーフナット作動監視機構が前記カバー内に設けられていることを特徴とする型締装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の型締装置であって、
前記可動盤の上に且つ鉛直に配置される射出装置とからなることを特徴とする射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締装置及びこの型締装置を含む射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品を射出成形する射出成形装置が、普及している。射出成形装置は、金型を締める型締装置と、金型へ樹脂材料を射出する射出装置とで構成される。
金型は、固定型と可動型で構成される。静止している固定型に対して、可動型が型締め軸に沿って移動され、金型が開閉される。
【0003】
型締め軸が水平である型締装置と、型締め軸が鉛直である型締装置とが、広く実用に供されている。
型締め軸が鉛直である型締装置は、各種の構造が提案されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1には、下型モールドプレートの上に上型モールドプレートが配置された型締装置が開示されている。そして、上型モールドプレートの上に上型エジェクタプレートが配置され、この上型エジェクタプレートから上型エジェクタピンが下げられている。
【0005】
上型エジェクタピンは、上型モールドプレートを貫通し、ゲート近傍まで延びており、ランナを突き落とす役割を果たす。以下、上型エジェクタピンと、この上型エジェクタピンを駆動する部材(上型モールドプレートやピン移動シリンダなど)とを、合わせて、上型エジェクタという。
【0006】
特許文献2には、基台で支持される基板と、この基板の上に配置された下部取付板と、この下部取付板の上に配置された上部取付板と、基板から上へ延ばされたタイバーとからなり、下部取付板と上部取付板とで金型を挟むようにした型締装置が開示されている。
タイバーの上部に鋸歯部が設けられ、この鋸歯部にハーフナットが噛み合う。ハーフナットは上部取付板の上に配置されている。このハーフナットは、上部取付板の上に配置されているハーフナット開閉シリンダで開閉される。
【0007】
特許文献2の型締装置は、ハーフナットを採用したため、装置高さを抑えることができるという利点を有する。
ところで、特許文献1で開示される上型エジェクタを、特許文献2の上部取付板に設けようとすると、上型エジェクタプレートがハーフナットやハーフナット開閉シリンダに干渉する。
結果、特許文献2の型締装置には、上型エジェクタを設けることができない。
【0008】
近年、金型に残っているランナを迅速に除去することが求められ、そのために、ハーフナットを採用した型締装置にあっても、上部取付板に、上型エジェクタを配置することができるような構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−224517号公報
【特許文献2】実公平7−17451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ハーフナットを採用した型締装置にあっても、上部取付板(可動盤)に、上型エジェクタ等を配置することができる構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、床又は機台に固定されるベッドと、このベッドに固定される圧受盤と、この圧受盤より下に配置され、ハーフナット位置調整手段で昇降される牽引盤と、前記圧受盤より上に配置され、型開閉手段で昇降される可動盤と、この可動盤から下げられ前記圧受盤及び前記牽引盤を貫通するタイバーと、を備えており、前記圧受盤と前記可動盤との間に配置した金型を型締めする型締装置であって、
前記タイバーの下端部に係合部が設けられ、前記牽引盤の下に前記係合部に係合するハーフナットが設けられており、前記タイバーは、最大型開時には、下端面が前記牽引盤に収納されることを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項1記載の型締装置であって、
前記ベッドは、カバーで囲われており、
このカバー内に前記ハーフナットが収納され、このハーフナットの作動を監視するハーフナット作動監視機構が前記カバー内に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の型締装置と、
前記可動盤の上に且つ鉛直に配置される射出装置とからなることを特徴とする射出成形装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、可動盤の下に圧受盤が配置され、この圧受盤の下に牽引盤が配置され、この牽引盤の下にハーフナットが配置される。可動盤の上が空いているため、可動盤に上型エジェクタ等を容易に配置することができる。
すなわち、請求項1によれば、ハーフナットを採用した型締装置にあっても、可動盤に、上型エジェクタ等を配置することができる構造が提供される。
【0016】
加えて、ハーフナットは1個50kg前後の重量物であるが、この重量物を最上位の可動盤ではなく、最下位の牽引盤の下に配置したため、重心を下げることができる。
また、可動盤は型開閉手段で昇降されるが、可動盤上にハーフナットが無いため、型開閉手段への負荷が軽減でき、型開閉手段を作動させるためのエネルギーの消費を軽減することができる。
【0017】
ところで、ハーフナットと係合部との間にグリース等による潤滑が施されるが、余剰のグリースや廃グリース(以下、廃グリースという。)が不可避的に落下する。
仮に、ハーフナットが可動盤(上部取付板)上にあると、廃グリースが可動盤下の金型に垂れ、製品(樹脂成形品)等が汚れる心配がある。
この点、本発明では、ハーフナットを最も下に配置したので、製品等が廃グリースで汚れる心配はない。
【0018】
また、仮に、ハーフナットが可動盤(上部取付板)上にあると、タイバーは可動盤を貫通して可動盤の上へ突き出る。突き出るため、型締装置は必然的に高くなる。
この点、本発明では、タイバーは、可動盤から下がっている。すなわち、タイバーは可動盤から上へ突き出ない。結果、型締装置を低くすることができる。
【0019】
加えて、請求項に係る発明では、最大型開時に、タイバーの下端面が牽引盤に収納される。最大型開時に、タイバーの下端面が牽引盤から下へ出ている場合に比較して、本発明によれば、タイバーを短くすることができる。タイバーが短ければ、型締装置の軽量化と低コスト化とが図れる。
【0020】
請求項に係る発明では、ベッドをカバーで囲ったため、型締装置の外観性を高めることができる。反面、ハーフナットを目視で点検することが難しくなった。
本発明では、ハーフナット作動監視機構でハーフナットの作動を監視するようにしたので、目視点検が不要となり、安定して型締装置の運転が維持される。
【0021】
請求項に係る発明では、請求項1又は請求項2記載の型締装置と、可動盤の上に且つ鉛直に配置される射出装置とから射出成形装置を構成する。
仮に、型締装置において、ハーフナットが可動盤(上部取付板)上にあると、ハーフナットに射出装置(特に加熱筒)が干渉するため、射出装置を可動盤の上に配置することが難しくなる。無理に配置すると、可動盤回りの構造が複雑になる。
この点、本発明によれば、可動盤の上が空いているため、可動盤の上に射出装置を容易に配置することができる。射出装置に加えて、可動盤にパージングカバーや上型エジェクタを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る射出成形装置の全体構成を示す図である。
図2図1の2−2線矢視図である。
図3】射出成形装置の作用を説明する図である。
図4】射出成形装置の一要素である射出装置の作用を説明する図である。
図5】射出成形装置の変更例を説明する図である。
図6】型開閉手段の変更例とハーフナット位置調整手段の変更例を説明する図である。
図7】射出成形装置の更なる変更例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、シリンダにおいて、「伸動」は、ピストンロッドを前進させてシリンダ全長が伸びることを意味し、「縮動」はピストンロッドを後退させてシリンダ全長が縮むことを意味する。
【実施例】
【0024】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締め軸が鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、この型締装置20の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0025】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤79と、型締シリンダ33を含む牽引盤79の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤79を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型締シリンダ33や型開閉手段27等へ圧油を供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0026】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型締手段25は型締シリンダ33が好ましく、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0027】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0028】
型締手段25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤79が下がる。
【0029】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤79に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0030】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0031】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0032】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0033】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0034】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0035】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0036】
射出装置50は、可動盤28に立てられた射出装置移動手段51と、この射出装置移動手段51で支持される射出台52と、この射出台52で支持されつつ下へ延びる加熱筒53と、射出台52に設けられピストンロッドが上へ延びる射出手段54と、この射出手段54で支持されるスクリュー駆動台55と、このスクリュー駆動台55で支持されるスクリュー回転機構56と、このスクリュー回転機構56から下へ延ばされ加熱筒53へ進入するスクリュー57とからなる。スクリュー回転機構56は、例えば油圧モータである。
【0037】
射出装置移動手段51は射出装置移動油圧シリンダ51Aが好ましく、射出手段54は射出シリンダ54Aが好ましい。
【0038】
更に好ましくは、可動盤28上に加熱筒53を囲うパージングカバー64を設ける。また、可動盤28に上型エジェクタ60を設ける。この上型エジェクタ60は、上型14まで延びるエジェクタピン61と、このエジェクタピン61を移動するピン移動手段62とからなり、上型14に残るランナを突き落とす役割を果たす。ピン移動手段62はピン移動油圧シリンダ62Aが好ましい。
【0039】
図2は、図1の2−2矢視図である。
図2に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心を構成する。
製品取り出し位置17にて、下型13から樹脂成形品を取り出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取り出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0040】
ただし、ターンテーブル23は、型締め位置18と製品取り出し位置17とを往復する往復台に代えることができる。この場合は、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
または、ターンテーブル23や往復台を省いてもよい。この場合も、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
【0041】
よって、型締装置20において、タイバー31の本数は自由に決めることができると共にターンテーブル23を設けるか否かや往復台を設けるか否かは任意である。
【0042】
図1の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
また、射出装置50において、射出装置移動手段51を伸動して、射出台52を上昇させる。射出台52が上昇することに伴って、加熱筒53が上型14から離れる。
【0043】
以上の結果を、図3に示す。
最大型開状態が示される図3に示すように、タイバー31の下端面31aが、牽引盤79内まで上昇した。結果、タイバー31を十分に短くすることができる。タイバー31が短ければ、タイバー31が軽くなると共に材料の節約が図れる。
すなわち、従来の技術では、常時、タイバー31の下端面31aが、牽引盤79の外に出るような構造が、好まれる。これに対して、図3であれば、タイバー31を大幅に短くすることができた。
【0044】
また、加熱筒53を上げて、溜まった樹脂材料を排出するパージジング作業を行うことがある。このパージング作業は捨てショット工程とも呼ばれる。捨てショット工程では、ノズル53aから樹脂材料が飛び出るが、パージングカバー64で飛散を防止する。作業者は、随時又は適宜、パージングカバー64を開放して、溜まっている樹脂材料を取り出す。
本発明によれば、ノズル53aを囲うパージングカバー64を、可動盤28上に容易に配置することができる。
【0045】
射出成形装置10においては、型締装置20の作動と、射出装置50の作動が並行して実施される。
先ず、型締装置20の作動を説明する。
図3にて、型開閉手段27を縮動して、可動盤28、上型14及びタイバー31を下げる。上型14が下型13に当たった時点でタイバー31等の下降は終了する。
【0046】
鋸歯部36とハーフナット26との位相にずれがある。この位相がゼロになるように、ハーフナット位置調整手段24で牽引盤79を僅かに上げ下げする。調整が終わったら、ハーフナット開閉手段37を伸動して、鋸歯部36にハーフナット26を噛み合わせる。
万一、噛み合わせが不良であれば、そのことがハーフナット作動監視機構38で検出される。噛み合わせ不良であれば、射出成形作業を中断して、対策を講じる。
【0047】
噛み合わせ不良が検出されなければ、図1にて、型締シリンダ33の圧油室35へ圧油を供給する。すると、牽引盤79が下がり、タイバー31が引き下げられ、可動盤28が下がる。以上により、金型12が型締めされる。
【0048】
次に、射出装置50の作動を、図3及び図4に基づいて説明する。
図3にて、スクリュー回転機構56により、スクリュー57は所定方向に所定速度で回転している。ホッパ65を介して、樹脂材料が加熱筒53へ供給される。樹脂材料はスクリュー57の溝を通って下降する。樹脂材料は混練されることで、可塑状態になる。
【0049】
樹脂材料は、加熱筒53内において、スクリュー57の下に溜まる。この溜まりからの反力により、スクリュー57は徐々に上昇する。スクリュー57の断面積にスクリューの移動量を乗じて得た値が計量値となる。この計量値が所定値に達したら、可塑化・計量工程が終了する。
【0050】
図4(a)は可塑化・計量工程が終わったときの形態を示す図であり、図4(a)にて、射出装置移動手段51を縮動する。
図4(b)に示すように、ノズル53aが上型14の所定位置に当たる。次に、射出手段54を縮動して、スクリュー57を前進(下降)させる。
図4(c)に示すように、前進するスクリュー57で樹脂材料を上型14へ射出する。
【0051】
次に、変更例を、図5に基づいて説明する。図1と共通する構成要素には、図1と同じ符号を付して、詳しい説明は省略する。
図5に示すように、射出装置50は、スクリュー57が水平になるようにして、テーブル21上に配置する。なお、射出装置50は、スクリュー57が水平になるようにして、可動盤28側に取付けてもよい。
何れにおいても、可動盤28の上に空きができる。可動盤28上に、上型エジェクタ60や、その他の付属機器を載せることができる。
【0052】
すなわち、本発明では、可動盤28の下に圧受盤22が配置され、この圧受盤22の下に牽引盤79が配置され、この牽引盤79の下にハーフナット26が配置される。可動盤28の上が空いているため、可動盤28に上型エジェクタ60等を容易に配置することができる。
結果、ハーフナット26を採用した型締装置20にあっても、可動盤28に、上型エジェクタ60等を配置することができる構造が提供される。
【0053】
加えて、ハーフナット26は1個50kg前後の重量物であるが、この重量物を最上位の可動盤28ではなく、最下位の牽引盤79の下に配置したため、重心を下げることができる。
【0054】
また、可動盤28は型開閉手段27で昇降されるが、可動盤28上にハーフナット26が無いため、型開閉手段27への負荷が軽減でき、型開閉手段27を作動させるための油圧を発生させるエネルギーや電気エネルギーの消費を軽減することができる。
【0055】
また、ハーフナット26と鋸歯部36との間にグリース等による潤滑が施されるが、廃グリースが不可避的に落下する。
仮に、ハーフナット26が可動盤28上にあると、廃グリースが可動盤28下の金型12に垂れ、製品(樹脂成形品)等が汚れる心配がある。
この点、本発明では、ハーフナット26が最も下に配置したので、製品等が廃グリースで汚れる心配はない。
【0056】
また、仮に、ハーフナット26が可動盤28上にあると、タイバー31は可動盤28を貫通して可動盤28の上へ突き出る。突き出るため、型締装置20は必然的に高くなる。
この点、本発明では、タイバー31は、可動盤28から下がっている。すなわち、タイバー31は可動盤28から上へ突き出ない。結果、型締装置20を低くすることができる。
【0057】
また、図3で説明したように、最大型開時に、タイバー31の下端面31aが牽引盤79に収納される。最大型開時に、タイバー31の下端面31aが牽引盤79から下へ出ている場合に比較して、本発明によれば、タイバー31を短くすることができる。タイバー31が短ければ、型締装置20の軽量化と低コスト化とが図れる。
【0058】
また、ベッド21をカバー42で囲ったため、型締装置20の外観性を高めることができる。反面、ハーフナット26を目視で点検することが難しくなった。
本発明では、ハーフナット26作動監視機構でハーフナット26の作動を監視するようにしたので、目視点検が不要となり、安定して型締装置20の運転が維持される。
【0059】
また、型締装置20と、可動盤28の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とから射出成形装置10を構成する。
仮に、型締装置20において、ハーフナット26が可動盤28上にあると、ハーフナット26に射出装置50(特に加熱筒53)が干渉するため、射出装置50を可動盤28の上に配置することが難しくなる。無理に配置すると、可動盤28回りの構造が複雑になる。
この点、本発明によれば、可動盤28の上が空いているため、可動盤28の上に射出装置50を容易に配置することができる。射出装置50に加えて、可動盤28にパージングカバー42や上型エジェクタ60等を配置することができる。
【0060】
次に、更なる変更例を、図6及び図7に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、型開閉手段27は、電動型開閉機構27Bであってもよい。この電動型開閉機構27Bは、例えば、ねじ軸71と、このねじ軸71に嵌るナット72と、軸受73を内蔵しねじ軸71を回転自在に支持するねじ軸支持部材74と、ねじ軸71の端部に取付けられた従動プーリ75と、この従動プーリ75に対応して配置される駆動プーリ76と、この駆動プーリ76と従動プーリ75に掛け渡すベルト77と、駆動プーリ76を回す電動モータ78とからなる。
【0061】
ねじ軸支持部材74を圧受盤22にボルトなどで固定し、ナット72をボルトなどで可動盤28に固定する。電動モータ78でねじ軸71を回すと、ナット72を介して可動盤28が上下に移動する。ねじ軸71は、ボールねじ軸が好適であり、ナット72は鋼球を内蔵するボールナットが好適である。鋼球のころがり作用により、摩擦損失が小さくなり、電動モータ78の小型化が可能となる。ただし、ねじ軸71は通常のねじ軸でも差し支えない。
【0062】
図6(b)に示すように、ハーフナット位置調整手段24は、電動ハーフナット位置調整機構24Bであってもよい。この電動ハーフナット位置調整機構24Bは、ねじ軸71と、このねじ軸71に嵌るナット72と、軸受73を内蔵しねじ軸71を回転自在に支持するねじ軸支持部材74と、ねじ軸71の中間部に取付けられた従動プーリ75と、この従動プーリ75に対応して配置される駆動プーリ76と、この駆動プーリ76と従動プーリ75に掛け渡すベルト77と、駆動プーリ76を回す電動モータ78とからなる。
【0063】
ねじ軸支持部材74を圧受盤22にボルトなどで固定し、ナット72をボルトなどで牽引盤79に固定する。電動モータ78でねじ軸71を回すと、ナット72を介して牽引盤79が上下に移動する。
【0064】
図7に基づいて、射出成形装置10の全体構成を説明する。なお、図1と共通する要素は、図1の符号を流用して、詳細な説明は省略する。
図7に示すように、射出成形装置10は、ハーフナット位置調整手段24としての電動ハーフナット位置調整機構24Bと、型締手段25としての電動トグル機構25Bと、型開閉手段27としての電動型開閉機構27Bと、ハーフナット開閉手段37としての電動ハーフナット開閉機構37Bと、射出装置移動手段51としての電動射出装置移動機構51Bと、射出手段54としての電動射出機構54Bと、ピン移動手段62としての電動ピン移動機構62Bとを備えている。
【0065】
電動トグル機構25B、電動ハーフナット開閉機構37B、電動射出装置移動機構51B、電動射出機構54B及び電動ピン移動機構62Bは、図6(a)又は図6(b)の構成からなり、電動モータ78を駆動源とする機構である。
【0066】
図1図7に示したように、ハーフナット位置調整手段24、型締手段25、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37、射出装置移動手段51、射出手段54、ピン移動手段62を、全て油圧シリンダ、又は全て電動機構にすることは任意である。
また、ハーフナット位置調整手段24、型締手段25、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37、射出装置移動手段51、射出手段54、ピン移動手段62の一部を油圧シリンダとし残部を電動機構にしてもよい。
また、スクリュー回転機構56は、油圧モータとしたが、電動モータや減速機付き電動モータであってもよい。
【0067】
実施例では、射出成形装置10は、ターンテーブルを有し型締め軸が鉛直である型締装置20と、鉛直に配置した射出装置50とで構成した。
しかし、射出成形装置10は、ターンテーブル無しで型締め軸が鉛直である型締装置20と、鉛直に配置した射出装置50とで構成してもよい。
【0068】
または、射出成形装置10は、ターンテーブルを有し型締め軸が鉛直である型締装置20と、水平に配置した射出装置50とで構成してもよい。
または、射出成形装置10は、ターンテーブル無しで型締め軸が鉛直である型締装置20と、水平に配置した射出装置50とで構成してもよい。
【0069】
尚、係合部36は、鋸歯部の他、タイバー31の外周に形成した粗面、段部、凹部であってもよく、鋸歯形状に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、型締め軸が鉛直である型締装置と、この型締装置の上に鉛直に配置される射出装置とで構成される射出成形装置に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…射出成形装置、16…床又は機台、20…型締装置、21…ベッド、22…圧受盤、23…ターンテーブル、24…ハーフナット位置調整手段、25…型締手段、26…ハーフナット、27…型開閉手段、28…可動盤、31…タイバー、31a…タイバーの下端面、36…係合部(鋸歯部)、38…ハーフナット作動監視機構、42…カバー、50…射出装置、79…牽引盤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7