【実施例】
【0024】
図1に示すように、射出成形装置10は、型締め軸が鉛直であって、下型13と上型14とからなる金型12を型締めする型締装置20と、この型締装置20の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とを、主要素とする装置である。
【0025】
型締装置20は、床(又は機台)16に固定されるベッド21と、このベッド21に固定される圧受盤22と、この圧受盤22に載せられるターンテーブル23と、圧受盤22より下に配置され圧受盤22に設けたハーフナット位置調整手段24で昇降される牽引盤79と、型締シリンダ33を含む牽引盤79の下に配置されるハーフナット26と、圧受盤22より上に配置され圧受盤22に設けた型開閉手段27で昇降される可動盤28と、この可動盤28から下げられ圧受盤22及び牽引盤79を貫通するタイバー31と、ハーフナット位置調整手段24や型締シリンダ33や型開閉手段27等へ圧油を供給するポンプモータユニット32を備えている。
【0026】
ハーフナット位置調整手段24は、ハーフナット位置調整油圧シリンダ24Aが好適である。同様に、型締手段25は型締シリンダ33が好ましく、型開閉手段27は、型開閉油圧シリンダ27Aが好ましい。
【0027】
なお、圧受盤22は、ボルト等を緩めることでベッド21から外すことができる。よって、本発明における「固定」は、完全固定の他、分離可能に結合されている形態を含む。
また、ハーフナット位置調整手段24や型開閉手段27を、ベッド21に設けることは差し支えない。
【0028】
型締手段25は、例えば、上に開口する型締シリンダ33を有する。この型締シリンダ33に圧受盤22から下へ延びるピストン部34を収納する。型締シリンダ33とピストン部34との間に圧油室35が形成される。圧油室35に圧油が供給されると、牽引盤79が下がる。
【0029】
タイバー31は、下端部に係合部36が設けられている。この係合部36は、例えば、鋸歯部である。以下、係合部36を鋸歯部36と読み替える。
ハーフナット26は係合部としての鋸歯部36に係合する(噛み合う)半割ナットである。ハーフナット26は、牽引盤79に設けたハーフナット開閉手段37で開閉される。ハーフナット開閉手段37はハーフナット開閉油圧シリンダ37Aが好ましい。
【0030】
鋸歯部36は、歯が竹の節(ふし)のように、等ピッチで並んでいるものが好ましい。歯は、矩形断面、台形断面、三角断面の何れでもよい。ハーフナット26には対応する歯が設けられている。
【0031】
タイバー31及びハーフナット26は、丈夫で硬い鋼で造られる。鋼同士の接触を円滑にするため、鋸歯部36とハーフナット26との間にグリース潤滑を施す。鋸歯部36より高い位置にて、タイバー31の外周面に給脂する。グリースは流れ落ちて、鋸歯部36に達する。給脂は、自動、手動の何れでもよい。
【0032】
好ましくは、ハーフナット26の作動を監視するハーフナット作動監視機構38を、ハーフナット26の近傍に設ける。しかし、型開閉手段27及びハーフナット位置調整手段24の位置制御が精密に行えることを条件に、ハーフナット作動監視機構38を省くことは差し支えない。
【0033】
ハーフナット作動監視機構38は、近接スイッチ、リミットスイッチなど任意のセンサが使用できる。そのうちで、近接スイッチは、相手金属が一定距離内に接近したときに「物体あり」、相手金属が一定距離を超えて離れているときに「物体なし」と判別する非接触型センサである。ハーフナット26は廃グリースで濡れているが、非接触型センサであれば、誤検出の心配がない。その上、安価である。よって、近接スイッチが推奨される。
【0034】
好ましくは、ハーフナット26の下に且つ床16上に、廃グリースを受けるトレイ41を配置する。トレイ41は皿状の容器である。定期的又は随時、トレイ41を引き出し、溜まった廃グリースを処理することにより、床16上の汚れを防止する。
【0035】
好ましくは、ベッド21をカバー42で囲う。このカバー42は安全カバーの役割を果たす。ベッド21をカバー42で囲うことにより、型締装置20の外観性が高まる。ただし、安全柵等で代替できるため、カバー42は必須ではない。
【0036】
射出装置50は、可動盤28に立てられた射出装置移動手段51と、この射出装置移動手段51で支持される射出台52と、この射出台52で支持されつつ下へ延びる加熱筒53と、射出台52に設けられピストンロッドが上へ延びる射出手段54と、この射出手段54で支持されるスクリュー駆動台55と、このスクリュー駆動台55で支持されるスクリュー回転機構56と、このスクリュー回転機構56から下へ延ばされ加熱筒53へ進入するスクリュー57とからなる。スクリュー回転機構56は、例えば油圧モータである。
【0037】
射出装置移動手段51は射出装置移動油圧シリンダ51Aが好ましく、射出手段54は射出シリンダ54Aが好ましい。
【0038】
更に好ましくは、可動盤28上に加熱筒53を囲うパージングカバー64を設ける。また、可動盤28に上型エジェクタ60を設ける。この上型エジェクタ60は、上型14まで延びるエジェクタピン61と、このエジェクタピン61を移動するピン移動手段62とからなり、上型14に残るランナを突き落とす役割を果たす。ピン移動手段62はピン移動油圧シリンダ62Aが好ましい。
【0039】
図2は、
図1の2−2矢視図である。
図2に示すように、タイバー31は、三角形の頂点に各々配置されている。うち、1本のタイバー31が、ターンテーブル23の回転中心を構成する。
製品取り出し位置17にて、下型13から樹脂成形品を取り出す。空になった下型13はターンテーブル23を180°回転させることにより、型締め位置18に移される。
製品取り出し作業と型締め作業とが並行して行えるため、ターンテーブル23を採用することにより、生産性を高めることができる。
【0040】
ただし、ターンテーブル23は、型締め位置18と製品取り出し位置17とを往復する往復台に代えることができる。この場合は、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
または、ターンテーブル23や往復台を省いてもよい。この場合も、タイバー31は、4本にすることが望ましい。
【0041】
よって、型締装置20において、タイバー31の本数は自由に決めることができると共にターンテーブル23を設けるか否かや往復台を設けるか否かは任意である。
【0042】
図1の型締装置20において、ハーフナット26を開いて、鋸歯部36から分離する。次に、型開閉手段27を伸動して、可動盤28を上昇させる。可動盤28が上昇することに伴って、下型13から上型14が分離すると共にタイバー31が上昇する。
また、射出装置50において、射出装置移動手段51を伸動して、射出台52を上昇させる。射出台52が上昇することに伴って、加熱筒53が上型14から離れる。
【0043】
以上の結果を、
図3に示す。
最大型開状態が示される
図3に示すように、タイバー31の下端面31aが、牽引盤79内まで上昇した。結果、タイバー31を十分に短くすることができる。タイバー31が短ければ、タイバー31が軽くなると共に材料の節約が図れる。
すなわち、従来の技術では、常時、タイバー31の下端面31aが、牽引盤79の外に出るような構造が、好まれる。これに対して、
図3であれば、タイバー31を大幅に短くすることができた。
【0044】
また、加熱筒53を上げて、溜まった樹脂材料を排出するパージジング作業を行うことがある。このパージング作業は捨てショット工程とも呼ばれる。捨てショット工程では、ノズル53aから樹脂材料が飛び出るが、パージングカバー64で飛散を防止する。作業者は、随時又は適宜、パージングカバー64を開放して、溜まっている樹脂材料を取り出す。
本発明によれば、ノズル53aを囲うパージングカバー64を、可動盤28上に容易に配置することができる。
【0045】
射出成形装置10においては、型締装置20の作動と、射出装置50の作動が並行して実施される。
先ず、型締装置20の作動を説明する。
図3にて、型開閉手段27を縮動して、可動盤28、上型14及びタイバー31を下げる。上型14が下型13に当たった時点でタイバー31等の下降は終了する。
【0046】
鋸歯部36とハーフナット26との位相にずれがある。この位相がゼロになるように、ハーフナット位置調整手段24で牽引盤79を僅かに上げ下げする。調整が終わったら、ハーフナット開閉手段37を伸動して、鋸歯部36にハーフナット26を噛み合わせる。
万一、噛み合わせが不良であれば、そのことがハーフナット作動監視機構38で検出される。噛み合わせ不良であれば、射出成形作業を中断して、対策を講じる。
【0047】
噛み合わせ不良が検出されなければ、
図1にて、型締シリンダ33の圧油室35へ圧油を供給する。すると、牽引盤79が下がり、タイバー31が引き下げられ、可動盤28が下がる。以上により、金型12が型締めされる。
【0048】
次に、射出装置50の作動を、
図3及び
図4に基づいて説明する。
図3にて、スクリュー回転機構56により、スクリュー57は所定方向に所定速度で回転している。ホッパ65を介して、樹脂材料が加熱筒53へ供給される。樹脂材料はスクリュー57の溝を通って下降する。樹脂材料は混練されることで、可塑状態になる。
【0049】
樹脂材料は、加熱筒53内において、スクリュー57の下に溜まる。この溜まりからの反力により、スクリュー57は徐々に上昇する。スクリュー57の断面積にスクリューの移動量を乗じて得た値が計量値となる。この計量値が所定値に達したら、可塑化・計量工程が終了する。
【0050】
図4(a)は可塑化・計量工程が終わったときの形態を示す図であり、
図4(a)にて、射出装置移動手段51を縮動する。
図4(b)に示すように、ノズル53aが上型14の所定位置に当たる。次に、射出手段54を縮動して、スクリュー57を前進(下降)させる。
図4(c)に示すように、前進するスクリュー57で樹脂材料を上型14へ射出する。
【0051】
次に、変更例を、
図5に基づいて説明する。
図1と共通する構成要素には、
図1と同じ符号を付して、詳しい説明は省略する。
図5に示すように、射出装置50は、スクリュー57が水平になるようにして、テーブル21上に配置する。なお、射出装置50は、スクリュー57が水平になるようにして、可動盤28側に取付けてもよい。
何れにおいても、可動盤28の上に空きができる。可動盤28上に、上型エジェクタ60や、その他の付属機器を載せることができる。
【0052】
すなわち、本発明では、可動盤28の下に圧受盤22が配置され、この圧受盤22の下に牽引盤79が配置され、この牽引盤79の下にハーフナット26が配置される。可動盤28の上が空いているため、可動盤28に上型エジェクタ60等を容易に配置することができる。
結果、ハーフナット26を採用した型締装置20にあっても、可動盤28に、上型エジェクタ60等を配置することができる構造が提供される。
【0053】
加えて、ハーフナット26は1個50kg前後の重量物であるが、この重量物を最上位の可動盤28ではなく、最下位の牽引盤79の下に配置したため、重心を下げることができる。
【0054】
また、可動盤28は型開閉手段27で昇降されるが、可動盤28上にハーフナット26が無いため、型開閉手段27への負荷が軽減でき、型開閉手段27を作動させるための油圧を発生させるエネルギーや電気エネルギーの消費を軽減することができる。
【0055】
また、ハーフナット26と鋸歯部36との間にグリース等による潤滑が施されるが、廃グリースが不可避的に落下する。
仮に、ハーフナット26が可動盤28上にあると、廃グリースが可動盤28下の金型12に垂れ、製品(樹脂成形品)等が汚れる心配がある。
この点、本発明では、ハーフナット26が最も下に配置したので、製品等が廃グリースで汚れる心配はない。
【0056】
また、仮に、ハーフナット26が可動盤28上にあると、タイバー31は可動盤28を貫通して可動盤28の上へ突き出る。突き出るため、型締装置20は必然的に高くなる。
この点、本発明では、タイバー31は、可動盤28から下がっている。すなわち、タイバー31は可動盤28から上へ突き出ない。結果、型締装置20を低くすることができる。
【0057】
また、
図3で説明したように、最大型開時に、タイバー31の下端面31aが牽引盤79に収納される。最大型開時に、タイバー31の下端面31aが牽引盤79から下へ出ている場合に比較して、本発明によれば、タイバー31を短くすることができる。タイバー31が短ければ、型締装置20の軽量化と低コスト化とが図れる。
【0058】
また、ベッド21をカバー42で囲ったため、型締装置20の外観性を高めることができる。反面、ハーフナット26を目視で点検することが難しくなった。
本発明では、ハーフナット26作動監視機構でハーフナット26の作動を監視するようにしたので、目視点検が不要となり、安定して型締装置20の運転が維持される。
【0059】
また、型締装置20と、可動盤28の上に且つ鉛直に配置される射出装置50とから射出成形装置10を構成する。
仮に、型締装置20において、ハーフナット26が可動盤28上にあると、ハーフナット26に射出装置50(特に加熱筒53)が干渉するため、射出装置50を可動盤28の上に配置することが難しくなる。無理に配置すると、可動盤28回りの構造が複雑になる。
この点、本発明によれば、可動盤28の上が空いているため、可動盤28の上に射出装置50を容易に配置することができる。射出装置50に加えて、可動盤28にパージングカバー42や上型エジェクタ60等を配置することができる。
【0060】
次に、更なる変更例を、
図6及び
図7に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、型開閉手段27は、電動型開閉機構27Bであってもよい。この電動型開閉機構27Bは、例えば、ねじ軸71と、このねじ軸71に嵌るナット72と、軸受73を内蔵しねじ軸71を回転自在に支持するねじ軸支持部材74と、ねじ軸71の端部に取付けられた従動プーリ75と、この従動プーリ75に対応して配置される駆動プーリ76と、この駆動プーリ76と従動プーリ75に掛け渡すベルト77と、駆動プーリ76を回す電動モータ78とからなる。
【0061】
ねじ軸支持部材74を圧受盤22にボルトなどで固定し、ナット72をボルトなどで可動盤28に固定する。電動モータ78でねじ軸71を回すと、ナット72を介して可動盤28が上下に移動する。ねじ軸71は、ボールねじ軸が好適であり、ナット72は鋼球を内蔵するボールナットが好適である。鋼球のころがり作用により、摩擦損失が小さくなり、電動モータ78の小型化が可能となる。ただし、ねじ軸71は通常のねじ軸でも差し支えない。
【0062】
図6(b)に示すように、ハーフナット位置調整手段24は、電動ハーフナット位置調整機構24Bであってもよい。この電動ハーフナット位置調整機構24Bは、ねじ軸71と、このねじ軸71に嵌るナット72と、軸受73を内蔵しねじ軸71を回転自在に支持するねじ軸支持部材74と、ねじ軸71の中間部に取付けられた従動プーリ75と、この従動プーリ75に対応して配置される駆動プーリ76と、この駆動プーリ76と従動プーリ75に掛け渡すベルト77と、駆動プーリ76を回す電動モータ78とからなる。
【0063】
ねじ軸支持部材74を圧受盤22にボルトなどで固定し、ナット72をボルトなどで牽引盤79に固定する。電動モータ78でねじ軸71を回すと、ナット72を介して牽引盤79が上下に移動する。
【0064】
図7に基づいて、射出成形装置10の全体構成を説明する。なお、
図1と共通する要素は、
図1の符号を流用して、詳細な説明は省略する。
図7に示すように、射出成形装置10は、ハーフナット位置調整手段24としての電動ハーフナット位置調整機構24Bと、型締手段25としての電動トグル機構25Bと、型開閉手段27としての電動型開閉機構27Bと、ハーフナット開閉手段37としての電動ハーフナット開閉機構37Bと、射出装置移動手段51としての電動射出装置移動機構51Bと、射出手段54としての電動射出機構54Bと、ピン移動手段62としての電動ピン移動機構62Bとを備えている。
【0065】
電動トグル機構25B、電動ハーフナット開閉機構37B、電動射出装置移動機構51B、電動射出機構54B及び電動ピン移動機構62Bは、
図6(a)又は
図6(b)の構成からなり、電動モータ78を駆動源とする機構である。
【0066】
図1と
図7に示したように、ハーフナット位置調整手段24、型締手段25、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37、射出装置移動手段51、射出手段54、ピン移動手段62を、全て油圧シリンダ、又は全て電動機構にすることは任意である。
また、ハーフナット位置調整手段24、型締手段25、型開閉手段27、ハーフナット開閉手段37、射出装置移動手段51、射出手段54、ピン移動手段62の一部を油圧シリンダとし残部を電動機構にしてもよい。
また、スクリュー回転機構56は、油圧モータとしたが、電動モータや減速機付き電動モータであってもよい。
【0067】
実施例では、射出成形装置10は、ターンテーブルを有し型締め軸が鉛直である型締装置20と、鉛直に配置した射出装置50とで構成した。
しかし、射出成形装置10は、ターンテーブル無しで型締め軸が鉛直である型締装置20と、鉛直に配置した射出装置50とで構成してもよい。
【0068】
または、射出成形装置10は、ターンテーブルを有し型締め軸が鉛直である型締装置20と、水平に配置した射出装置50とで構成してもよい。
または、射出成形装置10は、ターンテーブル無しで型締め軸が鉛直である型締装置20と、水平に配置した射出装置50とで構成してもよい。
【0069】
尚、係合部36は、鋸歯部の他、タイバー31の外周に形成した粗面、段部、凹部であってもよく、鋸歯形状に限定されるものではない。