【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の分割された組織接触要素が密集した組織接触表面を有する、生体吸収性の止血
多孔質フォームスポンジを提供する。
【0013】
本発明の止血用
多孔質フォームスポンジは従来の止血フォームスポンジと比べ、創傷への密着を著しく向上させ得る。更に、この密着性の向上は、高価な凝固因子又は反応性化学物質を組み込むことなく達成できる。又、本発明の止血用
多孔質フォームスポンジは一部が乾燥した創傷又は出血の少ない創傷に、容易に密着可能である。
【0014】
理論に縛られることを望むものではないが、止血用
多孔質フォームスポンジの創傷への密着性の向上は、多くの要因によると考えられている。以下、要因別に従来品と本発明を比較する。
【0015】
本発明では、組織接触表面を個別の多数の組織接触要素に分割することで、創傷に接触する止血用
多孔質フォームスポンジの表面積を増加し得る。
これに対し、従来の止血用フォームスポンジは、表面接触の不良により、組織に十分に密着出来ない。
【0016】
材料が多孔質であることは、限られた量の材料のみが実際に創傷の表面に接触し、これが密着不良を引き起こすことを意味し得る。
本発明では、組織接触表面の組織接触要素は止血用
多孔質フォームスポンジがより容易に創傷の形状に代替的に又は付加的に適合できるようにして、創傷との表面接触を増加させる。
一方、連続した表面を有する従来の止血用フォームスポンジでは、同じ方法で創傷に適合することは出来ない。
【0017】
更に、本発明では、互いに独立して移動可能な個々の組織接触要素の存在は、スポンジを移動させるために作用する力に対し、スポンジがより耐性を持つことを可能にする。例えば、一つの端部を持ち上げると、創傷の表面から組織接触要素の一部を隆起させつつ残りの部分を創傷に接触したままに出来る。これは、本発明による止血用
多孔質フォームスポンジの組織接触要素が止血用
多孔質フォームスポンジと創傷表面との摩擦を増加させることにより、止血用
多孔質フォームスポンジの横方向のずれに耐え得るからである。
一方、連続した表面を有する従来の止血用フォームスポンジは、この本発明が有する利点を提供出来ない。これは、従来の止血用フォームスポンジの一つの端部に付与される力(せん断力等)は、止血用フォームスポンジが繋がっているため、より効果的に伝達される。その結果、ずれが起こるからである。
【0018】
また、本発明において、組織接触要素間に発生する経路は、創傷滲出液がより迅速にスポンジに届くことを可能にして密着処理を加速するとともに、経路の寸法に応じて、止血用
多孔質フォームスポンジを通じた毛管効果を発揮する可能性がある。
【0019】
本発明は、生体吸収性の止血用
多孔質フォームスポンジとして、例えば手術中に内部創傷に使用可能なスポンジとして特に有利である。創傷の組織への止血用
多孔質フォームスポンジの密着性の増加は、その後止血用
多孔質フォームスポンジが任意の組織表面に貼付され、追加の密着手段を必要とせずに定位置に留まることが望まれる状況において、特に有利である。また、本発明による止血用
多孔質フォームスポンジは、手術後に患者の体内に残すことが出来る。また、貼られた場所で時間と共に生体吸収され、即ち解体されて体内に吸収されるため、機械的な除去処置を必要としない。
【0020】
生体吸収性の止血用
多孔質フォームスポンジは、肌の創傷及び潰瘍以外の創傷に使用されるのが好ましい。最も好ましくは、内部創傷に使用されるのに適している。
【0021】
なお、生体吸収性の材料とは、分解されて人体に再吸収され得、機械的な除去処置を必要としない材料である。
【0022】
好ましい実施形態では、止血用
多孔質フォームスポンジは非分割の基部を有し、基部から組織接触要素が延伸する。よって、組織接触要素は非分割の基部からの突起物と見なされ得る。例えば各組織接触要素は、非分割の基部に接続又は結合される第1の端部(即ち基端部)及び基部に接続又は結合されない第2の端部(即ち表面)を備え得る。よって、第2の端部は止血用
多孔質フォームスポンジの組織接触要素を構成する。
言い換えれば、基部は各組織接触要素が突出する共通の本体を提供し得る。基部は体液の効果的な吸収を可能にし得る。組織接触要素は又、創傷接触表面と呼んでもよい。
【0023】
本発明による止血用
多孔質フォームスポンジは任意の適した形状をとり得るが、最も普通には、長さと幅が実質的に厚みより大きい立方体状である。よって、通常止血用
多孔質フォームスポンジは全体的に正方形又は矩形であり、長さと幅が1cmから30cm以上である。より普通には、2cmから約10cm、厚みは2mmから約20mmである。さらにより普通には、約5mmから約15mmである。
【0024】
本発明の止血用
多孔質フォームスポンジは立方体のブロック材料の形状である。即ち、少なくとも使用されて流体を吸収する前までは非常に固い。
他の実施形態、特に止血用
多孔質フォームスポンジが比較的薄い場合では、止血用
多孔質フォームスポンジは柔らかいシート形状又はパッド形状である。
【0025】
止血用
多孔質フォームスポンジは、最も普通には正方形又は矩形の形状であるが、例えば、円形又は六角形のような他の形状も可能である。
止血用
多孔質フォームスポンジは特大のシートの形状で供給されても良いし、そこから適した大きさ及び形状の切片を切断し、特定の手順を要求する工程に適合させても良い。
【0026】
止血用
多孔質フォームスポンジの基部及び組織接触表面は、同じ止血用
多孔質フォームスポンジ材料から形成されるのが好ましい。よって、止血用
多孔質フォームスポンジは基部と組織接触要素が一体的に形成される単一の構成を備え得る。
ある実施形態では、組織接触要素が、既存の商業的に入手可能な止血用フォームスポンジと同じ止血用フォームスポンジの表面の修正、又はその様な止血用フォームスポンジを製造するために使用される方法への微調整により作成されるため、止血用
多孔質フォームスポンジは容易に製造され得るという利点がある。
【0027】
各組織接触要素は基部に対して実質的に垂直方向に突出し得る。例えば
図1は、各組織接触要素が基部に対して実質的に垂直方向に突出する実施形態を示す。
【0028】
組織接触要素は多くの場合止血用
多孔質フォームスポンジの一方の主要面のみに形成され、他方の面は分割されない(よって従来の止血用フォームスポンジと同様の表面を有する)。その様な場合、は止血用
多孔質フォームスポンジと組織の良好な密着が望まれる組織には止血用
多孔質フォームスポンジの分割面が付着され得るが、何らかの理由でより少ない密着が望ましい場合は非分割面が付着され得る。
【0029】
しかし、また別の実施形態においては、止血用
多孔質フォームスポンジの両方の主要面が組織接触要素に分割されても良い。その結果、両面が突起を備え、両面が組織への改良された密着性を示す。
そのような実施形態では、止血用
多孔質フォームスポンジが2つの組織表面の間に介在してその両方に密着する必要がある時、又は単にその様な実施形態である時、使用者がどちらの面を付着させるべきかを選択する必要が無い。そのため、付着面の選択を誤るという事例が減少するという意味で特に有用であり得る。
【0030】
止血用
多孔質フォームスポンジの一方の面のみが組織接触要素に分割される場合、その面、又はより普通には止血用
多孔質フォームスポンジの反対の面は、使用者が容易に面を区別できるような可視指示を伝えてもよい。例えば、メチレンブルーのような適切な生体吸収性の発色色素により、表面に画像又は英数字マークが印刷され得る。
【0031】
組織接触要素は多数の異なる形態をとり得る。例えば、組織接触要素は指状又は柱状であってもよいし、他の実施形態では畝又は波形の形状であってもよい。
【0032】
各組織接触要素は、他の組織接触要素から独立して、曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げが可能な特定の大きさ及び形状であるのが好ましい。
例えば、各組織接触要素は基部と実質的に垂直の(即ち90°)の方向から逸脱可能である。各組織接触要素は基部に対する長手軸の角度を変化し得る。各組織接触要素は、基部に平らに、又は基部に平行に(例えば基部に対して0°)置かれるように移動可能である。
各組織接触要素の個々の曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げは、各組織接触要素が指状又は柱状であれば容易になり得る。よって複数の組織接触要素が止血用
多孔質フォームスポンジ上でブラシ状の表面を形成し得る。
【0033】
図1は、本明細書で言及された特定の寸法を例示する本発明の実施形態の概略図である。これは、止血用
多孔質フォームスポンジの深さ(又は厚み又は高さ)、組織接触要素の深さ(又は高さ又は長さ)、止血用
多孔質フォームスポンジの幅及び止血用
多孔質フォームスポンジの長さを含む。
【0034】
ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも0.1mmの深さを有する。ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも0.5mmの深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも1mmの深さを有する。ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも2mmの深さを有する。
【0035】
ある実施形態では、各組織接触要素は10mm以下の深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は8mm以下の深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は5mm以下の深さを有する。
【0036】
ある実施形態では、各組織接触要素は0.1mmから10mm、0.5から10mm、1から10mm又は2から10mmの深さを有する。
ある実施形態では、各突起は1から10mmの深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は1から8mm又は1から5mmの深さを有する。
【0037】
しかし、各組織接触要素の深さは止血用
多孔質フォームスポンジの寸法に依存し得ることが理解される。例えば、スポンジの深さが浅ければ(即ちスポンジが薄ければ)、止血用
多孔質フォームスポンジの構造的一体性に影響する可能性があるため、長い組織接触要素は望ましくない。
ある状況下では、長い組織接触要素は創傷へのより大きな密着性を提供し得るが、止血用
多孔質フォームスポンジの深さと比較して長い組織接触要素は、止血用
多孔質フォームスポンジの止血の有効性を損なう可能性がある。
【0038】
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用
多孔質フォームスポンジの深さの80%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用
多孔質フォームスポンジの深さの60%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用
多孔質フォームスポンジの深さの50%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用
多孔質フォームスポンジの深さの35%以下である。
【0039】
様々な断面形状が組織接触要素に適し得る。例えば、各組織接触要素の断面形状は実質的に矩形又は三角形である。又は、組織接触要素は一様でない断面を有しても良い。
【0040】
各組織接触要素の第2の面(表面)は、一般的には全体に実質的に平ら又は平面的である。この形状は、止血用
多孔質フォームスポンジの表面を切断又は表面に切り込みを入れることにより突起が形成される場合は容易に得られ得る(以下を参照)。
【0041】
特に好ましい実施形態では、各組織接触要素は50mm
2以下、25mm
2以下、10mm
2以下又は5mm
2以下の断面積を有する。断面積は10mm
2未満が好ましい。
各組織接触要素の断面積は、0.05mm
2以上、0.1mm
2以上、0.5mm
2以上又は1mm
2以上であっても良い。
各組織接触要素の断面積は、0.05から25mm
2であってもよい。好ましくは、各組織接触要素の断面積は、0.25から5mm
2である。
【0042】
好ましい実施形態では、各組織接触要素の断面積は実質的に均一、即ち断面積は組織接触要素の深さにかかわらず一貫している。
しかし、ある実施形態では、突起は実質的に均一な断面を有しない可能性がある。断面積は一般に、組織接触要素の第2の面(即ち表面)の面積を指す。
【0043】
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、20mm以下、10mm以下又は6mm以下でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、0.2mm以上、0.5mm以上又は1mm以上でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は0.2から20mm又は0.5から10mmでも良い。
例えば、組織接触要素が均一な矩形の断面を有する場合、最大断面長さ寸法は対向する頂点間の長さ寸法となるであろう。
組織接触要素が実質的に均一な矩形の断面を有しない場合(例えば一端部が他端より幅広い場合)、最大断面寸法は、最大の長さ寸法を有する組織接触要素の深さに沿った部分(例えば突起の最も幅広な部分)となるであろう。
【0044】
より小さな組織接触要素(例えばより小さい断面積を有する組織接触要素)は、ある状況下では、より強い密着性をもたらし得るが、組織接触要素がどれくらい小さくなり得るかについては限界がある。
例えば、組織接触要素の大きさは止血用
多孔質フォームスポンジの細孔の大きさにより制限され得る。非常に小さい組織接触要素は、ある種の止血用
多孔質フォームスポンジ材料の生成が困難であり得る。
【0045】
他の組織接触要素から独立して、組織接触要素の曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げを行うことは、例えば断面積(最大断面積のような)又は最大断面長さ寸法が組織接触要素の深さと比較して大きい場合には妨げられるかもしれない。例えば、大きな最大断面積又は大きな断面長さ寸法を有する浅い組織接触要素は、他の組織接触要素から独立して曲げられないかもしれない。
結局、ほとんどの実施形態において、各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、組織接触要素の深さの10倍未満である。
より好ましい実施形態では、各組織接触要素の最大断面長さ寸法は組織接触要素の深さの5倍未満である。
更により好ましい実施形態では、各突起の深さは最大断面長さ寸法以上でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、組織接触要素の深さの少なくとも5倍未満、又は組織接触要素の深さの少なくとも10倍未満でも良い。
【0046】
好ましくは、各組織接触要素の基端部(即ち第1の端部)での断面長さ寸法は、実質的に表面(即ち第2の面)での断面長さ寸法以下である。
例えば、突起は実質的にドーム型、円錐形、ピラミッド形又は枕型ではないことが好ましい。その様な形状は突起が他の突起から独立して曲げられることを困難にし得る。
一般的に、各突起の基部での断面長さ寸法は、表面での断面長さ寸法の2倍以下であることが好ましい。
【0047】
組織接触要素の数及び/又は大きさは、止血用
多孔質フォームスポンジの密着能力を調節するために変化し得る。例えば、組織接触表面を多数の組織接触要素に分割して各々が小さな断面積(
図1、
図2及び
図3の実施形態に示すような)を有するようにすることは結果として非常に強い密着性をもたらす。
なお、原則として、密着性が向上するのは好ましい。しかし、異なる手術状況においては異なる密着能力も求められ得る。
ある場面では、より密着能力が弱い止血用
多孔質フォームスポンジの使用が望ましいかもしれない。これは、限られた時間の後に止血用
多孔質フォームスポンジを創傷から除去することが望まれる場合に当てはまり得る。密着性が強すぎると、止血用
多孔質フォームスポンジの除去が困難になり、組織への損傷を引き起こし得る。
より大きな断面積を有する、より少数の組織接触要素に組織接触表面を分割することは、従来の止血用
多孔質フォームスポンジと比較して僅かながら密着性の向上をもたらすかもしれないが、それでもなお容易に除去され得る。
当業者は、加工されていない表面を有する連続した止血用
多孔質フォームスポンジと比較することにより、望ましいレベルの密着性をもたらす組織接触要素の詳細、大きさ、形状及び配置を選択できる。
組織接触要素の様々な大きさ、形状及び配置を試験するのに適した方法を実施例に記載する。例えば実施例4は、組織接触要素の置換を容易に試験するのに使用され得る生体外の方法を記載し、密着性の最適化を可能にする。
【0048】
ある実施形態において、組織接触要素はアレイを形成する。例えば、組織接触要素は個別の列及び/又は行等の順序付けられた配列であり得る。組織接触要素表面に含まれる各組織接触要素は実質的に同一の断面形状を有しても良く、及び/又は各組織接触要素は実質的に同一の断面積を有しても良い。
【0049】
本発明の組織接触要素は共に密集している。ここでの「密集する」とは、各組織接触要素が他の組織接触要素から少なくとも5mm以内にあるように組織接触要素が配列されることを意味するものとする。
好ましくは、各組織接触要素が他の組織接触要素から1mm以内であり、より好ましくは他の組織接触要素から0.5mm以内である。
【0050】
組織接触要素は、既存の生体吸収性の止血用
多孔質フォームスポンジを切断することにより形成されることが好ましい。
各組織接触要素間の空間は、一般に切断手段の幅により決定される。切断手段の幅は、好ましくは0.05mmから0.5mmである。
【0051】
組織接触表面は、組織接触表面100mm
2につき少なくとも4個の、好ましくは組織接触表面100mm
2につき少なくとも10個の、最も好ましくは組織接触表面100mm
2につき少なくとも25個の組織接触要素が存在するように分割され得る。
【0052】
止血用
多孔質フォームスポンジは、意図する用途に応じて、様々な寸法を有し得る。通常、止血用
多孔質フォームスポンジの長さは約150mm以下である。通常、止血用
多孔質フォームスポンジの幅は約50mm以下である。止血用
多孔質フォームスポンジは10mm以上の長さ、及び/又は10mm以上の幅を有し得る。例えば、長さは10から150mmであっても良い。幅は10から50mmであっても良い。通常、止血用
多孔質フォームスポンジの深さ(又は厚み)は約10mm以下である。止血用
多孔質フォームスポンジの深さは0.2から10mmであっても良い。
【0053】
止血用
多孔質フォームスポンジは発泡体である。止血用
多孔質フォームスポンジは連続気泡の発泡体であ
り、血液や創傷浸出液等の体液を吸収及び/又は吸着するのに適した
多孔質母材
である。止血用
多孔質フォームスポンジに適した材料は業界に知られており、ゼラチン、コラーゲン、澱粉及びヒアルロン酸を含む。本発明における使用に適した商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ材料は例えば、サージフォーム(エシコン)、ジェルフォーム(ファイザー)、ウルトラフォーム(バード−デイボール)、ジェリタスポン(ジェリタ)を含む。本発明の止血用
多孔質フォームスポンジは織り繊維又は不織繊維(例えばフェルト状の止血剤)を使用する繊維質の又は織物に基づく止血剤と区別される。止血用
多孔質フォームスポンジはゼラチン又はコラーゲンスポンジであ
る。
【0054】
止血用
多孔質フォームスポンジは通常、止血用
多孔質フォームスポンジ形成材料(例えばゼラチン)を備える溶液を発泡させ、発泡体を乾燥させることにより製造される。乾燥は焼成又は凍結乾燥により達成され得る。例えばゼラチンは、血液内にあまりにも容易に溶解されるのを防ぐために(ゼラチンは30℃以上の温度で溶解できるため)架橋されても良い。架橋はホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド及びカルボジイミド等の化学的架橋剤、又はスポンジを乾式加熱で処理する(例えば100から160℃で数時間)ことにより達成され得る。
【0055】
適した細孔の大きさは、例えば止血用
多孔質フォームスポンジが接触される組織の種類や止血用
多孔質フォームスポンジが吸収しようとする体液の種類等の、止血用
多孔質フォームスポンジの意図された役割に応じて選択され得る。通常、止血用
多孔質フォームスポンジは直径が3mm以下の細孔を有する。例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも65%の細孔は、1から1500μm、5から1000μm、又はより好ましくは5から750μmの直径を有し得る。
【0056】
好ましくは、止血用
多孔質フォームスポンジは殺菌されている。止血用
多孔質フォームスポンジは加熱により殺菌されても良い。使用前、無菌状態を維持するため、止血用
多孔質フォームスポンジは気密包装等の包装で保存される。
【0057】
止血用
多孔質フォームスポンジは、他の従来の止血用フォームスポンジの表面に一連の切り込みを作成することにより製作されるのが好ましい。例えば、刃(例えば幅が0.1mmから0.3mm)がスポンジの表面を切断又は切れ目を入れるのに使用され、止血用
多孔質フォームスポンジの表面を複数の密集した組織接触要素に分割する。
【0058】
よって、止血用
多孔質フォームスポンジの表面に入れられた切り込みの他に、止血用
多孔質フォームスポンジは本質的に従来の止血用フォームスポンジと同じであり、修正されたスポンジの創傷表面への驚くほど向上した密着性を除いて同様の物理的特性を有すると期待されるであろう。例えば、液体と接触すると、従来のゼラチン製の止血用多孔質フォームスポンジは、液体を吸収して元の体積に実質的に完全に回復する少し前に体積を減らす。本発明により修正されたゼラチン製の止血用
多孔質フォームスポンジは同様に機能することが発見された。
【0059】
ある実施形態では、周期的に平行及び真っ直ぐな切り目が止血用
多孔質フォームスポンジの表面の幅と止血用
多孔質フォームスポンジの表面の長さの両方に沿って形成され得る。これは止血用
多孔質フォームスポンジの表面の組織接触要素のアレイを生成し得、組織接触要素のそれぞれは実質的に同じ断面形状と断面積を有する。切断位置を変更すると、組織接触要素の数、断面積及び形状が変化され得る。
【0060】
又、止血用
多孔質フォームスポンジの表面は、全ての切り込みが同時に形成されるように、既製の切断又はエンボス加工工具(
図18に示す工具等)を使用することにより組織接触要素に分割され得ることが考えられる。採用され得る他の切断技術は刃又はレーザーの回転を含む。
【0061】
結果として、本発明によると、複数の分割された組織接触要素が密集した組織密集表面を備える止血用
多孔質フォームスポンジを形成するために生体吸収性の止血用
多孔質フォームスポンジの表面を切断、切り込みを入れる又はエンボス加工するステップを備える方法が提供される。
【0062】
又、組織接触表面は、止血用
多孔質フォームスポンジの製作中に成形プロセスにより密集した組織接触要素に分解され得る。
【0063】
本発明によると、出血の制御又は血液凝固を促進することに使用される本発明による止血用
多孔質フォームスポンジが提供される
。
【0064】
ある実施形態において、止血用
多孔質フォームスポンジの創傷部位への密着を助ける化学物質が止血用
多孔質フォームスポンジに添加又は固定され得る。化学物質は止血剤でも良い。例えば、その様な化学物質は止血用
多孔質フォームスポンジの組織接触表面に固定され得る。その様な化学物質は、非共有結合の固定化により(例えば乾燥により)又は化学物質を止血用
多孔質フォームスポンジに共有結合で固定することにより止血用
多孔質フォームスポンジに密着され得る。
【0065】
ある実施形態では、止血剤は凝固剤、又はトロンビン及び/又はフィブリノゲンのような凝固因子を備え得る。又は止血剤は、接触して組織との化学結合を形成可能にする反応基を備え得る。例えば、ヘモパッチ(バクスター)は組織への付着を可能にするNHS−PEG基を組み込む。
【0066】
ある実施形態では、止血剤は、各キャリアに固定された複数のフィブリノゲン結合ペプチドを有するキャリアを備える。その様な止血剤の例は、国際公開第2005/035002号、国際公開第2007/015107号、国際公開第2008/065388号、国際公開第2012/104638号、国際公開第2013/114132号、国際公開第2015/104544号に記載され、それぞれの内容は参照用に本明細書に援用される。国際公開第2012/104638号は、その様な止血剤がゼラチンに固定され得ることを記載する。
【0067】
一実施形態において、フィブリノゲン結合ペプチドは配列G(P,H)RXを備え、P、Hはその位置にプロリンかヒスチジンのどちらかが存在することを意味し、Xは任意のアミノ酸を指す。キャリアは溶解性でも不溶性でもよいが、溶解性が好ましい。
配列は例えばNH
2−G(P,H)RX−のようなフィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端に存在し得る。フィブリノゲン結合ペプチドは長さにおいて4から50アミノ酸、好ましくは長さにおいて4から10アミノ酸であり得る。フィブリノゲン結合ペプチドはスペーサによりキャリアから隔離されても良く、スペーサはペプチドスペーサでも、ポリエチレングリコールのような非ペプチドスペーサでも良い。
好ましくは、止血剤はフィブリノゲンに接触すると生物ゲルを形成する。
各フィブリノゲン分子はフィブリノゲン結合ペプチドの少なくとも2つと結合し得、その結果、フィブリノゲン分子とフィブリノゲン結合ペプチドの間の非共有結合により、フィブリノゲン分子がキャリアを介して結合される生物ゲルを形成する。キャリアはアルブミンキャリアでも良い。
【0068】
ある実施形態では、止血剤はペプチドデンドリマー等の共役ペプチドでも良い。デンドリマーは分岐したコアと、分岐したコアに別個に共有結合で取り付けられた複数のフィブリノゲン結合ペプチドを備え得る。分岐したコアは一つ又は複数の多機能のアミノ酸(例えば3個又は4個の機能のアミノ酸)を備え得る。各多機能アミノ酸、又は複数の多機能アミノ酸は、それらに共有結合で取り付けられた一つ又は複数のフィブリノゲン結合ペプチドを有し得る。
【0069】
適した共役及びデンドリマーの例は、国際公開第2015/104544号に記載される。例えば、ペプチドデンドリマーは以下の一般的な化学式1を備え得る。
【0070】
【化1】
【0071】
但し、FBPはフィブリノゲン結合ペプチドであり、
−(リンカー)−は任意のリンカー、好ましくは非ペプチドリンカーであり、
Xは、3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、オルニチン又はアルギニンであり、
Yは、−FBP又は−NH
2であり、
Zは、Yが−FBPの時の
−(リンカー)−FBP、
又はYが−NH
2の時の
−[−X
n−(リンカー)−FBP]
a−(リンカー)−FBP
である。
但し、X
nは3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、L−オルニチン又はアルギニンであり、aは1から10、好ましくは1から3である。
【0072】
例えば、YがNH
2であり、Zが
−[X
n−(リンカー)−FBP]
a−(リンカー)−FBP
である時、デンドリマーの構造は以下の通りである。
aが1の場合、化学式2の通りである。
aが2の場合、化学式3の通りである。
aが3の場合、化学式4の通りである。
【0073】
【化2】
【0074】
【化3】
【0075】
【化4】
【0076】
又は、Yが−FBPの時、Zは、
−[−X
n−(リンカー)−FBP]
a−(リンカー)−FBP
である。
但し、X
nは3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、L−オルニチン又はアルギニンであり、
aは1から10、好ましくは1から3である。
【0077】
例えば、Yが−FBP、Zが
−[−X
n−(リンカー)−FBP]
a−(リンカー)−FBP、
aが1の時、デンドリマーの構造は以下の化学式5の通りである。
【0078】
【化5】