特許第6854825号(P6854825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854825
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】止血用多孔質フォームスポンジ
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20210329BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20210329BHJP
   A61L 15/16 20060101ALI20210329BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20210329BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20210329BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61L31/04 120
   A61L31/14 400
   A61L15/16 100
   A61L15/28 100
   A61L15/32 100
   A61L15/42 310
【請求項の数】24
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-538959(P2018-538959)
(86)(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公表番号】特表2018-534101(P2018-534101A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】GB2016053176
(87)【国際公開番号】WO2017064495
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】1518182.9
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518129352
【氏名又は名称】セレンタス サイエンス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SELENTUS SCIENCE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】ニコルス ジョン ベンジャミン
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0084323(US,A1)
【文献】 特表2014−519897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/00−31/18
A61L 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割された組織接触要素が密集した組織接触表面を有し、コラーゲン、澱粉、ゼラチン又はヒアルロン酸から製造される、創傷に密着させるための生体吸収性の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項2】
前記組織接触要素は指状又は柱状である、請求項1に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項3】
各前記組織接触要素は少なくとも2mmの深さを有する、請求項1から2の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項4】
各組織接触要素は10mm以下の深さを有する、請求項1から3の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項5】
各前記組織接触要素は1から8mmの深さを有する、請求項1から4の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項6】
各前記組織接触要素の深さは、前記深さと同一方向の長さの80%以下である、請求項1から5の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項7】
各前記組織接触要素の断面形状は矩形である、請求項1から6の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項8】
各前記組織接触要素は25mm2以下の断面積を有する、請求項1から7の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項9】
各前記組織接触要素は5mm2以下の断面積を有する、請求項1から8の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項10】
各前記組織接触要素は0.25から5mm2の断面積を有する、請求項1から9の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項11】
各前記組織接触要素の断面積は均一である、請求項1から10の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項12】
各前記組織接触要素の最大断面長さ寸法は10mm以下である、請求項1から11の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項13】
前記最大断面長さ寸法は0.5から10mmである、請求項1から12の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項14】
前記最大断面長さ寸法は前記組織接触要素の深さの2倍以下である、請求項1から13の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項15】
前記組織接触要素は、各前記組織接触要素が他の前記組織接触要素の少なくとも1mm、少なくとも0.5mm又は少なくとも0.1mm以内にあるように配列される、請求項1から14の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項16】
前記組織接触要素は、前記組織接触表面100mm2につき少なくとも4個存在するように配列される、請求項1から15の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項17】
前記組織接触要素は、前記組織接触表面100mm2につき少なくとも25個の組織接触要素が存在するように配列される、請求項1から16の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項18】
直径が3mm以下の細孔を有し、前記細孔の少なくとも50%は1から1500μm、又は5から750μmの直径を有する、請求項1から17の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項19】
固定化した止血剤を備える、請求項1から18の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項20】
前記止血剤は凝固因子、好ましくはトロンビン及び/又はフィブリノゲンを備える、請求項19に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項21】
前記止血剤は、固定された複数のフィブリノゲン結合ペプチドを有するキャリアを備える、請求項19又は20の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項22】
組織に接触すると反応して共有結合を形成する反応化学基を備える、請求項1から21の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項23】
前記組織接触要素は、表面を切断又は前記表面に切り込みを入れることにより形成された、請求項1から22の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジ。
【請求項24】
前記表面を切断又は前記表面にエンボス加工するステップを備える、請求項1から23の何れか一項に記載の止血用多孔質フォームスポンジを作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は止血用多孔質フォームスポンジ、及びそのような止血用多孔質フォームスポンジを製造する方法とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンやコラーゲン等の材料から製造されるフォームスポンジは通常、手術中に発生する出血を制御するのに使用される。これらの製品は、大きさが通常10mm×10mmから80mm×120mmまでの範囲であり、厚さが通常2mmから10mmの範囲である。これらは生体吸収性の材料から製造され、そのため現場で人体の中、又は上に残され得る。商業的に入手可能な製品はサージフォーム(エシコン)、ジェルフォーム(ファイザー)、ウルトラフォーム(バード−デイボール)、ジェリタスポン(ジェリタ)を含む。
【0003】
フォームスポンジは血液を吸収し、凝固を促進する表面を備える多孔質母材を備えることにより、出血を制御する。凝固因子は、フォームスポンジの母材が流体を吸収する際にも凝固し得る。
【0004】
これらの止血用フォームスポンジ製品はかなり有効で、手術に広く使用される。これらは乾燥させて、あるいは生理食塩水で濡らし用いてもよく、効果を高めるために凝固酵素のトロンビン、又は他の凝固因子の溶液で濡らして用いても良い。
【0005】
組織又は臓器を確実に定位置に収めるため、それらの製品が組織又は臓器に良く密着することが望まれる、ある種の手術が存在する。止血用フォームスポンジが周囲の組織により定位置に収まらない、開腹しての肝臓切除等の外科手術がその一例である。
【0006】
また、それらの止血用フォームスポンジが、部分的に乾燥した創傷又は出血の少ない創傷に使用される場合、スポンジを創傷に密着させるための血液凝固が不十分になるかもしれない。
【0007】
これら両方の懸念に対処するため、止血用フォームスポンジ上でトロンビン及びフィブリノゲンを乾燥させた製品が開発されてきた。その様な製品が創傷に適用されると、化学物質が溶解し、反応して接着膜を形成し、その膜が効果的に製品を組織又は臓器に密着させる。その様な製品の例としてタコシール(武田薬品工業株式会社)がある。
【0008】
もうひとつの方法は、合成化学物質を製品上に被覆し、それを反応基経由で組織に化学的に接着することである(例えばヘモパッチ、バクスター)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/035002号
【特許文献2】国際公開第2007/015107号
【特許文献3】国際公開第2008/065388号
【特許文献4】国際公開第2012/104638号
【特許文献5】国際公開第2013/114132号
【特許文献6】国際公開第2015/104544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来技術による、それらの製品の大きな欠点は、関連費用である。例えば、これらの製品は通常の止血用フォームスポンジの価格の3から15倍の費用が掛かる。
【0011】
また、別の欠点として、特に製品が血液から生成されたトロンビン及びフィブリノゲンを有する場合、患者が未確認の血液汚染物に曝される危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の分割された組織接触要素が密集した組織接触表面を有する、生体吸収性の止血多孔質フォームスポンジを提供する。
【0013】
本発明の止血用多孔質フォームスポンジは従来の止血フォームスポンジと比べ、創傷への密着を著しく向上させ得る。更に、この密着性の向上は、高価な凝固因子又は反応性化学物質を組み込むことなく達成できる。又、本発明の止血用多孔質フォームスポンジは一部が乾燥した創傷又は出血の少ない創傷に、容易に密着可能である。
【0014】
理論に縛られることを望むものではないが、止血用多孔質フォームスポンジの創傷への密着性の向上は、多くの要因によると考えられている。以下、要因別に従来品と本発明を比較する。
【0015】
本発明では、組織接触表面を個別の多数の組織接触要素に分割することで、創傷に接触する止血用多孔質フォームスポンジの表面積を増加し得る。
これに対し、従来の止血用フォームスポンジは、表面接触の不良により、組織に十分に密着出来ない。
【0016】
材料が多孔質であることは、限られた量の材料のみが実際に創傷の表面に接触し、これが密着不良を引き起こすことを意味し得る。
本発明では、組織接触表面の組織接触要素は止血用多孔質フォームスポンジがより容易に創傷の形状に代替的に又は付加的に適合できるようにして、創傷との表面接触を増加させる。
一方、連続した表面を有する従来の止血用フォームスポンジでは、同じ方法で創傷に適合することは出来ない。
【0017】
更に、本発明では、互いに独立して移動可能な個々の組織接触要素の存在は、スポンジを移動させるために作用する力に対し、スポンジがより耐性を持つことを可能にする。例えば、一つの端部を持ち上げると、創傷の表面から組織接触要素の一部を隆起させつつ残りの部分を創傷に接触したままに出来る。これは、本発明による止血用多孔質フォームスポンジの組織接触要素が止血用多孔質フォームスポンジと創傷表面との摩擦を増加させることにより、止血用多孔質フォームスポンジの横方向のずれに耐え得るからである。
一方、連続した表面を有する従来の止血用フォームスポンジは、この本発明が有する利点を提供出来ない。これは、従来の止血用フォームスポンジの一つの端部に付与される力(せん断力等)は、止血用フォームスポンジが繋がっているため、より効果的に伝達される。その結果、ずれが起こるからである。
【0018】
また、本発明において、組織接触要素間に発生する経路は、創傷滲出液がより迅速にスポンジに届くことを可能にして密着処理を加速するとともに、経路の寸法に応じて、止血用多孔質フォームスポンジを通じた毛管効果を発揮する可能性がある。
【0019】
本発明は、生体吸収性の止血用多孔質フォームスポンジとして、例えば手術中に内部創傷に使用可能なスポンジとして特に有利である。創傷の組織への止血用多孔質フォームスポンジの密着性の増加は、その後止血用多孔質フォームスポンジが任意の組織表面に貼付され、追加の密着手段を必要とせずに定位置に留まることが望まれる状況において、特に有利である。また、本発明による止血用多孔質フォームスポンジは、手術後に患者の体内に残すことが出来る。また、貼られた場所で時間と共に生体吸収され、即ち解体されて体内に吸収されるため、機械的な除去処置を必要としない。
【0020】
生体吸収性の止血用多孔質フォームスポンジは、肌の創傷及び潰瘍以外の創傷に使用されるのが好ましい。最も好ましくは、内部創傷に使用されるのに適している。
【0021】
なお、生体吸収性の材料とは、分解されて人体に再吸収され得、機械的な除去処置を必要としない材料である。
【0022】
好ましい実施形態では、止血用多孔質フォームスポンジは非分割の基部を有し、基部から組織接触要素が延伸する。よって、組織接触要素は非分割の基部からの突起物と見なされ得る。例えば各組織接触要素は、非分割の基部に接続又は結合される第1の端部(即ち基端部)及び基部に接続又は結合されない第2の端部(即ち表面)を備え得る。よって、第2の端部は止血用多孔質フォームスポンジの組織接触要素を構成する。
言い換えれば、基部は各組織接触要素が突出する共通の本体を提供し得る。基部は体液の効果的な吸収を可能にし得る。組織接触要素は又、創傷接触表面と呼んでもよい。
【0023】
本発明による止血用多孔質フォームスポンジは任意の適した形状をとり得るが、最も普通には、長さと幅が実質的に厚みより大きい立方体状である。よって、通常止血用多孔質フォームスポンジは全体的に正方形又は矩形であり、長さと幅が1cmから30cm以上である。より普通には、2cmから約10cm、厚みは2mmから約20mmである。さらにより普通には、約5mmから約15mmである。
【0024】
本発明の止血用多孔質フォームスポンジは立方体のブロック材料の形状である。即ち、少なくとも使用されて流体を吸収する前までは非常に固い。
他の実施形態、特に止血用多孔質フォームスポンジが比較的薄い場合では、止血用多孔質フォームスポンジは柔らかいシート形状又はパッド形状である。
【0025】
止血用多孔質フォームスポンジは、最も普通には正方形又は矩形の形状であるが、例えば、円形又は六角形のような他の形状も可能である。
止血用多孔質フォームスポンジは特大のシートの形状で供給されても良いし、そこから適した大きさ及び形状の切片を切断し、特定の手順を要求する工程に適合させても良い。
【0026】
止血用多孔質フォームスポンジの基部及び組織接触表面は、同じ止血用多孔質フォームスポンジ材料から形成されるのが好ましい。よって、止血用多孔質フォームスポンジは基部と組織接触要素が一体的に形成される単一の構成を備え得る。
ある実施形態では、組織接触要素が、既存の商業的に入手可能な止血用フォームスポンジと同じ止血用フォームスポンジの表面の修正、又はその様な止血用フォームスポンジを製造するために使用される方法への微調整により作成されるため、止血用多孔質フォームスポンジは容易に製造され得るという利点がある。
【0027】
各組織接触要素は基部に対して実質的に垂直方向に突出し得る。例えば図1は、各組織接触要素が基部に対して実質的に垂直方向に突出する実施形態を示す。
【0028】
組織接触要素は多くの場合止血用多孔質フォームスポンジの一方の主要面のみに形成され、他方の面は分割されない(よって従来の止血用フォームスポンジと同様の表面を有する)。その様な場合、は止血用多孔質フォームスポンジと組織の良好な密着が望まれる組織には止血用多孔質フォームスポンジの分割面が付着され得るが、何らかの理由でより少ない密着が望ましい場合は非分割面が付着され得る。
【0029】
しかし、また別の実施形態においては、止血用多孔質フォームスポンジの両方の主要面が組織接触要素に分割されても良い。その結果、両面が突起を備え、両面が組織への改良された密着性を示す。
そのような実施形態では、止血用多孔質フォームスポンジが2つの組織表面の間に介在してその両方に密着する必要がある時、又は単にその様な実施形態である時、使用者がどちらの面を付着させるべきかを選択する必要が無い。そのため、付着面の選択を誤るという事例が減少するという意味で特に有用であり得る。
【0030】
止血用多孔質フォームスポンジの一方の面のみが組織接触要素に分割される場合、その面、又はより普通には止血用多孔質フォームスポンジの反対の面は、使用者が容易に面を区別できるような可視指示を伝えてもよい。例えば、メチレンブルーのような適切な生体吸収性の発色色素により、表面に画像又は英数字マークが印刷され得る。
【0031】
組織接触要素は多数の異なる形態をとり得る。例えば、組織接触要素は指状又は柱状であってもよいし、他の実施形態では畝又は波形の形状であってもよい。
【0032】
各組織接触要素は、他の組織接触要素から独立して、曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げが可能な特定の大きさ及び形状であるのが好ましい。
例えば、各組織接触要素は基部と実質的に垂直の(即ち90°)の方向から逸脱可能である。各組織接触要素は基部に対する長手軸の角度を変化し得る。各組織接触要素は、基部に平らに、又は基部に平行に(例えば基部に対して0°)置かれるように移動可能である。
各組織接触要素の個々の曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げは、各組織接触要素が指状又は柱状であれば容易になり得る。よって複数の組織接触要素が止血用多孔質フォームスポンジ上でブラシ状の表面を形成し得る。
【0033】
図1は、本明細書で言及された特定の寸法を例示する本発明の実施形態の概略図である。これは、止血用多孔質フォームスポンジの深さ(又は厚み又は高さ)、組織接触要素の深さ(又は高さ又は長さ)、止血用多孔質フォームスポンジの幅及び止血用多孔質フォームスポンジの長さを含む。
【0034】
ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも0.1mmの深さを有する。ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも0.5mmの深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも1mmの深さを有する。ある実施形態では、各組織接触要素は少なくとも2mmの深さを有する。
【0035】
ある実施形態では、各組織接触要素は10mm以下の深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は8mm以下の深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は5mm以下の深さを有する。
【0036】
ある実施形態では、各組織接触要素は0.1mmから10mm、0.5から10mm、1から10mm又は2から10mmの深さを有する。
ある実施形態では、各突起は1から10mmの深さを有する。
ある実施形態では、各組織接触要素は1から8mm又は1から5mmの深さを有する。
【0037】
しかし、各組織接触要素の深さは止血用多孔質フォームスポンジの寸法に依存し得ることが理解される。例えば、スポンジの深さが浅ければ(即ちスポンジが薄ければ)、止血用多孔質フォームスポンジの構造的一体性に影響する可能性があるため、長い組織接触要素は望ましくない。
ある状況下では、長い組織接触要素は創傷へのより大きな密着性を提供し得るが、止血用多孔質フォームスポンジの深さと比較して長い組織接触要素は、止血用多孔質フォームスポンジの止血の有効性を損なう可能性がある。
【0038】
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用多孔質フォームスポンジの深さの80%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用多孔質フォームスポンジの深さの60%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用多孔質フォームスポンジの深さの50%以下である。
ある実施形態では、各組織接触要素の深さは止血用多孔質フォームスポンジの深さの35%以下である。
【0039】
様々な断面形状が組織接触要素に適し得る。例えば、各組織接触要素の断面形状は実質的に矩形又は三角形である。又は、組織接触要素は一様でない断面を有しても良い。
【0040】
各組織接触要素の第2の面(表面)は、一般的には全体に実質的に平ら又は平面的である。この形状は、止血用多孔質フォームスポンジの表面を切断又は表面に切り込みを入れることにより突起が形成される場合は容易に得られ得る(以下を参照)。
【0041】
特に好ましい実施形態では、各組織接触要素は50mm2以下、25mm2以下、10mm2以下又は5mm2以下の断面積を有する。断面積は10mm2未満が好ましい。
各組織接触要素の断面積は、0.05mm2以上、0.1mm2以上、0.5mm2以上又は1mm2以上であっても良い。
各組織接触要素の断面積は、0.05から25mm2であってもよい。好ましくは、各組織接触要素の断面積は、0.25から5mm2である。
【0042】
好ましい実施形態では、各組織接触要素の断面積は実質的に均一、即ち断面積は組織接触要素の深さにかかわらず一貫している。
しかし、ある実施形態では、突起は実質的に均一な断面を有しない可能性がある。断面積は一般に、組織接触要素の第2の面(即ち表面)の面積を指す。
【0043】
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、20mm以下、10mm以下又は6mm以下でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、0.2mm以上、0.5mm以上又は1mm以上でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は0.2から20mm又は0.5から10mmでも良い。
例えば、組織接触要素が均一な矩形の断面を有する場合、最大断面長さ寸法は対向する頂点間の長さ寸法となるであろう。
組織接触要素が実質的に均一な矩形の断面を有しない場合(例えば一端部が他端より幅広い場合)、最大断面寸法は、最大の長さ寸法を有する組織接触要素の深さに沿った部分(例えば突起の最も幅広な部分)となるであろう。
【0044】
より小さな組織接触要素(例えばより小さい断面積を有する組織接触要素)は、ある状況下では、より強い密着性をもたらし得るが、組織接触要素がどれくらい小さくなり得るかについては限界がある。
例えば、組織接触要素の大きさは止血用多孔質フォームスポンジの細孔の大きさにより制限され得る。非常に小さい組織接触要素は、ある種の止血用多孔質フォームスポンジ材料の生成が困難であり得る。
【0045】
他の組織接触要素から独立して、組織接触要素の曲げ、撓み、傾斜又は折り曲げを行うことは、例えば断面積(最大断面積のような)又は最大断面長さ寸法が組織接触要素の深さと比較して大きい場合には妨げられるかもしれない。例えば、大きな最大断面積又は大きな断面長さ寸法を有する浅い組織接触要素は、他の組織接触要素から独立して曲げられないかもしれない。
結局、ほとんどの実施形態において、各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、組織接触要素の深さの10倍未満である。
より好ましい実施形態では、各組織接触要素の最大断面長さ寸法は組織接触要素の深さの5倍未満である。
更により好ましい実施形態では、各突起の深さは最大断面長さ寸法以上でも良い。
各組織接触要素の最大断面長さ寸法は、組織接触要素の深さの少なくとも5倍未満、又は組織接触要素の深さの少なくとも10倍未満でも良い。
【0046】
好ましくは、各組織接触要素の基端部(即ち第1の端部)での断面長さ寸法は、実質的に表面(即ち第2の面)での断面長さ寸法以下である。
例えば、突起は実質的にドーム型、円錐形、ピラミッド形又は枕型ではないことが好ましい。その様な形状は突起が他の突起から独立して曲げられることを困難にし得る。
一般的に、各突起の基部での断面長さ寸法は、表面での断面長さ寸法の2倍以下であることが好ましい。
【0047】
組織接触要素の数及び/又は大きさは、止血用多孔質フォームスポンジの密着能力を調節するために変化し得る。例えば、組織接触表面を多数の組織接触要素に分割して各々が小さな断面積(図1図2及び図3の実施形態に示すような)を有するようにすることは結果として非常に強い密着性をもたらす。
なお、原則として、密着性が向上するのは好ましい。しかし、異なる手術状況においては異なる密着能力も求められ得る。
ある場面では、より密着能力が弱い止血用多孔質フォームスポンジの使用が望ましいかもしれない。これは、限られた時間の後に止血用多孔質フォームスポンジを創傷から除去することが望まれる場合に当てはまり得る。密着性が強すぎると、止血用多孔質フォームスポンジの除去が困難になり、組織への損傷を引き起こし得る。
より大きな断面積を有する、より少数の組織接触要素に組織接触表面を分割することは、従来の止血用多孔質フォームスポンジと比較して僅かながら密着性の向上をもたらすかもしれないが、それでもなお容易に除去され得る。
当業者は、加工されていない表面を有する連続した止血用多孔質フォームスポンジと比較することにより、望ましいレベルの密着性をもたらす組織接触要素の詳細、大きさ、形状及び配置を選択できる。
組織接触要素の様々な大きさ、形状及び配置を試験するのに適した方法を実施例に記載する。例えば実施例4は、組織接触要素の置換を容易に試験するのに使用され得る生体外の方法を記載し、密着性の最適化を可能にする。
【0048】
ある実施形態において、組織接触要素はアレイを形成する。例えば、組織接触要素は個別の列及び/又は行等の順序付けられた配列であり得る。組織接触要素表面に含まれる各組織接触要素は実質的に同一の断面形状を有しても良く、及び/又は各組織接触要素は実質的に同一の断面積を有しても良い。
【0049】
本発明の組織接触要素は共に密集している。ここでの「密集する」とは、各組織接触要素が他の組織接触要素から少なくとも5mm以内にあるように組織接触要素が配列されることを意味するものとする。
好ましくは、各組織接触要素が他の組織接触要素から1mm以内であり、より好ましくは他の組織接触要素から0.5mm以内である。
【0050】
組織接触要素は、既存の生体吸収性の止血用多孔質フォームスポンジを切断することにより形成されることが好ましい。
各組織接触要素間の空間は、一般に切断手段の幅により決定される。切断手段の幅は、好ましくは0.05mmから0.5mmである。
【0051】
組織接触表面は、組織接触表面100mm2につき少なくとも4個の、好ましくは組織接触表面100mm2につき少なくとも10個の、最も好ましくは組織接触表面100mm2につき少なくとも25個の組織接触要素が存在するように分割され得る。
【0052】
止血用多孔質フォームスポンジは、意図する用途に応じて、様々な寸法を有し得る。通常、止血用多孔質フォームスポンジの長さは約150mm以下である。通常、止血用多孔質フォームスポンジの幅は約50mm以下である。止血用多孔質フォームスポンジは10mm以上の長さ、及び/又は10mm以上の幅を有し得る。例えば、長さは10から150mmであっても良い。幅は10から50mmであっても良い。通常、止血用多孔質フォームスポンジの深さ(又は厚み)は約10mm以下である。止血用多孔質フォームスポンジの深さは0.2から10mmであっても良い。
【0053】
止血用多孔質フォームスポンジは発泡体である。止血用多孔質フォームスポンジは連続気泡の発泡体であり、血液や創傷浸出液等の体液を吸収及び/又は吸着するのに適した多孔質母材である。止血用多孔質フォームスポンジに適した材料は業界に知られており、ゼラチン、コラーゲン、澱粉及びヒアルロン酸を含む。本発明における使用に適した商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ材料は例えば、サージフォーム(エシコン)、ジェルフォーム(ファイザー)、ウルトラフォーム(バード−デイボール)、ジェリタスポン(ジェリタ)を含む。本発明の止血用多孔質フォームスポンジは織り繊維又は不織繊維(例えばフェルト状の止血剤)を使用する繊維質の又は織物に基づく止血剤と区別される。止血用多孔質フォームスポンジはゼラチン又はコラーゲンスポンジである。
【0054】
止血用多孔質フォームスポンジは通常、止血用多孔質フォームスポンジ形成材料(例えばゼラチン)を備える溶液を発泡させ、発泡体を乾燥させることにより製造される。乾燥は焼成又は凍結乾燥により達成され得る。例えばゼラチンは、血液内にあまりにも容易に溶解されるのを防ぐために(ゼラチンは30℃以上の温度で溶解できるため)架橋されても良い。架橋はホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド及びカルボジイミド等の化学的架橋剤、又はスポンジを乾式加熱で処理する(例えば100から160℃で数時間)ことにより達成され得る。
【0055】
適した細孔の大きさは、例えば止血用多孔質フォームスポンジが接触される組織の種類や止血用多孔質フォームスポンジが吸収しようとする体液の種類等の、止血用多孔質フォームスポンジの意図された役割に応じて選択され得る。通常、止血用多孔質フォームスポンジは直径が3mm以下の細孔を有する。例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも65%の細孔は、1から1500μm、5から1000μm、又はより好ましくは5から750μmの直径を有し得る。
【0056】
好ましくは、止血用多孔質フォームスポンジは殺菌されている。止血用多孔質フォームスポンジは加熱により殺菌されても良い。使用前、無菌状態を維持するため、止血用多孔質フォームスポンジは気密包装等の包装で保存される。
【0057】
止血用多孔質フォームスポンジは、他の従来の止血用フォームスポンジの表面に一連の切り込みを作成することにより製作されるのが好ましい。例えば、刃(例えば幅が0.1mmから0.3mm)がスポンジの表面を切断又は切れ目を入れるのに使用され、止血用多孔質フォームスポンジの表面を複数の密集した組織接触要素に分割する。
【0058】
よって、止血用多孔質フォームスポンジの表面に入れられた切り込みの他に、止血用多孔質フォームスポンジは本質的に従来の止血用フォームスポンジと同じであり、修正されたスポンジの創傷表面への驚くほど向上した密着性を除いて同様の物理的特性を有すると期待されるであろう。例えば、液体と接触すると、従来のゼラチン製の止血用多孔質フォームスポンジは、液体を吸収して元の体積に実質的に完全に回復する少し前に体積を減らす。本発明により修正されたゼラチン製の止血用多孔質フォームスポンジは同様に機能することが発見された。
【0059】
ある実施形態では、周期的に平行及び真っ直ぐな切り目が止血用多孔質フォームスポンジの表面の幅と止血用多孔質フォームスポンジの表面の長さの両方に沿って形成され得る。これは止血用多孔質フォームスポンジの表面の組織接触要素のアレイを生成し得、組織接触要素のそれぞれは実質的に同じ断面形状と断面積を有する。切断位置を変更すると、組織接触要素の数、断面積及び形状が変化され得る。
【0060】
又、止血用多孔質フォームスポンジの表面は、全ての切り込みが同時に形成されるように、既製の切断又はエンボス加工工具(図18に示す工具等)を使用することにより組織接触要素に分割され得ることが考えられる。採用され得る他の切断技術は刃又はレーザーの回転を含む。
【0061】
結果として、本発明によると、複数の分割された組織接触要素が密集した組織密集表面を備える止血用多孔質フォームスポンジを形成するために生体吸収性の止血用多孔質フォームスポンジの表面を切断、切り込みを入れる又はエンボス加工するステップを備える方法が提供される。
【0062】
又、組織接触表面は、止血用多孔質フォームスポンジの製作中に成形プロセスにより密集した組織接触要素に分解され得る。
【0063】
発明によると、出血の制御又は血液凝固を促進することに使用される本発明による止血用多孔質フォームスポンジが提供される
【0064】
ある実施形態において、止血用多孔質フォームスポンジの創傷部位への密着を助ける化学物質が止血用多孔質フォームスポンジに添加又は固定され得る。化学物質は止血剤でも良い。例えば、その様な化学物質は止血用多孔質フォームスポンジの組織接触表面に固定され得る。その様な化学物質は、非共有結合の固定化により(例えば乾燥により)又は化学物質を止血用多孔質フォームスポンジに共有結合で固定することにより止血用多孔質フォームスポンジに密着され得る。
【0065】
ある実施形態では、止血剤は凝固剤、又はトロンビン及び/又はフィブリノゲンのような凝固因子を備え得る。又は止血剤は、接触して組織との化学結合を形成可能にする反応基を備え得る。例えば、ヘモパッチ(バクスター)は組織への付着を可能にするNHS−PEG基を組み込む。
【0066】
ある実施形態では、止血剤は、各キャリアに固定された複数のフィブリノゲン結合ペプチドを有するキャリアを備える。その様な止血剤の例は、国際公開第2005/035002号、国際公開第2007/015107号、国際公開第2008/065388号、国際公開第2012/104638号、国際公開第2013/114132号、国際公開第2015/104544号に記載され、それぞれの内容は参照用に本明細書に援用される。国際公開第2012/104638号は、その様な止血剤がゼラチンに固定され得ることを記載する。
【0067】
一実施形態において、フィブリノゲン結合ペプチドは配列G(P,H)RXを備え、P、Hはその位置にプロリンかヒスチジンのどちらかが存在することを意味し、Xは任意のアミノ酸を指す。キャリアは溶解性でも不溶性でもよいが、溶解性が好ましい。
配列は例えばNH2−G(P,H)RX−のようなフィブリノゲン結合ペプチドのアミノ末端に存在し得る。フィブリノゲン結合ペプチドは長さにおいて4から50アミノ酸、好ましくは長さにおいて4から10アミノ酸であり得る。フィブリノゲン結合ペプチドはスペーサによりキャリアから隔離されても良く、スペーサはペプチドスペーサでも、ポリエチレングリコールのような非ペプチドスペーサでも良い。
好ましくは、止血剤はフィブリノゲンに接触すると生物ゲルを形成する。
各フィブリノゲン分子はフィブリノゲン結合ペプチドの少なくとも2つと結合し得、その結果、フィブリノゲン分子とフィブリノゲン結合ペプチドの間の非共有結合により、フィブリノゲン分子がキャリアを介して結合される生物ゲルを形成する。キャリアはアルブミンキャリアでも良い。
【0068】
ある実施形態では、止血剤はペプチドデンドリマー等の共役ペプチドでも良い。デンドリマーは分岐したコアと、分岐したコアに別個に共有結合で取り付けられた複数のフィブリノゲン結合ペプチドを備え得る。分岐したコアは一つ又は複数の多機能のアミノ酸(例えば3個又は4個の機能のアミノ酸)を備え得る。各多機能アミノ酸、又は複数の多機能アミノ酸は、それらに共有結合で取り付けられた一つ又は複数のフィブリノゲン結合ペプチドを有し得る。
【0069】
適した共役及びデンドリマーの例は、国際公開第2015/104544号に記載される。例えば、ペプチドデンドリマーは以下の一般的な化学式1を備え得る。
【0070】
【化1】
【0071】
但し、FBPはフィブリノゲン結合ペプチドであり、
−(リンカー)−は任意のリンカー、好ましくは非ペプチドリンカーであり、
Xは、3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、オルニチン又はアルギニンであり、
Yは、−FBP又は−NH2であり、
Zは、Yが−FBPの時の
−(リンカー)−FBP、
又はYが−NH2の時の
−[−Xn−(リンカー)−FBP]a−(リンカー)−FBP
である。
但し、Xnは3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、L−オルニチン又はアルギニンであり、aは1から10、好ましくは1から3である。
【0072】
例えば、YがNH2であり、Zが
−[Xn−(リンカー)−FBP]a−(リンカー)−FBP
である時、デンドリマーの構造は以下の通りである。
aが1の場合、化学式2の通りである。
aが2の場合、化学式3の通りである。
aが3の場合、化学式4の通りである。
【0073】
【化2】
【0074】
【化3】
【0075】
【化4】
【0076】
又は、Yが−FBPの時、Zは、
−[−Xn−(リンカー)−FBP]a−(リンカー)−FBP
である。
但し、Xnは3個の機能のアミノ酸の残基、好ましくはリジン、L−オルニチン又はアルギニンであり、
aは1から10、好ましくは1から3である。
【0077】
例えば、Yが−FBP、Zが
−[−Xn−(リンカー)−FBP]a−(リンカー)−FBP、
aが1の時、デンドリマーの構造は以下の化学式5の通りである。
【0078】
【化5】
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの(平面図(左)及び側面図(右))概略図である。
図2】本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの(平面図(左)及び側面図(右))概略図である。
図3】本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの(平面図)概略図である。
図4】本発明の好適でない実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの(平面図(左)及び側面図(右))概略図である。
図5図5(a)から図5(d)は本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジのSEM画像を示す。
図6図6(a)から図6(d)は本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジのSEM画像を示す。
図7図7は商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(ジェリタによるジェリタスポン)のSEM画像を示す。
図8図8(a)及び図8(b)は本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの生体内の密着特性を示す。
図9図9(a)及び図9(b)は商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(ジェリタによるジェリタスポン)の生体内の密着特性を示す。
図10図10は商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(武田薬品工業株式会社によるタコシール)の生体内の密着特性を示す。
図11図11は商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(ジェリタ)の生体外の密着特性を示す。
図12図12は本発明の好適でない実施形態による止血用フォームスポンジの生体外の密着特性を示す。
図13図13は本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの生体外の密着特性を示す。
図14図14は本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジの生体外の密着特性を示す。
図15図15(a)及び図15(b)は、本発明による止血用多孔質フォームスポンジ(図15(b))と商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(図15(a))(ジェルフォーム)との密着特性の比較を示す。
図16図16(a)及び図16(b)は、本発明による止血用多孔質フォームスポンジ(図16(b))と商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(図16(a))(スポンゴスタンスタンダード)の密着特性の比較を示す。
図17図17(a)及び図17(b)は、本発明による止血用多孔質フォームスポンジ(図17(b))と商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(図17(a))(コルスポン)の密着特性の比較を示す。
図18図18(a)及び図18(b)は、本発明による止血用多孔質フォームスポンジ(図18(b))と商業的に入手可能な止血用フォームスポンジ(図18(a))(ウルトラフォーム)の密着特性の比較を示す。
図19図1及び図2に示される本発明の実施形態による止血用多孔質フォームスポンジを製造するのに使用され得る切削工具(平面図)を示す図である。
図20】組織接触要素が自動ロボットの刃を使用して形成された場合の本発明による止血用多孔質フォームスポンジの写真を示す。
図21図20の止血用多孔質フォームスポンジの密着特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明の実施形態が、例として、添付の図面を参照して説明される。
【0081】
図1に示されるゼラチン製の止血用フォームスポンジ1は組織接触表面3を有する。組織接触表面は、一連の指状又は柱状の組織接触要素5に分割される。組織接触要素は基部7から実質的に垂直方向に突出し、それぞれが矩形の断面を有する。各組織接触要素5は基部に付着する第1の端部(即ち基端部)9及び基部から最も離れた第2の端部(即ち表面)11を有する。
【0082】
図1は止血用フォームスポンジの長さ(L)、止血用フォームスポンジの幅(W)、止血用フォームスポンジの深さ(Ds)及び組織接触要素の深さ(Dp)を示す。止血用フォームスポンジの深さは止血用フォームスポンジの高さ又は厚みとしても良く、組織接触要素の深さは、組織接触要素の高さ(又は長さ)としても良い。
【0083】
止血用フォームスポンジ1は、カミソリの刃を使用して、一連の周期的な切り込みをゼラチン製の止血用フォームスポンジの表面に作成することにより製造される。一連の切り込みが長さ方向、その後一連の切り込みが幅方向に作成され、切り込みは止血用フォームスポンジの途中まで延伸する。
【0084】
使用時、止血用フォームスポンジ1は創傷に付着され、その結果、組織接触表面3の組織接触要素5は創傷と接触する。
【0085】
図2に示すゼラチン製の止血用フォームスポンジは、切り込みが深くなく、よって組織接触要素5がより短いことを除けば、図1に示す止血用フォームスポンジと実質的に同じである。図1のものと同じ特徴には同じ参照番号が付された。
【0086】
図19は、図1及び図2に示される止血用フォームスポンジを製造するのに使用され得る切削工具21の概略平面図を示す。工具は長さ方向及び幅方向に配置された一連の刃13を有し、実質的に矩形の空間15を画定する。工具は、同時に多数の切れ目を作成して予め規定された断面積の突起を作成するように止血用フォームスポンジの表面に挿入可能である。
【0087】
図3に示すゼラチン製の止血用フォームスポンジは、図1及び図2の止血用フォームスポンジと同じである。同じ特徴には同じ参照番号が付された。しかし、4倍の組織接触用を作成するため、更に斜めの切り込みが各組織接触要素を通して作成され、各組織接触要素は三角形の断面を有し、表面積が図1及び図2の組織接触要素のものの約4分の1である。
【0088】
[実施例1−表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジの準備]
試料A:図1に示す全体形状を有する止血用フォームスポンジは以下のように準備された。一連の切り込みが、鋭いカミソリの刃(0.1mmから0.3mm幅)を使用してゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェリタによるジェリタスポン)の表面に作成され、表面に柱状又は指状の組織接触要素を生成した。切り込みは長さに沿って0.5mmから2mmの間隔、及び約5から8mmの深さまで作成され、一連の幅方向の切り込みも0.5mmから2mmの間隔、及び5から8mmの深さで作製された。結果として実質的に矩形の断面形状を有する組織接触要素が生成され、それぞれは0.25mm2から4mm2の面積を有する端面を含んだ。各止血用フォームスポンジは約30mmの長さ、約20mmの幅及び約10mmの厚さであった。
【0089】
試料B:図2に示す全体形状を有する止血用フォームスポンジは以下のように準備された。一連の切り込みが、鋭いカミソリの刃(0.1mmから0.3mm幅)を使用してゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェリタによるジェリタスポン)の表面に作成され、表面に柱状又は指状の組織接触要素を生成した。切り込みは長さ方向に0.5mmから2mmの間隔、及び約1から2mmの深さまで作成され、一連の幅方向の切り込みも0.5mmから2mmの間隔、及び1から2mmの深さで作製された。結果として実質的に矩形の断面形状を有する組織接触要素が生成され、それぞれは0.25mm2から4mm2の面積を有する端面を含んだ。各止血用フォームスポンジは約30mmの長さ、約20mmの幅及び約10mmの厚さであった。
【0090】
試料C:図3に示す全体形状を有する止血用フォームスポンジは以下のように準備された。一連の切り込みが、鋭いカミソリの刃(0.1mmから0.3mm幅)を使用してゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェリタによるジェリタスポン)の表面に作成され、表面に柱状又は指状の組織接触要素を生成した。切り込みは長さに沿って0.5mmから2mmの間隔、及び約5から8mmの深さまで作成され、一連の幅方向の切り込みも0.5mmから2mmの間隔、及び5から8mmの深さで作製された。更に切り込みが5から8mmの深さまで各組織接触要素を通って斜めに作成され、実質的に三角形の断面と、試料A及びBの約4分の1の断面積を有する組織接触要素を含む止血用フォームスポンジを作製した。各止血用フォームスポンジは約30mmの長さ、約20mmの幅及び約10mmの深さであった。
【0091】
試料Dは対照としての止血用フォームスポンジであった。ジェリタスポン(ジェリタ)止血用フォームスポンジの表面には切り込みが作成されなかった。各止血用フォームスポンジは約30mmの長さ、約20mmの幅及び約10mmの深さであった。
【0092】
試料E:図4に示す全体形状を有する止血用フォームスポンジは以下のように準備された。単一の切り込みが長さ方向に約5から8mmの深さまで作成され、及び単一の幅方向の切り込みも5から8mmの深さで作製されて4つの組織接触要素を作成し、それぞれは約150mm2の面積を有する端面を含んだ。各止血用フォームスポンジは約30mmの長さ、約20mmの幅及び約10mmの厚さであった。
【0093】
試料F:止血用フォームスポンジは自動ロボットの刃を使用し、長さ方向及び幅方向の切込みを1.5mmの間隔で作成して準備された。切り込みは3mmの深さを有した。自動ロボットの刃を使用することにより、処理は格段に速くなり1つ5×8cmの止血用フォームスポンジ表面が約10秒で修正できた。
【0094】
[実施例2−表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジの走査型電子顕微鏡画像]
いくつかの試料の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、ライカEM SD005スパッタ塗布装置を用いてJEOL6060LV可変圧力走査型電子顕微鏡を使用して撮影された。
【0095】
図5(a)、図5(b)及び図5(c)は様々な倍率での試料A(平面図)のSEM画像を示す。図5(b)の組織接触要素の表面は約1.5mm2の表面積である。
図5(d)は約8mmの深さを有する組織接触要素を示す試料A(側面図)のSEM画像(倍率13倍)を示す。
図6(a)、図6(b)及び図6(c)は様々な倍率での試料B(平面図)のSEM画像を示す。
図6(d)は約2mmの深さを有する組織接触要素を示す試料B(側面図)のSEM画像(倍率14倍)を示す。
図7は試料D(平面図)のSEM画像(倍率13倍)を示す。
【0096】
[実施例3−外科手術での表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジの密着性試験]
ウサギ(ニュージーランドホワイト種、雄、体重約3kg)が準備され、標準の手続きを用いて麻酔し、肝臓を開腹した。生検パンチ穴(直径5mm及び4から5mmの深さ)が肝臓の葉に開けられ、試料B及び試料D(対照)が創傷に置かれ、ガーゼと共に1分間圧迫された。止血用フォームスポンジが創傷に置かれた時に完全に血液に浸されないように、出血が少ない生検創傷が選択された。3分後に止血用フォームスポンジは鉗子により一角が持ち上げられた。更なる対照の実験もなされた。トロンビン及びフィブリノゲンで固定されたコラーゲン製の止血用フォームスポンジであるタコシール(武田薬品工業株式会社)である。各処理は3回再現され、観察は一貫性があった。
【0097】
【表1】
【0098】
[実施例4−生体外の密着性試験]
<4.1 実験1>
(方法)
直径1cm、深さ5mmの生検穴が子羊の肝臓に開けられた(マークスアンドスペンサー、英国)。ヒト血漿溶液(0.1ml、A1174EXP−2016−10、アルファラボ)が穴に添加された。全ての材料は実験前に37℃まで加熱された。試料A、試料B及び試料E(実施例1に記載された)を作成するために準備された表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェリタ、ジェリタスタンダード、ロットT01554/6)を裏返して生検穴に重なるように付着させ、綿ガーゼを用いて1分間圧迫した。止血用フォームスポンジが生検穴に置かれた時に血漿に完全に浸されないように(出血の少ない創傷をシミュレートするため)、血漿が生検穴に付加された。ピンセットを用いて止血用フォームスポンジの角近くを持ち上げる試みがなされた。対照試料D(即ち、修正されていない止血用フォームスポンジ)と比較することにより密着性のレベルが目視で観察された。
【0099】
(結果)
生体外の試験は実施例3の態様を模倣するように設計され、全体の結果は、表面修正の無い止血用フォームスポンジは密着性が無い点、外側の表面積が4mm2以下である指状の組織接触要素を有する止血用フォームスポンジが強力な密着性を有する点においておおむね同じであった。長い組織接触要素(試料A)を有する止血用フォームスポンジは生体外で短い組織接触要素(試料B)を有する止血用フォームスポンジよりも効果的であることが観察されたが、長い組織接触要素(試料A)の止血用フォームスポンジの密着性のレベルは短い組織接触要素(試料B)の止血用フォームスポンジを使用した動物試験で観察されたレベル以下であった。実施例3において(以下を参照のこと)、試料Cは密着性の向上を示した。
【0100】
試料Eの密着性の不良は、ある状況下では、大きな組織接触要素(例えば、約150mm2の断面積)を有する止血用フォームスポンジは好適でないことを示す。小さな断面積を有する組織接触要素を有するスポンジは密着性が強くなるため、ある状況下では好適であり得る。
【0101】
よって生体外の試験は表面修正の置換を試験し、密着性の最適化を行うのに有益である。例えば、様々な大きさ及び形状の組織接触要素、及び様々な種類の止血用フォームスポンジ材料が容易に試験され得る。
【0102】
【表2】
【0103】
<4.2 実験2>
(方法)
直径1cm、深さ5mmの生検穴が子羊の肝臓に開けられた(マークスアンドスペンサー、英国)。脱イオン水溶液(0.5ml)が穴に添加された。全ての材料は実験前に室温又は37℃まで加熱された。表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェリタ、ジェリタスタンダード、ロットT01554/6)が、試料C(実施例1に記載された)を作成するために準備された。止血用フォームスポンジを裏返して生検穴に重なるように付着させ、綿ガーゼを用いて30秒圧迫した。止血用フォームスポンジが生検穴に置かれた時に水に完全に浸されないように(出血の少ない創傷をシミュレートするため)、水が生検穴に付加された。密着性が目視で観察された。又、止血用フォームスポンジを肝臓の表面から除去するのに必要な最大の力もDGD−3 50Gグラムゲージ(メクメシン、特許番号第890−003号)を用いて計測された。
【0104】
密着性のレベルは対照試料Dとの比較により目視で観察された。
【0105】
(結果)
【表3】
【0106】
【表4】
注:グラムゲージの最大計測力は60gである。試料Cの止血用フォームスポンジはこれを超えた。
【0107】
<4.3 実施例3>
(方法)
直径1cm、深さ5mmの生検穴が子羊の肝臓に開けられた(マークスアンドスペンサー、英国)。ヒト血漿溶液(0.1ml、A1174EXP−2016−10、アルファラボ)が穴に添加された。全ての材料は実験前に37℃まで加熱された。表面が修正されたゼラチン製の止血用フォームスポンジ(ジェルフォーム、ファイザー及びスポンゴスタンスタンダード、フェロサン)、及びコラーゲン製の止血用フォームスポンジ(コルスポン、メディラ及びウルトラフォーム、バード)が準備されて試料C(実施例1に記載された)を形成した。これらを裏返して生検穴に重なるように付着させ、綿ガーゼを用いて1分間圧迫した。止血用フォームスポンジが生検穴に置かれた時に血漿に完全に浸されないように(出血の少ない創傷をシミュレートするため)、血漿が生検穴に付加された。ピンセットを用いて止血用フォームスポンジの角近くを持ち上げる試みがなされた。対照試料D(即ち、それぞれの止血用フォームスポンジに修正がなされていない)と比較することにより密着性のレベルが目視で観察された。
【0108】
(結果)
【表5】
【0109】
<4.4 実施例4>
自動ロボットの刃を使用して製造された1.5×1.5mm組織接触要素を有する修正された止血用フォームスポンジ(試料F)と修正されていない止血用フォームスポンジとの密着性の比較
【0110】
(材料)
スポンゴスタンゼラチンフォームスポンジ(フェロサンMS0002)
ヒトフィブリノゲン3mg/ml(エンジームリサーチ社)、37℃に加熱したもの
雄牛の肝臓(マークスアンドスペンサー)、5、10、25グラムに切断して37℃に加熱したもの
【0111】
(方法)
150マイクロリットルのフィブリノゲンが雄牛の肝臓切片の表面にピペットで添加された。5、10、25グラムの3種類の重量の雄牛の肝臓が試験された。修正された止血用フォームスポンジ、及び修正されていない止血用フォームスポンジの被験物質(1×2×1.4cm)が雄牛の肝臓の上のフィブリノゲンの溜まりに3分間圧迫され、その後約30cmの高さまで持ち上げられた。止血用フォームスポンジが雄牛の肝臓を保持する継続時間は10分以上測定された。
【0112】
(結果)
表面が修正されていない対照の止血用フォームスポンジは5グラムの肝臓切片を1分しか保持できず、10グラム及び25グラム切片では持ち上げることも出来なかった。対照的に、修正された止血用フォームスポンジは25グラムの肝臓切片を少なくとも10分保持し、修正されていない止血用フォームスポンジに比べて修正された止血用フォームスポンジの著しく増加した密着性を示した。
【符号の説明】
【0113】
1 止血用フォームスポンジ
3 組織接触表面
5 組織接触要素
7 基部
9 第1の端部
11 第2の端部
図1
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図3
図4
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