(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854829
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】圧力容器、ボス、及び、ボスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F17C 1/16 20060101AFI20210329BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
F17C1/16
F16J12/00 A
F16J12/00 Z
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-552665(P2018-552665)
(86)(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公表番号】特表2019-516043(P2019-516043A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】US2017025892
(87)【国際公開番号】WO2017176712
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】62/318,940
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511167010
【氏名又は名称】ヘキサゴン テクノロジー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ニューハウス ノーマン エル.
(72)【発明者】
【氏名】セッダーバーグ チャド エー.
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02894387(EP,A2)
【文献】
特開平11−210988(JP,A)
【文献】
特表2000−504810(JP,A)
【文献】
特開2009−185990(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0291878(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/189664(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/16
F16J 12/00
F17C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部環境を有し、外側に外部環境が画定される圧力容器であって、
シェルと、
前記シェル内に位置決めされ、前記内部環境を画定するライナーと、
前記シェルと前記ライナーとの間の第1の境界に位置するボスとを含み、前記ボスは、
前記ライナーと前記ボスとの間の第2の境界にある空洞であって、前記内部環境と連通する前記ボスの内部表面に位置し、前記外部環境と流体連通する前記ボスの外部表面までは達しない空洞、及び、
前記空洞内に位置し、前記内部環境に対面する放出構造を含み、ガス放出経路は、前記第1の境界から、前記放出構造を通り、前記圧力容器の前記内部環境に入るように画定される、圧力容器。
【請求項2】
前記放出構造は、焼結金属を含む、請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記放出構造は、前記ライナーの材料が前記放出構造に入るのを抑制しながら、ガスが前記放出構造を通過することを可能にする、多孔性を有する、請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記放出構造は環状形状を有する、請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記空洞は、前記放出構造の前記環状形状に対応する補足的な環状形状を有する、請求項4に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記放出構造は、放出構造のセットのうちの1つである、請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記空洞は、空洞のセットのうちの1つであり、前記空洞のセットにおける各空洞は、前記放出構造のセットにおける1つの放出構造の形状に対応するように構成される、請求項6に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記空洞のセットにおける前記空洞は、円周方向に互いから等間隔に離間する、請求項7に記載の圧力容器。
【請求項9】
圧力容器用のボスであって、
前記圧力容器の外部環境と前記圧力容器の内部環境との間の流体連通を可能にするように構成されるポートと、
前記ポートから半径方向に外側に延在し、外部側及び内部側を含むフランジと、
前記フランジの前記内部側に位置し、前記外部環境と流体連通する前記ボスの外部表面までは達しない空洞と、
前記空洞内に位置し、前記内部環境に対面するガス放出構造とを含む、ボス。
【請求項10】
前記ガス放出構造は焼結金属を含む、請求項9に記載のボス。
【請求項11】
前記ガス放出構造は、溶融ポリマー材料が前記ガス放出構造に入るのを抑制しながら、ガスが前記ガス放出構造を通過することを可能にする多孔性を有する、請求項9又は請求項10に記載のボス。
【請求項12】
前記ガス放出構造は環状形状を有する、請求項9から請求項11のうちのいずれか1項に記載のボス。
【請求項13】
前記空洞は、前記ガス放出構造の前記環状形状に対応する補足的な環状形状を有する、請求項12に記載のボス。
【請求項14】
前記ガス放出構造は、ガス放出構造のセットのうちの1つである、請求項9から請求項11のうちのいずれか1項に記載のボス。
【請求項15】
前記空洞は、空洞のセットのうちの1つであり、前記空洞のセットにおける各空洞は、前記ガス放出構造のセットにおける1つのガス放出構造の形状に対応するように構成される、請求項14に記載のボス。
【請求項16】
前記空洞のセットにおける前記空洞は、円周方向に互いから等間隔に離間する、請求項15に記載のボス。
【請求項17】
圧力容器内で使用するためのボスを製造する方法であって、
金属部品を焼結することで、前記金属部品が、ガスが焼結された前記金属部品を通過することを可能にするが、溶融ポリマー材料が焼結された前記金属部品に入るのを制限する多孔性を有するようにすること、及び、
焼結された前記金属部品を、前記ボスの対応する空洞に挿入することを含む、方法。
【請求項18】
前記対応する空洞を機械加工することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ボスは、前記ボスの外部側と前記ボスの内部側を接続するポートを含み、前記機械加工は、前記ボスの前記内部側の表面を機械加工することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ボスは、前記ポートから半径方向に外側に延在し、外部側及び内部側を含むフランジを含み、前記機械加工は、前記フランジの前記内部側の表面を機械加工することを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
圧力容器は、例えば、水素、酸素、天然ガス、窒素、プロパン、メタン、及び他の燃料のような種々の流体を圧力下で格納するために一般に使用される。一般的に、圧力容器は、任意のサイズ又は構成であり得る。容器は、例えば、重い又は軽い、1回使用(例えば、使い捨て)である、再使用可能である、高い圧力(例えば、50psiより大きい)又は低い圧力(例えば、50psiより小さい)を受ける、或は、高温又は低温で流体を貯蔵するために使用される可能性がある。
【0002】
好適な圧力容器シェル材料には、鋼等の金属、又は、巻回式ガラス繊維フィラメント或は熱硬化性又は熱可塑性樹脂により互いに接合された他の合成フィラメントの積層された層を含むことができる複合材料が含まれる。繊維は、ガラス繊維、アラミド、炭素、グラファイト、又は任意の他の一般的に知られている繊維強化材料であっても良い。使用される樹脂材料は、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、熱可塑性物質、又は、任意の他の適した樹脂性材料であって、容器が使用される特定の用途において必要とされる、繊維対繊維接合、繊維層対層接合、及び粉砕抵抗を提供することが可能である、任意の他の適した樹脂性材料であることができる。容器の複合構造は、重量の軽さ、腐食、疲労、及び深刻な損傷に対する耐性等の多数の利点を提供する。これらの特性は、少なくとも部分的に、強化繊維又はフィラメントの高い比強度によるものである。
【0003】
ポリマー、又は、他の非金属弾性ライナー或いは嚢が、複合シェル内にしばしば配設されて、容器を密閉し、内部流体が複合材料と接触することを防止する。ライナーは、圧縮成形、ブロー成形、射出成形、又は任意の他の一般的に知られている技法によって製造され得る。代替的に、ライナーは、鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、プラチナ、金、銀、ステンレス鋼、及びその任意の合金を含む他の材料により作られ得る。こうした材料は、高い弾性係数を有するものとして一般に特徴付けられ得る。一実施形態において、ライナー20は、ブロー成形された高密度ポリエチレン(HDPE)から形成される。
【0004】
図1は、参照によって組込まれる「Pressure vessel with damage mitigating system」と題する米国特許第5,476,189号に開示されているような、細長い圧力容器10を示す。圧力容器10は、主本体セクション12、及び、実質的に半球の又はドーム状の端セクション14を有する。通常アルミニウムで構築されるボス16は、圧力容器10の一方の端又は両端に設けられて、圧力容器10の内部環境17と圧力容器10の外部環境19との間の連通のためのポートを提供する。
図2に示すように、圧力容器10は、シェル18によって覆われたライナー20(内側ポリマーライナー等)によって形成される。一例において、シェル18は、フィラメント券回式複合シェルであり得る。シェル18は、圧力容器10にかかる構造的荷重を解決し、一方、ライナー20は、ガスバリアを提供する。
【0005】
図2は、参照によって組込まれる「Boss for a filament wound pressure vessel」と題する米国特許第5,429,845号に開示されるような、ボス16を含む端セクション14の、
図1のライン2−2に沿って切取られた部分断面図を示す。ボス16(
図3に別個に示す)は、ネック22を含む。ネック22は、外部表面23及びポート26を含む。ポート26は、ボス16の外部表面23を垂直に横断し、圧力容器10の外部環境19と内部環境17との間の流体連通を可能にする。ボス16は、同様に、ポート26の長手方向軸36から半径方向に外側に延在するフランジ24(環状フランジとして示す)を含む。図示するように、
図2は、シェル18とライナー20との間の境界60を示す。
図2は、同様に、ライナー20とボス16との間の境界62を示す。本開示において、内部環境17を向く表面、方向、及び要素は、記述子「内部(interior)」と共に参照でされ、外部環境19を向く表面、方向、及び要素は、記述子「外部(exterior)」と共に参照でされる。この非制限的な表記が、単に便宜及び理解の容易さのために提供され;他の記述子が、同様に使用され得る及び/又は適し得ることが理解される。
【0006】
一般に、ボス16のフランジ24は、ライナー20の複数の部分の間に格納される、及び/又は、ライナー20とシェル18との間に挟まれる。通常、シェル18はネック22に当接する。フランジ24は、外部側38及び内部側37を含む。フランジ24は、ライナー20のタブ34(環状タブ等)を受容するように形成された少なくとも1つの溝32(環状溝として示す)を含み得る。この構造は、ボス16を圧力容器10に固定し、ボス16とライナー20との間の境界62において密閉を提供する。
【0007】
圧力容器10を形成する方法は、ボスをマドレル上に取付けること、及び、ライナー20用の流体ポリマー材料が、フランジ24の周りに、そして、ボス16の溝32内に流れることを可能にすることを含む。ライナー材料は、その後、固化し、それにより、フランジ24に隣接するライナーの部分、及び、溝32内に受取られるタブ34を形成する。ライナー20は、それにより、ボス16と機械的に連結される。したがって、極端な圧力条件下でも、ボス16からのライナー20の分離が防止される。
【0008】
例示的な実施形態において、シェル18は、券回式繊維から形成され、ライナー20(また場合によっては、同様にボス16のフランジ24の一部分)を囲む。例示的な方法において、繊維用の吐出ヘッドは、繊維をライナー20上に所望のパターンで巻付けるように移動する。圧力容器10が、球状ではなく円柱状である場合、繊維券回は、実質的に長手方向(螺旋)及び円周方向(フープ)のラップパターンの両方で通常適用される。この券回プロセスは、幾つかの因子、例えば、樹脂含量、繊維構成、券回張力、及びライナー20の軸に対するラップのパターンによって規定される。例示的な圧力容器の形成に関連する詳細は、参照によって組込まれる「Filament Winding Process and Apparatus」と題する米国特許第4,838,971号に開示される。
【0009】
ライナー20は、典型的な動作条件下でガスバリアを提供するが、このタイプの圧力容器10の設計は、圧力容器10の加圧下でガスがライナー20内に拡散する現象を生じる。圧力容器10の減圧が起こると、このガスは、ライナー20から出て、ある場合には、ライナー20とシェル18との間の境界60内に、又は、更にある場合には、ライナー20とボス16との間の境界62内に拡散する。ライナー20を内側に膨張させ、ライナー20を引き延ばす可能性があるガスのポケットが形成され得る。更に、ライナー20とシェル18との間の境界60内にあるガスは、ライナー20とシェル18との間の望ましくない分離を促進する可能性がある。同様に、減圧すると、ライナー20とシェル18との間に捕捉されたガスは、高圧時に、シェル18内の微小クラックを通して、突然に排出され得る。比較的突然のガスの排出は、実際には圧力容器10が定常リークを全く示さないときに、リーク検出器を作動させる可能性がある。更に、ライナー20とシェル18との間に捕捉されたガスは、ライナー20とボス16との間の境界62まで移動し得、それにより、ライナー20とボス16との間の接続を弱める場合がある。
【0010】
[概要]
一態様において、内部環境を有する圧力容器が開示され、圧力容器は、シェル、ライナー、及びボスを含む。ライナーは、シェル内に位置決めされ、内部環境を画定する。ボスは、シェルとライナーとの間の第1の境界に位置する。ボスは、空洞、及び、空洞内に位置する放出構造を含む。空洞は、ライナーとボスとの間の第2の境界に位置し、空洞は、内部環境と連通するボスの内部表面に位置する。ガス放出経路は、第1の境界から放出構造を通り、圧力容器の内部環境に入るように画定される。
【0011】
別の態様において、本開示は、圧力容器用のボスを述べ、ボスは、ポート、フランジ、空洞、及びガス放出構造を含む。ポートは、圧力容器の外部環境と圧力容器の内部環境との間の流体連通を可能にするように構成される。フランジは、ポートから半径方向に外側に延在し、フランジは、外部側及び内部側を含む。空洞は、フランジの内部側に位置する。ガス放出構造は空洞内に位置する。
【0012】
更に別の態様において、圧力容器内で使用するためのボスを製造する方法は、金属部品を焼結することで、金属部品が、流体が焼結された当該金属部品を通過することを可能するが、溶融ポリマー材料が焼結された当該金属部品に入るのを制限する、多孔性を有するようにすること、及び、焼結された金属部品をボスの対応する空洞に挿入することを含む。
【0013】
本開示は、その種々の組合せで、装置又は方法の形態において、以下の条項のリストによって同様に特徴付けられても良い:
1. 内部環境を有する圧力容器であって、
シェルと、
前記シェル内に位置決めされ、前記内部環境を画定するライナーと、
前記シェルと前記ライナーとの間の第1の境界に位置するボスとを含み、前記ボスは、
前記ライナーと前記ボスとの間の第2の境界にある空洞であって、前記内部環境と連通する前記ボスの内部表面に位置する空洞、及び、
前記空洞内に位置する放出構造を含み、ガス放出経路は、前記第1の境界から、前記放出構造を通り、前記圧力容器の前記内部環境に入るように画定される、圧力容器。
【0014】
2. 前記放出構造は、焼結金属を含む、条項1に記載の圧力容器。
3. 前記放出構造は、前記ライナーの材料が前記放出構造に入るのを抑制しながら、ガスが前記放出構造を通過することを可能にする多孔性を有する、条項1又は2に記載の圧力容器。
【0015】
4. 前記放出構造は環状形状を有する、条項1〜3のいずれか1項に記載の圧力容器。
5. 前記空洞は、前記放出構造の前記環状形状に対応する補足的な環状形状を含む、条項4に記載の圧力容器。
【0016】
6. 前記放出構造は、放出構造のセットのうちの1つである、条項1〜5のいずれか1項に記載の圧力容器。
7. 前記空洞は、空洞のセットのうちの1つであり、前記空洞のセットにおける各空洞は、前記放出構造のセットにおける前記放出構造の1つの形状に対応するように構成される、条項6に記載の圧力容器。
【0017】
8. 前記空洞のセットにおける前記空洞は、円周方向に互いから等間隔に離間する、条項7に記載の圧力容器。
9. 圧力容器用のボスであって、
前記圧力容器の外部環境と前記圧力容器の内部環境との間の流体連通を可能にするように構成されるポートと、
前記ポートから半径方向に外側に延在し、外部側及び内部側を含むフランジと、
前記フランジの前記内部側に位置する空洞と、
前記空洞内に位置するガス放出構造とを含む、ボス。
【0018】
10. 前記ガス放出構造は焼結金属を含む、条項9に記載のボス。
11. 前記ガス放出構造は、溶融ポリマー材料が前記ガス放出構造に入るのを抑制しながら、ガスが前記ガス放出構造を通過することを可能にする多孔性を有する、条項9〜10のいずれか1項に記載のボス。
【0019】
12. 前記ガス放出構造は環状形状を有する、条項9〜11のいずれか1項に記載のボス。
13. 前記空洞は、前記ガス放出構造の前記環状形状に対応する補足的な環状形状を含む、条項12に記載のボス。
【0020】
14. 前記放出構造は、放出構造のセットのうちの1つである、条項9〜13のいずれか1項に記載のボス。
15. 前記空洞は、空洞のセットのうちの1つのであり、前記空洞のセットにおける各空洞は、前記放出構造のセットにおける前記放出構造の1つの形状に対応するように構成される、条項14に記載のボス。
【0021】
16. 前記空洞のセットにおける前記空洞は、円周方向に互いから等間隔に離間する、条項15に記載のボス。
17. 圧力容器内で使用するためのボスを製造する方法であって、
金属部品を焼結することで、前記金属部品が、ガスが焼結された前記金属部品を通過することを可能にするが、溶融ポリマー材料が焼結された前記金属部品に入るのを制限する多孔性を有するようにすること、及び、
焼結された前記金属部品を、前記ボスの対応する空洞に挿入することを含む、方法。
【0022】
18. 前記対応する空洞を機械加工することを更に含む、条項17に記載の方法。
19. 前記ボスは、前記ボスの外部側と前記ボスの内部側を接続するポートを含み、前記機械加工は、前記ボスの前記内部側の表面を機械加工することを含む、条項18に記載の方法。
20. 前記ボスは、前記ポートから半径方向に外側に延在し、外部側及び内部側を含むフランジを含み、前記機械加工は、前記フランジの前記内部側の表面を機械加工することを含む、条項19に記載の方法。
【0023】
本概要は、概念を単純化された形態で紹介するために提供され、その概念は以下の詳細な説明でさらに述べられる。本概要は、開示される又は特許請求される主題の重要な特徴又は基本的な特徴を特定することを意図されず、また、開示される又は特許請求される主題のそれぞれの開示される実施形態又は全ての実施態様を述べることを意図しない。具体的には、一実施形態に関して本明細書で開示される特徴は、別の実施形態に同等に適用可能であることができる。更に、本概要は、特許請求される主題の範囲を決定するときの補助として使用されることを意図されない。説明が進むにつれ、多くの他の新規な利点、特徴、及び関係が明らかになるであろう。以下に続く図及び説明は、例証的な実施形態をより詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
開示される主題は、添付図面を参照して更に説明される。図面において、同様の構造又はシステム要素は、いくつかの図面を通して同様の参照番号で参照される。
【
図2】
図1のライン2−2に沿って切取った
図1の圧力容器の一端の部分断面側面図であり、典型的なボス、ライナー、及びシェル組立体を示す。
【
図3】
図1及び2の圧力容器のボスの半径方向斜視断面図である。
【
図4A】第1の例示的な放出構造を有する本開示の第1の例示的なボスの半径方向斜視断面図である。
【
図5】
図4Bのライン5−5に沿って切取った
図4A及び4Bのボスを含み、ライナー及びシェルを含む圧力容器の上半分の部分断面図である。
【
図6A】第2の例示的な放出構造を有する本開示の第2の例示的なボスの半径方向斜視断面図である。
【
図7】
図6Bのライン7−7に沿って切取った
図6A及び6Bのボスを含み、ライナー及びシェルを含む圧力容器の上半分の部分断面図である。
【
図8A】第3の例示的な放出構造を有する本開示の第3の例示的なボスの半径方向斜視断面図である。
【
図9】
図8Bのライン9−9に沿って切取った
図8A及び8Bのボスを含み、ライナー及びシェルを含む圧力容器の上半分の部分垂直断面図である。
【
図10】第4の例示的な放出構造を有する本開示の第4の例示的なボスを含み、ライナー及びシェルを含む圧力容器の上半分の半径方向部分断面図である。
【
図11】第5の例示的な放出構造を有する本開示の第5の例示的なボスを含み、ライナー及びシェルを含む圧力容器の上半分の半径方向部分断面図である。
【
図12】圧力容器を製造する例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記で特定した図は、開示される主題の1つ又は複数の実施形態を述べるが、本開示において述べたように、他の実施形態も考えられる。全ての場合に、本開示は、開示される主題を、制限ではなく代表として提示する。本開示の原理の範囲内に入る多数の他の修正形態及び実施形態が、当業者によって考案され得ることが理解されるべきである。 図は一定比例尺に従って描かれていない場合がある。具体的には、いくつかの特徴は、明確にするために、他の特徴に対して拡大されうる。特に、「内部の(interior)」、「外部の(exterior)」、「上方に(above)」、「下方に(below)」、「上に(over)」、「下に(under)」、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「側面(side)」、「右(right)」、「左(left)」等の用語が使用される場合、これらの用語が単に説明を理解することを容易にするためにだけ使用されることが理解される。構造は、別の向きに配置され得ると考えられる。
【0026】
[詳細な説明]
本開示は、圧力容器において使用するための、例示的な放出構造、及び、こうした放出構造を生成するための方法を述べる。ガス放出構造は、圧力容器のボス内に組み込まれ得、例示的な構造は、圧力下で、ボスからライナーの分離及び/又はシェルからライナーの分離を防止する。ガス放出構造は、ライナーとライナーに繋がるシェルの内部表面との間に捕捉されたガス等といった、ライナーとシェル(又はボス)との間に捕捉されたガスの放出を可能にする。本開示は、一態様において、例示的なガス放出構造のうちの少なくとも1つを、圧力容器10のボス16と組合せることに関する。幾つかの実施形態において、放出構造は、ボスの対応する空洞内に位置決めされる差し込み物又は挿入物として構成される。例示的なガス放出構造のそれぞれは、ライナー20とシェル18(又はボス16)との間に蓄積するガスが、圧力容器10の内部環境17に放出されることを可能にする特徴を有する。ボス16のポート(ポート26等)が開口している場合、圧力容器10の内部環境17からのガスは、圧力容器10の外部の外部環境19に放出され得る。例えば、
図4A及び5に示すように、第1の例示的な放出構造28aは、シェル18とライナー20との間の境界60から圧力容器10の内部の環境17へと、ガスを放出することができる経路54を提供する。
【0027】
図3は、ボス16内に組み込まれた例示的な放出構造のうちの1つが設けられていない従来のボス16を示す。ボス16は、ポート26(穿孔されている)を有するネック22を含み、ポート26は、圧力容器10の内部環境17と圧力容器10の外部の環境19との間の流体連通を可能にする。ポート26は、長手方向軸36を有する。ボス16は、ポート26から半径方向に外側に延在し、遠位縁46で終端するフランジ24(環状フランジとして示す)を有し得る。例示的な実施形態において、フランジ24は、対応しかつ相補的な構成を有するライナー20のタブ34を受容する溝32(環状溝として示す)を有する。機械的連結インターロック(すなわち、分離が構造的に抑制される要素)が示されるが、機械的に、摩擦的に、又は化学的に(例えば、接着剤の使用によって)、ライナー20をボス16に固定する他の方法が使用され得ることが考えられる。幾つかの実施形態において、ライナー20の一部分35が、
図1、10、及び11に示すように、フランジ24の外部側38を覆って延在して、ライナー20及びボス16を接続するのを補助することが記される。
【0028】
図4Aは、第1の例示的な放出構造28aがボス16aの放出構造受容空洞27a内に嵌合した状態の、第1の例示的なボス16aの半径方向斜視断面図である。
図4Bは、第1の例示的なボス16aの内部端面図である。
図5は、
図4Bのライン5−5に沿って切取った第1の例示的なボス16aを含むと共に、ライナー20及びシェル18を含む、圧力容器10aの部分断面図である。
【0029】
ライナー20は、ガスバリアとして役立ち、内部環境17を画定する。しかし、上記で論じたように、幾つかの高圧用途において、ガスは、望ましくないことには、ライナー20を通り、ライナー20とシェル18との間の境界60へと拡散し得る。例示的な実施形態において、第1の例示的な放出構造28a―及び、本明細書で述べる任意の他の例示的な放出構造−は、容器10の内部環境17をライナー20とシェル18との間の境界60に流体接続する微小放出チャネルを有し得る。例示的な放出構造は、放出経路54を設けることによって、ライナー20を通りライナー20とシェル18との間の少なくとも境界60内に浸透してしまうガスが捕捉されることを防止するように構成される。放出経路54は、境界60からの最小ガス流動抵抗の経路を画定する。
図5に示すように、ポケット50内のガスは、ライナー20又はシェル18の材料を通るのに比べて、境界60に沿ってより容易に移動する。そのため、ガスは、ポケット50から境界60に沿って、ライナー20とボス16aとの間の境界62へと移動する。放出構造28aを格納する空洞27aは、境界62に沿う場所でかつボス16aの内部表面31に位置決めされる。空洞27a、したがって、放出構造28aは、内部環境17と連通するボス16aの内部表面31に位置する。ライナー20とボス16aとの間の材料接合強度は、通常、シェル18とボス16aとの間の材料接合強度より弱いため、ガスは、一般に、境界62において示す経路54に沿って移動する。ライナー20又はボス16aの材料と比較して高いガス浸透性を有する放出構造28aに達すると、ガスは、放出構造28aを通り、内部表面30aから出て、圧力容器10aの内部環境17に入る経路54に流れる。そのため、放出経路54は、境界60から放出構造28aを通り、圧力容器10の内部環境17に入るように画定される。
【0030】
第1の例示的な放出構造28a―及び、本明細書で述べる例示的な任意の他の放出構造−は、例えば、アルミニウム、鋼、鉄、青銅、真ちゅう、又は、ポリマー、或いは複合材料等の、金属又は非金属材料、或いはその組合せで形成されることができる。金属材料は、放出構造28が焼結金属材料を含むように焼結され得る。例示的な放出構造28は、容器の製造中、ライナー20の材料が放出構造に入るのを抑制しながら、ガスが放出構造を通過することを可能にする多孔性及び/又は密度を有する。ライナー境界表面29において、放出構造28上へのライナー材料の浸透は存在し得るが、放出構造28内へのライナー材料の著しい浸透は防止される。本明細書で述べる放出構造28のうちの任意のものは、焼結した材料ブランクを、構造28用の所望の形状になるように機械加工することによって形成され得る。代替の例において、放出構造28は、ダイ又はモールドを金属粉末で充填し、その後、焼結させること等によって、所望の形状に形成され得る。一方法において、ボス内の空洞27は、材料粉末用のダイ又はモールドの少なくとも一部として役立ち、放出構造28は、ボス空洞27内で材料を原位置で焼結させることによって形成される。焼結は、焼結した材料内に孔を生成することで、放出構造内に微小放出チャネルを形成する。適したプロセスは、例えば、粉末鍛造、熱間又は冷間等方圧プレス、金属射出成形、電流支援焼結、及び、付加製造を含む。微小放出チャネルは、焼結プロセスによって例えば0.1〜1マイクロメートルの範囲の直径を含み得る。例示的な放出構造28は、約5%〜約15%の多孔性を有する。例示的な放出構造28は、約5.2グラム/立方センチメートル〜約7.9グラム/立方センチメートルの密度を有する。
【0031】
容器10aを製造する例示的な実施形態において、ボス16aは、第1の例示的な放出構造28aを受容するための放出構造受容空洞27aを含む、又は、空洞27aを備える。空洞27aは表面56aを含み得る。表面56aは、例えば、高温耐熱接着剤によって、又は、表面58aを表面56aに溶接することを含む他の手段によって、第1の例示的な放出構造28aの表面58aに接着され得る。例示的な実施形態において、放出構造28aは、放出構造28aを有するボス16aが、
図3のボス16と実質的に同じ構成を有するように凹部又は空洞27aを充填するように形成される。
【0032】
同様に、例示的な放出構造を形成する材料は、空洞が放出構造に適合するように形成される代わりに、ボスの放出構造受容空洞に適合するように形成され得る。ボスを製造する別の例示的な実施形態において、ボスの部分は、熱及び/又は化学物質(複数可)によって処理され得、それにより、ボスの部分は、第1の例示的な放出構造28aになる。この最後の例において、放出構造受容空洞は、ボス内に機械加工されない。
【0033】
第1の例示的な放出構造28a−及び、例示的な任意の他の放出構造−は、ライナー境界表面29a及び内部表面30a(圧力容器10の内部17を向く)を含み得る。例示的な実施形態において、ライナー境界表面29aは、溝32内にあり、それにより、ライナー境界表面29aは、ライナー20のタブ34に接触する。ライナー境界表面29aは、ライナー20とライナー境界表面29aとの間に捕捉されたガスが、第1の例示的な放出構造28aに入ることができるように構成され得る。放出構造28aに入った後、ガスは、放出構造28a内の微小放出チャネルを通って移動し得る。ガスは、内部表面30aにおいて放出構造28aを出て、圧力容器10の内部環境17に放出される。それにより、放出構造28aは、内部環境17を、ライナー20とシェル18との間の境界60に流体接続する。
【0034】
例示的な実施形態において、放出構造28aの内部表面30aは、第1の例示的なボス16aの内部表面31と同一平面上にある。内部表面30aは、圧力容器10の内部環境17を向く。例示的な実施形態において、内部表面30aは、ポート26の穴の表面41から離間する。内部表面30aは、ライナー20を容器に付加した後に、ガスが−ライナー20からの抵抗なしで−内部表面30aを出るように構成され得る(ガス移動経路54によって
図5に示す)。
【0035】
図4Aに示す例示的な実施形態において、第1の例示的な放出構造28aは、ボス16aの放出構造受容空洞27aの環状形状に対応する。図示するように、第1の例示的な放出構造28a−及び、例示的な任意の他の放出構造−は、溝32に少なくとも部分的に当接する。図示するように、第1の例示的な放出構造28aは、溝32の内側表面42、及び、溝32の外部部分44及び内部部分45の少なくとも一部を画定する。同様に、放出構造28aは、
図10に示すように、溝32の外側表面43への全経路で巻付くことができる。溝32の外部部分44における第1の例示的な放出構造28aの表面、溝32の内側表面42、及び溝32の内部部分45は、ライナー境界表面29aを画定する。放出構造28aは、溝32の内側表面42、外部部分44、及び内部部分45を少なくとも部分的に含むが、他の例示的な放出構造は、他の構成を有し得る。幾つかの例示的な実施形態が本明細書で示されるが、多くの他の変形が可能であると考えられる。
【0036】
図4A及び4Bに示すように、第1の例示的なボス16aの内部表面31は、フランジ24の内部表面、溝32、及び内側部分40を含む、起伏する表面輪郭を有する円形状を有する。
図4Bの内部図は、第1の例示的なボス16aの上記で述べた特徴のそれぞれが、それぞれの内部端において、円形状を有し、フランジ24の内部端が、溝32の内部端を囲み、溝32の内部端が、次に内側部分40aを囲み、内側部分40aがポート26を囲む。放出構造28が、同様に、溝32を持たないボス
16aの内部表面31上に設けられ得ると考えられる。
【0037】
図5に示す例示的な実施形態において、ガスポケット50は、ライナー20とシェル18との間の境界60に形成され、ライナー20の変形52(議論のために図が著しく誇張されている)をもたらす。ガス移動経路54で示すように、ガスは、ガスポケット50から、ライナー20とシェル18との間の境界60に沿って、ライナー20と第1の例示的なボス16aとの間の境界62へと、最小抵抗の経路をたどる。ガスは、その後、第1の例示的な放出構造28aとライナー20との間の境界29aへと移動し得る。ガスは、経路54で示すように、ライナー境界表面29aを介して放出構造28aのチャネルに入り、チャネルを通って容器の内部環境17へと移動する。経路54が容器10aの一部分上にのみ示されるが、こうした放出経路が、境界60の任意の場所に位置するガスポケットから、放出構造28aの任意の半径方向部分を通って位置し得ることが理解される。
【0038】
変形52は、膨らみ又はバブルを示すが、単に議論のためにそのように示されている。更に、変形52のサイズは、例証のために誇張されている。異なる量のガスは、ライナー20とシェル18との間の境界60の、及び/又は、ボス
16aとライナー20との間の境界62の任意の場所にて出る可能性があり、放出されることを許容されない場合、ライナー20の種々の変形52をもたらす。描かれた図は議論のために変形52を示すが、圧力容器10上に放出構造28を設けることが、こうした変形52の形成を実際に防止することになると考えられる。
【0039】
図6Aは、第2の例示的な放出構造28bを有する第2の例示的なボス16bの半径方向斜視断面図である。
図6Bは、第2の例示的なボス16bの内部側面図である。
図7は、
図6Bのライン7−7に沿って切取った第2の例示的なボス16b、ライナー20、及びシェル18を含む圧力容器の斜視断面図である。
図6A〜7に示す第2の例示的なボス16bは、第2の例示的な放出構造28bの形状が第1の例示的な放出構造28aの形状と異なることによる構造的差を除いて、
図4A〜5に示す第1の例示的なボス16aと同様である。
【0040】
示された実施形態において、放出構造28bは、同様な放出構造28bのセットのうちの1つであり、放出構造28bのそれぞれは、楔状体として構成される。各放出構造28bは、空洞27bであって、そのそれぞれの放出構造28bの形状に対応する形状を有する、空洞27b内に位置する。各空洞27bは、空洞27bのセットのうちの1つであり、空洞27bのそれぞれは、放出構造28bを格納する。例示的な実施形態において、放出構造28bのそれぞれは、実質的に三角柱の形態である。こうした形状は、溝32の少なくとも2つの面上にライナー境界表面29bを提供し、一方、同時に、ポート26の穴の表面41における放出構造28bの存在を減少させる。したがって、ポート26に近接するボス16bの強度は維持される。更に、放出構造28bの比較的大きな放出内部表面30bが設けられる。
【0041】
放出構造28bは、ボス16bの対応する放出構造受容空洞27b内に位置決めされて示される。4つの放出構造28bが示されるが、より多い又はより少ない楔状体が使用され得ると考えられる。例示的な実施形態において、実質的に三角形の形状は、ライナー境界表面29b、内部表面30b、及び、ライナー境界表面29b及び内部表面30bに関して実質的に斜辺であり得る表面58bを含む3つの表面によって境界が形成される。空洞27bは、表面56bを含み得る。表面56bは、例えば、高温耐熱接着剤によって、又は、表面58bを表面56bに溶接することによって、第2の例示的な放出構造28bの表面58bに接着され得る。
【0042】
図7に示すように、ライナー20とシェル18との間のポケット50内のガスは、放出経路54に沿って流れて、内部環境17内に排出する。経路54は、ライナー20とシェル18との間の境界60のポケット50で始まり、ライナー20とボス16bとの間の境界62へと続く。ガスは、その後、放出構造28bとライナー20との間の境界29bへと移動し得る。ガスは、ライナー境界表面29bを介して放出構造28bのチャネルに入り、チャネルを通って容器10bの内部環境17へと移動する。
【0043】
図8Aは、第3の例示的な放出構造28cを有する第3の例示的なボス16cの半径方向斜視断面図である。
図8Bは、第3の例示的なボス16cの内部側面図である。
図9は、
図8Bのライン9−9に沿って切取った第3の例示的なボス16c、ライナー20、及び、シェル18を含む圧力容器10cの斜視断面図である。
図8Aに示す第3の例示的なボス16cは、第3の例示的な放出構造28cの形状が放出構造28a、28bの形状と異なることによる構造的差を除いて、第1及び第2の例示的なボス16a、16bと同様である。第3の例示的な放出構造28cは、ボス16cの放出構造受容空洞27c内に嵌合する。第3の例示的な放出構造28cは、複数の円柱形状体のうちの1つであり、それぞれが、少なくとも2つの対向する端及び1つの円柱表面を有する。4つの放出構造28cが示されるが、より多い又はより少ない円柱形状体が使用され得ると考えられる。容器の内部環境を向く対向する端の一方は、内部表面30cを含む。円柱表面は、ライナー境界表面29cを含む部分を含む。空洞27cは表面56cを含む。表面56cは、例えば、高温耐熱接着剤によって、又は、表面58cを表面56cに溶接することによって、第3の例示的な放出構造28cの表面58cに接着され得る。
【0044】
図9に示すように、ライナー20とシェル18との間のポケット50内のガスは、放出経路54に沿って流れて、内部環境17内に排出する。経路54は、ライナー20とシェル18との間の境界60のポケット50で始まり、ライナー20とボス16cとの間の境界62へと続く。ガスは、その後、放出構造28cとライナー20との間の境界29cへと移動し得る。ガスは、ライナー境界表面29cを介して放出構造28cのチャネルに入り、チャネルを通って容器10cの内部環境17へと移動する。
【0045】
図10は、第4の例示的な放出構造28dを有する本開示の第4の例示的なボス16d、ライナー20d、及びシェル18を含む圧力容器の上半分の半径方向部分断面図である。第4の例示的なボス16dは、第4の例示的な放出構造28dが放出構造28aの形状と異なり、放出構造28dが、溝32の外側表面43を含んで、ボス16dの溝32に巻付くことを除いて、第1の例示的なボス16aと同様である。第4の例示的な放出構造28dは、ボス16dの放出構造受容空洞27d内に嵌合する。
【0046】
第4の例示的な放出構造28dは、一実施形態において、環状構造である。しかし、本明細書で示す概念が、同様に、複数の放出構造28b及びその変形に適用され得ると考えられる。そのため、
図6A〜7を参照すると、放出構造28bの変形が、溝32の外側表面43を含んで、ボス16bの溝32に巻付き得ると考えられる。
【0047】
図10に示すように、ライナー20dとボス16dのフランジ24との間のポケット50内のガスは、ライナー20dとボス
16dとの間の境界62のポケット50で始まる放出経路54に沿って流れることによって、内部環境17内に排出する。ガスは、その後、放出構造28dとライナー20dとの間の境界29dへと移動し得る。ガスは、ライナー境界表面29dを介して放出構造28dのチャネルに入り、チャネルを通って容器10dの内部環境17へと移動する。
【0048】
本圧力容器10dについて示される実施形態において、ライナー20dは、ボス16dのフランジ24の外部表面に同様に当接するように形成され、それにより、フランジ24の外部表面上に部分35を有する。ライナー
20dとシェル18との間の境界60で捕捉されたガス用の別の放出経路は、ライナー部分35の周りを進み、ライナー
20dとボス
16dとの間の境界62へと続く。ガスは、その後、放出構造28dのチャネルを通って容器
10dの内部環境17へと移動する。
【0049】
図11は、第5の例示的な放出構造28eを有する本開示の第5の例示的なボス16e、ライナー20e、及びシェル18を含む圧力容器の上半分の半径方向部分断面図である。第5の例示的なボス16eは、第5の例示的な放出構造28eが、ボス16cの放出構造受容空洞27cの位置と比較して、ボス16eの、異なって配置された実質的に円柱の放出構造受容空洞27e内に位置することを除いて、第3の例示的なボス16cと同様である。示される実施形態において、ボス16eの放出構造受容空洞27eは、溝32の外側表面43をさえぎるように位置する。圧力容器10eを形成する例示的な方法において、ライナー20eは、放出構造受容空洞27eを作成する前に、フランジ24の周りに形成され得る。空洞27eは、例示的な実施形態において、ボス16e内だけでなく、ライナー20eの部分内にも設けられる。したがって、放出構造28eの内部表面30eは、フランジ16eの内側部分表面40eと同一平面上にあり、内部環境17と流体連通状態にあるように構成される。
【0050】
図11に示すように、ライナー20eとボス16eのフランジ24との間のポケット50内のガスは、ライナー20eとボス
16eとの間の境界62のポケット50で始まる放出経路54に沿って流れることによって、内部環境17内に排出する。ガスは、その後、放出構造28eとライナー20eとの間の境界29eへと移動し得る。ガスは、ライナー境界表面29eを介して放出構造28eのチャネルに入り、チャネルを通って容器10eの内部環境17へと移動する。
【0051】
本圧力容器10eについて示される実施形態において、ライナー20eは、ボス16eのフランジ24の外部表面に同様に当接するように形成され、それにより、フランジ24の外部表面上に部分35を有する。ライナー20eとシェル18との間の境界60で捕捉されたガス用の別の放出経路は、ライナー部分35の周りを進み、ライナー
20eとボス16eとの間の境界62へと続く。ガスは、その後、放出構造28dのチャネルを通って容器10eの内部環境17へと移動する。
【0052】
第5の例示的な放出構造28eは、複数の円柱形状体のうちの1つであり、それぞれが、少なくとも2つの対向する端及び1つの円柱表面を有する。4つの放出構造28e(
図8Bに示す放出構造28cの配置と同様であるが、軸36から半径方向に更に離れて位置する)が考えられるが、より多い又はより少ない円柱形状体が使用され得ることが理解される。容器の内部環境17を向く対向する端の一方は、内部表面30eを含む。1つの円柱表面は、ライナー境界表面29eを含む部分を含む。
【0053】
例示的な実施形態において、本開示の例示的な放出構造の複数の本体は、楔状であれ、円柱形状であれ、他の別の形状であれ、本開示の例示的なボスの対応する空洞に挿入され得る。4つの放出構造28b、28c、28d、28eが各ボス16b、16c、16d、16eのそれぞれにおいて示されるが、より多数の又はより少数のものが使用され得ると考えられる。更に、空洞27は、ボス16の内部表面31上に示されたのとは異なって位置し得る。同様に、空洞27は、ボス16のポート26の周りの円周の周りに、等間隔で配置され得る又は配置され得ない場合がある。
【0054】
図12は、圧力容器10を製造する例示的な方法100を示す。容器10の製造において、ボス16の製造は、容器ライナー20及びシェル18の製造と別に終了し得る。例えば、放出構造(複数可)28を有するボスは、圧力容器を製造する他のステップの前に、予め作製され得る。例示的な実施形態において、放出構造28a、28b、28c、28d、28eを有するボス16a、16b、16c、16d、16eを有する圧力容器10a、10b、10c、10d、10eの製造は、放出構造28を持たない従来のボス16を有する圧力容器10の製造と同様であり得る。本明細書で述べる例示的なボス16a、16b、16c、16d、16eは、圧力容器を製造するための知られているプロセス及び予知可能なプロセスに適合するように予め作製され得る。
【0055】
例示的な方法100は、ボス16a、16b、16c、16d、16eの内部側(内部表面31の部分を含む等)に空洞(放出構造受容空洞27a、27b、27c、27d、又は27e等)を形成するステップ102を含む。例えば、空洞は、ボス16a、16b、16c、16d、16eの内部表面31における縁46とポート26との間の場所に、機械加工等で形成され得る。空洞は、対応するように形成された放出構造を受容するように形成され得る。例えば、環状空洞27aは、第1の例示的な放出構造28a等の環状構造を受容するために形成され得る。同様に又は代替的に、例えば、空洞は、第2の例示的な放出構造28b等の楔状構造、又は、例示的な放出構造28c、28e等のような円柱状構造を受容するために形成され得る。同様に、空洞は、空洞のセットが、円周方向に、好ましくは均等に、互いから離間するように(
図6A、6B、8A、及び8Bに示す等)、ボスの内部端部分に沿って複製され得る。
【0056】
代替的に、別の実施形態において、ボスのフランジの内部側の部分は、放出品質を持つように、熱、圧力、及び/又は化学物質によって等で処理され得る。これは、別個の放出構造を受容するための空洞を形成する代わりに、ボスの内部表面31上の位置で行われ得る。
【0057】
放出構造28用の特定の例示的な形状が、示された実施形態において示されるが、多くの他の構成が同様に適し得ると考えられる。特に適する構成は、ライナー20とボス16との間の境界62から圧力容器10の内部環境17への経路を提供する。外部環境19ではなく圧力容器10の内部環境17に放出する利点は、こうした内部放出が、おそらくはリーク検出器から誤った警報を生成しないということである。例示的な実施形態において、例示的な放出構造28は、ボス16の構造的完全性を維持しながら、効率的な放出経路54を提供するように構成される。放出構造28の材料が、密度が低く、多孔性が高く、ボス16の主材料ほどには強くない場合があり得るため、放出構造28は、幾つかの実施形態において、ポート26から離間する、及び/又は、他の放出構造28から離間する。こうした配置は、ボス16のより強い材料が放出構造28を囲むことを可能にする。放出構造28の数、形状、及び位置が、示されたものと異なり得ると考えられる。更に、複数の分離した放出構造28を有する実施形態において、示された実施形態は、特定のボス16の放出構造28のそれぞれが、各ボス16の他の放出構造28のそれぞれと同一であることを示す。しかし、所望される場合、異なる構成の放出構造28が、単一ボス16内で使用され得ると考えられる。
【0058】
図
12を参照すると、方法100は、ガスが焼結構造を通過することを可能にするが、ライナー材料が焼結構造に入るのを制限する多孔性及び/又は密度を有するように、放出構造を焼結するステップ104を含む。こうした焼結は、放出構造が、ボスの対応する空洞内に組み込まれる前に又は組み込まれた後に行われ得る。
【0059】
例示的な実施形態において、本明細書で述べる放出構造28のうちの1つの焼結は、粉末形態の金属又は他の材料を、ダイ、モールド、又は空洞になるように圧縮し、材料を融解点まで溶融することなく、熱及び/又は圧力によって材料の固体塊を形成するプロセスを含み得る。幾つかの実施形態において、放出構造28は、例えば、対応する空洞27を補完するように形成されたモールド内で形成され得る。他の実施形態において、空洞27は、ダイとして役立ち得、そのダイ内に焼結のために材料粉末が設置され、それにより、ボス16自身内で、原位置で放出構造28を形成する。焼結は、金属、セラミック、プラスチック、及び他の材料を使用することを含み得る。材料内の原子は、粒子の境界を通過して拡散し、粒子を共に融着させ、固体であるが多孔性のピースを作成する。焼結は、吸熱型ガス等の保護ガスを使用することによって大気圧下で行われ得る。金属による焼結は、所望の範囲の材料特性を生成するために後続の再処理を含み得る。密度、合金化、又は熱処理の変化は、放出構造28の物理的特性を変更し得る。青銅及びステンレス鋼は、高温耐熱を必要とする用途において特に適する。
【0060】
金属粉末等の粉末を使用する利点は、開始材料の純度及び均一性のレベルを制御することができるという利益を含む(作製プロセスのステップを低減し得る)。利益は、同様に、開始材料の粒径を制御できることを含む。これらの利点は、放出部品の製造が、部品の多孔性及び放出構造28の最終形状を制御することを可能にする。焼結用の粉末、特に、金属粉末の使用は、高圧及び広範囲の温度に耐えうる高強度材料の作製を可能にする。
【0061】
戻って図
12を参照すると、方法100は、放出構造が原位置で形成されない場合において、焼結した放出構造28をボスの対応する空洞27に挿入するステップ106を含み得る。例示的な実施形態において、挿入は、放出部品28を焼結し、空洞27を形成した後に行われる。更に、放出構造28は、ボス上に予め作製された空洞27内に嵌合するように機械加工され得る、又は、その逆も同様である。換言すれば、空洞27は、予め作製された放出構造28も同様に受容するように機械加工され得る。
【0062】
方法100は、同様に、圧力容器用のライナー20を、ライナー20が放出構造28の少なくとも一部分に接触するように設けるステップ108を含む。例示的な方法において、ボス16a、16b、16c、16d、16eは、マンドレル上に取付けられる。こうしたマンドレルは、通常、ライナー20がその周りで製造される造形品によって設けられる。溶融ライナー材料は、その造形品に塗布され、造形品を覆って形成され得る。ライナー材料が配置された後、ライナー材料は、幾つかの実施形態において、冷却等によって硬化する。ライナー20は、シェル18と共に、容器10a、10b、10c上にボス16a、16b、16c、16d、16eを固定する。ライナー20を形成する前に、焼結された放出部品28を設けることによって、容器10a、10b、10cの製造中にライナー20、シェル18、及び/又はボス16a、16b、16c、16d、16eの間に捕捉されたガスは、放出構造28を介して容器の内部環境17内に漏出し得る。
【0063】
本開示の主題が幾つかの実施形態を参照して述べられたが、本開示の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更が行われ得ることを当業者は認識するであろう。更に、一実施形態に関して開示される任意の特徴又は説明は、別の実施形態に適用可能であり、それに組み入れられ得、また、その逆も同様である。