(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854835
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】骨ねじ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/86 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
A61B17/86
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-6385(P2019-6385)
(22)【出願日】2019年1月17日
(62)【分割の表示】特願2016-524779(P2016-524779)の分割
【原出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2019-76755(P2019-76755A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】102013107170.8
(32)【優先日】2013年7月8日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポイカート アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー スベン
(72)【発明者】
【氏名】ラオシュマン ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ボスチチェック ブロネーク
【審査官】
家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−230528(JP,A)
【文献】
特表2002−531163(JP,A)
【文献】
米国特許第6565566(US,B1)
【文献】
特開2004−202226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56−17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎弓根スクリュ(2;3)であって、
雄ねじ(10)が設けられ、前記椎弓根スクリュ(2;3)を骨(20)内に固定するのに役立つスクリュシャフト(4)と、
前記スクリュシャフト(4)の近位端に設けられたスクリュ頭部(6)と、を備え、
近位スクリュシャフト部分(A)内の不完全ねじ部の領域において、ねじ外径(DA)とねじ谷径(DK)との比率が前記スクリュ頭部(6)に向かって増加し、
前記近位スクリュシャフト部分(A)に直接的に隣接する移行スクリュシャフト部分(B)において、前記ねじ外径(DA)と前記ねじ谷径(DK)との前記比率は、前記スクリュ頭部(6)に向かって減少し、前記ねじ外径(DA)と前記ねじ谷径(DK)との前記比率は、前記移行スクリュシャフト部分(B)が前記近位スクリュシャフト部分(A)に交わるところまで減少し、
前記移行スクリュシャフト部分(B)が前記近位スクリュシャフト部分(A)と中間スクリュシャフト部分(C)との間になるように配置されている前記中間スクリュシャフト部分(C)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)が一定のままであり、
前記移行スクリュシャフト部分(B)において、前記ねじ谷径(DK)が増加し、前記中間スクリュシャフト部分(C)から前記近位スクリュシャフト部分(A)まで前記ねじ外径(DA)が一定のままであることを特徴とする、椎弓根スクリュ(2;3)。
【請求項2】
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)の両方が増加し、前記ねじ外径(DA)が比例してより高い度合いで増加することを特徴とする、請求項1に記載の椎弓根スクリュ(2;3)。
【請求項3】
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)の両方が直線的又は指数関数的に増加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の椎弓根スクリュ(2;3)。
【請求項4】
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)が指数関数的に増加し、前記ねじ谷径(DK)が直線的に増加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の椎弓根スクリュ(2;3)。
【請求項5】
前記スクリュ頭部(6)及び前記スクリュシャフト(4)が別個の部品として形成され、互いに分離可能に連結され得ることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の椎弓根スクリュ(2;3)。
【請求項6】
前記スクリュ頭部(6)が、椎骨安定化システムの長手部材を固定するためのチューリップに連結され得ることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の椎弓根スクリュ(2;3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の骨ねじ、特に椎弓根スクリュに関する。
【背景技術】
【0002】
椎弓根スクリュは通常、骨折、腫瘍、炎症、変形、及び椎弓根スクリュ連結によって変性によりに引き起こされる不安定性が生じた場合における脊柱の背面安定化に役立つ。その際、椎弓根スクリュは、隣接する椎骨の椎弓根内に配置され、軸方向に上下に配置された椎弓根スクリュと、軸方向に延在する長手部材又はバーと、が、角度的に安定して連結される。そのような配置では、椎弓根スクリュ及び長手部材は椎骨安定化システムを構成する。
【0003】
椎弓根スクリュは、椎弓根を通って、横突起(processus transversus)と棘突起(processus spinosus)との間の椎体(corpus vertebrae)にねじ込まれる。この目的のために、椎弓根スクリュは通常、スクリュ頭部と、雄ねじが設けられた細長いスクリュシャフトと、を備える。スクリュ頭部は長手部材を固定するためにチューリップのように形成され、又はいわゆるチューリップを担持する。スクリュシャフトは椎弓根スクリュを椎骨内に固定するのに役立つ。
【0004】
スクリュシャフトの設計に関して、様々な形状が知られている。
【0005】
例として、円筒ねじを有し、谷径と、外径又はフランク径と、の両方が、スクリュシャフトの長手方向延出部全体にわたって一定のままであるスクリュが使用されている(
図4A参照)。これらのスクリュは、例えば、スクリュ頭部の位置を補正するためにスクリュを戻す場合でさえ、ほとんど影響を受けない非常に高い引抜強度を有する。一定の外径及び谷径の欠点は、横突起と棘突起との間の入口領域において、雄ねじによって骨に食い込むねじ山が、スクリュをさらにねじ込む場合にすり減ることがあり、場合によっては近位シャフト部分の領域の支持を低下させることである。さらなる欠点は、円筒ねじ、特に一定の谷径は、ねじフランク間において、椎骨内に存在する海綿骨材を圧縮することができないことである。
【0006】
さらに、ねじ外径及び谷径の両方がスクリュ先端部からスクリュ頭部まで一様に増加する、完全に円錐状のねじを備えるスクリュがあることも知られている。このスクリュ形状の利点は、スクリュが骨内に良好にとらえられ、近位シャフト部分でさえ骨にさらに食い込むのが見られることであり、このように、近位領域においても良好な支持が確保される。しかしながら、完全に円錐状のねじを備えるスクリュは、その後に微調整することができない。そうでなければ、わずかにだけスクリュを戻す場合でさえ、スクリュのねじフランクと、事前に半径方向に過度に広げられた骨のねじ山とが、全長にわたって接触しなくなるであろうからである。
【0007】
このため、コアは円錐状であり、ねじは円筒状になるように形成される、部分的に円錐状のねじを備えるスクリュが頻繁に使用される(
図7A参照)。円筒ねじは、高い引抜強度を確保する。谷径が次第に大きくなるために、海綿骨材に対する半径方向の応力がねじフランク間に生じ、前記骨材が圧縮されて支持が改善される。その上、部分的に円錐状のねじを備えるスクリュはまた、谷径が増加するため、谷径が一定のスクリュよりも高い疲労強度を有する。
【0008】
しかしながら部分的に円錐状のねじを備えるスクリュの場合には、ねじフランクが、スクリュ頭部に向かって次第に広く、また鈍くなる。このため、前記フランクは、スクリュシャフトの近位領域ではもはや切削効果を有さず、半径方向及び軸方向にねじ山のターンに押し付けられ、場合によっては近位領域でねじ山ターンを膨脹又は破裂させる。さらにこの場合、ねじフランクがねじ山ターンと接触しなくなる(軸方向に膨脹する)ので、わずかに後方へ回転することでスクリュが緩まり得る。
【0009】
これらの形状それぞれには長所及び欠点があるため、これらの形状の組合せ、例えば、円筒状外径と、円筒状谷径部分及び円錐状谷径部分が交互に並ぶコアと、を備えるスクリュなども知られている(
図5A及び
図6A参照)。
【0010】
上で既に述べたように、椎弓根スクリュの入口点は横突起と棘突起との間に位置し、次いで椎弓根を貫通して比較的狭い椎弓根の軸方向に延在し、椎体内へ入る。椎体の領域、及び入口点と椎弓根との間の領域には、主に軟質海綿骨材が存在するが、入口点の領域すぐの椎弓根の細い領域には高密度皮質骨材が存在し得る。これまでに知られているねじ形状のいずれも、椎骨のこの骨構造及び不均一な骨強度を充足しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、皮質骨シェル及び海綿骨コアを備える骨内に固定される場合に、最適な支持を確保する骨ねじ、特に椎弓根スクリュを提供することである。
【0012】
本目的は、請求項1の特徴によって達成される。有利なさらなる発展は、下位クレームの主題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による特に椎弓根スクリュである骨ねじは、スクリュシャフトと、スクリュシャフトの近位端に設けられたスクリュ頭部とを備える。スクリュシャフトには、骨ねじを骨内に固定するための1条又は多条セルフタッピング雄ねじが少なくとも部分的に設けられる。本構成では、近位スクリュシャフト部分、又は不完全ねじ部の領域におけるねじ外径とねじ谷径との比率が、スクリュ頭部に向かって増加する。
【0014】
これは、ねじ山ターンが不完全ねじ部の領域でより深くなり、骨材内にさらに深く食い込むことを意味する。スクリュ頭部に向かって、ねじ山はさらに「より積極的(aggressiver)」になり、特に最後のターンにおいてさえ非常に良好なグリップ性能を有する。
【0015】
それは特に、スクリュが骨に入る領域、すなわち高密度皮質シェルの領域に位置する近位ねじ部分又は不完全ねじ部である。鋭いねじフランクが前記皮質骨材に次第に深く食い込むことにつれ骨内へのスクリュの固定力が高められる。
【0016】
椎弓根スクリュの近位スクリュシャフト部分は、中間及び遠位スクリュシャフト部分とは対照的にかなり細い椎弓根の寸法に限定されないため、不完全ねじ部の本発明による設計は、とりわけ椎弓根スクリュに適用してもよい。入口点と椎弓根との間の領域には利用可能なより大きい空間があり、その結果、請求項1に示唆するように、上述の利点を達成するためにこの領域でねじ外径とねじ谷径との比率を増加させることができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、近位スクリュシャフト部分、及び不完全ねじ部の領域において、ねじ外径及びねじ谷径の両方は増加し、ねじ外径についてはより高い度合いで比例して増加する。
【0018】
谷径が増加することによって、入口点と椎弓根との間の領域で主に海綿状である、ねじフランク間の骨材に、スクリュが半径方向の応力をかけて、それを圧縮し、その結果、ねじフランクによって(形状ロック方式で)だけでなく、前記半径方向の応力(圧力ばめ方式で)によっても、骨材内にスクリュが良好に固定される。
【0019】
谷径が大きくなるにつれ、スクリュの疲労強度も高まる。
【0020】
ねじ外径とねじ谷径との比率がスクリュ頭部に向かって増加するということから、谷径の増加にかかわらず、ねじ山の最後のターンでさえ、その鋭さ及び切れ具合が続き、上記で説明した先行技術における部分的に円錐状のねじの場合と同じように広く、また鈍くはならないことが確実となる。
【0021】
したがって本発明による形状は、円筒状の不完全ねじ部の利点を、部分的に円錐状の不完全ねじ部の利点と組み合わせる。すなわち、一方では、最後のねじ山ターンまで鋭いねじフランクが皮質骨シェルに食い込んで固定力が向上し、他方では、スクリュをねじ込む間、谷径が増加することによって(海綿状)骨材が圧縮される。
【0022】
本発明の一態様によれば、近位スクリュシャフト部分において、ねじ谷径は円筒状で一定であるが、ねじ外径は前記部分において増加する。このため、ねじ外径とねじ谷径の比率がスクリュ頭部に向かって増加する。
【0023】
本発明の一態様によれば、近位スクリュシャフト部分において、ねじ外径及びねじ谷径の両方は直線的に増加する。言いかえれば、ねじ外径及びねじ谷径の両方は円錐状に増加する。一方では、この形状はより容易に製造することができる。他方では、近位ねじ部分はトルクを変えずに骨にねじ込むことができる。
【0024】
本発明の一態様によれば、近位スクリュシャフト部分において、ねじ外径及びねじ谷径の両方は指数関数的に増加する。言いかえれば、ねじ外径及びねじ谷径は、スクリュ頭部に向かって次第に大きくなる増加を示す。その結果、入口点の領域に位置するまさにこの近位ねじ端部が、高密度皮質骨材に特に深く食い込み、特に良好な固定を行う。
【0025】
本発明の一態様によれば、近位スクリュシャフト部分において、ねじ外径は指数関数的に増加し、ねじ谷径は直線的に増加する。言いかえれば、特に入口点の領域に位置する近位ねじ端部において、ねじ外径は谷径と比べて著しく大きい増加を示し、ねじ深さを大きく増加させる。これにより、皮質骨シェル内に良好に固定することができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、中間スクリュシャフト部分において、ねじ外径及びねじ谷径は一定のままである。骨の断面が椎弓根の領域ではあまり大きくなく、スクリュ径を大きく変えることができないため、この形状は、椎弓根スクリュの要件を特に満たす。
【0027】
本発明の一態様によれば、中間スクリュシャフト部分から近位スクリュシャフト部分までの移行領域において、ねじ谷径は増加するが、ねじ外径は一定のままである。言いかえれば、ねじ外径とねじ谷径との比率は、移行領域においてまず減少した後に、近位スクリュシャフト部分において増加する。移行領域は、主に軟質海綿骨材、及び皮質の少ない骨材が見られる、入口点と椎弓根との間の領域に実質的に位置するため、全体としてのスクリュ径を増加させずに谷径を増加させることによって海綿骨材に半径方向の応力をかけて、それを圧縮することができる。したがって、鋭いねじフランクは特に高密度皮質骨材に対して必要であるため、ねじ外径又は直径比の増加は、皮質骨シェルの領域に位置する最後のねじ山ターンに限定され得る。
【0028】
本発明の一態様によれば、遠位スクリュシャフト部分において、ねじ外径及びねじ谷径はスクリュ先端部に向かって減少する。ねじ山がスクリュ先端部まで延在するため、大掛かりなドリル加工を予め行うことなく、また高圧を使用することなく、骨材にスクリュをねじ込むことができる。
【0029】
本発明の一態様によれば、スクリュ頭部及びスクリュシャフトは別個の部品として形成され、互いに連結され得る。これにより、それぞれ個々の部品の製造が単純になり、それぞれの構成要素の自由度及び適応性が高まる。
【0030】
本発明の一態様によれば、スクリュ頭部は、椎骨安定化システムの長手部材を固定するためのチューリップがスクリュの長手軸に対して枢動及び/又は回転され得るように、チューリップに連結されもよい。したがって、本発明による骨ねじはまた、多軸椎弓根スクリュの一部であってもよい。
【0031】
本発明について、添付図面を参照しながら、いくつかの実施形態及び比較例に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】本発明の第1の実施形態による椎弓根スクリュの断面図及び側面図を示す。
【
図1B】本発明の第1の実施形態による椎弓根スクリュの断面図及び側面図を示す。
【
図1C】ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるねじ込まれた状態の椎弓根スクリュを含む椎骨の断面図を示す。
【
図3A】本発明の第2の実施形態による椎弓根スクリュの断面図及び側面図を示す。
【
図3B】本発明の第2の実施形態による椎弓根スクリュの断面図及び側面図を示す。
【
図3C】ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【
図4A】円筒ねじを備える従来の椎弓根スクリュにおける断面図及び側面図を示す。
【
図4B】円筒ねじを備える従来の椎弓根スクリュにおける断面図及び側面図を示す。
【
図4C】ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【
図5A】円筒ねじ、第1の円筒状ねじ谷径部分、円錐状ねじ谷径部分、及び第2のねじ谷径部分を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図5B】円筒ねじ、第1の円筒状ねじ谷径部分、円錐状ねじ谷径部分、及び第2のねじ谷径部分を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図5C】それらに対応する、ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【
図6A】円筒ねじ、第1の円筒状ねじ谷径部分、第1の円錐状ねじ谷径部分、第2の円筒状ねじ谷径部分、及び第2の円錐状ねじ谷径部分を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図6B】円筒ねじ、第1の円筒状ねじ谷径部分、第1の円錐状ねじ谷径部分、第2の円筒状ねじ谷径部分、及び第2の円錐状ねじ谷径部分を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図6C】従来の椎弓根スクリュに対応する、ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【
図7A】円筒状ねじ外径及び円錐状ねじ谷径を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図7B】円筒状ねじ外径及び円錐状ねじ谷径を備える従来の椎弓根スクリュを示す。
【
図7C】従来の椎弓根スクリュに対応する、ねじの長さにわたるねじ外径とねじ谷径との比率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1A及び
図1Bはそれぞれ、本発明による骨ねじ、すなわち椎弓根スクリュ2の断面図及び側面図を示す。椎弓根スクリュ2は細長いスクリュシャフト4を備える。スクリュシャフト4の近位端にはスクリュ頭部6が設けられている。スクリュシャフト4の遠位端はスクリュ先端部8に向かって円錐状に先細りになる。
【0034】
スクリュシャフト4には、雄ねじ10が設けられる。ここで、図示した実施形態は、セルフタッピング1条ねじを示す。代替案として、2条又は多条ねじを設けることも可能である。
【0035】
スクリュシャフト4と一体形成されるスクリュ頭部6は、球面12と、六角穴又は別の形状を備える軸方向の凹部14とを有する。別の形状は、対応する工具で骨材に椎弓根スクリュ2をねじ込むことができる形状である。しかしながら、スクリュ頭部6及びスクリュシャフト4はまた、ツーピース設計として実現してもよい。
【0036】
スクリュ頭部6のボール頭形状は、いわゆるチューリップの多軸位置合わせに役立つ。椎弓根スクリュ2はチューリップと協働する。チューリップは、それを介していくつかの椎弓根スクリュを椎骨安定化システムの枠組み内で連結し得る支持体を受けて固定するのに役立つ。
【0037】
以下に、雄ねじ10の設計について詳細に述べる。
【0038】
雄ねじ10は、複数のスクリュシャフト部分A〜Dにわたって延在し、スクリュシャフト部分A〜Dはそれぞれ、異なるねじプロファイルと、ねじ外径D
A及びねじ谷径D
Kの異なる比率と、を有する。これらの異なるスクリュシャフト部分A〜Dを、一方では
図1Bに示し、他方では(スケールに忠実ではない)
図1Cの図に示す。
【0039】
スクリュシャフト4は、ねじ外径D
Aもねじ谷径D
Kも変化せず、一定のままである比較的長いスクリュシャフト部分Cを備える。一定の円筒ねじを有する前記シャフト部分Cの遠位側にはシャフト部分Dが設けられ、シャフト部分Dでは、スクリュ先端部8へ向かう方向のねじ外径D
Aがねじ谷径D
Kまでまず減少し、又は次第に細くなった後に、谷径D
Kがスクリュ先端部8に向かって先細りする。
【0040】
移行領域Bにおいて、ねじ外径D
Aは変化せずに、ねじ谷径D
Kがスクリュ頭部6に向かってまず増加し、それによってねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が対応して減少する。その後、近位ねじ部分又は不完全ねじ部分Aにおいて、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が再び増加する。より正確には、不完全ねじ部分Aの領域において、ねじ外径D
A及びねじ谷径D
Kの両方は増加し、ねじ外径D
Aは、幾分より高い度合いで増加する。
【0041】
ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が増加する場合、これは、ねじがより深くなり、ねじフランクがより高くなること、及び、このゾーンにおいて、椎弓根スクリュ2が骨材内により深く食い込み得ることを意味する。逆に、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が減少する場合、部分B及び部分Dの場合のように、ねじ10は全体としてより浅く、かつより鈍くなる。
【0042】
図1A及び
図1Bには、ねじ外径及びねじ谷径によって描かれた包絡線を2点破線によって示す。ねじ外径D
A及びねじ谷径D
Kのプロファイルは、
図1A及び
図1Bから分かるように、曲線状に、例えば指数関数的に上昇してもよい。これの代替案として、少なくとも不完全ねじ部ゾーン、すなわちスクリュシャフト部分A、又は近位ねじ端部において、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が、スクリュ頭部6に向かって確実に増加する傾向にある限り、2つの径D
A及びD
Kの増加は直線状もしくは円錐状に進んでもよく、又はそれらのうちの一方が指数関数的に増加し、他方が直線的に増大してもよい。
【0043】
本発明による椎弓根スクリュ2の有利な効果について、椎骨20にねじ込まれた状態の椎弓根スクリュ2を示す
図2に図示する。椎骨20は、椎体22と、椎孔26を囲む椎弓24とを備える。椎骨20は、棘突起28と、両側にそれぞれ1つの横突起30とをさらに備える。椎弓根スクリュ2は、いわゆる椎弓根32を介して棘突起28と横突起30との間の椎体22にねじ込まれ、このようにして椎骨20内に固定される。
【0044】
図2から、椎骨20は皮質骨34からなる高密度の硬質シェルを有し、内部、特に椎体22の領域では軟質海綿骨36からなることがさらに分かる。中間及び遠位スクリュシャフト部分の領域におけるスクリュ形状は、椎弓根32の比較的薄い寸法によって実質的に制限される。骨は椎弓根の領域ですぼまるため、椎弓根32は主に皮質骨材34からなる。
【0045】
図2からさらに分かるように、椎弓根スクリュ2は、入口点38から椎体22までの異なる骨層を貫通する。椎骨22は、入口点38の領域では皮質骨材34を備え、入口点38と椎弓根32との間の領域では主に海綿骨材36を備え、椎弓根32の狭窄領域では主に皮質骨材34からなり、椎体22の領域では再び海綿骨材36を備える。
【0046】
不完全ねじ部の領域、又はスクリュシャフト部分Aでは、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が増加することにより椎弓根スクリュ2が深く鋭いねじフランクを有するため、前記フランクは、その領域に存在する皮質骨34に非常に良好に食い込み、皮質骨34内に固定され得る。
【0047】
不完全ねじ部分Aと中間スクリュシャフト部分Cとの間の移行領域Bでは、椎弓根スクリュ2が、スクリュ頭部6に向かってより大きくなる谷径D
Kを有する。その結果、椎弓根スクリュ2のねじ込み中に谷径D
Kが次第に大きくなることによる半径方向の応力によって、入口点38と椎弓根32との間に存在する海綿骨材36が圧縮され、それによって椎弓根スクリュ2は、この領域でさえ海綿骨材36内に良好なグリップを達成する。
【0048】
中間スクリュシャフト部分Cでは、椎弓根スクリュ2は、ねじ外径D
Aねじ谷径D
Kが変化しない円筒ねじを有するため、椎弓根スクリュ2はまた、椎弓根32の皮質骨材34に非常に良好に食い込み、皮質骨材34内に固定され得る。
【0049】
したがって、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が異なる、異なる部分nA、B、C及びDを備えた椎弓根スクリュ2は、椎骨の不均一な骨強度を補償し、このようにして椎骨20内への固定を改善する。
【0050】
図3A及び
図3Bは、本発明による骨ねじ、すなわち第2の実施形態による椎弓根スクリュ3の断面図及び側面図を示す。第1の実施形態の椎弓根スクリュ2と同様に、椎弓根スクリュ3は雄ねじ10を有する細長いスクリュシャフト4を備える。スクリュシャフト4の近位端にはスクリュ頭部6が設けられている。スクリュシャフト4の遠位端はスクリュ先端部8に向かって円錐状に先細りになる。以下に、第1の実施形態との違いのみ説明する。
【0051】
図3Cは、ねじの長さにわたるねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの(スケールに忠実ではない)比率を示す。
図3Cの図から、比率は、移行領域Bでは変化せず、不完全ねじ部分Aの領域で単に増加することが分かる。スクリュシャフト部分B及びCでは、ねじ谷径D
K及びねじ外径D
Aの両方は一定である。不完全ねじ部分Aの領域においては、ねじ谷径D
Kは引き続き一定のままであるが、ねじ外径D
Aは特に連続的にスクリュ頭部6に向かって増加する。このため、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kの比率がスクリュ頭部6に向かって増加する。その結果として、第2の実施形態による椎弓根スクリュ3もまた、入口点38の領域における皮質骨34内に、同様に良好に固定される。
【0052】
第2の実施形態では、不完全ねじ部の領域において、ねじ谷径D
Kは一定のままであり、ねじ外径D
Aは増加する。しかし、別の(図示していない)実施形態によれば、不完全ねじ部分Aの領域において、ねじ外径D
A及びねじ谷径D
Kは同時に増加することが可能である。言いかえれば、円錐状谷径D
K及び円錐状外径D
Aは、円筒状径部分Bまで同時に延在する。この場合、ねじ外径D
Aは、ねじ谷径D
Kより高い度合いで増加する。その結果、この場合でも、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率がスクリュ頭部6に向かって増加し、入口点38の領域における皮質骨34内への良好な固定をもたらす。結果として、図に示していない本実施形態でのねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率は、第2の実施形態(
図3C参照)と定性的に同様のプロファイルを有する。
【0053】
比較のために、
図4、
図5、
図6及び
図7は、冒頭に説明した従来の椎弓根スクリュのねじプロファイルを示す。
【0054】
図4A〜
図4Cは、椎弓根スクリュ40、及びそれに対応する、シャフト全長にわたる変化しない円筒ねじの径についてのねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率のプロファイルを示す。
図4Cから明らかなように、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率は変化しない。そのような椎弓根スクリュ40は、椎骨20の様々な生体力学的特性を満たさない。
【0055】
図5A〜
図5Cは、椎弓根スクリュ50の対応する図を示す。椎弓根スクリュ50は、シャフト全長にわたって一定のねじ外径D
Aを有するが、ねじコアは2つの円筒状部分A及びCと、それらの間の円錐状部分Bとを備える。
図5Cの図から、ねじ深さが小さくなるに伴って、ねじ外径とねじ谷径との比率が、スクリュ頭部に向かってかなり減少することが分かる。
【0056】
図6A〜
図6Cに示す椎弓根スクリュ60は、スクリュ頭部に向かってねじ谷径D
Kが増加し、ねじ外径D
Aは変化しない、さらなる円錐状ねじ谷径部分を不完全ねじ部分Aの領域に備え、それによってねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率が、スクリュ頭部に向かって減少する点で、
図5A〜
図5Cによる椎弓根スクリュ50と異なる。図から、不完全ねじ部分Aの領域において、ねじフランクがより広く、またより鈍くなり、冒頭に説明した欠点が生じることがさらに分かる。
【0057】
図7A〜
図7Cは、谷径D
Kはスクリュ頭部に向かってシャフトの長さにわたって連続的に増加するが、ねじ外径D
Aは一定のままである、いわゆる部分的に円錐状のねじを有する椎弓根スクリュ70を示す。また、この椎弓根スクリュは、入口点38の領域における皮質骨材34に食い込むことができず、皮質骨材34内に固定することができない。
【0058】
本発明による骨ねじは、椎弓根スクリュ2に基づいて図示してきたが、それに限定されない。不完全ねじ部分Aの領域において、ねじ外径D
Aとねじ谷径D
Kとの比率を大きくし、それに関連してねじを深くし、骨の皮質シェル34内への固定を改善することによって、本発明によるねじ設計を他の目的に使用される骨ねじと共に使用することもできる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
特に椎弓根スクリュである骨ねじ(2;3)であって、
雄ねじ(10)が設けられ、前記骨ねじ(2)を骨(20)内に固定するのに役立つスクリュシャフト(4)と、
前記スクリュシャフト(4)の近位端に設けられたスクリュ頭部(6)と、を備え、
近位スクリュシャフト部分(A)、又は不完全ねじ部の領域において、ねじ外径(DA)とねじ谷径(DK)との比率が前記スクリュ頭部(6)に向かって増加することを特徴とする、骨ねじ(2;3)。
(項目2)
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)の両方が増加し、前記ねじ外径(DA)が比例してより高い度合いで増加することを特徴とする、項目1に記載の骨ねじ(2)。
(項目3)
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)の両方が直線的又は指数関数的に増加することを特徴とする、項目1又は2に記載の骨ねじ(2)。
(項目4)
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ外径(DA)が指数関数的に増加し、前記ねじ谷径(DK)が直線的に増加することを特徴とする、項目1又は2に記載の骨ねじ(2)。
(項目5)
前記近位スクリュシャフト部分において、前記ねじ外径(DA)が指数関数的に増加し、前記ねじ谷径(DK)が直線的に増加することを特徴とする、項目1又は2に記載の骨ねじ(2)。
(項目6)
前記近位スクリュシャフト部分(A)において、前記ねじ谷径(DK)が一定であり、前記ねじ外径(DA)が前記スクリュ頭部に向かって増加することを特徴とする、項目1に記載の骨ねじ(3)。
(項目7)
中間スクリュシャフト部分(C)において、前記ねじ外径(DA)及び前記ねじ谷径(DK)が一定のままであることを特徴とする、項目1〜6のいずれかに記載の骨ねじ(2;3)。
(項目8)
前記中間スクリュシャフト部分(C)から前記近位スクリュシャフト部分(A)までの移行領域(B)において、前記ねじ谷径(DK)が増加し、前記ねじ外径(DA)が一定のままであることを特徴とする、項目7に記載の骨ねじ(2)。
(項目9)
前記スクリュ頭部(6)及び前記スクリュシャフト(4)が別個の部品として形成され、互いに分離可能に連結され得ることを特徴とする、項目1〜8のいずれかに記載の骨ねじ(2;3)。
(項目10)
前記スクリュ頭部(6)が、椎骨安定化システムの長手部材を固定するためのチューリップに連結され得ることを特徴とする、項目1〜9のいずれかに記載の骨ねじ(2;3)。