【実施例】
【0024】
図1に示すように、型締装置10は、ベース11と、このベース11に固定され固定型12を支える固定盤13と、この固定盤13と平行に配置され固定型12へ向かって延びるピストンロッド14を備えベース11に水平移動自在に支持されている型締手段15と、この型締手段15と共に可動盤18を移動する型開閉手段16と、固定盤13と型締手段15の間に配置されピストンロッド14に連結されベース11に水平移動自在に支持され可動型17を支える可動盤18と、固定盤13から水平に延びて可動盤18及び型締手段15を貫通するタイバー19、19と、タイバー19を囲うようにして型締手段15に取付けられた拘束機構30とを備えている横型型締装置である。
【0025】
型締手段15は、油圧シリンダ、電動シリンダ、トグル機構の何れでもよい。型開閉手段16は、油圧シリンダ、電動シリンダの何れでもよい。
また、型開閉手段16は、固定盤13と型締手段15とに掛け渡してもよい。
さらにまた、型開閉手段16は、ベース11と可動盤18(又は型締手段15)とに掛け渡してもよい。
【0026】
例えば、ベース11に敷設したレール21にスライダー22を載せ、スライダー22に可動盤18を載せる。レール21とスライダー22とに鋼球等のころを介在させることで、軽い力でベース11に対して可動盤18を水平に移動させることができる。
また、例えば、型締手段15は、ベース11の上面に貼った摺り板23に直接載せて、ベース11に対して 型締手段15を水平に移動させるようにしてもよい。
可動盤18を摺り板23に載せることや、型締手段15をスライダー22を介してレール21に載せることは差し支えない。
【0027】
拘束機構30は、タイバー19に沿った軸方向の長さ(内周面の面積)を確保するために、型締手段15及び可動盤18を貫通して、先端が固定盤13側へ突出するようにすることが望まれる。
拘束機構30は、例えば、一端に設けたフランジ31と、このフランジ31を型締手段32に固定する複数本のボルト32と、フランジ31からタイバー19に沿って延びる筒部33とからなる。
【0028】
なお、筒部33の外周に雄ねじ部を設け、型締手段15に雌ねじ部を設け、型締手段15に筒部33をねじ結合してもよい。ねじ結合であれば、フランジ31とボルト32を省くことができる。
【0029】
図2に示すように、フランジ31から延びる筒部33は十分に長い。
図3に示すように、筒部33は、例えば、鋼製の外筒34と、鋼製の内筒35と、これら外筒34と内筒35の間に配置される磁石機構36とからなる。
この磁石機構36は、例えば、外筒34と内筒35の間に配置される複数の第1の永久磁石37と、この第1の永久磁石37を囲う電磁コイル38と、隣り合う電磁コイル38、38の間に且つ内筒35に取付けられた第2の永久磁石39とからなる。電磁コイル38は、電磁石に相当する。
【0030】
第1の永久磁石37は、アルニコ磁石が好適である。電磁コイル38に通電すると不可避的に第1の永久磁石37の温度が上がる。アルニコ磁石は、キュリー点温度が860℃であるため、温度上昇に耐えると共に、磁化反転(磁化の向きを変えること。)に好適である。
【0031】
第2の永久磁石39は、電磁コイル38の影響を受けないため、キュリー点温度が300℃のネオジム(ネオジウム)磁石が採用できる。ネオジム磁石の磁気エネルギー密度は300kJ/m
3であり、アルニコ磁石の磁気エネルギー密度40kJ/m
3の7.5倍の磁気特性を有するため、第2の永久磁石39に好適である。
【0032】
ただし、ネオジム磁石は錆びやすいため、遮水膜41で外気と隔離する。
また、第2の永久磁石39においては、ある第2の永久磁石39のN極と隣りの第2の永久磁石39のN極が向かい合い、ある第2の永久磁石39のS極と隣りの第2の永久磁石39のS極が向かい合うように配置する。
【0033】
以上の構成からなる拘束機構30の作用を、次に説明する。
図4(a)、(b)において、図左から右へ、第2の永久磁石39は、第2の永久磁石39A、39B、39Cと呼ぶ(A、B、Cは位置を区別するための添え字である)。
隣り合う第2の永久磁石39A、39Bの間に位置する第1の永久磁石37を第1の永久磁石37X、隣り合う第2の永久磁石39A、39Bの間に位置する第1の永久磁石37を第1の永久磁石37Yと呼ぶ。
【0034】
図4(a)に示すよう、第1の永久磁石37Xの上面がN極、下面がS極となり、隣の第1の永久磁石37Yの上面がS、下面がNとなるようにする。
磁力線はN極からS極に向かうため、第1の永久磁石37Xの上面のN極から出た磁力線は矢印(1)のように、最も近い第2の永久磁石39BのS極に向かう。
第2の永久磁石39BのN極から出た磁力線は矢印(2)のように、最も近い第1の永久磁石37YのS極に向かう。
第1の永久磁石37YのN極から出た磁力線は矢印(3)のように、最も近い第1の永久磁石37XのS極に向かう。
【0035】
結果、中央の第2の永久磁石39Bにおいては、図時計回りの磁力線42が形成される。
隣の第2の永久磁石39A、39Cにおいては、図反時計回りの磁力線42が形成される。
何れの磁力線42も、タイバー19には関与していないため、タイバー19に対して、筒部33は、図面左又は右へ移動可能となる。この状態は、非拘束状態に相当する。
【0036】
タイバー19に対して、筒部33を拘束状態にするには、電磁コイル38に通電して第1の永久磁石37Xの上面がS極、下面がN極となるように磁化反転する。同様に、隣の第1の永久磁石37Yの上面がN極、下面がS極となるように磁化反転する。
【0037】
図4(b)に示すように、第1の永久磁石37X、37Yが磁化反転された。なお、この磁化反転のための通電は、1秒未満で十分である。
中央の第2の永久磁石39BのN極から出た磁力線42は、矢印(4)のように、直近のタイバー19を経由して自己のS極に至る。
また、右側の第1の永久磁石37YのN極から出た磁力線42は、矢印(5)のように、タイバー19を経由して、左側の第1の永久磁石37XのS極に至る。
なお、鋼製の内筒35が、(N)極や(S)極となるため、鋼製の内筒35が、磁力線42の形成及び強化に寄与している。
【0038】
左右の第2の永久磁石39A、39Cに関する磁力線42は向きが逆であるが、タイバー19を経由することに変わりはない。
これらの磁力線42により、タイバー19に対して、筒部33は拘束状態になる。拘束状態では、筒部33は図左右へ移動しない。
【0039】
電磁コイル38に逆向きの通電をして、磁化反転を再度実施すると、
図4(a)に戻る。
【0040】
ところで、
図4(b)における拘束力は、筒部33とタイバー19との距離Dによって変化する。この変化を検討する。
本発明者らが確かめたところ、
図5に示すように、筒部33とタイバー19との距離Dを横軸に取ったとき、拘束力は右下がりの緩い曲線で得られた。
距離Dが0mmの場合の拘束力を100%とした場合、距離Dが1mmでの拘束力は83%で、距離Dが2mmでの拘束力は64%で、距離Dが3mmでの拘束力は50%であった。
【0041】
よって、距離Dが数mmであれば、十分な拘束力が確保できる。この数mmを所定の距離という。
距離Dを数mmにすることで、筒部33とタイバー19との機械的接触が回避され、筒部33の摩耗及びタイバー19の摩耗を回避できる。
【0042】
以上のような拘束機構30を備えた型締装置10の作用を次に説明する。
図1では、固定型12から可動型17が離れている。型締めするには、拘束機構30を非拘束状態にし、型開閉手段16を縮動する。すると、可動盤18及び型締手段15は、固定盤13に接近する。この接近により、固定型12に可動型17が当たる。
次に、拘束機構30を拘束状態にする。そして、型締手段15を伸動して、固定型12へ可動型17を高圧型締めする。
【0043】
射出装置44のノズル45を固定型12に当て、射出装置44から溶融樹脂を固定型12及び可動型17へ射出する。樹脂材料が固まったら、拘束機構30を拘束状態から非拘束状態に換え、型開きに備える。
【0044】
次に、電気エネルギーの消費量を検討する。
図4(b)に示す拘束状態が、例えば60秒間続けられるとする。電磁コイル38には、1秒間通電し、59秒間は通電しないため、通電率は1÷60=0.017の計算により、通電時間は、全体の1.7%に止まる。
図4(a)においても同様である。
したがって、本実施例では、電気エネルギーの消費はごく僅かである。
【0045】
ただし、第1の永久磁石37と第2の永久磁石39と電磁コイル38からなる磁石機構36は、単なる電磁石に変更することは差し支えない。
電磁石であれば、高価な永久磁石37、39が不要であるために、磁石機構36は安価となる。しかし、電磁石では、拘束中は連続して通電するため、電気エネルギーの消費は格段に大きくなる。
よって、電気エネルギーの消費の点では、電磁石よりは、永久磁石が勝る。
【0046】
次に、本発明に係る変更例を、
図6に基づいて説明する。
図6に示すように、拘束機構30は、固定盤13側に設けてもよい。その他の構成は
図1と同じであるから、
図1の符号を流用し、構造の詳細な説明は省略する。
拘束機構30は、固定盤13から筒部33の先端を射出装置44側に突出させることで、筒部33の十分な長さを確保することができる。
【0047】
なお、
図6とは異なり、筒部33の先端が固定盤13から可動盤18側へ延びるようにしてもよい。ただし、固定型12の脱着作業を考えると、筒部33の先端を射出装置44側に突出させる方が、作業スペースを増大することができ、より好ましい。
【0048】
また、実施例では横型型締装置で説明したが、本発明は、竪型型締装置に適用することは差し支えない。