特許第6854868号(P6854868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6854868
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】芯材、石膏ボード及び芯材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20210329BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20210329BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20210329BHJP
   E04C 2/04 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   C04B28/14
   C04B20/00 B
   B28B1/30
   E04C2/04 E
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-210920(P2019-210920)
(22)【出願日】2019年11月22日
【審査請求日】2019年11月22日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199245
【氏名又は名称】チヨダウーテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇
(72)【発明者】
【氏名】山中 誠次
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−532631(JP,A)
【文献】 特開2016−121048(JP,A)
【文献】 特開平04−254447(JP,A)
【文献】 特開2019−069884(JP,A)
【文献】 特許第6529205(JP,B1)
【文献】 特開昭51−092824(JP,A)
【文献】 特開2001−106563(JP,A)
【文献】 特開2014−152070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
B28B 1/30
E04C 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(1)を満たし、
断面において50μm以上の長さを有する結晶を含み、
比重が0.99未満となる、芯材。
(1)y≦0.9393×e2.6372x−0.3
【請求項2】
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(2)を満たし、
断面において50μm以上の長さを有する結晶を含み、
比重が0.99未満となる、芯材。
(2)y≦1.05×0.7414×e2.8026x
【請求項3】
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(3)を満たし、
断面において50μm以上の長さを有する結晶を含み、
比重が0.99未満となる、芯材。
(3)y≦1.05×0.5373×e3.0281x
【請求項4】
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(4)を満たし、
断面において50μm以上の長さを有する結晶を含み、
比重が0.99未満となる、芯材。
(4)y≦1.05×0.426×e3.1377x
【請求項5】
圧縮強度が2.0N/mm2以上である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の芯材。
【請求項6】
圧縮強度が7.0N/mm2以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の芯材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の芯材と、芯材の両面に設けられた紙材とを備えた石膏ボード。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の芯材の製造方法であって、
石膏及びメジアン径が15μm以上からなる2水石膏に水を加えて混合し、スラリーを生成する工程と、
前記スラリーを硬化させる工程と、
を備える芯材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏を主成分とする芯材、当該芯材を用いた石膏ボード及び芯材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の住宅には、天井や壁の下地材として、木製下地から鋼製下地が多く使われてきている。特にLGSと呼ばれる軽量鉄骨下地が主に使用されている。LGSは非住宅にも広く使われるが、非住宅は大型建築物の場合も多く、より高い耐火性能や遮音性能を要求される場合が多いため、製品比重の高い石膏ボードが使われる場合が多い。
【0003】
木は湿気による影響を受けて反りや曲がりなど寸法変化による狂いが生じる事があるが、LGSはそのような変形が生じる事が少ない材料であること、また木材に比べて軽量なので、搬入が容易で施工には熟練した能力もいらず、工事が早いというメリットがある。
【0004】
また、石膏ボードを鋼製下地に留め付けるビス施工時には、高圧または常圧ねじ打ち機(ターボドライバー)を用いて行われることが多く、工事の効率化は期待できるが、微調整が難しい。
【0005】
このような背景のなかで、工事の効率化とは反対に、石膏ボードの施工においては、特に製品比重の高い石膏ボードを鋼製下地(LGS)に施工する際に、ビスが入り難いという問題が発生し、逆に工事の効率化を下げてしまうという問題が発生することがある。なお、石膏ボードとしては例えば特許文献1等が提案されているが、このような問題に対応することは提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-190262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、比重を高い状態に維持しつつビスが入り難いという問題が生じにくい芯材等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による芯材は、
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(1)を満たしてもよい。
(1)y≦0.9393×e2.6372x−0.3
【0009】
本発明による芯材は、
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(2)を満たしてもよい。
(2)y≦1.05×0.7414×e2.8026x
【0010】
本発明による芯材は、
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(3)を満たしてもよい。
(3)y≦1.05×0.5373×e3.0281x
【0011】
本発明による芯材は、
石膏を主成分とする芯材であって、
圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(4)を満たしてもよい。
(4)y≦1.05×0.426×e3.1377x
【0012】
本発明による芯材において、
圧縮強度が2.0N/mm2以上であってもよい。
【0013】
本発明による芯材において、
圧縮強度が7.0N/mm2以下であってもよい。
【0014】
本発明による芯材において、
断面において50μm以上の長さを有する結晶を含んでもよい。
【0015】
本発明による石膏ボードは、
前述した芯材と、芯材の両面に設けられた紙材とを備えてもよい。
【0016】
本発明による芯材の製造方法は、
石膏及びメジアン径が15μm以上からなる2水石膏に水を加えて混合し、スラリーを生成する工程と、
前記スラリーを硬化させる工程と、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比重を高い状態に維持しつつビスが入り難いという問題が生じにくい芯材等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は鋼材表面が凹んでいる場合を示した写真であり、図1(b)は鋼材表面が若干凸形状となっている場合を示した写真であり、図1(c)は鋼材表面が凸形状となっている場合を示した写真である。
図2図2は表1の点数と比重との関係を示したグラフである。
図3図3は添加した原料2水石膏の所定の比率における比重と圧縮強度との関係を示したグラフである。
図4図4は粉砕2水石膏を用いて生成した芯材の電子顕微鏡の写真である。
図5図5図4の写真を拡大して示した写真である。
図6図6は原料2水石膏を用いて生成した芯材の電子顕微鏡の写真である。
図7図7図6の写真を拡大して示した写真である。
図8図8は、鋼製下地にビスをねじ込み、200Nの引張荷重になるまでオートグラフ装置にて引き抜き、そのときの鋼材表面の状態を観察した写真である。
図9図9は、鋼製下地にビスをねじ込み、300Nの引張荷重になるまでオートグラフ装置にて引き抜き、そのときの鋼材表面の状態を観察した写真である。
図10図10は、芯材と紙材とを有する石膏ボードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態による芯材は石膏を主成分とする芯材であり、石膏ボードに用いられる。本願における主成分とは50質量%を占める成分を意味し、石膏を主成分とする芯材とは、石膏が50質量%以上である芯材のことを意味している。芯材に含まれる石膏は70質量%以上であってもよいし、80質量%以上であってもよいし、90質量%以上であってもよいし、95質量%以上であってもよいし、98質量%以上であってもよいし、その全て(100質量%)が石膏であってもよい。なお、本願(図面を含む。)における「%」は特に断りがない限り「質量%」である。
【0020】
図10に示すように、石膏ボード100は、芯材10と、芯材10の両面に設けられた紙材の一種であるボード用原紙20とを有してもよい。芯材10とボード用原紙20との間には接着層(図示せず)が設けられてもよい。このような石膏ボード100の表面にLGS等からなる鋼製下地200が設けられることになる。
【0021】
本実施の形態による芯材は、例えば、下記のような方法で製造される。
【0022】
2水石膏をロータリーキルン等の焼成窯で焼いて半水石膏にした後で、チューブミル等の粉砕機で細かく砕く。その後で、15μm以上の粒子径を有する原料2水石膏(CaSO4・2H2O)を添加して混合し、スラリーを生成する。従来用いられている2水石膏は「粉砕2水石膏」と言われるものであり、2水石膏を粉砕して細かなものにした後で添加されるものであり、硬化促進剤として利用されていた。他方、本実施の形態による2水石膏は(典型的には粉砕される工程を経ず)大きな2水石膏を含んでいる。このような大きな2水石膏を含む2水石膏を以下では「原料2水石膏」ともいう。
【0023】
スラリーには発泡剤が添加されてもよい。発泡剤の添加量は0.01質量%〜0.1質量%であってもよい。発泡剤の含有量が少な過ぎて0.01質量%未満の場合には芯材内に十分な気泡を確保できない場合がある。他方、発泡剤の含有量を一定程度増加させても軽量化の効果を見込めないため、その上限は例えば0.1質量%である。スラリーには減水剤が添加されてもよい。また、原料2水石膏の他に前述の粉砕2水石膏が例えば0.3質量%〜2.5質量%で添加されてもよい。粉砕2水石膏を添加する場合には、原料2水石膏を添加するタイミングで粉砕2水石膏を添加すればよい。
【0024】
このように必要に応じて発泡剤、減水剤、粉砕2水石膏等の添加剤が添加され、一定程度混合させた後でスラリーを硬化させる。このようにスラリーが硬化すると石膏ボードの芯材が生成されることになる。
【0025】
石膏ボードの芯材の両面に紙材を設けることで、図10に示すような石膏ボードが生成される。
【0026】
原料2水石膏を用いる本実施の形態の芯材は断面において50μm以上の長さを有する結晶を含んでもよい。図4及び図5は粉砕2水石膏を用いて生成された芯材の電子顕微鏡による写真であるが、細かな針状の結晶を含んでいることを確認することができる。他方、図6及び図7は原料2水石膏を用いて生成された芯材の電子顕微鏡による写真であるが、細かな針状の結晶の他に大きな形状の結晶が含まれ、図6及び図7に示す態様では、断面において50μm以上の長さを有する結晶が含まれることを確認できる。
【0027】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。
【0028】
<鋼製下地(LGS)への石膏ボードビス留め付けにおける鋼材表面状態観察>
[使用工具]
ビス:MAX 社製 PS3828MW
ねじ打ち機:MAX 社製 TD-341A-ST 常圧(0.7MPa)
鋼製下地:一般材(厚さ0.4mm)
【0029】
[施工試験]
比重(製品比重)が異なる石膏ボードに、常圧ねじ打ち機にて鋼材(LGS)へビス留めする。ビス留めした後、ビスを外し、鋼材(LGS)表面の状態を観察した。その結果を、下記表1に示す。
【表1】
【0030】
表1の「〇」は鋼材表面が凹んでいる場合であり(図1(a)参照)、点数は3点とした。表1の「△」は鋼板表面が若干凸形状となっている場合であり(図1(b)参照)、点数は1点とした。表1の「×」は鋼板表面が見た目上明らかに凸形状となっている場合であり(図1(c)参照)、点数は0点とした。表1の点数と比重との関係を図2に示した。このように比重が大きくなると点数が低くなり、鋼板表面が凸形状になることを確認できた。表1及び図2で示す通り、厚さ0.4mmの鋼製下地を用いた場合には、比重が0.801を超えると鋼板表面が凸形状になる問題が顕著に生じやすくなることを確認できる。他方、耐火性能や遮音性能の観点から比重を高くしたいという要望が存在する。本実施の形態によれば、後述するとおり、耐火性能や遮音性能を維持しつつ、鋼板表面が凸形状になるという問題を解決することができる。
【0031】
<石膏ボードの芯材圧縮強度>
40℃で恒量乾燥した石膏ボード製品を50mm×50mmに切断し、オートグラフ(島津製作所製、型番AG-10TE)を用いて圧縮破壊荷重を測定した。なお、圧縮荷重を1mm/minで試験した。その結果を図3に示す。原料2水石膏を添加しない場合にはy = 0.9393e2.6372xという曲線に沿うような結果となった。原料2水石膏を5質量%添加した場合にはy = 0.7414e2.8026xという曲線に沿うような結果となった。原料2水石膏を10質量%添加した場合にはy = 0.5373e3.0281xという曲線に沿うような結果となった。原料2水石膏を15質量%添加した場合にはy = 0.426e3.1377xという曲線に沿うような結果となった。
【0032】
このことから、原料2水石膏を添加することで、比重を変えることなく、芯材圧縮強度を制御できることが分かった。なお、通常の石膏ボードの製造工程では、硬化促進剤として、2水石膏を粉砕して添加する(粉砕2水石膏)こともあるが、本実施の形態による原料2水石膏とは明らかに使用する目的が異なっている。また物性的にもまったく異なる性質である。
【0033】
この結果を踏まえ、本実施の形態による芯材では、圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(1)を満たす態様となってもよい。
(1)y≦0.9393×e2.6372x−0.3
【0034】
この数式(1)は原料2水石膏を5質量%未満(例えば3質量%程度)で添加した場合に対応しており、比重の高い芯材でも圧縮強度を下げることができる(図3参照)。
【0035】
本実施の形態による芯材では、圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(2)を満たす態様となってもよい。
(2)y≦1.05×0.7414×e2.8026x
【0036】
原料2水石膏を5質量%添加した場合の数式よりも大きな値のプロットも多数存在することから、上記数式(2)は原料2水石膏を5質量%添加した場合の数式を1.05倍したものであり、比重の高い芯材でもより圧縮強度を下げることができる(図3参照)。なお、原料2水石膏を5質量%添加した場合の数式をそのまま用いるのであれば、(5)y≦0.7414×e2.8026xという数式を用いることになる。
【0037】
本実施の形態の芯材では、圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(3)を満たす態様となってもよい。
(3)y≦1.05×0.5373×e3.0281x
【0038】
原料2水石膏を10質量%添加した場合の数式よりも大きな値のプロットも多数存在することから、上記数式(3)は原料2水石膏を10質量%添加した場合の数式を1.05倍したものであり、比重の高い芯材でもより圧縮強度を下げることができる(図3参照)。なお、原料2水石膏を10質量%添加した場合の数式をそのまま用いるのであれば、(6)y≦0.5373×e3.0281xという数式を用いることになる。
【0039】
本実施の形態の芯材では、圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(4)を満たす態様となってもよい。
(4)y≦1.05×0.426×e3.1377x
【0040】
原料2水石膏を15質量%添加した場合の数式よりも大きな値のプロットも多数存在することから、上記数式(4)は原料2水石膏を15質量%添加した場合の数式を1.05倍したものであり、比重の高い芯材でもさらにより圧縮強度を下げることができる(図3参照)。なお、原料2水石膏を15質量%添加した場合の数式をそのまま用いるのであれば、(7)y≦0.426×e3.1377xという数式を用いることになる。
【0041】
本実施の形態の芯材において、圧縮強度は2.0N/mm2以上となってもよい。圧縮強度が2.0N/mm2未満となって小さくなりすぎると、芯材としての強度を保てなくなる可能性が出てくるためである。
【0042】
本実施の形態の芯材において、圧縮強度は7.0N/mm2以下となってもよい。圧縮強度が7.0N/mm2超過となって大きくなると、ビス留めした際に鋼材表面が凸形状となる可能性が出てくるためである。
【0043】
なお、図3で示す通り、上記式(5)の条件を満たす場合には、圧縮強度が7.0N/mm2以下となる条件において、比重を0.80まで大きくすることができる。上記式(6)の条件を満たす場合には、圧縮強度が7.0N/mm2以下となる条件において、比重を0.85まで大きくすることができる。上記式(7)の条件を満たす場合には、圧縮強度が7.0N/mm2以下となる条件において、比重を0.87まで大きくすることができる。このように原料2水石膏の添加量を増加させることで同じ圧縮強度でも利用できる芯材の比重を大きくすることができる。
【0044】
<原料2水石膏と粉砕2水石膏の粒度>
粒度に関し、メジアン径については堀場製作所製 粒度分測定機(HORIBA LA-910)によって測定した。比表面積については、JISR5201セメント物理試験方法(粉末度試験)のブレーン空気透過装置にて測定した。本実施例で用いられた原料2水石膏(原料生石膏)と、硬化促進剤として用いられる粉砕2水石膏のメジアン径とブレーン値を表2に示す。下記表2で示す通り、粉砕2水石膏ではメジアン径がかなり小さくなり、またブレーン値がかなり大きくなっていることから、原料2水石膏と比較して粒径がかなり細かくなっていることを確認できる。本実施の形態では分布の中央値を示すメジアン径が10μm以下の2水石膏を粉砕2水石膏と呼ぶ。他方、本実施の形態の原料2水石膏は添加すると圧縮強度が減少するメジアン径からなる2水石膏を意味している(後述する表5乃至表8と表9参照)。原料2水石膏は、例えば、分布の中央値を示すメジアン径が15μm以上、より限定するのであれば18μm以上、さらに限定するのであれば22μ以上の2水石膏を意味している。
【表2】
【0045】
<粒度の異なる原料2水石膏及び粉砕2水石膏の添加率と硬化時間>
焼石膏300gに水255gを混合してスラリーを調製した(混練水量85質量%)。また、所定量の原料2水石膏を添加する場合は、焼石膏から2水石膏の重量を差し引き、これを水と混合してスラリーを調製した。このスラリーを用いて、以下JIS-R9112 陶磁器型材用せっこうの物理試験方法に準拠し、硬化時間(終結)を測定した。その結果を下記表3及び表4に示す。
【表3】
【表4】
【0046】
表3で示すように原料2水石膏を添加した場合には硬化終結時間を短くすることはできるものの、添加率に対して硬化終結時間を短くする効果は粉砕2水石膏と比較して格段に小さいものとなっていることを確認できた。また、添加される原料2水石膏の粒子径が大きくなると硬化終結時間を短くする効果が小さくなることも確認できた。粉砕2水石膏では0.5質量%程度の添加量で硬化終結時間を効果的に短くできるのに対して、原料2水石膏では同程度の硬化終結時間を達成するにはかなりの量で添加する必要があることも確認できた。
【0047】
なお、硬化時間のばらつき抑制するため、原料2水石膏に加えて、粉砕2水石膏を0.5質量%〜2.0質量%程度添加してもよい。原料2水石膏を増加させることで硬化終結時間を短くすることはできるが、時間をかけて硬化する傾向にあり、製造工程においてばらつきが生じる可能性がある。このため、硬化終結時間の調整には粉砕2水石膏を用いることが有益である。このように粉砕2水石膏を用いる場合には、ある時間において急速に硬化が行われることから、製造工程においてばらつきが生じ難くなる点で有益である。
【0048】
そして、このように粉砕2水石膏を用いる場合には、粉砕2水石膏によって硬化終結時間を調整する必要がある。例えば粉砕2水石膏を0.5質量%添加する場合を想定すると、上記表3及び表4の結果から、原料2水石膏の粒子径が22μmの場合では粉砕2水石膏を25質量%までしか添加できない(原料2水石膏30質量%:15.4分<粉砕2水石膏0.5質量%:16.3分<原料2水石膏25質量%:17.7分)。他方、原料2水石膏の粒子径が30μmの場合では、粉砕2水石膏を35質量%まで添加できる(原料2水石膏40質量%:粉砕2水石膏0.5質量%:16.2分<粉砕2水石膏0.5質量%:16.3分<原料2水石膏35質量%:17.3分)。このように原料2水石膏の粒子径を大きくすることで、添加できる原料2水石膏の量を大きくすることができる。このため、添加できる粉砕2水石膏の量を多くするという観点からすると、例えば原料2水石膏の粒子径は30μm以上とすることが有益である。
【0049】
<原料2水石膏及び硬化促進剤2水石膏の添加率と圧縮強度>
焼石膏300gに水225g、発泡剤を焼石膏に対して0.017質量%添加し、表5で示す添加率で原料2水石膏を添加してスラリーを調整した。この際の硬化体比重は0.90となった(表5)。同様に焼石膏300gに水225g、発泡剤を焼石膏に対して、0.020質量%、0.025質量%、0.030質量%添加し、表6、表7及び表8の各々で示す添加率で原料2水石膏を添加してスラリーを調製した。この際の硬化体比重はそれぞれ0.85、0.77及び0.68となった(表6、表7及び表8)。
【0050】
また、焼石膏300gに水225g、発泡剤を焼石膏に対して0.020質量%添加し、表9で示す添加率で硬化促進剤として用いられる粉砕2水石膏を焼石膏に対して添加してスラリーを調製した。この際の硬化体比重は0.85となった(表9)。
【0051】
これらのスラリーを50mm×50mm×50mmの型枠に装填し、硬化させた後、脱型して、40℃で恒量になるまで乾燥し、硬化体を得た。この硬化体を、オートグラフ(島津製作所社製、型番AG-10TE)に供し、荷重速度1mm/minで荷重して、硬化体が座屈したときの荷重値を硬化体面積で除した値を圧縮強度(N/1mm2)とした。その結果を表5乃至表9に示す。圧縮強度を2.0N/mm2以上の芯材を用いるのであれば、比重0.90及び比重0.85の態様では原料2水石膏の添加率を35質量%以下とし、比重0.77の態様では原料2水石膏の添加率を30質量%以下とし、比重0.68の態様では原料2水石膏の添加率を25質量%以下とすることが考えられる。
【0052】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0053】
<原料2水石膏添加で圧縮強度が低減する理由>
圧縮強度試験体の断面を電子顕微鏡にて観察した。その写真を図4乃至図7に示す。図5図7を比較すれば分かるように、原料2水石膏を添加しない場合(図4及び図5)では、水和した2水石膏の針状結晶が絡み合っていることが分かる。他方、原料2水石膏を添加した場合には、原料2水石膏の結晶の大きさが50μm程度あるため、水和した2水石膏の結晶とは絡み合わないことが分かる。このため、原料2水石膏を添加した場合には、圧縮強度が添加率に応じて低減することが分かる。
【0054】
図8及び図9に示すように、鋼製下地にビスをねじ込み、所定の引張荷重になるまでオートグラフ装置(島津製作所社製、型番AG-10TE)にて引き抜き、そのときの鋼材表面の状態を観察した。引張荷重速度は1mm/minである。図8は200Nで引張荷重をかけたものであるが、ビス廻りの鉄製下地は平滑状態であった。図9は300Nで引張荷重をかけたものであるが、ビス廻りの鉄製下地が凸状態に盛り上がった。
【0055】
鉄製下地の表面が凸状になるときの引張荷重の結果は下記表10のようになった。
【表10】
【0056】
ビス頭部にかかる荷重値が鋼製下地におけるビス引張荷重値と石膏ボード芯材圧縮強度値を比較し、鋼材表面が凸状になる条件を算出した(推計した)。
ビス頭部径:8.2mmの場合 面積:52.8(=4.1mm×4.1mm×3.14)mm2
ビス胴部径:3.8mmの場合 面積:11.3(=1.9mm×1.9mm×3.14)mm2
これより、石膏の芯材がビス頭下部にかかる荷重面積は、52.8−11.3=41.5mm2となる。したがって、上記表の引張荷重を単位面積当たりに変換すると、下記表11のようになる。
【表11】
【0057】
上記表11の単位面積当たりの荷重値より、石膏ボードの圧縮強度が高い場合に、鋼材表面が凸状に盛り上がるということになる。
【0058】
鋼製下地が0.4mm厚の場合、石膏ボードの芯材圧縮強度が7.2N/mm2のときの比重は下記表12のようになり、原料2水石膏の添加率を増加させることで高い比重の芯材を用いることができる。鋼製下地が0.4mmと比較的薄い場合に、例えば比重を0.85としても、原料2水石膏を15質量%添加することで、鋼製下地が凸状になることを抑制することが可能となる。
【表12】
【0059】
鋼製下地が0.45mm厚の場合、石膏ボード芯材圧縮強度が、9.6N/mm2のときの製品比重は下記表13のようになり、原料2水石膏の添加率を増加させることで高い比重の芯材を用いることができる。鋼製下地が0.45mmの比較的薄い場合に、例えば比重を0.95としても、原料2水石膏を15質量%添加することで、鋼製下地が凸状になることを抑制することが可能となる。
【表13】
【0060】
ただし、上記表1で示した試験結果を見ても分かるように、比重0.726であっても、ビス留め付け時に鋼材表面は若干凸状態になることがある。これは石膏ボードを鋼製下地にビス打ちするときの工具の圧力や施工のばらつき等が考えられる。
【0061】
なお、本件出願人が確認している限り、鋼製下地が0.45mm以下と比較的薄い場合には、鋼製下地が凸状になるという問題が生じやすくなっており、JIS材のように鋼製下地が0.8mm厚となり、比較的厚みの厚い場合には、鋼製下地が凸状になるという問題が生じ難くなっている。このため鋼製下地の厚みが薄く0.6mm以下となる場合に本実施の形態は有益な効果を示し、鋼製下地の厚みが0.5mm以下となる場合には本実施の形態はより有益な効果を示し、鋼製下地の厚みが0.45mm以下となる場合には本実施の形態はさらにより有益な効果を示す。
【0062】
<原料2水石膏添加時の石膏ボード発熱性試験結果>
石膏ボードの発熱性試験も行ったので、その結果を下記表14で示す。原料2水石膏を添加し、その添加率を増加させても発熱性試験結果に影響がないことを確認できた。
【表14】
【0063】
上述した実施の形態及び実施例の記載は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張及び変更することもできる。
【要約】      (修正有)
【課題】比重を高い状態に維持しつつビスが入り難いという問題が生じにくい芯材等を提供する。
【解決手段】石膏を主成分とする芯材であって、圧縮強度y(N/mm2)と比重xとの関係が、以下の式(1)を満たす、芯材。(1)y≦0.9393×e2.6372x−0.3
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10