(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の自己接着性プリプレグの詳細について説明する。
【0035】
1. 自己接着性プリプレグの構造
本発明の自己接着性プリプレグ(以下、「本プリプレグ」ともいう)は、強化繊維と、前記強化繊維が形成する強化繊維層内に一部又は全部が含浸された熱硬化性樹脂組成物(I)と、から成るベースプリプレグと、
前記ベースプリプレグの少なくとも一表面に積層されて前記ベースプリプレグと一体化して成る不織布と、前記不織布の表面に積層されて前記不織布と一体化して成る熱硬化性樹脂組成物(II)と、から成る接着層と、
を含んで成る。即ち、本発明の自己接着性プリプレグは、強化繊維から成る強化繊維層とこの強化繊維層内に一部又は全部が含浸された熱硬化性樹脂組成物(I)とから成るベースプリプレグと、
不織布と、
熱硬化性樹脂組成物(II)と、
がこの順で積層されて一体化して成る。
【0036】
図1は、本プリプレグの一例を示す概略断面図である。
図1中、100は本プリプレグであり、11はベースプリプレグである。ベースプリプレグ11は、強化繊維層とこの強化繊維層内に含浸している熱硬化性樹脂組成物(I)とから構成されている。ベースプリプレグ11の表面には、不織布13及び熱硬化性樹脂組成物(II)層15から成る接着層が積層され、一体化されている。
【0037】
1.1 ベースプリプレグ
ベースプリプレグは、強化繊維と、この強化繊維が形成する強化繊維層内に一部又は全部が含浸された熱硬化性樹脂組成物(I)と、から構成されている。
【0038】
ベースプリプレグの厚みは、50〜1000μmであることが好ましく、60〜500μmであることがより好ましい。ベースプリプレグの厚みがこの範囲であると、成形時の取扱性により優れたプリプレグとすることができる。
【0039】
(1) 強化繊維層
本プリプレグの強化繊維層を構成する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維が例示される。これらの強化繊維の中でも、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、比強度、比弾性率が良好で軽量かつ高強度のハニカム積層複合材が得られる炭素繊維がより好ましい。炭素繊維の中でも、引張強度に優れるポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
【0040】
強化繊維に炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、170〜600GPaであることが好ましく、220〜450GPaであることが特に好ましい。また、引張強度は3920MPa(400kgf/mm
2)以上であることが好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、ハニカム積層複合材の機械的性能をより向上できる。
【0041】
強化繊維はシート状に形成して用いることが好ましい。強化繊維のシートとしては、多数本の強化繊維を一方向に引き揃えたシート状物や、平織や綾織などの織物が例示される。特定方向に伸縮が可能でありドレープ性に優れるため、織物であることが好ましい。強化繊維層の厚さは、0.01〜3mmが好ましく、0.1〜1.5mmがより好ましい。また、シートの目付は、70〜400g/m
2が好ましく、100〜300g/m
2がより好ましい。これらの強化繊維のシートは、公知のサイズ剤を含んでいても良い。
【0042】
(2) 熱硬化性樹脂組成物(I)
本発明の自己接着性プリプレグを構成する熱硬化性樹脂組成物(I)は、熱硬化性樹脂を必須成分とし、硬化剤や熱可塑性樹脂、増粘粒子、その他の成分を含んでいても良い。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物(I)は、強化繊維基材への含浸性の観点から最低樹脂粘度が0.1〜1000Poiseであることが好ましく、1〜100Poiseであることがより好ましく、2〜50Poiseであることがさらに好ましく、5〜10Poiseであることが特に好ましい。なお、最低樹脂粘度は、後述の実施例に記載の温度−粘度曲線から測定される最低粘度をいう。
【0044】
ベースプリプレグにおける熱硬化性樹脂組成物(I)の含有量は、30〜50質量%であることが好ましく、31〜45質量%であることがより好ましく、35〜40質量%であることが特に好ましい。30〜50質量%であることにより、高いドレープ性を有するとともに、得られるハニカム積層複合材をより軽量化できる。30質量%未満である場合、プリプレグの強化繊維層内に含浸される樹脂量が不足して、得られるハニカム積層複合材の表面材にボイド等を発生させる場合がある。50質量%を超える場合、プリプレグのドレープ性が低下したり、得られるハニカム積層複合材の強度が低下したりする場合がある。
【0045】
(2−1)熱硬化性樹脂
本発明に用いる熱硬化樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂を予備重合した樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の混合物を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂;テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0047】
さらには、フェノール型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。またさらに、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などの各種変性エポキシ樹脂も用いることができる。
【0048】
中でも、分子内に芳香族基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましく、グリシジルアミン構造、グリシジルエーテル構造のいずれかを有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。
【0049】
グリシジルアミン構造を有するエポキシ樹脂としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−3−メチル−4−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体が例示される。
【0050】
グリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が例示される。
【0051】
これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに非反応性置換基を有していても良い。非反応性置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、フェニル基などの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのハロゲン基が例示される。
【0052】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、ビスフェノールS型樹脂等が挙げられる。具体的には三菱化学(株)社製jER815(商品名)、jER828(商品名)、jER834(商品名)、jER1001(商品名)、jER807(商品名)、三井石油化学製エポミックR−710(商品名)、大日本インキ化学工業製EXA1514(商品名)等が例示される。
【0053】
脂環型エポキシ樹脂としては、ハンツマン社製社製アラルダイトCY−179(商品名)、CY−178(商品名)、CY−182(商品名)、CY−183(商品名)等が例示される。
【0054】
多官能型エポキシ樹脂としては、三菱化学(株)社製jER152(商品名)、jER154(商品名)、jER604(商品名)、ダウケミカル社製DEN431(商品名)、DEN485(商品名)、DEN438(商品名)、DIC社製エピクロンN740(商品名)等、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、ハンツマン社製社製アラルダイトECN1235(商品名)、ECN1273(商品名)、ECN1280(商品名)、日本化薬製EOCN102(商品名)、EOCN103(商品名)、EOCN104(商品名)等が例示される。
【0055】
各種変性エポキシ樹脂としては、例えば、ウレタン変性ビスフェノールAエポキシ樹脂として旭電化製アデカレジンEPU−6(商品名)、EPU−4(商品名)等が例示される。
【0056】
これらのエポキシ樹脂は、適宜選択して1種又は2種以上を混合して用いることができる。この中で、ビスフェノール型に代表される2官能エポキシ樹脂は、分子量の違いにより液状から固形まで種々のグレードの樹脂がある。したがって、これらの樹脂は樹脂組成物の粘度調整を行う目的で配合すると好都合である。
【0057】
(2−2) 硬化剤
本発明で用いる硬化剤としては、ジシアンジアミド、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、イミダゾール化合物が挙げられる。硬化性や硬化後の物性が優れる点から、アミド系の硬化剤であるジシアンジアミド(DICY)やイミダゾール化合物が好ましい。また、更に高い耐熱性を得るためにジアミノジフェニルスルフォン(DDS)や、ジアミノジフェニルメタン(DDM)を単独あるいは、混合物として使用することもできるが、耐熱性を付与する点でDDSの誘導体が好ましい。
【0058】
ジシアンジアミド(DICY)の具体例としては、三菱化学(株)製のjERキュアーDICY7、DICY15等が挙げられる。ジアミノジフェニルスルフォン(DDS)の具体例としては、和歌山精化社製の4,4’−DDSや東京化成工業株式会社の4,4’−DDS、3,3’−DDS等が挙げられる。
【0059】
また、DICYを用いる場合には、ウレア系の硬化剤と併用することがより好ましい。DICYはエポキシ樹脂への溶解性がそれほど高くないため、充分に溶解させるためには160℃以上の高温に加熱する必要があるが、ウレア系の硬化剤と併用することにより溶解温度を下げることができる。
【0060】
ウレア系の硬化剤としては、例えば、フェニルジメチルウレア(PDMU)、トルエンビスジメチルウレア(TBDMU)、ジクロロフェニルジメチルウレア(DCMU)等が挙げられる。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物における硬化剤の使用量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましい。硬化剤の使用量が5質量部以上であれば、架橋密度が充分になり、また十分な硬化速度が得られる。硬化剤が30質量部以下であれば、硬化剤が過剰に存在することによる硬化樹脂の機械物性の低下や硬化樹脂の濁り等の不具合を抑制することができる。
【0062】
硬化剤として、DICY及びウレア系硬化剤(PDMU、TBDMU、DCMU等)を併用する場合、それらの使用量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、DICYが1〜15質量部、ウレア系硬化剤が1〜10質量部(ただし、DICYとウレア系硬化剤の合計量が2〜20質量部である。)であることが好ましい。
【0063】
イミダゾール化合物の例としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等の、1H−イミダゾールの5位の水素をヒドロキシメチル基であり、かつ、2位の水素をフェニル基又はトルイル基で置換したイミダゾール化合物が挙げられる。このうち、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メタトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−パラトルイル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。
【0064】
また、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾールや、グリシジルエーテル型の熱硬化性樹脂と2−メチルイミダゾールを反応させて得られるアダクト化合物が挙げられる。中でもアリールグリシジルエーテル型の熱硬化性樹脂と2−メチルイミダゾールとを反応させて得られるアダクト化合物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の物性を優れたものとすることができるので好ましい。硬化剤として、イミダゾール化合物を使用する場合、熱硬化性樹脂100質量部に対して、イミダゾール化合物が2〜30質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることが好ましい。
【0065】
(2−3) 熱可塑性樹脂
本発明において、熱硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含有していてもよい。熱可塑性樹脂は、得られるハニカム積層複合材の耐衝撃性を向上させたり、熱硬化性樹脂組成物に適切な粘度を与えて後述のフィレットの形成を促進させたりする効果がある。
【0066】
熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等の可溶性熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定される重量平均分子量(Mw)が8000〜40000の範囲のポリエーテルスルホン、ポリスルホンが特に好ましい。
【0067】
熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の量は、熱硬化性樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂の種類に応じて異なり、熱硬化性樹脂組成物の粘度が適切な値になるように適宜調節すればよい。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜90質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。5質量部未満の場合は、得られるハニカム積層複合材の耐衝撃性が不十分となる場合がある。90質量部を超える場合、粘度が著しく高くなり、プリプレグの取扱性が著しく悪化する場合がある。
【0068】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール等の不溶性熱可塑性樹脂を配合することもできる。これらの中でも、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドは、靭性及び耐熱性が高いため好ましい。ポリアミドやポリイミドは、靭性向上効果が特に優れている。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。また、これらの共重合体を用いることもできる。
【0069】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂不溶性熱可塑性樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、5〜60質量部であることが好ましく、15〜40質量部であることがより好ましい。5質量部未満の場合、得られるハニカム積層複合材の耐衝撃性が不十分になる場合がある。60質量部を超える場合、強化繊維層内への含浸性や、得られるプリプレグのドレープ性などを低下させる場合がある。
【0070】
(2−4) 増粘粒子
本発明において、熱硬化性樹脂組成物は、増粘粒子を含有していてもよい。増粘粒子は、加熱硬化時に樹脂組成物の適切な粘度を維持し、安定してフィレットを形成させる効果がある。増粘粒子としては、単独又は複数の不飽和化合物と架橋性モノマーとを共重合して得られる粒子が例示される。特に限定されないが、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、ビニル化合物の少なくとも1種を単量体単位とする樹脂を含むことが望ましい。
【0071】
増粘粒子に用いるアクリル酸エステル系化合物とは、アクリル酸エステル構造を有する化合物とその誘導体をいい、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0072】
増粘粒子に用いるメタクリル酸エステル化合物とは、メタクリル酸エステル構造を有する化合物とその誘導体をいい、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートが挙げられる。
【0073】
増粘粒子に用いるビニル化合物とは、重合可能なビニル構造を有する化合物をいい、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン及びこれらの芳香環がアルキル基やハロゲン原子等の種々の官能基で置換された化合物が挙げられる。
【0074】
また、増粘粒子は、メタクリル酸エステル系化合物、アクリル酸エステル系化合物、ビニル系化合物の1種又は2種以上の重合単位からなる重合体であってもよく、構造の異なる2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。さらに、
(i)アクリル酸エステル系化合物又はメタクリル酸エステル系化合物、ジエン系化合物の少なくとも1種からなる重合体と、
(ii)アクリル酸エステル系化合物又はメタクリル酸エステル系化合物とラジカル重合性不飽和カルボン酸とからなる重合体と、に、
(iii)金属イオンを添加することでイオン架橋させた複合樹脂であってもよい。
【0075】
増粘粒子としては、メタクリル酸エステル系化合物、アクリル酸エステル系化合物及びビニル系化合物から成る群から選択される1種又は2種以上の重合単位からなる重合体が好ましく、メタクリル酸アルキル重合体がより好ましい。
【0076】
増粘粒子としては、平均重合度が4,000〜40,000であることが好ましい。
【0077】
増粘粒子としては、ゼフィアックF325やゼフィアックF320(いずれもアイカ工業(株))のような、コアシェル構造を有さないメタクリル酸アルキル重合体からなる市販品を用いることも好ましい。なお、コアシェル構造を有するメタクリル酸アルキル重合体は、シェル構造に起因して熱硬化性樹脂組成物中において膨潤し難く、粘度を上昇させる効果が低いため好ましくない。
【0078】
増粘粒子の粒径等については特に限定されないが、平均粒子径が0.3〜10μmであることが好ましく、0.5〜8μmであることがより好ましい。増粘粒子の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、3〜18質量部であることがより好ましく、4〜15質量部であることが特に好ましい。
【0079】
エポキシ樹脂内に分散する増粘粒子は、加熱によりエポキシ樹脂内で膨潤する。該増粘粒子の膨潤は、温度及び時間とともに進行し、増粘粒子の膨潤に伴ってエポキシ樹脂の粘度は急激に上昇する。増粘の程度は最低粘度到達以降、昇温に伴い増粘し、120℃に達した時点での樹脂組成物の粘度が50〜300poiseであることがフィレットの形成及び、成形中のフロー抑制の観点から好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂は、増粘粒子の膨潤前においては粘度が低いため、強化繊維基材層内への含浸性が優れる。増粘粒子が膨潤してエポキシ樹脂の粘度が強化繊維基材層内で上昇すると、成形時における樹脂フローが抑制される。その結果、樹脂含浸性と、樹脂フローの抑制と、を高い次元で両立できる。
【0081】
(2−5) 他の成分
本発明に用いる熱硬化性樹脂組成物には、本発明の目的・効果を損なわない限り、他の成分を含有させることができる。他の成分としては、3級アミン、イミダゾール等のアミン化合物、ホスフィン類、ホスホニウム等のリン化合物、N,N−ジメチル尿素誘導体などの硬化促進剤;反応性希釈剤;充填剤;酸化防止剤;難燃剤;顔料;等の各種添加剤が例示される。これらの配合量は公知である。
【0082】
1.2 接着層
本発明の自己接着性プリプレグにおいては、不織布と、この不織布の表面に積層されて一体化して成る熱硬化性樹脂組成物(II)と、から成る接着層が、前述のベースプリプレグの少なくとも一表面に積層されて一体化されている。
【0083】
接着層は、ベースプリプレグと接触する面側の反対側に熱硬化性樹脂組成物(II)が偏在していることが好ましい。即ち、ハニカムコアと当接させる面側に熱硬化性樹脂組成物(II)が偏在していることが好ましい。
ハニカムコアと当接させる面側に熱硬化性樹脂組成物(II)が偏在することにより、ハニカムコアの開口部の表面付近に熱硬化性樹脂組成物(II)を層状に侵入させ易い。これにより、ハニカムコアと自己接着性プリプレグとの接着界面を増大させることができるため、フィレット部に応力が集中することを抑制できる。
【0084】
(1) 不織布
本発明の自己接着性プリプレグに用いる不織布は、加熱成形時に溶融しない程度の融点を有する熱可塑性樹脂から成る不織布である。不織布の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)を主成分とする不織布が耐熱性、難燃性を有するため好ましい。
【0085】
不織布の厚みは、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.12〜0.5mmであることがより好ましく、0.15〜0.3mmであることが特に好ましい。0.1mm未満である場合、ハニカムコアの表面における開口部付近に熱硬化性樹脂組成物を留まらせる効果が小さくなる傾向がある。1.0mmを超える場合、加圧成形後に不織布の層内に熱硬化性樹脂の未含浸部分が生じ易い。
【0086】
幅50mmの不織布を長さ方向に10%伸長させるのに要する荷重(本明細書において、「10%伸長荷重」と定義する)は、35N以下であり、32N以下であることが好ましい。35Nを超える場合、不織布のドレープ性が低く、得られる自己接着性プリプレグのドレープ性を低下させ易い。10%伸長荷重の下限値は特に限定されないが、1N以上であることが好ましく、2N以上であることが好ましい。1N未満である場合、不織布の取り扱い性が低下し易い。
【0087】
このような不織布の製造方法は特に限定されないが、例えば市販の不織布にニードルパンチ処理を施して10%伸長荷重を35N以下に調整することができる。
【0088】
不織布の目付は、10〜50g/m
2であることが好ましく、15〜45g/m
2であることがより好ましく、20〜40g/m
2であることが特に好ましい。
50g/m
2を超える場合、加熱成形時に樹脂の流動が妨げられ易い。
10g/m
2未満である場合、不織布の取り扱い性が低下し易い。
【0089】
(2) 熱硬化性樹脂組成物(II)
本発明の自己接着性プリプレグを構成する熱硬化性樹脂組成物(II)は、熱硬化性樹脂を必須成分とし、硬化剤や熱可塑性樹脂、その他の成分を含んでいても良い。各成分は、上述の熱硬化性樹脂組成物(I)において説明した物と同一の物が使用される。
【0090】
熱硬化性樹脂組成物(II)は、最低樹脂粘度が、0.1〜1000Poiseであることが好ましく、1〜100Poiseであることがより好ましく、2〜50Poiseであることがさらに好ましく、5〜10Poiseであることが特に好ましい。また、80℃における粘度が0.5〜3000Poiseであることが好ましく、2〜1000Poiseであることがより好ましく、5〜500Poiseであることがさらに好ましく、10〜200Poiseであることがさらに好ましい。樹脂粘度が低すぎる場合、ハニカムコアに積層した際に、ハニカムコアの表面における開口部付近に熱硬化性樹脂組成物を留まらせる効果が小さくなる傾向がある。樹脂粘度が高すぎる場合、プリプレグのドレープ性が低下したり、得られるハニカム積層複合材においてフィレットの形成が不十分になったりする。
【0091】
本発明の自己接着性プリプレグにおいて、熱硬化性樹脂組成物(I)と熱硬化性樹脂組成物(II)とは、加圧成形時に混合される。したがって、熱硬化性樹脂組成物(I)と熱硬化性樹脂組成物(II)とは、相溶性が高いことが好ましい。熱硬化性樹脂組成物(I)と熱硬化性樹脂組成物(II)とは、同系統の熱硬化性樹脂を用いていることが好ましく、同一のエポキシ樹脂を用いていることがより好ましく、さらには組成が同一であることが特に好ましい。
【0092】
本発明の自己接着性プリプレグにおいて、熱硬化性樹脂組成物(I)と熱硬化性樹脂組成物(II)との質量比は、20:1〜1:1であることが好ましく、10:1〜5:1であることがより好ましい。
【0093】
熱硬化性樹脂組成物(II)の含有量は、100〜300g/m
2であることが好ましく、150〜250g/m
2であることが好ましく、160〜220g/m
2であることが更に好ましく、180〜200g/m
2であることが特に好ましい。樹脂含有量が低すぎる場合、ハニカムコアの表面における開口部付近に十分な量の熱硬化性樹脂組成物を供給することが困難となる傾向がある。その結果、ハニカムコアの表面における開口部付近に樹脂層を形成することができなくなり、フィレット部に応力が集中するため、表面材の引剥強度が低下し易くなる。樹脂含有量が高すぎる場合、軽量化の効果が小さくなり易い。
【0094】
2. 自己接着性プリプレグの製造方法
本発明の自己接着性プリプレグは、強化繊維層内に熱硬化性樹脂組成物(I)の一部又は全部を含浸させてベースプリプレグを製造する工程と、該ベースプリプレグの表面に、不織布と熱硬化性樹脂組成物(II)とから成る接着層を積層して一体化する工程と、から製造される。
【0095】
(1) ベースプリプレグの製造
ベースプリプレグは、強化繊維層内に熱硬化性樹脂組成物(I)の一部又は全部を含浸させることにより製造される。含浸方法としては、加熱により粘度を低下させた樹脂組成物を強化繊維層内に含浸させる乾式法を挙げることができる。かかる乾式法は、樹脂組成物を有機溶媒に溶解させて強化繊維層内に含浸させた後に該有機溶媒を除去する湿式法と比べて、有機溶媒が残存しないため好ましい。以下、乾式法によりベースプリプレグを製造する方法について説明する。
【0096】
(1−1) 熱硬化性樹脂組成物(I)の製造
熱硬化性樹脂組成物(I)は、前述の必須成分及び任意成分を混練することにより製造することができる。混練温度は、配合する樹脂の粘度、熱特性、硬化温度等を考慮して適宜調節されるが、硬化開始温度以下であり、50〜120℃であることが好ましい。混練は、1段で行ってもよいし、多段で行ってもよい。また、各成分の混合順序は限定されない。混練機械装置には、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー等、従来公知のものを用いることができる。
【0097】
(1−2) 熱硬化性樹脂組成物(I)シートの作製
熱硬化性樹脂組成物(I)から成る樹脂シートは公知の方法で作製できる。例えば、ダイコーター、アプリケーター、リバースロールコーター、コンマコーター、ナイフコーターなどを用いて、離型紙や離型シートなどの支持体上に流延、キャストすることにより作製できる。シート化の際の樹脂温度は、その樹脂の組成や粘度に応じて適宜設定される。
【0098】
樹脂シートの厚さは、2〜500μmとすることが好ましく、5〜100μmとすることがより好ましい。
【0099】
次に、上記で得られた樹脂シートを強化繊維層内に含浸させる。含浸は、樹脂シートを強化繊維層の片面又は両面に積層し、この積層体を加熱加圧することにより行われる。加圧下で加熱処理することにより、樹脂シートを構成する熱硬化性樹脂組成物(I)は粘度が低下し、強化繊維層の空隙に含浸される。
【0100】
含浸処理の加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物(I)の粘度、硬化温度などを考慮し、適宜調節することが出来る。好ましくは70〜160℃であり、90〜140℃がより好ましい。含浸温度が70℃未満である場合、熱硬化性樹脂組成物(I)の粘度が高いため、熱硬化性樹脂組成物(I)を強化繊維層内に含浸させ難い。含浸温度が160℃を超える場合、熱硬化性樹脂組成物(I)が硬化し易い。その結果、得られるプリプレグのドレープ性が悪化しやすい。
【0101】
含浸処理の時間は、10〜300秒が好ましい。
【0102】
含浸処理の加圧条件は、熱硬化性樹脂組成物(I)の組成や粘度に応じて適宜調整されるが、好ましくは、線圧9.8〜245N/cm(1〜25kg/cm)であり、より好ましくは19.6〜147N/cm(2〜15kg/cm)である。線圧が9.8N/cm未満である場合、熱硬化性樹脂組成物(I)を強化繊維層内に十分に含浸させるのが困難である。245N/cmを超える場合、強化繊維を損傷させやすい。
【0103】
含浸処理の方法は、熱ローラー等を用いる従来公知の方法により行うことができる。含浸処理は1回で行ってもよく、複数回行ってもよい。このようにして、エポキシ樹脂組成物[B]が強化繊維層内に含浸されたベースプリプレグが製造される。
【0104】
(1−3) 接着層の製造
接着層は、不織布と熱硬化性樹脂組成物(II)とから成る。接着層は、不織布に熱硬化性樹脂組成物(II)のシートを積層することにより製造することができる。あるいは、不織布の表面に溶融状態の熱硬化性樹脂組成物(II)を塗布することにより製造することができる。前述のとおり、本発明の自己接着性プリプレグにおいては、ハニカムコアの表面と当接させる面側に熱硬化性樹脂組成物(II)が偏在していることが好ましい。偏在の程度は特に限定されないが、接着層の厚みの中心を基準として、ハニカムコアの表面と当接させる面側に熱硬化性樹脂組成物(II)が50質量%を超える量で存在することが好ましく、60質量%を超える量で存在することがより好ましい。このような偏在は、不織布のハニカムコアの表面と当接させる面側に熱硬化性樹脂組成物(II)のシートを積層することにより形成できる。以下、この方法について説明する。
【0105】
(1−3−1) 熱硬化性樹脂組成物(II)シートの作製
熱硬化性樹脂組成物(II)シートの作製は、上述の熱硬化性樹脂組成物(I)シートと同様に作製することができる。
【0106】
(1−3−2)不織布と熱硬化性樹脂組成物(II)シートとの積層一体化
不織布の表面に、熱硬化性樹脂組成物(II)シートを積層し、必要に応じて加熱加圧することにより、不織布と熱硬化性樹脂組成物(II)シートとが一体化された接着層のシートが得られる。
【0107】
上記方法により作製されたベースプリプレグの表面には、上記方法により作製された接着層が積層一体化されることにより、本発明の自己接着性プリプレグが製造される。
【0108】
図2は、本発明の自己接着性プリプレグが製造される過程を順次示す説明図である。先ず、強化繊維から成る強化繊維層21が図中矢印A方向に走行しながら、強化繊維層21の厚さ方向両側に、熱硬化性樹脂組成物(I)から成る樹脂シート(離型紙付き)が樹脂シート供給ロール23から供給され、それぞれ積層される。この強化繊維層21と樹脂シートとは、熱ローラー25によって離型紙を介して熱プレスされる。この熱プレスにより、熱硬化性樹脂組成物(I)が強化繊維層21に含浸される。含浸後、冷却ゾーン27を通って、離型紙の一方が離型紙回収ロール29に巻き取られることによって除去される。次に、不織布と熱硬化性樹脂組成物(II)とから成る接着層シート(離型紙付き)が接着層シート供給ロール33から供給され、ベースプリプレグ31の一表面に積層されて一体化される。その後、離型紙が離型紙回収ロール35に巻き取られることによって除去される。これにより、本発明の自己接着性プリプレグ37が製造される。自己接着性プリプレグ37は離型フィルム供給ロール39から供給される離型フィルムが積層された後、製品巻き取りロール41に巻き取られる。
【0109】
3. 自己接着性プリプレグの使用方法
本プリプレグは公知の手法により硬化させることによりCFRPを作製することができる。本プリプレグを用いてCFRPを作製する方法としては、従来公知の方法、例えば、マニュアルレイアップ、自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置、真空バギング、オートクレーブ硬化、オートクレーブ以外の硬化、流体援用加工、圧力支援プロセス、マッチモールドプロセス、単純プレス硬化、プレスクレーブ硬化及び連続バンドプレスを使用する方法が挙げられる。
【0110】
例えば、本プリプレグを積層して、オートクレーブ中で0.2〜1.0MPaに加圧し、150〜204℃で1〜8時間加熱することによって、CFRPを成形することができる。
【0111】
特に本プリプレグは、ハニカムコアの開口部表面に積層して硬化させるのに適したプリプレグである。通常、ハニカムコアの開口部表面に本発明の自己接着性プリプレグを積層した後、さらに必要に応じて公知のプリプレグを積層して加圧しながら加熱硬化させることにより、ハニカム積層複合材を製造することができる。このようにして製造されたハニカム積層複合材は、ハニカムコアと、該ハニカムコアの表面に積層されて該ハニカムコアと接着している自己接着性プリプレグの硬化体とからなる構造を有している。ハニカムコアの開口部表面に従来用いられていた接着材層を介することなく、本発明の自己接着性プリプレグを直接積層することによって十分な接着性を得ることができる。
【0112】
本発明の自己接着性プリプレグは、ハニカムコアの表面に積層して硬化することにより、ハニカムコアの壁面周辺部にフィレットを形成するだけでなく、ハニカムコアの表面における開口部付近に熱硬化性樹脂組成物(II)が層状に侵入して硬化する。また、熱硬化性樹脂組成物(II)が偏在している自己接着性プリプレグであっても、加圧及び加熱によって熱硬化性樹脂組成物(I)及び熱硬化性樹脂組成物(II)は一体化する。これにより、ハニカムコアの壁面周辺部に応力が集中することを抑制して、高い引剥強度を有するハニカム積層複合材を製造することが可能となる。
【0113】
図3は、本発明の自己接着性プリプレグを用いて作製したハニカム積層複合材の断面を示す説明図である。
図3中、50はハニカム積層複合材であり、ハニカムコア51の両面に表面材53が接着されて成る。55はハニカムコア51の壁面に沿って形成されたフィレットであり、57はハニカムコア51の表面における開口部付近に層状に形成された樹脂層である。なお、不織布は図示していない。本発明の自己接着性プリプレグを用いることにより、フィレット55だけでなく、樹脂層57を形成することができ、接着性が向上している。
図5は、本発明の自己接着性プリプレグを用いて作製したハニカム積層複合材の断面を示す図面代用写真であり、
図3の構造が確認できる。また、
図7は、本発明の自己接着性プリプレグを用いて作製したハニカム積層複合材から表面材を剥離した際のハニカムコア表面を示す図面代用写真である。ハニカムコアの開口部には、充填されていた樹脂が残存しており、
図3の構造が確認できる。
【0114】
ハニカム積層複合材の製造方法としては、金型の下型に本発明の自己接着性プリプレグ、ハニカムコア、本発明の自己接着性プリプレグを順次敷設したハニカムコア積層体をフィルムバッグで覆い、該ハニカムコア積層体を下型とフィルムバッグとの間に密封し、下型とフィルムバッグとにより形成される空間を真空にし、オートクレーブで加熱加圧して成形する方法が例示できる。成形時の条件は、昇温速度が1〜50℃/分であり、0.1〜0.7MPa、130〜180℃で10〜30分間、加熱及び加圧することが好ましい。なお、ハニカムコアとプリプレグの接着性を高めるため、下型とフィルムバッグとの間は、室温から80〜100℃まで真空に保ち、その後、真空を開放することが好ましい。
要求される機械特性に応じて、本発明の自己接着性プリプレグの外側(ハニカムコアに当接する面の反対側)に、従来公知のプリプレグをさらに積層しても良い。
【0115】
本発明の自己接着性プリプレグとハニカムコアを積層したハニカムコア積層体を硬化させて得られるハニカム積層複合材料は、強化繊維と熱硬化性樹脂硬化物とからなる強化繊維層(表面材)とハニカムコアとが、不織布と熱硬化性樹脂硬化物とからなる接着層を介して接着している。本発明の自己接着性プリプレグを用いて得られたハニカム積層複合材料では、接着層の熱硬化性樹脂が、表面材とハニカムコアとの間に十分なフィレットを形成し、さらに、表面材の熱硬化性樹脂とフィレットを形成する熱硬化性樹脂が同一の樹脂であるため、表面材とハニカムコアとの接着性に優れている。
【実施例】
【0116】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例において使用する成分や試験方法は以下のとおりである。
【0117】
(強化繊維基材)
・炭素繊維織物「TENAX」W3101(東邦テナックス株式会社製の炭素繊維織物)、目付は193g/m
2【0118】
(エポキシ樹脂)
・jER604(商品名):三菱化学(株)製、グリシジルアミン型エポキシ樹脂 (4官能基)(以下、「jER604」と略記する)
・jER828(商品名):三菱化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂 (2官能基)(以下、「jER828」と略記する)
【0119】
(熱可塑性樹脂)
・PES−5003P(商品名):住友化学工業(株)製、平均粒子径20μmのポリエーテルスルホン(以下、「PES」と略記する)
【0120】
(硬化剤)
・ジシアンジアミド:三菱化学社製、硬化剤(以下、「DICY」と略記する)
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン :和歌山精化社製、芳香族アミン系硬化剤(以下、「DDS」と略記する)
(硬化促進剤)
・プリベントール A6 :ランクセス社製、ジクロロフェニルジメチルウレア(ウレア系硬化促進剤)(以下、「DCMU」と略記する)
【0121】
(増粘粒子)
“ゼフィアック(登録商標)”F320:(メタクリル酸アルキル重合体)、平均重合度30,000、アイカ工業(株)製)(以下、「ゼフィアック」と略記する)
【0122】
(不織布)
・不織布1:ユニチカ(株)製のPETスパンボンド不織布 90303WS0、目付30g/m
2、厚み0.21mm
・不織布2:(TUSCO(THAI UNITIKA SPUNBOND CO., LTD.)製のPET製スパンボンド不織布 EB030 30W)、目付30g/m
2、厚み0.18mm
・不織布3:ユニチカ(株)製のPETスパンボンド不織布90403WSO、目付40g/m
2、厚み0.25mm
【0123】
〔10%伸長荷重〕
不織布を幅50mm、長さ200mmに切断し、その長さ方向におけるそれぞれの端側50mmをクランプで挟んだ。荷重試験機(株式会社 島津製作所製 島津オートグラフAG−100kNX)を用いてこれを引っ張り、長さが10%伸長した際の荷重を測定した。
不織布が方向性を有する場合は、荷重が最大となる方向の値を10%伸長荷重とした。
【0124】
〔粘度〕
レオメトリクス社製レオメーターARES−RDAを用い、直径25mmのパラレルプレートを用い、パラレルプレート間のエポキシ樹脂組成物の厚さを0.5mmとし、角速度10ラジアン/秒の条件で昇温速度2℃/分で180℃まで粘度測定を行い、温度−粘度曲線から粘度を測定した。
【0125】
〔ドレープ性〕
ドレープ性は、プリプレグを構造体(型)の上に貼り合せる(賦型する)試験によって評価した。
図9a、bに示す型上に、型より大きく裁断した正方形のプリプレグを1枚貼り合せ、生じたシワ及び座屈の状態を目視で評価した。なお、
図9(a)は型の正面図、
図9(b)は型の側面図であり、
図9(a)の紙面において上下左右は対称である。型のサイズは、Bが180mm、Cが68mm、Dが9mm、Eが118.5mm、Fが280mm、Gが22mm、Hが380mmである。
【0126】
〔引剥強度〕
ドラムピール強度はDIN EN2243−3に記載される評価方法により測定した。
【0127】
〔実施例1〕
jER604及びjER828をニーダー中にて120℃で加熱・混合させた。得られた混合物中にPESを添加し、更にニーダー中、120℃で加熱混合することにより、完全に溶解させた。続いて、得られた樹脂混合物をロールミルに移し、DICY、DDS、DCMUを以下に記載する量で添加し、80℃で良く混練し、本実施のエポキシ樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の最低樹脂粘度は5Poiseであり、120℃での粘度は35Poiseであった。
【0128】
エポキシ樹脂組成物の配合
jER604:40質量部
jER828:60質量部
PES:20質量部
DYCY:2質量部
DDS:20質量部
DCMU:0.5質量部
【0129】
この熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型フィルム上に塗布し、樹脂シートを得た。次に、この樹脂シート2枚の間に炭素繊維織物を供給して、ローラーを用いて100℃で加圧及び加熱してベースプリプレグを得た。ベースプリプレグにおける樹脂の含有率は35質量%であった。
【0130】
次に、この熱硬化性樹脂組成物を、フィルムコーターを用いて離型フィルム上に塗布し、樹脂シートを得た。この樹脂シートの表面に不織布1を載置して接着層シートを作製した。
【0131】
その後、このベースプリプレグの表面に、接着層シートの樹脂を多く含む面を外側に向けて積層してローラーを用いて30℃で加圧して、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
【0132】
この自己接着性プリプレグをハニカムコア(EURO−COMPOSITES社製 ECK 4.8−37、厚さ 15mm)に積層して圧力0.3MPa、温度180℃、時間2時間で加圧及び加熱してハニカム積層複合材を作製した。ハニカム積層複合材料の平均ピール強度は、23N/cmと十分に高いものであった。
【0133】
〔比較例1〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を44質量%とした以外は、実施例1と同様にベースプリプレグを作製した。比較例1では、ベースプリプレグの表面に不織布および樹脂シートを積層しなかった。このプリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。接着層を有さない比較例1のプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は、9N/cmと実施例1と比べ、とても低いものであった。
【0134】
〔比較例2〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を44質量%とした以外は、実施例1と同様にベースプリプレグを作製した。比較例2では、ベースプリプレグの表面に樹脂シートのみを積層し、不織布は積層しなかった。このプリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。接着層が不織布を含んでいない比較例2のプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は、14N/cmと実施例1と比べ、とても低いものであった。
【0135】
〔比較例3〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とした以外は、実施例1と同様にベースプリプレグを作製した。比較例3では、ベースプリプレグの表面に不織布1のみを積層し、樹脂シートは積層しなかった。このプリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。接着層が樹脂を有さない比較例3のプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は、6N/cmと実施例1と比べ、とても低いものであった。
【0136】
〔実施例2、3〕
樹脂シートの目付を表1に記載するように変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、実施例2、3で得られた自己接着性プリプレグはどちらも、プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られた自己接着性プリプレグの平均ピール強度を表1に示した。実施例2、3で得られたプリプレグの平均ピール強度は30N/cmを超えるとても高いものであった。
【0137】
〔実施例4〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とした以外は、実施例1と同様にベースプリプレグを作製した。次に、実施例1と同様にして、樹脂目付160g/m
2の樹脂シートを得た。この樹脂シートの表面に不織布1を載置して接着層シートを作製した。その後、ベースプリプレグの表面に、接着層シートの樹脂を多く含む面を、実施例1とは逆に、内側に向けて積層してローラーを用いて30℃で加圧して、プリプレグを得た。
このプリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。不織布と樹脂シートの積層順序が本発明と異なる実施例4のプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は、20N/cmと実施例1と比べ、低いものであった。
【0138】
〔実施例5、6〕
不織布1に替えて、不織布2を使用し、樹脂シートの目付を表1に記載するように変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、実施例5、6で得られた自己接着性プリプレグはどちらも、プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表1に示した。実施例5、6で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は十分に高いものであった。
【0139】
〔実施例7、8〕
不織布1にニードルパンチ処理を行い、表1に記載の10%伸張荷重とした不織布とした以外は実施例3と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。実施例7、8で得られた自己接着性プリプレグはどちらも、プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表1に示した。実施例7、8で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は非常に高いものであった。
【0140】
【表1】
【0141】
〔実施例9〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を160g/m
2に変更し、不織布として、不織布1にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。得られた自己接着性プリプレグは、プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表2に示した。実施例9で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は33N/cmと非常に高いものであった。
【0142】
〔実施例10〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とした以外は実施例3と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表2に示した。実施例10で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は37N/cmと非常に高いものであった。
【0143】
〔実施例11〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を190g/m
2に変更し、不織布として、不織布1にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表2に示した。実施例11で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は38N/cmと非常に高いものであった。
【0144】
〔実施例12〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を39質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を160g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表2に示した。実施例12で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は41N/cmと非常に高いものであった。
【0145】
〔実施例13〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を39質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を190g/m
2に変更し、不織布として、不織布1にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグは、プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例13で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は41N/cmと非常に高いものであった。
【0146】
〔実施例14〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を44質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を100g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、プリプレグを型に張り付ける際若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例14で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は21N/cmと十分高いものであった。
【0147】
〔実施例15〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を44質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を200g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、プリプレグを型に張り付ける際に若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例15で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は39N/cmと大変高いものであった。
【0148】
〔実施例16〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を39質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を180g/m
2に変更し、不織布として、不織布3にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグは、プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例16で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は39N/cmと非常に高いものであった。
【0149】
〔実施例17〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を39質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を180g/m
2に変更し、不織布として、不織布3にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、貼り合わせ後にシワや座屈が発生し、プリプレグとして使用できるものの、ドレープ性は不十分であった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例17で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は38N/cmと非常に高いものであった。
【0150】
〔実施例18〕
ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を39質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を350g/m
2に変更した以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価したところ、プリプレグを型に張り付ける際若干抵抗があり、貼り合せ作業に多少の難を要したが、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、使用に十分耐えるものであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。実施例18で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は41N/cmと非常に高いものであった。
【0151】
〔実施例19〕
jER604及びjER828をニーダー中にて120℃で加熱・混合させた。得られた混合物中にPESを添加し、更にニーダー中、120℃で加熱混合することにより、完全に溶解させた。続いて、得られた樹脂混合物をロールミルに移し、DICY、DDS、DCMU、ゼフィアックを以下に記載する量で添加し、80℃で良く混練し、本実施のエポキシ樹脂組成物を得た。この樹脂組成物の最低樹脂粘度は20Poiseであり、120℃での粘度は70Poiseであった。
【0152】
エポキシ樹脂組成物の配合
jER604:40質量部
jER828:60質量部
PES:20質量部
DYCY:2質量部
DDS:20質量部
DCMU:0.5質量部
ゼフィアック:4質量部
【0153】
この熱硬化性樹脂組成物を用いて、ベースプリプレグにおける樹脂の含有率を37質量%とし、樹脂シートの樹脂目付を170g/m
2に変更し、不織布として、不織布1にニードルパンチ処理を行い、表2に記載の10%伸張荷重とした不織布を用いた以外は実施例1と同様に製造し、自己接着性プリプレグを得た。得られた自己接着プリプレグのドレープ性を評価した。得られた自己接着性プリプレグは、プリプレグを型に張り付ける際の抵抗がなく、滑らかに張り合わせることができた。また、貼り合わせ後はプリプレグにシワや座屈は発生せず、ドレープ性に大変優れたプリプレグであった。
この自己接着性プリプレグを用いて、実施例1と同様にハニカム積層複合材を作製した。成形中の樹脂フローが実施例1と比べてより少なく、脱型性も良好であった。得られたハニカム積層複合材料の平均ピール強度を表2に示した。実施例19で得られたプリプレグを用いたハニカム積層複合材料の平均ピール強度は36N/cmと非常に高いものであった。
【0154】
【表2】