特許第6854900号(P6854900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフトの特許一覧

特許6854900進行性MSについてのデジタルバイオマーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854900
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】進行性MSについてのデジタルバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20210405BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61B10/00 H
   A61B5/11 230
【請求項の数】21
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2019-535978(P2019-535978)
(86)(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公表番号】特表2019-531851(P2019-531851A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2017073137
(87)【国際公開番号】WO2018050746
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】16188849.0
(32)【優先日】2016年9月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、マイク
(72)【発明者】
【氏名】ベラチュウ、シベシ ミチク
(72)【発明者】
【氏名】ゴセンス、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン、ミハエル
【審査官】 清水 裕勝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0066820(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/118534(WO,A1)
【文献】 特表2014−510557(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0005674(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0179079(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0220693(US,A1)
【文献】 特表2015−500042(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/150417(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00−5/398
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者における進行性多発性硬化症(MS)を特定するために使用されるモバイルデバイスまたは前記モバイルデバイスに動作可能に連結される遠隔デバイスの作動方法であって、
a)前記モバイルデバイスまたは前記遠隔デバイスにより、前記モバイルデバイスを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定される少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、
b)前記モバイルデバイスまたは前記遠隔デバイスにより、前記特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準とを比較し、それにより進行性MSを患う対象者が識別される比較するステップと
を含み、
前記アクティビティの測定のデータセットは、形状押し潰し検査からのデータを含む、方法。
【請求項2】
前記進行性多発性硬化症は、臨床疾患活動を伴う再発寛解型MSである、障害が進行している再発寛解型MSである、二次進行性MSである、障害が進行している二次進行性MSである、一次進行性MSである、または障害が進行している一次進行性MSである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの能力パラメータは、前記対象者の運動または微細な運動の能力および機能、歩行、色視覚、注意、器用さ、または認知能力、生活の質、疲労、精神状態、気分、視覚、または認知を示すパラメータである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アクティビティの測定のデータセットは、形状描画検査からのデータを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アクティビティの測定のデータセットは、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、eSDMT、CAG検査、形状描画検査、および形状押し潰し検査からのデータを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記モバイルデバイスは、請求項1において参照される検査のうちの1つ以上を対象者に対して行うように適合された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記モバイルデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイス、またはタブレットコンピュータからなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準は、ステップa)において参照されるアクティビティの測定のデータセットが前記対象者から得られた時点より前の時点において前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
特定された少なくとも1つの能力パラメータと、前記基準との間の悪化は、対象者が進行性MSを患っていることを示す、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基準は、進行性MSを患っていることが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
特定された少なくとも1つの能力パラメータが前記基準と比して実質的に同一である場合、前記対象者が進行性MSを患っていることを示す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準は、進行性MSを患っていないことが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
特定された少なくとも1つの能力パラメータが前記基準と比して悪化している場合、前記対象者が前記進行性MSを患っていることを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
MSに対する抗CD20抗体治療を推奨する方法であって、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップと、対象者が進行性MSを患っている場合に抗CD20抗体治療を推奨するさらなるステップとを備える、方法。
【請求項15】
前記抗CD20抗体はオクレリズマブである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
進行性MSに対する治療の効能を特定するために使用されるモバイルデバイスまたは前記モバイルデバイスに動作可能に連結される遠隔デバイスの作動方法であって、前記モバイルデバイスまたは前記遠隔デバイスにより実施される請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップと、前記モバイルデバイスまたは前記遠隔デバイスにより、治療の際に前記対象者において進行性MSに改善があった場合に治療処置を特定する、または治療の際に前記対象者において進行性MSに悪化が生じた場合、もしくは進行性MSに変化がなかった場合に処置の失敗を特定するさらなるステップとを備える、方法。
【請求項17】
対象者における進行性MSを監視するために使用されるモバイルデバイスまたは前記モバイルデバイスに動作可能に連結される遠隔デバイスの作動方法であって、前記モバイルデバイスまたは前記遠隔デバイスにより、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップを所定の監視期間中に少なくとも2度行うことによって、対象者において進行性MSが改善しているか、悪化しているか、もしくは変化が無いかを特定するステップを備える、方法。
【請求項18】
モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つのセンサ、およびデータベース、ならびに前記モバイルデバイスに有形に組み込まれ、前記モバイルデバイス上で実行されている時に請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を実施するソフトウェアを備える、モバイルデバイス。
【請求項19】
少なくとも1つのセンサを有するモバイルデバイスと、遠隔デバイスとを備えたシステムであって、前記遠隔デバイスは、プロセッサ、データベース、および、前記遠隔デバイスに有形に組み込まれ、前記遠隔デバイス上で実行されている時に請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法を実施するソフトウェアを有し、前記モバイルデバイスと前記遠隔デバイスとは互いに動作可能に連結されている、システム。
【請求項20】
進行性多発性硬化症(MS)を患っている対象者を識別するために使用される、請求項18に記載のモバイルデバイス。
【請求項21】
進行性多発性硬化症(MS)を患っている対象者を識別するために使用される、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の分野に関する。具体的には、対象者において進行性多発性硬化症(MS)を識別するための方法に関わるものであり、方法は、モバイルデバイスを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、特定された少なくとも1つの能力パラメータを基準と比較し、それにより対象者が進行性MSを有しているかが識別される、比較するステップとを備える。また、本発明に包含されるのは、MSに対する抗CD20抗体治療を推奨する方法であり、方法は、本発明の方法のステップと、対象者が進行性MSを患っている場合に抗CD20抗体治療を推奨するさらなるステップとを備える。本発明はまた、プロセッサ、少なくとも1つのセンサ、およびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に(tangible)組み込まれ、前記デバイス上で実行されている時に本発明の方法を実施し、進行性MSを患っている対象者を識別する装置に用いられるソフトウェアを備えるモバイルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)は、現在治療不可能な重度の神経変性疾患である。世界中で約200万人から約300万人がこの疾患に冒されている。これは、若年成人に長期かつ重度の能力障害を生じさせる中枢神経系(CNS)の疾患で最も多い。脳および脊髄の白質内における自己分子に対するB細胞およびT細胞に媒介される炎症プロセスが疾患を生じさせるというコンセプトを支持するエビデンスがある。しかし、その病因は未だよく理解されていない。髄鞘反応性T細胞がMS患者および健常者の両方に存在することが分かった。このため、MSにおける一次異常では、T細胞の活性化状態を改善して活性化要件の厳格さを低くする調節機構がより損なわれやすい。MSの発病は、CNS外における脳炎誘発性の、すなわち自己免疫髄鞘特異的T細胞の活性化と、これによる血液脳関門の解放、T細胞およびマクロファージ浸潤、ミクログリア活性化、ならびに脱髄を含む。後者は、不可逆的な神経細胞の損傷を生じさせる(例えば、Aktas 2005, Neuron 46, 421-432, Zamvil 2003, Neuron 38:685-688参照)。
【0003】
T細胞以外に、Bリンパ球(CD20分子を表す)がMSにおいて中心的な役割を果たし、少なくとも4つの特定の機能を通じてその基礎となる病態生理に影響を与え得ることが最近になって示された。
1.抗原提示:B細胞は、自己神経抗原をT細胞に提示し、それらを活性化させることができる。(Crawford A, et al. J Immunol 2006;176(6):3498-506; Bar-Or A, et al. Ann Neurol 2010;67(4):452-61)
2.サイトカイン産生:MSを患う患者のB細胞は、T細胞および他の免疫細胞を活性化させ得る異常な炎症性サイトカインを産生する。(Bar-Or A, et al. Ann Neurol 2010;67(4):452-61; Lisak RP, et al. J Neuroimmunol 2012;246(1-2):85-95)
3.自己抗原産生:B細胞は、組織の損傷を生じさせ得るとともにマクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させ得る自己抗原を産生する。(Weber MS, et al. Biochim Biophys Acta 2011;1812(2):239-45)
4.濾胞状集塊の形成:B細胞は、近接する皮質におけるミクログリアの活性化、局所的な炎症、および神経細胞の損失につながる異所性のリンパ球の濾胞状集塊として存在する。(Serafini B, et al. Brain Pathol 2004;14(2):164-74; Magliozzi R, et al. Ann Neurol 2010;68(4):477-93)
【0004】
脳炎誘発性の要因となる機序についての十分な知識はあるが、対象者におけるCNSに対する有害なリンパ球応答を調節するための制御機序についての知識はごく少ない。
【0005】
MSの診断は、現在、医師による臨床的検討に基づいている。このような検討には、特定の身体的活動についての患者の能力を検査することを伴う。いくつかの検査が開発され、医師によってルーチン的に適用されている。これらの検査は、歩行、平衡、および他の運動能力を評価することを目的としている。現在適用されている検査の例としては、総合障害度スケール(EDSS、www.neurostatus.net)や多発性硬化症機能評価(MSFC)等がある。これらの検査には、査定および評価のために医師の立会いが必要であり、現在は診察室もしくは病院への通院で行われる。最近において、自然な環境においてMS患者のデータを収集するために、スマートフォンデバイスを使用してMS患者を監視する試みがなされている(Bove 2015, Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2 (6):e162)。
【0006】
さらに、MSの診断に診断ツールが使用される。このようなツールには、神経画像処理、ならびに脳脊髄液および誘発電位の分析等が含まれる。脳および脊髄の磁気共鳴撮像(MRI)により、脱髄(病変もしくはプラーク)を視覚化することができる。活性プラークをマーキングし、査定の時点で症状とは関連付けられていない古い病変の存在を急性の炎症と識別するために、ガドリニウムを含有する造影剤を静脈注射により投与することができる。腰椎穿刺によって得られた脳脊髄液の分析により、中枢神経系の慢性的な炎症のエビデンスがもたらされ得る。脳脊髄液は、MSを患っている人の75%から85%が保有する炎症マーカーであるオリゴグロコナールイムノグロブリンバンドについて分析することができる(Link 2006, J Neuroimmunol. 180 (1-2): 17-28)。しかしながら、上述の技法はいずれも、MSに対して特有のものではない。このため、診断を確実なものとするためには、MSの診断の事前に必要である、疾患の空間的および時間的な播種を示すために、臨床的調査およびMRIによる調査を繰り返し行う必要が生じ得る。
【0007】
疾患の経過を変え得る、再発寛解型多発性硬化症について規制当局によって承認されたいくつかの治療がある。これらの治療には、インターフェロンベータ1a、インターフェロンベータ1b、グラチマラー酢酸塩、ミトキサントロン、ナタリズマブ、フィンゴリモド、テリフルノミド、フマル酸ジメチル、アレムツズマブ、およびダクリズマブが含まれる。インターフェロンおよびグラチマラー酢酸塩は、再発を約30%減少させる第一選択治療である(例えば、Tsang 2011, Australian family physician 40 (12): 948-55参照)。ナタリズマブは、インターフェロンよりも再発率を減少させるが、副作用の問題のため、他の治療に対して反応を示さない患者もしくは重度の疾患を有する患者のために確保される第二選択薬剤である(例えば、Tsang 2011, loc. cit.を参照)。インターフェロンを使用した臨床分離症候群(CIS)の治療により、臨床的に確定したMSの進行の機会を減少させる(Compston 2008, Lancet 372(9648): 1502-17)。子供におけるインターフェロンおよびグラチマラー酢酸塩の効能は、大人に対するものとほぼ等しいものとして推測されてきた(Johnston 2012, Drugs 72 (9): 1195-211)。
【0008】
最近において、オクレリズマブ、アレムツズマブ、およびダクリズマブ等の新しいモノクローナル抗体が、MSに対する治療方法としての可能性を示している。抗CD20B細胞を標的とするモノクローナル抗体であるオクレリズマブは、フェーズIII試験のフェーズ2および3においてMSの再発形態および一次進行性形態の両方に対する薬効を示した(NCT00676715、NCT01247324、NCT01412333、NCT01194570)。
【0009】
MSは、CNSの臨床的に異質な炎症性の疾患である。このため、現在の疾患の状態についての信頼性の高い診断および識別を可能として、特にMSの進行形態に苦しむ患者に対する正確な治療を補助し得る診断ツールが必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明の技術的課題は、上記のニーズに対応する手段および方法において見られ得る。技術的課題は、特許請求の範囲において規定されるとともに以下で説明する実施形態によって解決される。
【0011】
本発明は、対象者における進行性多発性硬化症(MS)を特定する方法であって、
a)モバイルデバイスを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定される少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、
b)前記特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準とを比較し、それにより進行性MSを患う対象者が識別される比較するステップと
を備える。
【0012】
典型的に、方法はさらに、ステップ(b)で行われた比較に基づいて対象者における進行性MSを識別するステップ(c)を備える。
【0013】
一部の実施形態において、方法は、ステップ(a)の前に、対象者によって行われる所定のアクティビティ時にモバイルデバイスを使用する対象者からアクティビティの測定のデータセットを得るステップを備える。しかし、典型的に、方法は、対象者のアクティビティの測定の既存のデータセットに対して行われ、前記対象者に対する物理的な相互作用を必要としない、生体外で行われる方法である。
【0014】
本発明に関して参照される方法は、実質的に上述のステップからなる方法、もしくは追加のステップを含み得る方法を含む。
【0015】
方法は、ひとたびアクティビティの測定のデータセットが取得されると、対象者によってモバイルデバイス上で実施され得る。従って、モバイルデバイスと、データセットを取得するデバイスとは、物理的に同一であり得る、すなわち、同じデバイスであり得る。このようなモバイルデバイスは、データ取得ユニットを有し、データ取得ユニットは、典型的に、データ取得手段、すなわち、定量的あるいは定性的に物理的および/または化学的パラメータを検知もしくは測定し、それらを発明に係る方法を実施するために使用されるモバイルデバイス内の評価ユニット(evaluation unit)へ伝達される電気信号に変換する変換手段を有する。データ取得ユニットは、データ取得手段、すなわち、定量的あるいは定性的に物理的および/または化学的パラメータを検知もしくは測定し、それらをモバイルデバイスから遠隔であって発明に係る方法を実施するために使用される電気信号に変換する変換手段を有する。典型的に、前記データ取得手段は、少なくとも1つのセンサを有する。1つより多いセンサ、すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、またはそれより多い異なるセンサをモバイルデバイスにおいて使用できることが理解される。データ取得手段として使用される典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計、近接センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍数検知器、指紋検知器、タッチセンサ、ボイスレコーダ、光センサ、圧力センサ、場所データ検知器、カメラ、および汗分析センサ等のセンサである。評価ユニットは、典型的に、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で実行されている時に発明の方法を実施するソフトウェアを有する。より典型的に、このようなモバイルデバイスは、評価ユニットによって実施、される分析の結果をユーザに提供することを可能にするスクリーン等のユーザインターフェイスも有し得る。
【0016】
代替的に、それは前記データセットを取得するために使用されたモバイルデバイスに対して遠隔であるデバイス上で実施され得る。この場合において、モバイルデバイスは、単に、データ取得手段、すなわち、定量的あるいは定性的に物理的および/または化学的パラメータを検知もしくは測定し、それらをモバイルデバイスから遠隔であって発明に係る方法を実施するために使用される電気信号に変換する変換手段を有する。典型的に、前記データ取得手段は、少なくとも1つのセンサを有する。1つより多いセンサ、すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、またはそれより多い異なるセンサをモバイルデバイスにおいて使用できることが理解される。データ取得のための手段として使用される典型的なセンサは、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計、近接センサ、温度計、湿度センサ、歩数計、心拍数検知器、指紋検知器、タッチセンサ、ボイスレコーダ、光センサ、圧力センサ、場所データ検知器、カメラ、および汗分析センサ等のセンサである。従って、モバイルデバイスおよび発明の方法を実施するために使用されるデバイスは、物理的に異なるデバイスであり得る。この場合において、モバイルデバイスは、データ伝達手段によって本発明の方法を実施するために使用されるデバイスと一致していてもよい。このようなデータ伝達は、同軸のファイバ、光ファイバ、もしくはツイストペアの10BASE−Tケーブル等の永続的もしくは一時的な物理的接続によって実現されてもよい。代替的に、例えば、Wi−Fi(登録商標)、LTE、LTE−Advanced、もしくはBluetooth(登録商標)等の電波を使用する一時的もしくは永続的な無線接続によって実現されてもよい。このため、本発明の方法を実施するための唯一の要件は、モバイルデバイスを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットが存在することである。前記データセットは、本発明の方法を実施するために使用されるデバイスにデータを伝送するために後に使用され得る永続的もしくは一時的なメモリデバイス上に取得するモバイルデバイスから伝達もしくは記憶されてもよい。このセットアップにおいて発明の方法を実施するリモートデバイスは、典型的に、プロセッサおよびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で実行されている時に発明の方法を実施するソフトウェアを有する。より典型的に、前記デバイスは、評価ユニットによって実施される分析の結果をユーザに提供することを可能にするスクリーン等のユーザインターフェイスを有していてもよい。
【0017】
本明細書中で使用される「識別(identifying)」は、対象者が進行性MSを患っているか否かを評価することをいう。当業者に理解され得るように、このような評価は、調査された対象者の100%に対して正しいものであることが好ましいが、そうでない場合もある。しかし、この用語は、対象者のうちの統計的に大多数の者に対して正しい評価が行われ、進行性MSを患っていると識別されることが求められる。一部が統計的に大多数であるかどうかは、例えば、信頼区間の特定、p値特定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等の、様々な周知の評価ツールを使用して当業者がこれ以上面倒なことをする必要なく特定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983において見ることができる。典型的に、見込まれる信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および少なくとも95%である。p値は、典型的に、0.2、0.1、0.05である。従って、本発明の方法は、典型的に、アクティビティの測定のデータセットを評価するための手段を設けることによって進行性MSの識別を補助する。
【0018】
本明細書で使用される「多発性硬化症(MS)」は、それを患った対象者が典型的に長期かつ重度の能力障害を生じさせる中枢神経系(CNS)の疾患に関する。MSの定義には、再発寛解型、二次進行性、一次進行性、および進行性再発の4つの標準的なサブタイプがあり、本発明に基づいて使用される用語に含まれるものでもある。MSの再発形態の用語も使用され、再発が重なる再発寛解型および二次進行性MSが含まれる。再発寛解型サブタイプは、予測不能な再発と、その後の臨床的疾患活動の新たな兆候のない数ヶ月から数年にわたる寛解の期間とによって特徴付けられる。脳卒中時(活性状態)時に被った障害は、消散し得る、もしくは後遺症を残し得る。これは、MSを患っている対象者の85%から90%における初期の経過を示す。二次進行性MSは、初期の再発寛解型MSを持つ者を示し、特定の寛解の期間のない急性の脳卒中間における進行性神経学的下降が始まる。時折の再発および少しの寛解が生じ得る。再発寛解型から二次進行性MSへの変換との間の平均期間は約19年である。一次進行性サブタイプは、初期のMS症状の後に寛解を有さない対象者の約10%から15%を示す。これは、開始から、寛解および改善が無い、もしくは時折かつ少ない回数で寛解および改善する能力障害の進行によって特徴付けられる。一次進行性サブタイプの開始の年齢は、他のサブタイプよりも遅い。進行性再発MSは、開始から安定した神経学的下降があるが、明らかな重なった脳卒中が生じている対象者を示す。後者の進行性再発表現型は一次進行性MS(PPMS)の変形であり、McDonald 2010基準によるPPMSの診断は進行性再発の変形を含むということが現在の通説である。
【0019】
MSに関連づけられる症状には、感覚の変化(感覚鈍麻および知覚異常)、筋力低下、筋痙攣、移動の困難、整合および平衡の困難(失調)、発話の問題(構音障害)もしくは嚥下の問題(嚥下障害)、視覚の問題(眼振、視神経炎および視力低下、または複視)、疲労、急性もしくは慢性的な痛み、嚢胞、性的および排便の困難が含まれる。様々な度合いの認知の障害ならびに鬱もしくは不安定な気分等の感情面の症状は、頻繁に起こる症状である。能力障害の進行および症状の厳しさに対する主たる臨床的な測定は総合障害度スケール(EDSS)である。MSのさらなる症状、当該技術においてよく知られており、例えば、Bradley WG, et al. Neurology in Clinical Practice (5th ed. 2008)等の薬物および神経学の標準的な教科書に記載されている。
【0020】
本明細書中で使用される「進行性MS」という用語は、時間の経過とともに疾患および/または症状のうちの1つ以上が悪化する状態を言う。典型的に、進行は活性状態の現出を伴う。前記進行は、患者のすべてのサブタイプにおいて起こり得る。しかしながら、典型的に、進行性MSは、再発寛解型MSを患っている対象者において本発明に基づいて特定される。
【0021】
しかし、本発明の方法は、特定的に、以下の点、
臨床的な疾患アクティビティ(すなわち、再発の発生)、
能力障害の進行、
限定されないが、McDonald Criteria 2010(Polman 2011, Ann Neurol 69:292-302)および/またはLublin et al. criteria 2013(Lublin 2014, Neurology 83: 278-286)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、一次進行性MS疾患の経過、
限定されないが、McDonald Criteria 2010(Polman loc. cit.)および/またはLublin et al. criteria 2013(Lublin loc. cit.)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、二次進行性MS疾患の経過、
限定されないが、McDonald Criteria 2010(Polman loc. cit.), および/またはLublin et al. criteria 2013(Lublin loc. cit.)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、一次進行性MS、および/または、
限定されないが、McDonald Criteria 2010 (Polman loc. cit.)および/またはLublin et al. criteria 2013(Lublin loc. cit.)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、二次進行性MS
の識別において適用され得る。
【0022】
また、特に以下のもの、
疾患アクティビティの可能性を推定するリスク予測モデル(すなわち、T2もしくはFLAIR(Fluid Attenuating Inversion Recovery)重点型の脳もしくは脊髄MRI、および/またはガドリニウム増進型病変に対する脳もしくは脊髄MRI上の再発および/または新規もしくは増大中の病変)、
限定されないが、例えば、総合障害度スケール神経衰弱(EDSS)、多発性硬化症機能評価(MSFC)、およびそれを構成する計測された25フィート歩行検査もしくは9ホールペグ検査によって測定される、多発性硬化症(MS)の診断を受けた患者における能力障害の進行の可能性を推定するリスク予測モデル、および/または、
限定されないが、McDonald Criteria 2010(Polman loc. cit.)および/またはLublin et al. criteria 2013(Lublin loc. cit.)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、再発開始MSにおける二次進行性MS疾患の経過の出現の可能性を予測するリスク予測モデル、
限定されないが、例えば、T2もしくはFLAIR重点型脳もしくは脊髄MRIにおける低速拡張性病変(SEL)の存在によって定義される一次もしくは二次進行性MS疾患経過の特定のMRI兆候、またはガドリニウム系の造影剤注入後にFLAIR重点型脳もしくは脊髄MRIにおいて検知される髄膜炎の兆候の出現の可能性を推定するリスク予測モデル
がMS患者のリスク評価に適している。
【0023】
さらにまた、方法は、以下の点、
例えば、機械学習およびパターン認識技法を使用して、特定のDMTによって治療された多発性硬化症(MS)の診断を受けた患者における進行中の疾患アクティビティ(すなわち、T2もしくはFLAIR重点型脳もしくは脊髄MRIにおいて再発および/または新しいもしくは増大している病変、および/または脳もしくは脊髄MRIにおけるガドリニウム増進型病変)のリスクによって評価される疾患修飾療法(DMT)の応答もしくは失敗の可能性を推定するアルゴリズム的解法を開発すること、
例えば、機械学習およびパターン認識技法を使用して、例えば限定されないが総合障害度スケール(EDSS)、計測された25フィート歩行検査、もしくは9ホールペグ検査によって測定される、特定のDMTによって治療された多発性硬化症(MS)の診断を受けた患者における進行中の能力障害の進行のリスクによって評価されるDMT応答もしくは失敗の可能性を推定するアルゴリズム的解法を開発すること、および/または、
例えば、機械学習およびパターン認識技法を使用して、特定のDMTによって治療された多発性硬化症(MS)の診断を受けた患者における脳MRI測定での神経系の組織損傷、および限定されないが、全脳容量、脳実質画分、全灰白質容量、皮質灰白質容量、特定の皮質領域の容量、深灰白質容量、視床容量、脳梁表面、白質容量、第三脳室容量、合計脳T2病変容量、合計脳T1病変容量、合計脳FLAIR病変容量等の神経変性の悪化のリスクによって評価されるDMT応答もしくは失敗の可能性を推定するアルゴリズム的解法を開発すること、および/または、
例えば機械学習およびパターン認識技法を使用して、限定されないが、McDonald Criteria 2010 (Polman loc. cit.)および/またはLublin et al. criteria 2013 (Lublin loc. cit.)等の確立されたコンセンサス基準によって定義される、再発開始MSにおける二次進行性MSの疾患経過の出現の可能性を推定するアルゴリズム的解法を開発すること、
に関連して適用され得る。
【0024】
本明細書中で使用される「対象者」という用語は、動物を言い、典型的に、哺乳類に関する。特に、対象者は、霊長類であり、最も典型的には、人間である。本発明に係る対象者は、MSを患っている、もしくは患っていることが疑われ、すなわち、前記疾患に関連付けられた一部もしくはすべての症状を既に示し得る。
【0025】
「少なくとも1つの」の用語は、1つ以上の能力パラメータを意味し、発明に基づいて特定され得る、すなわち、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、もしくはそれ以上の数の異なる能力パラメータであり得る。従って、本発明の方法に基づいて特定され得る異なるパラメータの数に制限はないが、典型的に、特定されるアクティビティの測定のデータセット毎に1つから3つの能力パラメータがある。
【0026】
本明細書中で使用される「能力パラメータ」の用語は、対象者が特定の物理アクティビティまたは認知アクティビティを行う能力を示し、特に、これは、対象者の運動の能力および機能および/または微細な運動の能力および機能、歩行、色視覚、注意、器用さ、および/または認知能力、生活の質、疲労、精神状態、気分、視覚、および/または認知を示すパラメータである。測定されるアクティビティのタイプに応じて、能力パラメータは、対象者に対して行われるアクティビティの測定によって取得されるデータセットから導き出され得る。このような能力パラメータは、特定のアクティビティを行うために必要な時間に基づき得る、例えば、特定のアクティビティが行われる速度もしくは頻度であり得る、またはアクティビティ間の間隔の長さであり得る。さらに、タスクが行われる正確さに基づき得る、または行うことのできるタスクの量に基づき得る。本発明に関連して使用される特定の能力パラメータは、測定されるアクティビティに応じており、本明細書中において詳細にリストアップされる。
【0027】
「アクティビティの測定のデータセット」の用語は、アクティビティの測定時に対象者からモバイルデバイスによって取得されたデータの全体、または能力パラメータを導き出すために有用な前記データの任意のサブセットを言う。評価する対象の認知機能および運動機能の疾患または障害に応じて変わってくる。MSの場合、能力検査の間にモバイルデバイスによって行い、測定する対象のアクティビティには、一般に、能動的歩行検査、特に、2分間歩行検査(2MWT)および5回Uターン検査(5UTT)、受動的な継続的歩行分析 (CAG)、起立性の姿勢および平衡検査、特に、静的平衡検査(SBT)、精神状況質問票への回答、特に、多発性硬化症インパクト・スケールの29項目の質問票(MSIS29の質問票)および/または多発性硬化症の症状トラッカー(MSST)を実施することによる、生活の質および疾患の症状に関する質問への回答がある。さらに、アクティビティの測定のデータセットは、特定の時間ウィンドウ(例えば、日常ルーチンの間)の間に行われる対象者の活動の全てまたは所定のサブセットの能動的なモニタリングによって取得し得る。これらの測定は、対象者の生活の質、疲労、精神状態、および/または、気分の評価を可能にする。こういうわけで、受動的なモニタリングは、歩行の連続的な測定、一般的な日常ルーチンにおける運動の量(例えば、歩行の頻度および/または速度)、日常ルーチンにおける運動の種類(例えば、起立/着座する能力および/または速度)、例えば訪問場所の多さ/少なさによって示されるような日常生活における通常の移動性、例えば訪問場所の種類における変動によって示されるような移動行動における変動を含み得る。
【0028】
以下では、特定の見込まれるアクティビティ検査、および本発明の方法に基づきモバイルデバイスによって測定するための手段について詳述する。
【0029】
(1)コンピュータ実施(電子的)符号数字モダリティ検査(eSDMT)
実施形態において、モバイルデバイスは、電子的符号数字モダリティ検査(eSDMT)を実行する、もしくはこの検査からデータを取得するように適合される。従来の紙バージョンのSDMT検査は、最大で90秒間表示される120個の符号の配列と、所与の順序の9つの符号の基準レジェンドキー(3つのバージョンが利用可能)と、それぞれの対応する1から9の数字とからなる。スマートフォンベースのeSDMTは、患者が自身で実施するものであり、符号の配列として、典型的に、110個の符号の同じ配列、および基準レジェンドキー間での無作為変更(1つの検査を次に形成する)、典型的に、SDMTの紙/口頭バージョンの3つの基準レジェンドキーを使用する。eSDMTは、紙/口頭バージョンと同様に、90秒等の所定の時間窓における特定の数字を用いて抽象符号とのペアリングの速度(正しい応答のペアの数)を測定する。検査は、典型的に、週毎に行われるが、代わりに、高い頻度(日毎)もしくは低い頻度(2週毎)で行われ得る。検査は、代替的に、110個より多い符号、および基準レジェンドキーのより進化したバージョンを含む。符号配列は、無作為、もしくは任意の他の変更を加えた所定の配列に基づいて実施され得る。
【0030】
対象となる典型的なeSDMT能力パラメータ:
1.正しい応答の数
a.90秒以内の全体的な正しい応答(CR)の総数(口頭/紙のSDMTと同様)
b.時間0から30秒までの正しい応答数(CR0-30
c.時間30から60秒までの正しい応答数(CR30-60
d.時間60から90秒までの正しい応答数(CR60-90
e.時間0から45秒までの正しい応答数(CR0-45
f.時間45から90秒までの正しい応答数(CR45-90
g.時間iからj秒までの正しい応答数(CRi-j)。ここで、i、jは1〜90秒の間であり、かつ、i<jである。
【0031】
2.エラーの数
a.90秒間のエラーの総数(E)
b.時間0から30秒までのエラーの数(E0-30
c.時間30から60秒までのエラーの数(E30-60
d.時間60から90秒までのエラーの数(E60-90
e.時間0から45秒までのエラーの数(E0-45
f.時間45から90秒までのエラーの数(E45-90
g.時間iからj秒までのエラーの数(Ei-j)。ここで、i、jは1〜90秒の間であり、かつ、i<jである。
【0032】
3.応答の数
a.90秒間の応答の総数(R)
b.時間0から30秒までの応答の数(R0-30
c.時間30から60秒までの応答の数(R30-60
d.時間60から90秒までの応答の数(R60-90
e.時間0から45秒までの応答の数(R0-45
f.時間45から90秒までの応答の数(R45-90
【0033】
4.正解率
a.90秒に亘っての平均正解率:AR=CR/R
b.時間0から30秒までの平均正解率:AR0-30=CR0-30/R0-30
c.時間30から60秒までの平均正解率:AR30-60=CR30-60/R30-60
d.時間60から90秒までの平均正解率:AR60-90=CR60-90/R60-90
e.時間0から45秒までの平均正解率:AR0-45=CR0-45/R0-45
f.時間45から90秒までの平均正解率:AR45-90=CR45-90/R45-90
【0034】
5.作業終了時の疲労指数
a.ラスト30秒でのスピード疲労指数(SFI):SFI60-90=CR60-90/max(CR0-30,CR30-60
b.ラスト45秒でのSFI:SFI45-90=CR45-90/CR0-45
c.ラスト30秒での正解疲労指数(AFI):AFI60-90=AR60-90/max(AR0-30,AR30-60
d.ラスト45秒でのAFI:AFI45-90=AR45-90/AR0-45
【0035】
6.連続した正しい応答の最長の一続き
a.90秒での連続した正しい応答(CCR)全体の最長の一続きの中での正しい応答の数
b.時間0〜30秒における連続した正しい応答(CCR0-30)の最長の一続きの中での正しい応答の数
c.時間30〜60秒における連続した正しい応答(CCR30-60)の最長の一続きの中での正しい応答の数
d.時間60〜90秒における連続した正しい応答(CCR60-90)の最長の一続きの中での正しい応答の数
e.時間0〜45秒における連続した正しい応答(CCR0-45)の最長の一続きの中での正しい応答の数
f.時間45〜90秒における連続した正しい応答(CCR45-90)の最長の一続きの中での正しい応答の数
【0036】
7.応答間の時間ギャップ
a.2つの連続した応答の間のギャップ(G)時間の連続変数分析
b.90秒に亘っての、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ(GM)時間
c.時間0〜30秒の、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ時間(GM0-30
d.時間30〜60秒の、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ時間(GM30-60
e.時間60〜90秒の、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ時間(GM60-90
f.時間0〜45秒の、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ時間(GM0-45
g.時間45〜90秒の、2つの連続した応答の間に経過した最大ギャップ時間(GM45-90
【0037】
8.正しい応答間の時間ギャップ
a.2つの連続した正しい応答の間のギャップ(Gc)時間の連続変数分析
b.90秒に亘っての、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ(GcM)時間
c.時間0〜30秒の、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ時間(GcM0-30
d.時間30〜60秒の、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ時間(GcM30-60
e.時間60〜90秒の、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ時間(GcM60-90
f.時間0〜45秒の、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ時間(GcM0-45
g.時間45〜90秒の、2つの連続した正しい応答の間に経過した最大ギャップ時間(GcM45-90
【0038】
9.eSDMT中に得られる微細な指運動スキル機能パラメータ
a.90秒に亘って応答をタイプしている間におけるタッチスクリーンへの接触時間(Tts)、タッチスクリーン接触(Dts)と最も近い標的数字キーの中心とのずれ、および誤タイプされたタッチスクリーン接触(Mts)(すなわち、キー打ちを開始させない接触もしくはキー打ちを開始させる接触ではなく、スクリーン上の二次スライドに関連付けられる)の連続変数分析
b.0秒から30秒の間のそれぞれのエポック数の変数:Tts0-30、Dts0-30、Mts0-30
c.30秒から60秒の間のそれぞれのエポック数の変数:Tts30-60、Dts30-60、Mts30-60
d.60秒から90秒の間のそれぞれのエポック数の変数:Tts60-90、Dts60-90、Mts60-90
e.0秒から45秒の間のそれぞれのエポック数の変数:Tts0-45、Dts0-45、Mts0-45
f.45秒から90秒の間のそれぞれのエポック数の変数:Tts45-90、Dts45-90、Mts45-90
【0039】
10.単一の符号もしくは符号の集合による能力の符号特定分析
a.9つの符号の個々およびそれら全てについて考えられる集合の組み合わせのCR
b.9つの符号の個々およびそれら全てについて考えられる集合の組み合わせのAR
c.9つの符号の個々およびそれら全てについて考えられる集合の組み合わせの記録された応答に対する以前の応答からのギャップ時間(G)
d.個別の9つの符号および個別の9つの数字応答についての誤った代入のタイプを探索することによる正しい応答における優先度を認識するためのパターン分析
【0040】
11.学習および認知予備力分析
a.連続したeSDMTの実施間のCR(♯9に記載のように全体および符号特定)におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
b.連続したeSDMTの実施間のAR(♯9に記載のように全体および符号特定)におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
c.連続したeSDMTの実施間の平均GおよびGM(♯9に記載のように全体および符号特定)におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
d.連続したeSDMTの実施間の平均GcおよびGcM(♯9に記載のように全体および符号特定)におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
e.連続したeSDMTの実施間のSFI60-90およびSFI45-90におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
f.連続したeSDMTの実施間のAFI60-90およびAFI45-90におけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
g.連続したeSDMTの実施間のTtsにおけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
h.連続したeSDMTの実施間のDtsにおけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
i.連続したeSDMTの実施間のMtsにおけるベースラインからの変化(ベースラインは、最初の2回の検査の実施からの平均性能として定義される)
【0041】
(2)歩行能力と、歩行/ストライドの力学の測定のためのセンサベースの(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、全地球測位システム[GPS])および、コンピュータによって実現される検査、特に、2分間歩行検査(2MWT)や5回Uターン検査(5UTT)、歩行能力、ステップ/ストライドの力学、および受動的な継続的歩行分析(CAG)によって収集された、歩行中の上肢運動機能の検査
【0042】
一実施形態では、モバイルデバイスは、2分歩行検査(2MWT)を行い、または、2分歩行検査(2MWT)からのデータを獲得するよう適合される。この検査の目的は、2分歩行検査(2MWT)における歩行の特徴を捕捉することにより、長距離歩行における支障、疲労性、または異常なパターンを評価することにある。データはモバイルデバイスから捕捉される。ストライド長およびステップ長の減少、ストライドの持続時間の増加、ステップの持続時間および非対称性の増加、周期的なストライド/ステップの減少を、障害の進行、または病気のぶり返しの発生の場合に確認し得る。歩行中の腕振りの力学も、モバイルデバイス経由で評価される。対象者は、「2分間、できる限り速くかつ長く歩行するが、安全に歩行する」よう指示される。2MWTは、屋内または屋外で(Uターンなしで200メートル以上も連続して歩行し得ると患者が明確にした場所における平坦な地面の上で)行うことが必要な単純な検査である。対象者は、通常の履き物や支援装置および/または矯正器具を用いることが許される。検査は通常、日次で行われる。
【0043】
特に対象となる、典型的な2MWTの能力パラメータ:
1 .歩行速度および痙縮の代用:
a 例えば、2分間で検知されたステップの合計数(ΣS)
b 例えば、2分間で検知された、休憩のための停止の合計数(ΣRs)
c 2MWT全体を通した歩行ステップ時間(WsT)の持続時間の連続変数分析
d 2MWT全体を通した歩行ステップ速度(WsV)(ステップ/秒)の連続変数分析
e 2MWT全体を通したステップ非対称率(1ステップと次のステップとの間のステップ持続時間の平均差を、平均ステップ持続時間で除算した結果):SAR=meanΔ(WsTx−WsTx+1)/(120/ΣS)
f 20秒のエポック毎に検出されたステップの合計数(ΣSt,t+20
g 20秒のエポックそれぞれにおける歩行ステップ時間の平均持続時間:WsTt,t+20=20/ΣSt,t+20
h 20秒のエポックそれぞれにおける平均歩行ステップ速度:WsVt,t+20=ΣSt,t+20/20
i 20秒のエポックそれぞれにおけるステップ非対称率:SARt,t+20=meant,t+20(WsTx−WsTx+1)/(20/ΣSt,t+20
j バイオメカニカルモデリングによる歩行の距離合計およびステップ長
【0044】
2 歩行疲労性指数:
k 減速指数:DI=WsV100-120/max(WsV0-20,WsV20-40,WsV40-60
l 非対称性指数:AI=SAR100-120/min(SAR0-20,SAR20-40,SAR40-60
【0045】
別の実施形態では、モバイルデバイスは、5回Uターン検査(5UTT)を行い、または5回Uターン検査(5UTT)からのデータを獲得するよう適合される。この検査の目的は、快適なペースでの短距離の歩行中でUターンを行ううえでの支障または異常なパターンを評価することにある。5UTTは、屋内または屋外で(「安全に歩行し、数メートル離れた2地点間を行ったり、来たりするUターンを連続して5回行う」よう患者が指示される平坦な地面の上で)行うことが必要である。歩行特徴データ(ステップ数の変動、Uターン中のステップ持続時間および非対称性、Uターンの持続時間、Uターン中の腕振りの変動およびターン速度)はモバイルデバイスによって捕捉される。対象者は、必要に応じて、通常の履き物や支援装置、および/または矯正器具を使用することが許される。検査は通常、日次で行われる。
【0046】
対象となる典型的な5UTT能力パラメータ:
1 完全なUターンの開始から終了までに必要なステップの平均数(ΣSu)
2 完全なUターンの開始から終了までに必要な時間の平均(Tu)
3 平均歩行ステップ持続時間:Tsu=Tu/ΣSu
4 ターン方向(左/右)
5 ターン速度(度/秒)
【0047】
さらに別の実施形態では、モバイルデバイスは、継続的歩行分析(CAG)を行い、または継続的歩行分析(CAG)からのデータを獲得するよう適合される。センサから捕捉された歩行特徴データ(ステップ数、持続時間並びに非対称性、および歩行中の腕振りの力学)の継続的な記録により、歩行の力学の日次の量および品質の受動的なモニタリングが可能になる。アクティビティの検知は、歩行検知/分析およびアクティビティ分析に先行する段階である。アクティビティ検知は、幾分高度な種々の手法(加速度計の信号の標準偏差が0.01gを超える場合、1秒のウィンドウをアクティブとみなす、Rai 2012, Zee: zero-effort crowdsourcing for indoor localization. Proceedings of the 18th annual international conference on Mobile computing and networking. ACM; Alsheikh, M. A., Selim, A., Niyato, D., Doyle, L., Lin, S., & Tan, H.-P. (2015). Deep Activity Recognition Models with Triaxial Accelerometers. arXiv preprint arXiv:1511.04664; or Ordonez, F. J., & Roggen, D. (2016). Deep Convolutional and LSTM Recurrent Neural Networks for Multimodal Wearable Activity Recognition. Sensors, 16(1), 115)に基づき得る。検査は通常、日次で行われる。
【0048】
対象となる、典型的なCAG能力パラメータ:
1日の歩行範囲および速度の代用:
a アクティブな記録の日毎に検知されたステップの合計数(ΣSd)
b アクティブな記録の日毎に検知された歩行の合計累積時間(ΣT)
c アクティブな記録の日毎の連続的な歩行の間隔の合計数(ΣId)
d アクティブな記録の日毎の連続的な歩行の各間隔内で検知されたステップの数の頻度分布(ΔSi)
e アクティブな記録の日毎の連続的な歩行の単一の間隔におけるステップの最大数(Scmax)
f アクティブな記録の日毎の歩行ステップ時間の平均持続時間:WsT=ΣT/ΣSd
g アクティブな記録の日毎の平均歩行ステップ速度:WsV=ΣSd/ΣT(step/min)
h バイオメディカルモデリングによって導き出される、日毎に歩行した距離合計およびステップ長
i 時刻毎の変数#a−h
【0049】
(3)起立性の姿勢および平衡の測定のための、センサベース(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計)の検査、およびコンピュータによって実現される検査、特に、静的平衡検査(SBT)
【0050】
一実施例では、モバイルデバイスは、静的平衡検査(SBT)を行い、または静的平衡検査(SBT)からのデータを獲得するよう適合される。この検査の目的は、成人人口における静的平衡および転倒リスクを評価するよう企図された14項目の客観的な尺度である広く使用されているバーグ平衡スケール(BBS)の項目の1つ(すなわち、支援なしの起立)にあるような、対象者の静的平衡機能を評価することにある。データは、スマートフォンやスマートワッチのセンサによって捕捉される。対象者は、スマートフォンをポケットに入れ、かつ可能な限り、身体に沿ってまっすぐ、腕を楽にして、30秒間、支援なしで動かないで立っているよう求められる。転倒リスクおよび/または静的平衡機能の損傷が増大している個人は、姿勢制御の変化(揺れ)、および腕の異常な動きを表し得る。
【0051】
対象となる典型的なSBT能力パラメータ:
1 揺れがぴくぴく動くこと:加速度の時間微分(Mancini M et al. J Neuroeng Rehabil. 2012; 22: 9:59)
2 揺れの経路:合計軌道長
3 揺れの範囲
【0052】
(4)微細な運動能力、特に手運動機能を評価する(微細な運動の評価)コンピュータ実施検査、特に、タッチスクリーンベースの「形状描画」および「形状押し潰し」検査。
【0053】
さらに他の実施形態において、モバイルデバイスは、微細な運動の評価および特に手運動機能検査を実施もしくはそこからデータを取得するように適合される。手先の器用さ(手運動機能)は、手および指の動作を整合させるとともに適時に対象物を操作する個人の能力を特徴付ける。手先の器用さは、日々の活動、仕事に関連するタスクの完了、およびレジャーアクティビティへの参加における対象者の能力に大きく影響を与える。
【0054】
手先の器用さは、運動、認知、感覚、および感情面の機能を測定する簡潔でありながら包括的な手段を開発したNIH Blueprint for Neuroscience Researchの提案の一部として、神経および行動機能の評価のための国立衛生研究所ツールボックス(NIH)ツールボックスを組み入れるための中心的構成として2007年に確認された。既存の測定手段を検討した後、専門家は、NIHツールボックスに将来的に含むべき手先の器用さの測定手段の候補として、1)9ホールペグ検査(9HPT)および2)グルーブドペグボード検査(GPT)の2つの測定手段を推奨している。これは、これらの検査が、寿命にわたる適用可能性、心理的健常性、簡潔性(1回の試験にかかる完了時間が比較的短い)、および多様な設定における適用可能性を有するためである。
【0055】
主として、9HPTは、最も多くの組み入れ基準を満たしており、すべての年齢のグループ、特に若い子供に対する検査の実施が容易であることから選択された。9ホールペグ検査の実施にかかる時間は、NIHツールボックスへの組入に必要とされるように、短いものである(両手の測定について5分未満)。既存の文献では、9HPTは、信頼性の高い有効な指の器用さを測定する手段であり、様々な診断群(すなわち、多発性硬化症、発作、脳性小児麻痺、小脳障害、およびパーキンソン病)における手の器用さを評価することができるものとして、支持されている。
【0056】
9HPTの規範的データは、子供および高齢の大人を含む年齢層にわたって公開され、90年代後期からは、9HPTは、多発性硬化症機能評価(MSFC)スケールからの機能的上肢評価の主要な構成要素を表す。
【0057】
また、本発明に基づき、ユーザーフレンドリーなモバイルデバイスインターフェイス上に、神経障害における手運動機能の遠隔自己評価を可能にするための9HPTおよびGPTの特徴を複製することを目的とし、2つのタッチスクリーンベースのアプリケーション検査「形状描画」および「形状押し潰し」が開発された。「形状描画」および「形状押し潰し」検査は、上肢運動機能および手先の器用さ(摘む、描画する)を評価するとともに、上肢神経系の錐体路、錐体外路、感覚、および小脳構成要素における変化および異常のみならず、上肢機能の神経筋および筋性の改変に対しても感度が高い。検査は、典型的に、日毎に行われるが、代替的により低い頻度(例えば、週毎もしくは2週毎)に行うこともできる。
【0058】
「形状描画」検査の目的は、良好な指の制御および脳卒中シーケンスを評価することにある。検査は、振戦、痙攣、および損なわれた手と目の整合等の損なわれた手運動機能の側面をカバーするものと考えられる。患者は、検査されていない手でモバイルデバイスを持ち、例えば30秒の最長時間内に「出来るだけ早く正確に」検査される手の第二指を用いて複雑さが増加する(線形、矩形、円形、正弦、および螺旋(下記参照))6つの事前に書かれた変化する形状をモバイルデバイスのタッチスクリーン上に描画するように指示される。形状を上手く描画するためには、患者の指は、タッチスクリーン上で継続的にスライドし、全ての示されたチェックポイントを通過するとともに出来るだけ描画軌跡の境界内に維持して示された開始点と終了点とを繋がなければならない。患者は、最大で2回の試みで、6つの形状の各々を上手く完成させる。試験は、右手と左手で交互に行われる。ユーザは、日毎に変更するように指示される。2つの線型形状は、各々が特定数「a」個の繋がれるチェックポイント、すなわち、「a−1」個のセグメントを有する。正方形形状は、特定数「b」個の繋がれるチェックポイント、すなわち、「b−1」個のセグメントを有する。円形形状は、特定数「c」個の繋がれるチェックポイント、すなわち、「c−1」個のセグメントを有する。8の字形状は、特定数「d」個の繋がれるチェックポイント、すなわち、「d−1」個のセグメントを有する。螺旋形状は、特定数「e」個の繋がれるチェックポイント、「e−1」個のセグメントを有する。6つの形状を完成させることにより、合計で「(2a+b+c+d+e+6)」個のセグメントを上手く描画できている事を示している。
【0059】
典型的な形状描画検査の対象となる能力パラメータ:
形状の複雑さに基づき、線形および正方形形状には1の荷重係数(Wf)が関連付けられ、円形および正弦形状には2の荷重係数が関連付けられ、螺旋形状には3の荷重係数が関連付けられる。2回目の試みで上手く完成した形状は、0.5の荷重係数が関連づけられる。これらの荷重係数は、本発明において変更することができる数値例である。
【0060】
1 形状完了能力スコア:
a 成功裏に完了した形状の数(0〜6)(ΣSh)(検査毎)
b 1回目の試行で成功裏に完了した形状の数(0〜6)(ΣSh1
c 2回目の試行で成功裏に完了した形状の数(0〜6)(ΣSh2
d 全ての試行での失敗/未完了形状(0〜12)(ΣF)
e 異なる複雑度に対する重み付け係数で調整した成功裏に完了した形状の数を反映する形状完了スコア(0〜10)(Σ[Sh*Wf])
f 異なる複雑度に対する重み付け係数で調整した成功裏に完了した形状の数を反映し、(1回目の試行での成功)対(2回目の試行での成功)に相当する形状完了スコア(0〜10)(Σ[Sh1*Wf]+Σ[Sh2*Wf*0.5])
g #1eおよび#1fで定義された形状完了能力スコアは、30/tで乗算された場合、速度に相当し得、tは検査完了時間(秒)を表す。
h 特定期間内の複数の検査に基づいた、6つの個々の形状毎の、全体の完了率および1回目の試行での完了率:(ΣSh1)/(ΣSh1+ΣSh2+ΣF)および(ΣSh1+ΣSh2)/(ΣSh1+ΣSh2+ΣF)
【0061】
2 セグメント完了および敏速性能力スコア/測定:(該当する場合、形状毎の2回の試行の最善結果[完了済セグメントの最高数]に基づいた分析)
a 成功裏に完了したセグメントの数(0〜[2a+b+c+d+e−6])(ΣSe)(検査毎)
b 成功裏に完了したセグメントの平均敏速性([C]、セグメント/秒):C=ΣSe/t、tは検査完了時間(秒)を表す(最大30秒)。
c 異なる複雑度に対する重み付け係数で調整した成功裏に完了したセグメントの数を反映するセグメント完了スコア(形状毎)(Σ[Se*Wf])
d 速度調整され、重み付けされたセグメント完了スコア(Σ[Se*Wf]*30/t)、tは検査完了時間(秒)を表す。
e 直線状の形状および正方形の形状について成功裏に完了したセグメントの形状特有数(ΣSeLS
f 円形の形状および正弦曲線の形状について成功裏に完了したセグメントの形状特有数(ΣSeCS
g らせん状の形状について成功裏に完了したセグメントの形状特有数(ΣSeS
h 直線状の形状および正方形の形状の検査において行われた、成功裏に完了したセグメントの形状特有の直線状の形状の平均敏速性:CL=ΣSeLS/t、tは、これらの特定の形状内の、成功裏に完了した対応するセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポックタイム(秒)を表す。
i 円形の形状および正弦曲線の形状の検査において行われた、成功裏に完了したセグメントの形状特有の円形の形状の平均敏速性:CC=ΣSeCS/t、tは、これらの特定の形状内の、成功裏に完了した対応するセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポックタイム(秒)を表す。
j らせん状の形状の検査において行われた、成功裏に完了したセグメントの形状特有のらせん状の形状の平均敏速性:CS=ΣSeS/t、tは、これらの特定の形状.内の、成功裏に完了した対応するセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポックタイム(秒)を表す。
【0062】
3 描画精度能力スコア/測定:
(該当する場合、形状毎の2回の試行の最善結果[完了済セグメントの最高数]に基づいた分析)
a 特定の形状毎に到達した開始チェックポイントから終了チェックポイントまでの目標描写経路と描写済軌道との間の統合表面偏差の曲線(AUC)測定下の全体面積の和を(到達した開始チェックポイントから終了チェックポイントまでの)これらの形状内の対応する目標経路の合計累積長で除算して算出される偏差(Dev)
b #3aにおいて、しかし、特に、直線状の形状および正方形の形状の検査結果から、Devとして算出される直線状の形状の偏差(DevL)
c #3aにおいて、しかし、特に、円形の形状および正弦曲線の形状の検査結果から、Devとして算出される円形の形状の偏差(DevC)
d #3aにおいて、しかし、特に、らせん状の形状の検査結果から、Devとして算出されるらせん状の形状の偏差(DevS)
e 少なくとも3つのセグメントが最善の試行内で成功裏に完了した形状についてのみ該当する、別個の6つの形状検査結果それぞれから別々に、Devとして算出されるらせん状の形状の偏差(Dev1−6)
f 形状特有の、または形状不可知の全体の偏差を目標軌道から算出するいずれかの他の手法の連続変数分析
【0063】
形状押圧検査の目的は、ピンチ閉手指動作の精度を評価することにより、微細な遠位運動操作(グリッピングおよびグラスピング)を評価することにある。上記検査は、損なわれた手運動機能の局面、すなわち、損なわれたグリッピング/グラスピング機能、筋力低下や、損なわれた目と手の整合を包含すると考えられる。患者は、未検査の手にモバイルデバイスを保持し、かつ、同じ手の2本の指(親指+第2指または親指+第3指)で画面をタッチすることにより、30秒内に丸い形状を可能な限り多く、押圧/ピンチするよう指示される。損なわれた微細な遠位運動操作は、能力に影響を及ぼす。検査は右手および左手で交互に実施する。ユーザは日々交互に指示される。
【0064】
典型的な関心のある形状押し潰し検査能力パラメータ:
1 押し潰し済形状の数
a 30秒間に押し潰されたトマトの形状の合計数(ΣSh)
b 30秒間に、1回目の試行で押し潰されたトマトの合計数(ΣSh1)(検査のまさに第1回目の試行でない場合にも、成功裏に行われた押し潰しに続く、第1のダブルコンタクトとして1回目の試行が検知される)
【0065】
2 ピンチング精度測定:
a 検査の合計持続時間内の、(別個に検知された、画面上のダブルフィンガーコンタクトの合計数として測定された)ピンチング(ΣP)試行の合計数でΣShを除算した結果として定義されたピンチング成功率(PSR
b 検知されたダブルコンタクト全てについて、第1指の画面タッチと第2指の画面タッチとの間の遅延時間として測定されたダブルタッチ非同期性(DTA)
c 検知されたダブルコンタクト全てについての、ダブルコンタクト時点での2本の手指の開始タッチ点間の等距離点からトマトの形状の中心までの距離として測定されたピンチング目標精度(PTP
d 成功裏にピンチングするダブルコンタクト全てについての、ダブルコンタクト開始点からピンチ・ギャップに到達するまでに、2本の手指が摺動したそれぞれの距離間の比率(最長/最短)として測定されたピンチング手指運動非対称性(PFMA
e 成功裏にピンチングするダブルコンタクト全てについての、ダブルコンタクト時からピンチ・ギャップに到達するまでの、画面上でのそれぞれの手指および/または両方の手指の速度(mm/秒)として測定されたピンチング指速度(PFV
f 成功裏にピンチングするダブルコンタクト全てについての、ダブルコンタクト時からピンチ・ギャップに到達するまでの、画面上での個々の手指の速度間の比率として測定されたピンチング手指非同期性(PFA
g 経時的な2a乃至2fの連続変数分析、および可変持続時間(5〜15秒)のエポック毎のそれらの分析
h 検査済の形状(特に、らせん状の形状および正方形の形状)全てについての、目標描写軌道からの偏差の統合測定の連続変数分析
【0066】
(5)感情状態および健康を評価する、コンピュータによって実現される検査(特に、精神状況質問票(MSQ)
【0067】
一実施形態では、モバイルデバイスは、精神状況質問票(MSQ)を実施し、または、精神状況質問票(MSQ)からのデータを獲得するよう適合される。うつ病は、その種々の形態では、MS患者の一般的な症状であり、治療しないままでいると、生活の質を低下させ、疲労、痛み、認知的な変化を含む他の症状が悪くなっている感じにさせ、生命を脅かすことがあり得る(National MS Society)。したがって、患者が認識する全般的な状態を評価するために、患者は、モバイルデバイス上の5項目の質問を通じて、どのように感じているかについて尋ねられる。
【0068】
対象となる典型的なMSQ能力パラメータ:
1 先週、前月、および前年においてすばらしい気分であった日の割合
2 先週、前月、および前年において少なくとも良い気分であった日の割合
3 先週、前月、および前年において少なくとも満足のゆく気分であった日の割合
4 先週、前月、および前年においてこの上なく不快な気分であった日の割合
5 先週中、前月中、および前年中における、午前6時−8時、午前8時−10時、午前10時−12、12時−14時、14時−16時、16時−18時、18時−20時、20時−24時、午前0時−6時の時刻毎の回答の頻度分布
【0069】
(6)生活の質(特に、多発性硬化症の29項目のインパクト・スケールMSIS29)を評価する、コンピュータによって実現される検査
【0070】
一実施形態では、モバイルデバイスは、多発性硬化症の29項目のインパクト・スケールMSIS−29)の検査を行い、または多発性硬化症の29項目のインパクト・スケールMSIS29)の検査からのデータを獲得するよう適合される。対象者の日常生活に対するMSの影響を評価するために、対象者は、2週に一度、モバイルデバイス上でMSIS−29(Hobart 2001, Brain 124: 962-73)に入力するよう求められる。MSIS-29は、患者の観点からMSの身体面の影響(項目1〜20)および心理面の影響(項目21〜29)を測定するよう企図された29項目の質問表である(Hobart 2001, Brain 124: 962-73)。項目毎に4ポイントのカテゴリー(「全くない」、「少しある」、「適度にある」、「極めてある」)を有する、MSIS−29の第2版を使用する。MSIS−29のスコアは29乃至116にわたる。身体面の影響のスケールに関するスコアは20乃至80にわたり得、心理面の影響のスケールに関するスコアは9乃至36にわたり得、低いスコアはMSの影響が小さく、高いスコアはMSの影響が大きいことを示す。歩行/下肢および手/腕/上肢の身体機能に関するMSIS−29v2の項目#4および#5、並びに、項目#2、#6、および#15はそれぞれ、別個のクラスタ分析を受ける。テストは通常、隔週で行われる。
【0071】
対象となる典型的なMSIS−29(v2)能力パラメータ:
1 MSIS−29のスコア(29−116)
2 MSIS−29の身体面の影響のスコア(20−80)
3 MSIS−29の心理面の影響のスコア(9−36)
4 MSIS−29の歩行/下肢のスコア(2−10)
5 MSIS−29の手/腕/上肢のスコア(3−15)
6 問いかけられた質問を理解し、回答を提供するのに必要な最小時間に基づいた、1乃至5の、時間によって修正/フィルタリングされたMSIS−29のスコア
7 特定の質問の回答の変更の数、および提供された回答間の差/ばらつきに基づいた、1乃至6の、確信度で重み付けされたMSIS−29のスコア
8 MSIS−29中に捕捉された、微細な手指運動のスキル機能パラメータ
a タッチスクリーン・コンタクトの持続時間(Tts)の継続的変数分析
b タッチスクリーン・コンタクトと、最も近い対象桁キーの中心との間の偏差(Dts)の継続的変数分析
c タイプミスしたタッチスクリーン・コンタクトの数(Mts)(回答のタイプ入力中の、キーのヒットをトリガーしないか、または、画面上の2次的なスライディングに関連しているが、キーのヒットをトリガーするコンタクトの和)
9 eSDMTの対応する変数に対する、eSDMT中の6a、6b、および6cの変数の比率(90秒毎のMSIS−29の場合、6cを変換/正規化してMtsの予測数を表す)
【0072】
(7)新たな、または悪化している疾患の症状の発生を追跡する、コンピュータによって実現される検査、特に、多発性硬化症の症状トラッカー(MSST)
【0073】
さらなる実施形態において、モバイルデバイスは、多発性硬化症の症状トラッカー(MSST)を行い、または多発性硬化症の症状トラッカー(MSST)からのデータを獲得するよう適合される。病気のぶり返しの発生および症状のばらつきの患者の認識は、病気のぶり返しとしてみなされる臨床的に適切な症状の悪化と異なり得るので、新たな/悪化している症状の検知を意図した単純な質問を、スマートフォン上で2週間に一度、患者に対して直接、投げかけ、MSIS−29の質問表と同期させる。患者は、それに加え、いつでも、症状、および発症のそれぞれの日付の報告の可能性を有する。MSSTは通常、2週間に一度、または要求に応じて、行い得る。
【0074】
対象となる典型的なMSST能力パラメータ:
1 (症状の発生の日時点での)前月および前年における「最後の2週間の、新たな、または顕著に悪化している症状」の報告された発生例の数
2 前年における「病気のぶり返し」対「病気のぶり返しでない」対「確かでない」とみなされた、「最後の2週間の、新たな、または顕著に悪化している症状」の報告された発生例の合計数の割合
【0075】
(8)特定の時間ウィンドウにおいて行われる対象者のアクティビティの全てまたは所定のサブセットの、コンピュータによって実現される受動的モニタリング
【0076】
さらに別の実施形態では、モバイルデバイスはアクティビティの全てまたはサブセットの受動的モニタリングを行い、またはアクティビティの全てまたはサブセットの受動的モニタリングからのデータを取得するように構成される。特に、受動的モニタリングは、歩行の測定、通常のデイリールーチンにおける運動量、デイリールーチンにおける運動の種類、日常生活における通常の移動性、および移動のふるまいの変化からなる群から選択される、1または2以上の日、あるいは1または2以上の週などの所定のウィンドウ中に行われる1つまたは2以上のアクティビティのモニタリングを包含する。
【0077】
対象となる典型的な受動的モニタリング能力パラメータ:
a 歩行の頻度および/または速度。
b 立ち上がる/座って静止しバランスをとるための量、能力、速度
c 一般的な移動性の指標としての訪問場所の数
d 移動行動の指標として訪れた場所の種類。
【0078】
本発明に従って適用されるモバイルデバイスは、前述のアクティビティ検査のうちの1つ以上を実行するように構成され得ることが理解される。特に、モバイルデバイスは、これらの検査のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つすべての検査を実施するように構成され得る。典型的には、検査の組み合わせはモバイルデバイス上で実施されてもよい。前記組み合わせは、より典型的には、検査番号(5)〜(7)のうちのいずれか1つまたはすべて、または、検査番号(1)〜(4)のうちのいずれか1つまたはすべてまたは検査番号(8)を含む。より具体的には、少なくとも検査番号(4)として指定されているような精密な自動車評価のための検査、および最も典型的には形状を描画検査および/または形状押し潰し検査を実施しなければならない。
【0079】
さらに、モバイルデバイスは、他の認知検査および/または視覚的コントラスト視力検査(低コントラスト文字視力または石原式色覚異常検査表など(Bove 2015、loc。Cit参照)のコンピュータ実装バージョンなどのさらなるMS検査を実行するように構成され得る。
【0080】
さらなるデータが本発明の方法においても処理され得る。これらのさらなるデータは通常、対象者における進行性MSの識別をさらに強化するのに適している。典型的には、そのようなデータは、MSに関する生化学的バイオマーカーからのパラメータ、または全脳体積、脳実質画分、全灰白質体積、皮質灰白質の断面および/または縦方向磁気共鳴画像法(MRI)測定などの画像法からのデータであってもよい。体積、特定の皮質領域の体積、深部灰白質体積、視床体積、脳梁の表面または厚さ、白質体積、第3脳室体積、総脳T2強調超強度病変体積、総皮質病変体積、総脳T1強調低信号、限定されないが、MSmetrix(商標)、NeuroQuant(商標)などの自動アルゴリズムソリューションソフトウェアを使用して評価された、病変体積、総脳FLAIR(Fluid Attenuation Inversion Recovery)病変体積、T2およびFLAIR病変の数および体積の合計であってもよい。
【0081】
本明細書で使用される「モバイルデバイス」という用語は、アクティビティの測定のデータセットを取得するのに適したセンサおよびデータ記録機器を含む任意の携帯型デバイスを指す。典型的には、モバイルデバイスはアクティビティを測定するためのセンサを備える。これはまた、モバイルデバイス上のアクティビティ検査を電子的にシミュレートするためのディスプレイと同様に、データプロセッサおよび記憶ユニットを必要とし得る。さらに、対象者のデータのアクティビティから、モバイルデバイス自体または第2のデバイスのいずれかで本発明の方法によって評価されることになるデータセットに記録および編集される。想定される特定のセットアップに応じて、取得されたデータセットをモバイルデバイスから別のデバイスに転送するために、モバイルデバイスがデータ送信機器を備えることが必要であり得る。本発明によるモバイルデバイスとして特によく適しているのは、スマートフォン、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータである。あるいは、データ記録および処理装置を有する携帯用センサを使用してもよい。さらに、実行されるアクティビティ検査の種類に応じて、モバイルデバイスは、検査のために実行されるアクティビティに関する対象者に対する指示を表示するように構成される。対象者によって実施される特定の想定されるアクティビティは、本明細書の他の箇所に記載されており、以下の検査を包含する:eSDMT、2分間歩行試験(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、継続的歩行分析(CAG)、形状描画検査、形状押し潰し検査、コントラスト視力検査(低コントラスト文字視力もしくは石原式色覚異常検査表等)、および本明細書において説明されている他の検査。
【0082】
少なくとも1つの能力パラメータを特定することは、データセットから所望の測定値を能力パラメータとして直接導出することによって達成することができる。あるいは、能力パラメータは、データセットからの1つまたは複数の測定値を統合することができ、したがって、計算などの数学的演算によってデータセットから導出することができる。典型的には、能力パラメータは、自動化されたアルゴリズムによって、例えば前記データセットによってデータ処理装置フィード上に明確に埋め込まれたときにアクティビティの測定のデータセットから前記能力パラメータを自動的に導出するコンピュータプログラムによってデータセットから導出される。
【0083】
本明細書で使用される「基準」という用語は、進行性MSを有する対象者の識別を可能にする識別子(discriminator)を指す。そのような識別子は、進行性MSを有する対象者を示す能力パラメータの値であってもよい。
【0084】
そのような値は、進行性MSを患っていることが分かっている対象者の1つ以上の能力パラメータから導出され得る。典型的には、そのような場合には平均値または中央値を識別子として使用することができる。対象者から特定された能力パラメータが基準と同一であるか、または基準から導出された閾値を超える場合、そのような場合、対象者は進行性MSを患っていると識別され得る。特定された能力パラメータが基準と異なり、特に前記閾値を下回る場合、対象者はそれぞれ進行性MSを患っていないと識別されるものとする。
【0085】
同様に、値は、進行性MSを患っていないことが分かっている対象者の能力パラメータから導出され得る。典型的には、そのような場合には平均値または中央値を識別子として使用することができる。対象者から特定された能力パラメータが基準と同一であるか、または基準から導出された閾値を下回る場合、そのような場合、対象者は進行性MSを患っていないと識別することができる。特定された能力パラメータが基準と異なり、特に、前記閾値を超える場合、対象者は進行性MSを患っていると識別される。
【0086】
代替として、基準は、実際のデータセットの前に同じ対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから、以前に特定された能力パラメータであり得る。そのような場合、以前に特定された能力パラメータに関して異なる実際のデータセットから特定された特定された能力パラメータは、疾患の以前の状態およびその能力パラメータによって表されるアクティビティの種類に応じて改善または悪化を示すものとする。当業者は、アクティビティの種類および以前の能力パラメータに基づいて、前記パラメータを基準としてどのように使用することができるかを知っている。
【0087】
特定された少なくとも1つの能力パラメータを基準と比較することは、コンピュータなどのデータ処理装置上に実装された自動比較アルゴリズムによって達成することができる。本明細書の他の箇所で詳細に特定されているように、特定された能力パラメータの値および前記特定された能力パラメータに対する基準が互いに比較される。比較の結果として、特定された能力パラメータが基準と同一であるか、異なるか、またはある関係にある(例えば、基準よりも大きいかまたは小さい)かを評価することができる。前記評価に基づいて、対象者は、進行性MSを患っている(可能性あり(rule-in))か、またはそうでない(「除外」(rule-out))として識別することができる。評価のために、本発明による適切な基準との関係で、他の箇所に記載されているように、基準の種類は考慮される。
【0088】
さらに、特定された能力パラメータと基準との間の相違の程度を決定することによって、対象者における進行性MSの定量的評価が可能になるはずである。全体的な病状またはその症状の改善、悪化または変化がないことは、実際に特定された能力パラメータと、基準として使用された以前に特定されたパラメータとを比較することによって判断が可能であることが理解される。能力パラメータの値の量的な相違に基づいて、改善、悪化または変化していない状態を決定することができ、そして任意に、また定量化することができる。進行性MSを有する対象者からの基準など、他の基準が使用される場合、ある疾患段階が基準集団に割り当てられ得る場合、量的差異は有意義であることが理解されよう。この病期に関連して、そのような場合に悪化、改善または変化していない病状を特定することができ、場合によっては定量化することもできる。
【0089】
前記診断、すなわち対象者が、進行性MSを患っている対象者か否かの識別は、対象者または医師などの他の人に示される。典型的には、これは、モバイルデバイスまたは評価デバイスのディスプレイ上に診断を表示することによって達成される。あるいは、薬物治療などの治療、または特定の生活スタイル、例えば特定の栄養食またはリハビリテーション対策が、対象または他の人に自動的に提供される。この目的のために、確立された診断は、データベース内の異なる診断に割り当てられた推奨と比較される。確立された診断が記憶され割り当てられた診断のうちの1つに一致すると、確立された診断に一致する記憶された診断への推奨の割り当てに起因して適切な推奨が識別され得る。したがって、通常、推奨事項および診断はリレーショナルデータベースの形で存在すると考えられる。しかしながら、適切な推奨の識別を可能にする他の構成もまた可能であり、当業者に知られている。
【0090】
さらに、1つまたは複数の能力パラメータはまた、典型的にはリアルタイムで、モバイルデバイス上に記憶され得るか、または対象者に示され得る。記憶された能力パラメータは、時間経過または同様の評価尺度にまとめられてもよい。そのような評価された能力パラメータは、本発明の方法に従って調べられたアクティビティの能力についてのフィードバックとして対象者に提供され得る。典型的には、そのようなフィードバックは、モバイルデバイスの適切なディスプレイ上に電子フォーマットで提供され得、そして上記で特定されるような治療のための推奨またはリハビリテーション対策にリンクされ得る。
【0091】
さらに、評価された能力パラメータは、診療所または病院の医師、ならびに診断試験の開発者または臨床試験における医薬品開発者、健康保険提供者などの他の健康管理提供者、または公的または私的な医療制度の他のステークホルダーにも提供され得る。
【0092】
典型的には、進行性MSを患っている対象者を識別するための本発明の方法は、以下のように実施され得る。
【0093】
第1に、少なくとも1つの能力パラメータが、モバイルデバイスを使用して対象者から得られたアクティビティの測定の既存のデータセットから特定される。データセットは、モバイルデバイスからコンピュータなどの評価デバイスに送信されてもよく、またはデータセットから少なくとも1つの能力パラメータを導出するためにモバイルデバイスで処理されてもよい。
【0094】
第2に、特定された少なくとも1つの能力パラメータは、例えば、モバイルデバイスのデータプロセッサによって実行されるコンピュータ実装の比較アルゴリズムを使用することによって、またはたとえばコンピュータなどの評価デバイスによって、たとえば基準と比較される。比較の結果は、比較に使用された基準に対して評価され、前記評価に基づいて、対象者は進行性MSを患っているか否かが識別される。
【0095】
第3に、前記診断、すなわち、対象者が進行性MSを患っている対象者か否かの識別は、対象者または医師などの他の人に示される。
【0096】
代替的には、薬物治療などの治療、または特定の生活スタイル、例えば特定の栄養食事療法は、対象者または他の人に自動的に提供される。この目的のために、確立された診断は、データベース内のさまざまな診断に割り当てられた推奨事項と比較される。確立された診断が記憶され割り当てられた診断のうちの1つに一致すると、確立された診断に一致する記憶された診断への推奨の割り当てに起因して適切な推奨が識別され得る。典型的な推奨事項は、本明細書の他の箇所に記載されているような抗CD20抗体による治療的手段を含む。
【0097】
代替的にまたは追加で、診断の根底にある少なくとも1つの能力パラメータは、モバイルデバイスに格納される。典型的には、それは、本明細書の他の箇所で特定されるように電子的リハビリテーションまたは治療推奨を支援することができるモバイルデバイス上で実施される、タイムコースアセンブリングアルゴリズムなどの適切な評価ツールによって他の記憶された能力パラメータと共に評価される。
【0098】
上記に照らして、本発明はまた、以下の工程を含む、対象者における進行性多発性硬化症(MS)を識別する方法を具体的に意図し、
a)対象者によって実行された所定のアクティビティの間に、モバイルデバイスを使用して対象者からアクティビティの測定のデータセットを取得するステップ、
b)モバイルデバイスを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定された少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップ、
c)特定された少なくとも1つの能力パラメータを基準と比較するステップ、および、
d)工程(b)で行われた比較に基づいて、対象者における進行性MSを識別するステップ
を含む。
【0099】
以下で使用されるように、用語「有する」、「備える」または「含む」またはそれらの任意の文法的変形は、非排他的に使用される。したがって、これらの用語は両方とも、これらの用語によって導入された特徴の他に、これに関連して説明された実体にさらなる特徴が存在しない状況および1つ以上のさらなる特徴が存在する状況を指し得る。例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む」、および「AはBを含む」は両方とも、B以外にAに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aのみが排他的にBを構成する状況))と、B以外に、1つ以上の別の要素、例えば要素C、要素CおよびD、さらにはさらなる要素が存在する状況の両方をいう。
【0100】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」または特徴または要素が1回または複数回存在し得ることを示す同様の表現は、通常、それぞれの特徴または要素を紹介するときに1回だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を参照するとき、それぞれの特徴または要素が1回または1回以上存在する可能性があるという事実にかかわらず、表現「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」は繰り返さない。
【0101】
さらに、以下で使用されるとき、用語「特に」、「より詳細に」、「具体的に」、「より具体的に」、「典型的に」、および「より典型的に」または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加の/代替の特徴と共に使用される。したがって、これらの用語によって導入された特徴は追加の/代替の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。当業者が認識するように、本発明は代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」または同様の表現によって導入された特徴は、本発明の代替実施形態に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、そのようにして導入された特徴を本発明の他の追加/代替または非追加/代替の特徴と組み合わせる可能性に関して制限することなく、追加/代替の特徴であることを意図している。
【0102】
有利なことに、本発明の基礎をなす研究において、患者の特定のアクティビティの間に測定されたデータセットから得られた能力パラメータは、進行性MSを患っている患者を識別するためのデジタルバイオマーカーとして使用することができる。前記データセットは、全ての既存のスマートフォン、携帯マルチメディア装置またはタブレットコンピュータのようなモバイルデバイスを使用することによってMS患者から便利な方法で取得することができる。それによって取得されたデータセットは、デジタルバイオマーカーとして適切な少なくとも1つの能力パラメータについて、本発明の方法によって後で評価することができる。前記評価は、同じモバイルデバイス上で実行することもできるし、または別個の遠隔デバイス上で実行することもできる。さらに、そのようなモバイルデバイスを使用することによって、生活スタイルまたは治療法に関する推奨を患者に直接、すなわち医院または病院の救急車で診療医に相談することなく提供することができる。本発明によると、本発明の方法によって実際に特定された能力パラメータを使用することにより、MS患者、具体的に進行性MS患者、の生活状態を実際の疾患状態へとより正確に調整することができる。それにより、より効率的な薬物治療を選択することができ、または投与計画を患者の現在の状態に適合させることができる。本発明の方法は、典型的には、対象者からのアクティビティの測定の既存のデータセットを必要とするデータ評価方法であることを理解されたい。このデータセット内で、本方法は、進行性MSを識別するために使用することができる、すなわち進行性MSのためのデジタルバイオマーカーとして使用することができる少なくとも1つの能力パラメータを特定する。
【0103】
したがって、本発明の方法は、
疾患状態を評価すること、
特に実生活での日々の状況において大規模に患者を監視すること、
生活スタイルおよび/または治療の推奨によって、患者を支援すること、
例えば臨床試験時の薬効を調査すること、
治療上の意思決定を促進および/または補助すること、
病院管理を支援すること、
リハビリ方法管理を支援すること、
高密度の認知、運動および歩行アクティビティを刺激するリハビリ機器として疾患状態を改善すること、
健康保険の評価および管理をすること、および/または
公衆衛生管理における意思決定を支援すること
のために使用され得る。
【0104】
上記でなされた用語の説明および定義は、必要に応じて、以下に本明細書に記載の実施形態に適用される。
【0105】
以下、本発明の特定の実施形態が説明される。本発明の方法の一実施形態において、進行性多発性硬化症は、臨床疾患活動を伴う再発寛解型MSである、障害が進行している再発寛解型MSである、二次進行性MSである、障害が進行している二次進行性MSである、一次進行性MSである、または障害が進行している一次進行性MSである。
【0106】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、少なくとも1つの能力パラメータは、対象者の運動および/または微細な運動の能力および機能、歩行、色視覚、注意、器用さ、および/または認知能力、生活の質、疲労、精神状態、気分、視覚および/または認知を示すパラメータである。
【0107】
本発明の方法の他の実施形態では、さらに、アクティビティの測定のデータセットが、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、継続的歩行分析(CAG)、形状描画、形状押し潰し、コントラスト視力検査(低コントラスト文字視力もしくは石原式色覚異常検査表等)、精神状況質問票(MSQ)、MISI−29および特定の時間窓において行われる対象者のアクティビティのすべてもしくは所定のサブセットについての受動的監視からなる群から選択された少なくとも1つの検査からのデータを含む。
【0108】
本発明の方法のさらなる実施形態において、前記アクティビティの測定のデータセットは、eSDMT、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、継続的歩行分析(CAG)、形状描画検査、および形状押し潰し検査からのデータを含む。
【0109】
本発明の方法の一実施形態において、前記モバイルデバイスは、対象者に上述した1または2以上の検査を実行するように構成され、具体的には、上記検査は、eSDMT、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、継続的歩行分析(CAG)、形状描画検査、形状押し潰し検査、コントラスト視力検査(低コントラスト文字視力もしくは石原式色覚異常検査表等)、精神状況質問票(MSQ)、MISI−29、および特定の時間窓において行われる対象者のアクティビティのすべてもしくは所定のサブセットについての受動的監視からなる群から選択される。
【0110】
本発明の方法のさらなる実施形態では、モバイルデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイスまたはタブレットコンピュータを含む。
【0111】
本発明の方法の他の実施形態において、基準は、ステップa)において言及される、アクティビティの測定のデータセットが対象者から得られた時点よりも前の時点において、対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから導出された少なくとも1つの能力パラメータである。典型的には、前記実施形態において、特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準との間の悪化は、対象者が進行性MSを有していることを示している。
【0112】
本発明の方法のさらに他の実施形態では、前記基準は、進行性MSを患っていることが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから得られた少なくとも1つの能力パラメータである。典型的には、前記実施形態において、特定された少なくとも1つの能力パラメータが、基準と比較して実質的に同一であることは、対象者が進行性MSを有していることを示している。
【0113】
本発明の方法のさらに他の実施形態では、前記基準は、進行性MSを患っていないことが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから得られた少なくとも1つの能力パラメータである。典型的には、上記実施形態において、基準と比較して悪化している特定された少なくとも1つの能力パラメータは、進行性MSを有する対象者を示している。
【0114】
本発明はまた、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、またはコンピュータプログラムが有形に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体を意図し、コンピュータプログラムは、データ処理装置またはコンピュータ上で実行されるときの命令を含み、上述のように本発明の方法を実行する。具体的には、本開示はさらに以下を包含する。
少なくとも1つのプロセッサを備える、コンピュータまたはコンピュータネットワークであって、プロセッサは、本明細書に記載されている実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合されている、コンピュータまたはコンピュータネットワーク、
データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合されたコンピュータにロード可能なデータ構造、
プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載されている実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、コンピュータスクリプト、
コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されている間に、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を含むコンピュータプログラム、
前記実施形態のプログラム手段を備え、前記プログラム手段は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラム、
記憶媒体であって、データ構造が、前記記憶媒体に記憶され、前記データ構造が、コンピュータまたはコンピュータネットワークのメインストレージおよび/またはワーキングストレージにロードされた後、本明細書に記載の実施形態のうちの1つに従う方法を実行する、記憶媒体、
プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード手段がコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行される場合、本明細書に記載される実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶媒体に記憶可能であるか、記憶されている、コンピュータプログラム製品、
モバイルを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットを含む、典型的には暗号化されたデータストリーム信号、
モバイルを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから導出された少なくとも1つの能力パラメータを含む、典型的には暗号化された、データストリーム信号。
【0115】
本発明はさらに、モバイルデバイスを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから少なくとも1つの能力パラメータを特定する方法に関し、方法は、
a)モバイルを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから少なくとも1つの能力パラメータを得るステッ能力パラメータを基準と比較し、典型的には、能力パラメータは、対象者において進行性多発性硬化症(MS)を識別することの補助となり得る。
【0116】
本発明はまた、MSに対する抗CD20抗体治療を推奨する方法であって、上述した本発明の方法の方法ステップと、対象者が進行性MSを患っている場合に抗CD20抗体治療を推奨するさらなるステップとを備える。
【0117】
本明細書において用いられている「抗CD20抗体」という用語は、モノクローナル抗体およびその誘導体、例えば完全ヒト、ヒト化、キメラまたは単鎖抗体、ならびに生理学的条件下でいわゆるB細胞上のCD20表面分子を特異的に認識するポリクローナル抗血清に関する。特に、薬物オクレリズマブは、本発明による抗CD20抗体として包含される(例えば、Hutas 2008, Current opinion in investigational drugs 9 (11):1206-15を参照)。オクレリズマブは、進行性MSを患っている対象者における治療として有用である。したがって、進行性MSが対象者において診断される場合、抗CD20抗体に基づく治療法が推奨され得る。本発明による抗CD20抗体は典型的にはB細胞枯渇をもたらすものとする。本発明による適切な抗CD20抗体は、Koehler 1975, Nature 256: 495-497に記載されているものなどのモノクローナル抗体を生成するための分子生物学的技術によって生成することができる。キメラ抗体、特にヒト化抗体を作製するための技術もまた当該分野で周知である。典型的には、本発明による抗CD20抗体として適用されるモノクローナル抗CD20抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体である。さらに、適切な抗CD20抗体は、リツキシマブなどの既存の抗CD20モノクローナル抗体をさらに開発することによっても得ることができる。
【0118】
本発明の上述した方法の実施形態において、前記抗CD20抗体はオクレリズマブである。
【0119】
本発明はまた、進行性MSを患っていると疑われる対象者において進行性MSを治療する方法を提供し、方法は、上述した方法のいずれかのステップと、抗CD20抗体治療として、進行性MSを患っていると識別された対象者に、および/または治療的に効果的な分量で治療が推奨された対象者に、抗CD20抗体を投与するさらなるステップを含んでいる。
【0120】
本発明はまた、進行性MSに対する治療の効能を特定するための方法を含み、方法は、本発明の方法のステップ、特に、a)モバイルデバイスを使用して対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定される少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、b)特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準とを比較し、それにより進行性MSを患う対象者が識別される比較するステップ、および本明細書のどこかに記載された実施形態、および、治療の際に対象者において進行性MSに改善があった場合に治療処置を特定する、または対象者において進行性MSに悪化が生じた場合、または進行性MSに変化がなかった場合に処置の失敗を特定するさらなるステップとを備える。
【0121】
本発明に従って言及される「改善」という用語は、進行性MSの全体的な疾患状態またはそれらの個々の症状の任意の改善に関する。同様に、「悪化する」とは、全体的な疾患または障害状態またはそれらの個々の症状の悪化を意味する。進行性MSは典型的には全体の疾患状態およびその症状の悪化に関連し得るので、前述の方法に関連して言及される悪化は、進行性MSの通常の経過を超える予想外または非典型的な悪化である。したがって、変化せず残る進行性MSは、全体的な疾患状態およびそれに付随する症状が進行性MSの正常な経過の範囲内であることも意味し得る。
【0122】
さらに、本発明は、対象者における進行性MSを監視する方法に関し、本発明または本明細書の別の箇所で特定されたその実施形態の方法のステップを所定の監視期間中に少なくとも2度行うことによって、対象者において進行性MSが改善しているか、悪化しているか、もしくは変化が無いかを特定する。本発明の方法のステップは、a)モバイルデバイスを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定される少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、b)前記特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準とを比較し、それにより進行性MSを患う対象者が識別される比較するステップである。
【0123】
本明細書で使用される「所定の監視期間」という用語は、少なくとも2回のアクティビティの測定が実行される所定の期間を指す。典型的には、そのような期間は、個々の対象者について予想される疾患の進行に応じて、数日から数週間、数ヶ月から数年の範囲であり得る。監視期間内では、アクティビティの測定および能力パラメータは、通常監視期間の開始である第1の時点および少なくとも1つの別の時点で特定される。しかしながら、アクティビティの測定および能力パラメータ決定のためにさらに2つ以上の時点があってもよい。いずれにしても、第1の時点のアクティビティの測定から特定された能力パラメータは、後続の時点の能力パラメータと比較される。そのような比較に基づいて、事前に決定された監視期間中の悪化、改善、または変化していない病状を判定するために使用されるであろう量的な差異が識別され得る。
【0124】
本発明は、モバイルデバイスに関し、前記モバイルデバイスは、プロセッサと、少なくとも1つのセンサと、データベースと、前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で本発明の方法を実行する時に本発明の方法のうちのいずれか1つを実行するソフトウェアとを備えている。
【0125】
モバイルデバイスはしたがって、データセットを取得することができ、そこから能力パラメータを特定することができるように構成されている。さらに、モバイルデバイスは基準との比較を行い、診断、すなわち、進行性MSを患っている対象者の識別を確立することができるように構成されている。上述した目的のためにどのようにモバイルデバイスが設計されるかのさらなる詳細については、本明細書において既に詳述している。
【0126】
さらに想定されるのは、少なくとも1つのセンサを含むモバイルデバイスと、遠隔デバイスとを備えたシステムであり、遠隔デバイスは、プロセッサ、データベース、および、前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で実行されるときに本発明の方法のいずれかを実行するソフトウェアを含み、前記モバイルデバイスと前記遠隔デバイスとが互いに動作可能にリンクされている。
【0127】
「互いに動作可能にリンクされている」の下では、デバイスは、一方のデバイスから他方のデバイスへのデータ転送を可能にするように接続されていることが理解されるべきである。典型的には、少なくとも対象者からデータを取得するモバイルデバイスは、取得されたデータが処理のために遠隔デバイスに送信され得るように本発明の方法のステップを実行する遠隔デバイスに接続されることが想定されている。しかしながら、遠隔デバイスはまた、その適切な機能を制御または管理する信号などのデータをモバイルデバイスに送信してもよい。モバイルデバイスと遠隔デバイスとの間の接続は、同軸、ファイバ、光ファイバ、またはツイストペアの10BASE−Tケーブルなどの恒久的または一時的な物理的接続によって達成することができる。代替的には、それは、例えば、Wi−Fi(登録商標)、LTE、LTE−advancedまたはBluetooth(登録商標)などの電波を使用する一時的または恒久的な無線接続によって達成されてもよい。さらなる詳細は本明細書の他の場所に見いだすことができる。データ取得のために、モバイルデバイスは、画面またはデータ取得のための他の機器などのユーザインターフェイスを含んでいてもよい。典型的には、アクティビティの測定は、モバイルデバイスによって構成されるスクリーン上で実行することができ、ここで、前記スクリーンは、例えば、5.1インチのスクリーンを含む異なるサイズを有してもよいことが理解されるであろう。
【0128】
また、本発明は、進行性多発性硬化症(MS)を患っている対象者を識別するための本発明によるモバイルデバイスまたはシステムの使用を意図することが理解される。
【0129】
本発明はまた、特に現実の生活の中で、日常の状況において大規模に、患者を監視するための本発明によるモバイルデバイスまたはシステムの使用を意図する。
【0130】
本発明はさらに、生活ライフスタイルおよび/または治療の推奨によって患者を支持するための、本発明のモバイルデバイスまたはシステムの使用を含む。
【0131】
しかし、本発明は、例えば臨床試験時など、薬効を調査するための本発明によるモバイルデバイスまたはシステムの使用を意図することが理解される。
【0132】
さらに、本発明は、治療方法の決定を容易にする、および/または補助するための本発明によるモバイルデバイスまたはシステムの使用を意図する。
【0133】
さらに、本発明は、リハビリ施設として疾患状態を改善する、病院管理、リハビリ方法管理、健康保険の評価および管理を支持する、および/または、公共健康管理における決定を支持するための本発明によるモバイルデバイスまたはシステムの使用を提供する。
【0134】
さらなる特定の実施形態もまた以下のとおり列挙される。
【0135】
実施形態1:対象者における進行性多発性硬化症(MS)を特定する方法であって、
a)モバイルデバイスを使用して前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから特定される少なくとも1つの能力パラメータを特定するステップと、
b)前記特定された少なくとも1つの能力パラメータと基準とを比較し、それにより進行性MSを患う対象者が識別される比較するステップと
を含む、方法。
【0136】
実施形態2:前記進行性多発性硬化症は、臨床疾患活動を伴う再発寛解型MSである、障害が進行している再発寛解型MSである、二次進行性MSである、障害が進行している二次進行性MSである、一次進行性MSである、または障害が進行している一次進行性MSである、実施形態1に記載の方法。
【0137】
実施形態3:前記少なくとも1つの能力パラメータは、運動の能力および機能および/または微細な運動の能力および機能、歩行、色視覚、注意、器用さ、および/または認知能力、生活の質、疲労、精神状態、気分、視覚、および/または認知を示すパラメータである、実施形態1または2に記載の方法。
【0138】
実施形態4:前記アクティビティの測定のデータセットは、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、eSDMT、CAG検査、MSST検査、形状描画検査、形状押し潰し検査、精神状況質問票、MSIS−29、コントラスト視力検査(低コントラスト文字視力もしくは石原式色覚異常検査表等)、および特定の時間窓において行われる対象者のアクティビティのすべてもしくは所定のサブセットについての受動的監視からなる群から選択される少なくとも1つの検査からのデータを含む、実施形態1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【0139】
実施形態5:前記活動測定のデータセットは、2分間歩行検査(2MWT)、5回Uターン検査(5UTT)、静的平衡検査(SBT)、eSDMT、CAG検査、形状描画検査、および形状押し潰し検査からのデータを含む、実施形態4に記載の方法。
【0140】
実施形態6:前記モバイルデバイスは、実施形態4において参照される検査のうちの1つ以上を対象者に対して行うように適合された、実施形態1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【0141】
実施形態7:前記モバイルデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサ、ポータブルマルチメディアデバイス、またはタブレットコンピュータからなる、実施形態6に記載の方法。
【0142】
実施形態8:前記基準は、ステップa)において参照されるアクティビティの測定のデータセットが前記対象者から得られた時点より前の時点において前記対象者から得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【0143】
実施形態9:特定された少なくとも1つの能力パラメータと、前記基準との間の悪化は、対象者が進行性MSを患っていることを示す、実施形態8に記載の方法。
【0144】
実施形態10:前記基準は、進行性MSを患っていることが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【0145】
実施形態11:特定された少なくとも1つの能力パラメータが前記基準と比して実質的に同一である場合、前記対象者が進行性MSを患っていることを示す、実施形態10に記載の方法。
【0146】
実施形態12:前記基準は、進行性MSを患っていないことが知られている対象者もしくは対象者のグループから得られたアクティビティの測定のデータセットから導き出された少なくとも1つの能力パラメータである、実施形態1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【0147】
実施形態13:特定された少なくとも1つの能力パラメータが前記基準と比して悪化している場合、前記対象者が前記進行性MSを患っていることを示す、実施形態12に記載の方法。
【0148】
実施形態14:MSに対する抗CD20抗体治療を推奨する方法であって、実施形態1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップと、対象者が進行性MSを患っている場合に抗CD20抗体治療を推奨するさらなるステップとを備える、方法。
【0149】
実施形態15:前記抗CD20抗体はオクレリズマブである、実施形態14に記載の方法。
【0150】
実施形態16:進行性MSに対する治療の効能を特定するための方法であって、実施形態1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップと、治療の際に前記対象者において進行性MSに改善があった場合に治療処置を特定する、または前記対象者において進行性MSに悪化が生じた場合、または進行性MSに変化がなかった場合に処置の失敗を特定するさらなるステップとを備える、方法。
【0151】
実施形態17:対象者における進行性MSを監視する方法であって、実施形態1〜13のいずれか1項に記載の方法のステップを所定の監視期間中に少なくとも2度行うことによって、対象者において進行性MSが改善しているか、悪化しているか、もしくは変化が無いかを特定するステップを備える、方法。
【0152】
実施形態18:モバイルデバイスであって、プロセッサ、少なくとも1つのセンサ、およびデータベース、ならびに前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で実行されている時に実施形態1〜17のいずれか1項に記載の方法を実施するソフトウェアを備える、モバイルデバイス。
【0153】
実施形態19:少なくとも1つのセンサを有するモバイルデバイスと、遠隔デバイスとを備えたシステムであって、前記遠隔デバイスは、プロセッサ、データベース、および、前記デバイスに有形に組み込まれ、前記デバイス上で実行されている時に実施形態1〜17のいずれか1項に記載の方法を実施するソフトウェアを有し、前記モバイルデバイスと前記遠隔デバイスとは互いに動作可能に連結されている、システム。
【0154】
実施形態20:進行性多発性硬化症(MS)を患っている対象者を識別するために使用される、実施形態18に記載のモバイルデバイスまたは実施形態19に記載のシステム。
【0155】
本明細書で引用した全ての文献は、それらの全体の開示内容について、および、本明細書において言及した特定の開示内容について、参照によって引用される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
図1】コンピュータに実装されたeSDMTを実行するように構成されたスマートフォンを示す。A)は、スマートフォンのスクリーン上に患者へのインストラクションが与えられている。B)は、数字を一致させる検査をするためのユーザインターフェイスである。C)は、シンボルを一致させる検査をするためのユーザインターフェイスである。
図2】コンピュータに実装されたSBTを実行するのに適したスマートフォンを示す。A)は、スマートフォンのスクリーン上に患者へのインストラクションが与えられている。B)は、アクティビティの完了までの時間を示すユーザインターフェイスである。
図3】コンピュータに実装された形状描画検査を実行するために構成されたスマートフォンを示す。A)は、患者によって描画される形状の候補、B)は、スマートフォンのスクリーン上に患者へのインストラクションが与えられている。C)からE)は、異なる形状の描画を検査するためのユーザインターフェイスである。
図4】コンピュータに実装された形状押し潰し検査を実行するのに適したスマートフォンを示す。A)は、スマートフォンのスクリーン上に患者へのインストラクションが与えられている。B)からD)は、形状の押し潰しアクティビティの異なるステージを示すユーザインターフェイスである。
図5】30人の対象者のeSDMT検査成績を示す。サブ図(a)は、応答総数の分布を示している。正解率は(b)に示されている。
図6】eSDMT検査における、続けてなされる応答(R)間、および、続けてなされる正しい応答(CR)間での経過時間を示す。サブ図(a)、(b)および(c)は、続けてなされる応答(R)間の経過時間を示している。サブ図(d)、(e)および(f)は、続けてなされる正しい応答(CR)間の経過時間を示している。対象集団は、3つのグループに分けられる:(a)および(d)は、32よりも少ない(正しい)応答を提供する対象者から由来(N=9)、(b)および(e)は、32から39までの間の(正しい)応答を提供する対象者から(N=10)、(c)および(f)は、90秒間にわたって40以上の(正しい)の応答を提供する(N=11)。経過時間の中央値が線でプロットされ、標準偏差が網掛けの領域として表示されている。
図7】eSDMT検査において全く異なる成績を示した2人の対象者の応答(R)のプロファイルおよび正しい応答(CR)のプロファイルの例を示す。サブ図(a)は、90秒間にわたる2人の対象者の累積応答(R)プロファイルを示す。サブ図(b)は、2人の患者のその後の応答間の経過時間(R)を示す。サブ図(c)は、90秒間にわたる2人の患者の正しい応答(CR)のプロファイルを示す。サブ図(d)は、2人の患者のその後の正しい応答(CR)間の経過時間を示す。
図8】形状押し潰し検査のデータの図を示す。サブ図(a)は、形状押し潰し検査を30秒間実行した対象者の概要を示している。最初の指からのタッチイベントは緑色で示され、2番目の指からのタッチイベントは赤で示される(b)。青い円は、ディスプレイとの2つのコンタクト時点が同時であった場合を示している。点線はピンチ試行の開始と終了をそれぞれ示している。サブ図(c)は、2つのつまんでいる指の間の距離を示している。個々の指の速度がサブ図に示されている。サブ図は、最初の試みで13回目のピンチによってうまくピンチされた9番目のトマトの位置を示している。円はタッチスクリーン上の指の移動軌道を示している。ボックスはピンチの試みが成功したことを示している。
図9】2人の対象者からの円形のタッチ軌跡の例を示す。黒丸は、対象者が通過しなければならない経由地点を示す。各緑色のマーカーは、各経由地点に最も近いトレースポイントを表す。サブ図(a)は、良好な9HPT能力に基づいて選択されたベースラインの対象者を示す。サブ図(b)は、9HPTが不良な対象者を示す。
図10】たとえば図5に示すトレース能力を示す。円形の各経由地点ごとのエラー距離が、サブ図(a)に示されている。サブ図(b)は、複数のセクタへの特定のセグメンテーション、およびそれに続くセクタごとのエラーを示す。サブ図(c)は、中央値およびIQRを含む、対象者ごとのエラー距離の範囲を示す。
図11】2人の対象者からのらせん形状についての接触トレースの例を示す。黒丸は、対象者が通過しなければならない経由地点を示す。各緑色のマーカーは、各経由地点に最も近いトレースポイントを表す。サブ図(a)は、良好な9HPT能力に基づいて選択されたベースラインの対象者を示す。サブ図(b)は、9HPTが不良な対象者を示す。
図12】例えば11に示されるトレース能力を示す。らせん形状の各経由地点ごとのエラー距離が、サブ図(a)に示されている。サブ図(b)は、形状固有のセクタへのセグメンテーション、およびその後のセクタごとのエラーを示す。複数のセクタへの特定のセグメンテーション、およびそれに続くセクタごとのエラーを示す。サブ図(c)は、中央値およびIQRを含む、対象者ごとのエラー距離の範囲を示す。
図13】視覚的、速度的および加速度的分析を通して、対象者の描画能力の集合的な空間的および時間的特性を示す。速度は、連続したポイント間のユークリッド距離の経時変化として計算される。加速度は時間の経過に伴う速度の変化率である。この形状および描画された点の空間分析に対する対象者特有の補足的解析を通じて、対象者の細かい時間的能力特性を研究することができる。(a)特定の形状の視覚的追跡、(b)完成するための時間に亘る形状描画タスクのトレースの速度[s]。(c)完成するまでの時間に亘る形状描画タスクのトレースの加速度[s]。
図14】能動的検査および受動的監視に対する患者の遵守を比較している。遵守カウントは、それぞれの対象者によって受け取られた最初のデータポイントから始まる週として定義される、学習週あたりの遵守日数に基づく。収集された受動的監視の量は、個々のスマートフォンとスマートウォッチの非アクティブ状態について補正した加速度計の記録の継続時間に基づいている。2MWT、2分間歩行検査。
図15】スマートフォンと診療所とで行われたPRO間の関連を示す。紙ベースのMSIS−29とスマートフォンベースのMSIS−29の合計スコアがベースライン(スクリーニング訪問)で比較される。アイデンティティラインは破線として描かれている。MSIS−29、多発性硬化症の影響スケール。
図16】口頭SDMT対スマートフォンベースのSDMTの横断的なベースライン相関を示す。ベースライン時に、スマートフォンベースのSDMTからの正しい回答の数は、口頭SDMTからの正しい回答と相関していた(スピアマンの相関係数=0.72、p<0.001)。口頭SDMTでの患者レベルの能力は、スマートフォンベースのSDMTよりも全体的に優れていた。
図17】歩行中のターン速度が(a)T25FWおよび(b)EDSSと相関することを示す。(a)5UTTで測定されたターン速度はT25FW(スピアマンの相関係数=−0.62、p<0.001、MSIS−29の歩行項目(アイテム4と5、スピアマンの相関係数=−0.57、p=0.001))と相関がある。(b)5UTTで測定されたターン速度はEDSSスコア(スピアマンの相関係数=−0.72、p<0.001、図b)と相関がある。
【発明を実施するための形態】
【0157】
実施例
以下の実施例は本発明を単に例示する。とにかく、それらは本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない
【0158】
実施例1:コンピュータに実装された(電子)符号数字モダリティ検査(eSDMT)
5.1インチの画面を持つスマートフォンが、eSDMT検査を実行するためのスイートでプログラムされている。検査者は、ディスプレイに表示される指示に従って、スマートフォンで検査を実行するように依頼された。30人の対象者が調査された。特定された応答および正確さが図5に示されている。
【0159】
続いておこる応答(R)の間、および、続いておこる正しい応答(CR)の間の経過時間も、実装されたeSDMT検査で調査された。結果を図6に示す。
【0160】
さらに、応答(R)および正しい応答(CR)のプロファイルが特定された。eSDMT検査において全く異なる成績を示した2人の対象者の応答(R)および正しい応答(CR)のプロファイルの例を図7に示す。
【0161】
実施例2:微細な運動能力、特に手の運動機能、特にタッチスクリーンに基づく「形状描画」および「形状押し潰し」検査を評価するコンピュータ実装検査
5.1インチのスクリーンを有するスマートフォンが、「形状描画」および「形状押し潰し」検査を実行するためのスイートでプログラムされた。検査者は、ディスプレイに表示される指示に従って、スマートフォンで検査を実行するように依頼された。
【0162】
形状押し潰しのセットアップにおいて、第1および第2の指からの接触が判定され、距離および押し潰しイベントの速度が計算された(図8)。形状描画のセットアップにおいて、円形の接触トレースが判定された。結果を図9または11に示す。
【0163】
全体的に計算されたトレース能力は、それぞれ図10および12に示されており、詳細なデータは以下の表1または2に要約されている。
【0164】
表1:サークル評価の読み出し能力の統計。この表は、図9に示される2つのトレースの性能測定を列挙する。
【0165】
【表1】
【0166】
表2:スパイラル評価の読み出し能力の統計。表は、図11に描かれた2つのトレースの性能測定を列挙する。
【0167】
【表2】
【0168】
最後に、正方形を描く対象の空間的および時間的特性を決定し、結果を図13に示す。
【0169】
実施例3:多発性硬化症患者においてデジタル技術を用いて遠隔患者モニタリングを実施することの実現可能性を評価するための見込みのあるパイロット試験(FLOODLIGHT)の結果
【0170】
以下の包含基準および除外基準を用いて研究集団を選択する。
主な包含基準:
署名されたインフォームドコンセントフォーム
調査者の判断で、スタディプロトコルに従うことが可能
18〜55歳、包括的
改訂McDonald 2010基準に従って確認されたMSの確定診断を有している
EDSSスコア0.0〜5.5
体重:45〜110キロ
出産の可能性がある女性の場合:試験期間中に許容される避妊方法を使用することへの合意
【0171】
主な除外基準:
調査者の裁量による重症で不安定な患者
登録前の最後の12週間における投薬計画の変更または疾患修飾療法(DMT)の変更
妊娠中または授乳中、または試験中に妊娠する予定
【0172】
この調査の主な目的は、コンプライアンスレベル(%)として定量化されたスマートフォンおよびスマートウォッチに基づく評価の遵守を示すこと、および評価のスマートフォンおよびスマートウォッチスケジュールおよび患者の健康管理からのフィードバックを得ることである。満足度アンケートさらに、追加の目的、特にフラッドライト検査を使用して実施された評価と従来のMS臨床転帰との間の関連性が決定され、フラッドライト測定が疾患アクティビティ/進行のマーカーとして使用できるかどうかが確立された。MRIと臨床転帰の経時的変化、およびフラッドライトテストバッテリーが、MSを有する患者と有しない患者、およびMSを有する患者における表現型を区別できるかどうかを判断した。
【0173】
能動的試験および受動的監視に加えて、予定された診療所訪問ごとに以下の評価が実施される。
SDMTの口頭バージョン
運動機能および認知機能のための疲労尺度(FSMC)
計測された25フィート歩行テスト(T25−FW)
バーグバランススケール(BBS)
9ホールペグテスト(9HPT)
患者健康質問票(PHQ−9)
MSのみを有する患者
脳MRI(MSmetrix)
総合障害度スケール(EDSS)
患者確定疾患ステップ(PDDS)
MSIS−29のペンおよび紙のバージョン
【0174】
診療所での検査を行っている間、患者と健康な管理者は診療所での対策とともに、センサーデータを収集するためにスマートフォンとスマートウォッチを携帯/着用するよう求められる。
【0175】
能動的検査および受動的検査に対する患者の遵守を図14に示す。また、病院内とモバイルデバイス(スマートフォン)上で行われたPROとの関連性を図15に示す。口頭SDMTとモバイルデバイス実装のeSDMTとの間にベースライン相関が見つかった。図16参照。歩行中のターン速度はT25FWとEDSSと相関している。図17参照。
【0176】
要約すると、これらの結果は、患者がスマートフォンベースおよびスマートウォッチベースの評価に非常に関わっていることを示している。さらに、検査とベースラインで記録された診療所での臨床転帰測定との間には相関関係があり、スマートフォンベースのフラッドライトテストバッテリーは、現実のシナリオでMSを継続的に監視する強力なツールになるであろう。さらに、歩行中およびUターン中のスマートフォンのターン速度の測定は、T25FWおよびEDSSと相関するようであった。
【0177】
引用文献
Aktas 2005, Neuron 46, 421-432, Zamvil 2003, Neuron 38:685-688
Crawford A, et al. J Immunol 2006;176(6):3498-506
Bar-Or A, et al. Ann Neurol 2010;67(4):452-61
Lisak RP, et al. J Neuroimmunol 2012;246(1-2):85-95
Weber MS, et al. Biochim Biophys Acta 2011;1812(2):239-45
Serafini B, et al. Brain Pathol 2004;14(2):164-74
Magliozzi R, et al. Ann Neurol 2010;68(4):477-93
Bove 2015, Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2 (6):e162
Link 2006, J Neuroimmunol. 180 (1-2): 17-28
Tsang 2011, Australian family physician 40 (12): 948-55
Compston 2008, Lancet 372(9648): 1502-17
Johnston 2012, Drugs 72 (9): 1195-211
Polman 2011, Ann Neurol 69:292-302
Lublin 2014, Neurology 83: 278-286
Rai 2012, Proceedings of the 18th annual international conference on Mobile computing and networking. ACM
Alsheikh 2015, arXiv preprint arXiv:1511.04664
Ordonez 2016, Sensors, 16(1), 115
Mancini 2012, J Neuroeng Rehabil. 22: 9:59
Hobart 2001, Brain 124: 962-73
Hutas 2008, Current opinion in investigational drugs 9 (11):1206-15
Koehler 1975, Nature 256: 495-497
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17