【文献】
KIM J. et al.,FASEB Journal,272 (2005),p.550-561
【文献】
MIZUNO S. et al.,Journal of Bioscience and Bioengineering,vol.125 no.3 (2017 Nov 22),p.295-300
【文献】
YANG J. E. et al.,Nature Communications,9(2018 Jan 8),79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子は配列番号8で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項7に記載のフェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物。
tyrR遺伝子、ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子、ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子、アセトアルデヒド脱水素酵素をコードする遺伝子、フマル酸リダクターゼをコードする遺伝子、チロシンアミノ転移酵素をコードする遺伝子、及びアスパラギン酸アミノ転移酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される1種以上の遺伝子が欠失されていることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載のフェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物。
前記DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子は配列番号8で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とする、請求項15に記載のマンデレートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物。
次の段階を含む、2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートの製造方法:
(a)請求項1〜4のいずれか一項に記載の組み換え微生物を2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を含む培地で培養する段階;及び
(b)2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを取得する段階。
【発明を実施するための形態】
【0016】
他に定義しない限り、本明細書で使用した全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常的に理解されるものと同じ意味を有する。一般に、この明細書で使用した命名法は当該技術分野でよく知られており、通常に使われるものである。
【0017】
芳香族ポリエステルは主に石油から生産される必須プラスチックである。本発明では、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)合成酵素及び補酵素A(CoA)転移酵素を発現する代謝工学的に操作された大膓菌によって、グルコースから芳香族ポリエステル又は長鎖2−ヒドロキシアルカノエートを単量体とするポリマーをワンステップで生産する方法を確立した。
【0018】
本発明の一様態では、芳香族ポリエステルからフェニルラクテートを含むPHAを生産するために、in vitro分析によって活性が確認されたシンナモイル−CoA:フェニルラクテートCoA−転移酵素(FldA)及び4−クマレート:CoAリガーゼ(4CL)をPHA合成酵素とともにD−フェニルラクテート生産大膓菌菌株で発現させた。前記菌株は、in vivoで生成されたシンナモイル−CoAをCoA供与体として使用してポリ(16.8mol%D−ラクテート−co−80.8mol%3HB−co−1.6mol%D−フェニルラクテート−co−0.8mol%D−4−ヒドロキシフェニルラクテート)ポリマーを乾燥細胞の重さの12.8重量%の含量で生産した。
【0019】
しかし、フェニルラクテートCoA−転移酵素(FldA)の芳香族基質の利用範囲は非常に狭いから、CoA供与体としてアセチル−CoAを用いて多様な芳香族ヒドロキシアシルCoAを生成することができる2−イソカプレノイル−CoA:2−ヒドロキシイソカプロエートCoA−転移酵素(HadA)を確認し、これを選択して芳香族PHAの生産に用いた。高いモル分率のD−フェニルラクテートを含む芳香族PHAを大量生産するために、先に単量体であるD−フェニルラクテートを過剰生成するように最適の代謝経路を設計した。
【0020】
本発明の一様態では、D−フェニルラクテートの生産に最適の代謝経路を有するように代謝工学的に操作された大膓菌を製造するために、tyrR欠損大膓菌でフィードバック抵抗aroG、pheAとfldH遺伝子を過発現させ、競争代謝経路(pflB、poxB、adhE及びfrdB)を欠失させ、in silicoゲノム規模代謝フラックス分析によってtyrB及びaspC遺伝子をもっと欠失させた。前記代謝工学的に操作された大膓菌は1.62g/LのD−フェニルラクテートを生産した。前記D−フェニルラクテート過剰生産菌株にHadAとPHA合成酵素を発現させた場合、乾燥細胞重さの15.8重量%のポリ(52.1mol%3HB−co−47.9mol%D−フェニルラクテート)が生成されることを確認した。また、4−ヒドロキシフェニルラクテート、マンデレート(mandelate)及び3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネートを含むポリエステルを製造することによって多様な芳香族ポリエステルを製造することができる可能性を確認した。
【0021】
したがって、本発明は、一観点で、炭素源からアセチル−CoA生成能を有する微生物であって、2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素をコードする遺伝子及びポリヒドロキシアルカノエート合成酵素をコードする遺伝子が導入されており、芳香族単量体又は長鎖2−HAを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物に関するものである。
本発明において、長鎖2−HAは炭素数6〜8の2−ヒドロキシアルカノエートを意味する。
【0022】
本発明において、前記芳香族単量体又は長鎖2−HA単量体は、2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート、2−ヒドロキシオクタノエート、フェニルラクテート、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチレート、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート、4−ヒドロキシ安息香酸及びマンデレートからなる群から選択されることを特徴とすることができる。
【0023】
本発明において、前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素は、Ralstonia eutropha、Pseudomonas、Bacillus及びPseudomonas sp.6−19からなる群から選択される菌株由来のPHAシンターゼ又は下記から選択されるアミノ酸配列を有するPHAシンターゼの変異酵素であることを特徴とすることができる:
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477R、S477H、S477F、S477Y、S477G、Q481M、Q481K及びQ481Rからなる群から選択される1種以上の変異を含むアミノ酸配列;
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477G及びQ481Mの変異を有するアミノ酸配列(C1335);
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Kの変異を有するアミノ酸配列(C1310);及び
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Rの変異を有するアミノ酸配列(C1312)。
【0024】
本発明において、前記2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素はクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)630由来のhadAであることを特徴とすることができる。
本発明において、前記2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素はアセチル−CoAをCoA供与体として使うことを特徴とすることができる。
【0025】
本発明の微生物は、外部から3HBの供給がなくもポリマーを生産するために、3−hydroxybutyryl−CoA生合成に関与するβ−ケトチオラーゼをコードする遺伝子とアセトアセチル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子がさらに導入されていることを特徴とすることができる。
【0026】
他の観点で、本発明は、(a)前記組み換え微生物を培養して芳香族単量体又は長鎖2−HAを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを生成させる段階;及び(b)前記生成された芳香族単量体又は長鎖2−HAを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを取得する段階を含む芳香族単量体又は長鎖2−HAを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関するものである。
【0027】
本発明の一様態では、ポリヒドロキシアルカノエートの合成に使われるPct(プロピオニル−CoA転移酵素)がフェニルラクテートとマンデレートをそれぞれフェニルラクチル−CoAとマンデリル−CoAに活性化させることができるかを確認した。Pctcpの突然変異(Pct540)はグリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ吉草酸及び2−ヒドロキシ酸などの各種のヒドロキシ酸を含むポリエステルの生体内生産に成功的に使われているから、Pct540は炭素数及び水酸基の位置に対して、広い基質スペクトラムを有すると言える。しかし、Pct540はフェニルラクテート及びマンデレートに対する触媒活性は持っていないことを確認した。したがって、本発明では、芳香族共重合体の生産のために、芳香族化合物に対応するCoA誘導体を活性化することができる新規CoA−転移酵素を捜そうとした。
【0028】
クロストリジウムスポロゲネス(Clostridium sporogenes)のシンナモイル−CoA:フェニルラクテートCoA−転移酵素(FldA)はシンナモイル−CoAをCoA供与体として使用してフェニルラクテートをフェニルラクチル−CoAに変換することができると報告された(Dickert, S. et al., Eur. J. Biochem. 267:3874, 2000)。シンナモイル−CoAは大膓菌の非天然代謝物質であるから、細胞内に豊かな代謝産物であるアセチル−CoAをCoA供与体として使うかを確認するために、クロストリジウムスポロゲネス(C.sporogenes)のFldAと99.0%の相同性を有するClostridium botulinum A str.ATCC 3502由来のFldAを試験した。しかし、C.botulinum A str.ATCC 3502のFldAはCoA供与体としてアセチル−CoAを用いてフェニルラクチル−CoAを生成する触媒活性を有しないことを確認した。
【0029】
一方、Streptomyces coelicolor4−coumarate:CoAリガーゼ(4CL)がリグニン、フラボノイド、フィトアレキシンなどの植物の2次代謝物質の前駆体を生産するフェニルプロパノイド代謝に重要な役割をすることが知られている(Kaneko, M.et al, J. Bacteriol. 185:20,2003)。したがって、本発明の一様態では、4CLを導入することにより、シンナメートでシンナモイル−CoAを合成する生合成経路を設計した。4CL変異体を使用して、シンナメートをシンナモイル−CoAに転換するのに使い、シンナモイル−CoAはフェニルラクチル−CoAの形成のためのFldAのCoA供与体として使った。その結果、in vitroで4CLとFldAの順次反応によってフェニルラクチル−CoAを成功的に合成した。このような結果から、4CL及びFldAをフェニルラクチル−CoAの生成に使えることと芳香族ポリエステルの製造に使えることを確認した。同様に、他の有望な芳香族単量体である4−ヒドロキシフェニルラクテートも4CL変異体とFldAのin vitro順次反応によって4−ヒドロキシフェニルラクチル−CoAに変換されることを確認した。
【0030】
非天然ポリエステルの製造においては、該当CoA基質の重合のためのPHA合成酵素の変異体を選択することが重要であるので、多様なPHA合成酵素の性能を調べるために、Pseudomonas sp.MBEL 6−19 PHA合成酵素(PhaCPs6−19)変異体をAroGfbr、PAL、4CL、FldA及びPct540を過剰発現する大膓菌XL1−Blueで発現させた。製作された組み換え菌株を20g/Lのグルコース、1g/LのD−フェニルラクテート及び1g/Lのナトリウム3−ヒドロキシ酪酸(3HB)を添加したMR培地で培養した。ナトリウム3−ヒドロキシ酪酸(3HB)はPct540によってPhaCの選好基質である3HB−CoAに転換され、十分な量のPHAの生産ができるようにするため、ポリマーの生産を強化するために添加した。他のPHA合成酵素変異体を発現する大膓菌XL1−Blueは他のモノマー組成を有する多様な量のポリ(D−ラクテート−co−3HB−co−D−フェニルラクテート)を生産することができる。
【0031】
前記実験結果、PhaC変異体で、4個のアミノ酸置換(E130D、S325T、S477G及びQ481K)を含むPhaC1437がポリ(18.3mol%D−ラクテート−co−76.9mol%3HB−co−4.8mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの7.8重量%で生産することから、最も適合したPhaC変異体であることが確認された。
【0032】
次に、in vivoでグルコースからD−フェニルラクテートを生成するように大膓菌を操作した。芳香族化合物の生合成は3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸(DAHP)の合成から始まり、前記DAHPはDAHP合成酵素によるホスホエノールピルベート(PEP)とエリトロース−4−リン酸(E4P)の縮合によって生成される。生成されたDAHPはフェニルピルベート(PPA)に転換された後、D−ラクテートデヒドロゲナーゼ(FldH)によってD−フェニルラクテートに転換される(
図1)。芳香族化合物生合成のための代謝経路は多様な阻害機構によって複雑に制御されると知られている。aroGによってコーディングされるDAHP合成酵素とpheAによってコーディングされるコリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼの発現はL−フェニルアラニンによって阻害される(ribe, D. E. et al., J. Bacteriol. 127:1085, 1976)。
【0033】
本発明では、L−フェニルの一フィードバック阻害を解除するために、フィードバック阻害耐性突然変異AroGfbr[AroG(D146N)]及びPheAfbr[PheA(T326P)]を構築した(Zhou, H. Y. et al., Bioresour. Technol. 101:4151, 2010; Kikuchi, Y. et al., Appl. Environ. Microbiol. 63:761, 1997)。AroGfbr、PheAfbr及びC.botulinum A str.ATCC 3502のFldHを発現する大膓菌XL1−Blueはグルコース15.2g/LからD−フェニルラクテート0.372g/Lを生成した。前記菌株のPAL、4CL、FldA、Pct540及びPhaC1437の過剰発現はポリ(16.8mol%D−ラクテート−co−80.8mol%3HB−co−1.6mol%D−フェニルラクテート−co−0.8mol%D−4−ヒドロキシフェニルラクテート)を乾燥細胞重さの12.8重量%まで増加させた。D−フェニルラクテートを含む芳香族PHAを製造するのには二つの問題がある。一つ目は、高分子合成の効率及び芳香族単量体の含量が非常に低いことである。これは、シンナモイル−CoAをCoA供与体として使用するFldAの非効率性によるものであると考えられた。二つ目は、芳香族PHAのモノマースペクトラムが非常に狭いことである。in vitro酵素分析結果、FldAがCoAをフェニルラクテート及び4−ヒドロキシフェニルラクテートに移すことができるが、マンデレート、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチレート、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート及び4−ヒドロキシ安息香酸のような基質には移すことができないことを確認した。
【0034】
本発明では、前記問題を解決するために、CoA供与体としてアセチル−CoAを使って芳香族基質のスペクトラムが広い酵素を捜し出した。FldAに対する相同酵素を識別するために、配列類似性分析を実施し、他の起原の多様なFldAのうちFldAと48%以上のアミノ酸配列同一性を有するクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)の2−イソカプレノイル−CoA:2−ヒドロキシイソカプロエートCoA−転移酵素(HadA)をスクリーニングした(
図2)。HadAはCoA供与体としてイソカプレノイル−CoAを用いてCoAを2−ヒドロキシイソカプロエートに転換すると知られている酵素であるから、本発明では、HadAがアセチル−CoAをCoA供与体として使えるかを調査した(
図3)。in vitro酵素分析結果、興味深いことに、HadAがアセチル−CoAをCoA供与体として使用してフェニルラクテートをフェニルラクチル−CoAに活性化することができることを確認した(
図4)。
【0035】
また、HadAは、マンデレート、4−ヒドロキシマンデレート、フェニルラクテート、4−ヒドロキシフェニルラクテート、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチレート、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート及び4−ヒドロキシ安息香酸を該当CoA誘導体に変換することができることをin vitro分析後にLC−MS分析によって確認した(
図4及び
図5)。したがって、HadAはアセチル−CoAをCoA供与体として使用して多様な芳香族ポリエステルをより効率的に生産することができる可能性を持っている。
【0036】
次に、代謝工学によって芳香族単量体の生成量を増加させるために、グルコースからD−フェニルラクテートを少量生産(0.372g/L)するAroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XL1−Blue菌株の収率を代謝工学的操作によって上昇させた。芳香族アミノ酸生合成を抑制するように調節する二重転写調節因子であるTyrRを欠失させたAroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XBT菌株を製作した。前記大膓菌XBT菌株は16.4g/Lのグルコースから0.5g/LのD−フェニルラクテートを生産するので、TyrRを欠失させなかった前記大膓菌XL1−Blue菌株より30%高い生産性を示した。D−フェニルラクテート生合成と衝突する経路を除去するために、大膓菌XBTでpoxB(ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子)、ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子)、pflB(ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子)、adhE(アセトアルデヒド脱水素酵素/アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子)及びfrdB(フマル酸リダクターゼをコードする遺伝子)を欠失させた大膓菌XB201Tを製作した。AroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XB201T菌株は15.7g/Lのグルコースから0.55g/LのD−フェニルラクテートを生産した。これは大膓菌XBTより10%高い収率を示すものである。
【0037】
追加的に、in silicoゲノム規模代謝フラックス分析による代謝工学分析を実施して、D−フェニルラクテート生産をもっと増加させた(
図6)。チロシンアミノ転移酵素をコードするtyrB遺伝子及びアスパラギン酸アミノ転移酵素をコードするaspC遺伝子を前記大膓菌XB201T菌株から除去し、L−フェニルアラニン生合成を減少させて、D−フェニルラクテートへの炭素流れを強化した。その結果として製作されたAroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XB201TBA菌株は18.5g/Lのグルコースから1.62g/LのD−フェニルラクテートを生産して収率が大きく高くなった。これは、同じ遺伝子を発現する大膓菌XL1 Blue菌株のD−フェニルラクテート生産量より4.35倍高くなったものである。
【0038】
AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALを20g/Lのグルコース及び1g/Lのナトリウム3HBを含む培地で培養すれば、ポリ(52.1mol%3HB−co−47.9mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの15.8重量%の含量で生産した(
図7)。
【0039】
したがって、本発明は、さらに他の観点で、炭素源からアセチル−CoA生成能を有する微生物であって、2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素をコードする遺伝子、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素をコードする遺伝子、DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子、コリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子及びD−ラクテートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子が導入されており、フェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物に関するものである。
【0040】
本発明において、前記2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素はクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)630由来のhadAであることを特徴とすることができ、前記ヒドロキシアルカノエート合成酵素はRalstonia eutropha、Pseudomonas、Bacillus及びPseudomonas sp.6−19からなる群から選択される菌株由来のPHAシンターゼ又は下記から選択されるアミノ酸配列を有するPHAシンターゼの変異酵素であることを特徴とすることができる:
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477R、S477H、S477F、S477Y、S477G、Q481M、Q481K及びQ481Rからなる群から選択される1種以上の変異を含むアミノ酸配列;
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477G及びQ481Mの変異を有するアミノ酸配列(C1335);
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Kの変異を有するアミノ酸配列(C1310);及び
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Rの変異を有するアミノ酸配列(C1312)。
【0041】
本発明において、前記DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子は配列番号8で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記コリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は配列番号9で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記D−ラクテートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は配列番号10で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができる。
【0042】
本発明で、前記導入されるD−ラクテートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子はldhA遺伝子を取り替えるfldH遺伝子であることを特徴とすることができる。
【0043】
本発明の微生物は、外部から3HBの供給がなくもポリマーを生産するために、3−ヒドロキシブチリル−CoA生合成に関与するβ−ケトチオラーゼをコードする遺伝子とアセトアセチル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子がさらに導入されていることを特徴とすることができる。
【0044】
本発明で、導入されるβ−ケトチオラーゼをコードする遺伝子(phaA)とアセトアセチル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子(phaB)の発現量をプロモーターの強度によって調節する場合、PHAに含有されるD−フェニルラクテート単量体モル分率を調節することができる。
【0045】
本発明の一様態では、相異なる強度の5種のプロモーターの下でPhaABを発現する5個の相異なるプラスミドを製作し、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現するXB201TBAL菌株に導入し、PhaAB発現が減少するにつれてD−フェニルラクテート単量体モル分率が増加することを確認した(
図9a、
図9b及び表7)。このような結果は、代謝フラックスを調節することによって多様な芳香族単量体モル分率を有する芳香族ポリエステルが生成されることができることを示唆する。
【0046】
本発明において、前記組み換え微生物は、tyrR遺伝子、ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子、ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子、アセトアルデヒド脱水素酵素をコードする遺伝子、フマル酸リダクターゼをコードする遺伝子、チロシンアミノ転移酵素をコードする遺伝子、及びアスパラギン酸アミノ転移酵素をコードする遺伝子からなる群から選択される1種以上の遺伝子が欠失されていることを特徴とすることができる。
【0047】
本発明は、さらに他の観点で、(a)前記組み換え微生物を培養して、フェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを生成させる段階;及び(b)前記生成されたフェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを取得する段階を含む、フェニルラクテートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関するものである。
【0048】
前記方法が多様な芳香族重合体の製造に使えるかを確認するために、マンデレートをモノマーとして使用して試験した。マンデレートの単一ポリマーであるポリマンデレートが100℃の比較的高いTgを有する熱分解抵抗性ポリマーであるとともに、物質特性はポリスチレンと類似しているからである。ポリマンデレートは石油産業で生産されるマンデレートの環状二量体の開環重合によって化学的に合成されている。AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALを1g/Lのナトリウム3HB及び0.5g/LのD−マンデレートを含む培地で培養すれば、ポリ(55.2mol%3HB−co−43mol%D−フェニルラクテート−co−1.8mol%D−マンデレート)を乾燥細胞重さの11.6重量%の含量で製造した(
図8a及び
図8b)。本発明では、D−マンデレートを基質としてD−マンデレートを含む芳香族共重合体を成功的に製造し、ついで、代謝工学によってD−マンデレートをin vivoで生産しようとした。グルコースからD−マンデレートを含む芳香族共重合体を生産するために、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALでアミコラトプシスオリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)由来のヒドロキシマンデレート合成酵素(HmaS)、S.coelicolorのヒドロキシマンデレート酸化酵素(Hmo)及びRhodotorula graminisのD−マンデレート脱水素酵素(Dmd)を発現させた。前記操作された菌株を20g/Lのグルコースと1g/Lのナトリウム3HBを含む培地で培養する場合、乾燥細胞重さの16.4重量%のポリ(92.9mol%の3HB−co−6.3mol%D−フェニルラクテート−co−0.8mol%D−マンデレート)を生産した。
【0049】
したがって、本発明は、さらに他の観点で、炭素源からアセチル−CoA生成能を有する微生物であって、2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素をコードする遺伝子、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素をコードする遺伝子、DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子、コリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、D−ラクテートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ヒドロキシマンデレート合成酵素をコードする遺伝子、ヒドロキシマンデレート酸化酵素をコードする遺伝子及びD−マンデレート脱水素酵素をコードする遺伝子が導入されており、マンデレートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物に関するものである。
【0050】
本発明において、前記2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素はクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)630由来のhadAであることを特徴とすることができ、前記ヒドロキシアルカノエート合成酵素はRalstonia eutropha、Pseudomonas、Bacillus及びPseudomonas sp.6−19からなる群から選択される菌株由来のPHAシンターゼ又は下記から選択されるアミノ酸配列を有するPHAシンターゼの変異酵素であることを特徴とすることができる:
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477R、S477H、S477F、S477Y、S477G、Q481M、Q481K及びQ481Rからなる群から選択される1種以上の変異を含むアミノ酸配列;
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S325T、L412M、S477G及びQ481Mの変異を有するアミノ酸配列(C1335);
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Kの変異を有するアミノ酸配列(C1310);及び
配列番号2のアミノ酸配列において、E130D、S477F及びQ481Rの変異を有するアミノ酸配列(C1312)。
【0051】
本発明において、前記DAHP(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸)合成酵素をコードする遺伝子は配列番号8で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記コリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は配列番号9で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記D−ラクテートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は配列番号10で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができる。
【0052】
本発明において、前記ヒドロキシマンデレート合成酵素をコードする遺伝子は配列番号11で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記ヒドロキシマンデレート酸化酵素をコードする遺伝子は配列番号12で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができ、前記D−マンデレート脱水素酵素をコードする遺伝子は配列番号13で表されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であることを特徴とすることができる。
【0053】
本発明の微生物は、外部から3HBの供給がなくもポリマーを生産するために、3−ヒドロキシブチリル−CoA生合成に関与するβ−ケトチオラーゼをコードする遺伝子とアセトアセチル−CoAリダクターゼをコードする遺伝子がさらに導入されていることを特徴とすることができる。
【0054】
本発明は、さらに他の観点で、(a)前記組み換え微生物を培養してマンデレートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを生成させる段階;及び(b)前記生成されたマンデレートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを取得する段階を含む、マンデレートを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関するものである。
【0055】
また、本発明では、本発明の組み換え菌株を用いて、多様な長鎖2−HAを含むポリヒドロキシアルカノエートの製造が可能であるかを確認するために、長鎖2−HAモノマーである2−ヒドロキシイソカプロエート(2HIC)、2−ヒドロキシヘキサノエート(2HH)及び2−ヒドロキシオクタノエート(2HO)を単量体として使用してポリマー生産能を確認した。その結果、2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート又は2−ヒドロキシオクタノエートを含む共重合体を生成することを確認し、培地内に含有された2−HAの濃度が増加するほど共重合体内に含む単量体のモル分率が増加することを確認した(表4、表5及び表6)。
【0056】
したがって、本発明は、さらに他の観点で、(a)前記芳香族単量体又は長鎖2−HAを単量体として含むポリヒドロキシアルカノエート生成能を有する組み換え微生物を2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を含む培地で培養する段階;及び(b)2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートを取得する段階を含む、2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート及び2−ヒドロキシオクタノエートからなる群から選択される化合物を単量体として含むポリヒドロキシアルカノエートの製造方法に関するものである。
【0057】
本発明では、PHA生成が可能な他の芳香族単量体として3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート(3HPh)を使って芳香族ポリマーの生産を確認した。大膓菌XB201TBA菌株を20g/Lのグルコース、0.5g/Lの3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸及び1g/Lのナトリウム3HBを含む培地で培養すれば、ポリ(33.3mol%3HB−co−18mol%D−フェニルラクテート−co−48.7mol%3HPh)を乾燥細胞重さの14.7重量%で生産することを確認した(
図8c及び
図8d)。このような結果は、本発明で開発されたHadAと変異されたPHA合成酵素が多様な芳香族ポリエステルの製造に広く使えることを示唆する。
【0058】
最後に、代謝的に操作された大膓菌によって生産される芳香族PHAの物質特性を調査した。ポリ(52.1mol%3HB−co−47.9mol%D−フェニルラクテート)は無晶形であり、共重合中のD−フェニルラクテートのモル分率が増加するにつれて分子量が減少するにもかかわらず、Tgは23.86℃まで大きく増加した。また、ポリマー内に芳香族を含む共重合体は結晶化度が減少した。ポリマーの芳香族環がP(3HB)の結晶化を妨げると推測される。P(3HB)の場合、強い結晶性によって高い脆性(brittleness)を示す反面、生成された共重合体の場合、結晶化度の低下及びTgの向上によって機械的靭性の向上をもたらした。
【0059】
本発明では、多様な芳香族ポリエステルの製造のために、細菌プラットフォームシステムを開発した。本発明の芳香族高分子生産システムは、芳香族化合物をそのCoA誘導体に活性化するための新しい広範囲な基質範囲を有するCoA−転移酵素を確認し、これらの芳香族CoA誘導体を重合することができるPHA合成酵素変異体及び生体内で芳香族単量体を過剰生成する経路を代謝の設計及び最適化によって樹立した。
【0060】
本発明の多くの様態で、いくつかの芳香族モノマーを使用して立証したように、このようなシステムは多様な芳香族重合体の製造に使われることができる。例えば、本発明によれば、HadA(又は関連酵素)及びPHA合成酵素が所望の芳香族モノマーを収容するように操作することができる。本発明で開発されたバクテリアプラットフォームシステムは再生可能な非食糧バイオマスから芳香族ポリエステルの製造のためのバイオプロセスを確立するのに寄与することができる。
【0061】
本発明で、“ベクター(vector)”は適した宿主内でDNAを発現させることができる調節配列に作動可能に連結されたDNA配列を含むDNA製造物を意味する。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は簡単に潜在的ゲノム挿入物であってもよい。適当な宿主によって形質転換されれば、ベクターは宿主ゲノムに無関係に複製して機能することができるか、あるいは一部の場合にゲノム自体に統合されることができる。プラスミドが現在ベクターの最も通常的に使われる形態であるので、本発明の明細書で、“プラスミド(plasmid)”及び“ベクター(vector)”は時々互いに交換して使われる。本発明の目的上、プラスミドベクターを用いることが好ましい。このような目的で使われることができる典型的なプラスミドベクターは、(a)宿主細胞当たり数百個のプラスミドベクターを含むように効率的に複製できるようにする複製開始点、(b)プラスミドベクターに形質転換された宿主細胞が選発されるようにする抗生剤耐性遺伝子及び(c)外来DNA断片が挿入されることができる制限酵素切断部位を含む構造を持っている。適切な制限酵素切断部位が存在しなくても、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)又はリンカー(linker)を使えば、ベクターと外来DNAを容易にライゲーション(ligation)することができる。
【0062】
ライゲーションの後、ベクターは適切な宿主細胞に形質転換されなければならない。本発明において、選好される宿主細胞は原核細胞である。適した原核宿主細胞はE.coli DH5α、E.col JM101、E.coli K12、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli XL−1Blue(Stratagene)、E.coli B、E.coli B21などを含む。しかし、FMB101、NM522、NM538及びNM539のようなE.coli菌株及び他の原核生物の種(speices)及び属(genera)なども使われることができる。前述したE.coliに加え、アグロバクテリウムA4のようなアグロバクテリウム属菌株、バシラスサブチリス(Bacillus subtilis)のようなバシリ(bacilli)、サルモネラティフィムリウム(Salmonella typhimurium)又はセラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)のようなさらに他の場内細菌及び多様なシュードモナス(Pseudomonas)属菌株が宿主細胞として用いられることができる。
【0063】
原核細胞の形質転換はSambrook et al.,supraの1.82セクションに記述された塩化カルシウム方法を使って容易に達成することができる。選択的に、電気穿孔法(electroporation)(Neumann et al., EMBO J., 1:841, 1982)もこのような細胞の形質転換に使われることができる。
【0064】
本発明による遺伝子の過発現のために使われるベクターは当該分野に公知となった発現ベクターが使われることができ、pET系ベクター(Novagen)を使うことが好ましい。前記pET系ベクターを使ってクローニングすれば、発現するタンパク質の末端にヒスチジン基が結合されて出るので、前記タンパク質を効果的に精製することができる。クローニングされた遺伝子から発現したタンパク質を分離するためには当該分野に公知となった一般的な方法を用いることができ、具体的に、Ni−NTA His−結合レジン(Novagen)を使うクロマトグラフィー方法を用いて分離することができる。本発明において、前記組み換えベクターはpET−SLTI66であることを特徴とすることができ、前記宿主細胞は大膓菌又はアグロバクテリウムであることを特徴とすることができる。
【0065】
本発明で、“発現調節配列(expression control sequence)”という表現は、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコーディング配列の発現に必須なDNA配列を意味する。このような調節配列は、転写を実施するためのプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、及び適したmRNAリボソーム結合部位をコードする配列及び転写及び解読の終決を調節する配列を含む。例えば、原核生物に適した調節配列は、プロモーター、任意のオペレーター配列及びリボソーム結合部位を含む。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを含む。プラスミドにおいて遺伝子の発現量に一番影響を及ぼす因子はプロモーターである。高発現用のプロモーターとして、SRαプロモーターとサイトメガロヴィルス(cytomegalovirus)由来のプロモーターなどが好ましく使われる。本発明のDNA配列を発現させるために、非常に多様な発現調節配列のいずれでもベクターに使われることができる。有用な発現調節配列には、例えばSV40又はアデノヴィルスの初期及び後期プロモーター、lacシステム、trpシステム、TAC又はTRCシステム、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又は他のグリコール分解酵素に対するプロモーター、前記ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母アルファ−交配システムのプロモーター及び原核細胞又は真核細胞又はヴィルスの遺伝子発現を調節すると知られたその他の配列及びこれらの多くの組合が含まれる。T7プロモーターは大膓菌で本発明のタンパク質を発現させるのに有用に使われることができる。
【0066】
核酸は、他の核酸配列と機能的関係で配置されるとき、“作動可能に連結(operably linked)”される。これは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が調節配列(等)に結合されるとき、遺伝子発現ができるようにする方式で連結された遺伝子及び調節配列(等)であり得る。例えば、前配列(pre−sequence)又は分泌リーダー(leader)に対するDNAはポリペプチドの分泌に参加する前タンパク質として発現する場合、ポリペプチドに対するDNAに作動可能に連結され;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コーディング配列に作動可能に連結されるか;あるいはリボソーム結合部位は、配列の転写に影響を及ぼす場合、コーディング配列に作動可能に連結されるか;あるいはリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コーディング配列に作動可能に連結される。一般に、“作動可能に連結された”は、連結されたDNA配列が接触し、かつ分泌リーダーの場合、接触してリーディングフレーム内に存在することを意味する。しかし、エンハンサー(enhancer)は接触する必要がない。これらの配列の連結は便利な制限酵素部位でライゲーション(連結)によってなされる。その部位が存在しない場合、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)又はリンカー(linker)を使う。
【0067】
本明細書で使用された用語“発現ベクター”は通常異種のDNA断片が挿入された組み換えキャリア(recombinant carrier)であり、一般的に二重鎖のDNA断片を意味する。ここで、異種DNAは宿主細胞で天然的に発見されないDNAである異形DNAを意味する。発現ベクターは一旦宿主細胞内にあれば宿主染色体DNAに無関係に複製することができ、ベクターの数個のコピー及びその挿入された(異種)DNAが生成されることができる。
【0068】
当該分野に周知されたように、宿主細胞で形質感染遺伝子の発現水準を高めるためには、該当遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び解読発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。好ましくは、発現調節配列及び該当遺伝子は細菌選択マーカー及び複製開始点(replication origin)をともに含んでいる一つの発現ベクター内に含まれることになる。宿主細胞が真核細胞の場合には、発現ベクターは真核発現宿主内で有用な発現マーカーをさらに含まなければならない。
【0069】
上述した発現ベクターによって形質転換又は形質感染された宿主細胞は本発明のさらに他の側面をなす。本明細書で使用された用語“形質転換”はDNAが宿主として導入され、DNAが染色体外因子として又は染色体統合完成によって複製可能になることを意味する。本明細書で使用された用語“形質感染”は任意のコーディング配列が実際に発現するかにかかわらず、発現ベクターが宿主細胞によって収容されることを意味する。
【0070】
もちろん、全てのベクターと発現調節配列が本発明のDNA配列を発現するのに全てが同等に機能を発揮しないということを理解しなければならない。同様に、全ての宿主が同じ発現システムに対して同一に機能を発揮しない。しかし、当業者であれば、過度な実験的負担なしに本発明の範囲を逸脱しない範疇内で多くのベクター、発現調節配列及び宿主の中で適切に選択することができる。例えば、ベクターの選択においては宿主を考慮しなければならない。これはベクターがその内部で複製されなければならないからである。ベクターの複製数、複製数を調節することができる能力及び当該ベクターによってコーディングされる他のタンパク質、例えば抗生剤マーカーの発現も考慮されなければならない。発現調節配列の選定においても、さまざまな因子を考慮しなければならない。例えば、配列の相対的強度、調節可能性及び本発明のDNA配列との相性など、特に可能性ある二次構造に関連して考慮しなければならない。単細胞宿主は、選定されたベクター、本発明のDNA配列によってコーディングされる産物の毒性、分泌特性、タンパク質を正確にフォルディングすることができる能力、培養及び発酵要件、本発明のDNA配列によってコーディングされる産物を宿主から精製することにおける容易性などの因子を考慮して選定しなければならない。これらの変数の範囲内で、当業者は本発明のDNA配列を発酵又は大規模動物培養で発現させることができる各種のベクター/発現調節配列/宿主組合せを選定することができる。発現クローニングによって本発明によるタンパク質のcDNAをクローニングしようとするときのスクリーニング法として、バインディング法(binding法)、パニング法(panning法)、フィルムエマルジョン法(film emulsion法)などが適用されることができる。
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものに解釈されないことは当該分野で通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0072】
下記の実施例では組み換え微生物として大膓菌を使ったが、炭素源からアセチル−CoAを生成する微生物であれば制限なしに使うことができ、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、バシラス(Bacillus)属、コリネバクテリア(Corynebacterium)属などが使える。
本発明で使用又は製作された組み換え菌株、プラスミド及びプライマーを表1〜3に示した。
【0076】
実施例1:組み換え2−ヒドロキシイソカプロエートCoA−転移酵素の製作
CoA供与体としてアセチル−CoAを使って芳香族基質のスペクトラムの広い酵素を捜し出した。FldAに対する相同酵素を識別するために配列類似性分析を実施し、他の起源の多様なFldAの中でFldAと48%以上のアミノ酸配列同一性を有するクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)の2−イソカプレノイル−CoA:2−ヒドロキシイソカプロエートCoA−転移酵素(HadA、配列番号1)をスクリーニングした(
図2)。
【0077】
HadAをコードする遺伝子を含む組み換えベクターを製作するために、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)630菌株の染色体DNAを鋳型とし、HadA−hisF、HadA−hisRプライマーでPCRを行って、C末端(C terminus)にhis−tagが付いた2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素をコードするhis_HadA遺伝子断片を製作した。
【0078】
ついで、前記製造されたhis_HadA断片をT7プロモーターの強い遺伝子発現を進めるpET22bプラスミドに制限酵素(NdeI及びNotI)で処理した後、T4 DNAリガーゼを処理して、制限酵素で切断されたhis_HadA断片及びpET22bプラスミドを接合させることにより、組み換えプラスミドであるpET22b_hisHadAを製作した(
図2)。
【0079】
前記pET22b_hisHadAを大膓菌XL1−Blue(Stratagene Cloning Systems、USA)に導入させた後、培養し、IPTGを添加してHadA発現を誘導した後、His−tagを用いてNi−NTAスピンキット(Quiagen、Germany)で培養液からHadAを精製した(
図3a)。
【0080】
実施例2:2−ヒドロキシイソカプロエートCoA−転移酵素の基質多様性の確認
HadAがアセチル−CoAを供与体として使えるかを確認するために、実施例1で製造したHadAを使用してin vitro分析を遂行した。
10μgのHadAを0.1mMアセチル−CoA及び10mM基質を含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)に添加し、30℃で10分間反応を遂行した。反応後、0.1mMのオキサル酢酸、5μgクエン酸生成酵素及び0.5mMの5.5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を添加した。その後、遊離したCoAの量を412nmでの吸光度を測定して分析した(
図3b)。
【0081】
生成される脂肪族及び芳香族アシル−CoAの分析はEclipse XDB−C18カラム(5μm、4.6×150mm、Agilent)を備えたLC−MS(Agilent 1100シリーズ及びLC/MSD VL、Agilent)で遂行した。
【0082】
その結果、
図4に示したように、HadAがアセチル−CoAをCoA供与体として使用してマンデレート、4−ヒドロキシマンデレート、フェニルラクテート、4−ヒドロキシフェニルラクテート、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチレート、3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート及び4−ヒドロキシ安息香酸を基質として使用して、前記基質を該当CoA誘導体に転換することができることを確認した。
図5にはHadAが転換することができる多様な基質のCoA転換反応を分子式で示した。
【0083】
実施例3:芳香族単量体の生成が増加した組み換え菌株の製作
in vivoでグルコースからD−フェニルラクテートを生成するように大膓菌を操作した。芳香族化合物の生合成は3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート−7−リン酸(DAHP)の合成から始まり、前記DAHPはDAHP合成酵素によるホスホエノールピルベート(PEP)とエリトロース−4−リン酸(E4P)の縮合によって生成される。生成されたDAHPはフェニルピルベート(PPA)に転換された後、D−ラクテートデヒドロゲナーゼ(FldH)によってD−フェニルラクテートに転換される(
図1)。芳香族化合物の生合成のための代謝経路は多様な阻害機構によって複雑に制御されると知られている。aroGによってコーディングされるDAHP合成酵素とpheAによってコーディングされるコリスミ酸ムターゼ/プレフェネートデヒドロゲナーゼの発現はL−フェニルアラニンによって阻害される(ribe, D. E. et al., J. Bacteriol. 127:1085, 1976)。
【0084】
本発明では、L−フェニルアラニンによるフィードバック阻害を解除するために、フィードバック阻害耐性突然変異AroGfbr[AroG(D146N)]及びPheAfbr[PheA(T326P)]を構築した(Zhou, H. Y. et al., Bioresour. Technol. 101:4151, 2010; Kikuchi, Y. et al., Appl. Environ. Microbiol. 63:761, 1997)。AroGfbr、PheAfbr及びC.botulinum A str.ATCC 3502のFldHを発現する大膓菌XL1−Blueを製作した。
【0085】
pKM212−AroGfbrを構築するために、フィードバック阻害耐性突然変異である3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソネート(heptulosonate)−7−リン酸合成酵素遺伝子(aroG)をプライマーAroG−F及びAroG−Rを用いてプラスミドpTyr−a(Na, D. et al., Nature Biotechnol. 31:170, 2013)を鋳型としてPCR産物を製造し、前記PCR産物を制限酵素(EcoRI/HidIII)を用いて、pKM212−MCS(Park, S. J. et al., Metab. Eng. 20:20, 2013)と連結して、pKM212−AroGfbrを製作した。
【0086】
pKM212−AroGfbrPheAfbrプラスミドを次のように構築した。第一、単一変異された塩基(T976G)のプライマーPheA−F及びPheAmut−Rを用いて大膓菌のゲノムDNAから991bpのDNA断片をPCRで増幅した。第二、単一変異された塩基(A976C)及びPheA−RのプライマーPheAmut−Fを用いて大膓菌のゲノムDNAから200bpのDNA断片を増幅した。
【0087】
ついで、混合された2個の断片を鋳型として使用して1161bpのDNA断片をオーバーラップPCRでプライマーPheA−F及びPheA−Rで増幅した。PCR産物を、制限酵素(HindIII)を使用して、前記製作されたpKM212−AroGfbrと連結した。
【0088】
pACYC−FldH構築のために、C.botulinum Astr.ATCC 3502のD−ラクテートデヒドロゲナーゼ(fldH)を使った。fldH遺伝子のコドン使用頻度は大膓菌に最適化し、大膓菌コドン最適化fldH遺伝子をプライマーFldH−F及びFldH−Rを用いて増幅した。鋳型としてpUC57−FldHopt(GenScript、Piscataway、NJ、USA)を用いて実施した。
【0089】
PCR産物を制限酵素(BamHI/HindIII)を使用して、pTrc99A(Pharmacia、Biotech、Sweden)と連結してpTrc−FldHを製作した。ついで、trcプロモーター及びrrnBターミネーター結合したfldH遺伝子を、pTrc−FldHを鋳型としてプライマーTrc−F及びTer−Rを用いたPCRで増幅した。増幅されたPCR産物を制限酵素(XhoI/SacI)を使ってpACYC184KS(韓国特許公開第2015−0142304号)と連結してpACYC−FldHを得た。
【0090】
前記製作されたpKM212−AroGfbrPheAfbr、pACYC−FldHを大膓菌XL1−Blueに導入して、AroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する組み換え大膓菌を製作した。
前記大膓菌は、15.2g/Lのグルコースを含むMR培地で培養したとき、0.372g/LのD−フェニルラクテートを生産した。
【0091】
前記MR培地は1L当たり6.67gのKH
2PO
4、4gの(NH
4)
2HPO
4、0.8gのMgSO
4・7H
2O、0.8gのクエン酸塩及び5mlの微量の金属溶液を含み、前記微量金属溶液は0.5M HCl:10gのFeSO
4・7H
2O、2gのCaCl
2、2.2gのZnSO
4・7H
2O、0.5gのMnSO
4・4H
2O、1gのCuSO
4・5H
2O、0.1gの(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O及び0.02gのNa
2B
4O
7・10H
2Oを含む。
【0092】
代謝工学によって芳香族単量体の生成量を増加させるために、グルコースからD−フェニルラクテートを少量(0.372g/L)生産する前記AroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XL1−Blue菌株を代謝工学的操作して収率を上昇させた。芳香族アミノ酸生合成を抑制するように調節する二重転写調節因子であるTyrRを欠失させたAroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XBT菌株を製作した。
【0093】
前記AroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌でtyrR遺伝子の欠失はワンステップ不活性化方法を使って遂行した(Datsenko, K. A. et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 97:6640, 2000)。
【0094】
前記大膓菌XBT菌株は、16.4g/Lのグルコースを含むMR培地で培養した結果、0.5g/LのD−フェニルラクテートを生産して、tyrRを欠失させなかった前記大膓菌XL1−Blue菌株より30%高い生産性を示した。
【0095】
D−フェニルラクテート生合成と衝突する経路を除去するために、大膓菌XBTでpoxB(ピルビン酸酸化酵素をコードする遺伝子)、pflB(ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする遺伝子)、adhE(アセトアルデヒド脱水素酵素/アルコール脱水素酵素をコードする遺伝子)及びfrdB(フマル酸リダクターゼをコードする遺伝子)を欠失させた大膓菌XB201Tを製作した。
【0096】
大膓菌XB201T菌株は15.7g/Lのグルコースから0.55g/LのD−フェニルラクテートを生産した。これは大膓菌XBTより10%高い収率を示すものである。
追加的に、in silicoゲノム規模代謝フラックス分析による代謝工学分析を実施して、D−フェニルラクテート生産をもっと増加させようとした。
【0097】
in silicoフラックス応答分析のためには、2251個の代謝反応と1135個の代謝産物からなる大膓菌iJO1366ゲノムスケールモデルを使い、D−フェニルラクテート生産に及ぶ中心及び芳香族アミノ酸生合成反応の影響を調査した。本発明のXB201T菌株に反映するために、D−フェニルラクテート生合成の異種代謝反応(fldH遺伝子)をモデルにさらに付け加え、該当フラックスをゼロに設定することによって遺伝子ノックアウトをモデルに反映させた。D−フェニルラクテート生成速度は目的関数で極大化させた反面、中心アミノ酸及び芳香族アミノ酸生合成反応フラックス値は最小値から最大値まで徐々に増加させた。シミュレーションで、グルコース反応速度は時間当り乾燥細胞重さ1g当たり10mmolに設定した。全てのシミュレーションはGurobi Optimizer 6.0及びGurobiPyパッケージ(Gurobi Optimization、Inc.Houston、TX)を使ってPython環境で実行した。COBRApy32を使用して、COBRA互換SBMLファイルの読み取り、書き込み及び作業を遂行した。
【0098】
その結果、
図6に示したように、チロシンアミノ転移酵素をコードするtyrB遺伝子及びアスパラギン酸アミノ転移酵素をコードするaspC遺伝子を前記大膓菌XB201T菌株から除去し、L−フェニルアラニン生合成を減少させてD−フェニルラクテートへの炭素流れを強化した。
【0099】
前記in silicoフラックス応答分析の結果として製作された大膓菌XB201TBA菌株は18.5g/Lのグルコースから1.62g/LのD−フェニルラクテートを生産して収率が大きく高くなった。これは、AroGfbr、PheAfbr及びFldHを発現する大膓菌XL1−Blue菌株のD−フェニルラクテート生産量より4.35倍高くなったものである。
【0100】
実施例4:組み換え菌株を用いた芳香族単量体を含むポリヒドロキシアルカノエートの製造
XB201TBAでD−ラクテートの形成を防止するために、ldhA遺伝子をさらに欠失してXB201TBAL菌株を製作した。芳香族単量体を含むポリヒドロキシアルカノエートを製造するために、大膓菌XB201TBAL菌株でPhaC1437及びHadAを発現させた。
【0101】
PhaC1437とHadAをコードする遺伝子を含む組み換えベクターを製作するために、クロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)630菌株の染色体DNAを鋳型とし、HadA−sbF、HadA−ndRプライマーでPCRを行って、2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素をコードするhadA遺伝子断片を製作した。増幅されたPCR産物を制限酵素(SbfI/NdeI)を使ってp619C1437−pct540(Yang, T. H. et al. Biotechnol Bioeng 105: 150, 2010)と連結してp619C1437−HadAを得た。前記製作されたp619C1437−HadAを大膓菌XB201TBALに導入して、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する組み換え大膓菌を製作した。前記大膓菌を20g/Lのグルコース及び1g/Lのナトリウム3HBを含むMR培地で培養して、ポリ(52.1mol%3HB−co−47.9mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの15.8重量%の含量で生産した(
図7)。また、流加式発酵(fed−batch)を介してポリ(52.3mol%3HB−co−47.7mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの24.3重量%の含量で生産した(
図10a及び
図10b)。
【0102】
実施例5:組み換え菌株を用いた多様な芳香族単量体を含むポリヒドロキシアルカノエートの製造
大膓菌XB201TBALを用いたシステムが多様な芳香族共重合体の製造に使えるかを確認するために、マンデレートをモノマーとして使用して試験した。
AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALを1g/Lのナトリウム3HB及び0.5g/LのD−マンデレートを含むMR培地で培養した結果、ポリ(55.2mol%3HB−co−43.0mol%D−フェニルラクテート−co−1.8mol%D−マンデレート)を乾燥細胞重さの11.6重量%の含量で製造し(
図8a、b)、D−マンデレートを基質としてD−マンデレートを含む芳香族重合体を成功的に製造した。
【0103】
ついで、代謝工学によってD−マンデレートをin vivoで生産しようとした。グルコースからD−マンデレートを生産するために、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALでアミコラトプシスオリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)由来のヒドロキシマンデレート合成酵素(HmaS)、S.coelicolorのヒドロキシマンデレート酸化酵素(Hmo)及びロドトルラグラミニス(Rhodotorula graminis)のD−マンデレート脱水素酵素(Dmd)を発現させた。
【0104】
pKM212−HmaSの構築のために、A.orientalisのヒドロキシマンデル酸合成酵素遺伝子(hmaS)を使い、そのコドンを大膓菌で合成ベクターにクローニングしてプラスミドpUC57−HmaSoptを製作した(GenScript、Piscataway、NJ、USA)。
【0105】
前記pUC57−HmaSoptを制限酵素(EcoRI/KpnI)を使用してpKM212−MCSに連結した。pKM212−HmaSHmoを製作するために、S.coelicolorのヒドロキシマンデレート酸化酵素遺伝子(hmo)からコドン最適化hmo遺伝子を合成し(GenScript、Piscataway、NJ、USA)、プライマーHmo−F及びHmo−Rを用いたPCRによって増幅した。PCR産物を制限酵素(KpnI/BamHI)を用いてpKM212−HmaSと連結して、pKM212−HmaSHmoを製作した。
【0106】
pKM212−HmaSHmoDmdを構築するために、大膓菌コドン最適化dmd遺伝子を含むpUC57−Dmdを合成し(GenScript、Piscataway、NJ、USA)、プライマーDmd−F及びDmd−Rを用いたPCRによって大膓菌コドン最適化R.graminis D−マンデレートデヒドロゲナーゼ遺伝子(dmd)を増幅した。PCR産物を制限酵素(BamHI/SbfI)を使用してpKM212−HmaSHmoと連結して、pKM212−HmaSHmoDmdを製作した。
【0107】
前記製作されたpKM212−HmaSHmoDmdをAroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XB201TBALに導入して、マンデレート生産能を有する組み換え菌株を製作した。
【0108】
前記製作されたマンデレート生産能を有する組み換え菌株を20g/Lのグルコースと1g/Lのナトリウム3HBを含む培地で培養した結果、乾燥細胞重さの16.4重量%のポリ(92.9mol%の3HB−co−6.3mol%D−フェニルラクテート−co−0.8mol%D−マンデレート)を生産した。
【0109】
他の可能な芳香族単量体として3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオネート(3HPh)を使って芳香族ポリマーの生産を確認した。大膓菌XB201TBAL菌株を20g/Lのグルコース、0.5g/Lの3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸及び1g/Lのナトリウム3HBを含む培地で培養すれば、ポリ(33.3mol%3HB−co−18.0mol%D−フェニルラクテート−co−48.7mol%3HPh)を乾燥細胞重さの14.7重量%で生産することを確認した(
図8c及び
図8d)。このような結果は、本発明で開発された2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素を用いたシステムが多様な芳香族ポリエステルの製造に広く使えることを示唆する。
【0110】
実施例6:組み換え菌株を用いた多様な長鎖2−HAを含むポリヒドロキシアルカノエートの製造
本発明の2−ヒドロキシイソカプロエート−CoA転移酵素を用いたシステムが多様な長鎖2−HAを含むポリヒドロキシアルカノエートの製造に使えるかを確認するために、多様な長鎖2−HAモノマー[2−ヒドロキシイソカプロエート(2HIC)、2−ヒドロキシヘキサノエート(2HH)及び2−ヒドロキシオクタノエート(2HO)]を単量体として使用してポリマー生産能を確認した。PhaC1437及びHadAを発現する大膓菌XL1−Blueを1g/Lの3HB、20g/Lのグルコース及び濃度別(0.25、0.5及び1g/L)長鎖2−HAを含むMR培地で培養した結果、2−ヒドロキシイソカプロエート、2−ヒドロキシヘキサノエート又は2−ヒドロキシオクタノエートを含む共重合体を生成した。また、培地内に含有された2−HAの濃度が増加するほど共重合体内に含まれる単量体のモル分率が増加することを確認することができた(表4、表5及び表6)。
【0114】
実施例7:合成プロモーターに基づくフラックス調節による多様なモル分率の芳香族単量体を含むポリヒドロキシアルカノエートの製造
外部から3HBを添加しなくても芳香族PHAを生産する菌株を製作するために、XB201TBAL菌株でR.eutropha β−ketothiolase(PhaA)とアセトアセチル−CoAリダクターゼ(PhaB)をさらに発現させ、3HB補充なしにグルコースで芳香族PHAを生産するかを確認した。
【0115】
その結果、予想のどおり、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現するXB201TBAL菌株はMR培地でポリ(86.2mol%3HB−co−13.8mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの18.0重量%で20g/Lのグルコースから生産した。また、産業的応用に重要な多様な単量体モル分率を有する芳香族PHAの生産を合成アンダーソン(Anderson)プロモーター(http://parts.igem.org/)を使ってPhaABの代謝フラックスを調節して試みた。相異なる強度の5種のプロモーター(配列番号89〜93)の下でPhaABを発現する5個の相異なるプラスミドを製作し、AroGfbr、PheAfbr、FldH、PhaC1437及びHadAを発現するXB201TBAL菌株に導入した。
【0116】
PhaAB発現が減少するにつれてD−フェニルラクテート単量体モル分率は増加した。すなわち、それぞれ11.0mol%、15.8mol%、20.0mol%、70.8mol%及び84.5mol%のD−フェニルラクテートを有する共重合体を製造することができた(
図9a、
図9b及び表7)。また、BBa_J23103プロモーターの下でPhaABを発現させることにより、ポリ(15.5mol%3HB−co−84.5mol%D−フェニルラクテート)を乾燥細胞重さの4.3重量%で生産した(
図9b)。このような結果は、代謝フラックスを調節することにより、多様な芳香族単量体モル分率を有する芳香族ポリエステルを生成することができることを示唆する。
【0118】
実施例8:流加式発酵による芳香族ポリヒドロキシアルカノエートの製造
本実施例では、AroGfbr、PheAfbr、FldH、HadA、PhaC1437及びBBa_J23114プロモーターの下でPhaABを発現する大膓菌XB201TBAL菌株のpH−stat培養を3HB供給なしに遂行した。培養96時間後、重合体の含量が乾燥細胞重さの43.8重量%であるポリ(67.6mol%3HB−co−32.4mol%D−フェニルラクテート)を2.5g/Lで生産した(
図10c及び
図10d)。
【0119】
また、芳香族ポリヒドロキシアルカノエートの生産をもっと向上させるために、大膓菌XB201TBA染色体のldhA遺伝子をfldH遺伝子に取り替えて遺伝子発現システムを最適化した。また、ldhA遺伝子の天然プロモーターを強いtrcプロモーターに取り替えてfldH遺伝子の発現を増加させた。パルス供給方法を用いてグルコースを供給する流加式発酵を進めた。AroGfbr、PheAfbr、FldH、HadA、PhaC1437及びBBa_J23114プロモーターの下でPhaABを発現する大膓菌XB201TBAF菌株は重合体の含量が乾燥細胞重さの55.0重量%であるポリ(69.1mol%3HB−co−38.1mol%D−フェニルラクテート)を13.9g/Lで流加式発酵によって生産した(
図10e及び
図10f)。生産量は13.9g/Lで、AroGfbr、PheAfbr、FldH、HadA、PhaC1437及びBBa_J23114プロモーターの下でPhaABを発現する大膓菌XB201TBAL菌株での生産量である2.5g/Lより5.56倍高かく、グルコース及び3HBが添加された培地でAroGfbr、PheAfbr、FldH、HadA及びPhaC1437を発現する大膓菌XB201TBAL菌株の流加式培養によって取得されたものよりずっと高かった。このような結果は、芳香族ポリヒドロキシアルカノエートが操作された菌株(AroGfbr、PheAfbr、FldH、HadA、PhaC1437及びBBa_J23114プロモーターの下でPhaABを発現する大膓菌XB201TBAF菌株)の流加式培養によって高濃度で成功的に生産可能であることを示す。
【0120】
実施例9:芳香族単量体を含むポリヒドロキシアルカノエートの物性分析
最後に、代謝的に操作された大膓菌によって生産される芳香族PHAの物質特性を調査した。
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の含量及びモノマーの組成はGC又はGC−MSによって決定した。採取した細胞を蒸溜水で3回洗浄した後、24時間凍結乾燥し、凍結乾燥細胞のPHAは酸触媒されたメタノリシス(methanolysis)によって対応するヒドロキシメチルエステルに転換した。得られたメチルエステルはAgilent 7683自動注入器、フレームイオン化検出器及び溶融シリカ毛細管カラム(ATTM−Wax、30m、ID 0.53mm、厚さ1.20μm、Alltech、アメリカ)を備えたGC(Agilent 6890N、Agilent、アメリカ)を用いて分析した。ポリマーはクロロホルム抽出法で抽出し、溶媒抽出法を用いて細胞で精製した。ポリマー構造、分子量及び熱的性質はそれぞれ核磁気共鳴法(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0121】
その結果、
図7は大膓菌XB201TBALによって生産されたポリ(3HB−co−D−フェニルラクテート)を分析した結果を示し、
図8は大膓菌XB201TBALによって生産されたポリ(3HB−co−D−フェニルラクテート−co−D−マンデレート)を分析した結果を示した。
【0122】
ポリ(52.1mol%3HB−co−47.9mol%D−フェニルラクテート)は無晶形であり、共重合体のD−フェニルラクテートのモール分率が増加するにつれて分子量の減少にもかかわらず、Tgは23.86℃まで大きく増加した。また、ポリマーのうち、芳香族を含む共重合体は結晶化度が減少した。ポリマーの芳香族環がP(3HB)(立体化学によって誘導された)の結晶化を妨げると推測される。P(3HB)の場合、強い結晶性によって高い脆性(brittleness)を示す反面、生成された共重合体の場合、結晶化度の低下及びTgの向上によって機械的靭性の向上をもたらした。
【0123】
具体的構成を参照して本発明を詳細に記載したが、このような記載は好適な具現例に関するものであり、発明の範囲を制限しないことは当業者に自明なものである。よって、本発明の実質的範囲は出願された請求項及びその等価物によって定義されると言える。