(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854917
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/52 20060101AFI20210329BHJP
H01H 5/30 20060101ALI20210329BHJP
H01H 13/48 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
H01H13/52 F
H01H5/30 Z
H01H13/48
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-555332(P2019-555332)
(86)(22)【出願日】2018年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2018042967
(87)【国際公開番号】WO2019103032
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2017-225248(P2017-225248)
(32)【優先日】2017年11月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真輔
(72)【発明者】
【氏名】三浦 充紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−187406(JP,A)
【文献】
特開2002−237233(JP,A)
【文献】
特開昭51−88135(JP,A)
【文献】
米国特許第6423918(US,B1)
【文献】
特開2003−92620(JP,A)
【文献】
特開2017−204456(JP,A)
【文献】
特開2017−76615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00−13/88
H01H 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定接点と、第1固定接点の周囲に配置される第2固定接点と、第1固定接点及び第2固定接点の上方に配置されるドーム形状の接点ばねと、を備え、
接点ばねが、第1固定接点と接触する中央と、中央から外方向に突出して斜め下方に延び、第2固定接点と接触する複数の脚と、を備え、
複数の脚が、第2固定接点上方で、非動作時には第2固定接点に非接触の先端部を有する第1脚と、第2固定接点上で、第2固定接点に常時接触する先端部を有する第2脚と、で構成され、
前記第1脚は前記第2脚よりその長さが短く且つ幅広に形成されるともにその先端部から接点ばねの中央に向かって次第に広がる幅を有し、中央の外周においては隣り合う第1脚同士の間が湾曲形状に形成され、その湾曲形状の中央部から前記第2脚が外方に突出し、
前記接点ばねを押圧した時の弾性変形によって第1脚の先端部が第2固定接点に接触するまでの間、第2脚の先端部が第2固定接点上をスライドするプッシュスイッチ。
【請求項2】
第1脚及び第2脚がそれぞれ複数設けられ、複数の第1脚及び複数の第2脚が接点ばねの中央の周囲に交互に配置される請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項3】
複数の第1脚は、接点ばねの中央の周囲に等間隔に4本配置され、複数の第2脚は、隣り合う2本の第1脚の間に1本ずつ配置され、且つ前記中央の周囲に等間隔に4本配置される請求項2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項4】
複数の第1脚は、接点ばねの中央の周囲に等間隔に3本配置され、複数の第2脚は、隣り合う2本の第1脚の間に1本ずつ配置され、且つ前記中央の周囲に等間隔に3本配置される請求項2に記載のプッシュスイッチ。
【請求項5】
第1脚及び第2脚が接点ばねの中央と一体成形されている請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項6】
さらに、接点ばねを覆うカバーが配置され、カバーは、凹設された下面に、接点ばねが収容されるスペースを有し、
前記スペースは、接点ばねの中央の形状、第1脚の形状及び第2脚の形状それぞれに対応するように形成されると共に、スペースの一部に第1脚の先端部を保持する袋状スペースを有する請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【請求項7】
接点ばねは、中央の中心部に舌片状の押圧片を備え、前記カバーに覆われた押圧片の先端部が第1固定接点の上方に位置する請求項6に記載のプッシュスイッチ。
【請求項8】
第1脚は、接点ばねの中央から外方向に突出し、水平に延ばした第1脚の先端部が前記カバーの袋状スペース内に挿入されている請求項6に記載のプッシュスイッチ。
【請求項9】
接点ばねが配置される収納部を有するハウジングを備え、収納部の中央部に第1固定接点が配置され、収納部の周縁部に第2固定接点が配置され、第1固定接点及び第2固定接点の上方に被さるように接点ばねが配置される請求項1に記載のプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、接点ばねを押し込んだ時に、所定のストローク量を確保しやすく、また、良好なクリック感を得やすいプッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンのキーボードや携帯電話など様々な電子機器の操作信号入力用スイッチとして使われているプッシュスイッチは、例えば、基板上に設けられた周辺固定接点及び中央固定接点と、両接点の上方に配置された接点ばねとを備え、接点ばねを押し込んで反転させ、周辺固定接点と中央固定接点とを導通させる構成となっている。
【0003】
前述のように構成されたプッシュスイッチでは、接点ばねを押し込んだときに、所定のストローク量と良好なクリック感が得られることが重要であるため、プッシュスイッチが小型化及び薄型化された場合でも、所定のストローク量と良好なクリック感を得られるようにすることが課題となっている。特に、メンブレンスイッチのような薄型スイッチでは、スイッチを押した時に、良好な感触を得られるようにすることや、所定のストローク量を確保することに改善の余地がある。
【0004】
特許文献1には、脚部付きの接点ばねを有する小型の押釦スイッチが記載されている。この押釦スイッチは、接点ばねをフープ材から形成する際の4つの脚部のうち、対向する2つの脚部の下端と残りの2つの脚部の下端の高さ位置との差に応じた寸法分だけ、前記対向する2つの脚部が搭載される周辺固定接点の高さ位置を前記残りの2つの脚部が搭載される受け面よりも高い位置に形成したものである。こうすることで、接点ばねが4つの脚部を介して安定した姿勢でハウジングに支持され、ストローク量を確保しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004‐55343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の押釦スイッチでは、接点ばねの4つの脚部の下端の高さ位置が同等となるように、ハウジング内の脚部の搭載位置を変えるため、ハウジングの構造が複雑化し、コストが嵩む可能性がある。また、脚部の高さ位置が同等となるように、脚部の長さや曲げ形状の調整が必要となる。
【0007】
そこで、本願が解決しようとする課題は、ハウジング構造の非複雑化と、接点ばねの脚部の調整を不要としながらも、接点ばねを押し込んだ時に、良好なクリック感を得ると共に所定のストローク量を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に係るプッシュスイッチは、第1固定接点と、第1固定接点の周囲に配置される第2固定接点と、第1固定接点及び第2固定接点の上方に配置されるドーム形状の接点ばねと、を備え、
接点ばねが、第1固定接点と接触する中央と、中央から外方向に突出し
て斜め下方に延び、第2固定接点と接触する複数の脚と、を備え、
複数の脚が、第2固定接点上方で、非動作時には第2固定接点に非接触の先端部を有する第1脚と、第2固定接点上で、第2固定接点に常時接触する先端部を有する第2脚と、で構成され、
前記第1脚は
前記第2脚よりその長さが短く且つ幅広に形成されるともにその先端部から接点ばねの中央に向かって次第に広がる幅を有し、中央の外周においては隣り合う第1脚同士の間が湾曲形状に形成され、その湾曲形状の中央部から前記第2脚が外方に突出し、
前記接点ばねを押圧した時の弾性変形によって第1脚の先端部が第2固定接点に接触する
までの間、第2脚の先端部が第2固定接点上をスライドする。
【0009】
また、本願のいくつかの実施形態に係るプッシュスイッチは、接点ばねの複数の第1脚及び第1脚より長い長さを有する複数の第2脚が、接点ばねの中央の周囲に交互に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本願に係るプッシュスイッチは、接点ばねの中央の外方に向けて第2固定接点上方で、第2固定接点とは非接触の位置に先端部を有する第1脚を設けたので、接点ばねを押し込んだ時に第1脚の先端部が第2固定接点に接触するまでの間の距離分ストローク量を増やすことができる。また、第1脚が第2固定接点と接触した以降は接点ばねを押し込む時の荷重が増えることで、良好なクリック感が得られることになる。
【0011】
また、本願のいくつかの実施形態に係るプッシュスイッチは、第1脚と、接点ばねの中央から外方向に延びる長さが第1脚より長い第2脚がそれぞれ複数設けられ、接点ばねの中央の周囲に交互に配置されるので、接点ばね全体をバランスよく均等に押し込むことができ、良好なクリック感が得られると共に、確実なスイッチ動作を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の第1実施形態に係るプッシュスイッチの分解斜視図である。
【
図5】接点ばねを軽く押し込んだ時の
図4と同様の断面図である。
【
図6】接点ばねを強く押し込んだ時のプッシュスイッチの平面図である。
【
図9】接点ばねを押し込んだ時の荷重と変位との関係を示すグラフである。
【
図10】本願の第2実施形態に係るプッシュスイッチのシート材を省略した平面図である。
【
図12】本願の第3実施形態に係るプッシュスイッチの接点ばねとカバーとを示す分解斜視図である。
【
図13】第3実施形態に係るプッシュスイッチの接点ばねとカバーの下面側の斜視図である。
【
図14】第3実施形態に係るプッシュスイッチの
図13のXIV−XIV断面に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願に係るプッシュスイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本願のプッシュスイッチを模式的に表したものである。これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。さらに、本願の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、請求の範囲の記載内容とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
(第1実施形態)
図1乃至
図4には、本願の第1実施形態に係るプッシュスイッチ1が示されている。このプッシュスイッチ1は、四角形の収納部2aを有するハウジング2と、収納部2aの中央部に配置される第1固定接点3と、第1固定接点3を取り囲むように収納部2aの周縁部に配置される第2固定接点4と、前記第1固定接点3及び第2固定接点4の上方に被さるようにして収納部2aに配置される全体がドーム形状の接点ばね5と、接点ばね5の上方を覆いハウジング2の外周壁部2bの上面に接着固定される薄いシート材6と、を備える。
【0015】
第1固定接点3は、収納部2aの中央部に配置された平滑な円形の導電性金属板からなり、スルーホール7を介してハウジング2の下面に形成される一の電極端子(図示せず)に電気的に接続されている。また、第2固定接点4は、収納部2aの周縁部に沿って形成された帯状の導電性金属板からなり、スルーホール8を介してハウジング2の下面に形成される他の電極端子(図示せず)に電気的に接続されている。
【0016】
接点ばね5は、全体がドーム形状をしており、前記第1固定接点3の上方に位置する中央5aと、中央5aから外方向に突出し、放射状に延びる8本の脚5b、5cとを備える。8本の脚5b、5cそれぞれは、第2固定接点4に接触するための先端部5d、5eを有する。接点ばね5はバネ性を備えた金属板からなり、前記中央5aと前記8本の脚5b、5cとが一枚の金属板で一体成形されている。また、接点ばね5の中央5aはなだらかな曲面を有し、中央5aの下面と第1固定接点3を含むハウジング2の収納部2aとの間に、
図3及び
図4に示されるような一定の隙間cが確保される。接点ばね5の中央5aは、押圧されることで反転する構造であり、反転して第1固定接点3の上面と接触する。
【0017】
前記8本の脚は、4本の第1脚5bと、第1脚5bよりも接点ばね5の中央5aから外方向に延びる長さ、つまり、先端部5dまでの長さが長い4本の第2脚5cとからなる。この実施形態において、前記4本の第1脚5bは、第2脚5cに比べて、幅が広く、また接点ばね5の中央5aから外方向に延びる長さ、つまり、先端部5dまでの長さが短く、さらに脚先端部5dから中央5aに向かって次第に広がる幅を有している。そして、それぞれの第1脚5bは中央5aの周囲に等間隔に4本配置され、中央5aの中心と、隣接する2つの第1脚5bとを結ぶ2本の直線が作る角度は90度である。4本の第1脚5bは、それぞれが中央5aから外方向に突出し、斜め下方に延びている。4本の第1脚5bは、それぞれがハウジング2の4つの外周壁部2bの対応するそれぞれの中央部分に向かうように配置され、第1脚5bそれぞれの先端部5dが収納部2aの周縁部に形成された第2固定接点4の上面付近にまで達する。また、第1脚5bの先端部5dは、第2固定接点4の上面から上方に離れた位置にある。すなわち、非動作時は、第1脚5bの先端部5dは第2固定接点4の上面に非接触であり、接点ばね5を押圧した時に第1脚5bが弾性変形することで第2固定接点4に接触する。
【0018】
一方、前記4本の第2脚5cは、それぞれが細長い短冊形状をしている。隣り合う2本の第1脚5bの間に第2脚5cが1本ずつ設けられ、第1脚5bと同様、中央5aの周囲に等間隔に4本配置され、中央5aの中心と、隣接する2つの第2脚5cとを結ぶ2本の直線が作る角度は90度である。4本の第2脚5cは、それぞれが中央5aから外方向に突出し、斜め下方に延びている。この実施形態では、中央5aの外周において、隣り合う第1脚5b間は湾曲形状であり、それぞれの湾曲形状の中央から第2脚5cが外方向に突出している。4本の第2脚5cは、ハウジング2の外周壁2bの角部に向かって延び、第2脚5cの各先端部5eが収納部2aの各隅部2cにまで達し、第2固定接点4の上面に接触する。なお、4本の第2脚5cの各先端部5eは、対応する隅部2cにおいて、各第2固定接点4の上面に常時接触している。この点で前記第1脚5bとは異なる。第2脚5cは、接点ばね5の中央5aを押圧した時には弾性変形して、その先端部5eが第2固定接点4の上面をスライドする。なお、第2脚5cの先端部5eは、接点ばね5の中央5aを押圧した時に、上方に少し反り返る形状になっている。そのため、第2脚5cの各先端部5eが第2固定接点4の上面をスライドする際に、第2脚5cの各先端部5eと第2固定接点4の上面との接触抵抗が小さくなる。
【0019】
本実施形態では4本の第1脚5bと4本の第2脚5cが接点ばね5の中央5aの周囲に交互に、且つ等間隔に配置されているので、接点ばね5全体をバランスよく均等に押し込むことができる。その結果、良好なクリック感が得られると共に確実なスイッチ動作を確認することができる。後述する第2実施形態における3本の第1脚5b’と3本の第2脚5c’についても同様である。
【0020】
ハウジング2は四角形状のモールド成形品である。ハウジング2の下面には前記第1固定接点3からスルーホール7を介して導出される一の電極端子(図示せず)と、前記第2固定接点4からスルーホール8を介して導出される他の電極端子(図示せず)とが一体成形されている。ハウジング2の収納部2aは、接点ばね5の上方を覆うシート材6によって密閉されている。なお、ハウジング2の外形状及び収容部2aの形状は四角形に限定されるものではなく、円形やその他の形状であってもよい。収容部2aの形状が円形の場合には、収容部2aの周縁部に形成される第2固定接点4も円形リングとなる。
【0021】
上記構成からなるプッシュスイッチ1の動きを
図1乃至
図8に基づいて説明する。非動作時におけるプッシュスイッチ1は、
図3及び
図4に示したように、接点ばね5の中央5aが第1固定接点3から離間した状態で保持されている。そのため、第1固定接点3と第2固定接点4との間が導通されておらず、電気的接続がオフ状態となっている。なお、脚は、第1脚5bが第2固定接点4の上面と非接触の状態で保持される一方、第2脚5cが第2固定接点4の上面と接触した状態で保持されている。
【0022】
次に動作時におけるプッシュスイッチ1を説明する。まず、
図5に示したように、接点ばね5の中央5aをシート材6の上から軽く押し込んでいくと、中央5aが扁平状に弾性変形すると共に脚も弾性変形していくが、第1脚5bはその先端部5dが第2固定接点4から離間しているために、第1脚5bの先端部5dが第2固定接点4に接触するまでの間は第2脚5cの先端部5eが第2固定接点4の上面をスライドする。このとき、第2脚5cが第1脚5bより長く形成されているために、中央5aを軽く押し込むことができると共に、第1脚5bの先端部5dが第2固定接点4に接触するまでの間の距離分の中央5aのストローク量を確保することができる。
【0023】
さらに、
図6乃至
図8に示したように、接点ばね5の中央5aが反転するまでシート材6を介して中央5aを強く押し込むことで、反転した中央5aが第1固定接点3の上面に接触する。その間、第1脚5b及び第2脚5cは、それぞれの先端部5d,5eが第2固定接点4の上面に接触した状態を保ちながらスライドする。そのため、中央5aを強い力で押し込むことになり、クリック感が生起されると共に中央5aが反転するまでの間の距離分のストローク量をさらに確保することができる。
【0024】
接点ばね5の中央5aに加えていた荷重を取り除くと、中央5aが弾性復帰して元のなだらかな曲面の状態に戻ると共に、第1脚5b及び第2脚5cも弾性復帰して元の状態に戻る。すなわち、中央5aの反転が戻ることで、第1固定接点3との間に隙間cが確保されると共に、第1脚5bの先端部5dは第2固定接点4の上面から離間して上方に移動する。
【0025】
図9は本願に係るプッシュスイッチ1において、接点ばね5の中央5aに加わる荷重と、その時の中央5aの変位との関係を示したものである。測定試料となるプッシュスイッチ1をプレート上に設置し、ロードセルの先端に付けた押し子でプッシュスイッチ1の接点ばね5を押下した時の荷重変化をロードセルで測定し、変位をリニアゲージで測定した。
図9において、P1は接点ばね5に荷重が加えられた時に、第1脚5bの先端部5dが第2固定接点4に接触する時の変位位置、P2は接点ばね5に荷重が加えられた時に、接点ばね5の中央5aが反転して中央5aの一部が第1固定接点3に接触する時の変位位置、P3は反転した後の中央5aが広い面積で第1固定接点3に面接触した時の変位位置をそれぞれ表している。
【0026】
接点ばね5を押下し始めてからP1に達するまでの間の荷重は、上述したように長い第2脚5cのみが第2固定接点4と接触するので小さく抑えられている。一方、P1からP2までの間の荷重は、中央5aが反転動作をして第1固定接点3に接触するまでの荷重に、第1脚5bや第2脚5cが弾性変形して第2固定接点4の上面をスライドする際の荷重が加わるので、急激に大きくなっている。また、P2からP3までの間の荷重は、中央5aが完全に反転して広い面積で第1固定接点3に面接触するまでの荷重なので、P2の位置での荷重からは減少する。
【0027】
図9において、接点ばね5の変位量は、スタートからP1までが約0.3mm、P2までが約0.7mm、P3までが約1mmであった。これを従来のプッシュスイッチと比較した場合、スタートからP1までの変位は、従来のプッシュスイッチには見られないものである。すなわち、スタートからP1までの変位は本願に特有のものであり、接点ばね5を押し込んだ時のプラスアルファのストローク量として確保される。また、本願ではP1からP2に変位する際に荷重が急激に大きくなる一方、P2からP3に変位する際には荷重が急激に小さくなる。すなわち、接点ばね5を押し込んだ時に手指に伝わる押圧力の変化が大きくなり、良好なクリック感が得られることになる。
【0028】
(第2実施形態)
図10及び
図11には、本願の第2実施形態に係るプッシュスイッチ1’が示されている。このプッシュスイッチ1’は、ハウジング2の収納部2aに配置される接点ばね5’の形状が異なる他は第1実施形態のプッシュスイッチ1と同様の構成からなり、四角形の収納部2aを有するハウジング2と、収納部2aの中央部に配置される第1固定接点3と、第1固定接点3を取り囲むように収納部2aの周縁部に配置される第2固定接点4と、前記第1固定接点3及び第2固定接点4の上方に被さるようにして収納部2aに配置される全体がドーム形状の接点ばね5’と、接点ばね5’の上方を覆いハウジング2の外周壁部2bの上面に接着固定される薄いシート材6と、を備える。
【0029】
この実施形態に係る接点ばね5’は、第1固定接点3の上方に位置するなだらかな曲面を有する中央5a’と、中央5a’から外方向に突出し、放射状に延びる6本の脚5b’,5c’とを備える。6本の脚5b’,5c’のそれぞれは、第2固定接点4に接触するための先端部5d’,5e’を有する。接点ばね5’はバネ性を備えた金属板からなり、前記中央5a’と前記6本の脚5b’,5c’とが一枚の金属板で一体成形されている。また、接点ばね5’の中央5a’の下面と第1固定接点3を含むハウジング2の収納部2aとの間には一定の隙間cが確保されている。中央5a’は押圧されることで反転する構造であり、反転して第1固定接点3の上面と接触する。
【0030】
前記6本の脚は、3本の第1脚5b’と、第1脚5b’よりも接点ばね5’の中央5a’から外方向に延びる長さが長い3本の第2脚5c’とからなる。先の実施形態と同様、前記3本の第1脚5b’は、第2脚5c’に比べて、幅が広く、また接点ばね5’の中央5a’から外方向に延びる長さが短く、さらに脚先端部5d’から中央5a’に向かって次第に広がる幅を有している。そして、それぞれの第1脚5b’は中央5a’の周囲に等間隔に3本配置され、中央5a’の中心と、隣接する2つの第1脚5b’とを結ぶ2本の直線が作る角度は120度である。3本の第1脚5b’は、それぞれが中央5a’から外方向に突出し、斜め下方に延びている。3本の第1脚5b’それぞれは、収納部2aの周縁部に向かって延び、第1脚5b’の各先端部5d’が、収納部2aの周縁部に形成された第2固定接点4の上面付近にまで達する。また、第1脚5b’の先端部5d’は、第2固定接点4の上面から上方に離れた位置にある。第1実施形態と同様、非動作時は、第1脚5b’の先端部5d’は第2固定接点4の上面に非接触であり、接点ばね5’を押圧した時に第1脚5b’の先端部5d’が第2固定接点4の上面に接触する。
【0031】
一方、前記3本の第2脚5c’は、それぞれが細長い短冊形状をしている。1本の第1脚5b’と別の1本の第1脚5b’との間に第2脚5c’が1本ずつ設けられ、第1脚5b’と同様、中央5a’の周囲に等間隔に3本配置され、中央5a’の中心と、隣接する2つの第2脚5c’とを結ぶ2本の直線が作る角度は120度である。3本の第2脚5c’は、それぞれが中央5a’から外方向に突出し、斜め下方に延びている。中央5a’の外周において、隣り合う第1脚5b’間は湾曲形状であり、それぞれの湾曲形状の中央から第2脚5c’が外方に延びている。3本の第2脚5c’は、中央5a’の周囲に3本の第1脚5b’と1本ずつ交互に配置される。第2脚5c’の先端部5e’は、収納部2aの周縁部に形成された第2固定接点4上まで達し、各第2固定接点4の上面に接触している。
【0032】
上記構成からなるプッシュスイッチ1’は、
図11に示したように、非動作時には接点ばね5’の中央5a’が第1固定接点3から離間した状態で保持されている。そのため、第1固定接点3と第2固定接点4との間が導通されておらず、電気的接続がオフ状態となっている。なお、第1実施形態と同様、脚は、第1脚5b’が第2固定接点4の上面と非接触の状態で保持される一方、第2脚5c’が第2固定接点4と接触した状態で保持されている。
【0033】
接点ばね5’を押圧した時のプッシュスイッチ1’の動作は、前記第1実施形態とほぼ同様であるので、詳細な説明は省略する。この実施形態のプッシュスイッチ1’にあっても、第2脚5c’が第1脚5b’より長く形成されているために、中央5a’を軽く押し込むことができると共に、第1脚5b’の先端部5d’が第2固定接点4に接触するまでの間の距離分の中央5a’のストローク量を確保することができると共に良好なクリック感が得られるものである。
【0034】
なお、接点ばねの脚の本数は、上記第1実施形態及び第2実施形態のものに限定されない。例えば、2本の第1脚と、第1脚より長い2本の第2脚の、合わせて4本の脚であってもよい。2本の第1脚は、中央の外周の対向する側にそれぞれ配置され、2本の第1脚の各先端部が第2固定接点の上方付近にまで延び、且つ第2固定接点4に非接触である。一方、2本の第2脚は、第1脚とは直交するようにして、中央の外周の対向する側にそれぞれ配置される。2本の第2脚の各先端部は、第2固定接点の上面に常時接触している。このように、脚の本数が少ない接点ばねが配置されるハウジングでは、収容部の形状や収容部の周縁部に形成される第2固定接点の形状は、四角形より円形の方が望ましい。
【0035】
(第3実施形態)
図12乃至
図14には、本願の第3実施形態に係るプッシュスイッチ1’’が示されている。このプッシュスイッチ1’’は、第1実施形態、第2実施形態のプッシュスイッチ1、1’とは、基板13上に配置される接点ばね5’’の形状が異なり、なだらかな曲面を有するほぼ円形の中央5a’’のほぼ中心部に舌片状の押圧片9を備える。この押圧片9は、基端部9aから先端部9bに向けて下方に傾斜して設けられて、
図14に示されるように、基板13の上面に配置される第1固定接点3’’の上方に先端部9bが位置する。また、基板13の上面には、第1固定接点3’’を取り囲むように第2固定接点4’’が配置されている。接点ばね5’’は、中央5a’’から外方向に突出し、水平に延びている4本の第1脚5b’’と、中央5a’’から外方向に突出し、斜め下方に延びている4本の第2脚5c’’と、を有する。また、前記4本の第1脚5b’’は、第2脚5c’’に比べて、中央5a’’から外方向に延びる長さが短い。
【0036】
さらに、プッシュスイッチ1’’は、接点ばね5’’を覆うカバー10を有する。カバー10は、その下面10aに、接点ばね5’’の中央5a’’と、中央5a’’から外方向に突出し、放射状に延びる第1脚5b’’及び第2脚5c’’が収容されるスペース11を有している。カバー10の下面10aに凹設されたスペース11は、中央5a’’の形状、第1脚5b’’の形状及び第2脚5c’’の形状それぞれに対応するよう形成されている。また、前記スペース11は、その一部に第1脚5b’’の先端部5d’’が挿入される一対の袋状スペース12を有する。一対の袋状スペース12は、4本の第1脚5b’’のうちの対向する2本の第1脚5b’’に対応して設けられている。袋状スペース12は、挿入された第1脚5b’’の先端部5d’’を保持して、接点ばね5’’からカバーが外れないようにしている。また、袋状スペース12は、接点ばね5’’の押圧時に第1脚5b’’がスペース内で多少動き得るような奥行きを有している。
【0037】
前記カバー10は、接点ばね5’’のクリック感を損なわないように、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂などの弾性樹脂によって成形されるのが望ましい。
【0038】
この実施形態のプッシュスイッチ1’’においても、第2脚5c’’は先端部5e’’までの長さが第1脚5b’’の先端部5d’’までの長さより長く形成されているために、中央5a’’を軽く押し込むことができると共に、第1脚5b’’の先端部5d’’が第2固定接点4’’に接触するまでの間の距離分の中央5a’’のストローク量を確保することができると共に良好なクリック感が得られるものである。なお、この実施形態においては、接点ばね5’’がカバー10で覆われているので、接点ばね5’’を押圧したときに、押圧片9の先端部9bが第1固定接点3’’に接触する際の衝突音がカバー10によって抑えられる、といった効果がある。
【0039】
上記第3実施形態では、接点ばね5’’の中央5a’’から外方向に突出する4本の第1脚5b’’は、水平に延びているが、第1実施形態の第1脚5b及び第2実施形態の第1脚5b’と同様、斜め下方に延びるように形成してあってもよい。4本の第1脚5b’’を斜め下方に延ばすことで、接点ばね5’’の中央5a’’を押し込んだ時に、第1脚5b’’の先端部5d’’と第2固定接点4’’との接触がより確実になる。
【0040】
本願の実施形態に開示される内容は、様々に組み合わせ可能な構造を開示しており、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1,1’,1’’ プッシュスイッチ
2 ハウジング
2a 収納部
2b 外周壁部
2c 隅部
3,3’’ 第1固定接点
4,4’’ 第2固定接点
5,5’, 5’’ 接点ばね
5a,5a’, 5a’’ 中央
5b,5b’, 5b’’ 第1脚
5c,5c’, 5c’’ 第2脚
5d,5d’,5d’’ 第1脚の先端部
5e,5e’,5e’’ 第2脚の先端部
6 シート材
7,8 スルーホール
9 押圧片
9a 押圧片の基端部
9b 押圧片の先端部
10 カバー
10a カバーの下面
11 スペース
12 袋状スペース
13 基板