(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854926
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】加圧動作に適したクランプシステムを有する、加圧動作用の水電解または共電解反応器(SOEC)または燃料セル(SOFC)
(51)【国際特許分類】
C25B 9/19 20210101AFI20210329BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/247 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/0282 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20210329BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20210329BHJP
【FI】
C25B9/08
H01M8/12 101
H01M8/2465
H01M8/247
H01M8/2483
H01M8/0271
H01M8/0282
H01M8/12 102A
H01M8/04746
H01M8/04 Z
【請求項の数】21
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2019-563198(P2019-563198)
(86)(22)【出願日】2018年5月9日
(65)【公表番号】特表2020-519767(P2020-519767A)
(43)【公表日】2020年7月2日
(86)【国際出願番号】EP2018062151
(87)【国際公開番号】WO2018210683
(87)【国際公開日】20181122
【審査請求日】2020年1月14日
(31)【優先権主張番号】1754260
(32)【優先日】2017年5月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・レティエ
(72)【発明者】
【氏名】シャルロット・ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ギレム・ルー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シナル
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/096752(WO,A1)
【文献】
特開平08−162145(JP,A)
【文献】
特開2005−093169(JP,A)
【文献】
特開2006−147501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−9/77
C25B 13/00−15/08
H01M 8/00−8/0297
H01M 8/08−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温で動作するように設計された、SOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルであって、
SOEC/SOFC固体酸化物に基づいた電気化学セルのスタック(11)と、
ターミナルプレートと呼ばれる2つのエンドプレート(33、34)であって、それらの間に前記スタックが配置されている、2つのエンドプレート(33、34)と、
前記スタックの2つのクランププレート(12、13)であって、それらの間に前記エンドプレートおよび前記スタックが配置されている、2つのクランププレート(12、13)と、
前記クランププレート間のクランプ手段(15、16、17、18)であって、前記スタックを締め付け、周囲温度と当該SOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルの高い動作温度との間の温度に関わらず前記ターミナルプレート間に前記スタックを締め付けたままにするように構成されたクランプ手段(15、16、17、18)と、
前記ターミナルプレートの1つ(33)と、隣接する前記クランププレート(12)との間に画定されたクランプチャンバ(9)であって、前記スタックの上方の該クランプチャンバ内を流れるガスの圧力が、反応ガスと前記スタック内で生成されたガスとによって生成された圧力とバランスを取るように、クランプガス回路に接続されたクランプチャンバ(9)と
を備えたSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項2】
前記クランプガス回路が反応ガス回路からは独立している、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項3】
前記クランプガス回路が前記スタック(11)を通過しない、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項4】
前記クランプガス回路が、前記クランプチャンバ(9)を画定する前記ターミナルプレート(33)の厚みを貫通して前記ターミナルプレート(33)に直接開けられた2つの開口導管(330)を備えた、請求項3に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項5】
前記クランプガス回路が前記スタック(11)を通過している、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項6】
前記スタックが基本ユニットのスタック(11)であり、各基本ユニットが、
カソード(2.1)と、アノード(4.1)と、前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.1)とによって形成された基本電気化学セル(C1)と、
第1のデバイス(5.1)および第2のデバイス(5.2)であって、それぞれが電気および流体インターコネクタを形成し、それぞれが電子伝導性で気密性の材料の構成部品よりなり、第1のインターコネクタおよび第2のインターコネクタが前記基本電気化学セルの各側に配置され、前記第1のインターコネクタ(5.1)が、前記カソード(2.1)側の前記基本電気化学セルに開口する水蒸気供給導管(50)、および前記カソード側の前記基本電気化学セルの周囲に開口する、生成された水素を回収するための回収導管(53)によって貫通されて、供給された水蒸気を前記水蒸気供給導管から一様に分配し、前記生成された水素を前記回収導管に一様に分配し、前記第2のインターコネクタ(5.2)が、前記アノード(4.1)側の基本電気化学セルの周囲に開口する、生成された酸素を回収するための回収導管(54)によって貫通されて、前記生成された酸素を前記回収導管(54)に一様に分配する、第1のデバイス(5.1)および第2のデバイス(5.2)と、
前記基本電気化学セルの周囲に配置され、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタを同時に支える第1の密閉ガスケット(61)、ならびに前記基本電気化学セルの前記アノードの周囲に配置され、前記第2のインターコネクタおよび前記電解質を同時に支える第2の密閉ガスケット(62)であって、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である第1および第2の密閉ガスケットと、
前記第1の密閉ガスケットの周囲に配置され、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタをそれぞれ支える絶縁および密閉デバイス(8)と、
クランプガス用の少なくとも1つの供給導管(52)および少なくとも1つの回収導管(55)であって、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタに形成され、それぞれが、前記第1の密閉ガスケット(61)と前記絶縁および密閉デバイス(8)との間に画定された空間に開口して、前記クランプガスの供給導管から回収導管まで前記クランプガスを一様に分配し、したがって、前記クランプガスがまた、反応器の加圧動作中、前記第1の密閉ガスケットの両側の圧力をバランスさせるためのバランスガスを形成する、少なくとも1つの供給導管(52)および少なくとも1つの回収導管(55)と
を備え、前記クランプおよびバランスガス回路の前記供給導管(52)および前記回収導管(55)が前記クランプチャンバに開口している、請求項5に記載のSOEC電解または共電解反応器。
【請求項7】
前記第2のインターコネクタ(5.2)が、空気などの排出ガスを前記アノード側の前記基本電気化学セルに供給するための供給導管(51)によって貫通されて、前記供給導管(51)から前記供給された排出ガスを一様に分配し、前記生成された酸素を前記回収導管(54)に一様に分配する、請求項6に記載のSOEC電解または共電解反応器。
【請求項8】
前記スタックが基本ユニットのスタック(11)である、SOFC燃料セルを形成し、各基本ユニットが、
カソード(2.1)と、アノード(4.1)と、前記カソードと前記アノードとの間に挿入された電解質(3.1)とによって形成された基本電解セル(C1)と、
第1のデバイス(5.1)および第2のデバイス(5.2)であって、それぞれが電気および流体インターコネクタを形成し、それぞれが電子伝導性で気密性の材料の構成部品よりなり、第1のインターコネクタおよび第2のインターコネクタが前記基本電解セルの各側に配置され、前記第1のインターコネクタが、前記アノード(4.1)側の前記基本電解セルに開口する燃料供給導管(50)、および前記アノード側の前記基本電解セルの周囲で、生成された水を回収するための回収導管(53)によって貫通されて、供給された燃料を前記燃料供給導管から一様に分配し、前記生成された水を前記回収導管に一様に分配し、前記第2のインターコネクタが、前記カソード(2.1)側の前記基本電解セルに開口する、空気または酸素を供給するための供給導管(51)、および前記カソード側の前記基本電解セルの周囲に開口する、余剰の空気または酸素を回収するための回収導管(54)によって貫通されて、前記空気または酸素を前記供給導管(51)から前記回収導管(54)に一様に分配する、第1のデバイス(5.1)および第2のデバイス(5.2)と、
前記基本電解セルの周囲に配置され、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタを同時に支える第1の密閉ガスケット(61)、ならびに前記基本電解セルの前記カソードの周囲に配置され、前記第2のインターコネクタおよび前記電解質を同時に支える第2の密閉ガスケット(62)であって、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である第1および第2の密閉ガスケットと、
前記第1の密閉ガスケットの周囲に配置され、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタをそれぞれ支える絶縁および密閉デバイス(8)と、
クランプガス用の少なくとも1つの供給導管(52)および少なくとも1つの回収導管(55)であって、前記第1のインターコネクタおよび前記第2のインターコネクタに形成され、それぞれが、前記第1の密閉ガスケット(61)と前記絶縁および密閉デバイス(8)との間に画定された空間に開口して、前記クランプガスの供給導管から回収導管まで前記クランプガスを一様に分配し、したがって、前記クランプガスがまた、前記基本電解セルの加圧動作中、前記第1の密閉ガスケットの両側の圧力をバランスさせるためのバランスガスを形成する、少なくとも1つの供給導管(52)および少なくとも1つの回収導管(55)と
を備え、前記クランプおよびバランスガス回路の前記供給導管(52)および前記回収導管(55)が前記クランプチャンバに開口している、請求項5に記載のSOFC燃料セル。
【請求項9】
前記スタック、前記エンドプレート、および前記クランプチャンバの全体形状が軸対称である、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項10】
前記クランプチャンバが、上部ターミナルプレート(33)と上部クランププレート(12)との間で、電気絶縁プレート(19)によって分離された、前記スタックの上方に画定された、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項11】
前記クランプチャンバ(9)が、その底部を形成する上部ターミナルプレート(33)の頂部と、そのカバーを形成する堅固なプレート(90)と、その側壁を形成するリング(91)によって画定され、前記クランプチャンバの前記底部(33)、前記カバー(90)、および前記側壁(91)が溶接によって互いに組み立てられた、請求項9に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項12】
各密閉デバイス(8)が、絶縁ワッシャ、ならびに前記絶縁ワッシャの両側の第3および第4の金属ガスケットよりなる、請求項5に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項13】
前記クランプ手段が、前記クランププレートを通過するように配置された2つのクランプボルト(15、16、17、18)を含む、請求項1に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項14】
各クランプボルトが、
ねじ付きクランプ軸(15)と、
第1のクランプワッシャ(17)に付随する第1のクランプナット(16)であって、両方が、上部クランププレート(12)のクランプ穴(14)を通して挿入された前記ねじ付きクランプ軸(15)とねじ留めすることによって相互作用するように設計され、前記第1のクランプワッシャ(17)が、前記第1のクランプナット(16)と前記上部クランププレート(12)との間に配置されている、第1のクランプナット(16)と、
第2のクランプワッシャ(17)に付随する第2のクランプナット(18)であって、両方が、下部クランププレート(13)のクランプ穴(14)を通して挿入された前記ねじ付きクランプ軸(15)とねじ留めすることによって相互作用するように設計され、前記第2のクランプワッシャ(17)が、前記第2のクランプナット(16)と前記下部クランププレート(13)との間に配置されている、第2のクランプナット(18)と
を含む、請求項13に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項15】
前記クランプ軸(15)と、前記下部クランププレート(13)の前記クランプ穴との間に配置された電気絶縁チューブ(17.1)をさらに備え、前記第2のクランプワッシャ(17)もまた電気絶縁性である、請求項14に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セル。
【請求項16】
前記水蒸気供給導管(50)に水蒸気、あるいは水蒸気と、二酸化炭素および二酸化窒素から選択された別のガスとの混合物を供給し、同時に、前記供給導管(52)にクランプおよびバランスガスを供給するステップであって、供給された前記水蒸気または前記混合物の圧力が、前記クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しい、ステップと、
前記水蒸気の電解または共電解によって生成された水素、あるいは水素と一酸化炭素または一酸化窒素を回収導管(53)に回収し、同時に、前記クランプチャンバ(9)内を循環した前記バランスガスを回収導管(55)に回収するステップと、
を含む、請求項6に記載のSOEC電解または共電解反応器を動作させるための方法。
【請求項17】
前記供給導管(51)に空気などの排出ガスが供給され、前記供給された排出ガスの圧力が、前記クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しく、生成された酸素が回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記燃料供給導管(50)に水素またはメタンなどの燃料を供給し、同時に、前記供給導管(52)にクランプおよびバランスガスを供給するステップと、
前記供給導管(51)に空気または酸素を供給するステップであって、前記供給された燃料および空気または酸素の圧力が、前記クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しい、ステップと、
余剰の燃料を回収し、前記クランプチャンバ(9)内を循環した前記クランプおよびバランスガス、および前記生成された水を、それぞれの前記回収導管(53、55)に回収し、他方では、前記余剰の空気または酸素を、前記回収導管(54)に回収するステップと、
を含む、請求項8に記載のSOFC燃料セルを動作させるための方法。
【請求項19】
前記クランプおよびバランスガスの温度をその供給導管(52)内で上昇または下降させて、前記スタック(11)の温度をそれぞれ上昇または下降させる、請求項16または18に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルを動作させるための方法。
【請求項20】
動作中、前記反応ガスの圧力が維持されている間、前記クランプおよびバランスガスのその供給導管(52)内の圧力を増大させ、前記クランプおよびバランスガスの増大させた圧力と前記反応ガスの圧力との間の差が500ミリバール以下である、請求項16または18に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルを動作させるための方法。
【請求項21】
前記クランプおよびバランスガスにおけるいかなる燃料漏れも検出される、請求項16または18に記載のSOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルを動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池(またはSOFC、「Solid Oxide Fuel Cell」に対する英語の略語)の分野、高温水電解(フランス語の「high temperature water vapor electrolysis(高温水蒸気電解)」に対してはEHTまたはEVHT、「High Temperature Electrolysis(高温電解)」に対する英語の略語であるHTE、あるいは「High Temperature Steam Electrolysis(高温蒸気電解)」に対する英語の略語であるHTSEとして知られている)で、これも固体酸化物を使用する(「Solid Oxide Electrolyzer Cell(固体酸化物形電解セル)」の英語の略語であるSOEC)分野、ならびに、水と、二酸化炭素CO
2および二酸化窒素NO
2から選ばれた別のガスの高温共電解の分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、一体になるように締め付けられた状態を温度に関わらず保つ基本電気化学セルのスタックを有し、加圧された密閉エンクロージャを必要としないで加圧下で動作する、SOECタイプの高温水電解または共電解(EHT)反応器、またはSOFCタイプの燃料セルの構造に関する。
【0003】
本発明は、主として高温水電解に応用することを参照して説明されるが、水と、二酸化炭素CO
2および二酸化窒素NO
2から選ばれた別のガスとの共電解、ならびにSOFC燃料セルにも適用することができる。
【0004】
本発明は、水素、またはメタン、CH
4などの炭化水素のいずれかを燃料として使用するSOFC燃料セルに適用可能である。
【背景技術】
【0005】
水の電気分解は、電流を用いて、反応H
2O→H
2+1/2O
2に従って水をガス状の二酸素および二水素に分解する電解反応を含む。
【0006】
水の電気分解を実施するためには、高温、典型的には600℃から950℃の間で行うことが好都合である。なぜならば、反応に必要なエネルギーの一部を電気より安価な熱によって供給することができ、また、反応の活性化は高温においてより効果的であり、また、貴金属の触媒を必要としないためである。電気分解を高温で実行するために、基本ユニットのスタックからなるSOEC(「Solid Oxide Electrolyzer Cell」の英語の略語)として知られるタイプの電解槽を使用する方法が知られている。各基本ユニットは、アノード/電解質/カソードの配置で互いに重ねられた3つの層と、バイポーラプレートまたはインターコネクタとも呼ばれる金属合金の相互接続プレートとからなる固体酸化物電解セルを備えている。インターコネクタの機能は、電流と、各セルの近傍におけるガス(EHT電解槽では、注入される水蒸気、ならびに取り出される水素および酸素、SOFCセルでは、注入される空気および水素、ならびに取り出される水)の両方を流すことと、セルのアノードおよびカソードにガスを流すためのそれぞれの区画であるアノード区画とカソード区画を分離することである。高温水蒸気電解(EHT)を実行するために、カソード区画に水蒸気(H
2O)が注入される。セルに印加された電流の作用により、水素電極(カソード)と電解質との間の界面において蒸気の形態の水分子の解離が起こり、この解離によって二水素ガス(H
2)および酸素イオンが生成される。二水素が集められ、水素区画の出口で排出される。酸素イオンO
2-は電解質を通って移動し、電解質と酸素電極(アノード)との間の界面において再結合して二酸素になる。
【0007】
図1に概略的に示されているように、各基本電解セル1は、通常、膜の形態の固体電解質3の各側に配置されたカソード2およびアノード4によって形成される。2つの電極(カソードおよびアノード)2、4は、多孔性材料の導電体であり、電解質3はガスに対して不透過性であり、電子絶縁体でイオン導体である。特に、電解質は、陰イオン導体、より正確にはO
2-イオンの陰イオン導体であってもよく、その場合、電解槽は陰イオン電解槽と呼ばれる。
【0008】
電気化学反応は、電子導体のそれぞれとイオン導体との間の界面において起こる。
【0009】
カソード2において、半反応は以下の通りである。
2H
2O+4e
-→2H
2+2O
2-
【0010】
アノード4において、半反応は以下の通りである。
2O
2-→O
2+4e
-
【0011】
2つの電極2、4の間に挿入された電解質3は、アノード4とカソード2との間に確立された電位差によって生成された電界の影響下でO
2-イオンが移動する場である。
【0012】
図1の括弧内に示されているように、カソード入口における水蒸気には水素H
2が含まれることがあり、生成されて出口において回収される水素には水蒸気が含まれることがある。同様に、破線で示されているように、生成された酸素を排出するために、入口で空気などの排出ガスを注入することもある。排出ガスの注入は、熱調整器として働く追加の機能を有しており、アノードチャンバの圧力調整を容易にする。
【0013】
基本電解反応器は、カソード2、電解質3、およびアノード4を有する上記のような基本セルと、電気的、液圧的、および熱的な分配機能を行う2つのモノポーラコネクタとからなる。
【0014】
生成される水素および酸素の流量を増加させるために、複数の基本電解セルを互いの上に積み重ね、これらを、インターコネクタまたはバイポーラ相互接続プレートと通常呼ばれる相互接続デバイスを用いて分離することは知られている方法である。この組立体は、電解槽(電解反応器)への電力供給およびガス供給を支える2つの端部相互接続プレートの間に配置される。
【0015】
したがって、高温水電解槽(EHT)は、互いの上に積み重ねられた少なくとも1つの電解セル、通常は複数の電解セルを備え、各基本セルは、電解質、カソード、およびアノードによって形成され、電解質はアノードとカソードとの間に挿入されている。
【0016】
一方または両方の電極と電気的に接触している流体および電気相互接続デバイスは、通常、電流を供給および収集する機能を有し、1つまたは複数のガス流れ区画を画定する。
【0017】
したがって、カソード区画と呼ばれる区画は、電流および水蒸気を分配する機能と、接触しているカソードで水素を回収する機能とを有する。
【0018】
アノード区画と呼ばれる区画は、電流を分配する機能と、接触しているアノードで生成された酸素を、場合により排出ガスを使用して回収する機能とを有する。
【0019】
図2は、従来技術による高温水蒸気電解槽の基本ユニットの分解図である。このEHT電解槽は、インターコネクタ5と交互に積み重ねられた固体酸化物タイプの複数の基本電解セルC1、C2...(SOEC)を備える。各セルC1、C2...は、カソード2.1、2.2...と、アノード4.1、4.2...と、それらの間に配置された電解質3.1、3.2...とからなる。電解セルの組立体には直列で電流が供給され、並列でガスが供給される。
【0020】
インターコネクタ5は金属合金製の構成部品で、インターコネクタ5と隣接するカソード2.1との間の容積によって画定されるカソード区画CCと、インターコネクタ5と隣接するアノード4.2との間の容積によって画定されるアノード区画CAとの間を分離する。インターコネクタ5は、ガスをセルに分配する役割も有する。各基本ユニットへの水蒸気の注入は、カソード区画CC内で行われる。カソード2.1、2.2...における、生成された水素および残留水蒸気の収集は、セルC1、C2...の下流のカソード区画CC内で、セルによる水蒸気の解離の後に行われる。アノード4.2における、生成された酸素の収集は、セルC1、C2...の下流のアノード区画CA内で、セルによる水蒸気の酸素イオンへの解離の後に行われる。
【0021】
インターコネクタ5は、隣接する電極との接触によってセルC1とC2との間、すなわちアノード4.2とカソード2.1との間に電流を流すことができる。
【0022】
従来技術による固体酸化物形燃料電池SOFCでは、使用されるセルC1、C2...、およびインターコネクタ5はEHT電解槽と同じ構成部品であるが、その動作は、上記で説明したEHT電解槽の動作とは逆で、電流方向が逆になり、空気は、この場合にはカソード区画となる区画に供給され、燃料としての水素はアノード区画となる区画に供給される。
【0023】
EHT電解槽を十分に動作させるためには、とりわけ、以下の必須機能が必要となる。
A/スタック内の2つの隣接するインターコネクタの間の電気絶縁を十分にして2つのインターコネクタの間に挿入された基本電解セルの短絡を避けること。この電気絶縁は、互いに向き合う様々な構成部品に使用される材料に依存し、また、スタックの締付度合いにも依存する。
B/生成されたガスが再結合すると、効率が低下し、結局、電解槽を損傷するホットスポットが出現するが、それを避けるために、2つの個別の区画、すなわちアノード区画とカソード区画との間を十分密閉すること。これは完璧な初期電圧(またはOCV、「Open Cell Voltage(開放セル電圧)」に対する英語の略語)を得ようとすることを意味する。この密閉性は、ガスケットの設計、および互いに向き合う様々な構成部品に使用される材料、ならびにガスケットに作用するガス圧力およびスタックの締付度合いにも依存する。
C/効率の損失、異なる基本セル内の圧力および温度の非一様性、またはセルの容認できない劣化さえも回避するために、入口において、および生成されたガスの回収時においてもともにガスを良好に分配すること。これは分極抵抗を最小にしようとすることを意味する。
【0024】
温度が高いことは、前述の3つの機能A/〜C/を与えることをかなり複雑にする。さらに、固体酸化物セルは脆いので、それらの機械的完全性を確実なものにするためになにか設計規則を拘束するものを必要とする。
【0025】
A/〜C/の3つの必須機能を同時に与えるための様々な設計は既にあるが、克服すべき様々な困難が依然としてある。
【0026】
特に、機能B/を与えることに関しては、密閉ガスケットは、典型的には600℃〜1000℃のEHT電解槽およびSOFC燃料セルの高い動作温度範囲を考慮すると、従来はガラスまたはガラスセラミック系のものとなっている。ガラスガスケットは、動作温度では半固体状態である。
【0027】
設計過程では、ガスケットに加わる圧力差の影響の下でガラスが押し出されないように注意しなければならない。ガラスセラミックガスケットに関しては、動作温度で結晶化させ、したがって固体にする目的で現場において熱サイクルを受ける。ガラスガスケットの場合と同じく、固体になる前にガラスセラミックが押し出されることのないように注意しなければならない。
【0028】
最も簡単な構成は、SOEC反応器またはSOFC燃料セルに存在する様々な多孔性材料とは対照的に、2つの稠密な平面の間にガスケットを配置するものであり、表面張力によって、ガスケットの両側の間の特定の圧力差までは、流出するのを防止することができる。
【0029】
この挙動を助けるために、ガスケットの高さを可能な限り低くし、ガラスと接触する部分の表面積を広くし、かつ、ガスケットに作用する圧力差を小さくすることが必要である。
【0030】
SOEC反応器またはSOFCセル内のこのタイプのガラス系シールの構成はいくつかの問題に直面する。第1に、セルのどちらの側の電極も多孔性であり、したがってそれらは、ガラス系ガスケットを簡単には支持することができない。さらに、隣接するインターコネクタ間の電気絶縁を保証しなければならないが、ガラス膜が薄すぎて、危険性なしにこの保証を与えることができないことがある。最後に、これらのガラスは、高さを低くし、また、セルとインターコネクタとの間を電気接触させるために押しつぶさなければならない。この締付けは、セルのいかなる張出しも避けながら、その機械的完全性を保つように行わなければならない。
【0031】
上記を考慮すると、既に示したように、ガラスまたはガラスセラミック系のガスケットは、本質的に、数百ミリバール程度の小さい圧力差にしか耐えることができないという重大な欠点を有している。
【0032】
したがって、典型的には数バールから数十バール、典型的には30バールまでの加圧下でのSOFCセルまたはEHT反応器の内部動作には、ガスケットでの密閉性の損失を避けるための解決策が必要である。
【0033】
それ自体加圧された密閉エンクロージャ内にEHTスタック反応器またはSOFCセルを配置することからなる解決策が知られている。このタイプの解決策を開示している特許出願または特許である、仏国特許出願第2957361A1号、米国特許出願公開第2002/0081471号、および米国特許第6689499B2号をここで引用することができる。この知られている解決策は、スタックの内側と外側との間を同じ圧力にすることができる利点を有する。これは、ガラスまたはガラスセラミックガスケットへはいかなる機械的な力もかからずに、数バールから数十バールまでの高い圧力で動作させることを可能にしている。
【0034】
しかしながら、これは、これらの圧力、典型的には30バールの圧力に加圧され、水素H
2および酸素O
2が内部を流れる、高温、典型的には800℃のスタックを収めるエンクロージャの機械的な強度を保証することも必要となる。この加圧されたエンクロージャの安全性の管理は簡単なことになり得ない。
【0035】
さらに、エンクロージャの存在は、インターコネクタとセルとの間の良好な電気接触を確実にするスタックの締付の管理を複雑にする。特に、締付部材を比較的低温の領域に移すことは簡単ではない。
【0036】
最後に、加圧されるエンクロージャは、エンクロージャの外部からのガスおよび電流の供給および回収ができるように、貫通して密閉された通路を有する構造にしなければならない。したがって、これらの通路のうちのいくつかは電気絶縁しなければならず、一方、水蒸気が入る通路は、水蒸気のサージングを避けるために温度を制御しなければならない。実際、入口および/または出口の配管における温度が制御されていない場合、内部を連続的に流れる水蒸気が低温領域に入り、次いで凝縮して制御不能になることがある。これによって、ガスおよび圧力の供給の変動を発生させるサージングが生じる。
【0037】
これらの予防策のすべてを施した結果は、加圧され密閉されたエンクロージャとEHT反応器またはSOFCセルとを組み込んだ完全な設備であり、複雑で高価となる。
【0038】
EHT反応器またはSOFCセルが収容された、加圧され密閉されたエンクロージャを使用する解決策を必要としないように、本出願人は、国際公開第2016/096752A1号において、SOFCセル内の電気分解反応または逆反応のために必要な反応ガス以外のガス流のための回路を備えたモジュールを提案し、この回路は、加圧下で動作している間、この追加したガスが、ガラスまたはガラスセラミック系密閉ガスケットの両側のガスの差圧をバランスさせるように構成される。
【0039】
図3には、国際公開第2016/096752A1号によるEHT水蒸気電解槽の基本ユニットを形成するように意図されたモジュールの概略断面図が再掲されている。
【0040】
このモジュールM
1は、中心軸線Xの周りに軸対称の形状を有する基本電気化学セル(C1)と、セルの両側に2つの電気および流体インターコネクタ5.1、5.2とを備え、セルはカソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に挿入された電解質とによって形成されている。
【0041】
2つのインターコネクタ5.1、5.2はそれぞれ、単一の金属部品から作られており、それは約20%のクロムを含むフェライト鋼製が好ましく、CROFER(登録商標)22APUまたはF18TNb製、あるいはInconel(登録商標)600またはHaynes230(登録商標)タイプのニッケル基製が好ましい。
【0042】
上部インターコネクタ5.1は、セルの中心軸線上でカソード側に開口する水蒸気供給導管50によって貫通されている。供給された水蒸気および生成された水素は半径方向に分配されて、カソード側のセルの周囲に開口する、生成された水素を回収するための導管に行く。
【0043】
下部インターコネクタ5.2は、空気などの排出ガスを供給するための導管51によって貫通され、中心軸線上でアノード側のセルに開口している。また、供給された空気および生成された酸素は半径方向に分配されて、アノード側のセルの周囲に開口する、生成された酸素を回収するための導管に行く。
【0044】
中心軸線Xの周りに軸対称の形状の第1の密閉ガスケット61は、基本セルC1の周囲に配置され、2つのインターコネクタのそれぞれを同時に支える。このガスケットは、カソード区画(H
2O/H
2)の周りを密閉するように設計される。
【0045】
中心軸線の周りに軸対称の形状の第2の密閉ガスケット62は、基本セルのアノードの周囲に配置され、下部インターコネクタおよび電解質を同時に支える。このガスケットは、アノード区画(空気/O
2)の周りを密閉するように設けられる。密閉ガスケット61および62は、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である。
【0046】
中心軸線Xの周りに軸対称の形状の電気絶縁および密閉デバイス8は、カソード区画の周りの第1の密閉ガスケットの周囲に配置される。デバイス8は、上部インターコネクタ5.1および下部インターコネクタ5.2をそれぞれ支える2つの金属ガスケットを有する、くさび形シールを形成する単一の電気絶縁ワッシャからなってもよい。
【0047】
下部インターコネクタ5.2は、動作中、第1の密閉ガスケット61の両側の圧力をバランスさせるためのバランスガスを一様に分配するようにガスケット61とデバイス8との間に画定された空間に開口する、バランスガス(balancing gas)を供給するための少なくとも1つの導管58、およびこのバランスガスを回収するための少なくとも1つの導管によって貫通される。
【0048】
デバイス8は、可能な限りEHT反応器の動作圧力に近いレベル、典型的には10から30バールで供給されるバランスガスの圧力と、モジュールの外部の圧力、典型的には1バールとの間の大きな圧力差に耐えることができるように構成される。絶縁および密閉デバイス8によって、下部インターコネクタ5.2と上部インターコネクタ5.1との間でいかなる短絡も防ぐことができる。
【0049】
さらに、上記のように、SOEC反応器または燃料セルのスタックの締付部材を低温の領域に移すことはいくつかの大きな欠点を有する。
【0050】
これらの欠点を克服するために、本出願者は、締付を低温領域に移さないための解決策を提案し、これは、2015年12月15に「Stand-alone system for clamping a high-temperature SOEC/SOFC solid oxide stack」という名称で出願された仏国特許第1562384号で説明および特許請求されている。
【0051】
図4には、前述の仏国特許第1562384号による、高温SOEC/SOFC固体酸化物スタック11と、このスタック11用の独立型クランプシステム10とを備えた組立体30の例の部分分解斜視図が再掲されている。
【0052】
クランプシステム10は、まず、上部クランププレート12と下部クランププレート13とを備え、その間にSOEC/SOFCの固体酸化物スタック11が締め付けられている。SOEC/SOFC固体酸化物スタック11は、それぞれがカソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に挿入された電解質とによって形成された複数の電気化学セルC1と、それぞれが2つの隣接する電気化学セルC1の間に配置された複数の中間インターコネクタ5とを備える。
【0053】
上部クランププレート12および下部クランププレート13のそれぞれは、複数のクランプ穴14を備える。
【0054】
クランプシステム10はまた、図示の例では4本となっているねじ付きボルトを備える。各ボルトは、上部クランププレート12のクランプ穴14を通り、下部クランププレート13の対応するクランプ穴14を通って延在するねじ付きクランプ軸15を備えて、上部クランププレート12と下部クランププレート13とを一体になるように組み立てることができる。
【0055】
クランプワッシャ17に付随する第1のクランプナット16は、上部クランププレート12のクランプ穴14の1つを通して挿入された、それぞれ対応するクランプ軸15と相互作用する。
【0056】
第2のクランプナット18は、下部クランププレート13のクランプ穴14を通して挿入された、それぞれ対応するクランプ軸15と相互作用する。
【0057】
クランプボルトの構成部品(軸15およびナット16、18)は、Inconel625タイプのニッケル基超合金製が好都合である。この材料は、弾性的な挙動を与えることができ、したがって、想定される温度レベルでもクリープまたは応力緩和を防ぐことができる。
【0058】
これに関して、クランプワッシャ17はAISI310オーステナイト耐火鋼製である。クランプワッシャ17の厚さは、SOEC/SOFC固体酸化物スタック11内にある電気化学セルC1の数にしたがって調節することができる。
【0059】
このように定められたクランプシステム10は、Inconel625ニッケル基超合金製のクランプ軸15とSOEC/SOFC固体酸化物スタック11との間の膨張差を、下部クランププレート13および上部クランププレート12、ならびにAISI310オーステナイト耐火鋼製のクランプワッシャ17の高いレベルの膨張によって補償することができる。
【0060】
クランプシステム10は、SOEC/SOFC固体酸化物スタック11と上部クランププレート12との間に、好ましくはマイカ製の電気絶縁プレート19をさらに備える。
【0061】
このプレート19は、SOEC/SOFC固体酸化物スタック11と上部クランププレート12との間の電気絶縁くさびとして働く。このプレートがない場合、クランプシステム10は金属製なので、スタック11の頂部と底部との間で短絡が生じる。
【0062】
スタック11は、上部ターミナルプレート33および下部ターミナルプレート34をさらに備え、それらの間で複数の電気化学セルC1および複数のインターコネクタ5が締め付けられている。
【0063】
上部ターミナルプレート33は、クランプシステム10の電気絶縁プレート19と接触し、一方、下部ターミナルプレート34は、クランプシステム10の下部クランププレート13と接触している。
【0064】
各下部ターミナルプレート34はまた、生成されたガスの入口および出口用の4つ金属チューブ50、51を有する。
【0065】
電気絶縁フレーム36は、マイカ製が好ましいが、また、各電気化学セルC1の周りで、2つの隣接するインターコネクタ5の間に配置される。この絶縁フレーム36によって、各電気化学セルC1を中央に置くことができ、インターコネクタ5間を電気絶縁することができる。
【0066】
各絶縁フレーム36はまた、特にガラスおよび/またはガラスセラミック製の密閉ガスケット用の支持体として働くことができる。
【0067】
SOEC/SOFC固体酸化物スタック11はまた、電気化学セルC1の、SOECでは各カソード、SOFCでは各アノードと、各中間インターコネクタ5または上部ターミナルプレート33との間に第1の接触層37、ならびに電気化学セルC1の、SOECでは各アノード、SOFCでは各カソードと、各インターコネクタ5または下部ターミナルプレート34との間に第2の接触層38とを備えてもよい。
【0068】
これらの接触層37、38は、インターコネクタ5と電気化学セルC1との間の電流の流れを改善させることができる。
【0069】
第1の接触層37はニッケルメッシュが好ましく、一方、第2の接触層38はランタンストロンチウムマンガナイト(または、英語の「Lanthanum Strontium Manganite」に対して「LSM」)のセラミック層である。
【0070】
最後に、上部ターミナルプレート33、下部ターミナルプレート34、インターコネクタ5、絶縁フレーム36、および上部クランププレート12に形成されたガイド穴40を通って延在する2つのガイド柱39を設けてもよい。これらのガイド柱39は、SOEC/SOFC固体酸化物スタック11を締め付けて圧縮することによって押しつぶすための案内となる。
【0071】
さらに、スタック11に使用されるすべての鋼材はフェライト鋼、特にCrofer、AISI441、および/またはAISI430タイプのものである。
【0072】
単なる情報としてであるが、上述の様々な材料に対して、20℃から800℃の間で使用される平均的な膨張係数αのおおよその値は以下の通りである。すなわち、
- フェライト鋼:α=12・10
-6
- ニッケル及びInconel625メッシュ:α=16・10
-6
- AISI310オーステナイト鋼:α=18・10
-6
- ストロンチウムランタンマンガナイト(LSM):α=12・10
-6
【0073】
スタック11の構成部品のそれぞれの各厚さに応じて、AISI310鋼のクランプワッシャ17の厚さは、各構成部品に対する積(αx厚さ)の合計に相当する、クランプナット16とクランプナット18との間に配置された部品の全膨張が、確実に、ねじ付きクランプ軸15の膨張と等しいかそれより僅かに大きくなるように選択される。これにより、確実に、温度変化に関係なく初期締付けが維持される、または温度が20℃から800℃に上昇すると、わずかに増し締めされることさえあり得る。したがって、電気接触および密閉性に関する組立体30の最終的な試験結果に対して、AISI310のクランプワッシャ17は、電気化学セルC1の数が25個のとき約10mmの厚さとなる。
【0074】
上記のクランプシステム10は、加圧下のSOEC反応器またはSOFC燃料セルの動作態様すべてで完全に満足するものではない。
【0075】
それは、加圧下の動作では、このクランプシステムは、圧力に比例する、通常、底部効果(bottom effect)として知られている効果を受けるからである。
【0076】
それは、反応ガスの1つまたは複数を使って加圧下でSOEC/SOFCスタックを動作させようとすると、前記スタックの圧力を上げなければならないからである。この圧力の上昇は、クランプボルトの端部への推力または牽引力によって現れる。
【0077】
したがって、この推力を補償するために、取付具を漸次再締付けして底部効果を抑える必要がある。
【0078】
当然、SOEC反応器またはSOFC燃料セルが高温、典型的には600℃から1000℃の間で動作することを考えると、現場でこの再締付けを行うことは困難である。
【0079】
したがって、加圧され密閉されたエンクロージャを使用することなく、特に、スタックの圧力上昇による底部効果によって必要となる、締付取付具を漸次再締付けすることを不要にするために、加圧下で反応ガスを使って動作するように設計されたSOEC電解反応器またはSOFC燃料セルのスタックを締め付けるための効果的な解決策を提示する必要がある。
【0080】
大まかに言えば、高温であっても、スタックが加圧下で動作していても、または、圧力がかからずに、すなわち大気圧で動作していても、SOEC電解反応器またはSOFC燃料セルのスタックを(再)締付けするための効果的な解決策を提示する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】仏国特許出願第2957361A1号
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0081471号
【特許文献3】米国特許第66894992B2号
【特許文献4】国際公開第2016/096752A1号
【特許文献5】仏国特許第1562384号
【特許文献6】仏国特許出願第3040061A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0082】
本発明の目的は、この、またはこれらの必要性に少なくとも部分的に対応するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0083】
このため、本発明は、高温で動作するように設計された、SOEC電解または共電解反応器、あるいはSOFC燃料セルを形成する電気化学デバイスに関し、この電気化学デバイスは、
- SOEC/SOFC固体酸化物に基づいた電気化学セルのスタックであって、各セルが、カソードと、アノードと、カソードとアノードとの間に挿入された電解質とによって形成された、スタックと、
- ターミナルプレートと呼ばれる2つのエンドプレートであって、それらの間にスタックが配置されている、2つのエンドプレートと、
- スタックの2つのクランププレートであって、それらの間にエンドプレートおよびスタックが配置されている、2つのクランププレートと、
- クランププレート間のクランプ手段であって、スタックを締め付け、周囲温度とデバイスの高い動作温度との間の温度に関わらずターミナルプレート間にスタックを締め付けたままにするように構成されたクランプ手段と、
- ターミナルプレートの1つと、隣接するクランププレートとの間に画定されたクランプチャンバであって、スタックの内側よりも高い圧力のクランプガス回路に接続されたクランプチャンバと
を備える。
【0084】
クランプガス回路はスタック内の反応ガス回路からは独立していてもよく、したがって、チャンバにはスタックから独立したクランプガスが供給されてもよい。
【0085】
したがって、第1の変形形態によれば、クランプガス回路はスタックを通過しない。
【0086】
第1の変形形態によれば、クランプガス回路は、クランプチャンバを画定するターミナルプレートの厚み部分を通るように形成された2つの開口導管を備えることが好都合である。したがって、クランプガスは導管の一方を通ってクランプチャンバに供給され、導管の他方を通ってチャンバから排出される。
【0087】
第2の変形形態によれば、クランプガス回路はスタックを通過する。
【0088】
クランプチャンバは、スタックと上部クランププレートとの間に形成されることが好都合となり、したがってスタックの下部においていかなるチューブの通路も回避される。
【0089】
SOEC電解または共電解反応器の第1の代替の実施形態によれば、スタックは基本ユニットのスタックであり、各基本ユニットは、
・ 基本固体酸化物電気化学セルと、
・ 第1のデバイスおよび第2のデバイスであって、それぞれが電気および流体インターコネクタを形成し、それぞれが電子伝導性で気密性の材料の構成部品よりなり、第1および第2のインターコネクタが基本セルの各側に配置され、第1のインターコネクタが、カソード側のセルに開口する水蒸気供給導管、およびカソード側のセルの周囲に開口する、生成された水素を回収するための導管によって貫通されて、供給された水蒸気を供給導管から一様に分配し、生成された水素を回収導管に一様に分配し、第2のインターコネクタが、アノード側のセルの周囲に開口する、生成された酸素を回収するための導管によって貫通されて、生成された酸素を回収導管に一様に分配する、第1のデバイスおよび第2のデバイスと、
・ 基本セルの周囲に配置され、第1のインターコネクタおよび第2のインターコネクタを同時に支える第1の密閉ガスケット、ならびに基本セルのアノードの周囲に配置され、第2のインターコネクタおよび電解質を同時に支える第2の密閉ガスケットであって、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である第1および第2の密閉ガスケットと、
・ 第1の密閉ガスケットの周囲に配置され、第1および第2のインターコネクタをそれぞれ支える絶縁および密閉デバイスと、
・ クランプガス用の少なくとも1つの供給導管および少なくとも1つの回収導管であって、第1および第2のインターコネクタに形成され、それぞれが、第1のガスケットと絶縁および密閉デバイスとの間に画定された空間に開口して、クランプガスの供給導管から回収導管までクランプガスを一様に分配し、したがって、クランプガスがまた、反応器の加圧動作中、第1の密閉ガスケットの両側の圧力をバランスさせるためのバランスガスを形成する、少なくとも1つの供給導管および少なくとも1つの回収導管と
を備え、クランプおよびバランスガス回路の供給導管および回収導管はクランプチャンバに開口している。
【0090】
1つの変形形態によれば、第2のインターコネクタは、空気などの排出ガスをアノード側のセルに供給するための導管によって貫通されて、供給導管から供給された排出ガスを一様に分配し、生成された酸素を回収導管に一様に分配する。
【0091】
第2の代替の実施形態によれば、本発明はまた、スタックが基本ユニットのスタックである、SOFC燃料セルに関し、各基本ユニットは、
・ 基本固体酸化物電気化学セルと、
・ 第1のデバイスおよび第2のデバイスであって、それぞれが電気および流体インターコネクタを形成し、それぞれが電子伝導性で気密性の材料の構成部品よりなり、第1および第2のインターコネクタが基本セルの各側に配置され、第1のインターコネクタが、SOFCのアノード側のセルに開口する燃料供給導管、およびアノード側のセルの周囲で、生成された水を回収するための導管によって貫通されて、供給された燃料を供給導管から一様に分配し、生成された水を回収導管に一様に分配し、第2のインターコネクタが、カソード側のセルの周囲に開口する、空気または酸素を供給するための導管によって貫通されて、空気または酸素を供給導管から回収導管に一様に分配する、第1のデバイスおよび第2のデバイスと、
・ 基本セルの周囲に配置され、第1のインターコネクタおよび第2のインターコネクタを同時に支える第1の密閉ガスケット、ならびに基本セルのSOFCカソードの周囲に配置され、第2のインターコネクタおよび電解質を同時に支える第2の密閉ガスケットであって、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である第1および第2の密閉ガスケットと、
・ 第1の密閉ガスケットの周囲に配置され、第1および第2のインターコネクタをそれぞれ支える絶縁および密閉デバイスと、
・ クランプガス用の少なくとも1つの供給導管および少なくとも1つの回収導管であって、第1および第2のインターコネクタに形成され、それぞれが、第1のガスケットと絶縁および密閉デバイスとの間に画定された空間に開口して、クランプガスの供給導管から回収導管までクランプガスを一様に分配し、したがって、クランプガスがまた、反応器の加圧動作中、第1の密閉ガスケットの両側の圧力をバランスさせるためのバランスガスを形成する、少なくとも1つの供給導管および少なくとも1つの回収導管と
を備え、クランプおよびバランスガス回路の供給導管および回収導管はクランプチャンバに開口している。
【0092】
加圧下の動作に対して、スタック、エンドプレート、およびクランプチャンバの全体形状が軸対称であることが好ましい。概ね楕円形状もあり得る。
【0093】
クランプチャンバは、上部ターミナルプレートとクランププレートとの間でスタックの上方に、より正確には、上部ターミナルプレートと、上部クランププレートの下に配置された電気絶縁プレートとの間に画定されることが好都合である。
【0094】
好都合な実施形態によれば、クランプチャンバは、その底部を形成する上部ターミナルプレートの頂部と、そのカバーを形成する堅固なプレートと、その側壁を形成するリングによって画定され、チャンバの底部、カバー、および側壁は溶接によって互いに組み立てられている。カバーおよび側壁はそれぞれ薄いシート金属よりなり、その厚さは、0.1mmから0.5mmの間が好都合であり、0.2mmに等しいことが好ましい。
【0095】
したがって、本発明は本質的に、クランプ取付具の他に、スタック内の反応ガスと実質的に同じ圧力の、反応ガス以外のガスが流れるクランプチャンバを形成することにある。このとき、基本ユニットのスタックの上方のクランプチャンバ内を流れるガスの圧力は、反応ガスおよびスタック内で生成されたガスによって生じた圧力とバランスする。
【0096】
そのとき、クランプチャンバ内の加圧されたガスの流れは、加圧された反応ガスおよびスタック内で生成されたガスによって加えられた推力による底部効果を受動的に補償する。
【0097】
この圧力補償クランプチャンバは、圧力上昇中にクランプ取付具の再締付けを不要とする。このような再締付けは、SOEC反応器またはSOFC燃料セルの高い動作温度、典型的には600℃から1000℃の間の温度によりいずれにしても現場では不可能である。
【0098】
したがって、クランプ取付具の初期の取付具の締付け、すなわち、スタックの圧力が上昇する前の締付けは、従来、圧力なしで動作するスタックに対して使用されていた締付けの場合があり、それは、典型的には、基本電気化学セルにおいて100cm
2の有効な表面積を有するスタックに対するクランプ軸の組に加えられる約200kgのことがある。
【0099】
しかしながら、取付具の設計が、クランプチャンバ内の圧力の作用、典型的には、10バールで動作するスタックに対しては2トン程度を受けるときの機械的強度を確実に保証するように注意を払うべきである。
【0100】
したがって、クランプ取付具は、スタックが不意に開くことを防ぎ、それによって、安全な動作を確実にし、隣接するインターコネクタ間の各セルを圧縮することによって締め付けることができる。一方のインターコネクタから他方のインターコネクタに適切な圧縮力を加えることによって、確実に密閉と電気接触をするように締め付けることもできる。反応器またはセルのすべての構成部品の一連の寸法は、密閉ガスケットを周囲で密閉ガスケットを押しつぶし、適当であれば、電気接触層を押しつぶすことを確実にするように決定される。典型的には、締め付けることによる押しつぶしは数十ミクロンである。
【0101】
ボルトは、必要な安全性を確実にするために、すなわち、過大な圧力の場合の動作中にスタックが開くことを防ぐために使いやすく、信頼できる。
【0102】
さらに、本発明のさらなる態様によれば、循環ガスは、バランスガスとしても働くことができるクランプガスであって、それによって、EHT反応器またはSOFCセルが収容される、加圧され密閉されたエンクロージャの使用を必要とする、知られている解決策なしで済ますことができる。圧縮されるガスの量も、エンクロージャの場合よりもずっと少なく、その結果、エネルギー効率が良くなり、加圧下での安全性が高まる。
【0103】
したがって、スタックの上端でバランスガスを循環させるための回路のみが修正され、ガスは、本発明によるクランプチャンバ内部をループして流される。
【0104】
これによって、底部から頂部までスタックの高さにわたって循環し、次いで、クランプチャンバの出口で再圧縮されて、スタックの頂部から底部まで再循環するバランスガスが直接供給されるクランプチャンバを容易に構築することができる。
【0105】
したがって、ある程度、EHT反応器またはSOFC燃料セルの内側と外側との間の圧力差を制御するという主な機能を保持しているバランスガスに新しいクランプ機能が与えられ、したがって、加圧下で信頼性のある動作が可能になる。
【0106】
クランプガスはまた、反応ガス、または反応から生じたガスの漏れを燃やすことができる。それは空気が好都合なことがある。次いで、この回路は、回路を分析することによって、設備の周りの安全な換気の要件に対して少量である燃料の存在の検出を可能にする。これによって、簡単に、燃料、特に水素の漏れをより迅速かつより高い信頼性で検出することができる。
【0107】
加圧動作モードにおいて、電気絶縁しながら、内側、典型的には、10から30バールの間と、外側、典型的には、1バールとの間の圧力差に耐えなければならない唯一のシールは、バランスガスの循環の外側で密閉および絶縁デバイスによって形成されるシールであり、このシールに働く力は、反応ガスが循環するアノード区画とカソード区画との間よりも大きい。
【0108】
EHT反応器またはSOFCセルの公称動作モードでは、選択されるバランスおよびクランプガスは空気が好ましく、それによって、第1の密閉ガスケットから漏れたいかなるわずかな(セルの出力の数パーセントより少ない)水素も燃やすことができる。
【0109】
スタックと外部との間のシールは保たれているが、第1のガスケットのシールが失われる場合には、この選択されるバランスガスは水素H
2および/または水蒸気H
2Oおよび/または燃料である。
【0110】
最後に、第1のガスケットのシール、ならびにデバイスと外部との間のシールが同時に失われる場合には、圧力を維持するために、クランプおよびバランスガスは高流量の不活性ガスであってもよい。
【0111】
さらに、バランスおよびクランプガスが、EHT反応器またはSOFC燃料セルの熱制御の役割を果たすことができることが好都合である。特に、クランプガスが空気の場合、クランプチャンバの出口を使ってSOECアノード区画に供給することが好都合なことがある。クランプ回路に入る通路は予熱される。
【0112】
スタックを動作中に再締付けすることができるクランプガスはまた、反応ガスまたは反応から生じたガスの漏れを燃やことができるクランプガスのカーテンでスタックを取り囲むことによって、スタックをある程度換気する役割をする、または、例えば、窒素を使うことによってスタックの周りの流体環境を不活性にする役割をする。
【0113】
各密閉デバイスは、絶縁ワッシャ、ならびに絶縁ワッシャの両側の第3および第4の金属ガスケットよりなることが好都合である。各密閉デバイスはまた、インターコネクタにろう付けされた絶縁ワッシャよりなってもよい。
【0114】
クランプ手段は、クランププレートを通過するように配置された2つのクランプボルトを含んでもよい。
【0115】
好都合な実施形態によれば、各クランプボルトは、
- ねじ付きクランプ軸と、
- 第1のクランプワッシャに付随する第1のクランプナットであって、両方が、上部クランププレートのクランプ穴を通して挿入されたねじ付きクランプ軸とねじ留めすることによって相互作用するように設計され、第1のクランプワッシャが、第1のクランプナットと上部クランププレートとの間に配置されている、第1のクランプナットと、
- 第2のクランプワッシャに付随する第2のクランプナットであって、両方が、下部クランププレートのクランプ穴を通して挿入されたねじ付きクランプ軸とねじ留めすることによって相互作用するように設計され、第2のクランプワッシャが、第2のクランプナットと下部クランププレートとの間に配置されている、第2のクランプナットと
を含む。
【0116】
クランプ軸と、下部クランププレートのクランプ穴との間に配置された電気絶縁チューブをさらに設けることも可能であり、第2のクランプワッシャもまた電気絶縁性である。
【0117】
本発明はまた、第1の代替によるSOEC反応器を動作させる方法に関し、本方法によれば、
- 供給導管に水蒸気、あるいは水蒸気と、二酸化炭素および二酸化窒素から選択された別のガスとの混合物が供給され、供給導管にクランプおよびバランスガスが同時に供給され、供給された水蒸気または混合物の圧力は、クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しく、
- 水蒸気の電解または共電解によって生成された水素、あるいは水素と一酸化炭素または一酸化窒素は回収導管に回収され、同時に、クランプチャンバ内を循環したバランスガスは回収導管に回収される。
【0118】
1つの変形形態によれば、供給導管に空気などの排出ガスが供給され、供給された排出ガスの圧力は、クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しく、生成された酸素は回収される。
【0119】
本発明はまた、第2の代替によるSOFC燃料セルを動作させる方法に関し、本方法によれば、
- 供給導管に水素またはメタンなどの燃料が供給され、供給導管にクランプおよびバランスガスが同時に供給され、
- 供給導管に空気または酸素が供給され、供給された燃料および空気または酸素の圧力は、クランプおよびバランスガスの圧力と実質的に等しく、
- 一方では、余剰の燃料、クランプチャンバ内を循環したクランプおよびバランスガス、および生成された水、ならびに、他方では、余剰の空気または酸素は、それぞれの回収導管に回収される。
【0120】
好都合な制御モードによれば、クランプおよびバランスガスの温度をその供給導管内で上昇または下降させて、スタックの温度をそれぞれ上昇または下降させる。
【0121】
動作中、反応ガスの圧力が維持されている間、クランプおよびバランスガスのその供給導管内の圧力を増大させ、クランプおよびバランスガスの増大させた圧力と反応ガスの圧力との間の差が500ミリバール以下となって、動作中にスタックが再締付けされることが好都合である。
【0122】
好都合な変形形態によれば、空気を含むクランプおよびバランス回路内でのいかなる燃料漏れも検出される。
【0123】
基本電気化学セルがカソード支持型であることが好ましい。
【0124】
本明細書及び本発明の文脈において、「カソード支持型セル」という表現は、高温水電解(EHT)の分野において与えられた定義を表すものと理解され、「Cathode-Supported Cell」に対する略語CSCによって示され、すなわち、電解質および酸素電極(アノード)が、より分厚い、したがって支持体として働く水素電極(カソード)の上に配置されるセルである。
【0125】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図面を参照して、単なる手引きとして、制限する意図なく提供される、本発明の実施形態の例の詳細な説明をよく読めばより容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】高温水電解槽の動作原理を示す概略図である。
【
図2】従来技術による、インターコネクタを備えたSOECタイプの高温水蒸気電解槽(EHT)の一部分の概略部分分解図である。
【
図3】スタック内のシールと電気接触の構成を示す、従来技術によるEHT電解槽またはSOFC燃料セルの概略部分断面図である。
【
図4】従来技術による高温SOEC/SOFC固体酸化物スタック反応器およびこのスタック用のクランプシステムの例の概略部分分解斜視図である。
【
図5A】本発明によるSOEC反応器を上から見た斜視図である。
【
図5B】本発明によるSOEC反応器を下から見た斜視図である。
【
図6】
図5Aおよび5Bに示した、本発明によるSOEC反応器の部分分解斜視図である。
【
図7A】より詳細に示した、本発明による反応器のスタックの基本電解ユニットを上から見た部分分解斜視図である。
【
図7B】より詳細に示した、本発明による反応器のスタックの基本電解ユニットを下から見た部分分解斜視図である。
【
図8A】
図7Aに対応した、反応電解ガスおよびバランスガスの循環をさらに示した図である。
【
図8B】
図7Bに対応した、反応電解ガスおよびバランスガスの循環をさらに示した図である。
【
図9】基本電解ユニットのスタック内の反応ガスおよびバランスガスの正確な回路を示した、本発明によるSOEC反応器の長手方向部分断面図である。
【
図10】本発明によるクランプチャンバのバランスガスの正確な回路を示した、
図9の拡大図、すなわち、基本電解ユニットのスタックの上方の拡大図である。
【
図11A】頂部が、本発明によるクランプチャンバを画定する薄いプレートによって囲まれ、その内部をバランスガスが循環する、上部ターミナルプレートを下から見た斜視図である。
【
図11B】頂部が、本発明によるクランプチャンバを画定する薄いプレートによって囲まれ、その内部をバランスガスが循環する、上部ターミナルプレートを上から見た斜視図である。
【
図12】本発明によるクランプチャンバの構成、およびその中のバランスガスの循環を示す分解図である。
【
図13】本発明の変形形態によるクランプチャンバの構成、およびその中のバランスガスの循環を示す分解図である。
【
図14】本発明によるクランプチャンバ内のガスによってSOEC/SOFC固体酸化物スタックに加わる圧力を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
図1〜
図4は、従来技術に関するもので、序論ですでに論じた。したがって、これらについては下記では詳細には述べない。
【0128】
明確にするため、従来技術によるEHT電解反応器と本発明によるEHT電解反応器の同じ要素は同じ参照番号によって示す。
【0129】
すべての図において、符号、ならびに水蒸気H
2Oの供給、二水素H
2、酸素O
2、空気、電流、およびバランスガスの分配および回収を示す矢印は、明確性および正確性を目的として示され、高温電解反応器の動作を説明するために示されている。
【0130】
本出願全体を通して、用語「下部(lower)」、「上部(upper)」、「頂部(top)」、「底部(bottom)」、「内側(inside)」、「外側(outside)」、「内部(internal)」、および「外部(external)」は、加圧動作構成の、すなわち、本明細書で提示された構成では、セルが鉛直方向に積み重ねられ、SOECカソードがアノードの上方に配置された構成の、本発明による反応器を基準にして解釈されるべきであることをここに明記しておく。
【0131】
本明細書で説明される電解槽または燃料セルは、高温で動作する固体酸化物タイプ(「固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolyzer Cell)」の英語の略語であるSOEC、または「固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell)」の英語の略語であるSOFC)のものであることも同じく明記しておく。したがって、電解セルまたは燃料セルのすべての構成部分(アノード/電解質/カソード)はセラミックである。電解槽(電解反応器)または燃料セルの高い動作温度は、典型的には600℃から1000℃の間である。典型的には、カソード支持型(CSC)の、本発明によるSOEC基本電解セルの特性は、下の表に示されているような特性とすることができる。
【0133】
最後に、これもまた明確にするためであるが、ガス循環導管は、スタックの外側のチューブによって形成された部分に関するものであっても、構成部品を貫通して開けられた穴のスタックによって形成された部分に関するものであっても同じ参照番号によって示されている。
【0134】
したがって、水蒸気供給導管は、外部のチューブもスタック内側の導管もどちらも参照番号50によって示されている。同じことは、排出ガス(O
2または空気)供給導管51、バランスガス供給導管52、生成された水素を回収するための導管53、生成された酸素を回収するための導管54、および、最後に、バランスガス回収導管55についても当てはまる。
【0135】
図5Aおよび
図5Bは、加圧下で動作するように設計されたSOEC電解反応器の全体図である。
【0136】
図で分かるように、反応器は、まず、上部クランププレート12および下部クランププレート13を備え、それらの間に、SOEC固体酸化物セルと厚いエンドプレート33、34とからなる基本ユニットのスタック11が締め付けられている。
【0137】
より正確には、2つのエンドプレートまたはターミナルプレート33、34はスタック11を形づくる。図示の例では、クランププレート12、13、ターミナルプレート33、34、およびスタック11は、加圧下で動作するのに好都合である、セルの平面に垂直な中心軸線Xの周りに軸対称の形状を有する。
【0138】
締付けは、図示の例では均等に配分した4本のクランプボルト15、16、17、18によって行われる。
【0139】
より正確には、各ボルトはねじ付きクランプ軸15を備え、それぞれのねじ付きクランプ軸15は上部クランププレート12のクランプ穴14および下部クランププレート13の対応するクランプ穴14を通って延在して、上部クランププレート12と下部クランププレート13とを一体になるように組み立てることを可能にする。クランプ軸15は、16mm以上の直径の円柱形とすることができることが好都合である。
【0140】
クランプワッシャ17に付随する第1のクランプナット16は、クランプ穴14を通して挿入された対応する各クランプ軸15とねじ留めすることによって相互作用するように上部クランププレート12の各クランプ穴14に設けられる。第1のクランプワッシャ17は、第1のクランプナット16と上部クランププレート12との間に配置される。
【0141】
第2のクランプワッシャ17に付随する第2のクランプナット18は、下部クランププレート13のクランプ穴14を通して挿入された各ねじ付きクランプ軸15とねじ留めすることによって相互作用するように設けられる。第2のクランプワッシャ17は、第2のクランプナット18と下部クランププレート13との間に配置される。さらに、
図6に示すように、チューブ17.1が、ねじ付き軸15と下部プレート13の対応するクランプ穴14との間に挿入されてもよい。この第2のワッシャ17は、チューブ17.1と同様に電気絶縁性であり、その結果、上部クランププレート12と下部クランププレート13との間には様々な電位が許容される。
【0142】
上部クランププレート12および下部クランププレート13は、AISI310オーステナイト耐火鋼製で、それぞれ約25mmの厚さを有することが好都合である。
【0143】
また、クランプ軸15、ならびに第1のクランプナット16および第2のクランプナット18は、Inconel625タイプのニッケル基超合金製が好都合である。
【0144】
上部クランプワッシャ17は、AISI310オーステナイト耐火鋼製が好ましい。クランプワッシャ17の厚さは、固体酸化物の電気化学セルのスタック11内にある基本ユニットの数にしたがって調節することができる。電気絶縁のために、下部クランプワッシャ17はジルコニアまたはMacor(登録商標)製が好ましい。
【0145】
様々なパイプが、スタックを通って反応ガスおよびバランスガスを供給するために、および、高温、典型的には600℃から1000℃の間での水電解によって生成されたガスを、バランスガスと同様に回収しスタックから抜き出すために設けられる。各ガスの流量および圧力は、対応するパイプにおいて制御することができる。
【0146】
したがって、パイプ50によって、水蒸気を基本ユニットのセルの様々なカソードにスタックを通って供給することができ、生成された水素および残っているすべての水蒸気は、パイプ53を通してスタックから回収され取り出される。
【0147】
同様に、パイプ51によって、酸素または空気などの排出ガスを基本ユニットのセルの様々なアノードに、スタックを通して供給することができ、生成された酸素は、パイプ54を通ってスタックから回収され取り出される。
【0148】
最後に、パイプ52によって、バランスガスを下記のようにターミナルプレート34の上方のクランプチャンバ9内にスタックを通して供給することをでき、その後、パイプ55を通して取り出される。
【0149】
電解反応器の内部の構造は
図6に示されており、n個の同一の基本ユニットM
1〜Mnのスタック11のうちの基本ユニットM
1の分解図が示されている。基本ユニットM
1は、第1の電気および流体インターコネクタ5.1と第2の電気および流体インターコネクタ5.2との間に挿入された基本電気化学セルC1を備える。
【0150】
この
図6に示すように、電気絶縁材料のプレート19は、上部クランププレート12と上部ターミナルプレート33との間に配置される。この電気絶縁プレート19は、固体酸化物スタック11と上部クランププレート12との間の電気絶縁くさびである。この電気絶縁プレート19はマイカ製が好都合である。
【0151】
基本ユニットM
1は、
図7Aおよび
図7Bにより詳細に示されている。
【0152】
これら図で分かるように、基本ユニットM
1は、各電気化学セルC1の周りで、2つの隣接するインターコネクタ間に配置された、2つの部品36.1、36.2に絶縁くさびを形成する層を備える。
【0153】
内側絶縁くさび36.1によって、各電気化学セルC1を中央に置くことができ、隣接するインターコネクタ間を電気絶縁することができる。このくさびは、下で詳細に説明するように、密閉ガスケット61用の支持体としての役割をすることもできる。
【0154】
内側絶縁くさび36.1および36.2はマイカ製が好ましい。
【0155】
基本ユニットM
1は、セルC1のカソードと各インターコネクタ5.1との間、またはスタック11の上端の基本ユニットMnの場合には、上部ターミナルプレート33との間に第1の接触層37をさらに備え、セルC1のアノードと各インターコネクタ5.2との間、またはスタック11の下端の基本ユニットMの場合には、下部ターミナルプレート34との間に第2の接触層38を備える。
【0156】
これらの接触層37、38が、インターコネクタ5.1、5.2と電気化学セルC1との間の電流の流れを改善することができることが好都合である。
【0157】
図示の例では、第1の接触層37は、ニッケルメッシュによって形成されることが好都合であり、一方、第2の接触層38は、ランタンストロンチウムマンガナイト(または、英語の「Lanthanum Strontium Manganite」に対して「LSM」)のセラミック酸化物層である。
【0158】
図6で分かるように、上部ターミナルプレート33、下部ターミナルプレート34、インターコネクタ5.1、5.2、絶縁くさび36.2、および上部クランププレート12に形成されたガイド穴40を通って延在する2つのガイド柱39が設けられる。これらのガイド柱39は電気絶縁性で、例えば、Macor(登録商標)製で、組立時に反応器を締め付けて圧縮することによってスタック11を押しつぶすための案内となる。
【0159】
各インターコネクタ5.1、5.2は、穴が開けられ、互いに直交する2つの対称軸線に沿って延在する3つの平坦な薄いシートからなり、これらの平坦なシートは互いに積層されて溶接によって組み立てられる。3つの薄いシートの形態のインターコネクタ5.1、5.2の構造をより良く理解するためには、仏国特許出願第3040061A1号を調べることは有益であろう。
【0160】
薄いシートは鋼製が好ましく、約20%のクロムを含むフェライト鋼がより好ましく、CROFER(登録商標)22APUまたはF18TNb、あるいはInconel(登録商標)600またはHaynes230(登録商標)タイプのニッケル基鋼が好ましい。
【0161】
これらのインターコネクタ5.1、5.2の薄いシートの積層および組立は、以下の方法で行われる。
- 水蒸気供給導管50および生成された水素を回収するための導管53の一部分は、シートに形成された穴によって画定され、これらの穴は、供給された水蒸気が各カソードを通って循環して水素を生成することができるようにしながら、互いに連通している。
- 排出ガス供給導管51および生成された酸素を回収するための導管54の一部分は、シートに形成された穴によって画定され、これらの穴は、排出ガスが各アノードを通って循環して酸素を生成することができるようにしながら、互いに連通している。アノードにおける循環は、カソードにおける循環に対して対向流である。
- バランスガス供給導管52の一部分は、シートに形成された穴によって画定され、これらの穴は、バランスガスがカソードおよびアノードで循環せずにインターコネクタ5.1、5.2を通過することができるようにしながら、互いに連通している。
- バランスガス回収導管55の一部分は、シートに形成された穴によって画定され、これらの穴は、バランスガスがカソードおよびアノードで循環せずにインターコネクタ5.1、5.2を通過することができるようにしながら、互いに連通している。
【0162】
中心軸線Xの周りに軸対称の形状の第1の密閉ガスケット61は、基本セルC1の周囲に配置され、2つのインターコネクタ5.1、5.2のそれぞれを同時に支持する。このガスケット61は、カソード区画の周りをシールするように設計されている。図示のように、第1のガスケット61は、内側絶縁くさび36.1の上と下に形成されている。
【0163】
中心軸線の周りに軸対称の形状の第2の密閉ガスケット62は、各基本セルC1のアノードの周囲に配置され、下部インターコネクタ5.2および電解質を同時に支持する。このガスケットは、アノード区画の周りをシールするように設計されている。密閉ガスケット61および62は、ガラスおよび/またはガラスセラミック系である。
【0164】
中心軸線Xの周りに軸対称の形状の電気絶縁および密閉デバイス8は、カソード区画の周りの第1の密閉ガスケット61の周囲に配置され、上部インターコネクタ5.1および下部インターコネクタ5.2をそれぞれ支持する。
【0165】
より正確には、デバイス8は、内側絶縁くさび36.1と外側絶縁くさび36.2との間の環状空間Eに配置され、内側くさび36.1は密閉ガスケット61を保持する。対応する環状空間Eは、上部インターコネクタ5.1および下部インターコネクタ5.2に形成されてもよい。したがって、上で特記したように、3枚の薄いシートよりなる各インターコネクタ5.1、5.2は、環状空間を確定するために、2つの端部シートのそれぞれを環状に切り抜くことは可能であるが、中央のシートを切り抜くことはできない。インターコネクタ5.1、5.2および電気絶縁くさびに同時に形成された環状空間Eによって絶縁デバイス8を中央に配置することができる。
【0166】
デバイス8は、くさびを形成する電気絶縁ワッシャよりなることが好都合なことがあり、互いに接触しない金属密閉ガスケットによって締め付けられる。そのとき、これらの金属ガスケットのそれぞれは、上部インターコネクタ5.1および下部インターコネクタ5.2それぞれを支持する。絶縁ワッシャは、ジルコニア製が好都合なことがあり、2つの金属ガスケットは、クロムおよび鉄を含む合金系、例えば、Fecralloy(登録商標)であってもよい。この絶縁ワッシャはまた、インターコネクタにろう付けされてもよい。
【0167】
様々な図で分かるように、インターコネクタ5.1、5.2および内側絶縁くさび36.1に形成されたバランスガス用の供給導管52および回収導管55はそれぞれ、第1のガスケット61と絶縁および密閉デバイス8との間に画定された空間内に開口して、バランスガスの供給導管から回収導管までバランスガスを一様に分配する。したがって、加圧下での反応器の動作中、第1の密閉ガスケット61の両側の圧力はバランスしている。したがって、デバイス8は、EHT反応器の動作圧力にできるだけ近いレベルで供給されるバランスガスの圧力、典型的には10から30バールと、モジュールのスタックの外側の圧力、典型的には1バールとの間の大きな圧力差に耐えるように構成されている。
【0168】
本発明者は、反応器が加圧下で、スタック11の構成部品のみ、すなわち、上記のような、提案されたクランププレート12、13、およびクランプ取付具15、16、17、18を用いて動作するとき、スタックの密閉を保ち、モジュール間での電気接触の損失が無いように保つために、取付具を漸次再締付けする必要があることを見出した。
【0169】
次いで、本発明者は、この再締付けの原因は、底部効果によるもの、すなわち、スタック11内の加圧されたガスが反応器の上端を流体的に押してクランプ軸の伸びを引き起こすことによるものであると推測した。
【0170】
したがって、本発明によれば、底部効果を引き起こす反応ガスの圧力と実質的に等しい圧力で反応器に導入される利点を有するバランスガスが供給された、可撓性の密閉されたクランプチャンバ9が提供される。
【0171】
図6、
図9、および
図10に示すように、本発明によるクランプチャンバ9は、上部ターミナルプレート33と電気絶縁プレート19との間に画定される。これは十分な可撓性があってクランプ軸の伸びに追従する。
【0172】
クランプおよびバランスガス回路の供給導管52および回収導管55は、クランプチャンバ9に開口している。したがって、クランプおよびバランスガスは、基本ユニットのスタックの上方のクランプチャンバ9内を循環させられ、次いで、チャンバ9内に確立した圧力は、反応ガスおよびスタック11内で生成されたガスによる圧力とバランスする。言い換えれば、クランプチャンバ内に加圧されたクランプおよびバランスガスの循環は前述の底部効果を受動的に補償する。
【0173】
図示の例では、密閉されたクランプチャンバ9は、その底部を形成する上部ターミナルプレート33の頂部、そのカバーを形成するプレート90、およびその側壁を形成するリング91によって画定される。チャンバのこれらの様々な部品、すなわち、底部33、カバー90、および側壁91は、溶接によって一体になるように組み立てられる。この構造は、可撓性があるが、非常に頑丈でコンパクトであり、電解反応器の設計に影響しないので、非常に好都合である。
【0174】
前述の好ましい材料を用いると、クランプ取付具15、16、17、18の設計によって、クランプチャンバ9内の圧力の影響の下、典型的には、10バールの圧力の下で動作するスタック11に対しては2ton程度の影響の下でこれらは弾性的にふるまうことができ、したがって、予想される温度が20℃から1000℃の間のレベルであっても、反応器の構成部品のそれぞれの伸びが異なっているにも関わらず、クリープまたは応力緩和を防ぐことができる。
【0175】
次に、
図5A〜
図12を参照して説明した、本発明による複数のモジュールを備えたEHT電解反応器の動作について説明する。
【0176】
チューブ50に水蒸気が供給され、したがって、スタック内の水蒸気供給導管50にも供給され、同時に、チューブ52にクランプおよびバランスガスが供給され、したがって、供給導管52および環状空間にも供給され、供給された水蒸気の圧力は、バランスガスの圧力と実質的に等しい。
【0177】
また、同時に、チューブ51に排出ガスとして作用する空気が供給され、したがって、供給導管51にも供給され、供給された空気の圧力は、バランスガスの圧力と実質的に等しい。
【0178】
供給導管50から半径方向に分配された水蒸気、および水蒸気の電解によって生成された水素は、半径方向に回収導管53に回収され、したがって回収チューブ53を通って回収される。
【0179】
クランプおよびバランスガスは、スタック11の全高にわたって密閉ガスケット61とデバイス8との間の空間を循環してから、クランプチャンバ9に達し、次いで、クランプチャンバの出口で回収導管55内に回収され、したがって、回収チューブ55を通って回収される。次いで、クランプチャンバ9内に確立した圧力は、反応ガスおよびスタック内で生成されたガスによって上部ターミナルプレート33に加わる圧力を補償する。
【0180】
供給導管51から半径方向に分配された空気、および水蒸気の電解によって生成された酸素は回収チューブ54を通って回収される。
【0181】
いくつかの構成では、特に、SOECスタック11を大気圧でのみ動作させたいときは、スタック内にバランスガス回路を構成せずに済まして、スタックを通過しないクランプガス回路を設けることが可能である。
【0182】
スタックから独立したクランプガス回路の実施形態が
図13に示されている。この実施形態によれば、クランプガス回路は、クランプチャンバ9を画定するターミナルプレート33の厚み部分に直接開けられた2つの開口導管330を備える。したがって、クランプガスは、スタック11内のガスの循環から独立してクランプチャンバ9に直接供給される。したがって、クランプガスは導管330の一方を通ってクランプチャンバ9に入り、次いで、導管330の他方を通ってチャンバ9の出口から排出される。
【0183】
図14は、弾性のある可撓性の膜として作用する堅固なプレートを有するチャンバ9の内側に働くクランプガスの圧力Pを矢印の形態で、概略的で、実際、非常に誇張して示している。
【0184】
したがって、スタック11を有するSOEC反応器が加圧下で動作している間、チャンバ9の内側のこのガス圧力Pは、機械的支柱15、16、17、18によって受ける伸びを補償する、すなわち、伸びに追従することができる。したがって、この伸びに追従することによって、スタックが反応ガスの内部圧力の下で開くことが防止される。
【0185】
本発明の他の変形形態および利点は、本発明の範囲から逸脱することなく提供することができる。
【0186】
基本ユニットM
1〜Mnのスタックの形態の反応器が、高温水電解に対して説明されてきたが、バランスガスがクランプチャンバ9内を加圧下で同様に循環する、二酸化炭素または二酸化窒素のどちらかと混合された水蒸気の共電解に対しても同じように用いることができる。
【0187】
基本ユニットM
1〜Mnのスタックの形態の反応器が、高温水電解に対して説明されてきたが、SOFC燃料セルとしても同じように用いることができる。この場合、供給チューブ50に燃料、例えば、水素またはメタンが供給され、チューブ52にバランスガスが供給され、チューブ51に空気または酸素が供給される。バランスガスはまた、クランプチャンバ9内を加圧下で通って、同じように循環する。
【0188】
図示のクランプチャンバ9は、カバー90を形成する堅固なプレートと、その底部として働く上部ターミナルプレート33との間の環状の側壁91で構成される。クランプチャンバ9を環状の壁91を使わずに、上部ターミナルプレート33を堅固なプレート90に周溶接によって直接組み付けることによって構成することも可能であり、この場合も、堅固なプレート90はチャンバの内側に確立されたガス圧の下、弾性のある可撓性の膜として作用する。
【0189】
本発明は、上記の例に限定されるものではなく、特に、図示の例の特性は、互いに組み合わせて、図示されていない変形形態にすることができる。
【0190】
「含む(including a)」および「備える(comprising a)」という表現は、それぞれ「少なくとも1つを含む」および「少なくとも1つを備える」として理解されたい。
【符号の説明】
【0191】
1 基本電解セル
2 カソード
2.1 カソード
2.2 カソード
3 電解質
3.1 電解質
3.2 電解質
4 アノード
4.1 アノード
4.2 アノード
5 インターコネクタ
5.1 インターコネクタ
5.2 インターコネクタ
8 絶縁および密閉デバイス
9 クランプチャンバ
10 クランプシステム
11 スタック
12 上部クランププレート
13 下部クランププレート
14 クランプ穴
15 クランプ軸
16 クランプナット
17 クランプワッシャ
17.1 電気絶縁チューブ
18 クランプナット
19 電気絶縁プレート
30 組立体
33 上部ターミナルプレート
34 下部ターミナルプレート
36 電気絶縁フレーム
36.1 内側絶縁くさび
36.2 外側絶縁くさび
37 接触層
38 接触層
39 ガイド柱
40 ガイド穴
50 導管
51 導管
52 導管
53 導管
54 導管
55 導管
61 密閉ガスケット
62 密閉ガスケット
90 カバー
91 側壁
330 導管
C1 電気化学セル
C2 電気化学セル
CA アノード区画
CC カソード区画
E 環状空間
M
1 基本ユニット
Mn 基本ユニット
P 圧力
X 中心軸線