(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854931
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】データを伝送する方法及び通信エンティティを備えるシステム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
H04L12/28 203
H04L12/28 400
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-568126(P2019-568126)
(86)(22)【出願日】2018年8月17日
(65)【公表番号】特表2020-522965(P2020-522965A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2018031259
(87)【国際公開番号】WO2019082493
(87)【国際公開日】20190502
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】17306477.5
(32)【優先日】2017年10月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】マンガン、クリストフ
【審査官】
中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−226565(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2017−0118793(KR,A)
【文献】
特開平10−065667(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0171096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に、又はデイジーチェーン方式で接続されている複数の通信エンティティの間でホップによりデータを伝送する方法であって、前記複数の通信エンティティは、1つのマスタエンティティと複数のスレーブエンティティとを備え、
前記マスタエンティティは、第1のサイクリックイーサネットプロトコルに従ってかつ第2のサイクリックイーサネットプロトコルに従って通信するように構成され、
前記複数のスレーブエンティティは、
前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによる通信をサポートすることができ、前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる通信をサポートすることができないスレーブエンティティの第1のグループと、
少なくとも前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる通信をサポートすることができるスレーブエンティティの第2のグループと、
を含み、
前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルは、前記マスタエンティティから逐次各隣接スレーブエンティティへの通信データによるトークンパッシング伝送により、トークンが再度前記マスタエンティティに達するまで実施され、前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによる第1のサイクルをこのように定義し、前記第1のグループの1つの現エンティティは、イーサネットデータフレームを受信すると、
前記イーサネットデータフレームが前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによる場合、前記イーサネットデータフレームを処理し、処理済みのフレームを前記トークンパッシング伝送に従って伝送し、
又は、前記イーサネットデータフレームが前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる場合、前記イーサネットデータフレームの内容を無視し、単に、前記イーサネットデータフレームをその受信時に次の隣接エンティティに伝送する、
ように構成され、
前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルは、前記第2のグループのエンティティに意図されたデータを含むイーサネットデータフレームを渡すことによって実施され、前記第2のグループの1つの現エンティティは、前記イーサネットデータフレームを受信すると、
前記イーサネットデータフレームから、前記第2のグループの1つの現エンティティに意図されたデータを取得することにより、及び/又は、前記イーサネットデータフレームに、前記第2のグループの他のエンティティに意図されたデータを追加することにより、前記イーサネットデータフレームを変更し、かつ、
このように変更された前記イーサネットデータフレームを、前記イーサネットデータフレームが前記第2のグループの1つの現エンティティに達するまで逐次、隣接エンティティに伝送し、前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる第2のサイクルをこのように定義する、
ように構成され、
前記マスタエンティティは、第1のサイクリックイーサネットプロトコル及び第2のサイクリックイーサネットプロトコル両方による通信をサポートするように構成され、
前記第1のサイクルを開始し、
前記第2のサイクルを開始し、前記マスタエンティティが前記第2のサイクルを開始するのと同時に前記第2のサイクルを開始するように、前記第2のグループにおいて少なくとも1つのスレーブエンティティを選択する、
ように更に構成される、方法。
【請求項2】
前記選択されたスレーブエンティティは前記マスタエンティティから最も遠い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のグループのエンティティは、前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによる前記イーサネットデータフレームの内容を無視し、単に、前記イーサネットデータフレームをその受信時に次の隣接エンティティに伝送するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスタエンティティが新たな第1のサイクルを開始し、
同時に、前記第2のグループの前記選択されたスレーブエンティティが新たな第2のサイクルを開始する、
開始は、前記第1のサイクル及び前記第2のサイクルの最小公倍数に対応する第3のサイクルにより、時間の間隔があけられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記通信エンティティの全ては、「IEEE802.1Qbv」タイプの通信プロトコルを適用するように構成され、前記第3のサイクルは、前記IEEE802.1Qbvタイプのプロトコルのサイクルに対応する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの通信ポートを備える前記複数の通信エンティティの各々は、
前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによるトークン及び/又は前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによるイーサネットデータフレームを、隣接エンティティに対して、前記マスタエンティティに向かう第1の方向に受信/送信するための、アップストリーム通信用の1つのポートと、
前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによるトークン及び/又は前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによるイーサネットデータフレームを、隣接エンティティに対して、前記第1の方向とは反対の第2の方向に受信/送信するための、ダウンストリーム通信用の1つのポートと、
を管理するように構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の通信エンティティの各々は、
前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによるデータ伝送のための第1のトラフィッククラスキューと、
前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによるデータ伝送のため第2のトラフィッククラスキューと、
前記通信エンティティが、実施すべき前記第1のサイクリックイーサネットプロトコル及び前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる伝送を有していないときに伝送すべきデータのためのベストエフォートトラフィッククラスキューと、
を管理するように構成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記通信エンティティは、産業用ネットワークにおいて動作するように構成される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の通信エンティティを備え、前記第1のグループ又は前記第2のグループに属する各通信エンティティは、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実施する論理回路を備える、システム。
【請求項10】
マスタエンティティとして、前記第1のサイクリックイーサネットプロトコル及び前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる伝送を実施する論理回路を備える、請求項9に記載のシステムの通信エンティティ。
【請求項11】
前記第1のグループに属し、前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによる伝送を実施するとともに、前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによるイーサネットデータフレームの内容を無視し、単に前記イーサネットデータフレームを前記イーサネットデータフレームの受信時に次の隣接通信エンティティに伝送する論理回路を備える、請求項9に記載のシステムの通信エンティティ。
【請求項12】
前記第2のグループに属し、前記第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる伝送を実施するとともに、前記第1のサイクリックイーサネットプロトコルによるイーサネットデータフレームの内容を無視し、単に前記イーサネットデータフレームを前記イーサネットデータフレームの受信時に次の隣接通信エンティティに伝送する論理回路を備える、請求項9に記載のシステムの通信エンティティ。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化されたスケジューリング方式を使用するデータ交換に関する。より詳細には、本発明は、第1のサイクリック(cyclic)イーサネット(登録商標)プロトコル及び第2のサイクリックイーサネットプロトコルの両方に従って、例えば、第2のプロトコルが第1のプロトコルの更新バージョン(又は次世代)である場合に、データ交換をインターリーブする方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
本発明の主な原理を提示する前に、以下、例えば、標準規格IEEE802.1Qbvにおいて指定されたスケジューリング方式を使用する、通常のサイクリックイーサネットプロトコル(上に定義した「第1の」プロトコル)の動作原理を想起する。
【0003】
典型的な通常のサイクリックイーサネットプロトコルネットワークは、単一の制御ステーション(マスタ)と複数のスレーブステーション(スレーブ)とからなる。媒体アクセス制御は、トークンパッシング方式に基づく。
図1を参照すると、マスタMは、ネットワークを管理し、ネットワークにおける第1のスレーブステーションS1にトークンを送信することによりトークンパッシングシーケンスを開始する。参照符号TOKは、スレーブエンティティがトークンホルダーとなる状況(逐次S1、S3、S2、及びMに戻る)を示す。トークンを受信するスレーブステーションS1は、その伝送を実施し、その後、そのシーケンスにおける次のステーションS2にトークンを渡し、以下続く。
【0004】
最後のスレーブステーションは、プロセスを完了した後(
図1の戻り矢印によって示す参照符号S1)、マスタMにトークンを返し、シーケンス全体が再度開始する。トークンパッシングシーケンス全体を実施するために必要な時間は一定であり、以下「リンクスキャン」LSと呼ぶ1つのサイクルを構成する。
【0005】
当然ながら、そのイーサネットプロトコルは、データ転送のために標準イーサネットフレームを使用する。通常、
図2に示すように、以下の3つのタイプのフレームが定義される。
−伝送制御フレーム
−サイクリック伝送フレーム、及び
−トランジェント伝送フレーム。
【0006】
通常のプロトコルは、一般に、以下の3つの通信フェーズを含む。
A.トークンパッシングルート、すなわちスレーブがトークンを保持するシーケンスを確立するためにマスタによって使用される初期化フェーズ、その間、
a.マスタは、スレーブを発見し、
b.マスタは、スレーブに関する情報を収集し、
c.マスタは、トークンパッシングルート情報を分散させ、
d.マスタは、パラメータを分散させ、
e.マスタは、スレーブにパラメータを反映するように要求し、
f.マスタは、スレーブによって反映されたパラメータを検査する。
B.実際のデータ交換フェーズに対応するリフレッシュフェーズ、その間、
g.マスタは、全てのスレーブにデータをブロードキャストすることによりリンクスキャンを開始し、特定のスレーブにトークンをアドレス指定し、
h.各ノード(スレーブ)は、トークンを受信した後、ステータスフレームを送信し、
i.次いで、サイクリックフレーム(複数の場合もある)を送信し、
j.次いで、非サイクリックフレーム(複数の場合もある)を送信し、
k.最後に、次のトークンホルダーにトークンフレームを送信する。
C.新たなノードが検出されトークンパッシング方式に含められる、戻りフェーズ。戻りフェーズの開始は、マスタによって判断される。
【0007】
実際のプロセスデータ交換は、リフレッシュフェーズ中に行われる。
図3に示すように、各ノードのサイクリック伝送のサイズは、実行中、一定である。ノード毎の非サイクリックフレームのボリュームも、実行中、同様に一定である。
図3を参照すると、スレーブデバイスは、トークンを受信した後、最初に、そのステータスフレーム、次いで、1つ以上のサイクリック伝送フレームを送信し、任意選択的に、その後、(いわゆる「トランジェント通信」のために)非サイクリックフレームを送信する。サイクルタイム違反を回避するために、ノード及びサイクル毎の非サイクリックフレームの数を制限することができる。最後に、ノードは、次のトークンホルダーにトークンフレームを送信する。
【0008】
全てのフレームがブロードキャストされ、すなわち、2つのポートを有するノードが両ポートに全てのフレームを送信し、ハブのように(ブロードキャストMACアドレスを利用して)スイッチが使用される。
【0009】
プロトコルは、最大プロセスデータサイズとともに、非サイクリック通信のサポート等の特徴により異なる、異なるノードタイプを識別することができる。これらには、
−128ビットのサイクリックI/Oデータ(加えてレジスタデータ)に制限され、非サイクリック通信におけるクライアント機能をサポートしない「リモートデバイスステーション」、
−64ビットのサイクリックI/Oデータ(レジスタデータなし)に制限され、非サイクリック通信を全くサポートしない「リモートI/Oステーション」
がある。
【0010】
そのタイプのサイクリックイーサネットプロトコルは、例えば、フィールド通信、すなわち、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を、センサ、アクチュエータ、電気モーター、コンソール照明、スイッチ、バルブ及び接触器等、動作を実施する構成要素にリンクする製造組立ラインの制御チェーンの基礎にある通信に専用の産業用通信プロトコルとして使用することができる。
【0011】
その第1の通常のサイクリックイーサネットプロトコルの一例は、IEC参照61158−4−23(データリンク層、タイプ23)とすることができる。
【0012】
通常、標準規格IEEE802.1Qbvにおいて指定されたスケジューリング方式を使用する通常のサイクリックイーサネットプロトコルのあり得る展開は、最終的にいかなるトークンルートも確立される必要がない次のプロトコル世代につながる可能性がある。こうした次世代プロトコルの例は、SERCOS III、又はEtherCATとすることができる。ソースと宛先との間で交換される単一データに対してイーサネットフレームを専用とする代わりに、その種の「第2のサイクリックイーサネットプロトコル」は、複数のデータを連結して単一のイーサネットフレームにすることができる。通常、マスタMがスレーブS1、S2及びS3に送信すべきデータを有する場合、3つのそれぞれのデータセットは同じフレームで伝送され、このフレームがスレーブS1、S2及びS3にブロードキャストされる。
図4Aを参照すると、その後、各受信側(S1)は、フレームから、そのスレーブ(S1)にアドレス指定されたデータを抽出し(M→S1)、より短いパケットをその隣接スレーブ(S2)に中継する。対照的に、
図4Bを参照すると、送信側(S2)は、その過程で、その送信側を通過する既存のフレームにその送信側のデータを挿入し(S2→M)、又は、必要な場合は新たなフレームを作成する(
図4A及び
図4Bの例では、スレーブエンティティS1に対して「ヘッダ、S1→M、FCS」)。
【0013】
回線に沿った両方向のデータ交換は、依然としてサイクルで編成され、すなわち、1サイクル内で、マスタとスレーブとの間で交換されるデータを含むフレームが、その方向に関わらず、回線の一端から他端まで伝送される。
【0014】
回線トポロジーでは、アップストリーム方向及びダウンストリーム方向における伝送は同時に実行することができる。
図4A及び
図4Bは、1つのマスタM及び3つのスレーブS1、S2、S3を備えた回線配置でダウンストリーム動作及びアップストリーム動作の両方を実際に別個に示す。
【0015】
この通信方式は、以前のプロトコルより通信媒体をはるかに効率的に利用し、より短いサイクル(又は同義の「リンクスキャン」)を可能にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、第1のプロトコル及び第2のプロトコルの両方を、各プロトコルに排他的に専用のタイムスロットを確保することによって多重化することにより、第2のプロトコルのサイクルが第1のプロトコルのリンクスキャンLSの持続時間によって決まることになり、それは、第2のプロトコルの制御ループ性能にあり得る制限を課す。
【0017】
本発明は、この状況を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このために、本発明は、通信エンティティの間でホップによりデータを伝送する方法であって、上記通信エンティティは、
−第1のサイクリックイーサネットプロトコルに従ってかつ第2のサイクリックイーサネットプロトコルに従って通信するように構成された1つのマスタエンティティと、
−複数のスレーブエンティティであって、
−上記第1のプロトコルによる通信をサポートすることができ、上記第2のプロトコルによる通信をサポートすることができないスレーブエンティティの第1のグループと、
−少なくとも上記第2のプロトコルによる通信をサポートすることができるスレーブエンティティの第2のグループと、
を含む、複数のスレーブエンティティと、
を備える、方法を提案する。
【0019】
第1のプロトコルは、マスタエンティティから逐次各隣接スレーブエンティティへの通信データによるトークンパッシング伝送により、トークンが再度マスタエンティティに達するまで実施され、(一例に関して詳細に後述する一実施形態においていわゆる「リンクスキャン」に対応する)第1のプロトコルによる第1のサイクルをこのように定義する。より詳細には、第1のグループの1つの現エンティティは、イーサネットデータフレームを受信すると、
−イーサネットデータフレームが第1のプロトコルによる場合、上記データフレームを処理し、トークンパッシング伝送に従って処理済みフレームを伝送し、
−又は、イーサネットデータフレームが第2のプロトコルによる場合、データフレームの内容を無視し、単に、上記データフレームを、その受信時に次の隣接エンティティに伝送する、
ように構成される。
【0020】
第2のプロトコルは、上記第2のグループのエンティティに意図されたデータを含むイーサネットデータフレームを(トークンなしに直接)渡すことによって実施され、第2のグループの1つの現エンティティは、上記イーサネットデータフレームを受信すると、
−上記データフレームから、上記現エンティティに意図されたデータを取得することにより、及び/又は、上記データフレームに、上記第2のグループの他のエンティティに意図されたデータを追加することにより、上記データフレームを変更し、かつ、
−このように変更されたデータフレームを隣接エンティティに、データフレームが上記現エンティティに達するまで逐次伝送し、上記第2のプロトコルによる第2のサイクルをこのように定義する、
ように構成される。
【0021】
これらの第1のプロトコル及び第2のプロトコルがサイクリックであるため、これらのエンティティの全てを、通常のサイクリックイーサネットプロトコルを動作させる任意のネットワークにおけるように、直列に、又はデイジーチェーン方式で接続することができる。
【0022】
より詳細には、マスタエンティティは、第1のプロトコル及び第2のプロトコル両方による通信をサポートするように構成され、
−第1のサイクルを開始し、
−第2のサイクルを開始し、マスタエンティティが第2のサイクルを開始するのと同時に第2のサイクルを開始するように、第2のグループにおいて少なくとも1つのスレーブエンティティを選択する、
ように更に構成される。
【0023】
一実施形態では、選択されたスレーブエンティティは、マスタエンティティから最も遠い。
【0024】
例えば、その選択されたエンティティは、その選択されたエンティティからマスタに達するためのエンティティの間のホップの数に従ってマスタエンティティから最も遠いものとして定義することができる。代替例として、選択されたエンティティは、マスタとの通信リンクのフェージングの測定に従って選択することができる。
【0025】
上述したように、上記第1のグループのエンティティは、第2のプロトコルによるデータフレームの内容を無視し、単に、上記データフレームをその受信時に次の隣接エンティティに伝送するように構成され、逆に、同じ実施形態において、又は代替実施形態において、上記第2のグループのエンティティは、第1のプロトコルによるデータフレームの内容を無視し、単に、上記データフレームをその受信時に次の隣接エンティティに伝送するように構成される。
【0026】
したがって、上記通信エンティティの各々は、次に、少なくとも2つの通信ポートを備えることができ、より詳細には、
−上記第1のプロトコルによるトークン及び/又は上記第2のプロトコルによるデータフレームを、隣接エンティティに対して、マスタエンティティに向かう第1の方向に受信/送信するための、アップストリーム通信用の1つのポートと、
−上記第1のプロトコルによるトークン及び/又は上記第2のプロトコルによるデータフレームを、隣接エンティティに対して、上記第1の方向とは反対の第2の方向に受信/送信するための、ダウンストリーム通信用の1つのポートと、
を管理するように構成することができる。
【0027】
一実施形態では、
−マスタエンティティが新たな第1のサイクルを開始し、
−同時に、第2のグループの選択されたスレーブエンティティが新たな第2のサイクルを開始する、
瞬間は、第1のサイクル及び第2のサイクルの最小公倍数に対応する第3のサイクルにより、時間の間隔があけられる。
【0028】
通信エンティティの全ては、例えば「IEEE802.1Qbv」タイプの通信プロトコルを適用するように構成することができ、上述した第3のサイクルは、上記IEEE802.1Qbvタイプのプロトコルのサイクルに対応する。
【0029】
一実施形態では、上記通信エンティティの各々は、
−上記第2のプロトコルによるデータ伝送のための第1のトラフィッククラスキュー(エンティティが第2のグループに属する場合、入って来るデータを取得し、残りのデータを中継し、又は、エンティティが第1のグループに属する場合、単にデータを中継する)と、
−上記第1のプロトコルによるデータ伝送のための第2のトラフィッククラスキュー(エンティティが第1のグループに属する場合、入って来るデータを取得し、残りのデータを中継し、又は、エンティティが第2のグループに属する場合、データを中継するのみである可能性がある)と、
−通信エンティティが、実施すべき上記第1のプロトコル及び上記第2のプロトコルによる伝送をそれ以上有していないときに伝送すべきデータのためのベストエフォートトラフィッククラスキューと、
を管理するように構成することができる。
【0030】
あり得る有利な(ただし限定しない)応用は産業用ネットワークであり、上記通信エンティティは、産業用ネットワークにおいて動作するように構成することができる。
【0031】
本発明はまた、複数の通信エンティティを備え、上記第1のグループ又は上記第2のグループに属する各エンティティは、本発明による方法を実施する論理回路を備える、システムも目的とする。
【0032】
本発明はまた、マスタエンティティとして、上記第1のプロトコル及び上記第2のプロトコルによる伝送を実施する論理回路を備える、そのシステムの通信エンティティも目的とする。
【0033】
本発明はまた、上記第1のグループに属し、したがって、上記第1のプロトコルによる伝送を実施するとともに、第2のプロトコルによるデータフレームの内容を無視し、単に上記データフレームを当該データフレームの受信時に次の隣接エンティティに伝送する論理回路を備える、そのシステムの通信エンティティも目的とする。
【0034】
本発明はまた、上記第2のグループに属し、上記第2のプロトコルによる伝送を実施するとともに、第1のプロトコルによるデータフレームの内容を無視し、単に上記データフレームを当該データフレームの受信時に次の隣接エンティティに伝送する論理回路を備える、そのシステムの通信エンティティも目的とする。
【0035】
本発明はまた、プロセッサによって実行されると、本発明による方法を実施する命令を含む、コンピュータプログラムも目的とする。そのコンピュータプログラムの全体的なアルゴリズムは、後述する
図9のチャートフローによって示すことができる。
【0036】
本発明は、添付図面の図に、限定としてではなく例として示される。添付図面において、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】第1のタイプのサイクリックイーサネットプロトコルによる通信原理を概略的に示す図である。
【
図2】
図1のプロトコルのフレームタイプを概略的に示す図である。
【
図3】
図1のプロトコルによる通信タイムラインを概略的に示す図である。
【
図4A】第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる通信原理を概略的に示す図である。
【
図4B】第2のサイクリックイーサネットプロトコルによる通信原理を概略的に示す図である。
【
図5】第1のプロトコル及び第2のプロトコルの両方の多重化を含む本発明による通信原理を概略的に示す図である。
【
図6】IEEE802.1Qbv仕様によるプロトコルの一例によるスケジューラーを備えた2ポートイーサネットスイッチを概略的に示す図である。
【
図7】本発明に関連する802.1Qbv伝送制御実施態様を概略的に示す図である。
【
図8】第1のプロトコル及び第2のプロトコル両方の混合通信タイムラインを概略的に示す図である。
【
図9】本発明による通信エンティティによって実施することができるステップを示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態による通信エンティティを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、伝統的なサイクリックイーサネットプロトコル(上述した「第1のプロトコル」)による通信のために確保されたタイムスロットであって、あり得る次世代プロトコル(上述した「第2のプロトコル」)による通信が「休止した(silent)」ままであるタイムスロットを提供する必要をなくす、多重化方式を提案する。
【0039】
図5に示す主な原理として、第1のプロトコル及び第2のプロトコル両方による通信はインターリーブされる。より詳細には、第2のプロトコルのサイクルは、第1のプロトコルによるサイクルリンクスキャンLS全体に含まれる。
【0040】
ここで、マスタエンティティMは、2つのプロトコル両方を扱うことができる。第2のプロトコルをサポートすることができるスレーブエンティティはNGS、すなわちS2及びS3と参照し、一方で、エンティティS1及びS4は第1のプロトコルのみをサポートすることができる。
【0041】
マスタMは、第1のプロトコルによるリンクスキャンを開始するが、
−トークンTOKを含む、第1のプロトコルによるフレーム、及び
−第2のプロトコルによるフレーム、
の両方を送信する。
【0042】
スレーブエンティティS1は、
図5の例では新世代プロトコルをサポートすることができないため、単に、第2のプロトコルによるマスタMから受信したフレームを無視し、このフレームを利用するその隣接スレーブエンティティS2に伝送する。しかしながら、スレーブエンティティS1は、マスタMから第1のプロトコルによるフレームにおけるトークンTOKを取得し、そのフレームの内容を利用する。
【0043】
マスタエンティティMがリンクスキャンLSを開始する間、
−マスタMから最も遠く(例えば、それらの間のホップ数、又はマスタMとの通信リンクのフェージングの測定による)、かつ
−新世代プロトコル(第2のプロトコル)をサポートする、
スレーブエンティティS3も、第2のプロトコルによる通信を開始する。
【0044】
一般的に、新世代プロトコルによる通信をサポートしないスレーブエンティティは、単に、その新世代プロトコルによるフレームを無視し、それらの隣接エンティティにそうしたフレームを渡す。しかしながら、他のスレーブエンティティNGSは、
図5においてエンティティS2からエンティティS3への矢印に示すように、それらのNGSに対して意図される新世代プロトコルデータによるフレームを取り込むことができる。
【0045】
このため、
図5の例に示す通信方式は、第1のプロトコルのリンクスキャンが変化しないままである一方で、第2のプロトコルのサイクルをトランスペアレントに短く維持することができる。
【0046】
より詳細には、以下、混合した第1のプロトコル及び第2のプロトコルネットワークに参加しているエンティティの全てが、IEEE802.1Qbv対応であると想定する。第1のプロトコルのノードにおけるQbv実装のために、その回線の各ノードは、1つのアップストリームポートU及び1つのダウンストリームポートDを有する2ポートイーサネットスイッチとみなすことができる。
図6に、各ポートの詳細を示す。各ポートの送信側Tx(及び受信の場合は「Rx」)は、802.1Qbvに基づく伝送選択方式によって制御される。
図7は、3つのクラスのトラフィックC1、C2及びC3によるQbv伝送制御実装を詳述し、それらのトラフィックは、それぞれ、第2のプロトコルの伝送、第1のプロトコルの伝送及びベストエフォート伝送をマッピングするために使用することができる。各トラフィッククラスは、ポートのゲート制御リストによって制御されるQbv伝送ゲートに関連する。ゲート制御リストは、各トラフィッククラスデータの、ポートを通じての伝送に専用の期間を実施する。
【0047】
ゲート制御リストの深さ(時間)は、最終的にQbvサイクルの持続時間に対応する。
【0048】
この実施態様において、ポートを通じてC1(第2のプロトコル)トラフィックもC2(第1のプロトコル)トラフィックも伝送されない期間を使用して、C3トラフィック(ベストエフォート)に対して伝送機会が与えられる。
【0049】
C3トラフィックに割り付けられた伝送資源の使用を更に最適化するために、IEEE802.1Qbu/802.3brに従って、C3トラフィックのプリエンプション及びセグメンテーションを実施することができる。
【0050】
クラスC3トラフィックに提供されるスロットは、任意のタイプの通信データ(TCP、UDP等)を含むことができる。
【0051】
ここでIEEE802.1Qbvスケジュールの編成に関して、両プロトコルタイプの通信のインターリーブは、
・第2のプロトコルのタイムトリガーサイクル:本明細書及び
図8において「2PTGサイクル」と呼ぶ、
・第1のプロトコルのトークンパッシングサイクル:上述したリンクスキャンに対応し、以下及び
図8において「1PTPサイクル」と呼ぶ、
に基づいて計算することができるIEEE802.1Qbvスケジュールを使用して確立される。
【0052】
第1の近似では、802.1Qbvサイクルは、2PTGサイクル及び1PTPサイクルの最小公倍数として定義することができる。
【0053】
図5の通信混合例に基づき、
図8のタイムラインは、
図8の通信パターンが得られるように各アップストリームポート及びダウンストリームポートに構成されたゲート制御リストによる3つのトラフィッククラスの多重化を示す。
【0054】
ここで
図9を参照すると、ステップST1において、現スレーブエンティティにおいてイーサネットフレームが受信されると、ステップST2において、このイーサネットフレームが第2のプロトコルによるフレームである(矢印Y)か又は第2のプロトコルによるフレームでない(矢印N)かが判断される。第1の場合(矢印Y)、ステップST3において、その現スレーブエンティティが第2のプロトコルをサポートする(矢印Y)か又はサポートしない(矢印N)かが判断される。第1の場合(矢印Y)では、現スレーブエンティティは、ステップST4においてフレームを処理し、その後、ステップST5において、処理済みフレームをその次の隣接エンティティに伝送する。そうでない場合(テストST3からの矢印N)、現スレーブエンティティは、単に、ステップST6において、第2のプロトコルによるフレームをいかなる変更もなしにその次の隣接エンティティに転送する。
【0055】
受信されたイーサネットフレームが、第2のプロトコルによるフレームではなく、第1のプロトコルによるフレームである場合(ステップST7からの矢印Y)、現スレーブエンティティは、ステップST8においてフレームを処理し、ステップST9においてトークンパッシング伝送に従って処理済みフレームを伝送することができる。
【0056】
第1のプロトコル及び/又は第2のプロトコルによるフレーム(複数の場合もある)が処理されると、現スレーブエンティティがアイドルである(矢印Y)か又はアイドルでない(矢印N)かを判断するようにテストST11が実施される。第1の場合(矢印Y)、ステップST12において、ベストエフォートトラフィッククラスデータを処理することができる。そうではなく(テストST11からの矢印N)、第1のプロトコル又は第2のプロトコルによる新たなフレームが受信され、最初に、
図7に示す伝送スケジュール制御に従って処理される必要がある場合、プロセスはステップST1に戻る。
【0057】
したがって、本発明は、現行のサイクリックイーサネットプロトコルと将来のサイクリックイーサネットプロトコルとの間の性能効率の高い移行及び/又は共存を提案する手段を提供する。
【0058】
ここで
図10を参照すると、通信エンティティ(マスタ又はスレーブ)は、
−本発明によるコンピュータプログラムを記憶するメモリMEMと協働する、プログラムされたASIC又はより一般的には任意のプロセッサPROCを備える論理回路と、
−それに接続された、送信Tx及び受信Rx両方のための、2つの、アップストリーム通信用のポートU及びダウンストリーム通信用のポートDと、
を備える。
【0059】
したがって、本発明は、本明細書に記載した方法の実施を可能にする特徴の全てを備え、情報処理システム(例えば、一組の通信エンティティ)にロードされると、情報処理システムに本発明を実行させる、コンピュータプログラム製品(そのアルゴリズムは
図9を参照して上述した)に組み込むことができる。この文脈におけるコンピュータプログラム手段又はコンピュータプログラムは、情報処理能力を有するシステムが直接、又は別の言語への変換後に特定の機能を実行するように意図される1組の命令に関する、任意の言語、コード又は表記における任意の表現を意味する。そのようなコンピュータプログラムは、データ、命令、メッセージ又はメッセージパケット及び他の機械可読情報を媒体から読み出すことができるようにする、コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体上に記憶することができる。コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体は、ROM、フラッシュメモリ、ディスクドライブメモリ、DVD又はCD−ROM及び他の永久記憶装置のような不揮発性メモリを含むことができる。さらに、コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体は、例えば、RAM、バッファ、キャッシュメモリ、及びネットワーク回線のような揮発性記憶装置を含む場合がある。さらに、コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体は、有線ネットワーク又は無線ネットワークを含む、ネットワークリンク及び/又はネットワークインターフェースのような一時的状態の媒体内にあるコンピュータ可読情報又は機械可読情報を含むことができ、デバイスがそのようなコンピュータ可読情報又は機械可読情報を読み出すことができるようになる。
【0060】
現時点で本発明の好ましい実施形態であるとみなされるものが図示及び説明されてきたが、本発明の真の範囲から逸脱することなく、種々の他の変更を加えることができること、及び代わりに均等物を用いることができることは当業者には理解されよう。さらに、本明細書において記述される中心的な発明の概念から逸脱することなく、特定の状況を本発明の教示に適合させるように数多くの変更を加えることができる。さらに、本発明の実施形態は、上記の特徴の全てを含むとは限らない場合がある。それゆえ、本発明は開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲で広く定義されたように本発明の範囲内に入る全ての実施形態を含むことを意図している。