特許第6854939号(P6854939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6854939杭体継手、杭体連結構造及び杭体連結方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854939
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】杭体継手、杭体連結構造及び杭体連結方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20210329BHJP
   E02D 5/28 20060101ALI20210329BHJP
   E02D 7/20 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   E02D5/24 103
   E02D5/28
   E02D7/20
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-21278(P2020-21278)
(22)【出願日】2020年2月12日
(65)【公開番号】特開2020-133391(P2020-133391A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2019-22622(P2019-22622)
(32)【優先日】2019年2月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌彦
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−195330(JP,U)
【文献】 特開2016−023520(JP,A)
【文献】 特開2014−227688(JP,A)
【文献】 特開2016−108847(JP,A)
【文献】 特開平09−100534(JP,A)
【文献】 特開2011−132702(JP,A)
【文献】 特開2015−007338(JP,A)
【文献】 特開2016−044476(JP,A)
【文献】 特開2017−186795(JP,A)
【文献】 実開平04−122733(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/046748(WO,A1)
【文献】 特開2003−090034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/24
E02D 5/28
E02D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の杭体を連結する杭体継手であって、
突部が周面に設けられた前記杭体が端部から嵌め込まれる管状の本体部と、
前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合するように、前記本体部に形成される嵌合部と、
を備え、
前記嵌合部は、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、及び、前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成され
前記第2形状は、前記杭体の長軸方向に交差する方向に形成される、
杭体継手。
【請求項2】
前記嵌合部は、前記第1形状を形成する前記面に前記第2形状が形成される請求項1記載の杭体継手。
【請求項3】
前記杭体には、周方向に非等角度間隔で配置された複数の前記突部が設けられ、
前記本体部には、複数の前記突部に対応する複数の前記嵌合部が形成される請求項1又は請求項2記載の杭体継手。
【請求項4】
前記本体部は、少なくとも前記嵌合部を覆う補強部材が設けられる請求項1から請求項の何れか1項記載の杭体継手。
【請求項5】
前記補強部材に固定され、前記突部が前記嵌合部から外れることを防止する外れ防止部材を備える請求項記載の杭体継手。
【請求項6】
前記補強部材は、前記嵌合部への前記突部の挿入を確認するための孔が形成される請求項又は請求項記載の杭体継手。
【請求項7】
前記嵌合部は、前記杭体の軸線方向に複数の前記第1形状、又は、複数の前記第2形状が形成される請求項1から請求項の何れか1項記載の杭体継手。
【請求項8】
突部が周面に設けられた杭体と、
前記杭体が端部から嵌め込まれ、前記杭体の周面を覆う管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手と、
を備える杭体連結構造。
【請求項9】
前記突部は、平面状であり、平面内側が中抜きされている請求項8記載の杭体連結構造。
【請求項10】
前記杭体継手によって連結される2本の前記杭体のうち一方の前記杭体は、地中に埋設される前記杭体であり、
他方の前記杭体は、前記一方の杭体を埋設するために補助的に用いられる杭体であり、前記一方の杭体の上方に配置される、請求項8又は請求項9記載の杭体連結構造。
【請求項11】
突部が周面に設けられた杭体が端部から嵌め込まれ、前記杭体の周面を覆う管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手によって2本の前記杭体を連結する杭体連結方法であって、
前記杭体を埋設する第1工程と、
前記埋設された前記杭体に対して他の前記杭体を立て、2本の前記杭体が前記杭体継手によって嵌合するように他の前記杭体を回転させる第2工程と、
を有する杭体連結方法。
【請求項12】
突部が周面に設けられた杭体が端部から嵌め込まれ、前記杭体の周面を覆う管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手によって、第1杭体と第2杭体とを連結する杭体連結方法であって、
前記第2杭体を圧入機が備える第2把持手段によって把持する第1工程と、
前記第1杭体を前記圧入機が備える第1把持手段によって把持する第2工程と、
前記第1杭体と前記第2杭体との端部が当接するように前記第1把持手段を移動させ、前記第1把持手段又は前記第2把持手段を回転させることで、前記第1杭体と前記第2杭体とを前記杭体継手で連結する第3工程と、
を有する杭体連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭体継手、杭体連結構造及び杭体連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設する杭体に十分な長さがない場合には、複数の杭体を連結して埋設する場合がある。
【0003】
ここで、杭体を溶接によって連結する溶接継ぎでは、埋設現場での溶接作業に時間を要し、かつ溶接部の検査も必要であるため、多くの時間と労力を要する。また、埋設現場の天候や溶接工の技量によっても溶接の品質にばらつきが生じる可能性があり、さらに、空頭制限等の現場条件によっては杭体同士の溶接自体ができない場合がある。
【0004】
一方、埋設現場での溶接作業を伴わない機械式継手として、例えば、特許文献1には、複数の円筒堀作部材を円筒状のジョイント部材で連結することが開示されている。この円筒堀作部材には一端部の外周に爪が凸設され、ジョイント部材は上記爪を嵌合、位置決めをする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−40088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、円筒堀作部材の爪とジョイント部材とが嵌合して位置決めが行われるものの、連結させる円筒堀作部材を強固に一体化するものではない。
【0007】
そこで本発明は、連結させる杭体を強固に一体化できる、杭体継手、杭体連結構造及び杭体連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の杭体継手は、2本の杭体を連結する杭体継手であって、突部が周面に設けられた前記杭体が端部から嵌め込まれる管状の本体部と、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合するように、前記本体部に形成される嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は、前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される。
【0009】
本構成によれば、嵌合部には、杭体の回転方向で本体部の端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状が形成されているので、杭体を杭体継手に嵌め込んで回転させると、杭体は嵌め込まれた方向、換言すると杭体継手で連結される他方の杭体の方向に進む。この結果、連結される2本の杭体の端部同士が当接し、かつ嵌合部の傾斜した面とこれに対向する突部の面も当接し、2本の杭体と杭体継手とで締まり合う。このように嵌合部に形成された第1形状により、連結される2本の杭体と杭体継手とを強固に一体化できる。
【0010】
また、嵌合部には、突部と杭体との間に嵌入する第2形状が形成されるので、突部と嵌合部とに所謂クサビ効果を生じさせ、例えば、埋設している杭体を引き抜く場合に発生する可能性のある突部と嵌合部とのズレの発生を防止できる。このように嵌合部に形成された第2形状により、杭体と杭体継手とを強固に一体化できる。
【0011】
本発明の杭体継手は、前記嵌合部に前記第1形状を形成する前記面に前記第2形状が形成されてもよい。本構成によれば、連結される2本の杭体と杭体継手とをより強固に一体化できる。
【0012】
本発明の杭体継手は、前記突部が平面状であり、平面内側が中抜きされてもよい。突部の外周を溶接して突部を杭体に設けるとビード(溶接痕)が突部の外周に生じ、ビードが突部と嵌合部との嵌合の障害となる可能性がある。本構成によれば、中抜きされている平面内側を溶接することでビードが平面内側に形成されることになり、ビードが突部と嵌合部との嵌合の障害となることを防止できる。
【0013】
本発明の杭体継手は、前記杭体には、周方向に非等角度間隔で配置された複数の前記突部が設けられ、前記本体部には、複数の前記突部に対応する複数の前記嵌合部が形成されてもよい。本構成によれば、杭体に対して相対的に高い強度を与えたい横断面方向の位置に突部を設けることで、連結した杭体の強度を簡易な構成で高めることができる。
【0014】
本発明の杭体継手は、前記本体部に少なくとも前記嵌合部を覆う補強部材が設けられてもよい。本構成によれば、本体部における嵌合部が形成された領域は相対的に強度が低下するので、低下した強度を補強部材によって高めることができる。
【0015】
本発明の杭体継手は、前記補強部材に固定され、前記突部が前記嵌合部から外れることを防止する外れ防止部材が備えられてもよい。本構成による外れ防止部材の補強部材への固定手法は例えばボルト留めや、外れ防止部材に形成されたピンを補強部材に形成された穴に挿入する手法であり、これにより嵌合部から杭体に設けられた突部が外れることを確実に防止できる。
【0016】
本発明の杭体継手は、前記補強部材に前記嵌合部への前記突部の挿入を確認するための孔が形成されてもよい。本構成によれば、補強部材が設けられても嵌合部への突部の挿入状態を作業者が目視で確認できる。
【0017】
本発明の杭体継手は、前記嵌合部に前記杭体の軸線方向に複数の前記第1形状、又は、複数の前記第2形状が形成されてもよい。本構成によれば、第1形状又は第2形状が一つの嵌合部に複数形成されるので、連結させる杭体を強固に一体化できる。
【0018】
本発明の杭体継手は、前記2本の杭体のうち一方の前記杭体は、地中に埋設される前記杭体であり、他方の前記杭体は、前記一方の杭体を埋設するために補助的に用いられる杭体であり、前記一方の杭体の上方に配置されてもよい。本構成によれば、一方の杭体の埋設を補助するために用いられる他方の杭体を杭体継手によって連結することで、杭体を吊り下げることなく埋設できる。
【0019】
本発明の杭体連結構造は、突部が周面に設けられた杭体と、前記杭体が端部から嵌め込まれる管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手と、を備える。本構成によれば、連結される2本の杭体と杭体継手とをより強固に一体化できる。
【0020】
本発明の杭体連結方法は、突部が周面に設けられた杭体が端部から嵌め込まれる管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手によって2本の前記杭体を連結する杭体連結方法であって、前記杭体を埋設する第1工程と、前記埋設された前記杭体に対して他の前記杭体を立て、2本の前記杭体が前記杭体継手によって嵌合するように他の前記杭体を回転させる第2工程と、を有する。本構成によれば、連結される2本の杭体と杭体継手とをより強固に一体化できる。
【0021】
本発明の杭体連結方法は、突部が周面に設けられた杭体が端部から嵌め込まれる管状の本体部を有し、前記杭体を嵌め込んで回転させることで前記突部に嵌合する嵌合部に、前記杭体の回転方向で前記本体部の前記端部から離れるように傾斜する面を有する第1形状、又は前記突部と前記杭体との間に嵌入する第2形状が形成される杭体継手によって、第1杭体と第2杭体とを連結する杭体連結方法であって、前記第2杭体を圧入機が備える第2把持手段によって把持する第1工程と、前記第1杭体を前記圧入機が備える第1把持手段によって把持する第2工程と、前記第1杭体と前記第2杭体との端部が当接するように前記第1把持手段を移動させ、前記第1把持手段又は前記第2把持手段を回転させることで、前記第1杭体と前記第2杭体とを前記杭体継手で連結する第3工程と、を有する。本構成によれば、第1把持手段と第2把持手段で各々の杭体を把持しながら、杭体継手で2本の杭体を連結させるので、2本の杭体の連結をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、連結させる杭体を強固に一体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の杭体及びジョイントの外観図であり、(a)はジョイントの横断面図、(b)はジョイントの側面図、(c)は杭体の横断面図、(d)は杭体の側面図である。
図2】第1実施形態の杭体及びジョイントの連結方法を示す図であり、(a)はジョイントに杭体を挿入する工程、(b)はジョイントに対して杭体を回転させる工程を示す図である。
図3】第1実施形態のキーと嵌合部とが嵌合した状態を示す拡大図である。
図4】第1実施形態の杭体におけるキーが設けられた部分及びジョイントにおける嵌合部が形成された部分の縦断面図であり、(a)は杭体とジョイントを個別に示した図、(b)は杭体とジョイントを連結した状態を示す図である。
図5】第1実施形態の2本の杭体を連結する際に杭体及びジョイントの荷重伝達個所を示す図であり、(a)は杭体の圧入時の荷重伝達箇所を示し、(b)は埋設されている杭体の引き抜き時の荷重伝達箇所を示し、(c)は杭体の回転時の荷重伝達箇所を示す。
図6】第1実施形態の2本の杭体を連結させて圧入機を用いて埋設する場合の工程を示す図であり、(a),(b)は一方の杭体にジョイントを嵌め込む工程を示し、(c)は2本の杭体がジョイントによって連結するように杭体を回転させる工程を示す。
図7】第1実施形態の補強部材の外観図である。
図8】第1実施形態の杭体及びジョイントの連結方法を示す図であり、(a)はジョイントに杭体を挿入する工程、(b)はジョイントに対して杭体を回転させる工程を示す図である。
図9】第1実施形態のストッパを示す図であり、(a)はジョイントと杭体とを連結した後のストッパの挿入状態を示し、(b)はストッパの外観図、(c)は片持ちスプリングバックによるピンの位置変動を示す図である。
図10】第1実施形態のストッパの変形例を示す図であり、(a)はジョイントと杭体とを連結した後のストッパの挿入状態を示し、(b)はストッパの外観図である。
図11】第1実施形態の杭体及びジョイントの変形例の外観図である。
図12】第1実施形態の杭体及びジョイントの変形例の外観図である。
図13】第2実施形態の杭体及びジョイントの外観図である。
図14】第3実施形態の圧入機を用いて杭体を埋設する場合の工程を示す図であり、(a)は下杭と簡易打ち下げ装置とを連結して圧入機がジョイント部分を把持している状態を示し、(b)は下杭と簡易打ち下げ装置とを連結して圧入機が下杭を埋設している状態を示し、(c)は下杭と上杭とを連結して圧入機が下杭をさらに埋設している状態を示す。
図15】第3実施形態の圧入機のチャックに備えられる段付爪の側面図である。
図16】第4実施形態の圧入機を用いて杭体を埋設する場合の工程を示す図であり、(a)はサブチャックで下杭を把持しメインチャックで上杭を把持した状態を示し、(b)は上杭のジョイントに下杭のキーを挿入した状態を示し、(c)は上杭を回転させて下杭のキーを上杭のジョイントに嵌合させた状態を示し、(d)は下杭と上杭とを連結して圧入機が下杭をさらに埋設している状態を示す。
図17】第4実施形態の圧入機が備えるサブチャックの概略構成図である。
図18】第4実施形態のストッパを示す図であり、(a)は補強部材及び逆転ストッパの外観図を示し、(b)はA矢視図を示し、(c)はキーが逆転ストッパを乗り越えて嵌合部と嵌合する側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の杭体連結構造を構成するジョイント10及び杭体12,12の外観図である。図1(a)はジョイント10の横断面図、図1(b)はジョイント10の側面図、図1(c)は杭体12の横断面図、図1(d)は杭体12の側面図である。
【0026】
本実施形態の杭体12は、一例として、地中に埋設される杭であり、その外周面12Aに本発明の突部に相当するキー14が設けられる。キー14は杭体12の外周面12Aに4つ設けられるが、これは一例であり、キー14は杭体12の外周面12Aに一つ以上設けられれば良い。またキー14は平面状であり、一例として、4面を有する矩形状とされる。
【0027】
ジョイント10は、2本の杭体12,12を連結し、本発明の杭体継手に相当する。ジョイント10は、各端部16A,16Aから杭体12が嵌め込まれる管状の本体部16を有し、本体部16は、杭体12の外周面12Aを覆うことが可能なように、その内周径が杭体12の外周径より若干大きく形成されている。
【0028】
この本体部16には、杭体12のキー14と係合する係合部18が各端部16A,16Aに対応して形成される。すなわち、本実施形態のジョイント10は、杭体12を連結する方向(「上下方向」ともいう。)で対称構造となっている。なお、本実施形態の本体部16には、4つのキー14が設けられた杭体12に対応するように、上下方向に4つの係合部18が形成される。
【0029】
係合部18は、本体部16の端部16Aからキー14が挿入される挿入部20と、杭体12を嵌め込んで回転させることでキー14に嵌合する嵌合部22と、で形成される。なお、挿入部20は杭体12の軸線方向と平行な方向に形成され、嵌合部22は、杭体12の軸線方向に交差する方向に形成される。このような構成により、本実施形態の係合部18はL字形状とされるが、これに限らず、挿入部20から挿入されたキー14を杭体12の軸線方向に交差する方向で嵌合する形状であればよく、例えば係合部18は逆T字形状等でもよい。
【0030】
図2は、キー14が設けられる2本の杭体12,12とジョイント10との連結方法を示す図である。ジョイント10は、本体部16の一方の端部16Aから一方の杭体12が嵌め込まれ、他方の端部16Aから他方の杭体12が嵌め込まれる(図2(a))。そして、杭体12を回転させることで杭体12に設けられたキー14がジョイント10の嵌合部22と嵌合して連結される(図2(b))。
【0031】
なお、ジョイント10によって連結された2本の杭体12,12の端部12B,12Bは、互いに当接し合う。換言すると、杭体12に設けられるキー14とジョイント10の嵌合部22との位置関係は、2本の杭体12,12がジョイント10によって連結された場合に杭体12,12の端部12B,12B同士が当接する位置関係とされる。一例として、本実施形態では、ジョイント10の高さ方向に対して中央部分で杭体12,12の端部12B,12B同士が当接するように、嵌合部22の位置に合わせてキー14が杭体12に設けられる。
【0032】
次に、本実施形態の図3及び図4を参照して、キー14及びジョイント10の形状の詳細について説明する。なお、図3は、キー14と嵌合部22とが嵌合した状態を示す拡大図である。図4は、杭体12におけるキー14が設けられた部分及びジョイント10における嵌合部22が形成された部分の縦断面図である。図4(a)は杭体12とジョイント10を個別に示した図であり、図4(b)は杭体12とジョイント10を連結した場合を示す図である。
【0033】
図3に示されるように、嵌合部22は、杭体12の回転方向xで本体部16の端部16Aから離れるように傾斜する面22Aを有し、本発明の第1形状に相当するテーパ形状が形成されている。換言すると、嵌合部22の面22Aは、連結される2本の杭体12,12の連結方向に傾斜している。なお、面22Aに対向する面22Bは、本体部16の端部16Aと平行に形成される。
【0034】
キー14は、このような嵌合部22のテーパ形状に対応する形状とされる。具体的には、キー14は、杭体12の軸線方向に交差し、かつ対向する面14A,14Bを有する。面14Bは、杭体12の端部12B側に位置し、杭体12の端部12Bに平行に形成される。一方、面14Aは、杭体12の端部12Bへ近づく方向に傾斜して形成される。キー14の面14Aの傾斜角度は、嵌合部22の面22Aの傾斜角度と同じである。
【0035】
このように、嵌合部22には、傾斜する面22Aを有するテーパ形状が形成されている
ので、杭体12をジョイント10に嵌め込んで回転させると、杭体12は嵌め込まれた方向、換言するとジョイント10で連結される他方の杭体12の方向に進む。この結果、連結される2本の杭体12,12の端部12B,12B同士が当接し、かつ嵌合部22の傾斜した面22Aとこれに対向するキー14の面14Aも当接し、2本の杭体12とジョイント10とで締まり合う。このように嵌合部22に形成されたテーパ形状という簡易な構成により、連結される2本の杭体12,12とジョイント10とが強固に一体化される。
【0036】
なお、上述のように、嵌合部22がテーパ形状とされたジョイント10によって締まり合い剛体となった杭体12,12は、嵌合部22の面22Bとキー14の面14Bとは当接せずに離間する。
【0037】
また、図4(a)に示されるように、嵌合部22には、キー14と杭体12との間に嵌入し、本発明の第2形状に相当するクサビ形状が形成される。このクサビ形状は、嵌合部22の面22Aを連結する杭体12の方向に面取りすることで形成される。このように、本実施形態の嵌合部22の面22Aには、テーパ形状と共にクサビ形状が形成される。
【0038】
また、キー14の面14Aも嵌合部22の面22Aのクサビ形状に対応するように、杭体12の方向に傾斜するように形成される。すなわち、キー14の面14Aと杭体12の外周面12AとによってV字形状が形成され、このV字形状に嵌合部22の面22Aが嵌め合わされる。これにより、嵌合部22とキー14とに所謂クサビ効果を生じさせ、例えば、埋設している杭体12を引き抜く場合(図4(b)の矢印y1方向)に発生する可能性のある嵌合部22とキー14とのズレの発生を防止できる。このように嵌合部22に形成されたクサビ形状という簡易な構成により、杭体12とジョイント10とがより強固に一体化される。
【0039】
また、キー14の外周を溶接してキー14を杭体12に設けると、ビード(溶接痕)がキー14の外周に生じ、ビードがキー14と嵌合部22との嵌合の障害となる可能性がある。このため、研磨等により、ビードを除去する工程が必要となる。そこで、本実施形態のキー14は、平面内側が中抜きされている(図1参照)。そして、中抜きされている平面内側を溶接することでビードがキー14の平面内側に形成されることになり、ビードがキー14と嵌合部22との嵌合の障害となることを防止できる。
【0040】
本実施形態の中抜き形状24は、一例として、矩形状とされ、杭体12の周方向に沿ってキー14に3つ設けられる。なお、中抜き形状24は、キー14に一つ以上形成されていればよく、キー14を杭体12に設けるために溶接作業が可能なように形成されていれば、その形状及び大きさは限定されない。
【0041】
また、杭体12におけるキー14が設けられる箇所は、杭体12の横断面方向の強度が高くなる。そこで、本実施形態のキー14は、杭体12の外周方向に非等角度間隔で配置される。図1(c)に示されるキー14の配置の例では、対向するキー14が2組設けられ、計4つのキー14は、隣り合うキー14との間隔が120°と60°となるように配置されている。
【0042】
このような非等間隔による複数のキー14の配置によれば、杭体12に対して相対的に高い強度を与えたい横断面方向の位置にキー14を設けることで、連結した2本の杭体12,12の強度を簡易な構成で高めることができる。
【0043】
なお、キー14の配置位置は、非等間隔に限らず、外周方向に等角度間隔で配置されてもよい。この構成によれば、杭体12に設けられるキー14の位置を考慮して杭体12とジョイント10とを嵌め合わせる必要がないため、簡易に杭体12とジョイント10とを嵌め合わせることができる。
【0044】
図5は、2本の杭体12,12を連結する際に2本の杭体12,12及びジョイント10の荷重伝達個所を示す図である。
【0045】
図5(a)は、杭体12の圧入時(杭体12に対して下方向y2への圧入)の荷重伝達箇所を示す。杭体12に下向きの力が加えられるため、杭体12の圧入時には矢印Aで示すように、連結されている2本の杭体12,12が当接する端部12B,12Bが荷重伝達箇所となる。
【0046】
図5(b)は、埋設されている杭体12の引き抜き時(杭体12に対して上方向y1への引き抜き)の荷重伝達箇所を示す。杭体12に上向きの力が加えられるため、杭体12の引き抜き時には矢印Bで示すように、嵌合部22とキー14のテーパ形状(クサビ形状)が荷重伝達箇所となる。
【0047】
図5(c)は、杭体12の回転時(杭体12に対して右方向xへの回転)の荷重伝達箇所(トルク伝達箇所)を示す。杭体12に右回転方向の力が加えられるため、杭体12の回転時には矢印Cで示すように、嵌合部22とキー14のテーパ形状の先端部が荷重伝達箇所となる。
【0048】
図6は、2本の杭体12,12を連結させて圧入機30を用いて埋設する場合の工程を示す図である。
【0049】
まず、圧入機30は、チャック32によって一方の杭体12aを把持して埋設する。次に圧入機30は、杭体12aと連結させる他の杭体12bをチャック32によって把持する。そして、チャック32に把持された状態で杭体12Bbのキー14をジョイント10の挿入部20に挿入することで、杭体12bにジョイント10を嵌め込み、ジョイント10を回転させてキー14と嵌合部22とを嵌合させる(図6(a))。そして、埋設された杭体12aに対してジョイント10が嵌合した杭体12bを立て、2本の杭体12a,12bがジョイント10によって連結するように他の杭体12bを回転させる(図6(c))。なお、埋設された杭体12aに杭体12bを立てるとは、杭体12aの軸線と杭体12bの軸線とが一致するように垂直に配置することである。
【0050】
なお、これに限らず、埋設された杭体12aに対してジョイント10を嵌め込み(図6(b))、ジョイント10が嵌合した杭体12aに対して杭体12bを立て、2本の杭体12a,12bがジョイント10によって連結するように他の杭体12bを回転させてもよい(図6(c))。
【0051】
図7から図10は、ジョイント10に補強部材40を設けた形態を示す図である。
【0052】
ジョイント10は、図5に示されるように嵌合部22が荷重伝達部となるため、嵌合部22が形成された領域近辺の強度が他の領域に比べて相対的に低下する。そこで本実施形態の本体部16には、図7に示されるように、少なくとも嵌合部22を覆う補強部材40が設けられる。このような構成によれば、嵌合部22が形成されることで低下した強度を補強部材40によって高めることができ、荷重伝達時におけるジョイント10の変形を抑制できる。なお、本実施形態の補強部材40は嵌合部22だけでなく、挿入部20周辺を覆う。また、補強部材40は、予め本体部16に溶接等により接合されている。
【0053】
本実施形態の補強部材40には、キー14の挿入を確認するための孔42が形成される。補強部材40に形成される孔42Aは、一例として、挿入部20の位置(孔42A)と嵌合部22の位置(孔42B)に形成される。孔42Aは円形である。孔42Bはジョイント10の軸線方向に交差する方向に長面を有する長方形(各丸長方形)とされ、上下の嵌合部22に跨るように形成されている。このように、補強部材40に孔42が形成されることによって、補強部材40が設けられても挿入部20及び嵌合部22へのキー14の挿入状態を作業者が目視で確認できる。
【0054】
図8は、2本の杭体12,12と補強部材40が設けられたジョイント10との連結方法を示す図である。補強部材40が設けられた場合であっても、杭体12とジョイント10との連結方法は変わらず、ジョイント10が有する本体部16の端部16A毎に杭体12が嵌め込まれ(図8(a))、杭体12を回転させることでキー14と嵌合部22とを嵌合させて連結させる(図8(b))。
【0055】
また、ジョイント10の嵌合部22に嵌め合わされたキー14は、杭体12を圧入する際に杭体12の回転方向が逆転すると嵌合部22から外れる可能性がある。そこで本実施形態のジョイント10には、図9に示すように、キー14が嵌合部22から外れることを防止し、本発明の外れ防止部材に相当する逆転ストッパ50Aが設けられてもよい。図9(a)は逆転ストッパ50Aの使用例を示した図であり、ジョイント10及び補強部材40を杭体12の外周方向に展開した図である。図9(b)は逆転ストッパ50Aの正面図、上面図、及び側面図である。図9(c)は逆転ストッパ50Aに形成されたピン52の作用を示した図である。
【0056】
図9(a)に示すように逆転ストッパ50Aは、杭体12,12がジョイント10で連結された後に、挿入部20に挿入される。このため、逆転ストッパ50Aの横幅は、挿入部20の幅よりも若干狭く形成され、かつ杭体12の外周面12Aに沿うような形状とされている。
【0057】
また、本実施形態の逆転ストッパ50Aは、補強部材40の孔42Aに対応するようにピン52が形成され、このピン52の左右にはスリット54が形成されている。すなわち、逆転ストッパ50Aは、挿入部20に挿入される際に片持ちスプリングバックによってピン52が押され、スリット54とスリット54との間の領域が曲げられる。そして、ピン52が孔42Aに至るまで逆転ストッパ50Aが挿入されるとピン52は孔42Aに引っ掛かる。これにより、スリット54は挿入部20に固定され、嵌合部22からキー14が外れることを阻害するので、ジョイント10に嵌め込んだ杭体12がジョイント10から外れることを確実に防止できる。
【0058】
図10は、本発明の外れ防止部材の他の形態に係る逆転ストッパ50Bを示した図である。図10(a)は逆転ストッパ50Bの使用例を示した図であり、ジョイント10及び補強部材40を杭体12の外周方向に展開した図である。図10(b)は逆転ストッパ50Bの正面図及び上面図である。逆転ストッパ50Bは、補強部材40の孔42Aに対応するように孔56が形成され、この孔56には雌ネジが形成されている。そして、逆転ストッパ50Bを挿入部20に挿入した後に補強部材40の孔42Aからボルトを挿入し、当該ボルトと逆転ストッパ50Bの孔56とを螺合する。これにより、このボルトによって補強部材40と逆転ストッパ50Bとが締結され、逆転ストッパ50Bは補強部材40に固定される。
【0059】
本実施形態では、キー14は杭体12の横方向に一列で設ける形態について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、図11に示されるように杭体12の軸線方向に複数列が設けられてもよい。なお、ジョイント10には、複数列のキー14に対応するように複数列の嵌合部22が形成される。
【0060】
また、本実施形態では、ジョイント10が杭体12に対して独立している形態について説明したが、本実施形態はこれに限られず、図12に示されるようにジョイント10が2本の杭体12の一方の端部に接合されてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
図13は、本実施形態の杭体12及びジョイント10の外観図である。なお、図13における図1〜12と同一の構成部分については図1〜12等と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態のジョイント10に形成される嵌合部22は、杭体12の軸線方向に複数のテーパ形状及び複数のクサビ形状が形成される。より具体的には、一つの嵌合部22は、杭体12の軸線方向に平行な垂直部122Aと、垂直部122Aに対して直交する複数の水平部122Bで構成される。すなわち、各水平部122Bは、ジョイント10の端部16A側にテーパ形状及びクサビ形状が形成される。
【0063】
また、垂直部122Aは、一例として、ジョイント10の端部16A側に水平部122Bのテーパ形状及びクサビ形状が延伸して形成される。なお、垂直部122Aのジョイント10の端部16A側の形状は、これに限らず、水平とされてもよい。
【0064】
また、本実施形態のキー14は、本実施形態の嵌合部22のテーパ形状及びクサビ形状に対応する形状とされる。このため、キー14は、杭体12の軸線方向に平行な垂直部114Aと、垂直部114Aに対して直交する3つの水平部114Bで構成される。
【0065】
このように、本実施形態のジョイント10は、テーパ形状及びクサビ形状が一つの嵌合部22に複数形成されるので、連結させる杭体12を強固に一体化できる。また、第1実施形態の図11を参照して説明したようなキー14を複数列並べる場合に比べ、上下にキー14を溶接する際の位置合わせが不要になり、作業工程を削減できる。すなわち、図11に示される構成でも、嵌合部22を縦方向に複数設置しているので、2本の杭体12をより強固に連結できるが、キー14をズレないよう縦方向に複数溶接するための工程を必要とする。しかしながら、本実施形態では、一つのキー14を溶接するだけで複数の嵌合部22にキー14を嵌合させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、一例として、一つの嵌合部22に3つの水平部122B(テーパ形状及びクサビ形状)が形成されるが、これに限らず、一つの嵌合部22に2つの水平部122Bが形成されてもよいし、一つの嵌合部22に4つ以上の水平部122Bが形成されてもよい。また、本実施形態のキー14は、嵌合部22の形状に応じた数の水平部114Bが形成される。
【0067】
(第3実施形態)
本実施形態は、ジョイント10で連結させる2本の杭体12の一方を地中に埋設する杭体12とし、他方の杭体12を一方の杭体12を埋設するために補助的に用いられる杭体(以下「簡易打ち下げ装置」という。)60(図14参照)とする。この簡易打ち下げ装置60は、地中に埋設する杭体12の上方に配置されるものの、簡易打ち下げ装置60自身は地中に埋設されない。
【0068】
簡易打ち下げ装置60は、杭体12と同じ外形を有する円管を本体部60Aとし、本体部60Aの少なくとも一方の端部にジョイント10を備える。このジョイント10の嵌合部22は、本体部60Aの周方向に形成されている。なお、本体部60Aの全長は、地中に埋設される杭体12よりも、後述する圧入機30のチャック32で把持可能な長さであればよい。
【0069】
図14は、簡易打ち下げ装置60と杭体12とを連結させて圧入機30を用いて杭体12を埋設する場合の工程を示す図である。なお、図14における図1〜13と同一の構成部分については図1〜13等と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
また、図14に示される嵌合部22の形状は、図13における嵌合部22の形状と同様であるが、これは一例であり、図1図11に示される他の嵌合部22の形状と同様でもよい。なお、以下の説明では、簡易打ち下げ装置60を用いて地中に埋設される杭体12を下杭12cといい、下杭12cと連結される杭体12を上杭12dともいう。
【0071】
図14(a)は下杭12cと簡易打ち下げ装置60とがジョイント10によって連結され、圧入機30がジョイント10を含む領域を把持している状態を示す。なお、下杭12cと簡易打ち下げ装置60とは、ジョイント10によって連結されたのちに、チャック32に把持される。
【0072】
図15は、圧入機30が備えるチャック32が備える爪(以下「段付き爪」という。)70の概略側面図である。チャック32は、その内周に複数設けられる段付き爪70により杭体12を外周側から押圧することにより杭体12を把持して回転する。
【0073】
段付き爪70は、杭体12を押圧する押圧部72に段付き形状74が形成される。この段付き形状74の垂直長さyは、簡易打ち下げ装置60のジョイント10の垂直長さよりに比べて同等若しくは若干長く形成される。また、段付き形状74の水平深さxは、ジョイント10の厚みに比べて同等若しくは若干深く形成される。このように、押圧部72には、ジョイント10で連結される杭体12等をチャック32が把持する場合に、ジョイント10が嵌め合わされる段差が形成される。そして、段付き爪70は、段付き形状74の下側が下杭12cに当接し、段付き形状74の上側が簡易打ち下げ装置60の本体部60Aに当接する。
【0074】
すなわち、段付き爪70は、杭体12の外周部からのジョイント10の飛び出し部分と干渉することなく杭体12を把持できるので、広い範囲で杭体12を把持することが可能となる。
【0075】
図14(b)は下杭12cと簡易打ち下げ装置60とが連結し、圧入機30が下杭12cを埋設している状態を示す。図14(b)に示されるように、下杭12cの埋設が進行すると、チャック32は、簡易打ち下げ装置60の本体部60Aを把持する。
【0076】
この後、簡易打ち下げ装置60は、下杭12cから取り外される。そして、埋設された下杭12cに上杭12dが連結される。なお、本実施形態の上杭12dの端部12Bには、ジョイント10が接合されており、このジョイント10によって下杭12cと上杭12dが連結される。
【0077】
図14(c)は下杭12cと上杭12dとを連結し、圧入機30が下杭12cをさらに埋設している状態を示す。図14(c)に示されるように、圧入機30は、上杭12dをチャック32で把持しながら、下杭12c及び上杭12dの地中への埋設を行う。
【0078】
このような簡易打ち下げ装置60を用いた下杭12cの埋設方法は、吊り下げ装置を用いることなく、杭体12を埋設することができる。例えば、下杭12cと上杭12dとをジョイント10で連結して埋設する場合には、その全長が長くなるために、吊り下げ装置を用いて連結した下杭12cと上杭12dとを吊り下げ装置を用いて吊り下げる必要があった。しかしながら、ジョイント10によって下杭12cと連結可能な簡易打ち下げ装置60を用いることで、圧入機30は、吊り下げ装置を用いることなく、簡易に杭体12を地中に埋設することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、簡易打ち下げ装置60がジョイント10を備える形態について説明したが、これに限らず、簡易打ち下げ装置60にジョイント10が備えられずに、簡易打ち下げ装置60の外周にキー14が備えられてもよい。すなわち、簡易打ち下げ装置60と下杭12cとは別体とされたジョイント10によって連結されてもよい。この形態の場合、下杭12cと連結される上杭12dの外周にはキー14が備えられ、下杭12c上杭12dとは別体とされたジョイント10によって連結される。
【0080】
また、簡易打ち下げ装置60は用いられることなく、ジョイント10が予め接合された杭体12(上杭12d)が下杭12cと連結され、チャック32に段付き爪70を備えた圧入機30が下杭12cと上杭12dとを埋設してもよい。
【0081】
(第4実施形態)
本実施形態の圧入機30は、図16に示されるように、杭体12を把持するチャック32として、メインチャック32Aとサブチャック32Bとを備える。なお、図16は、本実施形態の圧入機30を用いて杭体12を埋設する場合の工程を示す図である。また、本実施形態では上杭12dにジョイント10が予め接合され、ジョイント10に嵌合されるキー14が下杭12cに接合されている。
【0082】
メインチャック32A及びサブチャック32Bは共に、杭体12を着脱可能に把持するものである。メインチャック32Aは、マスト33に対して相対的に上下移動可能に支持される。サブチャック32Bは、メインチャック32Aの移動範囲に対して下方向に外れた位置に備えられる。
【0083】
サブチャック32Bは、図16(a)に示されるように、マスト33に設けられる一対のマストアーム部33Aの先端から下方に向けて延びるガイド33Bの下端に固定され、この下端から圧入機30の前方に向けて突出している。サブチャック32Bは、メインチャック32Aの下方に間隔をあけた位置で、メインチャック32Aと同軸となる位置に配置されている。このような構成により、本実施形態の圧入機30は、メインチャック32Aが杭体12を把持した状態で上下方向へ移動するものの、サブチャック32Bは上下方向へは移動しない。
【0084】
図17は、本実施形態の圧入機30が備えるサブチャック32Bの概略構成図である。
【0085】
サブチャック32Bは、図17に示すように、サブチャック32Bに対して杭体12が挿通される挿通孔80の内周に沿うようにしてサブチャック32Bに固定され、メインチャック32Aよりも下方の位置で杭体12を外周側から把持する。サブチャック32Bは、一例として、挿通孔80の中心方向に伸長可能な複数の保持部82をサブチャックフレーム83の内周に備える。保持部82は、挿通孔80の周方向に複数(図17の例では4つ)が設けられ、杭体12を外周側から押圧することにより把持する。このような構成により保持部82は、杭体12の外径にかかわらず、杭体12を把持することが可能となる。
【0086】
なお、図17に示されるサブチャック32Bの構成は、一例であり、杭体12を把持できれば他の構成でもよい。例えば、サブチャック32Bは、周方向に複数(例えば3分割)に分割された円弧状のリングバンドと、周方向に隣り合うリングバンドの端部同士を連結して各リングバンドを径方向に移動させるためのチャックシリンダとで構成されてもよい。このような構成では、周方向に沿って配置される3つのリングバンドが環状を形成するように設けられ、その内周側に杭体12を挿通させ、リングバンドを径方向に移動させることで杭体12を把持する。
【0087】
ここで、既に一部が地中に埋設されている下杭12cと上杭12dとを圧入機30を用い、ジョイント10を介して連結する場合、下杭12cに対して一定以上の支持力や周面摩擦抵抗力が作用している必要がある。下杭12cに十分な支持力が作用していないと、圧入機30が把持した上杭12dを下方向に移動させてキー14をジョイント10の挿入部20に挿入しようとしても、上杭12dの下方向への移動に伴い下杭12cも下がり、連結させることができない。また、下杭12cに十分な周面摩擦抵抗力が作用していないと、上杭12dを回転させて下杭12cのキー14をジョイント10の嵌合部22に嵌め合わせようとしても、上杭12dの回転に伴い下杭12cも回転し、連結させることができない。
【0088】
さらに、下杭12cに一定以上の支持力や周面摩擦抵抗力が作用していないと、一見、ジョイント10によって下杭12cと上杭12dとが連結されているように見えても、その連結が確実なものでなく、地中への圧入の途中で連結が外れたり、ジョイント10によって連結することで本来生じ得る曲げ強度が生じない可能性がある。
【0089】
そこで、本実施形態の埋設方法は、サブチャック32Bによって下杭12cを把持することで、圧入機30を用いて下杭12cと上杭12dとをジョイント10を介して連結する。
【0090】
以下、図16を参照して、本実施形態の埋設方法を説明する。なお、図16における矢印の方向は、杭体12に作用する力の方向を示している。
【0091】
図16(a)はサブチャック32Bで下杭を把持しメインチャック32Aで上杭を把持した状態を示す。なお、本実施形態のメインチャック32Aは第3実施形態で説明したような段付き爪70を備えているが、メインチャック32Aがジョイント10も把持しない場合には、段付き爪70が用いられなくてもよい。
【0092】
図16(b)は、メインチャック32Aを下方向に移動させることで、上杭12dのジョイント10に下杭12cのキー14を挿入した状態を示す。図16(c)は、上杭12dを回転させて下杭12cのキーを上杭12dのジョイント10に嵌合させた状態を示す。図16(b),(c)において、サブチャック32Bは十分な力により下杭12cを把持しているので、ジョイント10を介した下杭12cと上杭12dとの連結に必要な荷重とトルクをかけられるので、確実にキー14とジョイント10とを嵌合できる。
【0093】
図16(d)は、下杭12cと上杭12dとを連結して圧入機30が下杭12cをさらに埋設(圧入)している状態を示す。圧入機30は、メインチャック32Aを下方向へ移動させることで、ジョイント10によって連結された下杭12cと上杭12dとを圧入する。このとき、サブチャック32Bは、下杭12cを把持せずに、すなわち下杭12cに対して力を作用させない。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の埋設方法は、メインチャック32Aで上杭12dを把持し、サブチャック32Bで下杭12cを把持しながら、メインチャック32Aを下げて回転させることで、上杭12dと埋設された下杭12cとをジョイント10で連結する。これにより、本実施形態の埋設方法は、2本の杭体12の連結をより確実に行うことができる。
【0095】
なお、本実施形態では、上杭12dがジョイント10を備える形態について説明したが、これに限らず、上杭12dにジョイント10が備えられずに、上杭12dの外周にキー14が備えられてもよい。すなわち、上杭12dと下杭12cとは別体とされたジョイント10によって連結されてもよい。
【0096】
また、本実施形態は、下杭12cを圧入機30が備えるサブチャック32Bによって把持する第1工程と、上杭12dを圧入機30が備えるメインチャック32Aによって把持する第2工程と、上杭12dと下杭12cとの端部12B,12Bが当接するようにメインチャック32Aを移動させ、メインチャック32A又はサブチャック32Bを回転させることで、上杭12dと下杭12cとをジョイント10で連結する第3工程と、を行えばよく、下杭12cを地中に埋設する前に、上杭12dと下杭12cとをジョイント10によって連結させてもよい。
【0097】
図18は、本実施形態の補強部材40及び逆転ストッパ50Cの構成図である。図18(a)は外観図(ジョイント10及び補強部材40を杭体12の外周方向に展開した図)であり、図18(b)は図18(a)におけるA矢視図を示し、図18(c)はキー14が逆転ストッパ50Cを乗り越えて嵌合部22と嵌合する側面図を示す。
【0098】
ここで、第1実施形態における図9,10を参照して説明した逆転ストッパ50A,50Bは、補強部材40が設けられたジョイント10で2本の杭体12が連結された後に、ジョイント10の挿入部20に挿入されるものである。
【0099】
一方、本実施形態の逆転ストッパ50Cは、図18(b)に示されるように補強部材40の内周面(杭体12Cと接する面)に予め接合されている。この逆転ストッパ50Cは、ジョイント10の嵌合部22手前に接合されている。すなわち、挿入部20に挿入されたキー14は、図18(c)に示されるように、逆転ストッパ50Cを乗り越えて嵌合部22に嵌合され、逆転ストッパ50Cによって嵌合部22から外れることが防止(以下「ロック」ともいう。)される。
【0100】
本実施形態の逆転ストッパ50Cは、一例として、プレート状であり、キー14が逆転ストッパ50Cを乗り超えてジョイント10と嵌合できるように、嵌合部22側とは逆側の面にテーパ―状の斜面90Aが形成される。一方、逆転ストッパ50Cの嵌合部22側の面はキー14が嵌合部22から外れないように、補強部材40の内周面に直交する直交面90Bとされる。また、逆転ストッパ50Cの斜面90Aと当接するキー14の面にもテーパ―状の斜面14Aが形成されることで、キー14は逆転ストッパ50Cを乗り越え易くなる。
【0101】
なお、逆転ストッパ50Cは、嵌合部22毎に設けられる必要は必ずしもなく、ジョイント10に形成された複数の嵌合部22に対して少なくとも一つ接合されればよい。図18の例では、4つの嵌合部22に対して2つの逆転ストッパ50Cが接合されている。
【0102】
このような逆転ストッパ50Cであれば、ジョイント10と嵌合したキー14が外れることを簡易な構造で防止できる。より具体的には、本実施形態の構成であれば、図9,10に示される構成よりも簡易であるためコストが少なくすむ。また、本実施形態の構成であれば、キー14をジョイント10に嵌合させるために杭体12を回転させる工程によりキー14がジョイント10にロックされるので、キー14をロックするための作業工程を別途必要としない。
【0103】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0104】
上記実施形態では、嵌合部22にテーパ形状とクサビ形状とが形成される形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、嵌合部22にテーパ形状のみ形成されてもよいし、嵌合部22にクサビ形状のみ形成されてもよい。すなわち、嵌合部22は、少なくともテーパ形状又はクサビ形状が形成されていればよい。
【0105】
また、上記実施形態では、ジョイント10の本体部16が杭体12の外周面12Aを覆う形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、ジョイント10の本体部16が杭体12の内周面に沿うように形成されてもよい。この形態の場合、キー14は杭体12の内周面に設けられる。
【符号の説明】
【0106】
10 ジョイント(杭体継手)
12 杭体
14 キー(突部)
16 本体部
22 嵌合部
40 補強部材
50A 逆転ストッパ(外れ防止部材)
50B 逆転ストッパ(外れ防止部材)
50C 逆転ストッパ(外れ防止部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18