特許第6854963号(P6854963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854963
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/018 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   A61B1/018 514
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-500293(P2020-500293)
(86)(22)【出願日】2018年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2018045080
(87)【国際公開番号】WO2019159507
(87)【国際公開日】20190822
【審査請求日】2020年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2018-24914(P2018-24914)
(32)【優先日】2018年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山谷 高嗣
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/122559(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/002587(WO,A1)
【文献】 特開平6−315458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端部に設けられた先端構成部と、
前記先端構成部に着脱自在な先端カバーと、
前記先端構成部に設けられた可動部と、
前記可動部に設けられた接続部材と、
牽引弛緩により前記可動部を駆動する牽引弛緩部材と、
前記牽引弛緩部材に設けられ前記接続部材に着脱自在であって、前記先端カバーが前記先端構成部から取り外された状態において、前記接続部材から脱離自在な接続体と、
先端と基端を有し、前記先端部に配設され、基端が前記先端構成部と着脱自在に接続され、前記牽引弛緩部材が挿通する可撓性を備えたチューブと、
を備えたことを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記チューブは、基端が前記先端構成部に水密状態で接続され、先端の内周に前記牽引弛緩部材と水密保持する周方向に形成された凸部を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記チューブは、基端部分に前記先端構成部との接続を水密保持する水密保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記チューブは、前記先端構成部に装着された前記先端カバーの基端面に当接して前記先端構成部に押し付けられる外向フランジが基端部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記接続部材は、前記牽引弛緩部材の長手方向に直交する短手方向に突出しており、
前記接続体は、前記接続部材に前記短手方向に沿って接続され、前記先端カバーの内側面によって前記接続部材との接続が外れないように規制されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記可動部は、前記先端部から導出する処置具の方向を可変するための前記先端構成部に回動自在に設けられる起上台または揺動台であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項7】
前記先端カバーの内面に形成された規制凸部と、
前記先端構成部に形成され、前記規制凸部が係合する規制凹部と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項8】
前記先端構成部に設けられた係止凸部と、
前記先端カバーの内周部に形成され、前記係止凸部に係合する係止凹部と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入部の先端部に設けられた可動部材を操作ワイヤで駆動させる内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用分野においては、細長の挿入部を体腔内に挿入することにより、体腔内臓器などを観察することが出来る内視鏡が広く用いられている。体腔内臓器などの観察画像をモニターに表示させる場合には、内視鏡挿入部先端または後端の撮像部に電荷結合素子(CCD)などの固体撮像素子を配設した内視鏡などが用いられている。
【0003】
内視鏡に設けた撮像素子から出力される信号は、電子内視鏡、外付けカメラなどとは別体の内視鏡の外部機器である画像処理装置によって映像信号化されてモニターに出力される。そして、別体に構成された電子内視鏡と画像処理装置との間は、内視鏡用コネクタを介して接続される。
【0004】
このような内視鏡には、先端部に鉗子などの処置具を起伏する可動部材である起上台などが設けられたものがある。例えば、日本国特開平6−315457号公報には、内視鏡使用中に鉗子起上操作ワイヤと操作ワイヤ案内管との間の隙間に先側から汚液などが侵入し難く、しかも使用後にはその隙間を容易に洗浄することができる内視鏡の鉗子起上装置が開示されている。
【0005】
ところで、日本国特開平6−315457号公報に開示されるように鉗子起上装置を備えた従来の内視鏡は、挿入部の先端部の起上台収納部において起上台を駆動する操作ワイヤにはチューブが被せられている。
【0006】
このような操作ワイヤが挿通するチューブは、起上台により起伏される処置具などが接触して損傷する場合があり交換修理する必要がある。また、使用前後の内視鏡は、操作ワイヤが挿通するチューブ内の洗浄消毒に手間が掛かり、洗浄消毒に時間が掛かり、医療従事者である洗浄消毒作業者の負担となっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みなされたものあり、挿入部の先端部に設けられた可動部を駆動するワイヤを被覆するチューブの交換修理および洗浄消毒を容易にし、洗浄消毒時の医療従事者の負担を軽減する内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における内視鏡は、挿入部の先端部に設けられた先端構成部と、前記先端構成部に着脱自在な先端カバーと、前記先端構成部に設けられた可動部と、前記可動部に設けられた接続部材と、牽引弛緩により前記可動部を駆動する牽引弛緩部材と、前記牽引弛緩部材に設けられ前記接続部材に着脱自在であって、前記先端カバーが前記先端構成部から取り外された状態において、前記接続部材から脱離自在な接続体と、先端と基端を有し、前記先端部に配設され、基端が前記先端構成部と着脱自在に接続され、前記牽引弛緩部材が挿通する可撓性を備えたチューブと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の内視鏡の構成を示す側面図
図2】同、挿入部の先端部の構成を示す斜視図
図3】同、先端カバーが取り外された状態の先端部の構成を示す斜視図
図4】同、先端部を上方から見た断面図
図5】同、図4の円Vの拡大断面図
図6】同、先端を側方から見た断面図
図7】同、図6の円VIIの拡大断面図
図8】同、内視鏡内部を模式的に示す断面図
図9】同、先端カバーおよび可撓性チューブが外され、洗浄管路が接続された内視鏡内部を模式的に示す断面図
図10】同、先端カバーが外され、可撓性チューブが取り外された先端部を示す上面図
図11】同、第1の変形例のタグが取り付けられた可撓性チューブの構成を示す断面図
図12】同、第2の変形例の先端部を上方から見た断面図
図13】同、第2の変形例の可撓性チューブの構成を示す断面図
図14】同、第3の変形例の先端部を上方から見た断面図
図15】同、第3の変形例の可撓性チューブの構成を示す断面図
図16】同、第4の変形例の先端部を側方から見た断面図
図17】同、第4の変形例の可撓性チューブに挿通する起上台操作ワイヤの先端部分の構成を示す断面図
図18】同、第4の変形例のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図
図19】同、第5の変形例の先端部を上方から見た断面図
図20】同、第5の変形例の先端部の上面図
図21】同、第6の変形例の先端部を側方から見た断面図
図22】同、第6の変形例のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図
図23】同、第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態の先端部を側方から見た断面図
図24】同、第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図
図25】同、第6の変形例の先端カバーが取り外された先端部の構成を示す斜視図
図26】同、第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態の先端カバーが取り外された先端部の構成を示す斜視図
図27】同、第6の変形例の先端カバーが取り外された先端部の側面図
図28】同、第7の変形例の視野方向が直視の内視鏡の先端部を示す分解斜視図
図29】同、第7の変形例の視野方向が直視の内視鏡の先端部を示す斜視図
図30】同、参考例の内視鏡の洗浄具を示す平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここでは、内視鏡の一態様を例に挙げて説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態に基づく図面は、模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、夫々の部分の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0011】
また、以下の構成説明における内視鏡は、生体の上部または下部の消化器官などに挿入するため挿入部に可撓性のある所謂軟性鏡を例に挙げて説明するが、これに限定されることなく、外科用に用いられる挿入部が硬質な所謂硬性鏡にも適用できる技術である。
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の一態様の内視鏡について、図面に基づいて説明する。
なお、図1は、内視鏡の構成を示す側面図、図2は挿入部の先端部の構成を示す斜視図、図3は先端カバーが取り外された状態の先端部の構成を示す斜視図、図4は先端部を上方から見た断面図、図5図4の円Vの拡大断面図、図6は先端を側方から見た断面図、図7図6の円VIIの拡大断面図、図8は内視鏡内部を模式的に示す断面図、図9は先端カバーおよび可撓性チューブが外され、洗浄管路が接続された内視鏡内部を模式的に示す断面図、図10は先端カバーが外され、可撓性チューブが取り外された先端部を示す上面図である。
【0013】
本実施の形態の内視鏡2は、挿入部5と、操作部6と、ユニバーサルケーブル7とを有している。挿入部5は、観察対象部位へ長手軸方向の先端側から挿入される細長な長尺部材である。挿入部5は、先端部8と、湾曲部9と、可撓管部10とを連設して構成されている。
【0014】
先端部8にはライトガイドを備える照明光学系、撮像装置を備える撮像光学系が内蔵され、先端面にはノズル、処置具導出口を兼用する吸引口が設けられている(ここでは何れも不図示)。
【0015】
この先端部8には、挿入部5の挿入方向に対して、所定の角度を有する観察窓および照明窓が設けられており、処置具を起上して観察方向に変換する方向変換部としての可動部である起上台42が配設されている。
【0016】
この起上台42は、挿入部5および操作部6内に挿通される長尺部材である牽引弛緩部材としての起上台操作ワイヤ(以下、単にワイヤと略記する)41に接続されている。このワイヤ41が牽引弛緩されることで起上台42の起伏操作がなされる。なお、ワイヤ41は、起上台操作レバー16の操作によって牽引弛緩される。
【0017】
湾曲部9は、例えば上下左右の四方向に湾曲自在に構成されている。可撓管部10は、長尺で可撓性を有する管状部材である。
【0018】
操作部6は、把持部6aを備え、この把持部6aが挿入部5の基端部に連設しており、処置具挿入口6bが配設されている。
【0019】
操作部6には、湾曲操作部11、送気送水ボタン13、吸引ボタン14、洗浄チューブ取付口金15などが設けられている。また、操作部6には、操作部材としての起上台操作レバー16が設けられている。
【0020】
湾曲操作部11は、挿入部5の湾曲部9の湾曲操作を行うための湾曲操作ノブ11aと、この湾曲操作ノブ11aを所望の回転位置で固定するための固定レバー11bとを有している。
【0021】
ユニバーサルケーブル7は、操作部6の側面より延出されている。ユニバーサルケーブル7の端部には外部機器である光源装置に接続される内視鏡コネクタ30が設けられている。この内視鏡コネクタ30は、側部から信号伝達ケーブル33が延設されている。信号伝達ケーブル33の他端側には、ビデオプロセッサに接続される電気コネクタ34が設けられている。
【0022】
図2および図3に示すように、挿入部5の先端部8には、ステンレスなどの金属から形成された先端構成部21が設けられている。この先端構成部21には、ステンレスなどの金属から形成された起上台42が回動自在に配設されている。
【0023】
先端構成部21は、図2に示す挿入軸Xに対して直交する一側面に観察窓22および照明窓23が設けられている。また、先端構成部21には、観察窓22および照明窓23に向けて送気送水するためのノズル24が設けられている。
【0024】
起上台42は、回動自在に設けられ、回動軸27によって先端構成部21に軸支されている。この起上台42は、先端部8においてシリコーンゴムなどから形成された伸縮自在で柔軟な可撓性チューブ51に挿通されたワイヤ41が着脱自在に接続されており、ワイヤ41の牽引弛緩操作によって回動軸27回りに起伏する。
【0025】
先端構成部21には、プラスチックなどの合成樹脂から形成された先端カバー61が着脱自在に装着される。この先端カバー61は、基端周方向にゴムリング62が設けられている。また、先端カバー61は、観察窓22、照明窓23を露出し、起上台42によって起伏される処置具100などを導出するための開口部63を有している。
【0026】
この先端カバー61は、先端構成部21を覆うように装着される。このとき、先端カバー61の内周面に設けられた規制凸部64が先端構成部21に形成された規制凹部25に係入される。これにより、先端構成部21への先端カバー61の装着方向が規定される。
【0027】
そして、先端カバー61は、先端構成部21の側部から突出するように設けられた係止ピン26に内周部に形成された係止凹部29が係合することで先端構成部21に装着固定される。
【0028】
図4に示すように、先端部8は、先端構成部21の基端部分に湾曲部9に設けられる図示しない湾曲駒の最先端に設けられた硬質な管状部材68が嵌着されている。
【0029】
この管状部材68の外周には、先端構成部21の基端外周部を一体的に被覆するチューブ状の湾曲ゴム69が設けられ、この湾曲ゴム69の先端部分は、糸巻接着部69aによって固着されている。
【0030】
ノズル24は、中途部分が先端構成部21に貫挿されており、基端部分に送気送液チューブ65が接続されている。また、挿入部5内に配設されたワイヤ41を被覆する、例えばコイルチューブであるワイヤ被覆チューブ67が先端構成部21に嵌合された口金66に接続されている。なお、ワイヤ41は、先端構成部21から可撓性チューブ51内に挿通して起上台42に接続される。
【0031】
このワイヤ41の先端には、図5に示すように、起上台42に着脱自在な接続体である外形略柱状のワイヤ端末部材43が設けられている。このワイヤ端末部材43は、接続されるワイヤ41の長手軸に直交する方向に貫通孔43aが穿孔されている。
【0032】
先端部8においてワイヤ41を被覆する可撓性チューブ51は、チューブ本体52の先端内周部に周方向に凸部53が形成されている。そして、チューブ本体52の先端外周部には、ステンレスなどの金属から形成された先端口金部材54が設けられている。
【0033】
なお、チューブ本体52の凸部53は、ワイヤ41の先端に設けられたワイヤ端末部材43の外周面に密着して水密保持する。また、先端口金部材54は、チューブ本体52の先端部分が外径方向に膨らんで変形することを抑制している。
【0034】
起上台42は、ワイヤ41の長手方向に直交する短手方向の側部から突出するように、ワイヤ接続部であるワイヤ取付部材44が嵌合されている。そして、ワイヤ取付部材44の端部には、細径の突起部44aが設けられている。
【0035】
この突起部44aがワイヤ端末部材43の貫通孔43aへ挿抜することにより、ワイヤ端末部材43の装着脱が行われる。これにより、ワイヤ41と起上台42との着脱が自在となる。
【0036】
なお、ワイヤ41と起上台42との接続部分は、先端構成部21への先端カバー61の装着により、ワイヤ端末部材43が先端カバー61の内側面によって矢印R方向への移動が規制されて、ワイヤ取付部材44の突起部44aから脱離しないようになる。
【0037】
これにより、ワイヤ41が起上台42から外れず、可撓性チューブ51がワイヤ41から抜けないようになっている。
【0038】
図6に示すように、先端構成部21は、起上台42が配設される軸方向の基端部分にチューブ体である処置具チャンネル72が接続される接続管71が嵌合されている。なお、処置具チャンネル72内に挿通された処置具(不図示)が先端部8まで導入されて、起上台42の起伏によって処置具の導出方向が可変される。
【0039】
可撓性チューブ51の基端部分は、図7に示すように、基端シール部となる外向フランジ55が形成されている。なお、可撓性チューブ51は、基端部分が先端構成部21に係合され、先端構成部21への先端カバー61の装着により、外向フランジ55の先端側の端面が先端カバー61の基端面61aの一部分が当接して、矢印Bに示す基端側に押し付けられる。
【0040】
これにより、可撓性チューブ51の外向フランジ55は、先端構成部21との凹部状の係合部に嵌まり込み、基端側に押し付けられることで可撓性チューブ51と先端構成部21との接続部分の水密を保持する。
【0041】
ところで、内視鏡1は、図8に示すように、操作部6内に洗浄チューブ取付口金15に連通する洗浄管路101が設けられている。この洗浄管路101は、シリンダ102に接続されている。
【0042】
このシリンダ102には、ピストンであるワイヤシャフト103が進退自在に設けられている。ワイヤシャフト103には、水密保持するOリング104が外周部中途に設けられ、基端にリンク部材105が回動自在に接続されている。
【0043】
リンク部材105は、起上台操作レバー16と回動自在に接続されている。そして、シリンダ102は、ワイヤ挿通管路としてのワイヤ被覆チューブ67が連通している。
【0044】
以上のように構成された内視鏡1は、洗浄消毒時に、図9に示すように、洗浄チューブ取付口金15に洗浄チューブ110が接続され、洗浄液、消毒液、アルコールなどの液体が送液されることでワイヤ被覆チューブ67内が洗浄消毒およびフラッシング処理される。
【0045】
このとき、先端部8の先端カバー61が先端構成部21から取り外され、可撓性チューブ51がワイヤ41から抜き取られる。
【0046】
具体的には、先端構成部21から先端カバー61が取り外された後、図10に示すように、ワイヤ41の先端に設けられたワイヤ端末部材43が起上台42のワイヤ取付部材44から側方に向けて抜き取られて脱離される。そして、可撓性チューブ51がワイヤ41から先端側に向けて抜き取られる。
【0047】
このように、内視鏡1は、先端部8の先端カバー61を取り外すことで、先端部8内に設けられる可撓性チューブ51をワイヤ41から簡単に取り外すことができる。これにより、先端構成部21が開放されると共に、ワイヤ41の先端部分も完全に露出した状態となる。
【0048】
この状態で、内視鏡1は、複雑形状をした先端構成部21の外表面を洗浄消毒およびフラッシング処理を容易に行えると共に、ワイヤ被覆チューブ67内に洗浄液、消毒液、アルコールなどの液体が送液されることで、ワイヤ被覆チューブ67内およびワイヤ41の洗浄消毒およびフラッシングを容易に行える構成となる。
【0049】
さらに、内視鏡1は、ワイヤ41が挿通し、先端部8に設けられる可撓性チューブ51が起上台42により起伏される処置具などが接触して損傷した場合でも、先端カバー61を先端構成部21から取り外すことで容易に交換することができる。
【0050】
なお、先端部8から取り外した先端カバー61および可撓性チューブ51も洗浄消毒およびフラッシング処理が容易に行える。なお、先端カバー61および可撓性チューブ51は、都度使用後に廃棄されるディスポーザブルとしてもよい。
【0051】
以上に説明したように、内視鏡1は、先端部8に設けられた可撓性チューブ51を容易に取り外すことができるため、洗浄消毒時およびフラッシング処理の手間を軽減できる構成となり、これらの工程の時間軽減と医療従事者である洗浄消毒作業者の負担を軽減することができる構成となる。
【0052】
以上により、内視鏡1は、挿入部5の先端部8に設けられた可動部である起上台42を駆動するワイヤ41を被覆する可撓性チューブ51の交換および洗浄消毒、フラッシングなどを容易にでき医療従事者の負担を軽減する構成とすることができる。
【0053】
(第1の変形例)
図11は、第1の変形例のタグが取り付けられた可撓性チューブの構成を示す断面図である。
可撓性チューブ51は、未使用または洗浄消毒済みを表示するタグ106を付けて、内視鏡検査直前にタグ106を切り離すようにする構成としてもよい。このタグ106を付けることで、汚染された可撓性チューブ51の使用、使用済み可撓性チューブ51の洗浄消毒し忘れなどを防止することができる。
【0054】
なお、タグ106は、その大きさや長さが目立つように、または内視鏡画像に入り込むような大きさ長さを有したほうが好ましい。
【0055】
(第2の変形例)
図12は、第2の変形例の先端部を上方から見た断面図、図13は第2の変形例の可撓性チューブの構成を示す断面図である。
図12および図13に示すように、可撓性チューブ51は、基端部分にステンレスなどの金属または硬質樹脂から形成された基端口金56を有していてもよい。
【0056】
なお、基端口金56は、図13に示すように、外向フランジ57が設けられ、この外向フランジ57よりも基端側の外周部に水密保持のためのOリング58が設けられている。
【0057】
なお、ここでの可撓性チューブ51は、チューブ本体52の先端部分に先端口金部材54を有していない形態となっている。
【0058】
(第3の変形例)
図14は、第3の変形例の先端部を上方から見た断面図、図15は第3の変形例の可撓性チューブの構成を示す断面図である。
図14および図15に示すように、可撓性チューブ51は、第2の変形例と同様に、基端部分にステンレスなどの金属または硬質樹脂から形成された基端口金56を有しており、この基端口金56にOリング58が設けられていない形態である。
【0059】
また、可撓性チューブ51は、チューブ本体52の先端部分に先端口金部材54を有していない水密保持用の凸部53を有していない形態となっている。このような構成とすることで、可撓性チューブ51は、安価に製造でき、特にディスポーザブルとする場合に有効となる。
【0060】
さらに、ワイヤ取付部材44および突起部44aは、図14に示すように、起上台42と一体的に形成されていてもよい。
【0061】
(第4の変形例)
図16は、第4の変形例の先端部を側方から見た断面図、図17は第4の変形例の可撓性チューブに挿通する起上台操作ワイヤの先端部分の構成を示す断面図、図18は第4の変形例のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図である。
ワイヤ41と起上台42との接続形態は、図16から図18に示すように、ワイヤ41の先端に設けられるワイヤ端末部材43に点対称の凹部43bを形成し、起上台42のワイヤ取付部材44の端部をワイヤ端末部材43の2つの凹部43bに係合する2つの突起部44bを有した構成としてもよい。
【0062】
(第5の変形例)
図19は、第5の変形例の先端部を上方から見た断面図、図20は第5の変形例の先端部の上面図である。
ワイヤ41と起上台42との接続形態は、図19および図20に示すように、起上台42の側面で開口する孔部42aを形成し、この孔部42aに差し込む回動軸46回りに回動自在な棒体45をワイヤ取付部材44に設けた構成としてもよい。
【0063】
なお、棒体45をワイヤ取付部材44の軸に合わせて真直ぐな状態とすることで、可撓性チューブ51をワイヤ41から抜き取ることができる。
【0064】
(第6の変形例)
図21は、第6の変形例の先端部を側方から見た断面図、図22は第6の変形例のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図、図23は第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態の先端部を側方から見た断面図、図24は第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態のワイヤと起上台の接続状態を示す断面図、図25は第6の変形例の先端カバーが取り外された先端部の構成を示す斜視図、図26は第6の変形例の可撓性チューブが圧縮された状態の先端カバーが取り外された先端部の構成を示す斜視図、図27は第6の変形例の先端カバーが取り外された先端部の側面図である。
図21および図22に示すように、起上台42のワイヤ取付部材44に可撓性チューブ51の先端口金部材54の先端が係合する凹部状の係止溝44cを形成してもよい。
【0065】
具体的には、係止溝44cは、ワイヤ取付部材44の外周基端部分に凹状に形成され、可撓性チューブ51のチューブ本体52の自然長に戻る付勢力によって管状の先端口金部材54の先端一部が係合される。
【0066】
この状態において、ワイヤ41の先端に設けられたワイヤ端末部材43の貫通孔43aにワイヤ取付部材44の突起部44aが挿入しているワイヤ41と起上台42との接続がロックされる。
【0067】
また、図23および図24に示すように、可撓性チューブ51を長手軸方向に沿って圧縮することで、チューブ本体52が縮まり、ワイヤ取付部材44の係止溝44cと先端口金部材54の係合が解除され、ワイヤ端末部材43をワイヤ取付部材44から取り外すことができる。そして、ワイヤ41から可撓性チューブ51を抜き取ることができる。
【0068】
即ち、図25に示すように、可撓性チューブ51は、チューブ本体52の付勢力によって管状の先端口金部材54の先端一部が係合された状態となる所定の自然長L1が設定されおり、図26に示すように、可撓性チューブ51を基端方向に圧縮してチューブ本体52を縮めて長さL2とすることで、ワイヤ取付部材44の係止溝44cと先端口金部材54の係合が解除される。この状態で、ワイヤ端末部材43をワイヤ取付部材44から取り外すことができる。
【0069】
このような構成とすることで、先端構成部21から先端カバー61を取り外しても、ワイヤ41と起上台42との接続状態が維持され、ワイヤ41が自然に起上台42から外れることが防止される。
【0070】
なお、図21に示した、先端構成部21に先端カバー61が取り付けられた状態において、起上台42の倒置が位置から、図27に示すように、先端構成部21から先端カバー61を取り外すことで、起上台42がさらに回動(ここでは紙面に向かって見た右回り)できるようにし、起上台42の倒置が最大となるように設定してもよい。
【0071】
即ち、起上台42は、先端カバー61を先端構成部21に取り付けることで、先端カバー61に当接して若干起き上がるように設定する。そして、可撓性チューブ51を先端口金部材54の先端一部が係合された状態となる所定の自然長L1に設定する。
【0072】
このような構成により、先端構成部21から先端カバー61を取り外し、起上台42が最大倒置した状態のとき、ワイヤ取付部材44の係止溝44cから先端口金部材54が自然に外れ、ワイヤ端末部材43をワイヤ取付部材44から取り外すことができる。
【0073】
これにより、ワイヤ41を起上台42から取り外す際に、可撓性チューブ51を圧縮して、チューブ本体52を縮める動作が必要なくなる。
【0074】
(第7の変形例)
図28は、第7の変形例の視野方向が直視の内視鏡の先端部を示す分解斜視図、図29は第7の変形例の視野方向が直視の内視鏡の先端部を示す斜視図である。
【0075】
以上に記載の技術は、視野方向が側視または斜視の内視鏡1の構成を例示したが、これに限定されることなく、図28および図29に示すように、直視の視野方向を有し、先端構成部21に先端カバー61が装着脱され、先端部8に可動部である起上台42が設けられる内視鏡の構成にも適用可能である。
【0076】
(参考例)
図30は、参考例の内視鏡の洗浄具を示す平面図である。
図30に示すように、内視鏡1を洗浄消毒する洗浄具200の一例を以下に説明する。
【0077】
洗浄具200は、内視鏡1が収容される洗浄曹201と、洗浄液、消毒液などの液体が入れられた液体収容曹202を有している。
【0078】
また、洗浄具200は、内視鏡1の洗浄チューブ取付口金15に接続される洗浄チューブ110と、先端カバー61および可撓性チューブ51が取り外された先端部8に装着される洗浄具本体203と、この洗浄具本体203に一端が接続される第1の送液チューブ111および第2の送液チューブ112と、を有している。
【0079】
また、洗浄チューブ110は、第1の送液チューブ111の中途に設けられる三方活栓206に接続されている。
【0080】
第1の送液チューブ111は、第1のシリンジ204が三方活栓206よりも液体収容曹202の側の中途部分に接続されて、液体収容曹202に他端部が入れられている。第2の送液チューブ112は、第2のシリンジ205が中途部分に接続されて、液体収容曹202に他端部が入れられている。
【0081】
このように構成された洗浄具200は、第1のシリンジ204および第2のシリンジ205によって、液体収容曹202の洗浄液、消毒液などの液体を内視鏡1に供給して、内視鏡1の洗浄消毒が行える。
【0082】
なお、ユーザは、三方活栓206の管路切り換えによって、第1のシリンジ204による送液経路を洗浄チューブ110と第1の送液チューブ111に切り替え、内視鏡1内のワイヤ被覆チューブ67と洗浄具本体203に収容されている先端部8の起上台42周りの洗浄消毒を行う。
【0083】
このとき、洗浄具200は、洗浄液、消毒液などの液体が三方活栓206によって洗浄チューブ110と第1の送液チューブ111の一方に送液されるため、ワイヤ被覆チューブ67または先端部8の起上台42周りに強力な大量の液体を送液でき、内視鏡1の洗浄消毒が容易となる。
【0084】
なお、上述の内視鏡1は、処置具を起伏する起上台42を有する構成を例示したが、これに限定されることなく、起上台42に変えて、処置具などを揺動する可動部としての揺動台を有する構成としてもよい。
【0085】
以上に記載した各実施の形態および変形例の構成は、それぞれを組み合わせたものとしてもよく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0086】
例えば、各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【0087】
本発明によれば、挿入部の先端部に設けられた可動部を駆動するワイヤを被覆するチューブの交換修理および洗浄消毒を容易にし、洗浄消毒時の医療従事者の負担を軽減する内視鏡を提供することができる。
【0088】
本出願は、2018年2月15日に日本国に出願された特願2018−024914号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。
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