【実施例1】
【0068】
次に、
図3を参照して第1の使い方、すなわち、情報のバックアップや保護に有効なネットワークシステムについて説明する。各端末機器T1乃至Tnは、夫々共通化された専用メモリ領域M1乃至Mnを有しており、メインサーバ4とは通信ネットワーク1を介して接続される。そして、これら端末機器T1乃至Tnに割り当てられた専用メモリ領域M1乃至Mnによって、一つの集合メモリ空間3が構築される。ここでは、各端末機器に内蔵されているアクセス制御部14は、内部アクセス15を禁止し、外部アクセス16のみを許可するファイアウォール機能を有している。
【0069】
このシステムを用いてメインサーバの情報をバックアップする様子が
図4に示されている。メインサーバ4は、各端末機器に割り当てられた専用メモリ領域のサイズに合わせてバックアップすべき情報を分割し、ネットワーク1を介して各端末機器T1乃至Tnに分散して転送する。各端末のアクセス制御部14は、メインサーバ1から送られてきた分割情報が、自分の端末のものであることを、例えば端末固有のIPアドレス等の識別情報によって認識し、自身の専用メモリ領域13に格納する。このようにして各端末機器に格納された分割情報は、併せて一つの集合メモリ空間3を構成し、予め決められた外部機器(例えば、メインサーバ4や中央管理装置(図示せず))からのみアクセスすることができる。
【0070】
このシステムの大きな特徴は、従来のようなバックアップ用の分散サーバを必要としないことである。さらに、端末機器が携帯用もしくは携行用の移動端末の場合、バックアップされた情報は、一つの場所に留まっておらず動き回っていることになる。しかも、その移動を第三者が把握したり予測したりすることは極めて困難といえる。故に、堅牢なセキュリティサーバとしてその威力を発揮することができる。勿論、分散サーバの狙いでもある通信トラフィック対策も、十分に兼ね備えたバックアップシステムとして機能することは明らかである。なお、バックアップ用としてではなく、特定の装置からしかアクセスできない重要情報の保管用としても適用できることは当業者が容易に理解しうることである。
【0071】
図5は、各端末機器T1乃至Tnの専用メモリ領域を、それぞれ情報保護用として活用する仕組みを説明する図である。このような活用例として、端末機器所有者の個人情報や秘密情報の管理が挙げられる。例えば、重要メモや備忘録等の管理に有用である。
【0072】
その一例として、端末機器T1の所有者が、自己の重要メモ17を端末機器T3の専用メモリ領域M3にネットワーク1を介して送り記憶させておく例を
図5は示している。ここでは、端末T3のアクセス制御部は、端末T1からのアクセスのみを許可するように働く。このようにすることで、端末機器T1の所有者が、仮に自分の端末を失くしたとしても、重要メモ17は端末T3に安全に保管されているため、情報紛失の心配がなくなる。また、複数の端末に同様のメモを保存しておけば、保存した端末が紛失したとしても被害は抑えられる。
【0073】
このような端末間通信は、
図6に示されるようにネットワーク1を介して端末T1とT3の間で行われる。端末T1からネットワーク1を介して端末T3に送られた重要メモは、端末T3の専用メモリ領域13に保存される。端末T3専用メモリ領域13に保存されたメモは、アクセス制御部14によって自身の内部アクセス15では見ることが出来ないので、端末T3の所有者に情報が漏れることはなく、集合メモリ空間3の一つの専用メモリ領域に安全に保存された状態を維持することができる。しかも、この専用メモリ領域13は、端末機器T3と共に場所を移動するメモリであるため、ハッキングやトラッキングの被害を受け難いという効果もある。
【実施例2】
【0074】
図7は、専用メモリ領域を前記第2の使い方で用いる例を示したネットワーク通信システムの機能ブロック図である。ここでは、専用メモリ領域M1乃至Mnは、自分の端末からでも、また、他の端末からでもアクセスできるようにアクセス制御部(
図2の14)が動作する。このシステムは、端末間での情報のやり取りに適しており、特に、ある端末機器が欲しい情報を他の端末機器に要求したり、あるいは、自分で取得した情報を他の端末機器に提供するのに有効な端末間通信システムといえる。
【0075】
具体的には、ある地域Aに現在存在する端末群A2と他の地域Bに現在存在する端末群B2との間でリレーサーバ5を使って情報のやり取りを行う際のネットワーク通信システムの例が
図7に示されている。各端末は、ネットワークを介してリレーサーバ5と送受信することで端末間通信を実現するものである。なお、使用可能な端末機器としては、上述の専用メモリ領域が予め確保されているものであれば、その種類を問う必要はない。
【0076】
使用されるリレーサーバ5の内部構成が
図8に示されている。図示されているように、リレーサーバ5は、要求ボックスファイル51、回答ボックスファイル52、及び、これらを制御するボックス制御部53を備えている。要求ボックスファイル51は、各端末からネットワークを介して送られてきた要求内容を端末ごとにファイル形式でまとめて記憶するものであり、回答ボックスファイル52は、各端末から送られてきた回答内容を同じくファイルごとにまとめて記憶するものである。ボックス制御部53は、要求内容と回答内容とを識別番号(例えば、各要求に受理番号を付与する等)で関連付けたり、時間を管理したりする機能を有している。
【0077】
以下に、配送業者が本システムを使って配送業務を実施する例を
図8乃至
図10を用いて説明する。ここでは、地域Aにいる配送者が自己の端末T1を用いて情報要求を出す場合が想定されている。端末T1の所有者は、
図9Aに示すような要求フォーマットを使って知りたい情報をリレーサーバ5に送信する。要求フォーマットには、時間と地域と要求内容が記載されており、このフォーマットを自分の端末で画像表示して知りたい情報の入力を行う。かかる要求フォーマットは、各端末が共通に使用するフォーマットとして共用されるもので、アプリケーションで各端末に容易に設定することができる。このように、フォーマットを共通化することで知りたい情報と教えたい情報とを統一化することができ、無意味な情報や的外れの情報を混在させることなく、無駄のない情報交換が可能となる。
【0078】
時間情報としては、例えば、現在から前後5分以内、前後10分以内、前後20分以内、前後30分以内、さらに、前後1時間以内の区分けがなされており、入手したい情報のタイミングを知らせることができるようになっている。また、地域情報としては、現在地から1キロ以内、2キロ以内、3キロ以内、5キロ以内、さらに10キロ以内の各指定ができるようになっている。こうして、配送者(端末T1の利用者)が、何時、何処の情報が欲しいのかを他の端末に知らせることが出来る。さらに、知りたい情報がどの様な情報なのかを知らせる要求内容を入力することで、雑情報を含まない的確な回答を得ることが出来る。特に、配送業務においては、急な天候変化や駐車スペースの空き状況、トイレの場所や急な工事による通行止めの様子、あるいは、昼食店の混雑状況等、一般の公開情報からは得にくい、また得るのに時間がかかる最新情報を、正確にかつタイムリーに入手することで業務効率を格段に向上させることができる。
【0079】
さらに、要求フォーマットには、情報を入手したい制限時間(例では、前後5分以内から前後1時間以内まで、現在の自分が知りたい時間帯を指定)が付加されているので、忙しい時に情報入手に手を煩わせることなく、必要な時に必要な情報だけを正確に入手することができる。これこそ、従来の設置型のサーバからは到底得ることが出来ない、端末機器という動く情報収集ツールの最大の利点を活かした人工知能型のネットワーク通信システムと言える。
【0080】
一方、各配送者は、自分の配送業務の遂行中に、配送状況や休憩情報(休息開始と休息終了時刻)、不在状況、待機状況等、業務に必要な情報を自分の端末から中央管理センター(図示せず)に送信することを義務付けられていることが多い。その際、現場で入手した役立ち情報を専用メモリ領域に記録しておくことで、他の配送者からの問合せにその都度対応する煩わしさから解放される。すなわち、現場で確認した情報を要求フォーマットに対応する形式で、文字、記号、音声、もしくは、写真や画像(動画も可)等の情報として、その取得時間(端末のタイマー機能で取得可)と取得場所(端末のGPS機能で取得可)と共に専用メモリ領域に保存しておけばよい。
【0081】
前記要求フォーマットに対応する回答フォーマットの例を
図9Bに示す。図より明らかなように、前記要求フォーマットに対応した回答入力フォーマットで、現場の状況を見て回答し易いように作っておく方が良い。各回答に、それを入力した時刻と場所のデータを、端末内蔵のタイマーやGPSから自動的に取得して回答に紐づけておくことで、制限時間や距離(地域指定)の要求条件を満たす回答を提供することができる。
【0082】
次に、情報要求から回答入手までの手順の例を
図10のフローチャートを用いて説明する。各端末の利用者は、業務開始時にアプリケーションを起動して、専用メモリ領域を使用する準備を行う(ステップS1)。このアプリケーションの起動を受けて、端末内のアクセス制御部14は、専用メモリ領域に対する自身の端末からの内部アクセス15を許可する。ただし、この専用メモリ領域は、当該端末で実行可能な他のアプリケーションで使用することができないのは前述したとおりである。
【0083】
次に、地域Aにいる配送者(端末T1)が、現在の場所から2キロ以内の地域に関する工事状況と駐車スペースの空き状況を知りたい場合、希望する制限時間(例えば、10分以内)と共に地域情報(2キロ以内)と要求内容(工事と駐車)を要求フォーマットから入力してネットワークを介してリレーサーバ5に送信する(ステップS2)。リレーサーバ5は、この要求情報F1を受け付けると、端末T1に対して受理番号を返信し(ステップS3)、次いで、要求ボックスファイル51に受理番号と共に保存する(ステップS4)。
【0084】
一方、各端末は所定の時間間隔(例えば、30秒毎)でリレーサーバ5の要求ボックスファイル51のモニタリングを行い(ステップS5)、ボックス内に自分が回答できる要求があった場合には、専用メモリ領域に保存してある回答をリレーサーバ5に送信する(ステップS6)。ここでは、2キロ以内の地域Bにいる端末T2が回答を自身の専用メモリ領域に有しているため、端末T2からネットワーク1を介してリレーサーバ5に回答が送信される。かかる処理は、端末T2の利用者がその都度実行するのではなく、端末T2とリレーサーバ5の間で30秒毎に自動的に行われるため、いちいち配送者の手を煩わせることはない。端末T2は回答を送信すると、当該要求に関する処理を終了して(ステップS7)して、次の要求のモニタリングを行う。
【0085】
端末T2から回答を受け取ったリレーサーバ5は、回答ボックスファイル52に端末T2から送られてきた回答情報F3を保存する(ステップS8)。回答情報F3は、受理番号を識別情報として先の要求と紐づけられて回答ボックス52に保存される。
【0086】
要求を出した端末T1は、所定時間毎(この例では、30秒毎)にリレーサーバ5の回答ボックス52をモニタリングして(ステップS9)、受理番号に紐づけられた回答F4を見つけると、ネットワークを介してこれを受信して(ステップS10)、処理終了となる(ステップS11)。以上のように、各端末機器は、予め定められた時間間隔(この例では、30秒間隔)でリレーサーバ5の要求ボックス51と回答ボックス52を自動的にモニタリングして、要求ボックス51にファイリングされている要求ファイルをその都度一括して自身の端末にダウンロードするようにアプリケーションで制御されている。一括して取り込んだ要求ファイルに対して、自身の専用メモリ領域に保存されている回答とのマッチングが行なわれ、要求条件に該当する回答があれば、まとめてリレーサーバ5の回答ボックス52に自動送信される。これら一連の処理は、予め各端末機器にインストールしたアプリケーションで実行することができる。
【0087】
なお、この例では、各端末が取得した情報は、取得と同時にリレーサーバに送るのではなく、要求があった時に送るようにしているので、ネットワークのトラフィックを必要以上に混雑させる心配はない。また、回答情報として、端末利用者が手動で入力した情報以外にも、端末機器自身が自動的に取得可能な各種センサー情報や走行情報等を専用メモリ領域に保存しておくようにしても良い。
【0088】
また、得られた回答には、取得場所と取得時間が付加されているので、これらを用いて地図画面上にプロットして表示することにより、端末T1の利用者は、必要な情報を分かり易く入手することが出来る。なお、回答方法として、回答フォーマットの内容に対応する音声や写真画像、動画情報等、端末利用者がその現場で入手した情報を付加しておくことも可能である。
【0089】
以上のように、本実施例によれば、各端末機器が現場で取得した情報を自身の専用メモリ領域に保存し、その情報を必要とする要求の有無について所定時間毎にネットワークを介してリレーサーバをモニタリングするようにしているので、情報提供者は現場で確認した最新の情報を自分の都合に合わせて専用メモリに保管しておくだけで良いので、返答に煩わされることなく自分の業務を遂行することができる。また、要求者は、相手を指定することなくリレーサーバに要求を送信するだけで、要求に合った回答を入手することができる。
【0090】
さらに、要求者が回答を入手した後、要求ボックスファイル51および回答ボックスファイル52からその要求と回答に関する情報を消去するようにしても良い。このようにすることで、要求と回答に関して常に最新の情報をリレーサーバに保存しておくことが可能となり、リアルタイムの情報を優先して提供することができるようになる。
【0091】
このように処理終了後にボックスファイルを消去することで、
図8のボックス制御部53は、要求を受け付けてから所定時間が経過しても、なお要求ボックスにファイルが存在している時に、「回答なし」を伝える旨のメッセージを要求端末T1に送信することができる。その結果、要求者は、何度も要求を繰り返すことなく回答の有無を確認することができる。また、車載用端末を利用して本発明を実施する場合には、車載用端末から定期的に発信される走行データの発信タイミングに合わせて、リレーサーバからファイルを一括してダウンロードして要求内容を端末側で確認することも出来る。
【0092】
なお、このように端末機器が取得した情報を活用する場合、夜間などのように端末機器の電源がオフされている状況では、回答ボックスファイル52に回答情報が送信されないことも想定される。その場合には、リレーサーバ5のボックス制御部53が、要求を受理してから予め定められた時間内に当該要求に対する回答が送信されないことを検出して、「回答不可」を伝えるメッセージを要求端末に送信すれば良い。これは、サーバのタイマー管理機能を用いて容易に実現することが出来る。
【0093】
加えて、リレーサーバ5に要求ボックスファイル51と回答ボックスファイル52を設けることで、リレーサーバに情報を集約できるので、各端末同士を直接接続することなく、いずれの端末もリレーサーバへのアクセスだけで情報のやり取りが出来る。故に、端末本来の機能を損なうことなく本発明のネットワーク通信システムを構築できることも大きな優位点と言える。
【実施例3】
【0094】
さらに、本発明は、広い地域にまたがるネットワークシステムにも提供することが出来る。
図11は、かかる広域ネットワークシステムの例を示すブロック図である。ここには、物理的に異なる地域A、B、Cにおいて、それぞれの地域のリレーサーバA5、B5、C5を用いて本発明に係るネットワークシステムを構築した例が図示されている。
【0095】
地域ごとに端末群A2、B2、C2が存在し、各端末はリレーサーバA5、B5、C5を介してネットワーク接続されており、各端末の専用メモリ領域の集合体が本発明の一つの集合メモリ空間を形成することになる。ここでは、ある任意の端末から出された要求を、各地域の端末が夫々のリレーサーバを順にポーリングすることによって確認することが出来る。要求方法と回答方法は、前述した実施例2と同等で良いため、先の説明を参照されたい。
【0096】
このように広域なネットワークにおいては、接続される端末の数も多く、自動的に大規模な集合メモリ空間の構築が可能となる。従って、この集合メモリ空間に記憶される情報量も多く、しかもどの情報も現場で取得した貴重な情報と言える。例えば、企業が本発明のネットワークシステムを採用する場合、従業員の端末で得られた情報(各端末の専用メモリ領域に蓄積された情報)には企業的価値も高く、ビッグデータとして業務の改善や効率化、あるいは、新規ビジネスの創造等に有用な情報となり得る。
【0097】
しかしながら、このような情報をリレーサーバに残しておくのは、セキュリティの観点から好ましいものではない。そこで、
図11に示すように、ネットワークを介して各リレーサーバとメインサーバ4とを接続することで、リレーサーバに保管されている情報をメインサーバにアップロードすることが効果的である。
【0098】
例えば、
図12にフローチャートを示したように、各リレーサーバ5A、5B、5Cのボックス制御部にて状態を監視し(ステップS20)、従業員の退社時間が過ぎて情報のやり取り頻度が所定の数値より低くなった場合に、リレーサーバからメインサーバ4に転送要求を行い(ステップS21)、メインサーバ4からこの要求を許可する要求受付がなされたら(ステップS22)、リレーサーバに保管されている情報(要求ボックスファイルと解凍ボックスファイル)を一括してメインサーバに転送する(ステップS23)。メインサーバ4は、各リレーサーバから転送されてきた情報を受信して(ステップS24)、これらを過去情報として保存する(ステップS26)。メインサーバ4は、情報が正しく保存されたことを確認して受信確認信号をリレーサーバに送信する。リレーサーバは、この確認信号に応答して要求ボックスと回答ボックスの情報を消去する(スッテプS25)。
【0099】
こうすることで、端末で得られた貴重な情報を保存しておくことができ、かつ、リレーサーバに情報を残しておく必要もなくなる。メインサーバ4に保存された情報は、過去情報として各端末機器に転送することもできれば、端末からの要求に応じて回答情報として送信することもできる。