特許第6855105号(P6855105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855105
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】導電薄膜コンポジット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20210329BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   G01N27/30 B
   C23C14/34 S
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-162339(P2019-162339)
(22)【出願日】2019年9月5日
(62)【分割の表示】特願2018-512845(P2018-512845)の分割
【原出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2020-12838(P2020-12838A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年9月17日
(31)【優先権主張番号】62/167,091
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500149223
【氏名又は名称】サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】ウェンタオ・シュウ
(72)【発明者】
【氏名】ファビエン・ラインハート
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−296267(JP,A)
【文献】 特開2008−213059(JP,A)
【文献】 国際公開第2001/073153(WO,A1)
【文献】 特開平08−153722(JP,A)
【文献】 特表2009−534524(JP,A)
【文献】 H.F. Winters et al.,Gas Incorporation into Sputtered Films,Journal of Applied Physics,1967年,Vol.38, No.10,Pages 3928-3934
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジットを含むバイオセンサ電極であって、前記コンポジットは、
a. ポリマー膜基板と、
b. 前記基板に隣接して配置される導電層と、
を含み、
c. 前記導電層はクリプトンおよび導電材料を含み、
d. 前記導電層は約150ナノメートル以下の平均厚さを有し、
e. 前記基板上に配置されている前記導電層は87ミクロン以下のスクラッチ抵抗性を有し、ここで、前記導電層は0.5Nの荷重の下でエリクセン硬度試験ペンシルを使用してスクラッチされ、
f. 前記導電材料は、アルミニウム、炭素、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、マグネシウム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、レニウム、ロジウム、セレン、銀、タンタル、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、それらの混合物、これらの元素の合金、これらの元素の酸化物、または、これらの元素の金属的化合物を含む、
バイオセンサ電極。
【請求項2】
基板層と導電層とを含むコンポジットを含むバイオセンサ電極を形成する方法であって、
a. 前記基板層を提供することと、
b. クリプトンを含むスパッタリングガスを用いたスパッタリング技術によって前記導電層を形成することと、
を含み、
c. 前記導電層は約150ナノメートル以下の平均厚さを有し、
d. 前記基板層上に形成されている前記導電層は87ミクロン以下のスクラッチ抵抗性を有し、ここで、前記導電層は0.5Nの荷重の下でエリクセン硬度試験ペンシルを使用してスクラッチされ、
e. 前記導電層は、アルミニウム、炭素、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、マグネシウム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、レニウム、ロジウム、セレン、銀、タンタル、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、それらの混合物、これらの元素の合金、これらの元素の酸化物、または、これらの元素の金属的化合物を含む、
方法。
【請求項3】
前記導電層は約50ナノメートル以下の厚さを有する、請求項1に記載のバイオセンサ電極。
【請求項4】
前記導電材料は、金(Au)を含む、請求項1に記載のバイオセンサ電極。
【請求項5】
前記導電層は、クリプトン、およびアルゴン、キセノン、ネオンまたはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のバイオセンサ電極。
【請求項6】
前記導電層は、基本的に前記導電材料およびクリプトンから成る、請求項1に記載のバイオセンサ電極。
【請求項7】
クリプトンは、SIMSに従って測定される、少なくとも約1×1010atoms/cmの量で前記導電層に存在する、請求項1に記載のバイオセンサ電極。
【請求項8】
前記スパッタリングガスは、クリプトン、およびアルゴン、キセノン、ネオンまたはそれらの組み合わせなどの別の希ガスを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記スパッタリングガスは、クリプトンおよびアルゴンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記スパッタリングガスは、前記スパッタリングガスの全容積に基づいて、少なくとも約0.05の容積分率のクリプトンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記スパッタリングガスは基本的にクリプトンから成る、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電薄膜コンポジットに関し、より詳細には、バイオセンサ電極として役立つ導電薄膜コンポジットに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサ電極において用いるような薄膜コンポジットは、通常可撓性基体の上に導電層を使用する。導電層は、貴金属を含む場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
貴金属の価格が上昇するにつれて、薄膜コンポジットの貴金属の量を減少させるための努力がなされてきている。現在まで、使用する貴金属の量を薄膜コンポジットの誘電率または他の材料特性に有害な影響を与えずに減らそう、という努力はうまく実を結んでいない。
【0004】
更にまた、問題を悪化させているのが、導電層は厚さが薄いと振る舞いが異なり、より厚い層ではうまく機能していたような好結果のアプローチを予測するのが、非常に困難であるか不可能でさえあるということである。例えば、100ナノメートル未満および特に60ナノメートル未満の厚さを有する導電層は、多くの材料特性においてそれより厚い層とは全く違った振る舞いをする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明の発明者は、導電層の厚さを、そしてそれによって使用する貴重な金属材料の量を、誘電率、耐摩耗性、付着性、密度、耐食性、電気化学的性能およびそれらの組み合わせを含む多くのパラメータの性能を犠牲にせずに、著しく減らすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0006】
実施形態は、例証として示すものであり、添付図面において制限されるものではない。
図1】本開示の一実施例による、薄い導電性コンポジットを示す。
図2】31.2ナノメートルのAu膜の4サイクルサイクリックボルタモグラムの図であり、可逆性かつ反復可能な酸化および還元処理を示す。
図3】本開示の実施例1による、ナノメートル単位の導電層の厚さ対抵抗率のプロットを示す。
図4】本開示の実施例1による、コンポジットの抵抗率対クリプトン容積分率のプロットを示す。
図5】本開示の実施例1による、厚み対シート抵抗のプロットを示す。
図6】本開示の実施例2による、厚み対スクラッチ幅のプロットを示す。
【0007】
当業者は、図の要素が単純性および明快さのために図示されており、必ずしも一定の比率で描かれているわけではないと認識する。例えば、図の要素のいくつかの寸法は他の要素と比べて誇張されて、本発明の実施形態の理解を向上させるのを助けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図と組み合わせた以下の記述は、本願明細書において開示される教示を理解する際に助けとなるように提供される。以下の説明は、教示の特定の実装および実施形態に焦点を当てている。この焦点は、教示を記載する際に助けとなるように提供されており、教示の範囲または適用可能性上の制限と解釈されてはならない。しかしながら、他の実施形態は、本出願にて開示したような教示に基づいて使用することができる。
【0009】
用語「comprises(含む)」、「comprising(含んで)」、「includes(備える)」、「including(備えて)」、「has(有する)」、「having(有して)」あるいはそれらの他のいかなる変化形も、特徴の非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、特徴の列挙を含む方法、物品または装置は、それらの特徴だけに必ずしも限られているというわけではなく、はっきりと列挙されないか、またはこのような方法、物品または装置に固有でない他の特徴を含むことができる。更に、はっきりと反対に述べられない限り、「or(または)」は、包含的な「または」を指すものであり、排他的な「または」を指すものではない。例えば、条件AまたはB、は以下のいずれか1つによって満たされる:Aは真であり(または存在する)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、そして、AおよびBは両方とも真である(または存在する)。
【0010】
また、「a(1つの)」または「an(1つの)」は、本願明細書において記載される要素およびコンポーネントを記載するために使用される。これは、単に便宜のため、そして、本発明の範囲の一般的な意味を与えることだけのために行うものである。この記述は、それが別の意味であるということが明白でない限り、1つ、少なくとも1つ、または単数形を含み、また、複数形も含み、その逆もあるとして、読まれなければならない。例えば、単一項目が本願明細書において記載されるときに、1つ以上の項目を単一項目の代わりに用いることができる。同様に、1つ以上の項目が本願明細書において記載される所で、単一項目はその1つ以上の項目と置換することができる。
【0011】
他に定めない限り、本願明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が帰属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。材料、方法および実施例は、例証を示すに過ぎず、制限的であることを意図してはいない。本願明細書において記載されていない範囲については、特定の材料および処理行為に関する多くの詳細は従来通りであり、導電薄膜技術の範囲内の教科書および他のソースで見つけることができる。
【0012】
本開示は、非常に薄い厚さで改良された誘電率を有する導電薄膜コンポジットに関する。本概念は、本発明の範囲を説明しかつそれを限定はしない、以下で記載される実施形態を見ることによって、より良く理解される。
【0013】
ここで図1を参照すると、本開示の一態様は、バイオセンサ電極のための導電薄膜コンポジットなどの、導電薄膜コンポジット10に関する。導電性コンポジット10は、基板20および基板20に隣接して配置した導電層30を含むことができる。特定の実施形態において、例えば図1に図示されるように、導電性コンポジット10は基本的に基板20および導電層30から成ることができ、ここで、導電層30は基板層20と直接隣接して、接触している。
【0014】
基板は、導電薄膜コンポジットを作成することに役立ついかなる基板物質も含むことができる。特定の実施形態において、基板は、ポリマー膜を含むことができる。例えば、適切なポリマー膜は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドまたはそれらの組み合わせなどのポリオレフィンを含むことができる。更に、特定の実施形態で、適切なポリマー膜は、熱可塑性ポリマー薄膜として説明することができる。非常に特定の実施形態において、基板は、ポリエステル膜、例えばテレフタル酸ポリエチレン(PET)を含むことができる。
【0015】
基板層は、望ましく薄い厚さを有することができる。例えば、特定の実施形態で、基板層は、約500ミクロン以下、約400ミクロン以下または約350ミクロン以下の厚ささえ有することができる。更なる実施形態において、基板層は、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約12ミクロンまたは少なくとも約100ミクロンの厚ささえ有することができる。更に、基板層は、約12ミクロンから約500ミクロンまで、または、約100ミクロンから約350ミクロンまでの範囲の厚ささえも有することができる。
【0016】
特定の実施形態において、基板は、導電層の適用の前に熱処理することができる。熱処理は、導電層堆積プロセスの間、収縮を減らすことができ、および/または耐熱性を改善することができる。他の実施態様においては、基板は熱処理されることができない。
【0017】
図1を再度参照すると、導電薄膜コンポジット10は導電層30を含む。
【0018】
最も幅広い実施形態においては、導電層は、いかなる望ましい導電材料も含むことができる。特定の実施形態において、導電層は、導電材料、例えばアルミニウム、炭素(例えばグラファイト)、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、マグネシウム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、レニウム、ロジウム、セレン、銀、タンタル、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、それらの混合物、これらの元素の合金、これらの元素の酸化物、または、これらの元素の金属化合物を含むことができる。
【0019】
非常に特定の実施形態において、導電材料は貴金属を含むことができる。
【0020】
なお更なる特定の実施形態において、導電材料は、金、パラジウムまたはそれらの組み合わせを含むことができる。ある種の実施形態では、導電材料は、金を含むことができるかまたは、基本的にそれから成ることさえできる。他の実施態様において、導電材料は、パラジウムを含むことができるかまたは、基本的にそれから成ることさえできる。
【0021】
導電材料に加えて、導電層はスパッタリングガスからスパッタリングされた原子を更に含むことができる。例えば、導電層は、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンまたはそれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態において、導電層はクリプトンを含むことができる。更なる実施形態において、導電層は、クリプトンおよび別の元素(例えばアルゴンおよび/またはキセノン)を含むことができる。非常に特定の実施形態において、導電層は、基本的に導電材料およびクリプトンから成ることができる。なお更なる特定の実施形態において、導電層は、基本的に金および/またはパラジウムおよびクリプトンから成ることができる。
【0022】
後で詳しく述べるように、本開示の特定の実施形態は導電薄膜コンポジットを形成する方法を含み、そして、それはユニークなスパッタリングプロセスを含むことができる。スパッタリングプロセスの結果は、導電材料の原子の間に圧縮されたスパッタリングガスからの、上記のスパッタリングされた原子の取り込みを含む。
【0023】
事実、本開示の特定の実施形態の特定の利点は、特に薄膜バイオセンサ電極のための、スパッタリングガスとしてのクリプトンの使用、およびそれによるクリプトンの形成された導電層への取り込みである。下記の実施例において示されるように、スパッタリングガスとしてのクリプトンの非常に薄い導電性コンポジットにおける取り込みは、プロパティ(例えば誘電率、耐摩耗性、付着性、密度、耐食性、電気化学パフォーマンスおよびそれらの組み合わせ)の優位でかつ予想外の利点を呈した。これらの相当な改良は、薄い導電性コンポジットの作成が導電層の厚さの関数として、未曽有の性能を成し遂げることを可能にした。例えば、大幅に少ない量の導電材料(すなわち減少した厚さ)を使用しながら、最高水準技術に対して等価な性能を維持することができる。
【0024】
従来技術において周知である二次イオン形質量分析法(SIMS)が、導電層の様々な深さでスパッタリングされた原子の含有量および組成を検出して、定量化するために、使用された。この能力によって、本発明者らは、スパッタリングされた原子の含有量を導電層の厚さにより制御するユニークなスパッタリングプロセスを開発することができた。
【0025】
非常に特定の実施形態において、スパッタリングされた非導電性原子は、約5ナノメートルの深さで、SIMSに従って測定される、少なくとも約1×1010atoms/cm、少なくとも約1×1012atoms/cm、少なくとも約1×1014atoms/cm、少なくとも約1×1016atoms/cm、少なくとも約1×1018atoms/cm、または、少なくとも約1×1019atoms/cmでさえある量で、導電層に存在することができる。更に、導電層は、約5ナノメートル、約10ナノメートル、約20ナノメートル、約30ナノメートル、約40ナノメートル、約50ナノメートル、約60ナノメートルまたは約70ナノメートルでさえある深さで、SIMSに従って測定される、スパッタリングされた非導電性原子の上記の詳述された含有量を有することができる。
【0026】
この文書の全体にわたって記載されるように、導電層は望ましくは薄い厚さを有することができる。例えば、特定の実施形態で、導電層は、約150ナノメートル以下、約125ナノメートル以下、約100ナノメートル以下、約80ナノメートル以下、約70ナノメートル以下、約60ナノメートル以下、約50ナノメートル以下、約40ナノメートル以下、約30ナノメートル以下、約25ナノメートル以下または約20ナノメートル以下の厚ささえ有することができる。特定の実施形態において、導電層は、100ナノメートル以下の厚さを有することができる。非常に特定の実施形態において、導電層は、80ナノメートル以下の厚さを有することができる。なおも非常に特定の実施形態において、導電層は、約40ナノメートル以下の厚さを有することができる。更なる実施形態において、導電層は、少なくとも約0.1ナノメートル、少なくとも約0.5ナノメートル、少なくとも約1ナノメートル、少なくとも約3ナノメートル、少なくとも約5ナノメートルまたは少なくとも約10ナノメートルでさえある厚さを有することができる。更に、導電層は、上で設けられている最小および最大のいずれかの範囲の厚さ、例えば約3ナノメートルから約150ナノメートルまでの範囲、または、約5ナノメートルから約100ナノメートルまででさえある範囲を有することができる。
【0027】
同様に、導電層は、望ましくは薄い正規化厚さを有することができる。導電層の正規化厚さは、t/λを指し、ここで、tは膜厚さであり、そして、平均自由行程λは、C. Kittel, Introduction to solid state physics, Wiley, New York, 5th edition, 1976に従い、室温で35.8ナノメートルである。
【0028】
特定の実施形態において、導電層は、約5.0以下、約4.0以下、約3.0以下、約2.5以下、約2.0以下、約1.75以下、約1.5以下、約1.25以下、1.0以下または更に約0.75以下でさえある、正規化厚さを有することができる。更なる実施形態において、導電層は、少なくとも約0.01、少なくとも約0.1または少なくとも約0.2でさえある、正規化厚さを有することができる。更に、導電層は、上で設けられている最小および最大のいずれかの範囲の正規化厚さ、例えば約0.01から約5.0までの範囲、または、約0.1から約3.0まででさえある範囲を有することができる。
【0029】
本開示の実施形態による導電薄膜コンポジットは、他に類のない特徴、例えば他に類のない抵抗率、耐摩耗性、付着性、密度および耐食性を含むことができる。これまで、本願明細書において記載されるこのような薄い厚さで以下の詳述された抵抗率、耐摩耗性、付着性、密度および耐食性を有する導電性コンポジットを形成する方法は、知られていなかった。
【0030】
本願明細書において記載されるように、導電薄膜コンポジットは、低抵抗率によって示されるような優れた誘電率を有する。抵抗率は、所与の材料がいかに強く電流の流れに対抗するかを定量化する真性的性質である。低抵抗率は、電荷の変化を確実に許容する材料を示す。本願明細書において使用する場合、抵抗率は、シート抵抗に膜厚さを乗算することによって算出され、ここで厚さは、来技術において周知であるように、誘導結合プラズマ光学発光分光測定法(ICP−OES)によって測定される。
【0031】
従って、特定の実施形態において、導電性コンポジットは、約65Ω・nm以下、約63Ω・nm以下、約61Ω・nm以下、約59Ω・nm以下、約57Ω・nm以下、約55Ω・nm以下、約50Ω・nm以下、約40Ω・nm以下、約35Ω・nm以下、または、約30Ω・nm以下でさえある、抵抗率を有することができる。更なる実施形態において、導電性コンポジットは、少なくとも約25Ω・nm、少なくとも約30Ω・nm、または、少なくとも約35Ω・nmでさえある、抵抗率を有することができる。更に、導電性コンポジットは、上で設けられている最小および最大のいずれかの範囲、例えば約30Ω・nmから約100Ω・nmの範囲、または、約40Ω・nmから約80Ω・nmでさえある範囲の、抵抗率を有することができる。
【0032】
抵抗率が厚さで、そして、特に導電層の非常に薄い厚さにおいて変化し得るので、抵抗率は厚さの関数としての等式として示すことができる。例えば、特定の実施形態で、導電性コンポジットは、97.077t−0.071Ω・nm以下の抵抗率を有することができ、ここでtはナノメートル単位の導電層の厚さを表す。更なる実施形態において、導電性コンポジットは、97.077t−0.071Ω・nmより約5%小さいか、約10%小さいか、約15%小さいかまたは約20%小さくさえある値以下の抵抗率を有することができ、ここでtはナノメートル単位の導電層の厚さを表す。
【0033】
コンポジットの導電性能を記述する別の方法は、コンポジットのシート抵抗を評価することである。抵抗率と対比してのシート抵抗の効用は、それが四端子感知測定(四点プローブ測定としても知られる)を使用して直接測定されるということである。シート抵抗は、コンポジット接点の拡大縮小の下で不変であり、従って大きさにおいて著しく異なるコンポジットの電気特性を比較するために用いることができる。本願明細書において使用する場合、シート抵抗は、従来技術において周知であるように、四端子感知測定(四点プローブ測定としても知られる)を使用して直接測定される。
【0034】
シート抵抗が厚さで、そして、特に導電層の非常に薄い厚さにおいて変化し得るので、シート抵抗は厚さの関数としての等式として示すことができる。例えば、特定の実施形態で、導電性コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有することができ、ここでtはナノメートル単位の導電層の厚さを表す。更なる実施形態において、導電性コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sqより約5%小さいか、約10%小さいか、約15%小さいかまたは約20%小さくさえある値以下のシート抵抗を有することができ、ここでtはナノメートル単位の導電層の厚さを表す。
【0035】
従って、特定の実施形態で、導電性コンポジットは、約30Ω/sq以下、約20Ω/sq以下、約10Ω/sq以下、約5Ω/sq以下、約4Ω/sq以下、約3Ω/sq以下、約2Ω/sq以下、約1Ω/sq以下または約0.5Ω/sq以下でさえある、シート抵抗を有することができる。更なる実施形態において、導電性コンポジットは、少なくとも約0.01Ω/sqまたは少なくとも約0.1Ω/sqでさえある、シート抵抗を有することができる。更に、導電性コンポジットは、上で設けられている最小および最大のいずれかの範囲、例えば約0.01Ω/sqから約50Ω/sqまで、または、0.1Ω/sqから約10Ω/sqまででさえある範囲の、シート抵抗を有することができる。
【0036】
特定の実施形態による導電性コンポジットは、望ましくは改良された耐食性を有することもできる。通常、導電薄膜コンポジットは、コンポジットの抵抗率が上昇して、このことにより導電性能を弱め得る時間経過による腐食という難点がある。更に、コンポジットの厚さを減らす試みは、コンポジットの耐食性を損なうことに結果としてなるだけだった。対照的に、本発明者らは驚くべきことに、本願明細書において記載される導電性コンポジットが本願明細書において記載される薄い厚さで、他に類のない耐食性を呈することができるということを発見した。
【0037】
本願明細書において使用する場合、電気的安定度は、指定された時間間隔の間、室温でエージングした後のシート抵抗変化を測定することによって決定される。シート抵抗は、上記の通りに、すなわち4点プローブで測定される。
【0038】
従って、特定の実施形態で、導電性コンポジットには、1日、7日、30日、3ヵ月、6ヵ月または1年でさえある期間の室温でのエージングの後、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下または約3%以下でさえある、シート抵抗変化があり得る。
【0039】
本願明細書において記載される導電性コンポジットの特定の実施形態の別の改良は、導電層の増加した密度である。例えば、特定の実施形態で、導電層は、少なくとも約8g/cm、少なくとも約9g/cmまたは少なくとも約9.5g/cmでさえある密度を有することができる。更なる実施形態において、導電層は、約19.3g/cm以下、約19g/cm以下または約18.5g/cm以下でさえある密度を有することができる。更に、導電層は、上で設けられている最小および最大の任意の範囲、例えば約9.5g/cmから約18.5g/cmまでの範囲の密度を有することができる。
【0040】
密度改良を記述する別の方法は、正規化密度を算出することである。正規化密度は、容積密度によって膜密度を除算することにより決定される。導電層の導電材料の容積密度は、例えば、Cutnell, John D. and Kenneth W. Johnson. Physics 4th Edition. New York: Wiley. 1998: 308において見ることができる。特定の例としては、金の容積密度は、19.30g/cmである。
【0041】
従って、特定の実施形態で、導電層は、少なくとも約0.6、少なくとも約0.65、少なくとも約0.7または少なくとも約0.75でさえある、正規化密度を有することができる。更なる実施形態において、導電層は、約0.99以下、約0.95以下または約0.90以下でさえある、正規化密度を有することができる。更に、導電層は、上で設けられている最小および最大の任意の範囲、例えば約0.75から約0.90までの範囲の正規化密度を有することができる。
【0042】
本願明細書において記載される導電性コンポジットの特定の実施形態の更に別の改良は、改良された耐摩耗性である。耐摩耗性は、スクラッチングに抵抗するコンポジット能力の尺度である。本願明細書において使用する場合、耐摩耗性は、摩滅の後のシート抵抗変化に従って測定される。一旦摩滅されると、導電性コンポジットは伝導パフォーマンスを失い得る。概して、導電層の厚さを減らす従来の試みは、導電性コンポジットの耐摩耗性を弱める結果となっていた。対照的に、本発明者らは、導電層の厚さを減らすにもかかわらず所望の耐摩耗性が維持された、導電性コンポジット構造を、驚くべきことに発見した。
【0043】
隆起摩耗、例えばモデル5130は、テーバー摩耗ASTM D1044(ヘイズ)の類似の手順に則って、ヘイズの変化の代わりにシート抵抗変化をモニタすることによって導電性膜の耐摩耗性を試験するために、用いることができる。従って、特定の実施形態で、導電層は、250のグラム荷重のサイクル当たり、少なくとも約0.5%のシート抵抗変化の耐摩耗性評価を有することができる。更なる実施形態において、導電層は、250のグラム荷重のサイクル当たり、約50%以下のシート抵抗変化の耐摩耗性評価を有することができる。更に、導電層は、上で設けられている最小および最大の任意の範囲の、例えば250のグラム荷重の1サイクル当たり約3%から約10%までのシート抵抗変化の範囲の、耐摩耗性評価を有することができる。
【0044】
本願明細書において記載される導電性コンポジットの特定の実施形態の更に別の改良は、改良されたスクラッチ抵抗性である。スクラッチ抵抗性は、スクラッチングに抵抗するコンポジット能力の別の尺度である。本願明細書において使用する場合、スクラッチ抵抗性は、エリクセン硬度試験ペンシル(例えばモデル308S)を使用して測定される。コンポジット膜の導電層は、0.5Nの荷重の下でペンシルを使用してスクラッチされる。導電性コンポジットに対するスクラッチ抵抗性は、顕微鏡を使用して測定されるコンポジット上のスクラッチの幅として報告される。より狭いスクラッチ幅でも、改良されたスクラッチ抵抗性は示される。
【0045】
従って、特定の実施形態で、導電層は、幅87ミクロンを以下のスクラッチ抵抗性を有することができる。更なる実施形態において、導電層は、幅86ミクロン以下のスクラッチ抵抗性を有することができる。更に、導電層は、幅85ミクロン以下のスクラッチ抵抗性を有することができる。
【0046】
電極のスクラッチ抵抗性は、使われるときにバイオセンサがデジタル読取器システムに挿入され、電極がデジタル読取器システムの金属ピンとの電気的接触を実行することができるので、バイオセンサデバイスの性能に関連し得る、という点に留意すべきである。バイオセンサがデジタルリーダに挿入されるときに金属ピンがバイオセンサ電極上のスクラッチを引き起こす場合、誤った読取りまたは無測定となる場合がある。
【0047】
本願明細書において記載される導電性コンポジットの特定の実施形態のなお更なる改良は、基板に対する導電層の改良された付着性である。概して、導電薄膜コンポジットは、基板からの導電層の層割れという難点があった。更に、導電層の厚さを減少させる試みは、基板に対する導電層の付着性を悪化させるだけだった。対照的に、本発明者らは、本願明細書において記載される範囲にまで厚さを減らしながらも、本開示の実施形態による導電性コンポジットが基板に対して改良された付着性を示すことができるということを、驚くべきことに発見した。
【0048】
本願明細書において使用する場合、付着性は、ASTM D3359の方法B(クロスハッチ)に従って測定される。特に、ユーザは、最初に膜側上に90度のクロスハッチパターンを作り、次にASTM部品番号11327−02563#51596のテープを60秒の間クロスハッチグリッド領域にしっかりと貼り付け、次にテープを約2秒の率でほぼ120度の角度で引き剥がす。ASTM3359−02クラス4B(面積の5%未満が取り除かれる)での受容のための説明である。驚くべきことに、非常に薄い導電層が、従来得られているより非常に良好で、少なくともクラス5B(取り除かれた面積は全く無い)の付着性ランキングがあるとわかった。
【0049】
更にまた、本願明細書において記載される導電性コンポジットの特定の実施形態の別の改良は、改良された電気化学特性である。導電性コンポジットの電気化学性能を定量化するために、複数のサイクリックボルタンメトリ(CV)操作を実行して結果を解析し、酸化ピークの電流密度および電位のシフトを判定することができる。本開示の実施形態は、複数のサイクリックボルタンメトリ操作の後の、酸化ピークの電流密度および電位の並外れたパーセンテージのシフトを示す。本願明細書において使用する場合、CVは、一定の電位を維持した基準電極に対する作動電極(Au膜)の電位を循環させて、結果として生じる電流を測定することによって、実行される。例えば、31.2nmのAu膜の4サイクルのサイクリックボルタモグラムは図2においてプロットされ、ここで、可逆および反復可能な酸化および還元処理が示され、バイオセンサ応用製品で採用することができる。
【0050】
例えば、特定の実施形態で、導電性コンポジットは、ボルタモグラムに示すように、そして、複数のサイクリックボルタンメトリ走査の間に測定されるように、2、3、4、5、10、または更に100サイクル後でも、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下または約3%以下でさえある、酸化ピークの電流密度および電位のシフトを有することができる。
【0051】
本願明細書において記載される薄い導電性コンポジットは、ウインドウ膜層として、例えば、バイオセンサを含む多くの異なる応用製品、ならびに、高くかつ強い電気性能が非常に薄い厚さで要求される更なる応用製品に役立つことができる。
【実施例】
【0052】
実施例1
導電薄膜コンポジットの複数のサンプルが作成されて、テストされた。全般に、Dupont Teijin FilmsからのMelinex Polyester Film(PET)基板が準備され、そして、導電層はロールツーロール法で基板上へスパッタリングした。複数のサンプルは、以下の堆積パラメータを有した。それから、サンプルは、抵抗率、シート抵抗および厚さを含む各種の特性に対してテストされた。これらの特性を測定するための検査法は、本願明細書において詳述する。以下の結果が得られた。
【0053】
【表1】
【0054】
上記の結果は、図面においてもグラフとして表される。特に、図3は、導電層のナノメートルの厚さ対抵抗率のプロットを示す。図示するように、スパッタリングガスとしてクリプトンを使用することで、テストした厚さ全体にわたってコンポジットの抵抗率が大幅に改善した。
【0055】
図4は、コンポジットの抵抗率対クリプトン容積分率のプロットを示す。図示するように、クリプトン含有量により抵抗率が大幅に改善した。
【0056】
図5は、厚さ対シート抵抗のプロットを示す。図示するように、スパッタリングガスとしてクリプトンを使用することで、シート抵抗が大幅に改善した。
【0057】
実施例2
導電薄膜コンポジットの複数のサンプルが作成されて、テストされた。全般に、Dupont Teijin FilmsからのMelinex Polyester Film(PET)基板が準備され、そして、導電層はロールツーロール法で基板上へスパッタリングした。ンプル16、17、18および19の導電層は、スパッタリングガスとしてアルゴンを使用してスパッタリングした。サンプル20、21、22および23の導電層は、スパッタリングガスとしてクリプトンを使用してスパッタリングした。各サンプルに対する導電層の厚さは、以下に提示して下いる。それからサンプルは、0.5Nの荷重の下で適用するエリクセン硬度テストペンシル、モデル308Sを使用して、スクラッチ抵抗性がテストされた。各スクラッチの幅は顕微鏡の下で測定され、以下の結果が得られた。
【0058】
【表2】
【0059】
上記の結果は、図面においても視覚的に表される。特に、図6は、各サンプルに対するナノメートル単位の導電層の厚さ対スクラッチ幅のプロットを示す。図示するように、スパッタリングガスとしてクリプトンを使用することで全ての導電層厚さでスクラッチ幅が大幅に減少し、膜に対するスクラッチ抵抗性の改善を示した。
【0060】
多くの異なる態様および実施形態が可能である。それらの態様および実施形態を以下に記載する。本仕様を読んだ後に、当業者は、それらの態様および実施形態が例証に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと理解するはずである。実施形態は、下記に列挙する項目のいずれか1つ以上に従うものであり得る。
【0061】
実施形態1
ポリマー膜基板と、
前記基板に隣接して配置される導電層と
を含み、
前記導電層はクリプトンおよび導電材料を含み、
前記導電層は約150ナノメートル以下の平均厚さを有し、
前記導電層は約3.0以下の正規化厚さ(t/λ)を有し、
前記コンポジットは97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有し、
ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、
バイオセンサ電極。
【0062】
実施形態2
ポリマー膜基板と、
前記基板に隣接して配置される導電層と
を含み、
前記導電層はクリプトンおよび導電材料を含み、
前記導電層は97.077t−0.071Ω・nm以下の抵抗率を有し、
前記コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有し、
ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、
バイオセンサ電極。
【0063】
実施形態3
バイオセンサ電極を形成する方法であって、
基板層を提供することと、
クリプトンを含むスパッタリングガスを用いたスパッタリング技術によって導電層を形成することと
を含み、
前記導電層は約150ナノメートル以下の平均厚さを有し、
前記導電層は約3.0以下の正規化厚さ(t/λ)を有し、
前記コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有し、
ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、
方法。
【0064】
実施形態4
基板と、
前記基板に隣接して配置される導電層と
を含み、
前記導電層はスパッタリングガスからのスパッタリングされた原子および導電材料を含み、
前記導電層は約150ナノメートル以下の厚さを有し、
スパッタリングガスからの前記スパッタリングされた原子は、約5ナノメートルの深さで、SIMSに従って測定される、少なくとも約1×10atoms/cmの量で前記導電層に存在し、
前記コンポジットは、約0.3Ω/sq以下のシート抵抗を有する、
コンポジット。
【0065】
実施形態5
基板と、
前記基板に隣接して配置される導電層と
を含み、
前記導電層は約150ナノメートル以下の厚さを有し、
前記導電層はスパッタリングガスからのスパッタリングされた原子および導電材料を含み、
前記コンポジットは、以下の、
前記導電層は、約3.0以下の正規化厚さ(t/λ)を有する、
前記コンポジットは97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有し、
ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、
スパッタリングガスからの前記スパッタリングされた原子は、約5ナノメートルの深
さで、SIMSに従って測定される、少なくとも約1×10atoms/cmの量で前記導電層に存在する、
前記コンポジットは約65Ω・nm以下の抵抗率を有する、
前記コンポジットは、3ヵ月間の室温でのエージングの後で、4点プローブに従って測定される約30%以下のシート抵抗変化を有する、
前記コンポジットは、ボルタモグラムに示すように、そして、複数のサイクリックボルタンメトリ走査の間に測定されるように、10サイクルの後で、約30%以下の酸化ピークの電流密度および電位のシフトを有する、
前記導電層は少なくとも約9.5g/cmの正規化密度を有する、
前記導電層は、250のグラム荷重のサイクル当たり、約50%以下のシート抵抗変化の耐摩耗性を有する、
前記導電層はクロスハッチ測定に従って測定される少なくとも約5Bの剥離強度を有
する、
という特性のうち少なくとも2つを有する、
コンポジット。
【0066】
実施形態6
前記導電層は、少なくとも約0.1ナノメートル、少なくとも約0.5ナノメートル、少なくとも約1ナノメートル、少なくとも約3ナノメートル、少なくとも約5ナノメートルまたは少なくとも約10ナノメートルの厚ささえ有する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0067】
実施形態7
前記導電層は、約150ナノメートル以下、約125ナノメートル以下、約100ナノメートル以下、約80ナノメートル以下、約70ナノメートル以下、約60ナノメートル以下、約50ナノメートル以下、約40ナノメートル以下、約30ナノメートル以下、約25ナノメートル以下または約20ナノメートル以下の厚ささえ有する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0068】
実施形態8
前記導電層は、約3ナノメートルから約150ナノメートルまで、または、約5ナノメートルから約100ナノメートルまででさえある範囲の厚さを有する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0069】
実施形態9
前記導電層は、約5.0以下、約4.0以下、約3.0以下、約2.5以下、約2.0以下、約1.75以下、約1.5以下、約1.25以下、1.0以下または更に約0.75以下の正規化厚さを有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0070】
実施形態10
前記導電層は、少なくとも約0.01、少なくとも約0.1または少なくとも約0.2でさえある正規化厚さを有する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0071】
実施形態11
前記導電層は、約0.01から約5.0まで、または、約0.1から約3.0まででさえある範囲の正規化厚さを有する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0072】
実施形態12
前記導電材料は、アルミニウム、炭素(例えばグラファイト)、コバルト、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、マグネシウム、ニッケル、ニオブ、オスミウム、パラジウム、プラチナ、レニウム、ロジウム、セレン、銀、タンタル、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、それらの混合物、これらの元素の合金、これらの元素の酸化物、または、これらの元素の金属化合物を含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0073】
実施形態13
前記導電材料は、金属を含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0074】
実施形態14
前記導電材料は、金(AU)を含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0075】
実施形態15
前記導電層は、クリプトンを含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0076】
実施形態16
前記導電層は、クリプトン、およびアルゴン、キセノン、ネオンまたはそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0077】
実施形態17
前記導電層は、基本的に前記導電材料およびクリプトンから成る、実施形態1〜16のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0078】
実施形態18
前記導電層は、基本的にクリプトンから成る、実施形態1〜17のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0079】
実施形態19
クリプトンは、約5ナノメートル、約10ナノメートル、約20ナノメートル、約30ナノメートル、約40ナノメートル、約50ナノメートル、約60ナノメートルまたは約70ナノメートルでさえある深さで、SIMSに従って測定される、少なくとも約1×1010atoms/cm、少なくとも約1×1012atoms/cm、少なくとも約1×1014atoms/cm、少なくとも約1×1016atoms/cm、少なくとも約1×1018atoms/cm、または、少なくとも約1×1019atoms/cmでさえある量で前記導電層に存在する、実施形態1〜18のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0080】
実施形態20
前記コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sq以下のシート抵抗を有し、
ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、実施形態1〜19のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0081】
実施形態21
前記コンポジットは、97.077t−1.071Ω/sqより約5%小さいか、約10%小さいか、約15%小さいかまたは約20%小さくさえある値以下のシート抵抗を有し、ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、実施形態1〜20のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0082】
実施形態22
前記コンポジットは、約30Ω/sq以下、約20Ω/sq以下、約10Ω/sq以下、約5Ω/sq以下、約4Ω/sq以下、約3Ω/sq以下、約2Ω/sq以下、約1Ω/sq以下または約0.5Ω/sq以下でさえあるシート抵抗を有する、実施形態1〜21のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0083】
実施形態23
前記コンポジットは、少なくとも約0.01Ω/sqまたは少なくとも約0.1Ω/sqでさえあるシート抵抗を有する、実施形態1〜22のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0084】
実施形態24
前記コンポジットは、約0.01Ω/sqから約50Ω/sqまで、または、約0.1Ω/sqから約10Ω/sqまででさえある範囲のシート抵抗を有する、実施形態1〜23のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0085】
実施形態25
前記コンポジットは、約97.077t−0.071Ω・nm以下の抵抗率を有し、ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、実施形態1〜24のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0086】
実施形態26
前記コンポジットは、97.077t−0.071Ω・nmより約5%小さいか、約10%小さいか、約15%小さいかまたは約20%小さくさえある値以下の抵抗率を有し、ここでtはナノメートル単位の前記導電層の厚さを表す、実施形態1〜25のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0087】
実施形態27
前記コンポジットは、約65Ω・nm以下、約63Ω・nm以下、約61Ω・nm以下、約59Ω・nm以下、約57Ω・nm以下、約55Ω・nm以下、約50Ω・nm以下、約40Ω・nm以下、約35Ω・nm以下または約30Ω・nm以下でさえある抵抗率を有する、実施形態1〜26のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0088】
実施形態28
前記コンポジットは、少なくとも約25Ω・nm、少なくとも約30Ω・nmまたは少なくとも約35Ω・nmでさえある抵抗率を有する、実施形態1〜27のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0089】
実施形態29
前記コンポジットは、約30Ω・nmから約100Ω・nmまで、または、約40Ω・nmから約80Ω・nmまででさえある範囲の抵抗率を有する、実施形態1〜28のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0090】
実施形態30
前記コンポジットは、1日間、7日間、30日間、3ヵ月間、6ヵ月間または1年間でさえある室温でのエージングの後で、4点プローブに従って測定される、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下または約3%以下でさえあるシート抵抗変化を有する、実施形態1〜29のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0091】
実施形態31
前記コンポジットは、ボルタモグラムに示すように、そして、複数のサイクリックボルタンメトリ走査の間に測定されるように、2、3、4、5、10または100サイクルの後でさえ、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下または約3%以下でさえある酸化ピークの電流密度および電位のシフトを有する、実施形態1〜30のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0092】
実施形態32
前記導電層は、約9.5g/cmから約18.5g/cmまでの範囲の密度を有する、実施形態1〜31のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0093】
実施形態33
前記導電層は、250グラム荷重のサイクル当たり、約0.5%から約50%までのシート抵抗変化の範囲の耐摩耗性を有する、実施形態1〜32のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0094】
実施形態34
前記導電層は、ASTM D3359の方法B(クロスハッチ)の下でのクロスハッチ測定に従って測定される、少なくとも約5Bの剥離強度を有する、実施形態1〜33のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0095】
実施形態35
前記コンポジットは、基本的に前記基板層および前記導電層から成る、実施形態1〜34のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0096】
実施形態36
前記基板層は、前記コンポジットの第1の最も外部の主要面を含み、前記導電層は、前記コンポジットの第2の最も外部の主要面を含む、実施形態1〜35のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0097】
実施形態37
前記基板層は、その間に介在層無しに前記導電層と直接隣接している、実施形態1〜36のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0098】
実施形態38
前記基板層はポリマーを含む、実施形態1〜37のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0099】
実施形態39
前記基板層は熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1〜38のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0100】
実施形態40
前記基板層はポリオレフィンを含む、実施形態1〜39のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0101】
実施形態41
前記基板層は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドまたはそれらの組み合わせを含む、実施形態1〜40のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0102】
実施形態42
前記基板層は、ポリエステルを含む、実施形態1〜41のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0103】
実施形態43
前記基板層は、PETを含む、実施形態1〜42のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0104】
実施形態44
前記基板層は、少なくとも約1ミクロン、少なくとも約12ミクロンまたは少なくとも約100ミクロンでさえある厚さを有する、実施形態1〜43のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0105】
実施形態45
前記基板層は、約500ミクロン以下、約400ミクロン以下または約350ミクロン以下でさえある厚さを有する、実施形態1〜44のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0106】
実施形態46
前記基板層は、約12ミクロンから約500ミクロンまで、または、約100ミクロンから約350ミクロンまででさえある範囲の厚さを有する、実施形態1〜45のいずれか1つに記載のコンポジットまたはデバイス。
【0107】
実施形態47
前記スパッタリングガスは、クリプトン、およびアルゴン、キセノン、ネオンまたはそれらの組み合わせなどの別の希ガスを含む、実施形態1〜46のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態48
前記スパッタリングガスは、クリプトンおよびアルゴンを含む、実施形態1〜47のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態49
前記スパッタリングガスは、前記スパッタリングガスの前記全容積に基づいて、少なくとも約0.05、少なくとも約0.1、少なくとも約0.15、少なくとも約0.2、少なくとも約0.25、少なくとも約0.5、少なくとも約0.6、少なくとも約0.75または少なくとも約0.95でさえある容積分率のクリプトンを含む、実施形態1〜48のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態50
前記スパッタリングガスは、基本的にクリプトンから成る、実施形態1〜49のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態51
前記導電層は、連続的に、または、半連続的に形成される、実施形態1〜50のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態52
前記導電層は、ロールツーロール連続プロセスで形成される、実施形態1〜51のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態53
実施形態1〜52のいずれか1つに記載の前記バイオセンサ電極またコンポジットを含む、バイオセンサ。
【0114】
実施形態54
実施形態1〜53のいずれか1つに記載の前記バイオセンサ電極またはコンポジットを含む、テストストリップ。
【0115】
実施形態55
実施形態1〜54のいずれか1つに記載の前記バイオセンサ電極またはコンポジットを含む、血糖テストストリップ。
【0116】
実施形態56
実施形態1〜55のいずれか1つに記載の前記バイオセンサ電極またはコンポジットを含む血糖テストストリップを含む、血糖監視システム。
【0117】
実施形態57
前記コンポジットは、0/5Nのエリクセンテスタ荷重で87ミクロン以下、86ミクロン以下または85ミクロン以下でさえあるスクラッチ幅のスクラッチ抵抗性を有する、実施形態1〜56のいずれか1つに記載のバイオセンサ電極、コンポジットまたは方法。
【0118】
全般的説明または実施例における上記の動作の全てが必要とされるわけではなく、特定の動作の一部は必要とされない場合もあり、そして、記載される動作に加えて1つ以上の更なる動作が実行されてもよいことに注意されたい。また更に、動作が列挙される順序は、必ずしもそれらが実行される順序であるというわけではない。
【0119】
課題に対する利点、他の長所およびソリューションは、特定の実施例に関して上で記載されている。しかしながら、課題に対する利点、長所、ソリューション、および何らかの利点、長所またはソリューションを生じさせるかもしくは顕著にする特徴(複数可)は、いずれかまたは全ての請求項の、重要であるか、必要であるか、または本質的特徴として解釈されるというわけではない。
【0120】
本願明細書において記載される実施形態の仕様および説明図は、各種実施形態の構造の全般的な理解を提供することを意図している。本仕様および説明図は、本願明細書において記載される構造または方法を使用する装置およびシステムの、全ての要素および特徴の徹底的および総合的な記述として役割を果たすことを、意図していない。別々の実施形態は単一の実施形態の組合せで提供することもでき、そして、逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される各種の特徴は、別々に、または任意の部分的組み合わせで提供することもできる。更に、範囲の形で述べられる値の参照は、その範囲の中のいずれの値も全て含む。多くの他の実施形態は、この仕様を読み込んだ後にだけ、当業者にとって明らかになり得る。他の実施形態は本開示を用いて導くことができ、それによって、構造的な置換、論理的な置換または別の変更は、本開示の範囲を逸脱しないで行うことができる。従って、本開示は、制限的であるというよりはむしろ例証的と考えるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6