特許第6855209号(P6855209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6855209自己センタリング多光線アブレーションカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855209
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】自己センタリング多光線アブレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20210329BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61M25/00 560
   A61M25/00 624
   A61M25/00 530
   A61M25/00 540
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-200680(P2016-200680)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2017-74366(P2017-74366A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】14/881,576
(32)【優先日】2015年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アシュトン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ホイティンク
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・シュルツ
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−233439(JP,A)
【文献】 特開2005−000654(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/141105(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 − 18/28
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える、自己センタリング電極アセンブリと、を備える、カテーテルであって、各スパインが、前記スパインの配向を、前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、予成形された拡張構造を有し、
各スパインが、前記スパインの前記配向を、第1の湾曲領域の第1の端部における前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記第1の湾曲領域の第2の端部における前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、第1の領域を有し、
各スパインが、前記第1の湾曲領域の前記第2の端部において開始する第1の端部を有する、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって配向された第2の領域を有し、
前記第1の領域が、前記第2の領域よりも相対的に柔軟性が低い、カテーテル。
【請求項2】
各スパインが、前記予成形された拡張構造を与えるための支柱を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記支柱が、形状記憶材料を含む、請求項に記載のカテーテル。
【請求項4】
各スパインがある長さを有し、前記スパインの柔軟性が前記長さに沿って変化する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
各スパインが、様々な断面積を有する支柱を備える、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記自己センタリング電極アセンブリが、前記第1の湾曲領域の中間位置で前記第1の湾曲領域内の最大外径を有する、請求項に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第1の湾曲領域の前記最大外径が、7.5〜15mmである、請求項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記アブレーション電極は、前記自己センタリング電極アセンブリの前記最大外径が血管の内径と係合するとき、小孔組織を係合するように構成されている、請求項に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記第2の領域は、前記第2の領域の第2の端部が前記カテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、前記第1の領域から反対方向に湾曲している、請求項に記載のカテーテル。
【請求項10】
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える、自己センタリング電極アセンブリと、を備える、カテーテルであって、各スパインが、前記スパインの配向を、前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、予成形された拡張構造を有し、
各スパインが、前記スパインの前記配向を、第1の湾曲領域の第1の端部における前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記第1の湾曲領域の第2の端部における前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、第1の領域を有し、
各スパインが、前記第1の湾曲領域の前記第2の端部において開始する第1の端部を有する、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって配向された第2の領域を有し、
前記第2の領域は、前記第2の領域の第2の端部が前記カテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、前記カテーテル本体の前記長手方向軸と交差し、
前記第1の領域が、前記カテーテル本体の前記長手方向軸から半径方向への最大外径を有する部分を含み、前記第1の領域の前記最大外径の前記部分に加えられる内向きの径方向力が、前記第2の領域で外向きの径方向力に変えられる、カテーテル。
【請求項11】
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える、自己センタリング電極アセンブリと、を備える、カテーテルであって、各スパインが、前記スパインの配向を、前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、予成形された拡張構造を有し、
各スパインが、前記スパインの前記配向を、第1の湾曲領域の第1の端部における前記カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記第1の湾曲領域の第2の端部における前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、第1の領域を有し、
各スパインが、前記第1の湾曲領域の前記第2の端部において開始する第1の端部を有する、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって配向された第2の領域を有し、
各スパインが、非侵襲的先端を形成するための長手方向に配向された湾曲を有する、前記第2の領域の前記第2の端部において開始する第3の領域を更に備える、カテーテル。
【請求項12】
各スパインが、周方向に配向された湾曲を有する、前記第2の領域の前記第2の端部において開始する第3の領域を更に備える、請求項1または10に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記第3の領域が、複数のアブレーション電極を備える、請求項11または12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記自己センタリング電極アセンブリが、少なくとも3つのスパインを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学(EP)カテーテルに関し、具体的には、心臓の組織を焼灼するためのEPカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動等の心不整脈は、心組織のある領域から隣接組織に電気信号が異常に伝導されることにより、正常な心周期が乱されて非同期的リズムを生ずる場合に発生する。望まれない信号の重要な発生源は、左心房の肺静脈沿い及び上肺静脈内の組織領域内に位置する。この状況下で、不要な信号が肺静脈内で発生するか、又は他の発生源から肺静脈を通じて伝導された後、それらの信号が左心房の中へと伝導され、そこで不整脈を惹起するか若しくは存続させ得る。
【0003】
不整脈を治療するための手技としては、不整脈を引き起こしている信号の発生源を外科的に破壊すること、並びにそのような信号の伝導路を破壊することが挙げられる。更に最近では、心内膜の電気特性と心容積をマッピングし、エネルギーの印加により心組織を選択的に焼灼することによって、心臓のある部分から別の部分への不要な電気信号の伝播を停止又は修正することが場合によっては可能となると判明している。アブレーション処理は、非伝導性の損傷部位を形成することによって不要な電気経路を破壊するものである。このようなアブレーション手技の一例は、肺静脈隔離と称され、肺静脈と左心房との接合部に隣接した領域内の組織のアブレーションを伴う。結果として得られる損傷部位(複数可)は、この領域から発生する不規則な電気信号を、心房の残りの部分に広がって患者の心拍を乱すことから隔離することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら及び他の用途に関して、従来の実践は、十分なエネルギーを送達して、肺静脈等の血管の周りに周方向経路で非伝導性の損傷部位を形成するために、アブレーションカテーテルを隣接する標的領域に位置付けることを伴い得る。したがってこのような血管内の不要な信号源の電気的隔離を容易にするための、カテーテル及び技法を提供することが望ましいだろう。同様に、アブレーション手技を実施している間、カテーテルを再度位置付ける必要性を低下させる、又は回避することが望ましいだろう。以下の資料に記載されるように、本開示はこれら及び他の目的を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を有する、一端に接続された複数のスパインで構成された自己センタリング多光線電極アセンブリと、を備える、カテーテルを対象とする。スパインは、スパインの配向を、カテーテル本体の遠位端に向かって方向付けられる配向から、カテーテル本体の近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している予成形された拡張構造を有する。
【0006】
一態様では、各スパインは、予成形構造を与えるための支柱を含んでもよい。支柱は、形状記憶材料から作製することができる。
【0007】
一態様では、スパインの柔軟性は、その長さに沿って変化し得る。例えば、各スパインは、様々な断面積の支柱を有してもよい。
【0008】
一態様では、各スパインは、スパインの配向を、第1の湾曲領域の第1の端部におけるカテーテル本体の遠位端に向かって方向付けられる配向から、第1の湾曲領域の第2の端部におけるカテーテル本体の近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している第1の領域を有してもよい。自己センタリング多光線電極アセンブリは、第1の湾曲領域の中間位置で第1の湾曲領域内の最大外径を有してもよい。例えば、第1の湾曲領域の最大外径は、7.5〜15mmであってもよい。アブレーション電極は、自己センタリング多光線電極アセンブリの最大外径が血管の内径と係合するとき、小孔組織を係合するように構成され得る。
【0009】
一態様では、各スパインは、第1の湾曲領域の第2の端部において開始する第1の端部を有するカテーテル本体の近位端に向かって配向された第2の領域も有してもよい。第1の領域は、第2の領域よりも相対的に柔軟性が低くてもよい。第2の領域は、第2の領域の第2の端部がカテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、第1の領域から反対方向に湾曲していてもよい。あるいは、第2の領域は、第2の領域の第2の端部がカテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、カテーテル本体の長手方向軸と交差してもよい。そのような実施形態では、第1の領域に加えられる内向きの径方向力は、第2の領域の外向きの径方向力に変えられてもよい。
【0010】
一態様では、各スパインは、非侵襲的先端を形成するための長手方向に配向された湾曲を有する、第2の領域の第2の端部において開始する第3の領域も有してもよい。あるいは、各スパインは、周方向に配向された湾曲を有する、第2の領域の第2の端部において開始する第3の領域を有してもよい。第3の領域は、複数のアブレーション電極を有してもよい。
【0011】
一態様では、自己センタリング多光線電極アセンブリは、少なくとも3つのスパインを有してもよい。
【0012】
本開示は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える自己センタリング多光線電極アセンブリと、を備えるカテーテルを提供することであって、各スパインが、スパインの配向を、カテーテル本体の遠位端に向かって方向付けられる配向から、カテーテル本体の近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している予成形された拡張構造を有する、提供することと、カテーテルの遠位端を心臓の所望の領域に位置付けることと、自己センタリング多光線電極アセンブリを血管の小孔内で係合して、アブレーション電極を組織と接触させることと、高周波エネルギーをアブレーション電極に送達して、損傷部位を形成することと、を含む、治療のための方法も含む。
【0013】
一態様では、損傷部位は、血管の周りに周方向経路で形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
更なる特徴及び利点は、添付図面に例示されるように、本開示の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになり、添付図面において、同様の参照記号は、概して、図全体を通して同一の部分又は要素を指す。
図1】一実施形態に従う、自己センタリング多光線電極アセンブリを備えるカテーテルの概略立面図である。
図2】一実施形態に従う、図1の自己センタリング多光線電極アセンブリのより詳細な概略図である。
図3】一実施形態に従って、様々な柔軟性を示す断面図と共に、図2の自己センタリング多光線電極アセンブリの1つのスパインを概略的に例示する。
図4】一実施形態に従う、周方向に配向された領域を有する自己センタリング多光線電極アセンブリの概略図である。
図5】一実施形態に従う、自己センタリング多光線電極アセンブリの別の構造の概略図である。
図6】一実施形態に従う、周方向に配向された領域を有する更に別の自己センタリング多光線電極アセンブリの概略図である。
図7】一実施形態に従う、患者の心臓内に配置された自己センタリング多光線電極アセンブリの概略図である。
図8】一実施形態に従う、自己センタリング多光線電極アセンブリを使用する侵襲性医療手技の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、したがって、変化し得ることを理解されたい。したがって、本明細書に記載されている選択肢と同様又は同等のいくつかの選択肢が本開示の実施又は実施形態において使用され得るが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。
【0016】
また、本明細書で使用される専門用語が、単に本開示の特定の実施形態を説明するためのものであり、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0017】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態を説明するよう意図されており、本開示が実施され得る唯一の例示的な実施形態を表すようには意図されていない。本説明全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例としての機能を果たす」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細な説明には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供するために、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的な実施形態がこれらの具体的な詳細なしで実施され得ることは、当業者には明らかであろう。場合によっては、本明細書に提示される例示的な実施形態の新規性を明確にするために、周知の構造及びデバイスがブロック図形態で示される。
【0018】
単に便宜上かつ明確にするために、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側等の方向を示す用語が、添付図面に関して使用され得る。これら及び同様の方向を示す用語は、いかなる様式でも本開示の範囲を制限するものと見なされるべきではない。
【0019】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の専門家によって一般に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0020】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0021】
心室内でのある特定の種類の電気的活性は、周期的ではない。例としては、肺静脈内で発生する望まれない信号から生じ得る心房細動及び他の非同期状態が挙げられる。述べたように、RFエネルギーは、電気伝導を遮断することによって不規則な電気信号源を隔離することを目的として、選択される治療域に送達され得る。肺静脈隔離のための重要な臨床治療は、焦点又は多電極カテーテルによるRFアブレーションを含む。
【0022】
単極デバイスを使用する焦点アブレーションは、カテーテル配置の局所的フィードバックと共にRFエネルギーの標的化された送達により、空間的にかつ組織係合に関しての両方で、利益を得る。しかしながら、焦点アブレーション手技は、典型的には、医師が、一連の「量子化された」RFアブレーションを標的とされる静脈の小孔を囲む連続的な周方向のブロックに縫い込む必要があるため、相対的な長い手技時間を伴う。更に、焦点単極電極の使用は、所望の周方向経路に沿って連続的に電極を正確かつ確実に位置付けるために、周辺ナビゲーションシステムによって増大された医師のかなりの技術レベルを必要とする。
【0023】
対応して、多電極デバイスの使用は、標的とされる静脈の内径の周りに一定の周方向経路で単極電極のアレイを置くために、肺静脈の幾らか予測可能な解剖構造を利用しようとする。RFエネルギーは、次いで、同時に電極アレイに送達され得、それにより理論的には、並行して必要なアブレーションを創出することによって、治療送達のための時間を低減する。実践上は、肺静脈の小孔の変化するトポグラフィーのため、全周囲の周りに良好な組織接触を実現することは難しい場合あることが観察されている。最適に至らない組織係合は、いくつかの電極部位に効果のないエネルギー送達をもたらし、追加のデバイス配置を必要するか、又は場合によっては、焦点型デバイスからの単極アブレーションによる損傷部位の閉鎖を必要とする。左心房の限定された空間、肺静脈の可変の生体構造、及び電極アレイを配置するデバイスの限られた運動学的性能を含む様々な理由によって、アレイの中心垂直軸を肺静脈の中心軸と整列させることによって電極アレイを適切に配向することも難しい場合がある。
【0024】
本明細書に記載されるように、本開示は、自己センタリング多光線電極アセンブリを有するカテーテルを対象とする。電極アセンブリは、肺静脈等の血管に対して所望の配向での配置を促進する予成形された拡張構造を有する複数のスパインを特徴とする。同様に、予成形された拡張構造は、適切な損傷部位の形成を可能にするために、アブレーション電極と標的組織との間に十分な接触を確保することも助けることができる。更に、スパインは、アブレーション電極を組織と接触して保持するために所望される力の量を提供するように、それらの長さに沿って可変の柔軟性特性を呈してもよい。
【0025】
この開示の態様の例示を助けるために、自己センタリング多光線電極アセンブリを備えるアブレーションカテーテルの例示的な実施形態を、図1に概略的に示す。カテーテル10は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12と、カテーテル本体の近位端に制御ハンドル14と、を備え、自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、多光線構造で外向きに放射状に広がる複数のスパイン18を備える。各スパイン18は、スパインが非拘束時にとる、以下に記載される予成形された拡張構造を有してもよい。自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、カテーテル本体12に結合される個別の構成要素であってもよく、又はカテーテル本体12の延長部分を備えてもよい。自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、既知の一定の長さのものであってもよく、典型的な力を受けるときに好ましくは可捩であるが、伸長可能ではない材料を含む。スパイン18は、予成形構造をとるように十分に弾力があってもよいが、それらが直線状に伸ばされ、カテーテル本体12の長手方向軸と整列している折り畳まれた構造に置かれていてもよい。少なくとも2つ等の複数のスパイン18を用いることによって、自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、患者の血管内に固定され得る。更に、3つ又は4つ以上のスパイン18の使用は、自己センタリング多光線電極アセンブリ16の中心軸に、その中に配置される血管の中心軸と共線上にある位置をとらせてもよい。異なる数のスパイン18を用いて、配置時に自己センタリング多光線電極アセンブリ16の所望の安定性を実現する、及び/又は所望の数の電極20を組織と接触させ、周方向の損傷部位を形成することができる。例えば、4つ、5つ、6つ、又は更にそれよりも多くのスパイン18が、実施形態に応じて用いられてもよい。
【0026】
各スパイン18は、自己センタリング多光線電極アセンブリ16が患者の心臓内に配置されるときに組織と接触することが予期される場所で、スパインの遠位端の近くに概して位置付けられる1つ又は2つ以上の電極20を担持してもよい。例えば、電極20は、単極アブレーション電極であってもよい。要望に応じて、電極20は、組織に向かって等、特定の半径方向でRFエネルギーを優先的に送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電極20は、焼灼される組織の温度の維持を補助するために治療部位への灌注流体の送達を可能にする穿孔を有してもよい。各電極20へのRF電流の送達中、その電気抵抗により組織の加熱が生じる。組織の加熱は、標的組織に細胞破壊を引き起こし、異常な電気信号の影響を妨害することを意図する非伝導性の損傷部位の形成をもたらす。しかしながら、組織の過熱は、望ましくない焦げ及び凝塊の形成を引き起こし得るか、又は液体がその沸点を超えて加熱されるときにスチームポップを生じることがあり、それは次いで、心臓組織にクレーター若しくは穿孔を創出し得る。対応して、アブレーション部位での灌注は、組織の過熱を防ぐための電極及び組織の冷却を含む利益を提供することができる。更に、スパイン18は、このような不都合の発生を回避するためにアブレーション手技中の組織温度を算定し、過熱を防ぐか、又は最小化するように灌注流体の流れの調節を補助するための熱電対22又は他の好適な温度センサを有してもよい。このようにして、自己センタリング多光線電極アセンブリ16が肺静脈等の血管の小孔内に位置付けられるとき、スパイン18は、電極20を複数の場所で組織と接触させることができる。各スパイン18は、独立して、小孔の生体構造と適合し、所望の接触度合いを提供することができる。エネルギーの電極20への送達は、次いで、血管の内径の周りに周方向経路で複数の損傷部位を同時に創出することができる。
【0027】
カテーテル本体12は、可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構成のものであってもよく、任意の好適な材料で作製されていてもよい。他の構成は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)で作製された外壁を備える。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼等の埋め込まれた編組みメッシュを備えており、それにより制御ハンドル14が回転すると、カテーテル本体の遠位端が対応する様式で回転するようになる。いくつかの実施形態では、カテーテル本体12は、当業者に既知の任意の好適な技法を使用して操縦可能及び/又は偏向可能であってもよい。カテーテル本体12の外径は重要ではないが、一般に可能な限り小さくあるべきであり、所望の用途に応じて約3.3mm(約10フレンチ)以下であってもよい。例えば、肺静脈の隔離のためのアブレーションにおける使用に対して、カテーテル本体12は、約2.3〜2.5mm(約7〜7.5フレンチ)の外径を有してもよい。同様に、外壁の厚さも重要ではないが、中央ルーメンがプーラワイヤ、リードワイヤ、センサケーブル、及び任意の他のワイヤ、ケーブル、又はチューブを収容することができるように十分に薄いものであってもよい。所望される場合、外壁の内表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性の改善を提供する。本発明と共に使用するのに好適なカテーテル本体構造の例が、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,064,905号に記載及び図示されている。いくつかの実施形態では、カテーテル本体12及び/又は自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、カテーテル本体12を結合する自己センタリング多光線電極アセンブリ16の基部に位置するセンサ24等の、1つ又は2つ以上のシングル又はマルチコイル位置センサを含んでもよい。以下に記載されるように、このような位置センサを使用して、患者内の自己センタリング多光線電極アセンブリ16の位置及び/又は配向の決定を補助することができる。
【0028】
自己センタリング多光線電極アセンブリ16に関する更なる詳細が図2に示され、この図は、各スパインが、配向を、カテーテル10の遠位端に向かって方向付けられる配向から、近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、その予成形された拡張構造にある自己センタリング多光線電極アセンブリ16を示す。例えば、各スパインは、非拘束時に、第1の領域26及び第2の領域28を有してもよい。この実施形態では、第1の領域26は、第1の領域26の配向が、カテーテル10の遠位端に向かって方向付けられる配向から、カテーテル10の近位端に向かって方向付けられる配向に移行するように、湾曲し、約180°以上の全曲率を呈し得る。第2の領域28は、第2の領域28が半径方向外向きに広がるように、第1の領域26の配向と反対の配向で屈曲を有することができる。例えば、第1の領域26及び第2の領域28の屈曲は、第2の領域28の遠位端がカテーテル本体12の長手方向軸にほぼ垂直であるように、約80〜100°の範囲の全曲率を有してもよい。各スパイン18は、第3の領域30を更に有してもよい。この実施形態では、第3の領域30は、各スパイン18の非侵襲的な遠位端を創出するように、第2の領域28と同じ配向で約90°〜約180°以上の屈曲を有してもよい。第1の領域26、第2の領域28、及び第3の領域30は、各領域が長手方向に配向されると見なすことができるように、全て実質的に共平面であり、カテーテル本体12の長手方向軸と同じ平面に置かれ得る。電極20は、自己センタリング多光線電極アセンブリ16が配置されるときに組織と接触すると予期される位置(複数可)で第3の領域28内に位置し得る。
【0029】
各スパイン18の第1の領域26の屈曲は、示されるように第1の領域の最大外径dを規定することができ、それは、その中に自己センタリング多光線電極アセンブリ16が配置される血管の内径に対応するように寸法決めされ得る。例えば、肺静脈用途に関して、最大外径は、約7.5〜15mmの範囲であってもよい。適切な直径dを選択することによって、各スパイン18の第1の領域26は、血管壁を形成する組織に係合し、血管内の自己センタリング多光線電極アセンブリ16を固定することができる。更に、スパイン18の対称構造は、自己センタリング多光線電極アセンブリ16を血管内の中心に置くのに役立ち、アセンブリの中心垂直軸を血管の中心軸と整列させる。述べたように、第2の領域28の予成形構造は、半径方向外向きに広がり、血管壁と電極20との間の係合の維持を補助する。
【0030】
更に、各スパイン18の1つ又は2つ以上の領域の柔軟性は、所望に応じて自己センタリング多光線電極アセンブリ16の運動学を調整するため、他の領域と異なり得る。例えば、図3は、それぞれ、第1の領域26及び第2の領域28の指示された場所で切り取られた断面A−A及び断面B−Bを有する1つのスパイン18を示す。支柱32等の構造部材が、スパイン18を形成するポリマー材料内に埋め込まれ、予成形構造をとるのを補助してもよい。例えば、支柱32は、生理的温度に加熱されると記憶された形状をとるニチノール又は他のニッケル−チタン合金等の好適な形状記憶合金から形成され得る。更に、支柱32を使用して、支柱18の1つ又は2つ以上の領域に様々な度合いの柔軟性を与えることができる。例えば、相対的に低い柔軟性を呈する第1の領域26に対して、上述のセンタリング機能を促進することが望ましい場合がある。したがって、支柱32は、断面A−Aに示される第1の領域26において比較的増加した断面積を有してもよい。同様に、第2の領域28は、比較的高い柔軟性を呈してもよく、血管の生体構造への適合を促進し、所望の量の接触力で血管壁組織と電極20との間の係合を創出する。対応して、支柱32は、断面B−Bに示される第2の領域28において比較的減少した断面積を有してもよい。幅及び厚さのいずれか又は両方は、所望の柔軟性の量を与えるように変更されてもよい。あるいは、又は加えて、スパインを形成するポリマー材料の種類又は特性を変化することによる等、異なる領域でスパイン18の柔軟性を変化させるための任意の他の技法が用いられてもよい。各スパイン18は、管腔34及び36等の任意の好適な数の管腔も有してもよく、この実施形態では、これは、流体を電極20に送達するための灌注管腔として、又は電極20、熱電対22、及び位置センサ等の他のセンサのためのリードを収容するため、若しくは他の目的のために使用され得る。
【0031】
述べたように、支柱32は、いくつかの実施形態では、形状記憶材料から形成され得る。例えば、ニチノールとして知られているニッケル−チタン合金が使用されてもよい。体温で、ニチノールワイヤは可撓性及び弾性であり、大抵の金属のように、ニチノールワイヤは、最小の力を受けると変形し、その力の不在下でそれらの形状に戻る。ニチノールは、ニチノールがその温度相に依存する「記憶形状」を有するのを可能にする形状記憶及び超弾性を含む、可撓性及び弾性を超える興味深い機械特性を有する形状記憶合金(SMA)と呼ばれる材料の分類に属する。オーステナイト相は、単純な立方結晶構造を持つ、ニチノールのより強力でより高温の相である。超弾性挙動は、この相で(50〜60℃の温度の広がりにわたって)生じる。対応して、マルテンサイト相は、双晶構造を持つ比較的脆弱なより低温の相である。ニチノール材料がマルテンサイト相にある場合、それは比較的容易に変形し、変形した状態に留まる。しかしながら、そのオーステナイト移行温度を超えて加熱されると、ニチノール材料は、その変形前形状に戻り、「形状記憶」効果をもたらす。ニチノールが加熱時にオーステナイトに変換し始める温度は、「As」温度と称される。ニチノールが加熱時にオーステナイトに変換し終えた温度は、「Af」温度と称される。したがって、自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、ガイドシース内に供給されるように容易に折り畳まれ、次いで、ガイドシースが取り除かれた後、患者の所望の領域に送達されると、その拡張した形状記憶構造に容易に戻され得る3次元形状を有してもよい。
【0032】
この開示の別の実施形態は、5つのスパイン18を使用して実装される自己センタリング多光線電極アセンブリ16と共に、図4に示される。理解されるように、この実施形態の予成形された拡張構造は、図3に示される実施形態と類似点を共有し、上述の第1の領域26及び第2の領域28を有する。しかしながら、第1の領域26、第2の領域28、及びカテーテル本体12の長手方向軸は、上述のように全て略共平面であるが、第3の領域38は、代わりに周方向に配向され、第1の領域26、第2の領域28、及びカテーテル本体12の長手方向軸の平面と交差する平面に置かれてもよい。一態様では、この平面は、実質的に垂直であってもよいが、所望に応じて他の角度が用いられてもよい。更に、第3の領域38が周方向に配向されるため、1つのスパイン18に対して複数の電極20を使用することが望ましい場合がある。第3の領域38のこの配向を所与として、このような電極20は、血管の内壁の周りの実質的に周方向経路上にあってもよく、より完全な周方向の損傷部位の創出を可能にする。この場合もやはり、第1の領域26、第2の領域28、及び第3の領域38等のスパイン18の任意の領域の相対柔軟性を調節して、自己センタリング多光線電極アセンブリ16の性能を改善することができる。
【0033】
自己センタリング多光線電極アセンブリ16のなおも更なる実施形態が、図5に示される。ここでは、各スパイン18は、スパイン18が、カテーテル本体12の長手方向軸と交差し、同時にカテーテル10の近位端に向かって配向されるように、湾曲しており、180°を超える全曲率を呈し得る第1の領域40及び比較的直線状の第2の領域42を有し得る。あるいは、再び、スパイン18がカテーテル本体12の長手方向軸と交差するように、第1の領域40がより少ない屈曲を有してもよく、第2の領域42が同じ方向で多少の屈曲を有してもよい。スパイン18の第1の領域40は、上述のように最大外径を形成してもよく、それは、その中に自己センタリング多光線電極アセンブリ16が配置される血管の内径に対して調整され得る。各スパイン18は、各スパイン18に非侵襲的な遠位端を創出するために、図2の実施形態と同様に、約90°〜約180°以上の半径方向外向きに方向付けられる長手方向に配向された屈曲を有する第3の領域44を更に有してもよい。同様に、第1の領域40、第2の領域42、及び第3の領域44は、全て実質的に共平面であり、カテーテル本体12の長手方向軸と同じ平面に置かれてもよい。
【0034】
この実施形態では、血管壁組織によって第1の領域40に対して及ぼされる力は、第2の領域42によって形成されるレバーアームによって伝わる傾向があり、電極20の血管壁組織とのより大きな接触を促し、自己センタリング多光線電極アセンブリ16が血管生体構造のバラツキに適合することを補助することが理解される。上述の技法を使用して、第1の領域40、第2の領域42、及び第3の領域44等のスパイン18の任意の領域の相対柔軟性を調節して、自己センタリング多光線電極アセンブリ16の性能を改善することができる。例えば、第1の領域40が相対的に柔軟性が低く、第2の領域42が相対的に柔軟性が高いことが望ましい場合がある。
【0035】
自己センタリング多光線電極アセンブリ16の更に別の実施形態が、図5に示されるものと類似の構造と共に、図6に示される。第1の領域40及び/又は第2の領域42は、協力してスパイン18を上述のようにカテーテル本体12の長手方向軸と交差させる屈曲を有してもよい。この実施形態では、第3の領域48は、第1の領域40、第2の領域42、及びカテーテル本体12の長手方向軸と共平面ではないように、長手方向ではなくむしろ周方向に配向され得る。更なる態様では、各スパイン18は、複数の電極20を有してもよい。示されるように、1つ又は2つ以上の電極は、スパイン18の周方向に配向された部分上にあってもよく、1つ又は2つ以上の電極は、スパイン18の長手方向に配向された部分の上にあってもよい。電極20を様々な角度で提示することによって、電極のうちの少なくとも1つの、組織との好適な接触を実現する確率が、上昇し得る。
【0036】
一態様では、電気生理学者は、当該技術分野で一般的に知られているように、ガイドシース、ガイドワイヤ、及び拡張器を患者の体内に導入してもよい。一例として、本発明のカテーテルと関連して使用するためのガイドシースは、適切に寸法決めされたPREFACE(商標)Braided Guiding Sheath(Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,CA)から市販されている)である。ガイドワイヤが挿入され、拡張器が取り除かれ、カテーテルがガイドシースを通じて導入され、それにより膨張器内のガイドワイヤルーメンは、カテーテルがガイドワイヤの上を通過するのを可能にする。図7に示される例示的な手順では、カテーテルは、まず、下大静脈(IVC)を介して右心房(RA)を通って患者の心臓(H)に導入され、そこでそれは、左心房(LA)に到達するために隔膜(S)を通過する。
【0037】
理解されるように、自己センタリング多光線電極アセンブリ16は、カテーテル10が患者の血管系を通過して所望の場所に行くことを可能にするために、真っ直ぐにされた構造に偏向され、ガイドシース50内に拘束されてもよい。いったんカテーテルの遠位端が所望の場所、例えば左心房に到達すると、ガイドシース50は引き抜かれて、その予成形された拡張構造をとる自己センタリング多光線電極アセンブリ16を露出させる。次いで、自己センタリング多光線電極アセンブリ16が、肺静脈(PV)の小孔内に位置付けられて固定されることによって、電極20は小孔組織と接触し、内側の血管壁の周りを周方向経路で組織を焼灼するために使用され得る。スパイン18の数及び用いられる電極の数に応じて、いくつかの実施形態では、実質的に完全に周方向の損傷部位が、同時に形成され得る。他の実施形態では、カテーテル10は、第1の組の損傷部位の形成後、電極20が周方向経路に沿って組織の新たな領域と接触するように回転させられてもよく、次いで、アブレーションエネルギーの送達が繰り返され得る。この一連の回転及びエネルギーの送達は、必要に応じて繰り返されてもよい。血管の周囲の周りの実質的に完全な損傷部位の形成は、上述のような異常信号源を電気的に隔離することができる。
【0038】
自己センタリング多光線電極アセンブリ16の使用の例示を助けるために、図8は、本発明の実施形態に従う侵襲的医療手技の概略図である。遠位端に自己センタリング多光線電極アセンブリ16(この図には示されていない)を備えるカテーテル10は、電極及びセンサ(この図には示されていない)のリードをコンソール62に連結するために、それらが検出する信号を記録及び分析するために、並びに焼灼エネルギーを供給するために、近位端にコネクタ60を有してもよい。電気生理学者64は、患者の心臓68からの電極電位信号を取得するために、カテーテル10を患者66の体内に挿入することができる。電気生理学者64は、挿入を実施するために、カテーテルに取り付けられた制御ハンドル14を使用する。コンソール62は、受信された信号を分析し、コンソールに取り付けられたディスプレイ72上に分析の結果を提示することができる、処理ユニット70を含むことができる。この結果は、典型的には、信号から得られたマップ、数値表示、及び/又はグラフの形態である。処理ユニット70はまた、1つ又は2つ以上の損傷部位を創出するために、電極24へのエネルギーの送達を制御することもできる。電気生理学者64は、上述の操作を実施して、実質的に完全に周方向の損傷部位を創出することができる。
【0039】
更に、処理ユニット70はまた、センサ24(この図には示されていない)等の位置センサからの信号を受信することもできる。述べたように、センサ(複数可)は、各々、1つの磁界応答コイル又は複数のこのようなコイルを備えてもよい。複数のコイルの使用は、6次元位置及び配向座標の判定を可能にする。したがって、センサは、外部コイルからの磁界に応答して電気位置信号を発生することができ、それによりプロセッサ70が心臓腔内におけるカテーテル遠位端10の位置(例えば、場所及び配向)を判定することを可能にする。その後、電気生理学者は、ディスプレイ72上の患者の心臓の画像で、自己センタリング多光線電極アセンブリ16の位置を見ることができる。例として、この位置検知方法は、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)により製造されるCARTO(商標)システムを使用して実施されてもよく、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、PCT特許公開WO 96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455 A1号、同第2003/0120150 A1号、及び同第2004/0068178 A1号に詳細に記載されており、これらの開示は、参照により本明細書に全て組み込まれる。理解されるであろうが、他の場所検知技法がまた用いられてもよい。所望される場合、少なくとも2つの場所センサは、自己センタリング多光線電極アセンブリ16に対して近位及び遠位に位置付けられてもよい。近位センサに対する遠位センサの座標が判定され得、自己センタリング多光線電極アセンブリ16の構造に関する他の既知の情報と合わせて、電極20の各々の位置を見つけるために使用されてもよい。
【0040】
上記の説明は、本発明の現在開示されている実施形態を参照して提示された。本発明が属する技術分野の専門家であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を有意に逸脱することなく、説明された構造に改変及び変更が実施されてもよいことを理解するであろう。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺通りではない。したがって、上記の説明は、添付図面に記載及び例示される精確な構造のみに関連するものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる特許請求の範囲と一致し、かつそれらを補助するものとして読まれるべきである。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える、自己センタリング多光線電極アセンブリと、を備える、カテーテルであって、各スパインが、前記スパインの配向を、カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、予成形された拡張構造を有する、カテーテル。
(2) 各スパインが、前記予成形構造を与えるための支柱を備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記支柱が、形状記憶材料を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 各スパインがある長さを有し、前記スパインの柔軟性が前記長さに沿って変化する、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 各スパインが、様々な断面積を有する支柱を備える、実施態様4に記載のカテーテル。
【0042】
(6) 各スパインが、前記スパインの前記配向を、第1の湾曲領域の第1の端部におけるカテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記第1の湾曲領域の第2の端部における前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、第1の領域を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記自己センタリング多光線電極アセンブリが、前記第1の湾曲領域の中間位置で前記第1の湾曲領域内の最大外径を有する、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記第1の湾曲領域の前記最大外径が、7.5〜15mmである、実施態様7に記載のカテーテル。
(9) 前記アブレーション電極は、前記自己センタリング多光線電極アセンブリの前記最大外径が血管の内径と係合するとき、小孔組織を係合するように構成されている、実施態様7に記載のカテーテル。
(10) 各スパインが、前記第1の湾曲領域の前記第2の端部において開始する第1の端部を有する、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって配向された第2の領域を有する、実施態様6に記載のカテーテル。
【0043】
(11) 前記第1の領域が、前記第2の領域よりも相対的に柔軟性が低い、実施態様10に記載のカテーテル。
(12) 前記第2の領域は、前記第2の領域の第2の端部が前記カテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、前記第1の領域から反対方向に湾曲している、実施態様10に記載のカテーテル。
(13) 前記第2の領域は、前記第2の領域の第2の端部が前記カテーテル本体の長手方向軸から半径方向外向きに広がるように、前記カテーテル本体の前記長手方向軸と交差する、実施態様10に記載のカテーテル。
(14) 前記第1の領域に加えられる内向きの径方向力が、前記第2の領域で外向きの径方向力に変えられる、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 各スパインが、非侵襲的先端を形成するための長手方向に配向された湾曲を有する、前記第2の領域の前記第2の端部において開始する第3の領域を更に備える、実施態様10に記載のカテーテル。
【0044】
(16) 各スパインが、周方向に配向された湾曲を有する、前記第2の領域の前記第2の端部において開始する第3の領域を更に備える、実施態様10に記載のカテーテル。
(17) 前記第3の領域が、複数のアブレーション電極を備える、実施態様16に記載のカテーテル。
(18) 前記自己センタリング多光線電極アセンブリが、少なくとも3つのスパインを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(19) 治療のための方法であって、
近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体と、一端に接続された複数のスパインを有し、各スパインが少なくとも1つのアブレーション電極を備える、自己センタリング多光線電極アセンブリと、を備えるカテーテルを提供することであって、各スパインが、前記スパインの配向を、カテーテル本体の前記遠位端に向かって方向付けられる配向から、前記カテーテル本体の前記近位端に向かって方向付けられる配向に変化させるように湾曲している、予成形された拡張構造を有する、提供することと、
前記カテーテルの前記遠位端を前記心臓の所望の領域に位置付けることと、
前記自己センタリング多光線電極アセンブリを血管の小孔内で係合して、アブレーション電極を組織と接触させることと、
高周波エネルギーを前記アブレーション電極に送達して、損傷部位を形成することと、を含む、方法。
(20) 前記血管の周りに周方向経路で損傷部位を形成することを更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8