特許第6855210号(P6855210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6855210粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855210
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20210329BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20210329BHJP
【FI】
   B29C65/48
   C09J7/00
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-205179(P2016-205179)
(22)【出願日】2016年10月19日
(65)【公開番号】特開2017-100441(P2017-100441A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-228673(P2015-228673)
(32)【優先日】2015年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優和
(72)【発明者】
【氏名】出川 修
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭彦
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−110541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/48
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
粘着性を有する所定幅の樹脂を塗布部材によって前記ワークに塗布する塗布過程と、
前記ワークに塗布された樹脂に補強用の基材を貼付け部材によって貼り付けて粘着シートを形成する貼付け過程と
を備え
前記貼付け過程は、樹脂の幅より小さい幅を有する、単数本または複数本の帯状の基材を樹脂上に載置し、貼付け部材であるノズルから当該基材に気体を吹き付けて樹脂に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項2】
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
粘着性を有する所定幅の樹脂を塗布部材によって前記ワークに塗布する塗布過程と、
前記ワークに塗布された樹脂に補強用の基材を貼付け部材によって貼り付けて粘着シートを形成する貼付け過程と
を備え、
前記貼付け過程は、前記ワークに塗布された樹脂に対して、当該樹脂の長さに予め切断した前記基材を搬送して貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記貼付け過程は、貼付け部材である貼付けローラによって樹脂の幅より小さい幅を有する、単数本または複数本の帯状の基材を樹脂に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着シート貼付け方法において、
前記塗布過程は、塗布部材であるノズルから前記所定幅の樹脂を前記ワークに吹き付けて塗布する
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項5】
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
粘着性を有する所定幅の樹脂を塗布部材によって前記ワークに塗布する塗布過程と、
前記ワークに塗布された樹脂に補強用の基材を貼付け部材によって貼り付けて粘着シートを形成する貼付け過程と
を備え、
前記貼付け過程は、所定間隔をおいて樹脂上に載置される粗糸状の基材を貼付け部材である貼付けローラによって押圧しながら樹脂に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項6】
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
粘着性を有する所定幅の樹脂を塗布部材によって前記ワークに塗布する塗布過程と、
前記ワークに塗布された樹脂に補強用の基材を貼付け部材によって貼り付けて粘着シートを形成する貼付け過程と
を備え、
前記貼付け過程は、所定間隔をおいて樹脂上に載置される粗糸状の基材に貼付け部材であるノズルから気体を吹き付けて樹脂に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の粘着シート貼付け方法において、
前記塗布過程は、ワークに塗布する樹脂の厚みを調整して塗布方向に沿って複数本の凹部を形成し、
前記貼付け過程は、樹脂表面に形成された凹部に基材を載置して当該基材を樹脂に貼り付ける
ことを特徴とする粘着シート貼付け方法。
【請求項8】
ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け装置であって、
塗布部材から粘着性を有する樹脂を所定幅で前記ワークに塗布する塗布機構と、
前記ワークに塗布された樹脂の幅以下の補強用の基材を供給する基材供給部と、
貼付け部材によって前記基材を樹脂に押圧しながら貼り付ける貼付機構と、
を備えたことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項9】
請求項8に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記ワークを載置保持する保持テーブルを備えることを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記基材供給部は、単数本または複数本の基材を供給し、
前記貼付け部材は、基材を樹脂に押圧する貼付けローラである
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記基材が複数本の粗糸状である場合、貼付けローラは、当該基材を案内しながら樹脂に押圧して貼り付ける複数本のガイド溝を周側面に有する
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項12】
請求項11に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記塗布部材からワークの幅方向に塗布される樹脂量を塗布ライン上で調整しながら塗布方向に沿った複数本の凹部を樹脂表面に形成する制御部を備え、
前記貼付けローラは、粗糸状の基材を案内しながら樹脂表面の凹部に当該基材を挿入および押圧するガイド溝を周側面に有する
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項13】
請求項8または請求項9に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記基材供給部は、単数本または複数本の基材を供給し、
前記貼付け部材は、基材に気体を吹き付けながら樹脂に貼り付けるノズルである
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項14】
請求項13に記載の粘着シート貼付け装置であって、
複数本の粗糸状の基材を周側面に形成された複数本の各ガイド溝に案内しながら樹脂に載置するガイドローラを備えた
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項15】
請求項14に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記塗布部材からワークの幅方向に塗布される樹脂量を塗布ライン上で調整しながら塗布方向に沿った複数本の凹部を樹脂表面に形成する制御部を備え、
前記ガイドローラは、樹脂表面の凹部に粗糸状の基材を案内する
【請求項16】
請求項8または請求項9に記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記基材供給部は、前記ワークに塗布された樹脂に対して、当該樹脂の長さに予め切断した前記基材を搬送する
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項17】
請求項8ないし請求項16のいずれかに記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記塗布部材は、スリットから樹脂を所定幅で前記ワークに塗布するダイコータである
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【請求項18】
請求項8ないし請求項16のいずれかに記載の粘着シート貼付け装置であって、
前記塗布部材は、樹脂を所定幅で前記ワークに吹きつけ塗布するノズルである
ことを特徴とする粘着シート貼付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を含む輸送機械および各種産業機械の鋼板に貼り付けて補強或いは制振するための粘着シートの貼付け方法および粘着シート貼付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの車両の重量を軽量化するために鋼板を薄型化する傾向にある。当該薄型化に伴って鋼板の剛性が低下している。また、薄型化された鋼板は、路面の凹凸やエンジンの振動および騒音が伝わりやすい。したがって、鋼板の剛性を補うための樹脂シートまたは振動などを制振するための樹脂シートが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、補強用の樹脂層を有する粘着シートに添設された離型紙を剥離し、自動車のボンネットおよびドアなどの側部外板に当該粘着シートを自動で貼り付ける装置が提案されている。当該装置は、次のようにして粘着シートの貼り付けを行っている。
【0004】
所定形状の粘着シートをロボットに備わった搬送機構によって吸着保持して支持プレートに載置し、当該搬送機構と支持プレートによって粘着シートを挟み込む。粘着シートより大きいセパレータは、支持プレートからはみ出ているので、当該セパレータを剥離ユニットに備わった一対の可動片によって把持する。この状態で剥離ユニットのアームを揺動下降させながら樹脂層からセパレータを剥離する。この剥離動作に同調して、搬送機構によって吸着保持された粘着シートが、支持プレートの外側に水平移動する。セパレータの剥離された粘着シートをワークまで搬送し、ブラシローラによって当該粘着シートをワークに貼り付ける(特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−139218号公報
【特許文献2】特願2014−056587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外板を補強する樹脂層を有する粘着シートは、所定の厚みを有するとともに、所定の硬度を有するので曲げづらく外板の曲面に追従させて貼り付けることが困難になっている。また、所定長さを有する当該粘着シートをハンドリングし辛いといった不都合も生じている。
【0007】
さらに、貼付け対象のワークの形状に合うように粘着シートを予め所定形状に裁断しておく必要があるので、ワークごとに粘着シートを保存および管理しなければならないといった不都合も生じている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ワークに粘着シートを貼り付ける時のハンドリングおよび保存管理が容易になるとともに、ワークに精度よく粘着シートを貼り付けることのできる粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、このような問題を解決するために、次のような構成をとる。
【0010】
すなわち、ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け方法であって、
粘着性を有する所定幅の樹脂を塗布部材によって前記ワークに塗布する塗布過程と、
前記ワークに塗布された樹脂に補強用の基材を貼付け部材によって貼り付けて粘着シートを形成する貼付け過程と
を備えたことを特徴とする。
【0011】
(作用・効果) 上記方法によれば、樹脂をワークに直接に塗布した後に、当該樹脂に補強用の基材を貼り付けて粘着シートを形成するので、ワーク表面の状態に関わらず樹脂をワークに密着させることができる。すなわち、ワークの貼り付け位置に応じた所定形状に粘着シートに予め裁断しておく必要がなく、かつ、ハンドリングが容易となる。また、樹脂自体を容器に入れたまま保管することが可能なので、管理が容易となる。
【0012】
上記方法において、基材が、樹脂の幅より小さい幅を有する、単数本または複数本の帯状の基材である場合、次のようにして当該基材を樹脂に貼り付ける。
【0013】
貼付け過程は、貼付け部材である貼付けローラによって樹脂の幅より小さい幅を有する、単数本または複数本の帯状の基材を樹脂に貼り付ける。
【0014】
または、貼付け過程は、樹脂の幅より小さい幅を有する、単数本または複数本の帯状の基材を樹脂上に載置し、貼付け部材であるノズルから当該基材に気体を吹き付けて樹脂に貼り付ける。
【0015】
この方法によれば、樹脂の全面を基材で覆うのに比べて各基材と樹脂との接触面積が小さいので、接着界面に気泡を巻き込み辛い。また、気泡を巻き込んだ場合であっても、基材を押圧することによって接着界面から排出しやすい。したがって、基材と樹脂を密着させることができるので、加熱処理を行った場合に、接着界面の気泡が膨張して密着不良を招くのを回避することができる。
【0016】
上記方法において、貼付け過程は、ワークに塗布された樹脂に対して、当該樹脂の長さに予め切断した基材を搬送して貼り付けることとしてもよい。
【0017】
また上記方法において、塗布過程は、塗布部材であるノズルから所定幅の樹脂をワークに吹き付けて塗布することとしてもよい。このような構成では、ノズルからワークに吹き付けられる樹脂の厚みが均一になるように、ノズルの位置、ノズルからワークまでの距離および樹脂の塗布量などを適宜に調整することが容易である。そのため、粘着シートにおける樹脂の形状をより容易かつ好適に調整することが可能となる。
【0018】
上記方法において、基材が、粗糸状の基材である場合、次のようにして当該基材を樹脂に貼り付ける。
【0019】
貼付け過程は、所定間隔をおいて樹脂上に載置される粗糸状の基材を貼付けローラによって押圧しながら樹脂に貼り付ける。
【0020】
または、貼付け過程は、所定間隔をおいて樹脂上に載置される粗糸状の基材にノズルから気体を吹き付けて樹脂に貼り付ける。
【0021】
この方法によれば、樹脂の全面を基材で覆うのに比べて各基材と樹脂との接触面積が非常に小さいので、接着界面に気泡の巻き込みを回避することができる。また、気泡を巻き込んだ場合であっても、基材を押圧することによって接着界面から確実の排出することができる。したがって、基材と樹脂を密着させることができるので、加熱処理を行った場合に、接着界面の気泡が膨張して密着不良を招くのを回避することができる。
【0022】
なお、塗布過程は、ワークに塗布する樹脂の厚みを調整して塗布方向に沿って複数本の凹部を形成し、
貼付け過程は、樹脂表面に形成された凹部に基材を載置して当該基材を樹脂に貼り付けることが好ましい。
【0023】
この方法によれば、樹脂上面に連続する凹凸を形成するので曲げ応力に対して強度を上げることができる。また、凹部に基材を均等に配置することができるので、樹脂全面を均等に補強することができる。
【0024】
また、この発明は、このような問題を解決するために、次のような構成をとる。
【0025】
すなわち、ワークに粘着シートを貼り付ける粘着シート貼付け装置であって、
前記ワークを載置保持する保持テーブルと、
塗布部材から粘着性を有する樹脂を所定幅で前記ワークに塗布する塗布機構と、
前記ワークに塗布された樹脂の幅以下の補強用の基材を供給する基材供給部と、
貼付け部材によって前記基材を樹脂に押圧しながら貼り付ける貼付機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0026】
(作用・効果) 上記構成によれば、塗布機構によってワークに樹脂を塗布した後に、基材供給部から供給される基材を貼付け機構によって樹脂に貼り付けることができる。換言すれば、ワークの貼付け部位に粘着シートを直接に形成する。したがって、ワークに樹脂を密着させることができるとともに、取り扱いが容易となる。すなわち、上記方法を好適に実施することができる。
【0027】
上記構成において、さらにワークを載置保持する保持テーブルを備えることが好ましい。
【0028】
なお、上記構成において、基材供給部が、単数本または複数本の基材を供給する場合、貼付け部材は、例えば、貼付けローラまたはノズルを利用可能である。
【0029】
貼付け部材が貼付けローラであり、基材が複数本の粗糸状である場合、各基材を案内しながら樹脂に押圧して貼り付ける複数本のガイド溝を周側面に有することが好ましい。
【0030】
さらに好ましくは、塗布部材からワークの幅方向に塗布される樹脂量を塗布ライン上で調整しながら塗布方向に沿った複数本の凹部を樹脂表面に形成する制御部を備え、
前記貼付けローラは、粗糸状の基材を案内しながら樹脂表面の凹部に当該基材を挿入および押圧するガイド溝を周側面に有する。
【0031】
この構成によれば、基材と樹脂の接着界面の面積が、樹脂全面を基材で覆う場合に比べて非常に小さくなるので、気泡の巻き込みを抑制できるとともに、巻き込んだ気泡を容易に押圧して接着界面から排除することができる。したがって、基材と樹脂を密着させることができる。また、制御部によって樹脂の塗布量を調整する場合、凹部を樹脂表面に形成することにより、樹脂表面に連続する凹凸が形成されて樹脂の強度が増す。また、当該凹部に基材を挿入して押圧するので、樹脂を均等に補強することができる。
【0032】
貼付け部材が、ノズルである場合、ノズルは、基材供給部から供給される単数本または複数本の基材に気体を吹き付けながら樹脂に貼り付ける。
【0033】
なお、上記構成において、基材供給部は、ワークに塗布された樹脂に対して、当該樹脂の長さに予め切断した基材を搬送する構成としてもよい。
【0034】
また、基材が、複数本の粗糸状である場合、周側面に形成された複数本の各ガイド溝に案内しながら樹脂に載置するガイドローラを備えることが好ましい。
【0035】
さらに好ましくは、塗布部材からワークの幅方向に塗布される樹脂量を塗布ライン上で調整しながら塗布方向に沿った複数本の凹部を樹脂表面に形成する制御部を備え、
ガイドローラは、樹脂表面の凹部に粗糸状の基材を案内する。
【0036】
この構成によれば、基材と樹脂の接着界面の面積が、樹脂全面を基材で覆う場合に比べて非常に小さくなるので、気泡の巻き込みを抑制できるとともに、巻き込んだ気泡を容易に押圧して接着界面から排除することができる。したがって、基材と樹脂を密着させることができる。また、制御部によって樹脂の塗布量を調整する場合、凹部を樹脂表面に形成することにより、樹脂表面に連続する凹凸が形成されて樹脂の強度が増す。また、当該凹部に基材を挿入して押圧するので、樹脂を均等に補強することができる。
【0037】
また、上記構成において、塗布部材として、スリットから樹脂を所定幅でワークに塗布するダイコータを利用可能である。
【0038】
また、上記構成において、塗布部材として、樹脂を所定幅でワークに吹き付け塗布するノズルを利用可能である。このような構成では、ノズルからワークに吹き付けられる樹脂の厚みが均一になるように、ノズルの位置、ノズルからワークまでの距離および樹脂の塗布量などを適宜に調整することが容易である。そのため、粘着シートにおける樹脂の形状をより容易かつ好適に調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の粘着シート貼付け方法および粘着シート貼付け装置によれば、ワークに粘着シートを貼り付ける時のハンドリングおよび保存管理が容易になるとともに、ワークに精度よく粘着シートを貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】粘着シート貼付け装置の構成を示す平面図である。
図2】粘着シート貼付け装置の構成を示す斜視図である。
図3】粘着シート貼付け装置による粘着シートの貼付け動作を示す正面図である。
図4】粘着シート貼付け装置による粘着シートの貼付け動作を示す正面図である。
図5】粘着シート貼付け装置による粘着シートの貼付け動作を示す正面図である。
図6】粘着シート貼付け装置による粘着シートの貼付け動作を示す正面図である。
図7】変形例の粘着シート貼付け装置の構成を示す斜視図である。
図8】変形例の粘着シート貼付け装置の構成を示す斜視図である。
図9図8の変形例装置によってロービングを樹脂に貼り付ける動作を示す図である。
図10図8の変形例装置のさらなる変形例を示す図である。
図11】ロービングを樹脂に貼り付けた縦断面図である。
図12】変形例装置の構成を示す正面図である。
図13】変形例の貼付けロボットの構成を示す正面図である。
図14】貼付けロボットによる基材の貼り付け動作を示す図である。
図15】貼付けロボットによる基材の貼り付け動作を示す図である。
図16】貼付けロボットによる基材の貼り付け動作を示す図である。
図17】貼付けロボットによる基材の貼り付け動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0042】
図1に粘着シート貼付け装置の平面図、図2に粘着シート貼付け装置の斜視図が示されている。
【0043】
粘着シート貼付け装置は、図1および図2に示すように、保持テーブル1、塗布機構2、基材供給部3、貼付け機構4および切断機構5などから構成されている。
【0044】
保持テーブル1は、自動車のボンネットやドアなどの外板を保持する。また、保持テーブル1は、前後水平に配備された左右一対のレール6に沿って前後にスライド可能に支持された可動台7に支持されている。そして、可動台7は、パルスモータ8で正逆駆動されるネジ軸9によってネジ送り駆動されるようになっている。
【0045】
塗布機構2は、ダイコータ10と流路11を介して外部で連通接続された貯留槽12などから構成されている。ダイコータ10は、ワークWの貼付け部位の幅より広いスリット状の供給口を有する。また、電磁バルブ13が、流路11に介在されており、制御部14によって開閉操作される。貯留槽12は、所定粘度の樹脂Gが貯留されている。
【0046】
基材供給部3は、ワークWの貼付け部位の幅以下の幅に予め裁断された帯状の基材Tを巻回された原反ロールの装填された供給ボビンから貼り付け機構4に供給するよう構成されている。なお、供給ボビンは、電磁ブレーキに連動連結されて適度の回転抵抗がかけられている。したがって、供給ボビンから過剰な基材Tの繰り出しが防止されている。
【0047】
貼付け機構4は、貼付けローラ15およびニップローラ16などから構成されている。貼付けローラ15は、シリンダなどのアクチュエータによって昇降可能に構成されている。また、貼付けローラ15は、基材Tを吸着保持するよう外部の真空装置と連通接続されている。
【0048】
ニップローラ16は、昇降して貼付けローラ15とのギャップを調整可能に構成されている。
【0049】
切断機構5は、貼付けローラ15とニップローラ16によって挟持された基材Tをカッタ17で切断するように構成されている。すなわち、切断機構5は、貼付けローラに巻回された基材を突き刺す位置と上方の待機位置とにわたってカッタ17を昇降させるとともに、貼付けローラ15の回転軸芯に沿ってカッタ17を水平移動させるように構成されている。
【0050】
本実施例装置は、上述のように構成されており、次ぎに実施例装置の一連の動作を図3から図6に沿って説明する。
【0051】
保持テーブル1にワークWが載置されると、当該保持テーブル1が、図3に示すように、樹脂Gの塗布位置であるダイコータ10の下方に移動する。制御部14が、電磁バルブ13を開いて樹脂Gをダイコータ10からワークWに塗布を開始する。ワークWに塗布される樹脂Gの厚みが所定の厚みなるように、ダイコータ10からの塗布量と保持テーブル1の移動速度が予め実験やシミュレーションによって設定されている。
【0052】
樹脂Gの塗布の開始に伴って、図4に示すように、保持テーブル1が所定距離移動して時点で貼付けローラ15が下降し、保持テーブル1の移動速度に従動しながら樹脂Gの塗布された先端部分から基材Tを所定の押圧力で貼り付けてゆく。
【0053】
ダイコータ10の先端が、貼付け部位の終端位置に到達すると、ダイコータ10からの樹脂Gの塗布を停止するとともに、保持テーブル1の移動を停止する。
【0054】
切断機構5のカッタ17が切断位置まで下降し、図5に示すように、貼付けローラ15の上で回転軸方向(基材の幅方向)に基材Tにカッタ17を突き刺し、水平移動しながら当該基材Tを切断する。切断後の基材Tの後端が、樹脂Gの後端と一致する長さに基材Tを貼付けローラ上で切断している。したがって、切断処理後に、図6に示すように、再び保持テーブル1を移動させて未接着の基材Tの後部を樹脂Gに貼り付けてゆく。
【0055】
なお、基材の先端は、貼付けローラ15のよって吸着保持されているので、当該貼付けローラ15の下端に到達している。このとき、基材供給部3は、所定のテンションをかけながら所定長さの基材Tを繰り出している。
【0056】
以上で上記実施例装置によってワークWの貼付け部位に粘着シートを貼り付ける一巡の動作が完了し、以後、当該処理が繰り返し実行される。
【0057】
上記実施例装置によれば、ワークWの粘着シートの貼付け部位に樹脂Gを直接に塗布するので、ワークWに樹脂Gを確実に密着させることができる。また、樹脂Gを塗布した後に補強用の基材Tを当該樹脂Gに貼り付けて粘着シートを形成するので、予め所定形状に裁断された粘着シートをワークWに貼り付けるのに比べて取り扱いが容易である。さらに、ワークWの形状および種類ごとに粘着シートを用意する必要がない。すなわち、樹脂Gと定型である帯状の基材Tを利用することができるので、樹脂Gおよび基材Tの保存および管理が容易となる。
【0058】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0059】
(1)上記実施例装置において、ワークWの貼付け部位に塗布した樹脂Gと略同じ幅の基材を当該樹脂Gに貼り付けていたが、塗布した樹脂Gの幅よりも小さい幅の複数本の基材を樹脂Gに貼り付けるように構成してもよい。
【0060】
例えば、上記実施例装置において、図7に示すように、樹脂の塗布幅よりも小さい幅の帯状の基材Tsを巻回した供給ボビンを基材供給部3に装填し、所定間隔で当該基材Tsを平行して樹脂Gに貼り付けるように構成する。なお、本実施例では、2本の基材Tsを樹脂Gに貼り付けているが、2本に限定されない。すなわち、樹脂Gの厚み、幅および受樹脂G並びに基材Tsの特性などによって適宜に本数が設定される。また、複数の基材Tsは、各々が平行する構成に限られない。すなわち複数本の基材Tsの各々が延伸する方向が交差してもよい。さらに複数の基材Tsは等間隔に設けられる構成に限定されない。すなわち、基材Tsの各々の間隔はそれぞれ異なってもよい。
【0061】
(2)別の実施形態として、粗糸状の基材を補強用に利用してもよい。すなわち、短繊維束に撚りをかけて供給ボビンに巻き取ったロービングRを基材として利用する。ロービングRは、例えば、ガラスフィラメントをバインダで集束したガラス長繊維強化ポリプロピレンなどが利用される。
【0062】
ロービングRを利用する場合、図8に示すように、基材供給部3に所定間隔で複数個の供給ボビンをセットする。基材供給部3から繰り出される複数本のロービングRを、貼付けローラ15およびニップローラ16の周側面に所定間隔で形成されたガイド溝20に供給案内するように構成すればよい。
【0063】
ロービングRを利用する場合、さらに、次のように構成してもよい。ダイコータ10から塗布する樹脂Gの塗布量を幅方向の所定間隔おきに調整して厚みを変える。つまり、図9に示すように、樹脂表面に所定間隔おきに凹部21を形成する。その後、貼付けローラ15によって当該凹部21にロービングRを挿入および押圧して貼り付ける。なお、ロービングRを樹脂Gにより確実に密着させるために、図10に示すように、貼付けローラ15の下流側に配備したノズル22から基材表面に気体を吹き付けてロービングRを樹脂Gに再度押圧するように構成してもよい。
【0064】
上述の帯状の基材TsおよびロービングRを樹脂Gに貼り付ける構成によれば、樹脂全面を基材Tで覆う場合に比べて接着面積が小さいので基材Tsと樹脂GまたはロービングRと樹脂Gの接着界面への気泡の巻き込みを抑制することができる。また、接着界面に気泡を巻き込んだ場合であっても、接着界面から気泡を押し出す距離が短いので、当該接着界面から気泡を容易に排出することができる。したがって、ワークWの貼付け部位に気泡の巻き込みのない粘着シートを確実に形成することができる。
【0065】
また、ロービングRのように樹脂との接着面積が非常に小さい場合であっても、ワークWに曲げ応力が作用してもワークWを湾曲させることのない十分な剛性を持たせることができる。すなわち、曲げ応力によって粘着シートとワークの接着界面に作用する剪断応力は、図11に示すように、樹脂Gに半分程度埋もれているロービングRの接着面(曲面)からワークWと樹脂Gの接着界面に向けて放射状に広がるように樹脂Gによって吸収される。なお、ワークWと樹脂Gとの接着界面に作用する剪断応力を樹脂Gによって吸収させるために、ロービングRの太さ、本数、特性および樹脂Gの厚み、特性などが適宜に設定変更される。
【0066】
(3)上記実施形態では、塗布機構2にダイコータ10を利用したが、例えば、図12に示すように、コンマコータ25を利用してもよい。この構成の場合、貯留槽26と隣接するコーティングロール27とコンマロール28との間隙を調整し、貯留槽26から繰り出させる樹脂Gの厚みを設定し、コーティングロール27と貼付けローラ29との間に樹脂Gを通過させてワークWに樹脂Gを貼り付ける。その後、当該樹脂上に基材Tを貼り付けてワークWの貼付け部位に粘着シートを形成する。
【0067】
また別の実施形態として、ダイコータ10に代えてスプレーノズルによってワークWの貼付け部位に樹脂Gを吹き付けて所定厚みの樹脂層を形成してもよい。スプレーノズルは、樹脂Gの幅方向に伸びる樹脂供給管に所定間隔をおいて複数個のスプレーノズルを配備すればよい。すなわち、スプレーノズルからワークWにミスト状に吹き付けられる樹脂Gの厚みが均一になるように、隣接するスプレーノズル同士の間隔、スプレーノズルからワークWまでの距離および樹脂Gの塗布量などが適宜に調整される。
【0068】
(4)上記各実施例では、帯状または粗糸の基材を供給ボビンから供給していたが、ワークに塗布した樹脂に当該樹脂の長さに予め切断した基材を貼付けロボットで搬送して貼り付けるように構成してもよい。
【0069】
貼付けロボットは、例えば、図13に示すように構成すればよい。正面視したとき、ロボットアーム35の先端に枢動可能な逆U字状の枢動フレーム36を備え、当該枢動フレーム36の両端に吸着パッド37を配備する。なお、基材Tを水平保持するために複数本の枢動フレーム36を並列装備している。また、ロボットアーム35の先端に固定配備されたシリンダ38のロッド先端に貼付けローラ39を備える。
【0070】
当該貼付けロボットによって基材TをワークWに塗布された樹脂Gに貼り付ける一巡の動作を図14から図17を参照して説明する。
【0071】
樹脂Gの塗布済みのワークWが、保持テーブル1Aに保持される。所定の保管位置に配置されているワークWの貼付け部位の長さに予め切断された基材Tの両端を、枢動フレーム先端の吸着パッド37によって吸着保持してワークWまで搬送する。図14に示すように、樹脂Gに基材Tを平行に保った状態で近接させ、図15に示すように、貼付けローラ39を下降させる。このとき、貼付けローラ39によって押圧された基材Tの中央が、樹脂Gの中央に貼り付けられる。
【0072】
その後、図16に示すように、ロボットアーム35を操作し、貼付けローラ39を樹脂Gの中央から一端に向けて移動させて基材Tを樹脂Gに貼り付けてゆく。このとき、枢動フレーム36が支軸周りに揺動するので、当該揺動に伴って樹脂Gの中央から一端に向けて移動する貼付けローラ39の高さを一定に保ちながら基材を押圧させて樹脂Gに貼り付ける。
【0073】
貼付けローラ39が、吸着バッドまで移動すると、基材の終端は、バネなどの弾性体によって下向きに付勢されている吸着パッド38によって押圧されて樹脂Gに貼り付けられる。吸着パッド38による一端への基材Tの貼り付けが完了すると、当該吸着パッド38による基材Tの吸着を解除する。
【0074】
次ぎに、図17に示すように、ロボットアーム35を操作して貼付けローラ39を樹脂Gの他端に向けて移動させて基材Tを樹脂Gに貼り付けてゆく。この貼付け過程で枢動フレーム36が支軸周りに逆向きに揺動してゆく。貼付けローラ39が、他端の吸着バッド37まで移動すると、基材Tの終端は吸着パッド37によって押圧されて貼り付けが完了する。吸着パッド37による他端への基材Tの貼り付けが完了すると、当該吸着パッド37による基材Tの吸着を解除する。ロボットアーム35は、次の貼り付け処理に備えて、次の基材Tを取りに行く。以上で当該実施例装置の一連の動作が完了する。
【0075】
(5)上記メイン実施例および(1)〜(4)までの塗布機構2、貼り付け機構4および切断機構5をロボットアームの先端に配備し、固定された保持テーブル上のワークの貼付け部位に樹脂を直接に塗布した後に基材を当該樹脂に貼り付けるように構成してもよい。
【0076】
(6)上記各実施例では、複数本の基材Ts、Rを平行して樹脂Gに貼り付けていたが、基材Tを交差させて貼り付けたり、貼付け部位の形状に応じて基材を縦と横に貼り付けたりしてもよい。この場合、例えば保持テーブルを前後左右に移動および回転するよう構成すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 … 保持テーブル
2 … 塗布機構
3 … 基材供給部
4 … 貼付け機構
5 … 切断機構
10 … ダイコータ
15 … 貼付けローラ
16 … ニップローラ
17 … カッタ
G … 樹脂
T、Ts、R…基材
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