(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車室内に乗車可能な空間が設けられ、前記空間の後方に運転席が設けられ、前記空間の前記運転席よりも前方に乗客席が設けられた車両に搭載可能な自動車用運転操作装置であって、
前記車両が、自動で制御する自動運転と、前記運転者の運転操作に基づいて制御する手動運転とを切り替え可能であり、
前記運転席が、上下方向に移動可能であり、
前記自動車用運転操作装置が、
前記運転席に着座した運転者が前記車両の進行方向を向いて操作可能に設けられ、前記車両の操舵操作及び加減速操作を含む運転操作を受け付ける運転操作部と、
前記手動運転中は、前記運転席の高さを前記乗客席の高さよりも高い位置で維持するように前記運転席の下降を禁止し、前記自動運転中は、前記運転席の高さが前記乗客席の高さに近づくように前記運転席を下降させることを許可するコントローラと、
を備え、
前記運転席の高さの変化に追従して前記運転操作部の高さを変化させることを特徴とする自動車用運転操作装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を貼付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
<自動車用運転操作装置の構成>
本発明の実施形態に係る自動車用運転操作装置は、車両を自動で制御する自動運転(以下、単に「自動運転」と呼ぶ場合がある。)と、乗員の運転操作に基づいて車両を制御する手動運転(以下、単に「手動運転」と呼ぶ場合がある。)との切り替えが可能な車両に搭載可能である。ここで、本明細書においては、自動運転とは、乗員が関与せずに車両の走行を自動で制御することを意味する。自動運転には、通常時には車両の走行を自動で制御するが、緊急時には乗員に対して操作(手動運転)を要求する場合も含まれる。一方、手動運転とは、加減速、操舵等の少なくとも一部を乗員が操作することを意味する。手動運転には、加減速、操舵等の一部をシステムが支援する場合が含まれる。本発明の実施形態においては、自動運転と手動運転とを切り替え可能な車両に自動車用運転操作装置を搭載する場合を主に説明するが、手動運転のみを実行可能な車両に自動車用運転操作装置を搭載しても構わない。
【0011】
本発明の実施形態に係る車両は、
図1〜
図3に示すように、車体の下部を覆うように配置されたパネル部1と、車両前後方向にアーチ状をなして延伸する2本の骨格部1a,1bと、車幅方向にアーチ状をなして延伸する2本の骨格部1c,1dと、パネル部1の上端及び骨格部1a,1b,1c,1dで区画された窓部9a,9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hを備える。車両後部のパネル部1の上端及び骨格部1a,1b,1dで区画された領域は、後部座席3の上方及び後方を遮蔽する遮蔽部6が配置されている。
【0012】
パネル部1及び遮蔽部6の材料としては鉄やアルミニウム、繊維強化プラスチック(FRP)等が使用可能である。骨格部1a,1b,1c,1dの材料としては鋼鉄等が使用可能である。窓部9a,9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hの材料としてはガラス等の透明な材料が使用可能である。なお、
図1〜
図3に示したパネル部1の形状、骨格部1a,1b,1c,1dの配置位置や本数、窓部9a,9b,9c,9d,9e,9f,9g,9hの配置位置や数は一例であって特に限定されるものではない。
【0013】
車両の車室内には、車両前後方向に配置された複数列(2列)の座席2a,2b,3を有する。複数列(2列)の座席2a,2b,3は、車室内の前部に、車幅方向に2席並べて配置された前部座席(以下、「乗客席」と呼ぶ場合がある)2a,2bと、車室内の後部に、車幅方向の中央に配置された後部座席(以下、「運転席」と呼ぶ場合がある)3で構成されている。
図2に示すように、後部座席3の高さH1は、前部座席2a,2bの高さH0よりも高く設定されている。
【0014】
後部座席3の下側には段差部1yが配置されている。段差部1yには、電気自動車(EV)用のバッテリ等を収納することができる。
図1〜
図3に示すように、段差部1yの前部の左右を切り欠くことにより、ステップ1e,1fが設けられている。ステップ1e,1fは、ドア1g,1h(
図4参照)の位置に応じて設けられ、後部座席3の乗員100が乗降し易くなっている。
【0015】
車両前部には、車両前方の状況を検出する周囲状況センサ7aが配置されている。車両後部には、車両後方の状況を検出する周囲状況センサ7bが配置されている。周囲状況センサ7a,7bはレーザレーダやカメラ等が使用可能である。
【0016】
前部座席2a,2bには、操舵操作及び加減速操作を含む運転操作を受け付ける運転操作装置は設けられていない。即ち、前部座席2a,2bの前方には段差部1xが配置されているが、段差部1xにはステアリングホイールは設けられていない。更に、前部座席2a,2bの前方にはアクセルペダル及びブレーキペダルは設けられていない。このため、前部座席2a,2bの前方の空間が広くなり、前部座席2a,2bの乗員101,102は快適に過ごすことができる。更に、前部座席2a,2bの乗員101,102は、車両の進行方向(前方)を向いたときに、運転者が直接視界に入らず視界が開けて、車室外の状況を容易に視認することができる。
【0017】
本発明の実施形態に係る自動車用運転操作装置は、後部座席3に着座した乗員100が進行方向を向いて操作可能な位置に設けられ、乗員100からの操舵操作及び加減速操作を含む運転操作(指示)を受付ける運転操作部(ユーザインターフェース)5を備える。即ち、本発明の実施形態においては、後部座席3を運転席とし、後部座席3の乗員100が運転者となる。一方、後部座席3の前方の乗車可能な空間2に配置された前部座席2a,2bを乗客席とし、前部座席2a,2bの乗員101,102が乗客(同乗者)となる。
【0018】
図1〜
図3に示すように、運転操作部5は、車両前後方向において前部座席2a,2bと後部座席3の間で、且つ車幅方向の中央に位置する。運転操作部5は例えば板状の操作卓であり、自動運転中や停車中のテーブルとしての機能を備える。運転操作部5には運転操作部5を支持するための一対の脚部5a,5bが取り付けられている。運転操作部5は、後部座席3の乗員100が把持可能なように一対の把持部5c,5dを有する。
【0019】
運転操作部5の把持部5c,5dは、把持部5c,5dに力が加えられることによる左右の力差(トルク制御)や把持部5c,5dの握力又はバイク的ねじり等による操舵操作を受け付ける。例えば、左側の把持部5bに加わる力が相対的に大きい場合に車両を左旋回させ、右側の把持部5cに加わる力が相対的に大きい場合に車両を右旋回させる。また、運転操作部5の把持部5c,5dは、把持部5c,5dの握力や、バイク的ねじり、又はモトクロス用ハンドルと同様の親指操作等による加減速操作を受け付ける。例えば、バイク的ねじりにより車両を加速させ、把持部5c,5dの握力を大きくすることにより車両を減速及び停車させる。
【0020】
ここで、運転操作部5は、運転操作部5と駆動輪とを機械的に分離し、ワイヤーハーネスを介して電気的に接続するステアバイワイヤを構成してもよい。即ち、運転操作部5の操作量をセンサで検出する。そして、センサで検出した操作量に基づいて、ステアリングアクチュエータが駆動輪を制御する。
【0021】
運転操作部5には、自動運転と手動運転とを切り替える操作を受け付ける運転切替スイッチ5xが設けられている。運転切替スイッチ5xは、自動運転中には、自動運転から手動運転に切り替える操作を受け付け、手動運転中には、手動運転から自動運転に切り替える操作を受け付ける。
図1及び
図3では、運転切替スイッチ5xが運転操作部5の上面に物理的なスイッチとして設けられた場合を例示するが、運転切替スイッチ5xは運転操作部5に表示されたタッチパネルであってもよい。また、運転切替スイッチ5xの位置は後部座席3の乗員100が進行方向を向いて操作可能な位置であれば特に限定されない。
【0022】
図1では、前部座席2a,2b及び後部座席3を有する2列席の場合を例示するが、これに限定されない。例えば、車両前後方向に3列以上の座席を有していてもよい。車両前後方向に3列以上の座席が有る場合には、最後部の座席を運転席とし、運転席以外の座席を乗客席とすることができる。即ち、運転操作部5は、最後部の座席の位置に応じて、最後部の座席に着座した乗員が進行方向を向きながら操作可能な位置に設けられる。
【0023】
また、
図1〜
図3では、後部座席3が車幅方向の中央位置に配置された場合を例示するが、必ずしも車幅方向の中央位置でなくてもよく、例えば前部座席2a,2bのいずれかの真後ろに配置されていてもよい。また、
図1〜
図3では、後部座席3が1つの場合を例示するが、後部座席が車幅方向に複数(例えば2席)並べて配置されていてもよい。後部座席が複数配置されている場合には、複数の後部座席のいずれかを運転席とし、他の後部座席を乗客席として、運転席の乗員が操作可能な位置に運転操作部5が設けられる。
【0024】
運転操作部5には、液晶ディスプレイ等のディスプレイ8が設けられている。ディスプレイ8は、後部座席3の乗員100が視認可能なように、後部座席3の位置に応じて設けられている。例えば、ディスプレイ8は、周囲状況センサ7bにより検出された車両後方の状況を表示する。或いは、ディスプレイ8は、車車間通信や路車間通信により車外から得られた車両後方や車両側方等の車両の周囲状況を表示してもよい。更に、ディスプレイ8は、周囲状況センサ7aにより検出された車両前下方の状況を表示することで、後部座席3の乗員100が確認し難い車両前下方の状況を容易に確認することができる。
【0025】
なお、
図3では、ディスプレイ8が運転操作部5に設けられた場合を例示するが、運転操作部5とは別個に設けられていてもよい。例えば、ディスプレイ8は、車室内に天吊りしてもよく、窓部9d,9gやパネル部1の内壁面に設けられていてもよい。なお、ディスプレイ8に車両の周囲状況を表示する代わりに、投影装置を用いて窓部9d,9gやパネル部1の内壁面等に車両の周囲状況を投影してもよい。
【0026】
図1〜
図3に示すように、パネル部1の外側の側面には、車両後方の状況を写すミラー(後写鏡)4a,4bが設けられている。ミラー4a,4bは、車両の左側後方及び右側後方をそれぞれ写す。ミラー4a,4bは、後部座席3の位置に応じて設けられている。車両前後方向において、ミラー4a,4bと後部座席3の距離D1は、後部座席3の乗員100がミラー4a,4bに写された後方の状況を確認できるように設定される。なお、ミラー4a,4bの代わりに車両の左側後方及び右側後方の状況を検出するセンサを設けて、センサにより検出された車両の左側後方及び右側後方の状況をディスプレイ8に表示してもよい。また、後部座席3の後方が遮蔽部6により遮蔽されていない場合には、車両後方の状況を写すルームミラーが後部座席3の乗員100が視認可能な位置に設けられていてもよい。
【0027】
図4は、後部座席3の乗員100の視点位置から見た視界の一例を示す。後部座席3の高さH1は、前部座席2a,2bの高さH0よりも高く設定されているため、後部座席3の乗員100は、前部座席2a,2b及び乗員101,102に視界を阻害され難く、車室外の車両の進行方向(前方)の周囲状況を把握し易くなる。更に、後部座席3の乗員100は、車両の進行方向を向きながら、前部座席2a,2bの乗員101,102の様子を含む車室内の状況を容易に確認することができる。また、後部座席3の上方及び後方は遮蔽部6により遮蔽されており、後部座席3の乗員100は後方車両からの視線を感じず、安心感を抱くことができる。
【0028】
前部座席2a,2bは、例えば
図5に示すように、車両前後方向及び車幅方向に移動可能であり、車両後方(車両の進行方向に対して逆方向)を向くように水平方向に回転可能であってもよい。
図5では、前部座席2bが車両前方に移動するとともに、斜め後方を向くように回転した場合を例示するが、前部座席2bは真後ろを向くようにも回転可能である。また、
図5では、前部座席2bのみ移動及び回転した場合を例示するが、前部座席2aも同様に移動及び回転可能である。前部座席2a,2bを車両後方に向けることにより、前部座席2a,2bの乗員101,102と後部座席3の乗員100とが向き合って会話することができる。
【0029】
なお、前部座席2a,2bが回転した場合でも、乗員101,102は前部座席2a,2bにシートベルトで固定されて安全性が確保される。また、前部座席2a,2bは、停車中のみ車両後方を向くように回転してもよく、走行中には前部座席2a,2bが安全な方向で強制ロックされるか、或いは安全な方向を向くように強制復帰されるようにしてもよい。強制復帰の際には、前部座席2a,2bの乗員101,102の手足のぶつかりや挟み込みを回避するように前部座席2a,2bを回転させる。また、前部座席2a,2bは、自動運転中のみ車両後方を向くように回転してもよい。
【0030】
また、
図6Aに示す手動運転中と
図6Bに示す自動運転中とで、後部座席3の高さH1,H2を変化させてもよい。例えば、
図6Aに示す手動運転中には、後部座席3の高さH1を、
図6Bに示す自動運転中の後部座席3の高さH2よりも高く設定することにより、後部座席3の乗員100が車両前方を見渡し易くなる。更に、
図6Aに示すように、手動運転中の後部座席3の車両前後方向の位置を、
図6Bに示す自動運転中の後部座席3の車両前後方向の位置よりも後方に移動することにより、後部座席3の乗員100の車室内外の視野を広げることができる。
【0031】
一方、
図6Bに示す自動運転中の後部座席3の高さH2を、
図6Aに示す手動運転中の後部座席3の高さH1よりも下げることにより、後部座席3の高さH2を前部座席2a,2bの乗員101,102の高さH0と同等とするか、或いは近づけることができ、後部座席3の乗員100がシートを後方に回転させた前部座席2a,2bの乗員101,102と目線を合わせて会話し易くなる。更に、
図6Bに示すように、自動運転中の後部座席3の車両前後方向の位置を、
図6Aに示す手動運転中の後部座席3の車両前後方向の位置よりも前方に移動することにより、前部座席2a,2bの乗員101,102との距離を近づけることができる。後部座席3を前方に移動する際には、前部座席2a,2bや前部座席2a,2bの乗員101,102との干渉を回避するように、例えば後部座席3に近接センサを設置することが好ましい。
【0032】
また、
図6Bに示すように、自動運転中に後部座席3の高さH1を下げることに伴い、運転操作部5の高さH3も下げることにより、後部座席3の乗員100による運転操作部5の運転切替スイッチ5x等の操作性を維持するとともに、運転操作部5のテーブルとしての利便性を確保できる。
図6Bでは、段差部1yの後部座席3及び運転操作部5が設置された領域がその周囲領域と分離されており、段差部1yの後部座席3及び運転操作部5が設置された領域が一体的に昇降する場合を例示している。なお、段差部1yは降下せずに後部座席3及び運転操作部5のみが昇降する構成であってもよい。また段差部1y付近には、バッテリ等、車両の構成要素が配置されている場合は、段差部1yの降下は制限されるため、後部座席3及び運転操作部5のみが昇降する構成であってもよい。
【0033】
また、後部座席3の位置及び高さの移動に追従するように運転操作部5の位置及び高さを移動することにより、運転操作部5に設けられたディスプレイ8の視認性を維持することができる。なお、ディスプレイ8が運転操作部5とは個別に設けられている場合、ディスプレイ8の位置がシート移動量に対して十分遠方であれば、ディスプレイ8は固定されていてもよい。
【0034】
また、後部座席3の乗員100が後方の状況を確認可能なように、後部座席3の上下方向の移動に応じてミラー4a,4bを回旋させてもよい。更に、後部座席3が車両前後方向に移動する場合には、後部座席3の車両前後方向の移動に応じてミラー4a,4bの屈伸角度又は前後位置等を変化させてもよい。尚、車両の後方の状況を確認するためにミラーを用いているが、本実施形態においてはミラーに限らない。本実施形態においては、車両の後方の状況を周囲状況センサ、例えば、カメラ、ソナー、レーザーなどで検出し、検出した結果をディスプレイに表示し、乗員が視認可能なようにしてもよい。またディスプレイの表示は、カメラ、ソナー、レーザーなどの検出結果をそのまま表示する必要はなく、乗員が視認しやすいように加工して表示するようにしてもよい。
【0035】
なお、後部座席3は、車両が手動運転中であるか、或いは自動運転中であるかに関わらず、前部座席2a,2bよりも高い位置で固定されていてもよい。また、車両が手動運転中であるか、或いは自動運転中であるかに関わらず、車両が走行中の場合と停車中の場合で後部座席3の高さを変化させてもよい。即ち、車両が走行中である場合には、車両が手動運転中であるか、或いは自動運転中であるかに関わらず、
図6Aに示すように後部座席3の高さを相対的に高くしてもよい。一方、車両が停車中である場合には、車両が手動運転中であるか、或いは自動運転中であるかに関わらず、
図6Bに示すように、後部座席3の高さを相対的に低くしてもよい。
【0036】
本発明の実施形態に係る自動車用運転操作装置10は、
図7に示すように、コントローラ11、シート位置センサ19a,19b,19c、周囲状況センサ7a,7b、運転操作部5、センサ12a,12b、シート調節スイッチ18a,18b,18c、ディスプレイ8、シートアクチュエータ13a,13b,13c及びステアリングアクチュエータ14を備える。
【0037】
運転操作部5は、自動運転と手動運転とを切り替える運転切替スイッチ5x、操舵操作を受け付ける操舵操作ユニット5y、及び加減速操作を受け付ける加減速操作ユニット5zを備える。操舵操作ユニット5y及び加減速操作ユニット5zは、
図3及び
図4に示した運転操作部5の把持部5c,5dで構成されている。センサ12aは、操舵操作ユニット5yの操作量を検出して、検出した操作量をコントローラ11に出力する。センサ12bは、加減速操作ユニット5zの操作量を検出して、検出した操作量をコントローラ11に出力する。
【0038】
コントローラ11は、電子制御ユニット(ECU)等の制御装置であり、プロセッサ及び記憶装置を有する。プロセッサは、例えば中央演算処理装置(CPU)、主記憶装置、入出力装置、入出力インターフェイス、データバス等を含むコンピュータやコンピュータに等価な半導体集積回路等で構成することができる。プロセッサを半導体集積回路で構成する場合は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)を含む半導体集積回路を利用してもよい。或いは、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路や論理ブロック等でも構わない。記憶装置は、半導体記憶装置、磁気記憶装置又は光学記憶装置等で構成でき、レジスタ、キャッシュメモリ等を含んだ構成でもよい。
【0039】
コントローラ11は、運転操作部5の運転切替スイッチ5xが受け付ける自動運転と手動運転とを切り替える操作に基づいて、自動運転と手動運転とを切り替える。コントローラ11は、自動運転時には、自動運転を実行するための制御信号を各種アクチュエータ等に対して出力する。コントローラ11は、手動運転時には、センサ12a,12bにより検出された操舵操作ユニット5y及び加減速操作ユニット5zの操作量等に基づいて、車両を制御するための制御信号を各種アクチュエータ等に対して出力する。
【0040】
シート位置センサ19aは、前部座席2aに取り付けられている。シート位置センサ19aは、前部座席2aの位置及び向き等のデータを検出し、検出したデータをコントローラ11に出力する。シート位置センサ19bは、前部座席2bに取り付けられている。シート位置センサ19bは、前部座席2bの位置及び向き等のデータを検出し、検出したデータをコントローラ11に出力する。シート位置センサ19cは、後部座席3に取り付けられている。シート位置センサ19cは、後部座席3の位置及び高さ等のデータを検出し、検出したデータをコントローラ11に出力する。
【0041】
シート調節スイッチ18aは、前部座席2aに取り付けられている。シート調節スイッチ18aは、前部座席2aの位置及び向き等を調節するための操作情報を受け付けて、操作情報をコントローラ11に出力する。シート調節スイッチ18bは、前部座席2bに取り付けられている。シート調節スイッチ18bは、前部座席2bの位置及び向き等を調節するための操作情報を受け付けて、操作情報をコントローラ11に出力する。シート調節スイッチ18cは、後部座席3に取り付けられている。シート調節スイッチ18cは、後部座席3の位置及び高さ等を調節するための操作情報を受け付けて、操作情報をコントローラ11に出力する。
【0042】
シートアクチュエータ13aは、コントローラ11からの制御信号に基づいて、前部座席2aの位置及び向き等を調整する。シートアクチュエータ13bは、コントローラ11からの制御信号に基づいて、前部座席2bの位置及び向き等を調整する。シートアクチュエータ13cは、コントローラ11からの制御信号に基づいて、後部座席3の位置及び高さ等を調整するとともに、運転操作部5の位置及び高さ等を調整する。ステアリングアクチュエータ14は、コントローラ11からの制御信号に基づいて、ステアリング15を制御する。駆動装置16は、コントローラ11からの制御信号に基づいて車両の駆動動作を実行する。制動装置17は、コントローラ11からの制御信号に基づいて車両の制動動作を実行する。
【0043】
次に、
図8のフローチャートを参照しながら、本発明の実施形態に係る後部座席3の昇降動作を含む自動車用運転操作方法の一例を説明する。
【0044】
まず、ステップS11において、シート調節スイッチ18cが、後部座席3の乗員100による後部座席3の高さを下げるための操作を受け付ける。ステップS12において、コントローラ11が、シート調節スイッチ18cを介して後部座席3の高さを下げるための操作を受け付けたときに、自動運転中か否(手動運転中)かを判定する。自動運転中と判定された場合、ステップS13に移行し、コントローラ11が、後部座席3の高さを下げるための制御信号をシートアクチュエータ13cに出力する。シートアクチュエータ13cは、後部座席3の高さ及び運転操作部5の高さを下げる。
【0045】
一方、ステップS12において自動運転中ではない(換言すれば、手動運転である)と判定された場合、ステップS14に移行し、コントローラ11が、後部座席3の高さを下げるための操作を拒否する。即ち、手動運転中は、後部座席3の高さは相対的に高い位置に維持される。
【0046】
ステップS13において後部座席3の高さを下げた後、ステップS15において、コントローラ11が、運転切替スイッチ5xを介して手動運転に切り替える操作又はコントローラ11(自動運転システム)側からの手動運転に切り替える要求の有無を判定する。手動運転に切り替える操作又は要求が有ると判定された場合、ステップS16に移行し、コントローラ11が、後部座席3を上げるための制御信号をシートアクチュエータ13cに出力する。シートアクチュエータ13cは、後部座席3の高さ及び運転操作部5の高さを上げる。なお、ミラー4a,4bが有る場合には、後部座席3の移動に応じてミラー4a,4bの角度や位置等を変化させる。後部座席3の高さが所定の高さまで上がった時点で、コントローラ11が、後部座席3の乗員100の操作に基づく手動運転の実行を開始する。
【0047】
次に、
図9のフローチャートを参照しながら、本発明の実施形態に係る前部座席2a,2bの回転動作を含む自動車用運転操作方法の一例を説明する。
【0048】
まず、ステップS21において、シート調節スイッチ18a,18bが、前部座席2a,2bの乗員101,102による前部座席2a,2bを回転可能とするための回転ロックの解除操作を受け付ける。
【0049】
ステップS22において、コントローラ11が、車両が停車中か否(走行中)かを判定する。車両が停車中と判定された場合、ステップS23に移行し、コントローラ11が、前部座席2a,2bの回転ロックを解除するための制御信号を前部座席2a,2bのシートアクチュエータ13a,13bに出力する。シートアクチュエータ13a,13bは、前部座席2a,2bの回転ロックを解除して回転可能とする。
【0050】
なお、前部座席2a,2bの回転は、シート調節スイッチ18a,18bの操作に応じてシートアクチュエータ13a,13bが自動で行ってもよく、或いは乗員101,102が手動で行ってもよい。シートアクチュエータ13a,13bにより前部座席2a,2bを回転させる場合には、シート位置センサ19a,19b,19cの検出結果等に基づいて、前部座席2a,2bの乗員101,102の手足のぶつかりや挟み込みを回避するように前部座席2a,2bを回転させる。
【0051】
一方、ステップS22において停車中ではない(換言すれば、走行中である)と判定された場合、ステップS24に移行し、コントローラ11は、前部座席2a,2bの回転ロックの解除操作を拒否するとともに、走行中であり回転できない旨を表示や音声で乗員に対して提示する。
【0052】
ステップS23で前部座席2a,2bの回転ロックを解除した後、ステップS25において、コントローラ11が、車両が走行を開始するか否かを判定する。車両が走行を開始すると判定された場合、ステップS26に移行し、コントローラ11は、回転できないように強制ロック又は衝突安全が保証される向きに強制復帰するための制御信号をシートアクチュエータ13a,13bに出力する。シートアクチュエータ13a,13bは、コントローラ11からの制御信号に基づいて前部座席2a,2bを回転できないように強制ロックするか、或いは衝突安全が保証される向きに強制復帰させる。なお、強制復帰の際には、シート位置センサ19a,19b,19cの検出結果等に基づいて、前部座席2a,2bの乗員101,102の手足のぶつかりや挟み込みを回避するように前部座席2a,2bを回転させる。
【0053】
本発明の実施形態に係る車両用操作プログラムは、
図8に示した後部座席3の昇降動作及び
図9に示した前部座席2a,2bの回転動作の手順を、コントローラ11を構成するコンピュータに実行させる。本発明の実施の形態に係る画像表示プログラムは、例えばコントローラ11の記憶装置に格納可能である。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、車両前部の乗車可能な空間2の後方に設けられた後部座席3を運転席とし、運転席に着座した運転者である乗員100が車両の進行方向を向いて操作可能に設けられ、車両の操舵操作及び加減速操作を含む運転操作を受け付ける運転操作部5を備える。これにより、運転者である乗員100は車両の進行方向(前方)を向いたまま、後部座席3よりも前方の乗員101,102と会話することができる。このとき、乗員101,102が振り向けば、運転者である乗員100は乗員101,102と向き合って会話することができる。更に、運転者である乗員100は車両の進行方向(前方)を向いたまま、後部座席3よりも前方の乗員101,102である例えば高齢者や子供等の様子を容易に観察することができる。更に、後部座席3よりも前方の乗員101,102は、運転者が直接視界に入らず、車室外の状況を容易に視認することができる。
【0055】
更に、運転操作部5の操作量を検出するセンサ12aと、センサ12aで検出した操作量に応じて、車両の駆動輪を動作させるステアリングアクチュエータ14とを備えることにより、後部座席3に運転操作部5を設けたとしても、運転操作部5と駆動輪とを機械的に接続せず、電気的に接続できるようになる。したがって、車室空間を広く確保できるようになり、乗員の居住空間を有効活用できるようになる。
【0056】
更に、後部座席3の乗員100が視認可能なように後部座席3の位置に応じて設けられ、車両後方の状況を表示するディスプレイ8を備えることにより、後部座席3に運転操作部5を設けたとしても、後部座席3の乗員100は、車両後方を確認することができる。また、後部座席3の後方が遮蔽部6により遮蔽されており、後部座席3の後方を直接視認できない場合等であっても、ディスプレイ8が車両後方の状況を表示することで、後部座席3の乗員100は、車両後方を容易に確認することができる。更に、ディスプレイ8に車両前下方の状況を表示することにより、後部座席3の乗員100は車両前下方の状況を容易に確認することができる。
【0057】
更に、後部座席3の乗員100が視認可能なように後部座席3の位置に応じて設けられ、車両後方の状況を確認するミラー4a,4bを備えることにより、後部座席3に運転操作部5を設けたとしても、後部座席3の乗員100は車両後方を確認できる。更に、従来の前部座席に運転操作部が有る場合と比較して、ミラー4a,4bの位置が車両後方に位置するため、ミラー4a,4bに写る車両後方の視野が広くなる。
【0058】
更に、車両前部の乗車可能な空間2に前部座席2a,2bが配置されることにより、前部座席2a,2bの乗員101,102は、運転席である後部座席3及び運転者である乗員100を介さずに、つまりは乗員100に視界を遮られることを抑制することができるため、車両の進行方向の車室外の状況を容易に視認することができる。
【0059】
更に、車両前後方向に配置された複数の座席のうち、最後部の座席を運転席として、最後部の座席に着座した乗員が操作可能な位置に運転操作部5が設けられている。例えば、車両前後方向に座席が3列設けられた場合には、運転操作部5は前から3列席目の座席を運転席として、3列席目の座席に着座した乗員が操作可能な位置に設けられる。これにより、最後部の座席の運転者は、最後部の座席よりも前方の全ての座席を見渡せるようになり、乗員の状況を把握し易くなる。
【0060】
更に、後部座席3を車幅方向の中央に設けることにより、前部座席2a,2bの間を抜けて後部座席3の乗員100の視界が開ける。更に、後部座席3の乗員100が、前部座席2a,2bの乗員101,102と会話し易く、運転中に気配りし易くなる。なお、後部座席3を車幅方向の中央に設ける場合には、後部座席3の周囲を収納や車両装置設置空間として活用することができる。
【0061】
更に、後部座席3の高さを、前部座席2a,2b等の他の座席の高さよりも高く設定することにより、後部座席3の乗員100は、他の座席に視界を阻害されづらく、周囲状況を把握し易くなる。更に、後部座席3の周囲や下部に、バッテリ等の収納場所を確保することができる。また、後部座席3の乗員100が乗降するためのドア1g,1h近傍にステップ1e,1fを設けることにより、乗員100は乗降し易くなる。なお、例えば車両の天井高さを小型自動車の車高制限の2mに近づけることにより、後部座席3の乗員100の頭上の圧迫感を低減することができる。
【0062】
また、車両が走行中の後部座席3の高さを、車両が停車中の後部座席3の高さよりも高く設定することにより、車両が自動運転中か、手動運転中かに関わらず、車両が走行中に、後部座席3の乗員100が車両前方を見渡し易くなる。また、停車中に後部座席3の高さを下げて、前部座席2a,2bの高さと同等とすることにより、前部座席2a,2bの乗員101,102と会話し易くなる。
【0063】
更に、停車中のみに前部座席2a,2bを車両後方へ向けて回転可能とすることにより、前部座席2a,2bの乗員101,102と後部座席3の乗員100とが向き合って会話を楽しむことができる。その際、後部座席3の運転者である乗員100は、進行方向(前方)に背を向けることはなく、前部座席2a,2bの乗員101,102と会話しながら、進行方向の周囲状況を確認することができる。
【0064】
更に、自動運転と手動運転とを切り替え可能な車両では、自動運転中の乗車時間を有効活用するために、前部座席を車両後方を向くように回転させて、前部座席の乗員と後部座席の乗員とが向かい合って会話を楽しむことが考えられる。前部座席に運転操作部を設けて、前部座席を車両後方を向くように回転させた場合には、運転者である前部座席の乗員は進行方向(前方)に対して背を向ける格好となり、進行方向の周囲状況を把握し難しくなる。これに対して、本発明の実施形態によれば、自動運転と手動運転とを切り替え可能な車両において、後部座席3の乗員100が操作可能な位置に運転操作部5が設けられている。これにより、自動運転中に前部座席2a,2bの乗員101,102が後方を向けば、運転者である乗員100は進行方向の周囲状況を確認しながら、乗員101,102と向かい合って会話することができる。そして、手動運転中には、後部座席3の乗員100は進行方向を向きながら、前部座席2a,2bの乗員101,102の様子を含む車室内の様子も容易に確認することができる。
【0065】
更に、手動運転中の後部座席3の高さを、自動運転中の後部座席3の高さよりも高く設定することにより、手動運転中の運転者である後部座席3の乗員100は、前部座席2a,2b及び乗員101,102越しでも車両前方を見渡し易くなる。
【0066】
更に、自動運転と手動運転とを切り替える運転切替スイッチ5xを備え、後部座席3の位置及び高さの変化に追従するように運転切替スイッチ5xの位置及び高さを変化させる。これにより、後部座席3の位置及び高さが移動したとしても、後部座席3の位置及び高さの変化に追従するように運転切替スイッチ5xの位置及び高さを移動させれば、後部座席3の乗員100による運転切替スイッチ5xの操作性を確保できる。
【0067】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0068】
本発明の実施形態においては、車両前方に前部座席2a,2bを有する場合を例示したが、前部座席2a,2bが無い構造であってもよい。即ち、
図10に示すように、車体前部(後部座席3に対して前方)に乗車可能な空間2を設け、乗員101である身障者や高齢者が乗った車椅子103をベルト等で固定して搭載してもよい。或いは、乳幼児が乗ったベビーバギーをベルト等で固定して搭載してもよい。或いは、ペットである大型犬等の人間以外の動物が同伴して乗車してもよい。車体前部(後部座席3に対して前方)に乗車可能な空間2を設けることにより、後部座席3の乗員100は、車椅子に乗った身障者やお年寄り、ベビーバギーに乗った乳幼児、或いはペットの様子を容易に観察することができるとともに、身障者やお年寄り、乳幼児、ペットが存在する方向を向いて会話することができる。
【0069】
また、本発明の実施形態においては、運転操作部5が脚部5a,5bで車体に固定された場合を例示したが、運転操作部5が車体に固定されずに、後部座席3の運転者が操作可能な範囲で移動可能に設けられていてもよい。運転操作部5は、コントローラ11との送受信を有線で行ってもよく、無線で行ってもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態においては、運転操作部5の把持部5c,5dで操舵操作及び加減速操作を実行する場合を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、運転操作部5は、後部座席3の乗員100により時計回り(右回り)及び反時計回り(左回り)に回転操作可能であり、運転操作部5を回転させることにより操舵操作を実行してもよい。例えば、運転操作部5を時計回り(右回り)に回転させることにより車両を右旋回させ、運転操作部5を反時計回り(左回り)に回転させることにより車両を左旋回させてもよい。また、運転操作部5を脚部5a,5bとともに車両前後方向に倒すことにより加減速操作を実行してもよい。例えば、運転操作部5を車両の進行方向に倒すことにより加速させることができる。運転操作部5を進行方向とは逆方向に倒すことにより車両を減速及び停車させてもよい。また、脚部5a,5bは固定されており、運転操作部5のみを基準面(例えば水平面)に対して傾けることにより、操作操作及び加減速操作を実行してもよい。
【0071】
なお、運転操作部5の形状は特に限定されず、例えば、特に運転操作部5を回転させて操舵する場合等には、運転操作部5が環状のステアリングホイールの形状であってもよい。或いは、ステアリングホイールと机の形状を組み合わせて、例えば机の左右端に仮想ステアリングの一部円弧を付けた形状であってもよい。また、運転操作部5が、後部座席3の乗員100の足元の位置に設けられたアクセルペダルやブレーキペダルを有していてもよい。更には、運転操作部5がタッチパネル方式等の仮想的な操作部であってもよい。このように、運転操作部5としては、任意の操作系が使用可能である。
【0072】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。