(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記加速度に基づく補正に加えて、演算により得られた前記荷重値を、前記バケットの荷重値に対する前記バケットの荷重値の誤差の大きさを示す関係データに基づいて補正し、
前記関係データは、前記バケットの荷重値が大きいほど、前記バケットの荷重値の誤差が小さくなる関係を有している、請求項1に記載の作業機械。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本発明の一実施の形態における作業機械の構成について説明する。以下、本発明の思想を適用可能な作業機械の一例として油圧ショベルについて
図1を用いて説明する。なお本発明は、油圧ショベル以外に、ブーム、アームおよびバケットを有する作業機械にも適用可能である。
【0022】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室2a内の運転席2bに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0023】
図1は、本発明の一実施の形態における作業機械の一例としての油圧ショベルの構成を概略的に示す側面図である。
図1に示されるように、本実施の形態の油圧ショベル10は、走行体1と、旋回体2と、作業機3とを主に有している。走行体1と旋回体2とにより作業機械本体が構成されている。
【0024】
走行体1は左右一対の履帯装置1aを有している。この左右一対の履帯装置1aの各々は履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより油圧ショベル10が自走する。
【0025】
旋回体2は走行体1に対して旋回自在に設置されている。この旋回体2は、運転室2aと、運転席2bと、エンジンルーム2cと、カウンタウェイト2dとを主に有している。運転室2aは、旋回体2のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室2aの内部空間には、オペレータが着座するための運転席2bが配置されている。
【0026】
エンジンルーム2cおよびカウンタウェイト2dの各々は、旋回体2の後方側(車両後側)に配置されている。エンジンルーム2cは、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)を収納している。エンジンルーム2cの上方はエンジンフードにより覆われている。カウンタウェイト2dは、エンジンルーム2cの後方に配置されている。
【0027】
作業機3は、旋回体2の前方側であって運転室2aのたとえば右側にて軸支されている。作業機3は、たとえばブーム3a、アーム3b、バケット3c、油圧シリンダ4a、4b、4cなどを有している。ブーム3aの基端部は、ブームフートピン5aにより旋回体2に回転可能に連結されている。またアーム3bの基端部は、ブーム先端ピン5bによりブーム3aの先端部に回転可能に連結されている。バケット3cは、ピン5cによりアーム3bの先端部に回転可能に連結されている。
【0028】
ブーム3aは、ブームシリンダ4aにより駆動可能である。この駆動により、ブーム3aは、ブームフートピン5aを中心に旋回体2に対して上下方向に回動可能である。アーム3bは、アームシリンダ4bにより駆動可能である。この駆動により、アーム3bは、ブーム先端ピン5bを中心にブーム3aに対して上下方向に回動可能である。バケット3cは、バケットシリンダ4cにより駆動可能である。この駆動によりバケット3cは、ピン5cを中心にアーム3bに対して上下方向に回動可能である。このように作業機3は駆動可能である。
【0029】
ブームシリンダ4aのヘッド側には、圧力センサ6aが取り付けられている。圧力センサ6aは、ブームシリンダ4aのシリンダヘッド側油室40A(
図2)内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ4aのボトム側には、圧力センサ6bが取り付けられている。圧力センサ6bは、ブームシリンダ4aのシリンダボトム側油室40B(
図2)内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。
【0030】
ブームシリンダ4a、アームシリンダ4bおよびバケットシリンダ4cのそれぞれには、ストロークセンサ(検知部)7a、7b、7cが取り付けられている。
【0031】
次に、上記ストロークセンサ付きのシリンダについて
図2および
図3を用いて、ブームシリンダ4aを例に挙げて説明する。
【0032】
図2は、作業機に用いられるストロークセンサ付きシリンダの構成を概略的に示す図である。
図3(A)は、
図2のシリンダに用いられるストロークセンサの構成を概略的に示す図である。
図3(B)は、ストロークセンサのセンサ出力である電気信号が周期的に変化する様子を示す図である。
【0033】
図2に示されるように、ブームシリンダ4aは、シリンダチューブ4aaと、シリンダロッド4abと、ピストン4acとを主に有している。ピストン4acは、シリンダロッド4abの一方端部に取り付けられている。ピストン4acは、シリンダチューブ4aa内に挿入されている。シリンダロッド4abはシリンダチューブ4aaに対して相対的に移動可能である。これによりピストン4acは、シリンダチューブ4aaの内壁に対して摺動自在である。
【0034】
シリンダヘッド4adとピストン4acとシリンダチューブ4aaの内壁とによって画成された室が、シリンダヘッド側油室40Aを構成している。ピストン4acに対してシリンダヘッド側油室40Aとは反対側の油室がシリンダボトム側油室40Bを構成している。
【0035】
シリンダヘッド側油室40Aに作動油が供給され、シリンダボトム側油室40Bから作動油が排出されることによって、シリンダロッド4abが縮退する。また、シリンダヘッド側油室40Aから作動油が排出され、シリンダボトム側油室40Bに作動油が供給されることによって、シリンダロッド4abが伸張する。これにより、シリンダロッド4abは図中左右方向に直動する。
【0036】
ストロークセンサ7aは、たとえばシリンダチューブ4aaの外部であって、シリンダヘッド4adに隣接した位置に配置されている。ストロークセンサ7aは、ケース14の内部に配置されている。
【0037】
ストロークセンサ7aは、回転ローラ11と、回転中心軸12と、回転センサ部13とを有している。回転ローラ11は、回転ローラ11の外周面がシリンダロッド4abの表面に接触するように配置されている。回転ローラ11は、シリンダロッド4abの直動に応じて回転中心軸12を中心として回転自在である。回転センサ部13は、回転ローラ11の回転量(回転角度)を検出可能に構成されている。
【0038】
図3(A)に示されるように、回転センサ部13は、磁石13aと、ホールIC(Integrated Circuit)13bとを有している。磁石13aは、回転ローラ11と一体に回転するように回転ローラ11に取り付けられている。
【0039】
磁石13aは、回転ローラ11の回転角度に応じて、N極、S極が交互に入れ替わるように構成されている。磁石13aは、回転ローラ11の一回転を一周期として、ホールIC13bで検出される磁力(磁束密度)が周期的に変動するように構成されている。
【0040】
ホールIC13bは、磁石13aによって生成される磁力(磁束密度)を電気信号として検出する磁力センサである。ホールIC13bは、回転中心軸12の軸方向に沿って、磁石13aから離れた位置に設けられている。
【0041】
図3(B)に示されるように、回転ローラ11が回転し、それに応じて磁石13aが回転すると、回転角度に応じて、ホールIC13bを透過する磁力(磁束密度)が周期的に変化し、センサ出力である電気信号(電圧)が周期的に変化する。このホールIC13bから出力される電圧の大きさから回転ローラ11の回転角度を計測することができる。
【0042】
また、ホールIC13bから出力される電気信号(電圧)の1周期が繰り返される数をカウントすることで、回転ローラ11の回転数を計測することができる。そして、回転ローラ11の回転角度と、回転ローラ11の回転数とに基づいて、ブームシリンダ4aのシリンダロッド4abの変位量(ストローク長)が計測される。
【0043】
アームシリンダ4bおよびバケットシリンダ4cの各々は、ブームシリンダ4aと同様のストロークセンサ付きシリンダの構成を有している。
【0044】
図1に示されるように、ブームシリンダ4aにおける上記シリンダロッド4abの変位量からブーム角A1を算出することができる。またアームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量からアーム角A2を算出することができる。またバケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量からバケット角A3を算出することができる。さらにブームシリンダ4aにおける変位量を時間で2回微分することによりブームシリンダ4aの伸縮の加速度αを算出することができる。
【0045】
ストロークセンサ7a、7b、7cと、圧力センサ6a、6bとの各々は、コントローラ8の演算装置8aに電気的に接続されている。これにより、上記のブームシリンダ4aのヘッド圧およびボトム圧と、ブーム角A1と、アーム角A2と、バケット角A3と、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度αとが、コントローラ8内の演算装置8aに送信可能である。
【0046】
なお、ブーム角A1と、アーム角A2と、バケット角A3と、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度αとは、ストロークセンサ7a、7b、7cから演算装置8aに送られた電気信号(ホールIC13bで検出された電気信号)により演算装置8aにて算出されてもよい。
【0047】
コントローラ8は、演算装置8aだけでなく、記憶部8bを有していてもよい。記憶部8bには、後述するバケットの真の荷重値に対する前記バケットの荷重値の誤差の大きさを示す関係データ(荷重補正テーブル)、ブーム3a、アーム3b、バケット3cの重量、形状などを記憶していてもよい。またこの関係データなどは、記憶部8bに当初から記憶されていてもよく、またオペレータの操作により作業機械10の外部から記憶部8bに取り込まれてもよい。
【0048】
このコントローラ8(演算装置8a)は、ブームシリンダ4aの負荷に基づいてバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能を有している。具体的には、コントローラ8(演算装置8a)は、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cのモーメントの釣り合いからバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能を有している。またコントローラ8(演算装置8a)は、演算により得られた上記現在の荷重値を、ストロークセンサ7aにより検知されたブームシリンダ4aの伸縮の加速度に基づいて補正する機能を有している。
【0049】
なおブームシリンダ4aの負荷とは、ブームシリンダ4aのヘッド圧およびボトム圧から得られる、いわゆる軸力である。また現在の荷重値の補正に用いられるブームシリンダ4aの伸縮の加速度は、作業機3の揺動による慣性によって生じるブームシリンダ4aの伸縮の加速度である。この揺動は、ブーム3aを作動させたときの通常の動作に基づくブームシリンダ4aの伸縮そのものではなく、作業機3の作動に伴って副次的に生じる作業機3の揺れのことである。
【0050】
またコントローラ8(演算装置8a)は、上記関係データに基づいて、演算により得られた荷重値を補正する機能を有している。具体的には、コントローラ8(演算装置8a)は、演算により得られた荷重値を、バケットの真の荷重値WRに対するバケットの荷重値の誤差の大きさを示す関係データに基づいて補正する機能を有している。
【0051】
次に、本実施の形態における作業機械において、バケット3c内の現在の荷重値Wを演算する方法について
図4を用いて説明する。
【0052】
図4は、モーメントの釣り合いを説明するための作業機の模式図である。
図4に示されるように、本実施の形態においては、ブームフートピン5a回りの各モーメントの釣り合いからバケット3c内の現在の荷重値Wが検出される。ここで、ブームフートピン5a回りの各モーメントの釣り合いは以下の式(1)により表される。
【0053】
Mboomcyl=Mboom+Marm+Mbucket+W×L ・・・ 式(1)
式(1)において、Mboomcylは、ブームシリンダ4aのブームフートピン5a回りのモーメントである。Mboomは、ブーム3aのブームフートピン5a回りのモーメントである。Marmは、アーム3bのブームフートピン5a回りのモーメントである。Mbucketは、バケット3cのブームフートピン5a回りのモーメントである。Wは、バケット3c内の現在の荷重値である。Lは、ブームフートピン5aからピン5c(バケット3cがアーム3bに支持される部分)までの水平方向の距離である。
【0054】
Mboomcylは、ブームシリンダ4aの負荷(ヘッド圧およびボトム圧)から算出される。
【0055】
Mboomは、ブーム3aの重心C1およびブームフートピン5aの間の距離r1と、ブーム3aの重量M1との積(r1×M1)により算出される。ブーム3aの重心C1の位置は、ブーム角A1などから算出される。ブーム3aの重量M1などは、記憶部8bに記憶されている。
【0056】
Marmは、アーム3bの重心C2およびブームフートピン5aの間の距離r2と、アーム3bの重量M2との積(r2×M2)により算出される。アーム3bの重心C2の位置は、アーム角A2などから算出される。アーム3bの重量M2などは、記憶部8bに記憶されている。
【0057】
Mbucketは、バケット3cの重心C3およびブームフートピン5aの間の距離r3と、バケット3cの重量M3との積(r3×M3)により算出される。バケットの重心C3の位置は、バケット角A3などから算出される。バケット3cの重量M3などは、記憶部8bに記憶されている。
【0058】
図1および
図4に示されるように、バケット3c内の現在の荷重値Wの算出において、ストロークセンサ7a、7b、7cの各々により各シリンダ4a、4b、4cの変位量が検出される。各シリンダ4a、4b、4cの変位量に基づいてコントローラ8などによりブーム角A1、アーム角A2およびバケット角A3が算出される。これらのブーム角A1、アーム角A2およびバケット角A3に基づいてコントローラ8などにより重心C1、C2、C3の各位置が算出される。
【0059】
重心C1とブーム3aの重量M1との積から、ブーム3aのブームフートピン5a回りのモーメントMboomが算出される。また重心C2の位置とアーム3bの重量M2との積から、アーム3bのブームフートピン5a回りのモーメントMarmが算出される。また重心C3の位置とバケット3cの重量M3との積から、バケット3cのブームフートピン5a回りのモーメントMbucketが算出される。
【0060】
一方、圧力センサ6aによりブームシリンダ4aのヘッド圧が検出される。圧力センサ6bによりブームシリンダ4aのボトム圧が検出される。このブームシリンダ4aのヘッド圧とボトム圧とに基づいてブームシリンダ4aのブームフートピン5a回りのモーメントMboomcylがコントローラ8などにより算出される。
【0061】
また上記において算出されたブーム角A1、アーム角A2、ブーム3aの長さ、およびアーム3bの長さに基づいて、ブームフートピン5aからピン5cまでの水平方向の距離Lがコントローラ8などにより算出される。
【0062】
上記により算出された各モーメントMboomcyl、Mboom、Marm、Mbucketおよび距離Lを上式(1)に代入することにより、バケット3c内の現在の荷重値Wがコントローラ8などにより算出される。
【0063】
上記のように荷重値Wは各シリンダ4a、4b、4cの変位量、ヘッド圧、ボトム圧などを用いて算出される。このため、作業機3の動作時には作業機3の慣性力により荷重値Wの測定値に誤差が生じる。具体的には、上記により測定された荷重値Wは、真の荷重値WRだけでなく、作業機3の慣性による誤差E1をも含んでいる。
【0064】
上記に鑑みて本発明者が鋭意検討した結果、本発明者は、上記の作業機3の慣性による誤差E1をブームシリンダ4aの伸縮の加速度αの変動により検出できることを見出した。そこで次に、作業機3の慣性による誤差E1をブームシリンダ4aの伸縮の加速度αの変動により検出できることについて
図5(A)〜
図5(C)を用いて説明する。
【0065】
本発明者は、ブーム動作時におけるバケット3c内の荷重値(計算荷重値)を、上記モーメントの釣り合いから求めた。
図5(A)は、その結果を示しており、バケット3c内の荷重値の時間変化を示している。また本発明者は、そのブーム動作時におけるブームシリンダの伸縮の加速度も調べた。
図5(B)は、その結果を示しており、その加速度の時間変化を示している。また
図5(C)は、上記のブーム動作時のブームシリンダのPPC(Pressure Proportional Control)圧の時間変化を示している。
【0066】
図5(C)に示されるように、ブームシリンダ4aの動作開始時には、ブームシリンダのPPC圧が立ち上がる。このブームシリンダ4aの動作開始時に、
図5(A)に示されるように、計算荷重には振幅が生じる。この振幅は、ブームシリンダ4aのPPC圧を維持している間には、時間の経過とともに減衰する。
【0067】
この後、
図5(C)に示されるように、ブームシリンダ4aの動作停止時には、ブームシリンダのPPC圧が立ち下がる。このブームシリンダ4aの動作停止時にも、
図5(A)に示されるように、計算荷重値の曲線には振幅が生じる。この振幅は、ブームシリンダ4aのPPC圧が一定に維持されている間には、時間の経過とともに減衰する。
【0068】
バケット3c内の真の荷重値WRは、時間の経過により変化しない。このため、
図5(A)の荷重値の曲線に現れる振幅による変動は誤差である。この誤差である振幅は、ブーム3aの動作の開始時および停止時に生じている。このため、計算荷重値に生じる誤差(振幅)は、ブーム3aなどの作業機3の動作時の慣性に基づく誤差であると考えられる。
【0069】
一方、
図5(B)に示されるように、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度にも、
図5(A)に示される計算荷重値と同様のタイミングで振幅が生じている。この結果から、本発明者は、ブームシリンダ4aの加速度の曲線に生じた振幅を検出することにより、作業機3の慣性による誤差を検出できることを見出した。
【0070】
次に、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度の曲線に生じた振幅に基づいて計算荷重値を補正することにより、作業機3の慣性による誤差を計算荷重値から除去する方法について、
図5(D)および
図6(A)、(B)を用いて説明する。
【0071】
図5(D)は、計算荷重の振幅と加速度の振幅とから補正後の荷重値を算出する式を概念的に示す図である。
図6(A)は、バケット内の計算荷重値の時間変化を示す図である。
図6(B)は、ブームシリンダの伸縮の加速度の時間変化を示す図である。
【0072】
作業機3の慣性による誤差を計算荷重値から除去するために、回帰分析(最小二乗法)が用いられる。この回帰分析においては、はじめに回帰式が設定される。この回帰式は、たとえば
図5(D)に示された式である。
【0073】
図5(D)に示されるように、この回帰式は、計算荷重(たとえば
図5(A)の振幅の部分RA)が、加速度の振幅(たとえば
図5(B)の振幅の部分RB)と係数cとの積に補正後の荷重値を足した値にほぼ等しくなるように設定される。具体的には、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度における振幅は、所定の係数cを掛けられることにより、計算荷重の振幅に近似される。この計算荷重の振幅に近似された加速度の振幅が、計算荷重から減ぜられることにより、作業機3の慣性による誤差がキャンセルされた補正後の荷重値が算出される。
【0074】
上記回帰式の係数cは、計算荷重の測定値と、ブームシリンダの伸縮の加速度の測定値とに基づいて求められる。
【0075】
具体的には、
図6(A)および
図6(B)に示されるように、ある時刻t(n)の直前1.0秒間に測定された5点の加速度(たとえばα(n−4)、α(n−3)、α(n−2)、α(n−1)、α(n))から加速度の波形が得られる。またある時刻t(n)の直前1.0秒間に測定された5点の荷重(w(n−4)、w(n−3)、w(n−2)、w(n−1)、w(n))から荷重の波形が得られる。
【0076】
このようにして得られた加速度の波形と荷重の波形とが互いに比較されることにより、係数cが求められる。この際、上記加速度の波形にどれだけの係数cを掛ければ上記荷重の波形に最も近似できるかが演算され、その演算の結果から上記係数としてのcが得られる。
【0077】
上記係数cが得られたら、その係数cと、ある時刻t(n)におけるブームシリンダの伸縮の加速度と計算荷重とが
図5(D)に示される式に代入される。これによって、ある時刻t(n)における補正後の荷重値が求められる。
【0078】
上記の回帰分析がたとえば10m秒ごとに実施される。これにより10m秒ごとに補正後の荷重値が得られる。このようにして得られた補正後の荷重値が、その時間ごとにプロットされる。これにより、たとえば
図5(A)に一点鎖線で示されるような補正後の荷重値の曲線が得られる。この補正後の荷重値においては、作業機3の慣性による誤差(振幅)がキャンセルされている。
【0079】
上記により、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度の曲線に生じた振幅に基づいて計算荷重値を補正することにより、作業機3の慣性による誤差が計算荷重値から除去された補正後の荷重値が得られる。
【0080】
ところで、
図5(A)に一点鎖線で示されたような補正後の荷重値の曲線においては、荷重値が依然として一定値(直線)となっておらず、時間の経過により変動している。これは、計算荷重Wを算出するための
図4に示された計算モデルが、
図1に示された実際の作業機3と異なる想定を有することに基づいていると考えられる。
【0081】
具体的には、
図4に示される計算モデルは、荷重Wがアーム3bの先端(つまりピン5c)の位置にあると想定している。一方、
図1に示す実際の作業機械10においては、バケット3cの内部に荷重Wがある。このため、荷重Wの位置において、
図4の計算モデルの想定と
図1の実際の作業機3とは互いに異なる。
【0082】
また
図4に示される計算モデルは、バケット3cがアーム3bに対して最大巻き込み位置で固定された状態を想定している。一方、
図1に示す実際の作業機械10においては、ブーム3aおよびアーム3bの動作にしたがってバケット3cもアーム3bに対して回転する。このため、アーム3bに対するバケット3cの回転位置においても、
図4の計算モデルの想定と
図1の実際の作業機3とは互いに異なる。
【0083】
また
図4に示される計算モデルにおいてはブームシリンダ4aの摺動抵抗(シリンダ動作時の摩擦)が想定されていない。一方、
図1に示す実際の作業機械10においてはブームシリンダ4aの摺動抵抗が発生する。このためブームシリンダ4aの摺動抵抗の有無においても、
図4の計算モデルの想定と
図1の実際の作業機3とは互いに異なる。
【0084】
上記のように
図4の計算モデルが
図1に示された実際の作業機3と異なる想定であることに基づく誤差E2が、補正後の荷重値に含まれていると考えられる。そこで次に、計算モデルとの相違に基づく誤差E2を補正後の荷重値から除去する補正について
図7を用いて説明する。
【0085】
図7は、バケット3c内の荷重値とバケット3c内の荷重値の誤差との関係を示す図である。
図7に示されるように、バケット3c内の荷重値と荷重値の誤差との関係を示す関係データ1(荷重補正テーブル)は、たとえば上記誤差E2を補正後の荷重値から取り除く補正に用いられる。
【0086】
関係データ1は、荷重値が大きくなるほど、荷重値の誤差が小さくなる関係を有している。この関係データ1では、荷重値が大きくなるほど、計算荷重値(たとえば補正後の荷重値)に対する補正量(絶対値)が大きくなる。ここで関係データにおける荷重値とは、上記作業機3の慣性による誤差が補正された後においては、補正後の荷重値を意味する。
【0087】
また関係データ1において、バケット3c内の荷重値に対するバケット3c内の荷重値の誤差の大きさの関係はたとえば2次関数によって表される。この場合、荷重値の誤差の大きさは、バケット3c内の荷重値の増加により2次関数的に減少する。
【0088】
この関係データ1を用いた補正においては、上記において作業機3の慣性による誤差E1の補正が行われた補正後の荷重値から、関係データ1の関係に基づいて荷重誤差が除去されることにより真の荷重値が算出される。
【0089】
本発明者は、計算モデルとの相違に基づく誤差E2を計算荷重値(たとえば補正後の荷重値)から除去するために鋭意検討した結果、上記関係データ1を用いて補正を行えば、上記誤差E2を適切に除去できることを見出した。
【0090】
たとえば
図7に示す関係データ2のように、真の荷重値の値に関わらず荷重誤差が一定の関係データを用いて補正を行った場合、正確に補正を行うことができなかった。これに対して関係データ1を用いた場合には、
図8(B)において2点鎖線で示すような補正後の荷重値の曲線を得ることができた。
【0091】
この
図8(B)に示す補正後の荷重値の曲線は、
図8(A)に示す作業機3の慣性による誤差E1のみの補正が行われた補正後の荷重値の曲線(1点鎖線で示す曲線)よりも一定値に近づいている。この結果から、
図7に示す関係データ1を用いて補正を行うことにより、上記誤差E2を適切に除去できることがわかった。
【0092】
なお本実施の形態においては、上記の計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正は、作業機3の慣性による誤差E1の補正後の荷重値に対して行われる場合について説明した。しかし、上記の計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正は、作業機3の慣性による誤差E1の補正の前に行われてもよい。また上記の計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正は、作業機3の慣性による誤差E1の補正と同時に行われてもよい。
【0093】
また上記の計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正を行わずに、作業機3の慣性による誤差E1の補正のみが行われてもよい。また作業機3の慣性による誤差E1の補正を行わずに、計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正のみが行われてもよい。特にブームシリンダ4aが動作しない静止時には、計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正のみが行われる。
【0094】
なお上記作業機3の慣性による誤差E1が補正される前に計算モデルとの相違に基づく誤差E2が補正される場合または計算モデルとの相違に基づく誤差E2の補正のみが行われる場合には、
図7における関係データ1における荷重値とは、モーメントの釣り合いから得られる計算荷重値を意味する。
【0095】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度に基づいてバケット3c内の荷重値Wが補正される。これにより、ブーム3a、アーム3b、バケット3cなどの動作に基づく作業機3の慣性による誤差E1を荷重値Wから取り除くことができる。このため、荷重計測時の計測精度を向上することができる。
【0096】
またコントローラ8は、上記加速度に基づく補正に加えて、演算により得られた荷重値を、バケット3cの荷重値に対するバケットの荷重値の誤差の大きさを示す関係データに基づいて補正する。これにより、
図4に示されるモーメントの釣り合いのモデルが、
図1に示される実際の作業機3の構成および状態と異なる想定を有する場合でも、そのモデルと実際の作業機との相違に基づく誤差E2を補正することが可能となる。
【0097】
また
図7に示されるように、関係データ1は、バケット3cの荷重値が大きいほど、バケット3cの荷重値Wの誤差が小さくなる関係を有している。これにより、関係データ1における荷重値と誤差との関係を、バケット3cの荷重値が大きくなるほど荷重値に対する荷重値の誤差が相対的に小さくなるという実情に即した関係とすることができる。これにより計算モデルとの相違に基づく誤差を適切に補正することができる。
【0098】
また
図7の関係データ1において、バケット3cの荷重値に対するバケット3cの荷重値の誤差の大きさの関係は2次関数によって表される。これにより、上記関係データ1における荷重値と誤差との関係を、簡易に実情に即した関係とすることができる。
【0099】
なおコントローラ8は、ブームシリンダ4aの負荷に基づいてバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能を有していればよい。この機能の一例は、
図4に示されるように、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cの静力学的なモーメントの釣り合いからバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能である。
【0100】
この機能の他の例として、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cの動力学的なモーメントの釣り合いからバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能が用いられてもよい。またさらに他の例として、ブーム3a、アーム3b、バケット3c、シリンダ4a、4b、4cなどの静力学的または動力学的なモーメントの釣り合いからバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能が用いられてもよい。またさらに他の例として、作業機3の構成部材の力の釣り合いによりバケット3c内の現在の荷重値(計算荷重値)Wを演算する機能が用いられてもよい。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。