特許第6855330号(P6855330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855330
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   H01T13/20 C
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-111295(P2017-111295)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-206621(P2018-206621A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年4月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋史
(72)【発明者】
【氏名】沖村 康之
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−122879(JP,A)
【文献】 特開2017−010741(JP,A)
【文献】 特開昭57−017587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 − 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側から後端側へと軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、
前記軸孔の先端側に配置された中心電極と、
前記軸孔内の前記中心電極の後端側に配置される導電体と、
前記中心電極、前記導電体および前記絶縁体に接触し、前記中心電極と前記導電体とを電気的に接続する導電性ガラスと、
前記導電体と前記絶縁体との間に配置されると共に前記導電性ガラス、前記導電体および前記絶縁体に接触する絶縁性ガラスと、を備えるスパークプラグであって、
前記軸線を含む任意の断面において、前記絶縁性ガラスと前記導電性ガラスとの界面は、前記絶縁体に前記界面が接する第1点が前記導電体に前記界面が接する第2点よりも後端側に位置し、
前記界面は、前記第2点と前記軸線方向の同位置または前記第2点よりも前記軸線方向の後端側に位置するスパークプラグ。
【請求項2】
前記導電体と前記界面とが接する境界線のうち、前記軸線方向の最後端位置と最先端位置との間の前記軸線方向における距離Dを、前記導電体の前記軸線方向における最大の長さLで除したD/Lは、0≦D/L≦0.1を満たす請求項1記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグに関し、特に抵抗体や磁性体などの導電体を内蔵したスパークプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電時に発生する電波ノイズを抑えるために、抵抗体や磁性体などの導電体を絶縁体に内蔵したスパークプラグがある(特許文献1及び2)。特許文献2に開示された技術では、中心電極に導電性ガラスを介して接続された導電体(抵抗体)が振動によって破損しないように、導電性ガラス、導電体および絶縁体に接触する絶縁性ガラスが内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−208768号公報
【特許文献2】特開2007−122879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術では、導電性ガラスと絶縁性ガラスとの界面が導電体に接する部分に、放電時に電界が集中し、導電体が劣化するおそれがある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、導電体の耐久性を向上できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のスパークプラグは、先端側から後端側へと軸線方向に延びる軸孔を有する絶縁体と、軸孔の先端側に配置された中心電極と、軸孔内の中心電極の後端側に配置される導電体と、中心電極、導電体および絶縁体に接触し中心電極と導電体とを電気的に接続する導電性ガラスと、導電体と絶縁体との間に配置されると共に導電性ガラス、導電体および絶縁体に接触する絶縁性ガラスと、を備えている。軸線を含む任意の断面において、絶縁性ガラスと導電性ガラスとの界面は、絶縁体に界面が接する第1点が導電体に界面が接する第2点よりも後端側に位置し、界面は、第2点と軸線方向の同位置または第2点よりも軸線方向の後端側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のスパークプラグによれば、導電体上の第2点に電界が集中するのを緩和できるので、導電体の劣化を抑制できる。よって、導電体の耐久性を向上できる。
【0008】
請求項2記載のスパークプラグによれば、導電体と界面とが接する境界線のうち、軸線方向の最後端位置と最先端位置との間の軸線方向における距離Dを、導電体の軸線方向における最大の長さLで除したD/Lは、0≦D/L≦0.1を満たす。その結果、導電体の側面に接触する導電性ガラスの接触面積の周方向のばらつきを抑制できる。これにより、請求項1の効果に加え、導電体の抵抗値のばらつきを抑制できると共に、導電体の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施の形態におけるスパークプラグの片側断面図である。
図2】(a)は図1のIIaで示す部分を拡大して示したスパークプラグの断面図であり、(b)は第2実施の形態におけるスパークプラグの一部を拡大して示した断面図である。
図3】導電体を模式的に図示した斜視図である。
図4】(a)は第3実施の形態におけるスパークプラグの一部を拡大して示した断面図であり、(b)は第4実施の形態におけるスパークプラグの一部を拡大して示した断面図である。
図5】比較例におけるスパークプラグの一部を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(図2から図5においても同じ)。スパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極14及び端子金具15を備えている。
【0011】
絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミック製の部材であり、軸線Oに沿って貫通する軸孔12が形成されている。本実施の形態では、軸孔12は、軸線Oと直交する断面の形状が円形である。軸孔12は、先端に向かって内径が次第に小さくなる段部13が先端側に設けられている。
【0012】
中心電極14は、軸線Oに沿って延びる棒状の部材であり、銅または銅を主成分とする芯材がニッケル又はニッケル基合金で覆われている。中心電極14は、軸孔12の段部13に係止され、先端が軸孔12から露出する。
【0013】
端子金具15は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具15は、先端側が軸孔12に挿入された状態で、絶縁体11の後端に固定されている。
【0014】
絶縁体11は、端子金具15と軸線O方向に間隔をあけて、外周の先端側に主体金具16が加締め固定されている。主体金具16は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具16は、径方向の外側へ鍔状に張り出す座部17と、座部17よりも先端側の外周面に形成されたねじ部18とを備えている。主体金具16は、内燃機関(シリンダヘッド)のねじ穴(図示せず)にねじ部18を締結して固定される。
【0015】
接地電極19は、主体金具16の先端に接合される金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施の形態では、接地電極19は棒状に形成されており、先端側が屈曲し中心電極14と対向する。接地電極19は、中心電極14との間に火花ギャップを形成する。
【0016】
導電体20は、放電時に発生する電波ノイズを抑えるための部材であり、軸孔12内の中心電極14と端子金具15との間に配置されている。導電体20は、中心電極14と導電体20とに接触する導電性ガラス21によって中心電極14と電気的に接続される。本実施の形態では、導電体20は円柱状に形成されている。また、端子金具15と導電体20とに接触する導電性ガラス22によって、導電体20は端子金具15と電気的に接続されている。
【0017】
導電体20としては、フェライトと導体とが複合された磁性体や抵抗体などが挙げられる。抵抗体は、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を吸収する。磁性体は、フェライトのインピーダンスや磁気損失等によって、放電電流のうち電波ノイズの原因となる周波数帯の成分を遮断または吸収する。
【0018】
抵抗体としては、例えば、炭素系、金属、金属酸化物などの抵抗材料の皮膜を磁器などの基材の表面に接合した素子(抵抗器)、Ni−Cr等の抵抗線を磁器などの基材に巻き付けた素子、骨材と導電性粉末とを混合した成形体などが用いられる。抵抗体の抵抗値は、例えば0.1kΩ〜30kΩであることが好ましく、1kΩ〜20kΩであることがさらに好ましい。
【0019】
骨材と導電性粉末とを混合し成形した抵抗体において、骨材としては、例えばガラス粉末、無機化合物粉末が挙げられる。骨材のガラス粉末としては、例えばB−SiO系、BaO−B系、SiO−B−CaO−BaO系、SiO−ZnO−B系、SiO−B−LiO系およびSiO−B−LiO−BaO系等の粉末が挙げられる。骨材の無機化合物粉末としては、例えばアルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の粉末が挙げられる。これらの骨材は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0020】
導電性粉末としては、例えば半導性酸化物、金属および非金属導電性材料等からなる粉末が挙げられる。半導性酸化物としては、例えばSnOが挙げられる。金属としては、例えばZn,Sb,Sn,Ag及びNi等が挙げられる。非金属導電性材料としては、例えば無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン及び炭化ジルコニウム等が挙げられる。これらの導電性粉末は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0021】
磁性体としては、例えば、フェライトの磁器の表面に導体を接合した素子、フェライトの磁器に金属線を巻き付けた素子、フェライトの粒子を導電性物質で被覆した磁性粒子の集合体(成形体)などが挙げられる。磁性体の抵抗値は、例えば0.01Ω〜10Ωであることが好ましい。
【0022】
磁性粒子に用いられる導電性物質は、例えばNi,Cu,Sn,Fe,インコネル(INCONELは登録商標)等の金属、LaMnO,SrTiO,SrCrO等の導電性または半導性の複合酸化物、炭素、Cr,TiC等の炭素化合物等が挙げられる。フェライトや導電性物質は、1種ないしは複数種を適宜選択して用いることができる。なお、磁性粒子に加え、ガラス粉末や無機化合物粉末などを混合して磁性体(磁性粒子の集合体)を形成することは当然可能である。磁性粒子の集合体は、導電性物質同士が接することにより、3次元の導電経路が形成される。
【0023】
フェライトの粒子の表面を導電性物質で覆う手段としては、公知の手段を適宜採用できる。例えば、導電性物質を粒子と共に混合・撹拌して機械的に粒子の表面に付着させたり、バインダ等を用いて導電性物質を粒子の表面に付着させたり、無電解メッキによって導電性物質を粒子の表面に析出させたりする手段が挙げられる。
【0024】
導電性ガラス21,22は、ガラス粉末および導電性粉末の混合物を焼成したものが用いられる。ガラス粉末および導電性粉末は、抵抗体の材料のガラス粉末および導電性粉末と同様のものが用いられる。導電性ガラス21,22は、必要に応じてTiO等の半導性の無機化合物粉末、絶縁性粉末等を含有しても良い。
【0025】
図2(a)は図1のIIaで示す部分を拡大して示したスパークプラグ10の断面図である。図2(a)の矢印Fは軸線方向の先端側、矢印Bは軸線方向の後端側、矢印Pは軸線O(図1参照)に直交する軸直角方向の内側を示している(図2(b)、図3図4(a)、図4(b)及び図5においても同じ)。
【0026】
図2(a)に示すようにスパークプラグ10は、導電体20の側面20bと絶縁体11との間に絶縁性ガラス23が配置されている。絶縁性ガラス23は、導電性ガラス21、導電体20及び絶縁体11に接触する。導電体20と絶縁体11との間に絶縁性ガラス23が介在することにより、振動によって導電体20が破損しないようにできる。
【0027】
絶縁性ガラス23の材料としては、融点が絶縁体11の融点よりも低いもの、例えばB−SiO系、BaO−B系、SiO−B−CaO−BaO系、SiO−ZnO−B系、SiO−B−LiO系およびSiO−B−LiO−BaO系などが挙げられる。これらは1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。絶縁性ガラス23は、アルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の無機化合物を含有しても良い。
【0028】
導電性ガラス21は、導電体20の底面20a及び側面20bの一部に接触すると共に絶縁体11に接触する。導電性ガラス21が絶縁体11に接触することにより、スパークプラグ10が装着された内燃機関(図示せず)の燃焼室の燃焼ガスが軸孔12から漏洩しないようにできる。
【0029】
絶縁性ガラス23は導電性ガラス21と導電性ガラス22との間に介在する。絶縁性ガラス23の体積抵抗率は、導電体20及び導電性ガラス21の体積抵抗率よりも大きいので、絶縁性ガラス23を介して導電性ガラス21,22が短絡しないようにできる。
【0030】
スパークプラグ10は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体11の軸孔12に中心電極14を挿入し、中心電極14を段部13で係止する。次に、導電性ガラス21の原料粉末を軸孔12から入れて、中心電極14の周りに充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、軸孔12に充填した導電性ガラス21の原料粉末を予備圧縮する。
【0031】
次に、絶縁性ガラス23の材料でできたガラス管の中に導電体20(素子や成形体など)を入れたものを軸孔12に挿入し、導電性ガラス21の原料粉末の成形体の上に置く。導電体20及びガラス管の上に、導電性ガラス22の原料粉末をペレット状に成形した成形体を置いた後、絶縁体11を炉内に移送し、例えば導電性ガラス21,22の原料粉末や絶縁性ガラス23の材料に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。加熱後、絶縁体11の軸孔12に端子金具15を圧入し、端子金具15の先端によって導電性ガラス21,22の原料粉末および絶縁性ガラス23の材料を軸方向へ圧縮する。この結果、それらが圧縮・焼結され、絶縁体11の内部に導電体20、導電性ガラス21,22、絶縁性ガラス23が形成される。
【0032】
次に絶縁体11を炉外へ移送し、絶縁体11の外周に主体金具16を組み付ける。接地電極19を主体金具16に接合した後、接地電極19の先端が中心電極14と対向するように接地電極19を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
【0033】
この製造方法において、導電体20を入れたガラス管を軸孔12に挿入する代わりに、導電体20(成形体)を軸孔12に入れた後、導電体20の周りに絶縁性ガラス23の原料粉末を充填することは当然可能である。また、導電性ガラス21,22及び絶縁性ガラス23と一緒に導電体20(成形体)を焼成するのではなく、導電体20(素子)を軸孔12に入れ、軸孔12内で軟化させた導電性ガラス21,22及び絶縁性ガラス23を導電体20(素子)に接触させることは当然可能である。さらに、導電性ガラス22の原料粉末の成形体を軸孔12に挿入する代わりに、導電性ガラス22の原料粉末を軸孔12に充填することは当然可能である。
【0034】
図2(a)に示すように、導電体20は底面20aが導電性ガラス21に接触する。軸線O(図1参照)を含む任意の断面において、導電性ガラス21と絶縁性ガラス23との界面24は、絶縁体11に第1点25が接し、導電体20の側面20bに第2点26が接する。本実施の形態では、界面24は第1点25から第2点26まで直線状に傾斜している。界面24の形状や第1点25及び第2点26の位置は、端子金具15を用いて各材料を軸方向へ圧縮するときの圧力、絶縁性ガラス23の材料(ガラス製の管)の形状や絶縁性ガラス23の原料粉末の量などを調整することにより、適宜設定できる。
【0035】
例えば、端子金具15を用いて各材料を軸方向へ圧縮するときの圧力を高くすることにより、導電体20の底面20aを導電性ガラス21に埋め込ませることができる。軟化した導電性ガラス21は、絶縁体11を伝って絶縁性ガラス23と絶縁体11との隙間に進入する。これにより、導電性ガラス21と絶縁性ガラス23との界面24は、導電体20から絶縁体11へ向かって上昇する。
【0036】
界面24は、第1点25が第2点26よりも軸線方向の後端側(矢印B方向)に位置し、界面24上の任意の2点において、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の先端側(矢印F方向)に位置する。界面24と導電体20(側面20b)とのなす角(導電性ガラス21側の角度)は90°以上に設定され、界面24と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス21側の角度)は90°未満に設定される。この関係は、軸線O(図1参照)を含む任意(あらゆる場合)の断面において成立する。これにより、第2点26に電界が集中するのを緩和できる。第2点26の放電時の電流密度を抑えて導電体20の劣化を抑制できるので、導電体20の耐久性を向上できる。
【0037】
図3は導電体20を模式的に図示した斜視図である。界面24(図2(a)参照)は軸線Oを含む任意(あらゆる場合)の断面において導電体20の側面20bに接するので、図3では、導電体20と界面24とが接する境界線27を、連続した曲線として表記する。境界線27は第2点26(図2(a)参照)の集合である。
【0038】
スパークプラグ10は、導電体20の側面20b上の境界線27のうち最も後端側(矢印B方向)に位置する点28(最後端位置)と最も先端側(矢印F方向)に位置する点29(最先端位置)との間の軸線O方向における距離Dを、導電体20の軸線O方向における最大の長さLで除したD/Lは、0≦D/L≦0.1を満たす。
【0039】
なお、導電体20の最大の長さLは、軸線Oに直交する2枚の平面で導電体20を軸線O方向に挟んだときの2枚の平面間の距離をいう。また、界面24の形状、第1点25及び第2点26の位置、距離D及び長さLは、試料の切断面の顕微鏡観察やCTスキャナ(X線透視装置)を用いた非破壊検査によって測定できる。
【0040】
0≦D/L≦0.1を満たすことにより、導電体20の側面20bに接触する導電性ガラス21の接触面積の周方向のばらつきを抑制できる。よって、導電体20の抵抗値のばらつきを抑制できる。
【0041】
また、0≦D/L≦0.1を満たすことにより、導電体20の側面20bの電流密度のばらつきを抑制できるので、導電体20の劣化を抑制できる。よって、導電体20の耐久性をさらに向上できる。
【0042】
次に図2(b)を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、界面24が導電体20の側面20bに接する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、界面34が導電体20の底面20aと側面20bとの角に接する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図2(b)は第2実施の形態におけるスパークプラグ30の一部を拡大して示した断面図である。
【0043】
図2(b)に示すように、導電体20は底面20aが導電性ガラス31に接触する。軸線O(図1参照)を含む任意の断面において、導電性ガラス31と絶縁性ガラス33との界面34は、絶縁体11に第1点35が接し、導電体20の底面20aと側面20bとの角または側面20bに第2点36が接する。本実施の形態では、上記任意の断面のうち少なくとも1つにおいて、導電性ガラス31と絶縁性ガラス33との界面34は、導電体20の底面20aと側面20bとの角に第2点36が接する。界面34は第1点35から第2点36まで直線状に傾斜している。
【0044】
界面34は、第1点35が第2点36よりも軸線方向の後端側(矢印B方向)に位置し、界面34上の任意の2点において、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の先端側(矢印F方向)に位置する。界面34と導電体20(底面20a又は側面20b)とのなす角(導電性ガラス31側の角度)は90°以上に設定され、界面34と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス31側の角度)は90°未満に設定される。この関係は、軸線O(図1参照)を含む任意(あらゆる場合)の断面において成立する。よって、第2点36に電界が集中するのを緩和し、導電体20の劣化を抑制できる。
【0045】
図4(a)を参照して第3実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4(a)は第3実施の形態におけるスパークプラグ40の一部を拡大して示した断面図である。
【0046】
図4(a)に示すように、導電体20は底面20aが導電性ガラス41に接触する。軸線O(図1参照)を含む任意の断面において、導電性ガラス41と絶縁性ガラス43との界面44は、絶縁体11に第1点45が接し、導電体20の側面20bに第2点46が接する。本実施の形態では、上記任意の断面のうち少なくとも一つにおいて、界面44は先端側(矢印F方向)に凸の曲線である。
【0047】
界面44は、第1点45が第2点46よりも軸線方向の後端側(矢印B方向)に位置し、界面44上の任意の2点において、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の同位置または軸線方向の先端側(矢印F方向)に位置する。界面44と導電体20(側面20b)とのなす角(導電性ガラス41側の角度)は90°以上に設定され、界面44と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス41側の角度)は90°未満に設定される。この関係は、軸線O(図1参照)を含む任意(あらゆる場合)の断面において成立する。よって、第2点46に電界が集中するのを緩和し、導電体20の劣化を抑制できる。
【0048】
図4(b)を参照して第4実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4(b)は第4実施の形態におけるスパークプラグ50の一部を拡大して示した断面図である。
【0049】
図4(b)に示すように、導電体20は底面20aが導電性ガラス51に接触する。軸線O(図1参照)を含む任意の断面において、導電性ガラス51と絶縁性ガラス53との界面54は、絶縁体11に第1点55が接し、導電体20の側面20bに第2点56が接する。本実施の形態では、上記任意の断面のうち少なくとも一つにおいて、界面54は中央付近で凹凸の状態が変化した曲線である。
【0050】
界面54は、第1点55が第2点56よりも軸線方向の後端側(矢印B方向)に位置し、界面54上の任意の2点において、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の同位置または軸線方向の先端側(矢印F方向)に位置する。界面54と導電体20(側面20b)とのなす角(導電性ガラス51側の角度)は90°以上に設定され、界面54と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス51側の角度)は90°未満に設定される。この関係は、軸線O(図1参照)を含む任意(あらゆる場合)の断面において成立する。よって、第2点56に電界が集中するのを緩和し、導電体20の劣化を抑制できる。
【実施例】
【0051】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
実施の形態で説明したスパークプラグのサンプルを作成して放電試験を行った。サンプルは、まず、絶縁体11の軸孔12に中心電極14を挿入した後、導電性粉末とガラス粉末とを混合した導電性ガラス21の原料粉末を軸孔12から入れて、中心電極14の周りに充填した。次に、導電性物質の粉末とガラス粉末とを混合して予め成形した導電体20を、絶縁性ガラス23の材料でできたガラス管の中に入れたものを軸孔12に挿入し、導電性ガラス21の原料粉末の上に置いた。次いで、導電体20及びガラス管の上に、導電性ガラス22の原料粉末をペレット状に成形した成形体を置いた後、絶縁体11を加熱してガラス粉末およびガラス管を軟化させた。次に、軸孔12に圧入した端子金具15によってガラス粉末などを加圧し、導電体20、導電性ガラス21,22及び絶縁性ガラス23を焼結した。接地電極19が接合された主体金具16を絶縁体11に組み付けてスパークプラグのサンプルを得た。
【0053】
X線透視装置を用いて、得られたサンプルの導電性ガラスと絶縁性ガラスとの界面の形態を観察した。また、X線透視装置を用いてD及びLを測定し、D/Lを算出した。
【0054】
サンプル1〜8の界面の形態、導電体20に含まれる導電性物質、距離Dを長さLで除した値(D/L)及び試験時間を表1に示す。第1実施の形態のように、導電性ガラスと絶縁性ガラスとの界面が直線状で、その界面が導電体の側面に接触するものを表1に形態1と表記し、第2実施の形態のように、導電性ガラスと絶縁性ガラスとの界面が導電体の角に接触するものを形態2と表記した。また、第3実施の形態のように、導電性ガラスと絶縁性ガラスとの界面が曲線状で、その界面が導電体の側面に接触するものを形態3と表記した。形態1から3のいずれかに分類されたサンプルの界面は、全周(360°)のうち70%以上の範囲において、分類されたその形態であった。
【0055】
【表1】
サンプル8は比較例である。比較例におけるスパークプラグ60は、サンプル1〜7と異なり、絶縁性ガラスが省略されている。図5は比較例におけるスパークプラグ60(サンプル8)の一部を拡大して示した軸線O(図1参照)を含む断面図である。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0056】
図5に示すようにスパークプラグ60は、絶縁体11の軸孔12に導電性ガラス61及び導電体62が配置されている。導電性ガラス61と導電体62との界面63は、先端側(矢印F方向)に凸の曲線状であり、交点64で絶縁体11に接する。界面63と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス61側の角度)は90°未満に設定される。この関係は、軸線O(図1参照)を含む任意(あらゆる場合)の断面において成立する。
【0057】
試験は、425℃の槽内にサンプル1〜8を保管した状態で、端子金具15と主体金具16との間に45kVの電圧を1/100秒の周期で印加した。サンプル1〜8に内蔵した導電体は抵抗値(初期値)を1kΩに設定し、試験前後の抵抗値の変化率が±50%を超えたときの試験時間を測定した。
【0058】
表1に示すようにサンプル1〜7(実施例)は、抵抗値の変化率が±50%を超えるまでの試験時間が200時間以上であったのに対し、サンプル8(比較例)は、試験開始後36時間で抵抗値の変化率が±50%を超えた。サンプル8(比較例)は、界面63と絶縁体11(軸孔12)とのなす角(導電性ガラス61側の角度)が90°未満のため、交点64に電界が集中し、導電体62が早期に劣化したものと推察される。一方、サンプル1〜7は、第2点26,36,46に電界が集中するのを緩和できたので、導電体20の劣化が抑制されたと推察される。
【0059】
サンプル1〜3によれば、D/Lの値が大きくなるにつれて、抵抗値の変化率が±50%を超えるまでの試験時間が短くなることがわかった。D/Lの値が大きくなると、導電体20の側面20bの電流密度のばらつきが大きくなるので、導電体20が劣化し易くなるものと推察される。
【0060】
(実施例2)
D/Lの値が異なるサンプルを作成した。導電体は、導電性物質の粉末とガラス粉末とを混合して成形した後、絶縁性ガラスの材料でできたガラス管の中にその成形体を入れ、ガラス管と一緒に軸孔に挿入した。導電性ガラス及び絶縁性ガラスと共に軸孔内で導電体を焼成した。導電体に含まれる導電性物質をLa(Fe0.5Ni0.5)Oとし、導電体の抵抗値の平均値を1kΩに設定した。
【0061】
実施例1と同様に、第1実施の形態および第3実施の形態(形態1及び3)のサンプルを作成し、X線透視装置を用いてサンプルのD及びLを測定し、D/Lを算出した。さらに、サンプルの抵抗値(導電体の抵抗値)を測定し、標準偏差(σ)を算出した。なお、標準偏差を評価するのに十分な数のサンプルを作成し、測定を行った。ばらつきの評価は、3σ≦0.20kΩを「優れている(◎)」、0.2<3σ≦0.35kΩを「良い(〇)」、3σ>0.35kΩを「劣る(△)」とした。
【0062】
【表2】
表2に示すように0≦D/L≦0.1を満たすことで、抵抗値のばらつきを小さくできることがわかった。特に0≦D/L≦0.05を満たすことで、抵抗値のばらつきを特に小さくできることがわかった。
【0063】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0064】
上記各実施の形態では、界面24,34,44,54は、界面24,34,44,54上の任意の2点において、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の同位置または軸線方向の先端側(矢印F方向)に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、界面24,34,44,54は、軸直角方向の内側(矢印P方向)の点が、軸直角方向の外側(反矢印P方向)の点に対して軸線方向の後端側(矢印B方向)に位置する部分を有していても良い。
【0065】
即ち、絶縁体11に界面24,34,44,54が接する第1点25,35,45,55が、導電体20に界面24,34,44,54が接する第2点26,36,46,56よりも後端側(矢印B方向)に位置し、界面24,34,44,54が、第2点26,36,46,56と軸線方向の同位置または第2点26,36,46,56よりも後端側(矢印B方向)に位置していれば良い。界面24,34,44,54がこのように位置していれば、界面24,34,44,54と導電体20の側面20bとのなす角は90°以上に設定され、界面24,34,44,54と絶縁体11とのなす角は90°未満に設定される。よって、第2点26,36,46,56に電界が集中するのを緩和し、導電体20の劣化を抑制できる。
【0066】
上記各実施の形態では、導電性ガラス22によって導電体20が端子金具15に接続される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、導電性ガラス22に代えて、導電体20と端子金具15との間に導電性のあるばね等の弾性体を介在させて、導電体20と端子金具15とを電気的に接続することは当然可能である。
【0067】
上記各実施の形態では、導電体20が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。導電体20は軸孔12に挿入できる大きさ及び形状であれば良いので、例えば直方体状に形成された導電体20を採用することは当然可能である。
【0068】
上記各実施の形態では、中心電極14の先端に接地電極19が対向するスパークプラグ10,30,40,50について説明したが、スパークプラグの構造は必ずしもこれに限られるものではない。スパークプラグの他の構造としては、例えば、中心電極14の側面に接地電極19が対向するスパークプラグ、主体金具16に複数の接地電極19を接合した多極のスパークプラグが挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
10,30,40,50 スパークプラグ
11 絶縁体
12 軸孔
14 中心電極
20 導電体
20b 側面
21,31,41,51 導電性ガラス
23,33,43,53 絶縁性ガラス
24,34,44,54 界面
25,35,45,55 第1点
26,36,46,56 第2点
27 境界線
28 点(最後端位置)
29 点(最先端位置)
D 距離
L 長さ
O 軸線
図1
図2
図3
図4
図5