【実施例1】
【0014】
<AR支援画像の表示の概略>
図2は、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置が表示するAR支援画像の一例を示す図である。
図2(a)は走行レーンを区切る白線205を示す平面図であり、
図2(b)は左右の白線205の幅員方向の中央に三角アイコン202のAR支援画像が表示された平面図である。なお、三角アイコン202のAR支援画像はヘッドアップディスプレイ装置が投影するものであり、実際に路面に形成されるものではない。
図2(b)は運転者からこのように見えるようにヘッドアップディスプレイ装置がAR支援画像を表示することを説明する図である。
【0015】
図2(b)に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置は繰り返し現れる構造物のピッチ(間隔)に合わせて三角アイコン202のAR支援画像を表示する。例えば、
図2(b)では、白線の始点Sに合わせて三角アイコン202が表示されている。また、白線205の終点Eに三角アイコン202の終点が一致するように三角アイコン202が表示される。すなわち、白線が車両8の進行方向におけるAR支援画像の表示位置を決定する基準になる。
【0016】
このようなAR支援画像によれば、運転者からは白線と同じ間隔でAR支援画像が現れるように見える。また、構造物に合わせて表示することで、車両8が走行すると白線と同じ早さでAR支援画像が後方に移動する。したがって、実景とAR支援画像の一体感を高めることができ、運転者がより見やすい映像を表示できる。また、VR(Virtual Reality)酔いが生じる可能性を低減できる。
【0017】
<用語について>
白線には道路の左端と右端にある実線の車道外側線と、片側に複数の走行レーンがある場合に走行レーンを区切る車線境界線がある。車線境界線は破線であり路面に繰り返し等間隔に形成されている。本実施形態では主にこの車線境界線を例にして説明する。なお、白線は、白色に限らずその他の色(例えば黄色)で路面にペイントされていてよい。また、白線は完全な平面である必要はない。例えば、ボッツドッツ又は反射板(キャッツアイ)が含まれる。
【0018】
特許請求の範囲の対象物とは、画像データから認識可能な有体物であればよい。例えば、地物、敷設物、自然物、移動体、人、動物などである。本実施形態ではAR支援画像の表示位置の基準となる有体物といってもよい。
【0019】
対象物に関する情報は、どのような対象物がどこにあるかという情報である。あるいはAR支援画像の内容と表示位置を決めるために必要な対象物の情報である。
【0020】
進行方向における表示位置の進行方向とは道なりの方向である。縁石や白線に並行な方向といってもよい。
【0021】
<ヘッドアップディスプレイ装置の構造例>
図3は、ヘッドアップディスプレイ装置100の構成例を示す図である。ヘッドアップディスプレイ装置100は、映像投影装置21、ディフューザ22、反射ミラー23、凹面ミラー24、及び、コンバイナー25を有する。コンバイナー25以外の部品は、車両8のダッシュボード19の内部に埋め込まれている。凹面ミラー24が反射した映像は射出窓18を通過してウィンドウシールド13に形成されたコンバイナー25に向けて投影される。投影された映像はウィンドウシールド13よりも前方に虚像10として表示される。運転者9はこの虚像10を視認することができる。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置100は表示装置の一態様である。運転者9は視線を前方の車両8や路面に保ったまま(少ない視線移動で)運転を支援する情報を目視できる。
【0022】
映像投影装置21は、車両8に搭載された車載装置から取得した運転を支援する情報に基づいて虚像として投影される映像を生成する。具体的には例えば路面に進行方向を表すマークが描画されているかのように見えるAR支援画像を生成する。この場合、映像投影装置21は三次元座標系に何らかの投影画像(コンピュータグラフィックではオブジェクトと呼ばれる)を配置して運転者の視界に相当する投影面に投影画像を透視投影変換することで、AR支援画像を生成する。あるいは、AR支援画像を生成するのでなく、単に車速などの情報を生成してもよい。
【0023】
また、映像投影装置21は映像を投影する機能を有する。投影の方式としてはLCD(液晶ディスプレイ)、DLP(Digital Light Processing)、レーザプロジェクタなどがある。本実施形態では投影の方式は制限されない。
【0024】
ディフューザ22は映像投影装置21が投影した映像(光)を拡大する役割を有する。ディフューザ22の映像投影装置21側の面には隙間なくマイクロレンズが形成されている。マイクロレンズは通常のレンズと比較して物像間距離を小さくできるため、距離L1を稼ぎやすい。なお、映像が広がる角度は、マイクロレンズのサイズ、各レンズの焦点距離などから決定される。
【0025】
映像投影装置21から見てディフューザ22の背面(映像の投影方向)には反射ミラー23が配置されている。反射ミラー23は映像投影装置21が投影する映像を凹面ミラー24に向けて折り返す。映像投影装置21が直接、凹面ミラー24に映像を投影してもよい。しかし、映像投影装置21から凹面ミラー24までの距離が長い方が、コンバイナー25から虚像10までの距離が長くなるため、運転者は少ない視線移動で虚像10を視認できる。したがって、反射ミラー23は1つだけに限らず、3枚以上の反射ミラー23が光路を折り返すことで距離を稼いでもよい。
【0026】
凹面ミラー24は、映像を拡大してコンバイナー25に向けて反射すると共に虚像を結像させるためのレンズの役割を果たす。凹面ミラー24が反射した映像はダッシュボード19の前方の射出窓18を通過してコンバイナー25に到達する。凹面ミラー24は映像の全体がコンバイナー25に到達するように大きさ、角度、及び、位置が設計される。
【0027】
コンバイナー25は2つの機能を有する。1つは凹面ミラー24で反射された映像を運転者側に反射させる機能である(反射部材の機能)。もう1つはコンバイナー25を介して運転者9が得る視界を確保する機能(透過機能)である。コンバイナー25の運転者側の面にはビームスプリッターが形成されているため、入射する映像の少なくとも一部を運転者9に向けて反射する。また、外光の少なくとも一部が透過して運転者9の目に到達する。これにより、運転者9は虚像と前方の実景の両方を同時に見ることができる。
【0028】
なお、コンバイナー25の車外側の面は車内側の面とほぼ同じ曲率を有しているため、コンバイナー25を透過する光に対してレンズ効果を持たず、実景が歪むことはない。
【0029】
<機能について>
図4は、映像投影装置21の機能をブロック状に示す機能ブロック図の一例である。映像投影装置21には、カメラECU32とナビゲーション装置31が接続される。カメラECU32は車両8の前方を撮像するカメラ33を制御するECU(Electronic Control Unit)である。カメラ33は、静止画又は動画を撮像可能な撮像装置であり、例えばルームミラーの車両前方側、車両8の天井の前方部、又は、フロントバンパの中央若しくは左右のコーナ等、前方の白線を撮像可能な位置に配置される。
【0030】
カメラは単眼カメラでもステレオカメラでもよい。本実施形態では路面の白線の座標が検出されるが、この機能は単眼カメラでも実現可能である。ただし、ステレオカメラ(又は距離情報を取得できる単眼カメラ)であれば路面に限らず撮像範囲の距離情報が得られる。なお、カメラは所定の周期で繰り返し前方の撮像範囲を撮像している。
【0031】
カメラECU32はカメラ33が撮像した画像データに各種の画像処理を施す。例えば、白線を認識する処理、交通標識を認識する処理、信号機の状態を認識する処理、及び、対象物(歩行者や先行車等)の検出等を行う。本実施形態では、主に繰り返し等間隔に現れる構造物を認識する。具体的には白線、ガードレール、及び、距離標(キロポスト)が挙げられる。カメラECU32はカメラ座標系で構造物を検出する。
【0032】
なお、交通標識等を認識するためカメラECU32はパターン認識を行う。パターン認識とは特徴量のパターンを予め定められたクラスの1つに対応させる情報処理である。パターン認識では、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、又はサポートベクターマシンなどのアルゴリズムが知られており、予め対象物とそうでない物の特徴が学習される。特徴量は対象物の特徴を表す指標として適宜設定される。一例としては、勾配方向ヒストグラム (HOG)、スピードアップロバスト特性 (SURF)、局所2値パターン(LBP)、カラーヒストグラムなどがある。
【0033】
ナビゲーション装置31は各種の運転支援を行う装置である。例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)などで自車位置を検出すると共に道路地図に自車位置を表示する。また、道路地図に目的地までの経路を表示したり、進路変更の手前で進行方向を案内したりすることで目的地まで運転者を誘導する。片道に複数のレーン(車線)がある道路では、右折専用又は左折専用のレーンなど適切なレーンを運転者9に案内する。ヘッドアップディスプレイ装置100はこれらの案内情報に基づいてAR支援画像を生成して表示することができる。
【0034】
図4ではナビゲーション装置31は、ヘッドアップディスプレイ装置100と別体であるが、ナビゲーション装置31がヘッドアップディスプレイ装置100の機能を有していてもよい。あるいは、ヘッドアップディスプレイ装置100がナビゲーション装置31を有していてもよい。
【0035】
映像投影装置21は、映像を投影する機能の他、情報処理装置としての機能を有している。映像投影装置21は、カメラ情報IF35、ナビ情報IF34、投影画像生成部36、座標変換部37、画像位置決定部38、画像変形部39、及び、映像投影部40の各機能ブロックを有している。
【0036】
カメラ情報IF35は、カメラECU32から画像の認識結果を取得する。本実施例では一例として構造物の座標(白線座標)を取得する。ナビ情報IF34はナビゲーション装置31から案内情報を取得する。本実施例では一例としてレーンガイド、進行方向などの情報を取得する。なお、レーンガイドとは、走行すべきレーンを案内することをいう。なお、カメラ情報IF35とナビ情報IF34はCAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して通信する。
【0037】
投影画像生成部36は、カメラ情報IF35が取得する画像認識結果、又は、ナビ情報IF34が取得する案内情報に基づいて投影画像を生成する。例えば、走行レーンの移動という案内情報が得られた場合、現在の走行レーンから次の走行レーンに誘導する投影画像を生成する。直進のままであれば上向きの三角アイコン202や矢印アイコンを、右側レーンへの移動であれば右向きの三角アイコン202や右向きの矢印アイコンを、左側レーンへの移動であれば左向きの三角アイコン202や矢印アイコンを投影画像として生成する。また、画像認識結果が車線逸脱警告であれば、白線を強調する投影画像を生成する。この投影画像が変形されてAR支援画像になる。投影画像とAR支援画像は実質的に同じ物であるため、本実施形態でも支障のない範囲では明確に区別しない場合がある。
【0038】
なお、投影画像を生成するためのセンサはカメラ33だけである必要はなく、車両の周囲の障害物を検出するレーダ、ソニックセンサ、又は、後方カメラ等の検出結果に基づき投影画像生成部36が投影画像を生成する場合もある。
【0039】
投影画像と画像認識結果又は案内情報の対応が予め決まっている場合、投影画像生成部36は案内情報又は画像認識結果に対応づけられた投影画像を決定すればよい。これに対し、画像認識結果が看板の内容であるような場合、投影画像生成部36は内容を含む投影画像を逐次、生成する。例えば、カメラ情報IF35が交通標識から認識された制限速度を取得した場合、交通標識を模倣した投影画像を生成する。
【0040】
座標変換部37はカメラ座標系の構造物の座標を車両座標系に変換する。カメラ座標系はカメラの撮像素子の中心を原点とする座標系であり、車両座標系は、例えば車両8の中心(又は重心)を原点とする座標系である。映像投影装置21は車両座標系で映像を投影する。なお、車両座標系でなく映像投影装置21にとって好適な座標系に変換してもよい。
【0041】
画像位置決定部38は、繰り返し等間隔で現れる構造物(白線、ガードレール又は距離板など)等を基準に、車両の進行方向における投影画像を配置する位置を決定する。車幅方向(左右方向)については、車両の正面、白線の中央、構造物の近く、などのように決定される。また、高さ方向については本実施形態では、投影画像は路面に配置される。
【0042】
画像変形部39は、路面に配置された投影画像を透視投影変換することでAR支援画像を生成する。路面に配置する投影画像は構造物の始点や終点と合わせられている。AR支援画像は運転者から見て路面にペイントされているかのように変形されているため、運転者は実景に対し違和感が少ないAR支援画像を視認できる。
【0043】
映像投影部40は、画像変形部39が生成したAR支援画像を映像の投影機能を使って投影する。具体的にはLCD、DLP、レーザプロジェクタなどのエンジン部分である。
【0044】
<白線の認識について>
白線認識に関する画像処理は各種提案されているため、以下の説明はあくまで一例である。なお、カメラECU32は白線と道路の境界の座標を検出する。
【0045】
1.エッジ抽出
カメラECU32はカメラが撮像した画像データの各フレームからエッジ抽出を行う。エッジ抽出には、Sobelフィルタ、Laplacianフィルタ、Cannyフィルタなど、エッジ抽出に適したフィルタを用いればよい。水平方向の輝度の変化に基づいて、暗→明(路面から白線)と明→暗(白線から路面)の2つのパターンのエッジを分けて抽出する。
【0046】
2.線分抽出
次に、画像データの下方部分(白線が映っている可能性がある)を水平ブロックに分割し、各ブロックにおいてエッジ点から線分を抽出する。線分の抽出には例えばハフ変換が使用される。
【0047】
3.グループ化
水平ブロック内で同じと見なせる傾きの線分を白線の一部の線分としてグループ化する。更に、線分の始点と終点に着目し、ある線分の延長上に存在する別の線分をグループ化する。
【0048】
4.白線の検出
水平ブロック間で同じ傾きの線分を1本の白線候補として検出する。この時、終点と始点が閾値以上はなれた線分(グループ化されている)は同じ白線候補にしない。複数の白線候補から以下の条件を満たす組み合わせを白線として検出する。
(i) 暗→明の白線候補と明→暗の白線候補の幅が白線と見なせる幅の閾値以下であること。
(ii) 1本の白線候補が白線と見なせる程度の長さ以上であること。
(iii) 数フレーム前まで遡った場合に白線の位置が大きく異ならないこと。
【0049】
<白線座標>
図5は、本実施形態でヘッドアップディスプレイ装置100が取得する白線座標を説明する図の一例である。カメラECU32は1本の白線の左右の外縁の座標を検出しているが、本実施形態では最も手前の白線の始点Sと終点Eの座標が得られていればよい。図示するように座標が設定された場合、始点Sは認識された1本の白線205のうちz座標が最も小さい座標、終点Eはz座標が最も大きい白線座標である。
【0050】
1本の白線205につき内側(路面→白線)と外側(白線→路面)それぞれの2点が決定されるので、x座標、y座標、z座標は2点の平均とする。
【0051】
始点Sと終点Eの算出はカメラECU32が行ってもよいし、映像投影装置21が行ってもよい。この場合、映像投影装置21はカメラECU32が算出した白線の外縁の座標から始点Sと終点Eを算出する。
【0052】
<路面の座標の算出>
画像データにおける白線205の位置は検出されたが、白線の位置を基準にして路面に形成されているかのようにAR支援画像を表示するにはカメラ座標系における白線205の座標が必要になる。以下では、カメラレンズの中心を原点とするカメラ座標系における白線205の座標を算出する方法を説明する。本実施形態では路面が平面であると仮定する。
【0053】
図6は、カメラ座標系を説明する図の一例である。カメラ座標系における平面の方程式は以下で表される。
【0054】
αx+βy+γz=−h …(1)
x、y、zは路面301上の点であり、α、β、γ、はカメラの傾きθにより決定される係数であり、hはカメラの路面301からの高さである。よく知られているようにα、β、γ、は路面301の法線ベクトルのx、y、z要素である。補足すると、カメラの傾きθがゼロであるとすると路面301の法線ベクトルが容易に求められる。この法線ベクトルを、X軸を中心にθだけ傾ける(回転させる)ことでカメラ座標系の路面301の法線ベクトルが算出される。したがって、α、β、γを求めることができる。
【0055】
次に、画像データの座標を距離zで正規化すると
x
n=x/z、y
n=y/z …(2)
の関係が得られる。この式(2)を式(1)に代入すると式(3)が得られる。
【0056】
【数1】
式(3)は正規化された画像データの白線位置から、カメラ座標系の白線座標を求める式である。したがって、路面301上の白線の三次元座標が得られる。なお、式(3)の導出は非特許文献2を参照されたい。
【0057】
<カメラ座標系と車両座標系の変換>
式(3)で求められた白線の三次元座標はカメラ座標系であるのに対し、映像投影装置21は車両座標系で投影画像をAR支援画像に変換する。このため、カメラ座標系の白線の座標を車両座標系の白線の座標に変換する。
【0058】
図7は、車両座標系303とカメラ座標系302の変換を説明する図の一例である。車両座標系303はどのように設定されてもよいが一例として車両8の中心を原点とする。カメラ座標系302の原点はレンズの中心である。したがって、実測すれば、X方向、Y方向、Z方向それぞれの平行移動量が分かる。
【0059】
また、カメラ座標系302の傾きθは実測されているので、その傾きだけカメラ座標系302の白線座標を回転させればよい。
【0060】
<白線を構造物としたAR支援画像の表示>
図8は、検出された白線に合わせて表示されるAR支援画像を説明する図の一例である。カメラECU32は撮像範囲に含まれる白線座標をヘッドアップディスプレイ装置100に送出する。映像投影装置21は最も手前の白線座標に基づいて、例えば三角アイコン202のようなAR支援画像の表示位置を決定する。
【0061】
白線205の始点Sから終点EまでをONと称し、終点Eから次の白線205の始点SまでをOFFとする。1つの白線205の長さをdON、白線205の間隔をdOFFと称する。
図5に示したようにdONは始点Sと終点Eのz座標の差である。dOFFは終点Eと次の白線205の始点Sのz座標の差である。白線205の始点Sから白線205の任意の点までの距離をオフセット206と称する。
【0062】
dONは一般道路又は高速道路のそれぞれで一定であり、dOFFも一般道路又は高速道路のそれぞれで一定である。したがって、カメラECUが少なくとも1つの白線205の長さdONと次の白線205までの間隔dOFFを測定できれば、それよりも車両8から遠方の白線205のdONとdOFFも推定できる。最も手前の白線205の長さdONと次の白線205までの間隔dOFFを合わせてセンシングゾーン208という。
【0063】
したがって、映像投影装置21は最も手前の白線205のdONとdOFFを測定すれば、それよりも遠方の白線205の始点S又は終点Eに合わせてAR支援画像を表示できる。
図8では最も手前の白線205の次の白線205から3つ目までの白線205の始点に合わせて三角アイコン202のAR支援画像が表示されている。
【0064】
遠方のいくつの白線205までAR支援画像を表示するかは予め定められている。AR支援画像が表示される白線205の範囲をHUDディスプレイゾーン207という。HUDディスプレイゾーン207は例えばコンバイナー25と実景が重畳される範囲である。HUDディスプレイゾーン207は撮像範囲よりも広くすることができるので、本実施形態のヘッドアップディスプレイ装置100は白線205が等間隔であることを利用して撮像範囲の一部のセンシングゾーン208の白線205で遠方の白線205にAR支援画像を表示できる。
【0065】
図9は、運転者から見た三角アイコン202のAR支援画像の一例を示す。AR支援画像の始点Sが白線の始点と一致しているため、運転者が違和感を感じることを抑制できる。なお、
図9の横線209は説明のための線であり、ヘッドアップディスプレイ装置100が実際に表示するものではない。
【0066】
<AR支援画像の作成について>
図10はAR支援画像の作成について説明する図の一例である。
図10(a)はAR支援画像に変換される投影画像53が仮に車両8の前方の路面301にペイントされている場合の想定図である。このような投影画像53が路面301に実際にペイントされていると仮定すると、運転者9からは遠方ほど小さい右向きの三角形(レーン移動誘導の投影画像)が見える。一例として、車両8の車幅方向をx軸、鉛直方向をy軸、進行方向をz軸とする。三角形の頂点の1つの座標を(x
1,y
1,z
1)とする。
【0067】
図10(b)は同様に路面301にペイントされた投影画像53と車両8の側面図である。車両8と共に移動する所定の原点(例えば車両の中心)をとると、路面301までの高さy
1は既知になる。また、レーン移動誘導の投影画像53が表示されるz方向の距離は白線の始点である。したがって、前方までの距離z
1は白線座標から算出される。車両8の中心から車幅方向のどのくらいの距離にレーン移動誘導の投影画像53が表示されることが運転を支援する上で効果的かは実験的に定められている(例えば白線の中央、又は、車両8の正面)。白線の中央に表示した場合、白線内で車両が移動しても投影画像53は常に白線の中央に表示されるので、投影画像53が路面にペイントされるように見える。車両8の正面に表示した場合、白線内で車両が移動しても投影画像53は常に車両8の正面に表示されるので見やすい。したがって、車幅方向の距離x
1は設定値となる。以上から(x
1,y
1,z
1)は既知である。
【0068】
図11は、路面301にペイントされた投影画像53の投影面54への透視投影変換を説明する図の一例である。映像投影装置21は投影画像の透視投影変換を行うが、透視投影変換には投影面54の設定が必要になる。投影面54とは投影画像53が投影される2次元平面である。投影面54は運転者9の視界を表す。ヘッドアップディスプレイ装置100がAR支援画像を表示する場合、運転者はコンバイナー25越しに前方を見るため、コンバイナー25の付近のほぼ垂直な平面が投影面54として設定される。したがって、投影面54の中心座標(x
0,y
0,z
0)は投影面54がどこに設定されるかにより上記のx、y、z座標系で算出される。投影面54の大きさもコンバイナー25の大きさ等から適宜、決定されている。
【0069】
映像投影装置21はこの投影面54に対し透視投影変換を行う。これにより、投影画像53が運転者から見たAR支援画像に変換される。助手席にコンバイナー25が形成されているような場合は、運転席からの映像でなく助手席からの映像に変換されてもよい。投影面54が設定されれば所定方向から見たAR支援画像に変換可能である。
【0070】
投影面54に投影された投影画像53の座標をx
2,y
2,z
2とすると、同次座標系の透視投影変換は以下で表すことができる。
【0071】
【数2】
この変換を投影画像の各画素ごとに行うことで、映像投影装置21はAR支援画像を作成できる。左辺の第4成分でx
2,y
2を割ることで投影面54の座標が得られる。
【0072】
<動作手順>
図12は、ヘッドアップディスプレイ装置100の動作手順を示すフローチャート図の一例である。
図12の処理は1つの画像データごとに実行される。
【0073】
まず、カメラ情報IF35がカメラECU32から白線座標を取得する(S10)。同様に、ナビ情報IF34がナビゲーション装置31から案内情報を取得する(S20)。例えば、現在走行中の走行レーンから右側レーンへの移動を誘導する案内情報を取得したものとする。なお、カメラECU32が障害物を検出した場合などは案内情報でなく画像認識結果から投影画像53が生成されるため、この場合、案内情報は不要になる。
【0074】
そして、投影画像生成部36は案内情報に応じて投影画像を生成する(S30)。右側レーンへの移動を誘導する案内情報に対しては、三角アイコン202の投影画像53を生成する。
【0075】
座標変換部37は、カメラ座標系の白線座標を車両座標系の座標に変換する(S40)。
【0076】
次に、画像位置決定部38は白線座標に基づいて、dONとdOFFをモニターする(S50)。モニターとは白線205が安定して検出されていることを確認し、検出されている場合の過去の数フレームの画像データから平均的なdONを求めておくことをいう。平均的なdONは最も手前の白線の全体が映っていない場合に使用される。また、このモニターは過去の数フレームに対し繰り返し、行われているものとする。
【0077】
画像位置決定部38は最も手前の白線の全体が映っているか否かを判断する(S60)。すなわち、画像データの下側の端部で白線205が見切れていないかどうかを判断する。この判断は、例えば白線205の始点Sの座標が画像データの最下部と一致するかどうかにより判断できる。
【0078】
ステップS60の判断がYesの場合、画像位置決定部38は最も手前の白線205のdONとdOFFを算出する(S70)。最も新しく検出された白線205でdONとdOFFを更新することで、実景の白線205の始点とAR支援画像の始点を一致させやすくなる。
【0079】
次に、画像位置決定部38は最も手前の白線205のOFFの終点を1つ目の投影画像53の始点Sに決定する(S80)。つまり、
図8のセンシングゾーンでdONとdOFFが算出されたので、HUDディスプレイゾーン207の最初の白線205の始点Sを決定する。
【0080】
また、画像位置決定部38は最も手前の白線205のOFFの終点にdONとdOFFを加えた座標を2つ目の投影画像53の始点Sに決定する(S90)。つまり、センシングゾーンの2つめの白線205に合わせて投影画像53を決定する。
【0081】
また、画像位置決定部38は最も手前の白線205のOFFの終点にdONとdOFFをそれぞれ2つ分加えた座標を3つ目の投影画像53の始点に決定する(S100)。つまり、センシングゾーンの3つ目の白線205に合わせて投影画像53を決定する。
【0082】
このように、最も手前の白線205の白線座標に基づいて更に遠方の3つの白線205の始点に合わせてAR支援画像を表示できる。カメラの撮像範囲に遠方までの多くの白線が含まれる場合は、撮像範囲の全ての白線座標から直接、投影画像の位置を決定できる。しかしながら、カメラの搭載位置がバンパーなどの低い位置だと撮像範囲に多くの白線を含めることが困難な場合がある。本実施例のヘッドアップディスプレイ装置100はこのような状況でも最も手前の白線205の白線座標を測定することでより遠方の白線205に合わせてAR支援画像を表示できる。
【0083】
次に、画像変形部39は、決定した座標に投影画像を配置して透視投影変換を行う(S110)。そして、映像投影部40がAR支援画像を表示する(S120)。
【0084】
ステップS60の判断がNoの場合、画像位置決定部38はモニターにより得られている平均的なdONを使用する(S130)。また、dOFFを測定する(S140)。以降はステップS80〜S120が実行される。なお、最も手前の白線205の全体が映っていない場合、次に手前にある全体が映っている白線205を利用してもよい。
【0085】
なお、遠方3つ分の白線205に対しAR支援画像を表示すると説明したのは説明の便宜上に過ぎず、4つ分以上の白線205に対しAR支援画像を表示してもよい。また、最も手前の白線205のdONとdOFFだけでなく、撮像範囲の全ての白線205のdONとdOFFを測定してもよい。また、最も手前から所定個の白線205のdONとdOFFを測定して平均を算出してもよい。
【0086】
映像投影装置21は白線205が検出された画像データごとに、遠方の3つの白線205のAR支援画像を更新するので路面にペイントされた白線205の実際のdONとdOFFに基づいて常に正確なAR支援画像を表示できる。また、AR支援画像は白線205に合わせて表示されているので、白線205と同じ速度で後方に移動する。また、等間隔に現れる構造物とAR支援画像のピッチが一致しているので、運転者が違和感を感じたり、VR酔いしたりすることを抑制できる。
【0087】
<等間隔に現れる構造物を用いた他の表示例>
図13は、等間隔に現れる構造物を用いた他の表示例を説明する図である。
図13(a)では白線205の終点Eにレーン移動誘導のAR支援画像の終点が一致している。このような表示でも同様の効果が得られる。
【0088】
図13(b)では白線205の終点EにAR支援画像の始点が一致している。この場合も、AR支援画像は白線205に合わせて現れるため同様の効果が得られる。
【0089】
また、
図13(c)に示すように、白線205の始点S又は終点Eに合わせるのでなく、始点Sと終点Eの中央(白線の進行方向の真ん中)にAR支援画像が表示されてもよい。始点Sと終点Eの中点にAR支援画像の中心を一致させればよい。
【0090】
また、白線205の任意の位置にAR支援画像を表示することもできる。すなわち、始点Sから一定のオフセットの位置にAR支援画像を表示する。
【0091】
図13では1つの白線205に1つのAR支援画像しか配置されていないが、1つの白線205に複数のAR支援画像が配置される場合もある。この場合は、
図1にて説明したように、1つ目のAR支援画像の始点と白線205の始点を一致させ、最期のAR支援画像の終点と白線の終点Eを一致させることが好ましい。
【0092】
図14(a)は1つの白線205につき3つのAR支援画像が表示される場合の表示例を示す。1つ目のAR支援画像の始点と白線205の始点Sが一致し、3つ目のAR支援画像の終点と白線205の終点Eが一致している。このような表示は、
図15に示す手順にしたがって行われる。
【0093】
三角アイコン202以外のAR支援画像についても同様に表示できる。
図14(b)は白線205に合わせて表示された車線逸脱警告の円アイコン204のAR支援画像の一例を示す。
図14(b)では、車線逸脱警告を表す円アイコン204が白線205の内側に白線と平行に(白線に沿って)表示されている。車線逸脱警告とは、車両8が白線205を逸脱するおそれがある場合に運転者にその旨を通知する警告である。例えば、車両8の中心が左右の白線205の中央から閾値以上ずれると発動される。このようなAR支援画像の表示の手順も
図15と同様になる。
【0094】
また、
図14(c)に示すように、車線逸脱警告の円アイコン204が白線205を補間するように表示されることも有効である。こうすることで、白線205が存在しない部分を運転者が逸脱することを抑制できる。
【0095】
図15は、1つの白線205につき複数のAR支援画像を映像投影装置21が表示する手順のフローチャート図である。
S1:画像位置決定部38は、白線の長さdONを1つのAR支援画像の長さDで割って、商Pと余りQを算出する。
S2:AR支援画像とAR支援画像の間に間隔を設けるため、商から1を減算する。これが1つの白線につき表示されるAR支援画像の数である。AR支援画像の間隔を大きくしたい場合などのために2以上の整数を減算してもよい。
S3:1つの白線205のAR支援画像の数(例えば3つ)とAR支援画像の長さDの積を、白線の長さdONから引いて値Vとする。
S4:値Vを「AR支援画像の数−1」で割って、AR支援画像の間隔Wを算出する。
S5:白線205の始点Sを1つ目のAR支援画像の始点に決定する。
S6:白線205の始点SにAR支援画像の長Dさと間隔Wを加えた値を2つ目のAR支援画像の始点に決定する。
S7:白線205の始点SにAR支援画像の長さDと間隔Wをそれぞれ2つ分、加えた値を3つ目のAR支援画像の始点に決定する。
【0096】
このような決定方法により、1つ目のAR支援画像の始点と白線の始点を一致させ、最期のAR支援画像の終点と白線の終点を一致させることができる。
【0097】
なお、白線と白線の間隔(dOFF)に複数のAR支援画像を配置する場合も、同様の手順でAR支援画像の位置を決定できる。
【0098】
図16は白線205に合わせて表示された道路標識アイコン305のAR支援画像の一例を示す。道路標識を全ての白線205に合わせて表示すると運転者にとって紛らわしいので、ヘッドアップディスプレイ装置100は所定数の白線205ごとに道路標識アイコン305のAR支援画像を表示する。
図16(a)では一例として100ピッチ(100個の白線)ごとに道路標識が表示されている。数十ピッチごとに表示してもよい。
【0099】
図16(b)は運転席から見た実景に重畳して表示された道路標識アイコン305のAR支援画像の一例を示す。
図16に示すように、道路標識が白線205の始点に合わせて表示されるため、運転者が違和感を感じにくく、VR酔い等を抑制できる。
【0100】
なお、
図16のような表示は、映像投影部40(例えば画像位置決定部38)が道路標識アイコン305を投影してから100個の白線205をカウントするごとに次の道路標識アイコン305を表示することで実現される。
【0101】
図16の道路標識アイコン305は速度制限(50km/h)であるが、この他の道路標識(警笛ならせ、最低速度規制、登坂車線等)も同様に表示可能である。カメラECU32が画像認識する場合、カメラECU32は文字認識機能により道路標識から数字や文字を認識してもよいし、パターンマッチングにより道路標識を識別してもよい。パターンマッチングや文字認識などで検出される限り、同様に各種の道路標識を表示できる。なお、道路標識に関する情報は、カメラECU32が画像認識で検出する他、路車間通信で取得してもよい。この場合は任意の構造物を基準に道路標識のAR支援画像を表示する。
【0102】
また、
図16のような表示は道路標識に限られず、任意の道路に関する情報又は運転を支援する情報にも適用できる。例えば、各種看板や電光表示板の情報(「この先事故」「車線が減少」)を白線205に合わせて表示してもよい。また、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)から取得された情報を白線205に合わせて表示してもよい。また、ナビゲーション装置31から取得した「目的地まであと○メートル」などの情報を白線205に合わせて表示できる。
【0103】
<白線以外の等間隔で繰り返し現れる構造物について>
白線以外の等間隔で繰り返し現れる構造物としては、ガードレールや距離板がある。ガードレールは、種々のデザインがあるが例えば支柱が等間隔に配置されている。ガードレールに設置されることが多い反射板も等間隔に配置される。したがって、カメラECU32がこれらを検出できれば、ヘッドアップディスプレイ装置100は白線205と同様にAR支援画像を構造物に合わせて表示できる。
【0104】
また、
図17は、距離板310に合わせて表示された距離板アイコン311のAR支援画像の一例を示す。距離板310とは、ある起点からの距離を示す看板である。道路のアドレス(住所)と呼ばれる場合がある。区間にもよるが距離板310は例えば100メートル間隔などの等間隔で設定されている。
図17は「70.0」kmと「70.1」kmの距離板310を示している。また、それぞれの距離板アイコン311は「70.0」と「70.1」という距離数を表している。
【0105】
図17のような表示は以下のようにして行われる。
(i) カメラECU32が画像認識により距離板310を認識し、文字認識などで得られた距離情報を映像投影装置21に送出する。
(ii) 映像投影装置21は、距離情報に100メートルを加算したAR支援画像を生成する。100メートル加算するのは、映像投影装置21が生成するAR支援画像は100メートル先のものになるためである。また、「100メートル」という値は連続した2つの看板から取得した距離情報の差分である。
(iii) 映像投影装置21は、生成したAR支援画像を距離板から100メートル前方に表示する。
【0106】
こうすることで、距離板310のように数値が変化する構造物でも、距離板310が表示する距離情報とAR支援画像の距離情報を一致させ、構造物にあわせて表示できる。
【0107】
なお、車両8の移動に応じて車両8から距離板アイコン311までの距離も短くなるため、映像投影装置21は車両8の移動量を車速パルスなどから検出して、移動した距離だけ距離板アイコン311像の表示位置を手前に更新する。あるいは、GNSSにより検出した位置情報で移動量を検出してもよい。
【0108】
<まとめ>
以上説明したように、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置100は繰り返し等間隔で現れる構造物を利用することで、構造物との一体感があるAR支援画像の表示が可能になる。運転者の視界に入る白線などの道路構造物と一緒に視認されるAR支援画像の位置関係がずれることがなく、流れてくる量も同じになり、同期して流れて来るため、従来の課題の全てを解決できる。このため、運転者がヘッドアップディスプレイ装置100の映像に違和感を感じたり、VR酔いを感じたりすることを抑制できる。
【実施例2】
【0109】
実施例1では繰り返し等間隔で現れる構造物に合わせてAR支援画像をヘッドアップディスプレイ装置100が表示したが、本実施例では道路上の特徴物に合わせてAR支援画像を表示するヘッドアップディスプレイ装置100について説明する。
【0110】
<本実施例の表示例>
図18は、運転者から見た本実施例のAR支援画像の一例を示す図である。
図18(a)〜
図18(c)は徐々に車両8が特徴物に接近する際のAR支援画像の変化を示している。
【0111】
図18(a)では、特徴物として道路標識320(速度制限)が検出されている。本実施例のヘッドアップディスプレイ装置100は特徴物の路面レベルでの位置Pを基準にAR支援画像を表示する。したがって、ヘッドアップディスプレイ装置100はまず道路標識320を認識する。道路標識320の場合、支柱と路面の交点が道路標識の路面レベルの位置Pである。図では説明のため、道路標識320の路面レベルの位置Pから水平に道路を横切る直線322が描かれている。直線322は実際には表示されない。道路標識320の路面における位置Pであって車両8の前方(又は走行レーンの中央)に道路標識アイコン305が表示されている。
【0112】
図18(a)〜(c)の道路標識アイコン305が表示する情報は、実施例1の道路標識アイコン305が表示する情報と同じ情報であるが、本実施例では白線でなく特徴物に合わせて表示される。速度制限が「50km/h」の場合、例えば「50」という数字を含む画像(アイコン)がAR支援画像になる。
【0113】
図18(b)(c)でも道路標識アイコン305のAR支援画像の表示方法が同じであり、道路標識320の路面レベルの位置Pに道路標識アイコン305が表示されている。AR支援画像が生成される際、上記の透視投影変換の投影画像のサイズは一定である。つまり、
図18(a)〜(c)でAR支援画像に変換される前の投影画像53のサイズは一定である。しかし、車両8が投影画像に接近するので、道路標識アイコン305は徐々に大きくなる。
【0114】
このような道路標識320を基準とするAR支援画像の表示のためにはカメラ33が距離情報を取得できることが好ましい。したがって、カメラ33はステレオカメラ、又は、単眼でも距離を検出できるカメラであるものとする(例えばMobileye(登録商標)、カラーフィルターにより生じるボケを利用したカメラ等)。なお、距離情報の取得には、レーザーやLIDAR(Light Detection and Ranging)を使用してもよい。これにより、道路標識320までの距離が分かる。路面301の高さは既知であるため(又はカメラ33が測定可能)、
図18に示すように道路標識320の路面レベルの位置PにAR支援画像を表示できる。
【0115】
<動作手順>
図19は、ヘッドアップディスプレイ装置100がAR支援画像を表示する際の動作を説明するフローチャート図の一例である。
図19の処理は画像データごとに繰り返し実行される。
【0116】
カメラ情報IF35はカメラECU32から特徴物の情報を取得する(S10)。特徴物の情報は特徴物の種類、内容、座標等である。例えば、道路標識320で制限速度が50km/hであること、及び、カメラ座標系のどの座標に道路標識320(看板部分)があるかが得られる。
【0117】
次に、投影画像生成部36は特徴物の情報に基づいて投影画像53を生成する(S20)。例えば、道路標識320であると判断し道路標識に応じた投影画像53を生成する。速度制限の場合は、数値が含まれる投影画像53を生成する。
【0118】
座標変換部37は、カメラ座標系における道路標識320の座標を車両座標系における道路標識320の座標に変換する(S30)。
【0119】
画像位置決定部38は道路標識320の座標を用いて投影画像53の位置を決定する(S40)。投影画像の位置のx座標は左右の白線205の中心又は車両8の正面、y座標は路面301と同じ高さ、z座標は道路標識320までの距離である。
【0120】
画像変形部39は決定した座標に投影画像53を配置して透視投影変換を行い、AR支援画像を生成する(S50)。
【0121】
映像投影部40は投影画像53が変換されたAR支援画像を表示する(S60)。
【0122】
車両8が前方に進行するにつれて道路標識320との距離が狭まるが、同じ速度で道路標識アイコン305も車両8に接近するので、運転者から見ると道路標識320と共に路面上の道路標識アイコン305が徐々に接近する(大きくなる)ように見える。したがって、運転者が速度制限等の道路標識を見落とすことを低減できる。
【0123】
なお、本実施例の表示方法は道路上で一般的に認識される特徴物に適用可能である。例えば、高速道路の出口予告、各方面の予告、パーキングの予告、渋滞情報、料金所の予告、非常駐車帯の看板、非常電話の看板、距離板等を基準にAR支援画像を表示できる。また、一般道では、交差点の停止線、信号機、各種の道路標識、横断歩道等を基準にAR支援画像を表示できる。
【0124】
<まとめ>
以上説明したように、本実施例のヘッドアップディスプレイ装置100は道路上の特徴物を基準にAR支援画像の表示が可能になる。このため、運転者は特徴物と同じ路面上の位置でAR支援画像を視認できるため、ヘッドアップディスプレイ装置100の映像に違和感を感じたり、重要な情報を見落としたりすることを抑制できる。
【0125】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0126】
例えば、本実施形態では白線座標の検出をカメラECU32が行ったが、映像投影装置が画像データから白線座標を算出してもよい。
【0127】
また、本実施形態では路面301に投影画像を配置してAR支援画像に変換すると説明したが、路面301より上方又は下方に投影画像を配置して、AR支援画像を強調したり目立たなくしたりすることも可能である。
【0128】
また、繰り返し等間隔で現れる構造物として白線、ガードレール及び距離板を例示したが、等間隔に形成された段差舗装(音や振動で速度の抑制等を促す舗装)、ランブルストリップス(車線を逸脱した場合に音や振動によって運転者に警告する路面の凸凹)、道路鋲(路面に埋め込む金属製の鋲であり電灯や反射材を組み入れセンターライン、分・合流帯、カーブ、中央分離帯などの視認性を高める)などでもよい。
【0129】
また、路面301に関係なく構造物を基準に車両前方の空間に虚像が投影されてもよい。また、構造物を基準にすれば道路外にAR支援画像が表示されてもよい。例えば、縁石上、縁石の外側、中央分離帯、ガードレールの上等に表示してもよい。また、AR支援画像は白線に重畳していてもよいし、白線の外側でもよい。
【0130】
また、AR支援画像の形状は様々なものが考えられており、本実施形態の三角形状や円形に限られるものではない。
【0131】
また、本実施形態の白線は直線形状であったが、白線が湾曲していてもよい。すなわち、カーブを走行中でも白線等を基準にAR支援画像を投影できる。
【0132】
また、ヘッドアップディスプレイ装置はダッシュボードの内部に埋め込まれている必要はなく、ダッシュボード上に配置されていていてもよい。あるいは、天井に取り付けられていてもよいし、サンバイザにと取り付けられていてもよい。また、ヘッドアップディスプレイ装置は車両への脱着が可能でもよい。
【0133】
また、本実施形態ではヘッドアップディスプレイ装置100が車両8に搭載された例を説明したが、車両8以外の移動体に搭載されてもよい。例えば、飛行機、電車、船舶、自動二輪車、又は、車椅子などに搭載できる。
【0134】
なお、カメラ情報IF35は情報取得手段の一例であり、投影画像生成部36は画像生成手段の一例であり、画像位置決定部38は画像位置決定手段の一例であり、画像変形部39は画像変換手段の一例であり、映像投影部40は投影手段の一例である。