(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施の形態における筒内圧センサ10の軸線Oを含む先端側の断面図であり、
図2は
図1のIIで示す部分を拡大して図示した筒内圧センサ10の部分拡大図である。
図1及び
図2では、紙面下側を筒内圧センサ10の先端側、紙面上側を筒内圧センサ10の後端側という(
図3から
図6においても同じ)。
図1では、筒内圧センサ10の後端側の図示が省略されている。
図1に示すように筒内圧センサ10は、筐体20、ダイヤフラム23、受圧ロッド30及びセンサ部40を備えている。
【0015】
筐体20は、耐熱性や耐ガス性のある金属材料(例えばステンレス鋼等)によって形成された円筒状の部材である。本実施の形態では、軸線O方向の後端側から先端側へ順に第1部21及び第2部22が接合され、筐体20が形成される。
【0016】
第1部21は、後端側の外周面におねじ及び工具係合部(いずれも図示せず)が設けられる円筒状の部材である。第1部21のおねじは、筒内圧センサ10を内燃機関(図示せず)のねじ穴に係合する部位である。工具係合部は、内燃機関のねじ穴におねじを締め付けるときに、レンチ等の工具を係合させる部位である。
【0017】
第2部22は、後端側の内周面にめねじが形成される円筒状の部材である。第2部22の内側にセンサ部40が配置される。第2部22の先端22a側の内周面からダイヤフラム23が径方向の内側へ突出する。ダイヤフラム23は円環状の膜であり、第2部22の内周面の全周に亘って設けられている。本実施の形態では、第2部22及びダイヤフラム23は、ステンレス鋼などの金属材料を用いて、例えば鍛造や切削などによって一体に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、第2部22とダイヤフラム23とを別々に形成した後、溶接等によって第2部22とダイヤフラム23とを一体化することは当然可能である。
【0018】
図2に示すようにダイヤフラム23は、ダイヤフラム23の後端面24から先端面25にかけて、中心に穴が形成されている。ダイヤフラム23に穴が形成されることにより、ダイヤフラム23の内径が先端側から後端側に向かって拡径する円錐面状の拡内径部26が、ダイヤフラム23の内周面に設けられている。
【0019】
受圧ロッド30は、第2部22の内側に配置される円柱状の部材である。受圧ロッド30は通電経路の一部としても利用されるので、導電性を有する金属製である。受圧ロッド30は、自身の先端面31がダイヤフラム23に覆われないで露出する。本実施の形態では、受圧ロッド30の先端面31は、軸線O方向において、筐体20(第2部22)の先端22aと同じ位置に存在する。
【0020】
受圧ロッド30の圧入部32は、ダイヤフラム23の拡内径部26に圧入される。圧入部32は、先端面31に隣接する円錐面状の部位であり、後端側から先端側へ向かって縮径する。圧入部32が拡内径部26に圧入され圧入部32が拡内径部26に接合されることにより、ダイヤフラム23に対する受圧ロッド30の気密性を確保できる。なお、圧入部32を通る平面であって軸線Oと垂直な平面(切断面)で筒内圧センサ10を切断した断面において、圧入部32の全周が拡内径部26(ダイヤフラム23の内周面)に接触している。
【0021】
図2に示すように、圧入部32が拡内径部26(
図1参照)に圧入されることにより、圧入部32及び拡内径部26の少なくとも一方に塑性変形や弾性変形が生じる。拡内径部26に圧入された圧入部32は、拡内径部26から径方向の内側へ向かう反力を受ける。その反力に応じた摩擦力により、圧入部32は拡内径部26に保持(接合)される。本実施の形態では、圧入部32の軸線Oに対する角度θ1は拡内径部26の軸線Oに対する角度θ2よりも大きい。その結果、圧入部32のうちの後端側の部分を主に拡内径部26に密着させることができるので、圧入部32による気密性を向上できる。ダイヤフラム23の拡内径部26に圧入部32が接合した受圧ロッド30は、筒内圧力に応じたダイヤフラム23の撓みの量に応じて軸線O方向に変位する。
【0022】
図1に戻って説明する。センサ部40は、受圧ロッド30の軸線O方向の後端側に配置されており、受圧ロッド30とボルト50との間に挟まれている。ボルト50は軸線O方向に貫通穴が形成された金属製の部材であり、第2部22に螺合されている。ボルト50は、センサ部40に軸線O方向の予荷重を与える部材である。第1部21の内部に配置されたケーブル51は、センサ部40の出力に基づいて圧力を検出する電気回路(図示せず)に接続されている。
【0023】
センサ部40は、軸線O方向の先端側から後端側へ順に、押さえ板44、電極42、検知素子41、電極43、端子部45、押さえ板46及び絶縁板47が積層されている。電極43と電気的に接続した端子部45は、筐体20と絶縁されている。端子部45の一部は、ボルト50の貫通穴の内側に進入し、ケーブル51の内部導体52に接続されている。内部導体52と絶縁されたケーブル51の外部導体53(シールド)はボルト50に接続されている。電極42は、押さえ板44、受圧ロッド30及びダイヤフラム23を通じて第2部22(筐体20)と電気的に接続されている。
【0024】
検知素子41は、受圧ロッド30を通じて伝達された荷重に応じて出力値を発生する。検知素子41は、荷重に応じた出力値(例えば電気信号)を、電極42,43及び端子部45を通じて出力する。ケーブル51を通して電気回路(図示せず)に出力された電気信号に基づいて、受圧ロッド30の変位、即ち筒内圧力を検出できる。本実施の形態では、検知素子41は、ピエゾ抵抗効果を利用する圧電素子(半導体圧力センサ)が用いられている。
【0025】
筒内圧センサ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、第2部22の後端側から第2部22の内側に受圧ロッド30を挿入した後、受圧ロッド30の圧入部32をダイヤフラム23の内周面(拡内径部26)へ圧入する。これにより、受圧ロッド30はダイヤフラム23に保持される。
【0026】
次に、第2部22に後端側からセンサ部40を挿入した後、第2部22に後端側からボルト50を螺合し、ボルト50と受圧ロッド30との間にセンサ部40を配置する。次いで、第2部22に対してボルト50を回転し、センサ部40に軸線O方向の圧縮荷重を加える。
【0027】
端子部45及びボルト50にケーブル51を接続した後、ケーブル51を第1部21に挿入する。第1部21と第2部22とを溶接した後、第1部21の内部に、軟化したゴムや合成樹脂などの絶縁体(図示せず)を注入する。注入した絶縁体が硬化すると、防水性および防振性を確保した筒内圧センサ10が得られる。
【0028】
筒内圧センサ10は、ダイヤフラム23の拡内径部26に圧入部32が接合された受圧ロッド30が、ダイヤフラム23が受けた筒内圧力に応じて軸線O方向に変位する。そうすると、その変位に基づいて検知素子41に圧縮力が加わり、ピエゾ抵抗効果によって検知素子41の抵抗値が変化する。筒内圧センサ10の検知素子41の通電経路を定電流回路にすれば、筒内圧力に応じて通電経路の電圧値が変化する。必要な処理を行うことにより、筒内圧力を検知できる。
【0029】
このときに高温の燃焼ガスによってダイヤフラム23が熱膨張すると、径方向の内側へダイヤフラム23が伸び、その反力でダイヤフラム23は内周側が先端側(
図1下側)へ反り返ろうとする。このときのダイヤフラム23は受圧ロッド30の圧入部32に軸線O方向の先端側(
図1下側)への力を与え得る。この力は、筒内圧力に応じた受圧ロッド30の後端側への変位を相殺し、圧力の検知精度を低下させる原因となる。
【0030】
しかし、ダイヤフラム23の拡内径部26に圧入された受圧ロッド30の圧入部32は、拡内径部26に接触しているだけなので、受圧ロッド30がダイヤフラム23に溶接により接合されている場合に比べ、受圧ロッド30の圧入部32がダイヤフラム23を拘束し難くできる。その結果、受圧ロッド30の拘束によるダイヤフラム23の応力を小さくできるので、筒内圧力に応じたダイヤフラムの撓みに応じた受圧ロッド30の変位による荷重以外の、ダイヤフラム23の熱膨張による荷重を検知素子41へ入力し難くできる。よって、圧力の検知精度を向上できる。
【0031】
さらに、受圧ロッド30の圧入部32は拡内径部26におけるダイヤフラム23の内周面に接触しているので、ダイヤフラム23が熱膨張して径方向の内側へ伸びようとするときに、圧入部32に対して軸線O方向の先端側(
図1下側)へ拡内径部26を逃げ易くできる。その結果、受圧ロッド30の拘束によるダイヤフラム23の応力をさらに小さくできるので、圧力の検知精度をさらに向上できる。
【0032】
受圧ロッド30の先端面31は、軸線O方向において、筐体20の先端22aと同じ位置に存在する。その結果、筐体20によって受圧ロッド30が燃焼ガスの熱影響を受け難くできるので、受圧ロッド30から検知素子41への熱伝導による検知素子41の温度上昇を抑制できる。よって、検知素子41の温度上昇に伴う検知精度の低下を抑制できる。
【0033】
次に
図3を参照して第2実施の形態から第4実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図3(a)は第2実施の形態における筒内圧センサ60の軸線Oを含む断面図であり、
図3(b)は第3実施の形態における筒内圧センサ70の軸線Oを含む断面図であり、
図3(c)は第4実施の形態における筒内圧センサ80の軸線Oを含む断面図である。
図3(a)から
図3(c)では、筒内圧センサ60,70,80の先端の近傍が図示されている。
【0034】
図3(a)に示すように筒内圧センサ60は、第2部22(筐体20)、ダイヤフラム61及び受圧ロッド66を備えている。受圧ロッド66の後端にはセンサ部40(
図1参照)が配置されている。ダイヤフラム61は、第2部22の先端22a側の内周面から径方向の内側へ突出する円環状の部位である。ダイヤフラム61は、第2部22の内周面の全周に亘って設けられている。ダイヤフラム61は、ダイヤフラム61の後端面62から先端面63にかけて、中心に穴が形成されている。ダイヤフラム61の内周面64の一部に、自身の内径が先端側から後端側に向かって拡径する円錐面状の拡内径部65が形成されている。拡内径部65はダイヤフラム61の後端面62に連絡している。
【0035】
受圧ロッド66は円柱状の金属製の部材であり、受圧ロッド66の先端面67(圧入部68よりも先端側の面)はダイヤフラム61の内周面64の内側に配置される。本実施の形態では、受圧ロッド66の先端面67は、軸線O方向において、筐体20(第2部22)の先端22aの位置よりも後端側に存在する。その結果、筐体20によって受圧ロッド66が燃焼ガスの熱影響を受け難くできるので、受圧ロッド66から検知素子41への熱伝導による検知素子41の温度上昇を抑制できる。よって、検知素子41の温度上昇に伴う検知精度の低下を抑制できる。
【0036】
受圧ロッド66の圧入部68は、ダイヤフラム61の拡内径部65に圧入される。圧入部68は、先端面67に隣接する円錐面状の部位であり、後端側から先端側へ向かって縮径する。ダイヤフラム61の拡内径部65に圧入部68が接合された受圧ロッド66は、筒内圧力に応じたダイヤフラム61の撓みの量に応じて軸線O方向に変位する。第2実施の形態における筒内圧センサ60は、第1実施の形態における筒内圧センサ10と同様の作用効果を実現できる。
【0037】
図3(b)に示すように筒内圧センサ70は、第2部22(筐体20)、ダイヤフラム71及び受圧ロッド76を備えている。受圧ロッド76の後端にはセンサ部40(
図1参照)が配置されている。ダイヤフラム71は、第2部22の先端22a側の内周面から径方向の内側へ突出する円環状の部位である。ダイヤフラム71は、ダイヤフラム71の後端面72から先端面73にかけて、中心に穴が形成されている。ダイヤフラム71の内周面74の一部に、自身の内径が先端側から後端側に向かって拡径する円錐面状の拡内径部75が形成されている。拡内径部75はダイヤフラム71の後端面72に連絡している。
【0038】
受圧ロッド76は円柱状の金属製の部材であり、受圧ロッド76の先端面77はダイヤフラム71の内周面74の内側に配置される。本実施の形態では、受圧ロッド76の先端面77は、軸線O方向において、筐体20(第2部22)の先端22aの位置と同じ位置に存在する。
【0039】
受圧ロッド76の圧入部78は、ダイヤフラム71の拡内径部75に圧入される。圧入部78は円錐面状の部位であり、後端側から先端側へ向かって縮径する。圧入部78の先端側に円筒部79が隣接する。円筒部79はダイヤフラム61の内周面74に対向する円筒状の面である。円筒部79は先端面77と圧入部78とを連絡する。ダイヤフラム71の拡内径部75に圧入部78が接合された受圧ロッド76は、筒内圧力に応じたダイヤフラム71の撓みの量に応じて軸線O方向に変位する。第3実施の形態における筒内圧センサ70によれば、第1実施の形態における筒内圧センサ10と同様の作用効果を実現できる。
【0040】
図3(c)に示すように筒内圧センサ80は、第2部22(筐体20)、ダイヤフラム81及び受圧ロッド86を備えている。受圧ロッド86の後端にはセンサ部40(
図1参照)が配置されている。ダイヤフラム81は、第2部22の先端22a側の内周面から径方向の内側へ突出する円環状の部位である。ダイヤフラム81は、ダイヤフラム81の後端面82から先端面83にかけて、中心に穴が形成されている。ダイヤフラム81の内周面に、自身の内径が先端側から後端側に向かって拡径する円錐面状の拡内径部84が設けられている。拡内径部84はダイヤフラム81の後端面82と先端面83とを連絡している。
【0041】
受圧ロッド86は円柱状の金属製の部材であり、受圧ロッド86の先端面87はダイヤフラム81の拡内径部84の内側に配置される。受圧ロッド86の先端面87は球冠状の曲面である。本実施の形態では、受圧ロッド86の先端(先端面87のうち最も先端側の位置)は、軸線O方向において、筐体20(第2部22)の先端22aの位置よりも先端側に存在する。
【0042】
受圧ロッド76の圧入部88は、ダイヤフラム81の拡内径部84に圧入される。圧入部88は球帯状の部位であり、後端側から先端側へ向かって縮径する。圧入部88の先端側に先端面87が隣接する。ダイヤフラム81の拡内径部84に圧入部88が接合された受圧ロッド86は、筒内圧力に応じたダイヤフラム71の撓みの量に応じて軸線O方向に変位する。第4実施の形態における筒内圧センサ80は、受圧ロッド86の先端面87と筐体20の先端面22aとの位置関係による効果以外の、第1実施の形態における筒内圧センサ10と同様の作用効果を実現できる。
【0043】
次に
図4及び
図5を参照して第5実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、受圧ロッド30,66,76,86の圧入部32,68,78,88が、ダイヤフラム23,61,71,81の内周面に圧入される場合について説明した。これに対し第5実施の形態では、受圧ロッド95と一体形成されたダイヤフラム97の圧入部98が、筐体91の内周面に圧入される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図4は第5実施の形態における筒内圧センサ90の軸線Oを含む先端側の断面図であり、
図5は
図4のVで示す部分を拡大して図示した筒内圧センサ90の部分拡大図である。
図4に示すように筒内圧センサ90は、筐体91、受圧ロッド95、ダイヤフラム97及びセンサ部40を備えている。
【0044】
筐体91は、耐熱性や耐ガス性のある金属材料(例えばステンレス鋼等)によって形成された円筒状の部材である。本実施の形態では、軸線O方向の後端側から先端側へ順に第1部21及び第2部92が接合され、筐体91が形成される。第2部92は、後端側の内周面にめねじが形成される円筒状の部材である。第2部92の内側にセンサ部40が配置される。第2部92の先端93側の内周面に縮内径部94が形成されている。縮内径部94は、内径が先端側から後端側に向かって縮径する円錐面状の部位である。
【0045】
受圧ロッド95は第2部92の内側に配置される円柱状の金属製(例えばステンレス鋼製)の部材である。受圧ロッド95の後端にセンサ部40が配置される。受圧ロッド95の先端面96の周囲に、軸線Oを中心とする円環状の膜であるダイヤフラム97が一体に形成されている。本実施の形態では、ダイヤフラム97は、例えば鍛造や切削などの手段により、受圧ロッド95と一体に形成されている。しかし、これに限られるものではなく、受圧ロッド95とダイヤフラム97とを別々に形成した後、溶接等によって受圧ロッド95とダイヤフラム97とを一体化することは当然可能である。
【0046】
ダイヤフラム97の周縁に、第2部92(筐体91)の縮内径部94に接触する圧入部98が設けられている。圧入部98の外径は、先端側から後端側に向かって縮径する。圧入部98は第2部92の縮内径部94に圧入される。圧入部98が縮内径部94に圧入され圧入部98が縮内径部94に接合されることにより、第2部92に対するダイヤフラム97の気密性を確保できる。受圧ロッド95の先端面96の位置は、軸線O方向において、筐体91の先端93よりも後端側に存在する。受圧ロッド95は、筒内圧力に応じたダイヤフラム97の撓みの量に応じて軸線O方向に変位する。
【0047】
図5に示すように、圧入部98が縮内径部94に圧入されることにより、圧入部98及び縮内径部94の少なくとも一方に塑性変形や弾性変形が生じる。本実施の形態では、圧入部98の軸線Oに対する角度θ1は縮内径部94の軸線Oに対する角度θ2よりも小さい。その結果、圧入部98のうちの後端側の部分を主に縮内径部94に密着させることができるので、圧入部98による気密性を向上できる。
【0048】
図4に戻って説明する。筒内圧センサ90は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、第2部92の先端側から第2部92の内側に受圧ロッド95を挿入し、ダイヤフラム97の圧入部98を第2部92の縮内径部94へ圧入する。これにより、受圧ロッド95及びダイヤフラム97は第2部92に保持される。
【0049】
次に、第2部92に後端側からセンサ部40を挿入した後、第2部22に後端側からボルト50を螺合し、ボルト50と受圧ロッド95との間にセンサ部40を配置する。次いで、第2部22に対してボルト50を回転し、センサ部40に軸線O方向の圧縮荷重を加える。
【0050】
端子部45及びボルト50にケーブル51を接続した後、ケーブル51を第1部21に挿入する。第1部21と第2部92とを溶接した後、第1部21の内部に、軟化したゴムや合成樹脂などの絶縁体(図示せず)を注入する。注入した絶縁体が硬化すると、防水性および防振性を確保した筒内圧センサ90が得られる。
【0051】
筒内圧センサ90は、第2部92の縮内径部94に圧入部98が接触したダイヤフラム97の撓みの量に応じて、受圧ロッド95が軸線O方向に変位する。そうすると、その変位に基づいて検知素子41に圧縮力が加わり、ピエゾ抵抗効果によって検知素子41の抵抗値が変化する。筒内圧センサ90の検知素子41の通電経路を定電流回路にすれば、筒内圧力に応じて通電経路の電圧値が変化する。必要な処理を行うことにより、筒内圧力を検知できる。
【0052】
このときに高温の燃焼ガスによってダイヤフラム97が熱膨張すると、径方向の外側へダイヤフラム97が伸び、その反力でダイヤフラム97は外周側が先端側(
図5下側)へ反り返ろうとする。このときのダイヤフラム97は受圧ロッド95に軸線O方向の後端側(
図5上側)への力を与え得る。この力は、筒内圧力に応じた受圧ロッド95の後端側への変位に相乗され、圧力の検知精度を低下させる原因となる。
【0053】
しかし、第2部92(筐体91)の縮内径部94に圧入されたダイヤフラム97の圧入部98は、縮内径部94に接触しているだけなので、ダイヤフラム97が第2部92に溶接によって接合される場合に比べ、ダイヤフラム97の圧入部98を筐体91が拘束し難くできる。その結果、筐体91の拘束によるダイヤフラム97の応力を小さくできるので、筒内圧力に応じたダイヤフラム97の撓みによる荷重以外の、ダイヤフラム97の熱膨張による荷重を検知素子41へ入力し難くできる。よって、圧力の検知精度を向上できる。
【0054】
さらに、ダイヤフラム97の圧入部98は縮内径部94における第2部92(筐体91)の内周面に接触しているので、ダイヤフラム97が熱膨張して圧入部98が径方向の外側へ伸びようとするときに、縮内径部94に対して軸線O方向の先端側(
図4下側)へ圧入部98を逃げ易くできる。その結果、筐体91の拘束によるダイヤフラム97の応力をさらに抑制できるので、圧力の検知精度をさらに向上できる。
【0055】
受圧ロッド95の先端面96は、軸線O方向において、筐体91の先端93の位置よりも後端側に存在する。その結果、筐体91によって受圧ロッド95が燃焼ガスの熱影響を受け難くできるので、受圧ロッド95から検知素子41への熱伝導による検知素子41の温度上昇を抑制できる。よって、検知素子41の温度上昇に伴う検知精度の低下を抑制できる。
【0056】
次に
図6を参照して第6実施の形態について説明する。なお、第1実施の形態および第5実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第6実施の形態における筒内圧センサ100の軸線Oを含む断面図である。
図6では筒内圧センサ100の後端側の図示が省略されている。
図6に示すように筒内圧センサ100は、筐体101、受圧ロッド95、ダイヤフラム97及びセンサ部40を備えている。
【0057】
筐体101は、耐熱性や耐ガス性のある金属材料(例えばステンレス鋼等)によって形成された円筒状の部材である。本実施の形態では、軸線O方向の後端側から先端側へ順に第1部21及び第2部92が接合され、筐体101が形成される。第2部92の先端93側の内周面に、径方向の内側へ向かって張り出す円環状の張出部102が設けられている。張出部102の内周面に、内径が先端側から後端側に向かって縮径する円錐面状の縮内径部103が形成されている。
【0058】
受圧ロッド95の先端面96の周囲に、軸線Oを中心とする円環状の膜であるダイヤフラム104が一体に形成されている。ダイヤフラム104の周縁に、張出部102(筐体101)の縮内径部103に接触する圧入部105が設けられている。圧入部105の外径は、先端側から後端側に向かって縮径する。圧入部105は縮内径部103に圧入される。第6実施の形態によれば、第5実施の形態における筒内圧センサ90と同様の作用効果を実現できる。さらに筒内圧センサ90によれば、張出部102の径方向の長さを調整することにより、ダイヤフラム104の面積を調整し、ダイヤフラム104の撓み量などを調整できる。
【0059】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、ダイヤフラム23,61,71,81や受圧ロッド30,66,76,86等の形状は一例であり、適宜設定できる。
【0060】
実施の形態では、ピエゾ抵抗効果を利用する圧電素子(半導体圧力センサ)を検知素子41として用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。検知素子41として、ピエゾ電気効果(圧電効果)を利用する圧電素子を用いることは当然可能である。また、受圧ロッド30,66,76,86,95からの荷重に応じて変化する電気特性(例えば電圧、抵抗値など)を有する種々の素子を採用可能である。このような素子として、例えば歪みゲージが挙げられる。
【0061】
実施の形態では、受圧ロッド30,66,76,86,95の変位をセンサ部40に直接伝達する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。受圧ロッド30,66,76,86,95とセンサ部40との間に別の部材を介在させて、受圧ロッド30,66,76,86,95の変位をセンサ部40に伝達することは当然可能である。
【0062】
実施の形態では説明を省略したが、筐体20,91,101やダイヤフラム23,61,71,81の先端、受圧ロッド30,66,76,86,95の先端に、燃焼ガスの熱を受ける受熱部材を配置することは当然可能である。受熱部材を配置することにより筐体20,91,101、ダイヤフラム23,61,71,81、ダイヤフラム97,104の熱変形量を小さくできるので、その分だけさらに圧力の検知精度を向上できる。
【0063】
第1実施形態から第4実施形態では、ダイヤフラム23,61,71,81の先端面25,63,73,83の位置が、軸線O方向において、筐体20の先端22aと同じ位置にある場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ダイヤフラム23,61,71,81の先端面25,63,73,83が、筐体20の先端22aよりも後端側に位置するようにダイヤフラム23,61,71,81を設けることは当然可能である。このようにすることで、筐体20の先端22a側の一部が、全周に亘りダイヤフラム23,61,71,81よりも先端側に突出するので、筐体20によってダイヤフラム23,61,71,81を保護できる。
【0064】
なお、各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第2実施形態における筒内圧センサ60の受圧ロッド66の先端面67の軸線O方向における位置を、第1実施形態のように筐体20の先端22aと同じ位置にすることは当然可能である。同様に、第4実施形態における筒内圧センサ80の受圧ロッド86の先端面87の最も先端の軸線O方向における位置を、第1実施形態のように筐体20の先端22aと同じ位置にすることや、第2実施形態のように筐体20の先端22aよりも後端側にすることは当然可能である。