(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。
【0015】
図1に示すように、通信システムは、複数の空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)10,20を備えている。HAPS10,20は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域40に図中ハッチング領域で示すような3次元セル(3次元エリア)41,42を形成する。HAPS10,20は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)50に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体(例えば、ソーラープレーン、飛行船)に、中継通信局が搭載されたものである。
【0016】
HAPS10,20の位置する空域50は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域50は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。図中のHrsl及びHrsuはそれぞれ、地面(GL)を基準にしたHAPS10,20の位置する空域50の下端及び上端の相対的な高度を示している。
【0017】
セル形成目標空域40は、本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域である。セル形成目標空域40は、HAPS10,20が位置する空域50と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB)90がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。図中のHcl及びHcuはそれぞれ、地面(GL)を基準にしたセル形成目標空域40の下端及び上端の相対的な高度を示している。
【0018】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域40は、海、川又は湖の上空であってもよい。
【0019】
HAPS10,20の中継通信局はそれぞれ、移動局である端末装置と無線通信するためのビーム100,200を地面に向けて形成する。端末装置は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローン60に組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機65の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域40においてビーム100,200が通過する領域が3次元セル41,42である。セル形成目標空域40において互いに隣り合う複数のビーム100,200は部分的に重なってもよい。
【0020】
HAPS10,20の中継通信局はそれぞれ、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局、又は、地上(又は海上)側の基地局に接続された中継局としてのフィーダ局(リピーター親機)70と無線通信するリピーター子機である。HAPS10,20の中継通信局はそれぞれ、地上又は海上に設置されたフィーダ局70を介して、移動通信網80のコアネットワークに接続されている。HAPS10,20とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。
【0021】
HAPS10,20はそれぞれ、内部に組み込まれたコンピュータ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS10,20はそれぞれ、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理を自律制御してもよい。
【0022】
また、HAPS10,20それぞれの浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理は、移動通信網80の通信センター等に設けられた管理装置としての管理装置(「遠隔制御装置」ともいう。)85によって制御できるようにしてもよい。管理装置85は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。この場合、HAPS10,20は、管理装置85からの制御情報を受信したり管理装置85に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、管理装置85から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。また、HAPS10,20はそれぞれ、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局での処理に関する情報、HAPS10,20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、管理装置85等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS10,20の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS10,20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS10,20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0023】
セル形成目標空域40では、HAPS10,20のビーム100,200が通過していない領域(3次元セル41,42が形成されない領域)が発生するおそれがある。この領域を補完するため、
図1の構成例のように、地上側又は海上側から上方に向かって放射状のビーム300を形成して3次元セル43を形成してATG(Air To Ground)接続を行う基地局(以下「ATG局」という。)30を備えてもよい。
【0024】
また、ATG局30を用いずに、HAPS10,20の位置やビーム100,200の発散角(ビーム幅)等を調整することにより、HAPS10,20の中継通信局が、セル形成目標空域40に3次元セルがくまなく形成されるように、セル形成目標空域40の上端面の全体をカバーするビーム100,200を形成してもよい。
【0025】
なお、前記HAPS10,20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置する端末装置との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0026】
図2は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS10の一例を示す斜視図である。
図2のHAPS10は、ソーラープレーンタイプのHAPSであり、長手方向の両端部側が上方に沿った主翼部101と、主翼部101の短手方向の一端縁部にバス動力系の推進装置としての複数のモータ駆動のプロペラ103とを備える。主翼部101の上面には、太陽光発電機能を有する太陽光発電部としての太陽光発電パネル(以下「ソーラーパネル」という。)102が設けられている。また、主翼部101の下面の長手方向の2箇所には、板状の連結部104を介して、ミッション機器が収容される複数の機器収容部としてのポッド105が連結されている。各ポッド105の内部には、ミッション機器としての中継通信局110と、バッテリー106とが収容されている。また、各ポッド105の下面側には離発着時に使用される車輪107が設けられている。ソーラーパネル102で発電された電力はバッテリー106に蓄電され、バッテリー106から供給される電力により、プロペラ103のモータが回転駆動され、中継通信局110による無線中継処理が実行される。
【0027】
ソーラープレーンタイプのHAPS10は、例えば所定の目標飛行ルートに基づいて円形状に旋回飛行を行ったり「D」の字飛行を行ったり「8」の字飛行を行ったりすることにより揚力で浮揚し、所定の高度で水平方向の所定の範囲に滞在するように浮揚することができる。なお、ソーラープレーンタイプのHAPS10は、プロペラ103が回転駆動されていないときは、グライダーのように飛ぶこともできる。例えば、昼間などのソーラーパネル102の発電によってバッテリー106の電力が余っているときに高い位置に上昇し、夜間などのソーラーパネル102で発電できないときにバッテリー106からモータへの給電を停止してグライダーのように飛ぶことができる。
【0028】
また、HAPS10は、他のHAPSや人工衛星と光通信に用いられる通信部としての3次元対応指向性の光アンテナ装置130を備えている。なお、
図2の例では主翼部101の長手方向の両端部に光アンテナ装置130を配置しているが、HAPS10の他の箇所に光アンテナ装置130を配置してもよい。なお、他のHAPSや人工衛星と光通信に用いられる通信部は、このような光通信を行うものに限らず、マイクロ波などの電波による無線通信などの他の方式による無線通信であってもよい。
【0029】
図3は、実施形態の通信システムに用いられるHAPS20の他の例を示す斜視図である。
図3のHAPS20は、無人飛行船タイプのHAPSであり、ペイロードが大きいため大容量のバッテリーを搭載することができる。HAPS20は、浮力で浮揚するためのヘリウムガス等の気体が充填された飛行船本体201と、バス動力系の推進装置としてのモータ駆動のプロペラ202と、ミッション機器が収容される機器収容部203とを備える。機器収容部203の内部には、中継通信局210とバッテリー204とが収容されている。バッテリー204から供給される電力により、プロペラ202のモータが回転駆動され、中継通信局210による無線中継処理が実行される。
【0030】
なお、飛行船本体201の上面に、太陽光発電機能を有するソーラーパネルを設け、ソーラーパネルで発電された電力をバッテリー204に蓄電するようにしてもよい。
【0031】
また、無人飛行船タイプのHAPS20も、他のHAPSや人工衛星と光通信に用いられる通信部としての3次元対応指向性の光アンテナ装置230を備えている。なお、
図3の例では飛行船本体201の上面部及び機器収容部203の下面部に光アンテナ装置230を配置しているが、HAPS20の他の部分に光アンテナ装置230を配置してもよい。なお、他のHAPSや人工衛星と光通信に用いられる通信部は、このような光通信を行うものに限らず、マイクロ波などの電波による無線通信などの他の方式による無線通信を行うものであってもよい。
【0032】
図4は、実施形態の複数のHAPS10,20で上空に形成される無線ネットワークの一例を示す説明図である。
複数のHAPS10,20は、上空で互いに光通信によるHAPS間通信ができるように構成され、3次元化したネットワークを広域にわたって安定に実現することができるロバスト性に優れた無線通信ネットワークを形成する。この無線通信ネットワークは、各種環境や各種情報に応じたダイナミックルーティングによるアドホックネットワークとして機能することもできる。前記無線通信ネットワークは、2次元又は3次元の各種トポロジーを有するように形成することができ、例えば、
図4に示すようにメッシュ型の無線通信ネットワークであってもよい。
【0033】
図5は、他の実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
なお、
図5において、前述の
図1と共通する部分については同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0034】
図5の実施形態では、HAPS10と移動通信網80のコアネットワークとの間の通信を、フィーダ局70及び低軌道の人工衛星72を介して行っている。この場合、人工衛星72とフィーダ局70との間の通信は、マイクロ波などの電波による無線通信で行ってもよいし、レーザ光などを用いた光通信で行ってもよい。また、HAPS10と人工衛星72との間の通信については、レーザ光などを用いた光通信で行っている。
【0035】
図6は、実施形態のHAPS10,20の中継通信局110,210の一構成例を示すブロック図である。
図5の中継通信局110,210はリピータータイプの中継通信局の例である。中継通信局110,210はそれぞれ、3Dセル形成アンテナ部111と、送受信部112と、フィード用アンテナ部113と、送受信部114と、リピーター部115と、監視制御部116と、電源部117とを備える。更に、中継通信局110,210はそれぞれ、HAPS間通信などに用いる光通信部125と、ビーム制御部126とを備える。
【0036】
3Dセル形成アンテナ部111は、セル形成目標空域40に向けて放射状のビーム100,200を形成するアンテナを有し、端末装置と通信可能な3次元セル41,42を形成する。送受信部112は、3Dセル形成アンテナ部111とともに第一無線通信部を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、3Dセル形成アンテナ部111を介して、3次元セル41,42に在圏する端末装置に無線信号を送信したり端末装置から無線信号を受信したりする。
【0037】
フィード用アンテナ部113は、地上又は海上のフィーダ局70と無線通信するための指向性アンテナを有する。送受信部114は、フィード用アンテナ部113とともに第二無線通信部を構成し、送受共用器(DUP:DUPlexer)や増幅器などを有し、フィード用アンテナ部113を介して、フィーダ局70に無線信号を送信したりフィーダ局70から無線信号を受信したりする。
【0038】
リピーター部115は、端末装置との間で送受信される送受信部112の信号と、フィーダ局70との間で送受信される送受信部114の信号とを中継する。リピーター部115は、所定周波数の中継対象信号を所定のレベルまで増幅するアンプ機能を有する。リピーター部115は、中継対象信号の周波数を変換する周波数変換機能を有してもよい。
【0039】
監視制御部116は、例えばCPU及びメモリ等で構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、HAPS10,20内の各部の動作処理状況を監視したり各部を制御したりする。特に、監視制御部116は、制御プログラムを実行することにより、プロペラ103,202を駆動するモータ駆動部141を制御して、HAPS10,20を目標位置へ移動させ、また、目標位置近辺に留まるように制御する。
【0040】
電源部117は、バッテリー106,204から出力された電力をHAPS10,20内の各部に供給する。電源部117は、太陽光発電パネル等で発電した電力や外部から給電された電力をバッテリー106,204に蓄電させる機能を有してもよい。
【0041】
光通信部125は、レーザ光等の光通信媒体を介して周辺の他のHAPS10,20や人工衛星72と通信する。この通信により、ドローン60等の端末装置と移動通信網80との間の無線通信を動的に中継するダイナミックルーティングが可能になるとともに、いずれかのHAPSが故障したときに他のHAPSがバックアップして無線中継することにより移動通信システムのロバスト性を高めることができる。
【0042】
ビーム制御部126は、HAPS間通信や人工衛星72との通信に用いるレーザ光などのビームの方向及び強度を制御したり、周辺の他のHAPS(中継通信局)との間の相対的な位置の変化に応じてレーザ光等の光ビームによる通信を行う他のHAPS(中継通信局)を切り替えるように制御したりする。この制御は、例えば、HAPS自身の位置及び姿勢、周辺のHAPSの位置などに基づいて行ってもよい。HAPS自身の位置及び姿勢の情報は、そのHAPSに組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサなどの出力に基づいて取得し、周辺のHAPSの位置の情報は、移動通信網80に設けた管理装置85、又は、HAPS管理サーバやアプリケーションサーバ等のサーバ86から取得してもよい。
【0043】
図7は、実施形態のHAPS10,20の中継通信局110,210の他の構成例を示すブロック図である。
図7の中継通信局110,210は基地局タイプの中継通信局の例である。
なお、
図7において、
図6と同様な構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図7の中継通信局110,210はそれぞれ、モデム部118を更に備え、リピーター部115の代わりに基地局処理部119を備える。更に、中継通信局110,210はそれぞれ、光通信部125とビーム制御部126とを備える。
【0044】
モデム部118は、例えば、フィーダ局70からフィード用アンテナ部113及び送受信部114を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、基地局処理部119側に出力するデータ信号を生成する。また、モデム部118は、基地局処理部119側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、フィード用アンテナ部113及び送受信部114を介してフィーダ局70に送信する送信信号を生成する。
【0045】
基地局処理部119は、例えば、LTE/LTE−Advancedの標準規格に準拠した方式に基づいてベースバンド処理を行うe−NodeBとしての機能を有する。基地局処理部119は、第5世代等の将来の移動通信の標準規格に準拠する方式で処理するものであってもよい。
【0046】
基地局処理部119は、例えば、3次元セル41,42に在圏する端末装置から3Dセル形成アンテナ部111及び送受信部112を介して受信した受信信号に対して復調処理及び復号処理を実行し、モデム部118側に出力するデータ信号を生成する。また、基地局処理部119は、モデム部118側から受けたデータ信号に対して符号化処理及び変調処理を実行し、3Dセル形成アンテナ部111及び送受信部112を介して3次元セル41,42の端末装置に送信する送信信号を生成する。
【0047】
図8は、実施形態のHAPS10,20の中継通信局110,210の更に他の構成例を示すブロック図である。
図8の中継通信局110,210はエッジコンピューティング機能を有する高機能の基地局タイプの中継通信局の例である。なお、
図8において、
図6及び
図7と同様な構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図8の中継通信局110,210はそれぞれ、
図7の構成要素に加えてエッジコンピューティング部120を更に備える。
【0048】
エッジコンピューティング部120は、例えば小型のコンピュータで構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、HAPS10,20の中継通信局110,210における無線中継などに関する各種の情報処理を実行することができる。
【0049】
例えば、エッジコンピューティング部120は、3次元セル41,42に在圏する端末装置から受信したデータ信号に基づいて、そのデータ信号の送信先を判定し、その判定結果に基づいて通信の中継先を切り換える処理を実行する。より具体的には、基地局処理部119から出力されたデータ信号の送信先が自身の3次元セル41,42に在圏する端末装置の場合は、そのデータ信号をモデム部118に渡さずに、基地局処理部119に戻して自身の3次元セル41,42に在圏する送信先の端末装置に送信するようにする。一方、基地局処理部119から出力されたデータ信号の送信先が自身の3次元セル41,42以外の他のセルに在圏する端末装置の場合は、そのデータ信号をモデム部118に渡してフィーダ局70に送信し、移動通信網80を介して送信先の他のセルに在圏する送信先の端末装置に送信するようにする。
【0050】
エッジコンピューティング部120は、3次元セル41,42に在圏する多数の端末装置から受信した情報を分析する処理を実行してもよい。この分析結果は3次元セル41,42に在圏する多数の端末装置に送信したり、移動通信網80に設けた管理装置85、又は、管理装置としてのHAPS管理サーバやアプリケーションサーバ(アプリサーバ)等のサーバ86などに送信したりしてもよい。
【0051】
中継通信局110、210を介した端末装置との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局110、210を介した端末装置との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi−Input and Multi−Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つの端末装置と同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU−MIMO(Single−User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つの端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU−MIMO(Multi−User MIMO)技術であってもよい。
【0052】
なお、以下の実施形態では、端末装置61と無線通信する通信中継装置が、ソーラープレーンタイプのHAPS10及び無人飛行船タイプのHAPS20のいずれの一方の場合について図示して説明するが、通信中継装置はHAPS10,20のいずれであってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS10,20以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0053】
また、HAPS10,20とフィーダ局としてのゲートウェイ局(以下「GW局」と略す。)70を介した基地局90との間のリンクを「フィーダリンク」といい、HAPS10と端末装置61の間のリンクを「サービスリンク」という。特に、HAPS10,20とGW局70との間の区間を「フィーダリンクの無線区間」という。また、GW局70からHAPS10,20を経由して端末装置61に向かう通信のダウンリンクを「フォワードリンク」といい、端末装置61からHAPS10,20を経由してGW局70に向かう通信のアップリンクを「リバースリンク」ともいう。
【0054】
図9は実施形態に係るHAPS20のセル構成の一例を示す説明図である。また、
図10(a)は比較例に係るHAPSの旋回によるセルのフットプリントの移動の一例を示す説明図であり、
図10(b)は実施形態に係るHAPSの旋回によるセルのフットプリントの移動の一例を示す説明図である。
図9,10において、通信中継装置は無人飛行船タイプのHAPS20であるが、ソーラープレーンタイプのHAPS10であってもよい。また、図示の例において、HAPS20の高度が約20kmの成層圏に位置し、HAPS20が複数のセル200C(1)〜200C(7)を形成し、その複数セル(7セル)構成のサービスエリア20Aの直径は100〜200kmであるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
図9において、成層圏に位置するHAPS20を用いた地上(又は水上)の端末装置61と直接通信する通信サービスは、サービスエリアの拡大、災害時の通信手段として非常に魅力的である。HAPS20の通信回線はGW局70とHAPS20との間を結ぶフィーダリンクと、HAPS20と端末装置61との間を結ぶサービスリンクから成る。サービスリンクにおいて十分な通信容量を確保するためには、1つのHAPSで複数のセルを構成する複数セル構成が前提となる。しかし、HAPS20は成層圏などの空中での気流や気圧などの影響により姿勢(特に旋回)や位置が変動する。そのため、
図10(a)に示すように複数セル構成では地上(又は水上)に形成されるセル200C(1)〜200C(7)のフットプリント200F(1)〜200F(7)が移動することでサービスエリア内のセル境界部200H(図中の斜線部)に位置する多数の端末装置61が一斉にハンドオーバ(HO)することが想定され、HOによる制御信号の増加やHO失敗による通信断が発生するおそれがある。
【0056】
そこで、本実施形態では、上記HOによる制御信号の増加やHO失敗による通信断に対する対策として、
図10(b)に示すようにフットプリント200F(1)〜200F(7)が移動しないように、サービスリンクアンテナを構成するとともに、HAPS20の位置及び姿勢(例えば、所定方位に対する)の少なくとも一方の情報に基づいてサービスリンクアンテナに対して送受信される信号についてデジタル信号の振幅及び位相を制御するデジタルビームフォーミング(DBF)制御(以下、「フットプリント固定制御」ともいう。)を適用している。
【0057】
HAPS20自身の位置及び姿勢の情報は、そのHAPS20に組み込んだGPS受信装置、ジャイロセンサ、加速度センサ、慣性センサなどの出力に基づいて取得してもよい。例えば、HAPS20自身の位置及び姿勢の情報は、HAPS20に組み込んだGNSS(Global Navigation Satellite System)システムと慣性測定ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせたGNSS慣性航法システム(GNSS/INS)の出力に基づいて取得してもよい。
【0058】
図11は、実施形態に係るHAPSの姿勢変化を示す角度の定義を示す説明図である。
図11に示すように、HAPS20の前後方向(前方の進行方向)に沿ったロール軸Yを中心とした回転角度がロール角θrであり、HAPS20の左右方向に沿ったピッチ軸Xを中心とした回転角度がピッチ角θpであり、HAPS20の上下方向に沿ったヨー軸Zを中心とした回転角度がヨー角θyである。本実施形態では、HAPS20等の通信中継装置の機体は上空において三次元的な動き(例えば経度、緯度及び高度の変化、並びに、ロール軸、ピッチ軸及びヨー軸を中心にした回転)を示すので、例えばロール角θr、ピッチ角θp及びヨー角θyを考慮して三次元的な動きに対応するようにDBF制御を適用してもよい。特に、本実施形態では、HAPS20のヨーイング(機体の上下方向の軸を中心とした回転運動)によるフットプリントの移動に耐性のあるサービスリンクアンテナのアンテナ構成及びDBF制御を適用している。
【0059】
図12(a)〜(c)はそれぞれHAPSの旋回パターンの例を示す説明図である。
図12に示すようにソーラープレーンタイプのHAPS10が飛行している高度の空域(例えば成層圏)での風速により飛行ルートの形状を変更する場合がある。例えば、
図12(a)のほぼ無風時には、風Wの方向にかかわらずHAPS10の飛行ルートとして円形の飛行ルートに決定する。また、
図12(b)の穏風時には、風が吹いている方向に向かって(風Wに逆って)飛行している時間帯がなるべく短くなるように、HAPS10の飛行ルートとして、円形の一部円弧の部分が直線になった「D」字形の飛行ルートに決定する。また、
図12(c)の強風時には、風が吹いている方向に向かって(風Wに逆って)飛行している時間帯がより短くなるように、HAPS10の飛行ルートとして、「8」の字形の飛行ルートに決定する。このように上空の風Wの強さに応じて飛行ルート10Fの形状を変更した場合、本実施形態では、その変更後の形状の飛行ルート10FにおけるHAPSの旋回パターンに対応するようにDBF制御を適用してもよい。特に、
図12(a)〜(c)に示すようにHAPSが旋回パターンで飛行する場合、ヨー軸Zの周りに無限回転し(ヨー角が360度変化)、ロール角及びピッチ角については±数度程度(例えば、絶対値で10度以下)を想定してDBF制御を適用してもよい。
【0060】
図13(a)及び(b)は実施形態に係るフットプリント固定制御の一例を示す説明図である。
図13(a)はHAP
S20の旋回前の図であり、
図13(b)はHAP
S20が図中R方向に回転した旋回後の図である。HAPS20は、サービスリンクアンテナ(例えば、前述の3セル形成アンテナ部111)として、端末装置と間のサービスリンクの無線通信を行うセル200Cを形成する複数のアンテナ素子401を有するアレイアンテナ400を備える。更に、HAPS20は、デジタルビームフォーミング(DBF)制御部500と、GPSアンテナを有するGNSS/INS600とを備える。DBF制御部500は、HAPS20の位置及び姿勢の情報と、目標とするセルの位置情報とに基づいて、サービスリンクアンテナ400の各アンテナ素子401に対して送受信される信号についてデジタル信号の振幅及び位相を制御する。これにより、アレイアンテナ400の主ビーム701及びサイドローブ702からなるアンテナ指向ビーム(以下、単に「ビーム」ともいう。)700の方向が目標のフットプリント形成位置に向かうように制御され、HAPS20がヨー軸Zを中心にして回転(旋回)しても、アレイアンテナ400で形成されるセル200Cのフットプリント200Fの位置を固定することができる。なお、
図13(b)中のビーム700’は、DBF制御を行わない場合のビームの方向である。
【0061】
図14(a)は他の実施形態に係るフットプリント固定制御に用いられるシリンダー型アレイアンテナの一部分機能を構成するサーキュラーアレイアンテナ410の一例を上方から見た説明図である。
図14(b)は同シリンダー型アレイアンテナの他の部分機能を構成するリニアアレイアンテナ420の一例を側方から見た説明図である。HAPS20は上下昇降、横移動、回転等様々な動きが考えられるため、それぞれの動きに対応するようにサービスリンクアンテナの指向性ビームの方向を制御するDBF制御が必要である。特にHAPS20の動きのうちヨー軸(Z軸)を中心とした旋回であるヨーイングではHAPS20が360度回転するためフットプリント固定のためのビーム方向制御が必要不可欠である。
【0062】
そこで、本実施形態では、HAPS20の機体の動きをヨー回転(旋回)とそれ以外(ロール回転、ピッチ回転や移動)に分解し、ヨー回転(旋回)として360度無限回転を考慮したサーキュラーアレイアンテナ410(
図14(a)参照)と、ロール回転及びピッチ回転として±数度を考慮したリニアアレイアンテナ420(
図14(b)参照)とを組み合わせてサービスリンクアンテナを構成している。
【0063】
サーキュラーアレイアンテナ410は、円周形状に沿って複数のアンテナ素子411を分布させるように配置したアレイアンテナである。サーキュラーアレイアンテナ410の各アンテナ素子411に対してDBF制御を適用することにより、図中のR方向にHAPS20の機体がヨー回転(旋回)した場合に、セルのフットプリント200Fの位置を固定することができる。サーキュラーアレイアンテナ410は、指向性ビームが地上に向かう方向に対して水平方向に向くため、カバレッジが広い場合でも対応可能である。
【0064】
リニアアレイアンテナ420は、地上と垂直に線状に複数のアンテナ素子421を分布させるように配置したアレイアンテナである。リニアアレイアンテナ420の各アンテナ素子421に対してDBF制御を適用することにより、図中のR方向にHAPS20の機体がヨー回転(旋回)以外の動き(ロール回転、ピッチ回転、移動など)をした場合に、セルのフットプリント200Fの位置を固定することができる。
【0065】
図15は、サーキュラーアレイアンテナ410とリニアアレイアンテナ420とを組み合わせて構成したシリンダー型のアレイアンテナ430の一構成例を示す斜視図である。シリンダー型のアレイアンテナ430は、特にヨーイングによるフットプリントの移動に耐性のあるアンテナ構成である。このアレイアンテナ430では、水平方向にはどの方向から見てもアンテナの形状が変わらないようにアンテナ素子431が円形に配置 (サーキュラーアレイ)され、垂直方向には縦方向のビーム方向制御に対応するためアンテナ素子431が線形配置されている。なお、HAPS20の真下方向にセルを作る場合は別途平面アレイアンテナ等のアンテナを設けてもよい。
【0066】
シリンダー型のアレイアンテナ430では、水平方向の各アンテナ素子としてアクティブ素子を用いることで、ビーム方向制御のための位相制御のみならずサイドローブ低減のための電力制御 (振幅制御)も可能となる。また、シリンダー型のアレイアンテナ430において、垂直方向に対しては重量、消費電力の増加を抑えるため各アンテナ素子431に固定位相を与えて下向きの固定チルトを適用してもよい。また、水平方向の各アンテナ素子として水平方向と同様にアクティブ素子を用いてよく、この場合は、上下昇降や横移動に対応した垂直ビーム方向制御及びサイドローブ低減も可能である。
【0067】
図16は、シリンダー型のアレイアンテナ430を用いたフットプリント固定制御における水平角度(φ)及び垂直角度(θ)の説明図である。
図17はシリンダー型のアレイアンテナ430における水平角度(φ)及び垂直角度(θ)それぞれに対するDBF制御を行うアンテナ素子の説明図である。
図18は、シリンダー型のアレイアンテナ430のDBF制御で形成される3次元的な指向性ビームの一例を示す説明図である。シリンダー型のアレイアンテナ430を用いる場合、目標とする位置のセルのフットプリント200Fの中心位置の方向に対して、HAPS20のアンテナ430から見た水平角度(φ)及び垂直角度(θ)を求める(
図16参照)。水平角度(φ)は、例えば、アレイアンテナ430から目標のフットプリント200Fの中心に向かう目標ビームベクトル200Vの水平面(図中のX−Y面)における投影ベクトルのX軸に対する角度である。垂直角度(θ)は、目標ビームベクトル200VとHAPS20の上下方向とを含む垂直面における0の水平面に対する角度である。目標フットプリント200に対する指向性ビームの水平角度(φ)についてのDBF制御(位相制御)は
図17中の横方向に並んだ横方向アンテナ素子群432に対して行う。一方、目標フットプリント200に対する指向性ビームの垂直角度(θ)についてのDBF制御(位相制御)は
図17中の縦方向に並んだ縦方向アンテナ素子群433に対して行う。このように横方向アンテナ素子群432及び縦方向アンテナ素子群433に対してDBF制御(位相制御)を互いに独立に行うことにより、
図18に示すように所定の目標ビームベクトル200Vの方向に主ビーム701を有する指向性ビーム700が形成される。
【0068】
次に、本実施形態のHAPS20の複数セル構成におけるセル間干渉の低減について説明する。
図19は、比較例に係る地上基地局ネットワークシステムにおけるセル干渉の説明図である。
図20は、実施形態に係るHAPS20を用いたシステムにおけるセル干渉の説明図である。
図19の地上基地局ネットワークシステムにおいて、セル90A(1),90A(2)が互いに隣接する基地局90(1),90(2)のうち、一方の基地局90(1)から自局のセルの端部に位置する端末装置61に対して希望信号Ptが送信され、他方の基地局90(2)から送信された信号Ptが干渉信号として端末装置61に到達する。ここで、基地局90(1),90(2)それぞれのアンテナ利得をG1,G2とし、基地局90(1),90(2)それぞれから端末装置61までの伝搬路における伝搬ロスをPL1,PL2とすると、端末装置61で受信される希望信号はPt+G1−PL1、干渉信号はPt+G2−PL2、信号対干渉電力比(SIR:Signal to Interference power Ratio)はG1−G2+(PL2−PL1)となる。従って、PL2>>PL1であれば、十分に高いSIRが得られる。
【0069】
一方、
図20のHAPS20を用いたシステムでは、同一のHAPS20の通信中継局のセル200C(1)のアンテナ及びセル200C(2)のアンテナから端末装置61までの伝搬路における伝搬ロスPL1,PL2がほぼ同じ(PL1=PL2)であるため、端末装置61における希望信号のSIRはG1−G2となる。そのため、高いSIRを確保するには十分なアンテナ利得差(G1−G2)が必要になる。従って、HAPS20を用いたシステムにおいてセル間干渉を抑えるために十分なアンテナ利得差(G1−G2)を確保するには、アレイアンテナの各指向性ビーム700におけるサイドローブを低減する必要がある。
【0070】
以下の実施形態は、HAPS10,20の機体の回転角度に応じたビーム方向制御とセル間干渉を抑えるためのサイドローブ低減を同時に実現するため、所望のビーム指向方向に応じてアレイアンテナで送受信される送受信信号(デジタル信号)の振幅と位相を連続的に制御するDBF制御の例である。所望のビーム方向に対して任意の波形のビームパターンを得るための振幅と位相は解析的に求めることが可能であるが、角度毎に行列演算が必要となり消費電力の増加が懸念されるため、以下のいくつかの実施形態では演算量を削減して消費電力の増加を抑制できるDBF制御の例を示す。
【0071】
図21は、実施形態に係るリニアアレイアンテナ420を用いた垂直方向のDBF制御の一例を示す説明図である。
図21において、リニアアレイアンテナ420はN個(n=0〜N−1)のアンテナ素子421が所定の間隔dで線状に配置されている。図中のθ
0は、所望のビーム指向方向であり、リニアアレイアンテナ420のアンテナ素子並び方向に垂直な法線方向からの下向きの傾き角度がプラスの角度である。ビーム方向制御及びサイドローブ低減には、従来のビームステアリング技術やサイドローブ低減手法(Gaussian、Sinc、Taylor等のウェイトを用いた手法)が適用可能である。例えば、n番目のアンテナ素子421に対する送受信信号(デジタル信号)に適用する振幅及び位相の重み付け(ウェイト)w(n)を次式(1)のように定義する。
【数1】
【0072】
そして、上記ウェイトw(n)の振幅として、例えばGaussianを適用した次式(2)のA(n)を用いることにより、指向性ビームのビーム幅やサイドローブを低減することができる。また、上記ウェイトw(n)の位相として次式(3)のB(n)を用いることにより、リニアアレイアンテナ420指向性ビームの主ビームの方向を所望のビーム指向方向θ
0に制御することができる。なお、式(2)中のσは半値幅を決定する変数であり、式(3)中のλは送受信される電波の波長である。
【数2】
【数3】
【0073】
図22は、実施形態に係るサーキュラーアレイアンテナ410を用いた水平方向のDBF制御の一例を示す説明図である。
図22の例は、サーキュラアレーアンテナ410を用いた水平方向(φ)のビーム方向制御及びサイドローブ低減を実現することができ、所望のビームパターンに最も近い特性を得られる最適制御型のDBF制御の例である。
【0074】
図22において、サーキュラーアレイアンテナ410は、円周形状に沿って所定の角度間隔で複数のアンテナ素子411を分布させるように配置したサーキュラー型のアレイアンテナである。サーキュラーアレイアンテナ410は、水平方向のどの方向から見ても形状が変わらないアレイアンテナであり、HAPS10,20の旋回のみを考慮して水平面のビームパターンを制御する場合に適する。ここで、アンテナ素子411の全素子数をN、素子番号をn(0,・・・,N−1)、サーキュラーアレイアンテナ410の半径をr、X軸方向を基準(0度)として反時計回りをφの正方向とする。また、水平ステアリング角をφ’と定義した。φnをn番目の素子の角度とする。
【0075】
[複素振幅行列]
各アンテナ素子411(n)が任意の角度φ
mの方向に送受信する信号の複素振幅行列をFとすると、そのm行n列目の要素f
mnは、次式(4)のように表せる。ただし、各アンテナ素子411に対する振幅(アンテナパターン)をg(φ)とする。φ=0の方向はアレイアンテナの正面方向である。
【数4】
【0076】
[ウェイト計算方法]
また、ステアリング角φ’のときの所望のビームパターンをa
φ’とすると、所望のビームパターンを達成する各アンテナ素子411のウェイトwは、行列形式を用いて次式(5)のように表せる。ここで、Fは正則行列とは限らないので、FのMoore−Penrose一般逆行列であるF+を使用している。
【数5】
【0077】
図23は、
図22のサーキュラーアレイアンテナ410のビームパターンの計算機シミュレーション結果の一例を示すグラフである。表1に計算条件を示す。計算ではアンテナ素子411の素子数N=16、半径r=0.118[m]のサーキュラーアレイアンテナとし、周波数fcを2[GHz]、素子間隔を0.5λとした。
【表1】
【0078】
図23は、計算機シミュレーションの一例として、ステアリンク角φ’を0度,50度,−120度として計算したサーキュラーアレイ410の水平面内の指向性ビームパターンC1,C2,C3を示す。図中の点線はステアリンク角φ’=0度における所望のビームパターンA(φ)を示す。ここでは一例として、A(φ)のビーム幅を35度、サイドローブレベルを30[dBc]に設定した。
図23から、各ステアリング角φ’で同一形状のビームが形成できており、所望のビーム幅と25[dBc]以上のサイドローブレベルを実現できていることがわかる。
【0079】
図24は、
図22のサーキュラーアレイアンテナ410においてステアリング角を連続的に変化させた場合のメインビーム利得及び最大サイドローブレベルの計算機シミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図24からステアリング角φ’に依らず、常に約11[dBi]のメインビーム利得と25[dBc]以上のサイドローブレベルが確保できていることがわかる。
【0080】
以上、
図22〜
図24の実施形態によれば、サーキュラーアレイアンテナ410のビームをどの方向に向けても、その半値幅、利得、サイドローブレベルを一定に保つように所望ビームを形成できる。
【0081】
なお、アレイアンテナのウェイトは複素数形式(振幅と位相)で表示されるため、そのウェイトを毎回逆行列から計算していては計算量が多く、電力の消費も激しい。そこで、予め複数のステアリング角φについて上記逆行列を用いてウェイトを正確に計算し、そのウェイトとステアリング角φとの関係を近似した近似式を作成し、その近似式の情報をメモリ等の記憶部に保持させておいてもよい。そして、HAPS10,20の機体の位置及び姿勢(向きを含む)をGNSS/INS等の情報取得手段で検知し、その検知結果の値に基づいて、サービスリンクのビーム(3次元セル)を形成する方向の目標のステアリング角(指向性ビームを形成する角度)φを決定し、その目標ステアリング角φを元に上記予め作成して保持しておいた近似式からウェイトの振幅及び位相の値を計算してもよい。このように記憶部に保持した近似式を用いてウェイトの振幅及び位相の値を計算することにより、計算量削減による電力消費の低減を図ることができる。
【0082】
例えば、φをステアリング角(ビームを形成する方向)として、ウェイトの振幅Amp(φ)及び位相Phase(φ)それぞれを、次式(6)及び(7)で近似しておき、その近似式の係数a
1〜a
6,b
1〜b
6をメモリ等の記憶部に保持させておく。
【数6】
【数7】
【0083】
そして、HAPS10,20の機体の位置及び姿勢(向きを含む)の情報からステアリング角(指向性ビームを形成する角度)φを決定し、そのステアリング角φを上記近似式(6)及び(7)に代入することにより、ウェイト(振幅と位相)を簡単な計算で求めることができる。
【0084】
図25(a)及び(b)は、
図22のサーキュラーアレイアンテナ410においてステアリング角を連続的に変化させた場合のウェイトの振幅及び位相の計算機シミュレーション結果の一例を示すグラフである。図中の曲線C21は、上記逆行列を含む式(5)を用いて計算したウェイトの振幅及び位相の計算機シミュレーション結果であり、図中の曲線C22は、上記近似式(6)及び(7)を用いて計算したウェイトの振幅及び位相の計算機シミュレーション結果である。
図25から、上記近似式を用いた場合でも、上記逆行列を含む式(5)を用いた場合と同様なウェイトが得られることがわかる。
【0085】
図26は、実施形態に係るサーキュラーアレイアンテナ410を用いた水平方向のDBF制御の他の例を示す説明図である。
図26の例は、計算量がすくなく、サーキュラアレーアンテナ410を用いた水平方向(φ)のビーム方向制御及びサイドローブ低減を簡易に実現することができるDBF制御の例である。なお、前述の
図22と共通する部分については説明を省略する。
【0086】
図サーキュラーアレイアンテナ410のn番目のアンテナ素子411に対する重み付けを前述の式(1)に示すようにw(n)=A(n)exp(jB(n))としたとき、振幅に対する重み付け(A(n))と位相に対する重み付け(B(n))をそれぞれ次の式(8)及び式(9)の通りとする。式(8)に示すようにφ>π/2の範囲すなわち所望の指向性ビームとは反対側の背面方向の角度範囲については、ウェイトの振幅A(n)をゼロにすることで送信しないようにしている。
【数8】
【数9】
【0087】
但し、φ=|φ(n)−φ
0| (0≦φ≦π)とし、n=0〜N−1(Nはアンテナ素子数)、φ(n)をn番目のアンテナ素子の配置角度、φ
0を所望のビーム角度、rをサーキュラーアレイアンテナ410の半径とする。また、σは半値幅を決定する変数である。
【0088】
図27は、
図26のサーキュラーアレイアンテナ410のビームパターンの計算機シミュレーション結果の一例を示すグラフである。計算ではアンテナ素子411の素子数N=16、半径r=0.19[m]のサーキュラーアレイアンテナとし、周波数fcを2[GHz]、素子間隔を0.5λ、σを0.5(半値幅35度相当)とした。また、φn=−168.75度〜168.75度の範囲でアンテナ素子の素子間隔を均等に設定した。また、各アンテナ素子のビームパターンをcos
mφ(但し、m=1.3、90度<φ及びφ<−90度の範囲は0)とした
【0089】
図27は、計算機シミュレーションの一例として、ステアリンク角φ
0を0度,10度,20度,180度,−120度(=240度),−60度(=300度)として計算したサーキュラーアレイ410の水平面内の指向性ビームパターンC31,C32,C33,C34,C35,C36を示す。
図27に示す通り、水平面内のどの方向に対してもビームの形状をほとんど変えることなくビーム方向を制御できていることが分かる。以上より、HAPSの機体のヨーイングの回転角度をφ
Yawとすると機体に対して逆向きの回転角(φ
0=−φ
Yaw)を与えることでセルのフットプリントの固定が可能である。また、1つのアレイアンテナで水平方向に複数セルを多重させる場合は、セル毎に異なるφ
0を設定して多重することで実現できる。例えば、水平方向に60度毎に6セルを形成する場合は、φ
0(m)=mπ/3−φ
Yaw(但し、セル番号m=0〜5)となる。
【0090】
上記実施形態のアンテナ構成のうち、前述の
図15のシリンダー型アレイアンテナ430を用いてハンドオーバ(HO)回数の計算機シミュレーション評価を行った。シミュレーション評価では、1つのHAPS、7セル構成(中央1セル、周辺6セル)において、上記式(8)及び(9)のウェイトを用いたDBF制御を適用しない場合(φ
Yaw≡0)と適用する場合のHO回数の評価を行う。ここでは簡単のためHAPSはヨーイングの回転運動のみ行うものとし、一例として10分で1回転(1秒間に0.6度回転)するものとする。アンテナ構成の評価諸元を表2に示す。
【表2】
【0091】
周辺6セルは前述のシリンダー型アレイアンテナ430で形成し、中央1セルは下向きの平面アレイアンテナで形成してカバーする。シリンダー型アレイアンテナ430の垂直方向及び平面アレイアンテナはそれぞれ表2に記載した半値幅となるように各アンテナ素子に異なる振幅を与えている。
【0092】
HOの頻発を抑えるため、在圏セルに対する隣接セルの受信電力の比が3dB以内であればHOを行わず、3dBを上回ったときに隣接セルへHOを行うものとする。HAPSの高度を20[km]、半径100[km]の円内を評価対象エリアとし、1秒間当たりに発生するHO率(100[km]エリア内の全UE(端末装置)に対するHOしたUE数の割合)を、DBF制御を適用しない場合と適用する場合で評価したところ、適用しない場合で0.96%、適用する場合で0%(HO発生なし)となった。
【0093】
以上示したように、本実施形態のサーキュラーアレイアンテナやシリンダー型アレイアンテナなどのアンテナ構成と上記HAPS10,20の位置及び姿勢の情報に基づいて計算したウェイトを用いたDBF制御とを適用することにより、HAPS10,20のヨーイング回転等の姿勢や位置の変動によるセルのフットプリントの移動を抑制することができる。従って、フットプリントの移動に起因したHOの頻発(多数の端末装置が一斉にハンドオーバする現象)を抑制し、HOによる制御信号の増加及びHO失敗による通信断を抑制することができる。
【0094】
図28は、実施形態に係るアンテナ構成及びDBF制御の制御系の一例を示すブロック図である。
図28の例は、N個のアンテナ素子411からなるサーキュラーアレイアンテナ410で一つのセル(#0)を形成する例である。なお、
図28では、図示を簡略化するため、ダウンリンク及びアップリンクについてはダウンリンクのみ記載している。また、
図28では、水平偏波及び垂直偏波の一方の偏波(片偏波)のみ記載しているが、他方の偏波の信号について送受信する場合は同様なDBF制御部が追加して設けられる。
【0095】
DBF制御部500は、ウェイト計算部501とウェイト演算部502とを備える。ウウェイト計算部501は、GNSS/INSで取得したHAPS10,20の位置及び姿勢のデータと、目標のセルの位置情報とに基づいて、サーキュラーアレイアンテナ410の複数のアンテナ素子411(0〜N−1)で送信される送信信号(デジタルのベースバンド信号)に適用する前述のウェイト(振幅及び位相のベクトルデータ)を計算する。
【0096】
ウェイト演算部502は、ウェイト計算部501で計算したウェイトをデジタル送信信号に適用することにより、複数のアンテナ素子411(0〜N−1)に対応する複数のデジタル送信信号(0〜N−1)を生成する。ウェイト演算部502から出力された複数のデジタル送信信号(0〜N−1)はそれぞれ、DAコンバータ(DAC)510でアナログ信号に変換され、周波数変換器511で所定の送信周波数fcに変換され、電力増幅器(PA)512で所定の電力まで増幅された後、送受共用器(DUP:DUPlexer)513を介して、対応するアンテナ素子411(0〜N−1)に供給される。
【0097】
以上のDBF制御により、サーキュラーアレイアンテナ410から目標の位置に向けてアンテナ指向ビーム700を形成し、フットプリントを固定した状態でセル内に在圏する端末装置に送信信号を送信することができる。
【0098】
なお、
図28において、サーキュラーアレイアンテナ410の複数のアンテナ素子411(0〜N−1)それぞれによって受信された複数のアップリンクの受信信号は、DUP513を介してローノイズアンプで増幅された後、周波数変換器で所定の周波数に変換され、ADコンバータ(ADC)でデジタル信号に変換されてウェイト演算部502に供給される。ウェイト演算部502で複数のデジタル信号に上記複数のウェイトを適用した後互いに加算されることにより、上記所定のセル内に在圏する端末装置からの受信信号を生成することができる。
【0099】
図28において、ウェイト演算部502には、アンテナ切り換え制御の機能を持たせてもよい。
【0100】
図29は、実施形態に係るアンテナ構成及びDBF制御の制御系の他の例を示すブロック図である。
図29の例は、N個のアンテナ素子411からなるサーキュラーアレイアンテナ410でM個のセル(#0〜#M−1)を形成する例である。なお、
図29において、
図28と共通する部分については説明を省略する。
【0101】
図29において、DBF制御部500は、ウェイト計算部501と、M個のセル(#0〜#M−1)に対応するM個のウェイト演算部502とを備える。ウェイト計算部501は、複数のウェイト演算部502それぞれに供給するセル数分のウェイトを計算する。ここで計算されるウェイトはベクトルではなく行列である。
【0102】
複数のウェイト演算部502はそれぞれ、ウェイト計算部501で計算したウェイトを適用して、セル毎にビームフォーミングを行うためのウェイト演算を行ってN個のアンテナ素子411それぞれに供給する複数のデジタル送信信号を生成して出力する。ウェイト演算部502から出力されたデジタル送信信号は、アンテナ素子ごとに多重化(加算)されることにより、複数セルについて同時に異なる方向へのビーム制御が可能である。
【0103】
図29のDBF制御では、サーキュラーアレイアンテナ410から互いに異なる複数の目標位置それぞれに向けてアンテナ指向ビーム700を形成し、フットプリントを固定した状態で各セル内に在圏する端末装置に送信信号を送信することができる。
【0104】
図30は、実施形態に係るアンテナ構成及びDBF制御の制御系の更に他の例を示すブロック図である。
図30の例は、6個の平面型のアレイアンテナとしての平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)でアンテナ切替とDBF制御を行い、HAPS10,120のヨー回転対応のフットプリント固定制御を行って6個のセル(#0〜#M−1)を形成する例である。各平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)はN個のアンテナ素子441を有し、各アレイアンテナのビームの向きが互いに異なるように配置されている。なお、
図30において、
図28と共通する部分については説明を省略する。
【0105】
図30において、DBF制御部500は、ウェイト計算部501と、6個の平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)に対応するように設けられた6個のウェイト演算部502(0)〜502(5)とを備える。なお、平面アレイアンテナ440及びウェイト演算部502それぞれの個数は6個以外であってもよい。
【0106】
また、
図30の例では、DBF制御部500とは別に、アンテナ切替部520を備える。アンテナ切替部520は、平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)の間で、6個のセル(#0〜#M−1)それぞれを形成する平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)を切り替える。例えば、平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)の間で、第1番目のセル(#0)を形成する平面アレイアンテナを切り替えるようにウェイト演算部502(0)〜502(5)への接続を切り替える。
【0107】
図31は、
図30の制御系でDBF制御される平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)の一例を示す斜視図である。図示の例では、6個の平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)はそれぞれ、平面形状にそって複数のアンテナ素子441が2次元的に分布するように配置されている。また、平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)は、下向きの角錐形状(6角錐形状)の6つの斜面それぞれに配置されている。この複数の角錐形状(6角錐形状)下端に底面を設け、その底面に真下方向にセルを形成するための平面アレイアンテナ440を設けてもよい。また、複数の平面アレイアンテナ440は、角柱形状(例えば6角柱形状)における複数の外面部それぞれに配置してもよい。
【0108】
図30の制御系によるDBF制御は例えば次のように行う。水平方向のDBF制御では、各平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)で位相制御を行うことにより、水平方向(横方向)の所定の角度範囲(例えば30度)で各平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)の指向性ビームをステアリングする。そして、ステアリングで振れる角度が限界まできたとき、例えば位相制御により各平面アレイアンテナの垂直な法線方向に対して±30度まで指向性ビームをステアリングしたとき、各セルに対応する平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)を切り替える。一方、垂直方向のDBF制御は、例えば、前述のシリンダー型のアレイアンテナ430における垂直方向の制御と同様に行う。
【0109】
図32は、平面アレイアンテナ440(0)〜440(5)の水平方向のビームフォーミング制御の一例を示す説明図である。
図32の例は、HA
PS10,20の機体が右回転しているときの例である。図中左の回転前の状態では、平面アレイアンテナ440(5)の法線方向の図中上方にビーム700によってセルが形成される。この状態から機体が図中矢印Rで示す右回転方向に例えば29度以下で回転(旋回)する場合は、図中中央時に示すように、平面アレイアンテナ440(5)の位相制御によりビーム700が左回転方向にステアリングされ、セルの位置が維持される。そして、図中右の状態に示すように、機体が図中矢印Rで示す右回転方向に例えば閾値の30度又はそれ以上回転(旋回)する場合は、平面アレイアンテナ440(5)の位相制御によるビーム700のステアリングが難しくなるため、上記セルを形成するための平面アレイアンテナを平面アレイアンテナ440(5)から隣の平面アレイアンテナ440(0)に切り替え、その切り替え後の平面アレイアンテナ440(0)に対して位相制御を行うことでビーム700が右回転方向にステアリングされ、セルの位置が維持される。
??
【0110】
なお、
図30の例において、アンテナ切り換えを含めたウェイトを適用することにより、アンテナ切替部520を別途設けずに、アンテナ切り換え処理を含めたDBF制御をウェイト演算部502で行うようにしてもよい。
【0111】
図33は、実施形態に係るアンテナ構成及びDBF制御の制御系の更に他の例を示すブロック図である。なお、
図33において、
図28と共通する部分については説明を省略する。
図33の制御系では、HAPS10,20の機体の旋回が同じ回転及び移動の繰り返し運動である(周期性がある)ことに着目し、サービスエリアの位置を基準にしたHAPS10,20の予測移動経路における互いに異なる複数組の機体の位置及び姿勢(傾き角度及び向き)に応じたウェイトを予め計算してメモリ等の記憶部514に保存しておく。そして、ウェイト読込部504により、GNSS/INSデータから計算した機体の姿勢及び位置に基づいて記憶部514を参照し、計算した機体の姿勢及び位置に対応するウェイトを読み込み、ウェイト演算部502での送信信号の演算に用いる。
図33の例では、逐次ウェイト計算が不要であることから計算量及び消費電力を大幅に減らすことができる。
【0112】
以上、本実施形態によれば、上記構成のアレイアンテナ及びDBF制御とを適用することにより、HAPS10,20の姿勢や位置の変動によるセルのフットプリントの移動を抑制し、HOの頻発、HOによる制御信号の増加及びHO失敗による通信断を抑制することができる。しかも、アレイアンテナの指向性ビームの制御に、大型で重い機械的な制御機構でなく、小型で軽量化が容易なDBF制御を用いているため、HAPS10,20の小型化を図ることができる。
【0113】
上記各実施形態におけるDBF制御は、HAPS10,20が自立的に判断して行ってもよいし、遠隔制御装置85やサーバ86等の外部装置からの制御指令によって行ってもよい。また、上記DBF制御は所定の時間間隔で定期的に行ってもよいし、HAPS10,20の移動距離又は姿勢変化が所定よりも大きくなったときに行ってもよい。
【0114】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS10,20等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0115】
ハードウェア実装については、実体(例えば、中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、中継通信局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0116】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0117】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0118】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。