(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
樹脂またはプレポリマーの硬化または架橋、例えばエポキシ樹脂またはポリウレタンプレポリマーの硬化によって形成されるポリマーの調製は、概念上、簡単であり、多くの場合に単純である。しかしながら、高性能ポリウレタンエラストマーなどの高性能材料および物品を調製する場合、硬化が起こる前にプレポリマー/硬化剤組成物を適切に処理するのに必要な時間と、迅速かつ効率的な硬化の必要性とのバランスが問題となり得る。多くの場合に安定性であり、容易に取り扱いでき、かつ保存される材料を提供する因子は、システムの反応性を低下させる傾向があり、硬化時間が長くなる。これらの要求のバランスをとることは、不要な反応、分解または活性の低下が起こることなく、反応性プレポリマーおよび硬化剤を共に長時間にわたって保存および/取り扱う必要がある場合により難しくなる。
【0003】
ポリマー樹脂およびプレポリマー、例えばエポキシ樹脂、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー等をジアミン、トリアミンおよび他のポリアミンで硬化または架橋することは、よく知られている。例えば、多官能性アミン、例えば、ビスオルトクロロアニリン(MOCA)、メチレンビスジエチルアニリン(MDEA)、4,4’−メチレンジアニリン(MDA)等が樹脂またはプレポリマーと混合され、次いで、その混合物を金型にまたはある表面上にキャストし、加熱して、硬化反応を完了することができる。一部の用途において、混合、キャスト、または他の処理工程中、樹脂またはプレポリマーと硬化剤との反応が早く起こりすぎるために問題が生じている。
【0004】
米国特許第3,755,261号明細書、米国特許第3,876,604号明細書および米国特許第4,282,344号明細書に、遊離アミンではなく、ポリアミンとアルカリ金属塩との間に形成される配位錯体を硬化剤として使用したアミン硬化性ポリマーの硬化が開示されている。例えば、遊離4,4’−メチレンジアニリンではなく、NaClと4,4’−メチレンジアニリンとの配位錯体をイソシアネートキャップ形成プレポリマーに添加して硬化を起こすことができる。それが有効に樹脂またはプレポリマーを硬化する前に、一般に加熱により、配位錯体から遊離アミン、例えば4,4’−メチレンジアニリンを遊離するか、または脱ブロック化することが通常必要である。
【0005】
最も一般的に遭遇する配位錯体硬化剤は、MDA−CCとも呼ばれる、MDAとのアルカリ金属塩錯体、例えばNaCl:MDA(3:1)錯体である。イソシアネートキャップ形成プレポリマーは、この硬化剤または同様のブロック化硬化剤で硬化されて高性能エラストマー材料を与える。
【0006】
脱ブロック化温度未満の温度でMDA−CCをポリウレタンプレポリマーと混合すると、多くの場合、システムおよび貯蔵条件に応じて1年以上であり得る長いポットライフを有する硬化性組成物が形成される。MDA−CCの分解温度を超えて硬化性組成物を加熱すると、高度に活性なMDAが放出され、それがプレポリマーと反応してエラストマーが形成される。この方法は、市販の「一液型(one pack)」ポリウレタンシステムなどの多くの場合に成功しているが、依然として向上が必要である。例えば、場合により、脱ブロック化および硬化が緩慢であり、望ましい温度よりも高い温度の使用または極度に長い硬化時間が必要である。結果として、一部の用途で触媒または硬化促進剤が使用され、MDA−CC脱ブロック化温度が下がり、作業者はより低い成形温度を使用することが可能となり、成形サイクル時間の低減によって生産性が高くなる。
【0007】
加熱金型の表面での急速なMDA−CC脱ブロック化およびプレポリマー硬化のために、不均一な硬化が起こり、組成物の内部セクションがより遅くまたは不完全に硬化する厚いフィルムまたは物品が製造されることなど、一部の用途においてさらなる課題が生じ得る。これにより、一定または均一な構造を欠いたポリウレタンエラストマーが形成される。例えば、硬い皮膜は、外部表面上で最初に形成し、硬化が進行するにしたがって皮膜が破断し、その結果として表面に望ましくない亀裂が入る。
【0008】
硬化促進剤は、一般に、脱ブロック化に必要な温度を下げることにより、ブロック化硬化剤の脱ブロック化の促進に有用な触媒化合物である。例えば、グリセロールおよび尿素などの多くのかかる材料は、ポリウレタンの硬化に使用されるために開発されている。しかしながら、既知の硬化促進剤によって実証される性能は多くの改善の余地があり、これらの触媒の多くは、特定のプレポリマー/硬化剤の組み合わせでのみ作用し得る。
【0009】
米国特許第3,888,831号明細書には、極性または分極性化合物、例えばエステル、ケトン、エーテル、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、第3級アミン、スルホン、スルホキシドまたはスルフィドと結合したメチレンジアニリンの塩錯体でのアミン硬化性ポリマーまたはプレポリマーの硬化が開示されている。テトラ−エチレングリコールのアセトンおよびエステルが好ましい。ニトロベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラ−エチレングリコールビス−2−エチルヘキサノエートおよびジプロピレングリコールジベンゾエートが例示される。
【0010】
米国特許第4,046,743号明細書には、リン酸トリブチルなどの高誘電率触媒化合物の存在下における、アミン硬化性ポリマーまたはプレポリマーの硬化剤としてのMDA錯体の使用が開示されている。
【0011】
米国特許第4,517,331号明細書には、疑似クラウン(pseudocrown)エーテルの存在下においてMDAの錯体を使用する、ポリプロピレンエーテルグリコールプレポリマーの硬化が開示されている。米国特許第4,772,676号明細書には、メチレンジアニリン(MDA)塩錯体でウレタンプレポリマーまたはポリマーの周囲温度硬化を生じさせるための、1,4−ブタンジオールまたはフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノールなどのアルコール触媒の使用が開示されている。
【0012】
米国特許第8,754,184号明細書および米国特許第9,006,375号明細書には、メチレンジアニリン金属塩配位錯体鎖延長剤との反応前に窒素含有有機塩、例えばイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、またはモルホリニウム塩をプレポリマーに添加することにより、ポリウレタンプレポリマーの硬化速度をメチレンジアニリン金属塩配位錯体で促進することが開示されている。
【0013】
硬化促進剤などの広範囲のかかる化合物の一般的な開示にもかかわらず、これらの化合物またはこれらのクラスの化合物の多くは、ポリアミン配位錯体と共にポリウレタン硬化性組成物において例示されていない。多くの場合、これらの化合物の存在がプレポリマーまたは硬化剤の貯蔵安定性に対して及ぼし得る影響についてほとんど知られておらず、場合により、開示される硬化促進剤がプレポリマーの安定性に対して有害であることが知られている。
【0014】
理想的な硬化促進剤は、1)プレポリマー、硬化剤、およびプレポリマーと硬化剤との混合物と相溶性であるべきであり、2)最終硬化性組成物が活性化温度に加熱されるまで反応を開始せず、次に、3)その温度で組成物全体にわたって硬化が迅速かつ均一であると考えられる。既知の多くの硬化促進剤は、これらの基準に達していない。例えば、本発明者によって実施され、かつ本明細書で報告される最近の試験から、開示の促進剤の一部は、特定の条件下で相対的に効果的ではなく、プレポリマーの貯蔵安定性に悪影響を及ぼすことが示されている。
【0015】
したがって、生産性を高め、かつ実質的に均一なコンシステンシーを有する高性能ポリウレタンエラストマーを製造するために、プレポリマーをブロック化硬化剤、特に金属塩とポリアミンとの配位錯体と反応させることによる、ポリウレタンの形成で使用される向上した促進剤が必要とされている。
【0016】
驚くべきことに、DMSO、ブチルスルホキシド、エチルブチルスルホキシド等のアルキルスルホキシドは、分解または活性の低下なく保存することができるプレポリマーで安定な組成物を形成するだけでなく、スルホキシドの存在は、MDA配位錯体の脱ブロック化およびポリウレタンプレポリマーの硬化において、他の開示の硬化促進剤と比べて非常に高い触媒活性も有することが判明した。プレポリマーの安定性および触媒活性は一般に反比例するが、イソシアネートキャップ形成ポリウレタンプレポリマー組成物に少量のアルキルスルホキシ、例えばジメチルスルホキシドを含有させることにより、NaClと4,4’−メチレンジアニリンとの配位錯体などのポリアミン配位錯体と共に硬化させた場合、予想外に高い硬化効率を有する非常に安定な組成物が得られることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の広範な一実施形態は、イソシアネートキャップ形成ポリウレタンプレポリマーと、プレポリマーおよびアルキルスルホキシドの合計量に基づいて0.1〜5.0重量%、一般に0.1〜2重量%、例えば0.1〜1.5重量%または0.25〜1.5重量%のスルホキシドとを含む組成物を提供する。
【0026】
この組成物は、貯蔵安定性であり、すなわちプレポリマーの物理的性質または化学的性質を損なうことなく通常の工業的または商業的条件下で調製および貯蔵することができ、かつプレポリマーがアルキルスルホキシドの非存在下で硬化される場合よりも、メチレンジアニリン金属塩配位錯体などのポリアミン金属塩配位錯体と共に反応させた場合、プレポリマーのより効果的な硬化に対して活性化される。本明細書で使用されるより効果的な硬化とは、より短い時間で、より低温で硬化が起こり、かつ/または別の方法で得られるよりも均一に硬化されたポリウレタン生成物が得られることを意味する。
【0027】
本発明のアルキルスルホキシド硬化促進剤は、式:
【化1】
の既知の化合物であり、式中、R
1およびR
2は、独立して、1〜12個、例えば1〜6個の炭素原子を有するアルキル基から選択され、一部の実施形態では、R
1およびR
2は、硫黄原子と共に5〜7員環を形成し得る。本発明の多くの実施形態において、スルホキシドは環状ではなく、すなわちR
1およびR
2は硫黄原子と共に5〜7員環を形成せず、かつR
1およびR
2は、C
1〜6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択される。例えば、市販のジメチルスルホキシドは大きい成果を上げて使用されている。
【0028】
本発明のイソシアネートキャップ形成ウレタンプレポリマーは、1種または複数種のポリイソシアネートモノマー、例えばジイソシアネートモノマーを1種または複数種のポリオール、例えば、ジオールと反応させることによって形成される。かかるプレポリマーの多くは市販されており、その調製方法は当技術分野でよく知られている。本発明で使用することができるプレポリマーまたはプレポリマーの混合物に特別な制限はなく、プレポリマーの調製に使用することができるポリオールまたはイソシアネートモノマーについても特別な制限はない。
【0029】
プレポリマーの調製に使用されるポリオールは、例えば、アルカンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを含み得る。かかるポリオールは当技術分野でよく知られており、複数種が使用され得る。「1つの(a)〜を含む」、「1つの(an)〜を含む」等の用語は、1種または複数種が存在し得ることを意味する。例えば、一部の実施形態において、ポリオールは、1種または複数種のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよび/またはポリカーボネートポリオールを含む。多くの実施形態では、ジオールから調製されるプレポリマーが、トリオールまたはより高級のポリオールから形成されるプレポリマーよりも好ましい。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、一般式HO(RO)
nHを有するポリアルキレンエーテルポリオール(式中、Rはアルキレンラジカルであり、nは、所望のMW、例えば数平均分子量200〜6,000、例えば400〜3000または1000〜2500を提供するのに十分に大きい整数である)が挙げられる。かかるポリアルキレンエーテルポリオールは既知であり、アルキレンオキシドなどの環状エーテルおよびグリコール、ジヒドロキシエーテル等の重合によって調製することができる。一般的なポリエーテルジオールとしては、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、混合エーテルジオール、例えばエチレングリコール/プロピレングリコールエーテルコポリマージオール、末端キャップ形成ポリエーテルジオール、例えばEOキャップ形成ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸、コハク酸、イソフタル酸および他の二官能もしくは多官能カルボン酸と、グリコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール等との反応生成物が挙げられる。複数種のカルボン酸またはグリコールを使用してもよい。一部のポリエステルポリオールには、その製造にカプロラクトンおよび二量化不飽和脂肪酸も用いられる。
【0032】
有用なポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールは、通常、200〜6,000、例えば400〜3000または1000〜2500の数平均分子量を有し、さらにジオールが一般に好ましい。
【0033】
一部の実施形態において、ポリオールは、例えば60〜400、例えば80〜300または100〜200の範囲の分子量を有するグリコールまたはトリオールを含む。かかるグリコールまたはトリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールの異性体、ブタンジオールの異性体、ペンタンジオールの異性体、ヘキサンジオールの異性体、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0034】
ほぼすべてのポリイソシアネートモノマーを使用して本発明のプレポリマーを調製することができるが、ポリイソシアネートモノマーは、通常、ジ−イソシアネートを含む。一般的なジイソシアネートの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリマーMDI、トルエンジイソシアネート(TDI)、パラ−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ジフェニル4,4’−ジイソシアネート(「DPDI」)、ジベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、1,3および1,4−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、3,3’−ビトルエンジイソシアネート(TODI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、メチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)(H
12MDI)が挙げられる。
【0035】
本発明のプレポリマーの調製に使用される正確なポリオールおよびイソシアネートモノマーは、最終生成物の最終用途に応じて異なるであろう。一部の実施形態において、PPDI、MDI、TDIなどの芳香族イソシアネートから調製されるプレポリマーが好ましく、一部の実施形態では、HDI、H
12MDI、CHDIなどの脂肪族イソシアネートから調製されるプレポリマーが好ましい。
【0036】
当然のことながら、本明細書の実施に有用である可能性のあるポリオール、イソシアネートモノマーまたはプレポリマーの網羅的なリストを提供する試みは本明細書においてなされていない。
【0037】
多くの場合、過剰なポリイソシアネートモノマーを使用してイソシアネート末端プレポリマーが調製され、その結果、未反応モノマー、例えば未反応または「遊離」イソシアネートモノマーを含有するプレポリマー混合物が形成される。20重量%以上のレベルの遊離モノマーに遭遇し得る。本発明の一部の実施形態において、プレポリマー混合物中の遊離イソシアネートモノマーのレベルは、低減されたレベルであり、例えば5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の遊離イソシアネートモノマーのレベルを有する「低遊離」ジイソシアネートプレポリマーが効果的に用いられる。
【0038】
イソシアネートキャップ形成ポリウレタンプレポリマーおよびアルキルスルホキシドをいずれかの手法で合わせて、プレポリマーおよびアルキルスルホキシドを含む組成物が形成される。例えば、本発明のアルキルスルホキシドは簡単にプレポリマーに添加し、混合することができる。当技術分野で一般的な溶媒および添加剤などの他の成分が組成物中に存在し得る。
【0039】
本発明のプレポリマー/アルキルスルホキシド組成物は、70℃までの温度、多くの場合にそれより高い温度で少なくとも7日間安定であり、多くの場合、貯蔵条件に応じてより長く、例えば1〜4週、1〜6ヵ月またはそれを超えて安定である。本発明の組成物はそれ自体で非常に安定であると同時に、メチレンジアニリンのアルカリ性金属塩錯体などの金属塩/ポリアミン配位錯体による迅速な硬化に対して活性化もされるため、この安定な組成物は、有利には、ポリウレタンポリマーの調製、特にブロック化ポリアミン硬化剤、例えばポリアミンの金属塩配位錯体でプレポリマーを硬化することによって調製されるポリウレタンポリマーの調製において使用される。さらに、かかるブロック化硬化剤と合わせた場合、本発明の組成物のプレポリマーは、硬化温度に達して一液型ウレタンシステムにおいて有用となるまで処理中に硬化に耐える。
【0040】
硬化剤の早期の脱ブロック化を起こすことなく、アミン配位錯体硬化剤を含む組成物にアルキルスルホキシドを添加することができるため、本発明の一部の実施形態は、i)イソシアネートキャップ形成ポリウレタンプレポリマー、ii)プレポリマーおよびアルキルスルホキシドの合計重量に基づいて0.1〜5.0重量%、一般に0.1〜2重量%のアルキルスルホキシド、およびiii)メチレンジアニリン金属塩配位錯体などのポリアミン金属塩配位錯体を含む組成物を提供する。プレポリマーと硬化剤とのモル比は、例えば、1:2〜3:1、例えば0.7:1〜1.2:1または1.1:1〜0.9:1の範囲であり得る。
【0041】
したがって、本発明は、工業および商業で直面しているポリウレタン、特にNaCl:MDA(3:1)錯体などの配位錯体硬化剤で硬化されるポリウレタンに関する様々な問題に対する即座の解決、例えば、硬化の効率、プレポリマーの貯蔵安定性、プレポリマーと硬化剤との一液型コンビネーションの貯蔵安定性、最終ポリウレタンの品質、および向上した処理等を提供する。
【0042】
上述のように、金属塩配位錯体とポリウレタンプレポリマーとの反応において硬化促進剤または脱ブロック化剤として当技術分野で挙げられるまたは提案される化合物は、不足していないが、多くが試験または例証されていない。おそらく一部は、他のものに比べてプレポリマーの硬化を促進または改善するのに有効である。プレポリマーの効果的な硬化に関連する問題が解決されたとしても、プレポリマーの安定性およびプレポリマーと硬化剤とを含む組成物の安定性に関する問題に依然として対処する必要がある。例えば、プレポリマーは、一般に、エラストマーへ処理される前に高温で溶融され、貯蔵される。したがって、プレポリマーは、70℃で1週間熱老化した後に安定であるべきである。
【0043】
ポリウレタンプレポリマーとメチレンジアニリンの金属塩錯体との混合物として販売されている市販の「一液型」または「一成分」ポリウレタンシステムの貯蔵寿命は、早期に硬化する可能性が想定される懸念のある明らかな領域である。硬化剤の活性化温度未満で早期の硬化も促進する可能性のある硬化促進剤が存在することにより、かかる懸念はより一層大きい問題となるであろう。実施例に示すように、本発明によるアルキルスルホキシドを含む組成物は、他のクラスの促進剤を含有する組成物と比較して早期に硬化しにくい。
【0044】
長い硬化時間または高温硬化に関連する処理問題の他に、プレポリマー/硬化剤組成物の安定性が乏しいことまたは組成物の硬化が非効率的なことから、成形ポリウレタン物品の品質に関連する問題が生じ得る。例えば、プレポリマーを金型で硬化する前にプレポリマー/硬化剤組成物を金型に広げ、適切に充填しなければならない。過度に粘性である組成物は、適切に金型に充填されないことがあり得、それは、組成物を、早期の硬化となる可能性のある硬化温度に接近した温度に最初に加熱しなければならない場合により問題となり得る。一方でおよび特により厚い断面では、組成物は、通常、熱を加えたところで、例えば金型の上面で最も早く硬化するが、内部はゆっくりと硬化する。結果として、硬い皮膜は、最初にエラストマーの外部表面上に形成し、次いで、組成物の中心に向かって硬化が進行するにしたがってエラストマーの内部体積が拡大し、それにより、次に皮膜に亀裂または破断が起こり、望ましくない表面欠陥が形成し得る。
【0045】
すなわち、多くの用途において、硬化促進剤は、早期の硬化に伴う問題を避けるために、プレポリマーと硬化剤との両方の存在下において安定でなければならないが、不均一な硬化に伴う問題を避けるために、硬化温度で高い活性も示さなければならない。
【0046】
本発明では、上記のすべての問題に取り組む。イソシアネートキャップ形成プレポリマーは、アルキルスルホキシドの存在下において、用いられる濃度で安定であり、かかる組成物は、工業で通常遭遇する温度で貯蔵することができる。当技術分野で見られる硬化促進剤の多くはイソシアネートキャップ形成プレポリマーを不安定にすることから、これはかなり驚くべきことである。本発明の組成物のプレポリマーはまた、アルキルスルホキシドの非存在下で同様に硬化された場合よりも、金属塩配位錯体の存在下ではより急速に硬化する。重要なことに、本発明のアルキルスルホキシドと合わされたプレポリマーは、当技術分野で見られる他の硬化促進剤と同じプレポリマーが合わされた場合よりも、金属塩配位錯体の存在下でより効果的に硬化する。本発明のアルキルスルホキシドがプレポリマーに添加された場合に見られる、プレポリマーの安定性と顕著な硬化促進とのこの組み合わせは、他の硬化促進剤では見られない。
【0047】
貯蔵安定性および硬化時間に関して、市販のプレポリマーと本発明のジメチルスルホキシドとを含む組成物が、同じプレポリマーと当技術分野で見られる種々の硬化促進剤とを含む同様の組成物と比較された。
【0048】
メチレンジアニリン配位錯体、MDA−CCの脱ブロック化触媒の3つのクラスは、当技術分野で公知である。1つのクラスは、活性水素化合物、すなわちアルコール、第1級アミン、第2級アミン等のイソシアネート基と反応する化合物に基づき、グリセロールおよび尿素などの材料が挙げられる。活性水素化合物として、米国特許第4,772,676号明細書には、好ましい化合物として1,4−ブタンジオールまたはフェノキシポリ(オキシエチレン)エタノールなどのアルコール触媒が開示されている。
【0049】
第2のクラスは、有機塩化合物、例えば第4級アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ホスホニウムまたはスルホニウム塩に基づく。MDA−CCの脱ブロック化に有用な有機塩として、米国特許第8,754,184号明細書および米国特許第9,006,375号明細書に種々のアミン塩が例示されている。
【0050】
第3のクラスは、極性官能基を含有する極性非プロトン化合物に基づく。例えば、米国特許第3,888,831号明細書には、置換アミド、カーボネート、エステル、エーテル、ケトン、アルキルハロゲン化物、芳香族ハロゲン化物および硝酸塩、スルホン、スルホキシド、第3級アミン等がMDA−CCと共に脱ブロック化触媒または硬化促進剤として挙げられているが、スルホキシドなどのこれらの化合物の多くは、脱ブロック化触媒として例示されていなかった。例えば、MDA/金属塩配位錯体の脱ブロック化に有用な極性非プロトン化合物として、米国特許第3,888,831号明細書にはニトロベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラ−エチレングリコールビス−2−エチルヘキサノエートおよびジプロピレングリコールジベンゾエートのみが例示されており、アセトンおよびテトラ−エチレングリコールのエステルが好ましい。
【0051】
プレポリマーは、一般に、処理する前に高温で溶融および貯蔵され、70℃で1週間の熱老化に対して安定性であるべきである。脱ブロック化剤は、プレポリマーの分解を促進してはならない。ポリウレタンプレポリマー、Adiprene Duracast C900、低遊離MDI含有率を有するMDI末端ポリカプロラクトンプレポリマーを含む組成物において、DMSO、すなわちジメチルスルホキシド、および上述のMDA−CC脱ブロック化触媒の3つのクラスからの化合物を貯蔵安定性に対するその作用について試験した。70℃の溶融プレポリマーに脱ブロック化触媒1.0重量%を添加して、組成物を調製した。混合した後、ガラス広口瓶に窒素下で組成物を移し、瓶を密閉し、70℃で1週間熱老化させた。NCO含有率および粘度の変化を測定した。表1に結果を示す。プレポリマーの初期粘度は50℃で5300cPであった。
【0053】
表1に示されるように、DMSOおよびPC(2−プロパンジオールカーボネート)は、プレポリマーのNCO%および粘度に対して測定可能な負の作用を有さず、DMSOの作用は場合により有益であり得る。NCO%および粘度の両方に対する活性水素化合物の負の作用は有意である。同様に、DMAC、TBA、DMPUおよびPEGDMEは、有意な負の作用を示す。プレポリマーとグリセロール、DMPUおよびPEGDMEとの厳しい不相溶性は、貯蔵で確認されたゲル化によって証明される。キャストエラストマーの性質は、一般に、プレポリマーのNCOが約2%を超えて減少した場合に低下することから、これらの貯蔵性は重要である。
【0054】
硬化時間に対するその影響について上記の化合物を評価するために、ポリウレタンプレポリマーADIPRENE DURACAST C900を70℃で溶融し、塩化ナトリウム/メチレンジアニリン配位錯体硬化剤DURACAST C3−LFをNH
2/NCO当量比0.95で添加する直前に、脱ブロック化触媒を表2に示すように0.5または1.0重量%で添加した。混合した後、シリンジにより、50℃の温度制御炉内に取り付けられた試験セルに組成物をそれぞれ装入した。粘度計に取り付けられたスピンドルを試験液内に挿入した。50℃の温度で15分間維持し、次いで設定プログラムに従って100℃に上昇させた。混合物が400,000cPに達するまで、時間の関数として粘度を測定し、結果を表1Aに示す。上記に示すプレポリマーとそれらが貯蔵不相溶性であるため、ここでは、グリセロール、DMPUおよびPEGDMEを用いた結果は省略する。実施例において完全な詳細を記述する。
【0055】
DMSOで見られるよりも、活性水素化合物および有機塩に関して、硬化速度に対する小さい作用が見られた。極性非プロトン化合物についての結果を、硬化速度に対する最大の影響から最小の影響の順序で示す。特に、極性非プロトン化合物DMSOは最も高い活性を有する。このプレポリマーで比較的安定な組成物を製造するために上記に示すPCは、硬化速度に対して弱い作用のみ有する。米国特許第3,888,831号明細書において好ましいとされる化合物、アセトンは、硬化速度に対してわずかな正の作用を示し、プレポリマーの安定に対して適度な負の作用を示す。
【0057】
上記の表のデータから、MDA−CCと混合し、硬化した場合、DMSO/プレポリマー組成物が優れた化学安定性と高い触媒活性との両方を有するという驚くべき結果が実証されている。双極子モーメントと脱ブロック化活性との単純な相関性がないことも若干驚くべきことである。
【0058】
実施例に示すように、グリセロールは硬化促進に優れた活性を示さなかった。しかしながら、グリセロールとイソシアネートキャップ形成プレポリマーとの反応性が過度であることから、著しく長い時間静置または貯蔵されたかかるプレポリマーを含む組成物におけるその使用は除外される。
【0059】
実施例に詳述されるさらなる試験から、DMSOのレベルを増加させると、プレポリマーの硬化温度が下がることが分かり、かつ本発明の組成物から製造されたエラストマーポリウレタンの優れた物理的性質が実証されている。
【0060】
DMSOは、プレポリマーと標準的な非ブロック化芳香族ジアミン硬化剤MOCAとの間で硬化速度を増加させないため、DMSOによって触媒される促進された硬化は、配位錯体の脱ブロック化触媒としてのその活性によるものであり得るという証拠が実施例6に示される。しかしながら、提案されたこのモードの活性は、証明されたメカニズムではなく可能性としてみなされる。
【0061】
一部の工業的キャスティング作業において、デイタンクは、混合室内でプレポリマーと硬化剤とを含む混合物で満たされ、加工領域に移動されて金型に充填される。混合物の粘度は、作業しかつ金型に適切に充填するのに十分に低い状態でなければならない。キャストエラストマー加工において、ハンドバッチングの作業可能な粘度は、通常、20,000cP未満である。金属塩/ポリアミン配位錯体硬化剤とブレンドした場合、本発明の組成物は、工業的加工条件に対して安定であり、その硬化速度が増加するにもかかわらず、加工工程に多くの時間を費やすことが可能となる。
【0062】
例えば、Adiprene Duracast C900と、プレポリマーおよびDMSOの合計重量に基づいて0.5重量%のDMSOとを含む組成物を、撹拌機、電気加熱ジャケットおよび温度調節器を備えた反応器内で50℃において塩化ナトリウム/メチレンジアニリン(NH
2/NCO当量比=0.95)と窒素下で混合した。一定間隔をあけて試料を採取し、混合時間の関数として粘度を測定した。1時間後、55℃での粘度は4063cPであり、4時間後、55℃での粘度は6638cPであり、24時間後、55℃での粘度は8313cPに上昇し、作業可能な粘度範囲内に十分にあった。
【0063】
イソシアネートキャップ形成プレポリマーと少量のDMSOとを含む本発明の組成物は、驚くべきことに貯蔵安定性であり、かつ金属塩/ポリアミン配位錯体と混合した場合、硬化速度の有意な増加を示し、その増加は、驚くべきことに、硬化促進剤/脱ブロック化剤として当技術分野で開示される多くの化合物と比較して顕著である。
【実施例】
【0064】
以下の実施例では、対照、すなわち硬化促進剤を含まない組成物、およびPURプレポリマーをポリアミン金属塩配位錯体で硬化するための脱ブロック化剤/硬化促進剤として開示されている他の化合物を含む組成物と比較した本発明のアルキルスルホキシド/PURプレポリマー組成物の固有の特性を例示する。実施例において、本発明のアルキルスルホキシドは、表に示すようにジメチルスルホキシド、有機塩、および極性非プロトン化合物である。
【0065】
実施例1 − PURプレポリマー/脱ブロック化剤ブレンドの熱安定性
Adiprene Duracast C900、MDI末端ポリカプロラクトンプレポリマーを70℃に溶融し、混合カップに装入した。脱ブロック化剤/硬化促進剤化合物1.0重量%を添加し、混合カップをFlackTekミキサーに置き、得られた組成物を2300rpmで1分間混合した。8オンスのガラス広口瓶にブレンドを装入し、窒素下で密閉し、乾燥貯蔵容器内で70℃において1週間熱老化した。初期および最終NCOおよび最終粘度を測定した。プレポリマーの初期粘度は50℃で5300cPであった。新たなかつ熱老化されたブレンドをDuracure C3−LFで硬化させ、エラストマー硬度に対する熱老化の影響を測定した。
【0066】
その結果を表2に示し、DMSOは、プレポリマーのNCO、粘度および硬度安定性に対して測定可能な負の作用を及ぼさないことが分かる。
【0067】
【表3】
【0068】
実施例2 − PURプレポリマー/脱ブロック化剤ブレンドの硬化
実施例1からの脱ブロック化剤/硬化促進剤化合物を脱ブロック化活性についてスクリーニングした。Adiprene Duracast C900を溶融し、混合カップに装入し、50℃に平衡化した。使用する場合、MDA−CC硬化剤Duracast C3−LF、アジピン酸ジオクチル中のトリス(4,4’−ジアミノジフェニルメタン)塩化ナトリウム約44%を添加する直前に脱ブロック化剤をプレポリマーとブレンドした。Duracast C3−LFをシリンジに吸い取り、NH
2/NCO当量比=0.95となるように計量し、プレポリマーに装入した。得られた配合物をFlackTekミキサーで2300rpmにおいて1分間混合し、次いで50℃の温度制御炉内に取り付けられたテストセルにシリンジで装入した。スピンドルを粘度計に取り付け、試験液に挿入した。混合物を50℃で15分間浸漬し、次いで温度を100℃に上げる温度プログラムを開始した。粘度を時間の関数として測定した。反応時間は、混合物が400,000cPに達するのにかかる時間である。結果を表3に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
特に、極性非プロトン化合物DMSOは最も高い活性を有する。驚くべきことに、双極子モーメントと脱ブロック化活性との単純な相関性はない。驚くべきことに、MDA−CCと混合し、硬化した場合、DMSO/プレポリマー組成物は優れた化学安定性と高い触媒活性とのいずれも有する。
【0071】
実施例3 − 脱ブロック化温度の低下におけるアルキルスルホキシドの活性
以下では、脱ブロック化温度の低下における脱ブロック化触媒の有用性を実証する。Adiprene Duracast C900を溶融し、混合カップに装入し、50℃に平衡化した。使用する場合、Duracast C3−LFを添加する直前に脱ブロック化剤をプレポリマーとブレンドした。Duracast C3−LFをシリンジに吸い取り、NH
2/NCO当量比=0.95となるように計量し、プレポリマーに装入した。得られた配合物をFlackTekミキサーで2300rpmにおいて1分間混合し、次いで50℃の温度制御炉内に取り付けられたテストセルにシリンジで装入した。スピンドルを粘度計に取り付け、試験液に挿入した。混合物を50℃で15分間浸漬し、次いでテストセルを適切な温度に上げる温度プログラムを開始した。粘度を時間の関数として測定した。脱ブロック化時間は、混合物が400,000cPに達するのにかかる時間である。脱ブロック化の結果を表4に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表4から分かるように、脱ブロック化触媒のレベルを増加させると、硬化温度を上げるのと同じ硬化速度に対する作用が得られる。脱ブロック化触媒の使用は、成形プロセスのサイクル時間の低減という利点を有し、それは、厚い成形品をキャストする場合に特に有用である。
【0074】
実施例4 − プレポリマー/MDA−CC/アルキルスルホキシド混合物の安定性
以下では、Duracast C900/Duracure C3−LF/脱ブロック化触媒混合物の貯蔵安定性が実証されている。キャストエラストマー加工において、ハンドバッチングの作業可能な粘度は、通常、20,000cP未満である。
【0075】
Adiprene Duracast C900を溶融し、混合モーターに取り付けられた撹拌機、電気加熱ジャケットおよび温度調節器を備えた反応器内に装入した。プレポリマーを50℃に平衡化した。使用する場合、脱ブロック化剤をプレポリマーにブレンドした。NH
2/NCO当量比=0.95になるように、Duracast C3−LFを計量し、容器に添加した。混合物を真空下で15分間脱ガスした。真空を乾燥窒素で解放した。シリンジを使用して試料を採取し、Brookfield粘度計を使用して、混合時間の関数として粘度を測定した。その結果を表5に示し、容器内で混合した24時間後でさえC900/C3−LF/DMSO混合物は作業可能な状態を維持することが分かる。このことから、デイタンクが混合部屋で充填され、金型に充填するために加工領域に移動されるキャスト作業における有用性が見出される。
【0076】
【表6】
【0077】
実施例5 − DMSOを使用しておよびDMSO使用せずに形成されたPURの物理的性質
DMSOを使用しておよびDMSOを使用せずにAdiprene Duracast C900をDuracast C3−LFと共に硬化した。物理的性質を測定した。Adiprene Duracast C900を溶融し、混合カップに装入し、70℃に平衡化した。使用する場合、Duracast C3−LFを添加する直前に脱ブロック化剤をプレポリマーとブレンドした。NH
2/NCO当量比=0.95になるように、Duracast C3−LFをシリンジに吸い取り、計量した。C3−LFをプレポリマーに装入した。混合カップをFlackTekミキサーに置き、2300rpmで1分間混合した。混合物をポケットおよびボタン金型に注ぎ、表6に示す条件を用いて成形した。ASTM D 412を用いて引張り特性を測定した。ASTM D 624を用いてトラウザー引裂き強度を測定した。その結果を表6に示し、DMSO脱ブロック化触媒を使用しておよび使用することなく製造されたエラストマーにより、優れた物理的性質が得られることが分かる。
【0078】
【表7】
【0079】
実施例6 − プレポリマー/遊離アミン硬化剤/アルキルスルホキシド組成物の硬化
以下の実施例から、DMSOはアミン/イソシアネート反応を促進しないことが実証されている。Adiprene Duracast C900(EW=1177g/当量)を溶融し、混合カップに装入し、50℃に平衡化した。使用する場合、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)(MOCA)を添加する前にDMSOをプレポリマーとブレンドした。MOCA(EW=133.5g/当量)を溶融し、シリンジに引き込み、計量し、115℃のオーブン内で平衡化し、プレポリマーに装入した。混合カップをFlackTekミキサーに置き、2300rpmで1分間混合した。ミキサーを開始すると同時にタイマーを開始した。シリンジにより、50℃の温度制御炉内に取り付けられた試験セルに混合物を装入した。スピンドルを混合物内に挿入し、時間の関数として粘度を測定した。400,000cPに達するまでの時間を表7に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
表7の結果から、DMSOはアミン/イソシアネート反応を促進しないことが分かり、かつDMSOは、MDA−CC脱ブロック化触媒である可能性があることが実証されている。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
(a)1種または複数種のジイソシアネートモノマーを1種または複数種のポリオールと反応させることによって形成されるイソシアネート末端プレポリマーと、
(b)式:
[化1]
(式中、R1およびR2が、独立してC1〜12アルキルから選択され、硫黄原子と共に5〜7員環を形成し得る)
のアルキルスルホキシド硬化促進剤であって、スルホキシドが、前記プレポリマーおよび前記アルキルスルホキシドの合計重量に基づいて0.1〜5.0重量%で存在する、アルキルスルホキシド硬化促進剤と
を含む、ポリウレタンエラストマーを調製するためのプレポリマー組成物。
[態様2]
R1およびR2が硫黄原子と共に5〜7員環を形成しない、上記態様1に記載のプレポリマー組成物。
[態様3]
R1およびR2がC1〜6アルキルから選択される、上記態様2に記載のプレポリマー組成物。
[態様4]
前記アルキルスルホキシドがジメチルスルホキシドを含む、上記態様1に記載のプレポリマー組成物。
[態様5]
前記アルキルスルホキシドが、前記プレポリマーおよび前記アルキルスルホキシドの前記合計重量に基づいて0.1〜2.0重量%で存在する、上記態様1〜4のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様6]
前記アルキルスルホキシドが、前記プレポリマーおよび前記アルキルスルホキシドの前記合計重量に基づいて0.1〜1.5重量%で存在する、上記態様5に記載のプレポリマー組成物。
[態様7]
前記イソシアネート末端プレポリマーが、ポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、パラ−フェニレンジイソシアネート、ジフェニル4,4’−ジイソシアネート、ジベンジル−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、3,3’−ビトルエンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネートまたはメチレンビス(p−シクロヘキシルイソシアネート)を含むジイソシアネートとの反応生成物を含む、上記態様1〜6のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様8]
前記ジイソシアネートが、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、パラ−フェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネートおよび1,3−シクロヘキシルジイソシアネートからなる群から選択される、上記態様7に記載のプレポリマー組成物。
[態様9]
前記イソシアネート末端プレポリマーが、ジイソシアネートとポリオールとの反応生成物を含み、前記ポリオールがポリエーテルポリオールを含む、上記態様1〜8のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様10]
前記イソシアネート末端プレポリマーが、ジイソシアネートとポリオールとの反応生成物を含み、前記ポリオールがポリエステルポリオールを含む、上記態様1〜8のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様11]
前記イソシアネート末端プレポリマーが、ジイソシアネートとポリオールとの反応生成物を含み、前記ポリオールがポリカプロラクトンポリオールを含む、上記態様1〜8のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様12]
ポリアミン金属塩配位錯体をさらに含む、上記態様1〜11のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物。
[態様13]
前記ポリアミン金属塩配位錯体がメチレンジアニリン金属塩配位錯体を含む、上記態様12に記載のプレポリマー組成物。
[態様14]
i)上記態様1〜11のいずれか一項に記載のプレポリマー組成物を調製する工程と、
ii)工程i)の前記プレポリマー組成物をポリアミン金属塩配位錯体と合わせて、硬化性組成物を形成する工程と、
iii)前記硬化性組成物を加熱して、硬化を起こす工程と
を含む、ポリウレタンエラストマーを調製する方法。
[態様15]
前記ポリアミン金属塩配位錯体がメチレンジアニリン金属塩配位錯体を含む、上記態様14に記載の方法。
[態様16]
上記態様14または15に記載の方法に従って調製されるポリウレタンエラストマー。
[態様17]
0.5mm以上の厚さを有するフィルム、シートまたは成形物品である、上記態様16に記載のポリウレタンエラストマーを含む物品。