特許第6855465号(P6855465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6855465撮像及び生理学的モニタリングを組み合わせた強化型の急性ケアマネジメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855465
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】撮像及び生理学的モニタリングを組み合わせた強化型の急性ケアマネジメント
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20210329BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20210329BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20210329BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20210329BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61B5/00 G
   A61B6/03 377
   A61B8/08
   A61B8/06
   A61M16/00 311
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-516135(P2018-516135)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2018-531067(P2018-531067A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】IB2016056025
(87)【国際公開番号】WO2017060871
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年8月5日
(31)【優先権主張番号】62/239,308
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ラジュ バラサンダー リヤヴ
(72)【発明者】
【氏名】チバット ニコラス ワディー
(72)【発明者】
【氏名】ラデュレスク エミル ジョルジェ
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−061268(JP,A)
【文献】 特表2012−501218(JP,A)
【文献】 特開2007−044364(JP,A)
【文献】 特開2008−212366(JP,A)
【文献】 特表2007−521849(JP,A)
【文献】 特表2015−508672(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0366878(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/091977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者監視デバイスであって、
少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する少なくとも1つの測定値を取得する少なくとも1つの生理学的センサと、
マイクロプロセッとを有し、前記マイクロプロセッサが、
前記少なくとも1つの監視される生理学的変数の測定値を受信し、
前記患者の心肺機能に関係する少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータであって、前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの解剖学的構造測定値を含む、少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を受信し、
前記監視される生理学的変数の前記患者に関する前記測定値及び前記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに基づき、心臓血管、肺又は心肺モデルを用いて、未監視生理学的変数の前記患者に関する値を計算し、前記未監視生理学的変数が、前記センサから直接監視されないか、又は前記医用画像から得られない生理学的変数であり、並びに
1)前記計算された値を表示する、及び2)前記計算された値に基づき患者に治療を供給する治療デバイスを制御することの少なくとも一方を行い、
前記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが更に、前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの血流測定値を含み、
前記少なくとも1つの血流測定値が、平均又は瞬間速度、流速、流量プロフィール、心臓駆出率、心拍出量、又は僧帽弁逆流の量の1つ又は複数を含む、患者監視デバイス。
【請求項2】
前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの解剖学的構造測定値が、前記解剖学的構造のサイズ、前記解剖学的構造の断面積、前記解剖学的構造の容積、及び心筋虚血のパーセンテージの1つ又は複数を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが、前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される、解剖学的構造又は組織の弾性、コンプライアンス、抵抗、せん断弾性率、ヤング率、又は皮膚ツルゴール測定値の少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
像処理要素を更に有し、前記画像処理要素が、
前記患者の少なくとも1つの医用画像を受信し、
前記患者の受信される少なくとも1つの医用画像から少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を生成し、及び
前記マイクロプロセッサに前記生成された値を電子リンクを介して伝達する、請求項1乃至の任意の一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記画像処理要素が前記少なくとも1つの医用画像及び前記生成された値を格納するようプログラムされる画像保管及び通信システムPACSを更に有し、
前記マイクロプロセッサが、前記PACSから前記生成された値を読み出すようプログラムされる、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータの更新された値を自動的に検出し、前記更新された値を使用して未監視生理学的変数の前記患者に関する値を再計算するようプログラムされる、請求項又はに記載のデバイス。
【請求項7】
前記マイクロプロセッサが、治療デバイスを制御するようプログラムされ、前記治療デバイスは、前記計算された値に少なくとも部分的に基づき制御される人工呼吸器設定に従って、前記患者に対する換気を提供するため、前記患者に接続される人工呼吸器を有する、請求項1乃至の任意の一項に記載のデバイス。
【請求項8】
患者監視方法を実行するため、1つ又は複数のマイクロプロセッサにより読み出し可能かつ実行可能な命令を格納する非一時的記憶媒体であって、前記方法が、
患者の生理学的センサから少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する測定値を受信するステップと、
前記患者の心肺機能に関係する少なくとも1つの医用画像から少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を決定するステップであって、前記医用画像パラメータが、前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの解剖学的構造測定値を含む、ステップと、
心臓血管、肺、又は心肺モデルを使用して、未監視生理学的変数の前記患者に関する値を計算するステップであって、前記未監視生理学的変数が、前記センサから直接監視されないか、又は前記医用画像から得られない生理学的変数であり、入力が、前記監視される生理学的変数の患者に関する前記測定値を含み、前記心臓血管、肺又は心肺モデルのモデルパラメータが、前記患者の医用画像から前記医用画像パラメータに関して決定される前記患者特有の値にセットされる、ステップとを有し、
前記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが更に、前記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの血流測定値を含み、
前記少なくとも1つの血流測定値が、平均又は瞬間速度、流速、流量プロフィール、心臓駆出率、心拍出量、又は僧帽弁逆流の量の1つ又は複数を含む、非一時的記憶媒体。
【請求項9】
前記患者監視方法が、1)前記計算された値を表示要素に表示するステップ、及び2)前記計算された値に基づき換気を前記患者に供給するよう人工呼吸器を制御するステップの少なくとも一方を更に有する、請求項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項10】
前記モデルパラメータが、心筋虚血のパーセンテージ、心臓駆出率、心拍出量、及び僧帽弁逆流の量からなる群から選択される心臓パラメータである、請求項又はに記載の非一時的記憶媒体。
【請求項11】
前記モデルパラメータが、せん断弾性率、相対ヤング率、皮膚ツルゴール動き、又は境界位置からなる群から選択される解剖学的構造又は組織パラメータである、請求項又はに記載の非一時的記憶媒体。
【請求項12】
前記患者監視方法が、前記患者の医学的画像が、より最近に取得された前記患者の医用画像により更新されることに基づき、前記決定ステップ及び前記計算ステップを繰り返すステップを更に有する、請求項乃至11の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項13】
前記モデルが、肺モデル又は心肺モデルであり、前記モデルパラメータは、前記患者の隔膜運動と、前記患者のの大きさとの少なくとも一方を含み、未監視生理学的変数の前記患者に関する計算値が、1回換気量、分換気量、及び死腔量の1つ又は複数を含む、請求項乃至12の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
【請求項14】
前記モデルが、心臓血管モデル又は心肺モデルであり、前記モデルパラメータは、前記患者の大静脈における血流パラメータであり、前記監視される生理学的変数が、動脈血圧値を含み、未監視生理学的変数の前記患者に関する計算値は、心拍出量を含む、請求項乃至13の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療モニタリング及び治療技術、呼吸器、心臓血管及び心肺モニタリング及び治療技術、医療換気技術及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓血管、肺、又は他の生理学的システムの生理学的モデリングは、心臓、呼吸器又は類似する医学的状態を持つ患者の患者モニタリング、及び患者換気のような患者治療のために有利であり得る。機械換気(MV)は、一般的に使用される救命措置であり、患者が自発呼吸により適切な換気(従ってガス交換)を達成できないときに与えられる。受動的患者換気では、患者は呼吸を補助することができず、人工呼吸器は、圧力制御モードで動作する。この場合、人工呼吸器の圧力が呼吸仕事量の全部を実行する。能動的患者換気では、患者は少なくとも呼吸を補助することができ、人工呼吸器は、圧力支援モードで動作し、患者の呼吸仕事(WoB)における不足を克服するのに十分な圧力を提供する。人工呼吸器の動作のボリューム制御モードも知られており、そこでは、圧力を制御するのではなく、流量又は体積が、制御されるパラメータである(しかし、圧力制限の設定が、肺気道外傷を防ぐために適用されることもできる)。MVは人命を救う治療法となり得るが、不適切な換気は患者に害を及ぼす可能性があり、例えば、肺に損傷を与える酸素毒性又は高い印加圧力における人工呼吸器誘発肺傷害(VTLI)を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者モニタリングは、効果的な治療を提供する鍵である。心拍数、呼吸数、カプノグラフィを介する二酸化炭素測定値などの監視されるバイタルサイン(即ち変数)は、医療従事者が心肺システムの健康及び機能を評価することを可能にする。しかしながら、例えば心拍出量といった心肺健康の多くの関連する測定基準は、直接的に測定されることはできないか、又は高いレイテンシを持つ離散時間でのみ測定されることができる。例えば、動脈血ガス(ABG)は、動脈血サンプルの周期的な実験室検査により監視される。斯かる「隠された」測定基準は、いくつかの場合において、ヒューリスティックなルールなどを用いて医師により間接的に評価されることができるが、これらは近似的であり、熟練した医学的分析を必要とする。
【0004】
例えば心血管系及び/又は肺系の生理学的モデリングは、斯かる「隠された」測定基準を直接かつ連続的に監視するためのツールを提供することができる。生理学的モデルは、測定されたバイタルサイン(例えば、心拍数、呼吸数、カプノグラフィ値)、人口統計情報(例えば、年齢、性別)を入力として取る。生理学的モデルは、パラメータ化された式をこれらの入力に適合させ、ここで、いくつかの適合パラメータは、心拍出量、ABG値、WoBなどの関心のある隠された測定基準である。動的心肺動作を説明するため、生理学的モデルは好ましくは、差分又は他の時間依存方程式を使用する。このタイプのいくつかの既知の心肺(CP)モデルは、Luらによる「A human cardiopulmonary system model applied to the analysis of the valsalva maneuver」、Am J Physiol Heart Circ Physiol、281:H2661−H2679、2001;Chengらによる「An integrative model of respiratory and cardiovascular control in sleep−disordered breathing」、Respir Physiol Neurobiol、174:4−28、2010;及びChbatらによる「A Comprehensive Cardiopulmonary Simulation Model for the Analysis of Hypercapnic Respiratory Failure」、31 st Annual Int'l Conf. of the IEEE EMBS(Minneapolis、MN、USA、Sept.2−6、2009)に記載される。特に心臓血管、肺、又は複合心肺システムに関するますます正確な生理学的モデルの開発にはかなりの成功があったが、臨床応用のためのこれらのモデルの精度における更なる向上は有益であろう。
【0005】
以下は、上記の問題及び他の問題を克服する新規で改良されたシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、患者監視デバイスは、少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する少なくとも1つの測定値を取得する少なくとも1つの生理学的センサを含む。心臓血管(CV)、肺又は心肺(CP)モデリング要素は、マイクロプロセッサを含み、これは、上記少なくとも1つの監視される生理学的変数の測定値を受信し、上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を受信し、上記監視される生理学的変数の上記患者に関する上記測定値及び上記患者特有の医用画像パラメータに基づき、上記未監視生理学的変数の上記患者に関する値を計算し、並びに1)上記計算された値を表示する、及び2)上記計算された値に基づき患者に治療を供給する治療デバイスを制御することの少なくとも1つを行う。
【0007】
別の態様によれば、非一時的記憶媒体が、患者監視方法を実行するため、1つ又は複数のマイクロプロセッサにより読み出し可能かつ実行可能な命令を記憶する。少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する測定値が、患者の生理学的センサから受信される。パラメータの患者特有の値が、患者の医用画像から決定される。心臓血管(CV)、肺、又は心肺(CP)モデル40を使用して、未監視生理学的変数の患者に関する値が計算される。上記監視される生理学的変数の上記患者に関する上記測定値を含む入力、及び上記患者の医用画像から上記パラメータに関して決定される上記患者特有の値に対してセットされる上記CV、肺又はCPモデルのモデルパラメータが用いられる。
【0008】
1つの利点は、未測定生理学的変数及び/又は(例えば、実験室試験を介した測定による)高い測定レイテンシの生理学的変数に関するより正確で連続的なリアルタイム値を提供することにある。
【0009】
別の利点は、平均又は他の近似モデルパラメータ値に対する依存性が低減された、臨床的心臓血管、肺又は心肺モデルを提供することにある。
【0010】
別の利点は、より正確な生理学的モデリングを介する改善された制御を、人工呼吸器システム又は他の治療システムに提供することにある。
【0011】
別の利点は、計算上の複雑さが低減された臨床的心血管、肺又は心肺モデルを提供することにある。なぜなら、医用画像から得られるモデルパラメータ値が反復モデル最適化中に固定されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】医療用換気システムを図式的に示す図である。
図2図1の医療換気システムにより使用される心肺モデルを図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の更に追加的な利点は、以下の詳細な説明を読み及び理解することにより当業者に認識されるだろう。任意の所与の実施形態が、前述の利点をいずれも達成しない、前述の利点の1つ、複数の、若しくはすべてを達成し得、及び/又は他の利点を達成し得る点を理解されたい。
【0014】
本発明は、様々な要素及び要素の配列の形式並びに様々なステップ及びステップの配列の形式を取ることができる。図面は、好ましい実施形態を説明するためだけにあり、本発明を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【0015】
臨床設定において使用される生理学的モデルに伴い本書で認識される問題は、特定の基礎となる患者パラメータが十分に特徴づけられないことである。例えば、心臓血管の断面又は組織の弾性(又は血流抵抗、組織コンプライアンスなどの対応する機能的パラメータ)などの重要な解剖学的寸法のデフォルト値を想定することは一般的である。これらの想定値は、何人かの患者に対しては弱い近似となる場合がある。その個々の生理学は、関連する側面において平均から強く逸脱する。本書に開示される改良では、超音波撮像のような撮像モダリティが、1つ又は複数のモデルパラメータを直接測定するのに使用される。これにより、モデル精度が改善され、結果としてモデルにより出力される変数の精度が改善される。改善された臨床モデルは、心臓及び呼吸器の臨床診療において多数の用途を見出す。例示的な例では、機械換気を受けている患者を監視し、オプションで人工呼吸器も制御するのに、斯かるモデルが使用される。しかしながら、開示される改善された心臓血管、肺、又は心肺モニタリングは、臓器不全(例えば、心不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を評価又は予測し、呼吸器離脱を監視するなどの際に、心臓及び呼吸器の臨床診療における多様な用途を見いだす。
【0016】
図1を参照すると、例示的な患者監視デバイスが、人工呼吸器10を介して機械換気を受ける患者を監視するために使用され、人工呼吸器は、人工呼吸器設定に基づき、吸気エアホース14を介して換気患者12に気流を供給する。吐き出された空気は、呼気エアホース16を介して人工呼吸器10に戻る。Yピース又はTピース20(又は代替的には気管チューブ)が、吸入中に吸気エアホース14の排出端からの空気を換気患者12に結合し、呼気中に換気患者12からの呼気を呼気エアホース16に結合する。図1において図示省略されるが、多数の他の補助要素が存在し、これは、換気モード及び換気患者12により受けられる他の治療に基づき提供されることができる。斯かる補助的要素は、例として、通常は吸入酸素濃度(FiO2)人工呼吸器設定により制御される、制御されたレベルの酸素を空気流に供給するための酸素ボトル又は他の医療グレードの酸素源;入口ライン14に配管される加湿器;患者12に栄養を供給するための経鼻胃管;などを含むことができる。人工呼吸器10は、ユーザインタフェースを持ち、これは、図示の例では、タッチセンシティブディスプレイ要素22を含む。これを介して、医師、呼吸専門医、又は他の医療従事者は、人工呼吸器設定を入力又は調整し、測定された生理学的変数及び人工呼吸器10の動作パラメータを監視することができる。追加的又は代替的に、ユーザインタフェースは、物理的ユーザ入力制御(ボタン、ダイヤル、スイッチなど)、キーボード、マウス、可聴警報デバイス、インジケータライトなどを含み得る。
【0017】
図1は、換気患者12を監視するシステムを図式的に示す。患者監視デバイスは、Yピース20を介して気道に適用される制御された圧力及び/又は制御された空気流といった、人工呼吸器設定から直接的に測定されるか又は知られる人工呼吸器出力情報30を入力として受信する。これらの測定は、気道流量計、気道圧計、呼吸二酸化炭素(CO2)レベルを測定するカプノグラフなどの換気システムの内蔵監視デバイスを用いる。患者監視デバイスは更に、患者の生理学的センサ32により監視される生理学的変数の換気患者12に関する測定値を入力として受け取る。これらのセンサ32は、例示として、心拍数モニタ、血圧モニタ(例えば、動脈血圧、中心静脈圧など)、酸素飽和度センサ(例えば、心拍数及びSpO2レベルを測定するパルスオキシメータ)等を含むことができる。他の生理学的変数は、採取される組織サンプルに対して実施される実験室試験、例えば血液検査を介して測定されることができる。これらの生理学的変数は、高いレイテンシを持ち、これは、斯かる変数に関する値が、血液又は組織サンプルが採取されたときの患者状態を反映することを意味し、この時間は、数十分から数時間前又はそれ以上であり得る。
【0018】
図1はまた、換気患者12の少なくとも1つの医用画像を取得するよう構成される撮像デバイス34を示す。撮像デバイス34は、X線、超音波、磁気共鳴(MR)、コンピュータ断層撮影(CT)、陽電子放射断層撮影(PET)、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)といった任意の適切な撮像システムとすることができる。例示的な撮像デバイス34は、超音波撮像システム34であり、これは、患者の病室においていくつかの超音波処置が実行されることを可能にする高度な移動性のため、日常的な患者監視に対する利点を持つ。超音波撮像システム34は、心臓又は呼吸器疾患に罹患している患者に対して様々な診断作業を行うために一般に使用される。例えば、超音波撮像システム34は、血管造影を行うために使用されることができる。これは、血管疾患を診断及びモニタするため、Bモード撮像とドップラー血流測定とを組み合わせる。超音波撮像システム34は追加的又は代替的に、心臓病を評価するため、及び/若しくは気管病変を検出するため心エコー検査を行うのに、又はB線残響アーチファクトの分析を介して肺鬱血を行うのに使用されることができる。撮像システム34は典型的には、撮像システム自体に一体化されることができる(例えば、撮像システム34のコントローラ又は他のマイクロプロセッサにおいて実現される)、又は撮像システム34と動作可能に接続されるデスクトップ若しくはノートブックコンピュータといった異なるシステムにおいて実現されることができる画像処理要素36を含む。撮像システム34により取得される医用画像、及び画像処理要素36により実行される取得後画像処理により生成される追加情報が、デジタル画像通信(DICOM)フォーマット又は別のストレージシステム及び/若しくは他のストレージフォーマットで画像保管通信システム(PACS)38に適切に格納される。
【0019】
更に、本書に開示されるように、例示的な超音波34から、及び/又はCT、MR若しくはPETなどの別の医療撮像システムからの医用画像が、生理学的モデリングに使用される、換気患者12の少なくとも1つのパラメータの患者特有値を決定するために使用される。このため、組織、器官、又は血管の生理的パラメータ値を決定するのに、患者12の画像が取得されることができる。このパラメータ値は例えば、サイズ、断面積、体積、せん断弾性率、相対ヤング率、皮膚ツルゴール、心筋虚血のパーセンテージ、平均又は瞬間速度、流量、流量プロファイル、心臓駆出率、心拍出量、僧帽弁逆流の量、動き、境界などを含む。例えば、直径を決定するのに、患者12の大動脈の画像が撮られることができる。
【0020】
センサ32から及び人工呼吸器10(利用可能な場合)からの生理学的変数の測定値は、患者12の物理的状態に関する実質的な情報を提供する。しかしながら、心拍出量などの他の関心生理学的変数は、直接的に測定可能ではないか、又は高レイテンシの実験室試験でのみ測定可能である。斯かる変数に関するリアルタイム値を提供するため、生理学的モデル40が提供される。例示的な生理学的モデルは、心臓血管システム及び呼吸システムをモデル化し、これらの2つのシステム間の相互作用を含む心肺(CP)モデル40である。図2は、CPモデル40の適切なブロック図を図式的に示す。CPモデル40は、図2に詳細に示されるように、心血管循環、呼吸力学、組織及び肺胞ガス交換、心臓血管及び/又は呼吸機能に作用する短期間の神経制御機構などの様々な生理学的特徴をモデル化する。例示的なモデル40は、心臓血管系及び肺系及びそれらの相互作用をモデル化する心肺モデルである。しかしながら、他の実施形態では、これらのシステムの一方又は他方のみがモデル化されることができる。例えば、モデルは、心臓血管(CV)モデル又は肺モデルであってもよい。動的生理学的挙動を説明するため、生理学的モデル40は好ましくは、差分又は他の時間依存方程式を使用する。心臓血管系及び/又は肺系の様々な生理学的モデルがモデル40として用いられることができる。いくつかの適切なモデルは例えば、Luらによる「A human cardiopulmonary system model applied to the analysis of the valsalva maneuver」、Am J Physiol Heart Circ Physiol、281:H2661−H2679、2001;Chengらによる「An integrative model of respiratory and cardiovascular control in sleep−disordered breathing」、Respir Physiol Neurobiol、174:4−28、2010;及びChbatらによる「A Comprehensive Cardiopulmonary Simulation Model for the Analysis of Hypercapnic Respiratory Failure」、31st Annual Int'l Conf. of the IEEE EMBS(Minneapolis、MN、USA、Sept.2−6、2009)に記載される。換気患者の例示的なケースでは、モデル40はオプションとして、人工呼吸器10をシミュレートする態様(即ち、人工呼吸器モデルの態様)を含む。例えば、Yピース20及び入口ホース14を介して人工呼吸器10により気道に適用される制御された圧力は、喉頭を表す抵抗に適用される外部人工呼吸器圧力源としてモデル化されることができる(上記Chbatらを参照)。一方、人工呼吸器10により気道に供給される制御された空気流は同様に、外部流源としてモデル化されることができる。センサ32により、又は人工呼吸器システム10の内蔵センサにより測定される各生理学的変数は、以下により詳細に説明されるように、それに関連付けられる測定値を持つ。例示的な通気患者CPモデル40は、それが、換気患者12のセンサ32により測定される監視される生理学的変数の値に基づき、及び人工呼吸器の設定に基づき、未監視生理学的変数(即ち、センサ32により直接監視されないか、又は撮像装置34により生成される画像から得られない生理学的変数)の換気患者12に関する計算値を生成するために使用されることができる点で実質的な利点を提供する。なぜなら、これらは、換気患者CPモデル40への入力でもあるからである。換気患者CPモデル40の別の利点は、人工呼吸器の設定における変化に対する患者の応答を予測することができることである。なぜなら、換気患者CPモデル40は、人工呼吸器の設定と様々な生理的パラメータとの間の相互関係をモデル化するからである。
【0021】
生理学的モデル40はまた、器官、組織などを表す様々なパラメータを持つ。例えば、心臓血管系のモデリングでは、大動脈又は下大静脈(IVC)などの様々な主要心臓血管の水圧インピーダンスは、モデルパラメータであり、典型的には、モデル化される血管(例えば大動脈)の内腔径(即ち、内径)から計算される。より一般的には、いくつかの例示的なモデルパラメータは、収縮期及び拡張期の心室容積;心臓虚血のパーセンテージ;主要な管腔径;せん断弾性率、ヤング率などで測定される組織コンプライアンス;心臓駆出率、心拍出量、又は僧帽弁逆流などの心臓の血流パラメータ;心臓及び/又は呼吸循環中の臓器境界の動きなどの解剖学的構造又は組織変位;主要な血管における血液速度及び/又は容積のような血流パラメータ;肺容積;気管気流;などを含む。一般的なアプローチでは、これらのモデルパラメータに対する「平均」又は「標準」値が使用される。しかしながら、特定の患者12がそのパラメータに対する非典型的な値を持つ場合、斯かる値は実質的に誤差がある場合がある。典型的な値は例えば、血管狭窄(血流の減少をもたらす);低い駆出率及び/又は低い心拍出量をもたらす心臓の問題;低い有効肺容積をもたらす肺の鬱血;などの医学的状態から生じる場合がある。本書で認識されるように、正確には、これらのタイプの非定型パラメータ値は、患者が心臓及び/又は呼吸器疾患に罹患している場合の臨床的な状況において生じる可能性が高い。
【0022】
本書に開示されるように、患者特有のモデルパラメータ値は、例示的な超音波撮像システム34又は他の利用可能な撮像システムを使用して取得される医用画像からモデルパラメータを直接測定することにより得られる。いくつかの臨床設定では、斯かる測定値は、肺鬱血の評価のための血管造影、心エコー検査、又は肺超音波などのタスクに関する既定の撮像セッションにより生成されることができ、又はこれらの画像に対して実行される追加の画像処理により生成されることができる。他の臨床設定では、専用撮像セッションが、モデルパラメータを取得するための専用画像処理と共に実行されることができる。
【0023】
図1を再び参照すると、撮像システム34は、様々な患者情報を生成するため、撮像システム34からの画像又は撮像データを処理する画像処理要素36を含む。画像処理要素36は、生理学的モデル40の1つ又は複数のモデルパラメータを決定するようプログラムされる。いくつかの場合において、画像処理要素36は、他の何らかの分析(例えば、血管造影、心エコー検査)の一部としてモデルパラメータ値を生成してもよい。他の場合には、画像処理要素は、血管造影又は心エコー検査のようなタスクを実行するよう設計された従来の超音波システムに対して修正され、この場合、修正は、生理学的モデルパラメータを生成する追加の処理モジュールを含む。例えば、画像処理要素36は、心臓の超音波画像を表示し、マウスポインタを使用して大動脈の反対側の内径側壁をマークすることにより医師が大動脈管腔の直径を示すことを要求することができる。血流速度は、ドップラー超音波データから決定されることができる。
【0024】
医用画像から決定されるモデルパラメータは、手動で、又は好ましくは電子リンク39を介して自動的に、患者特有の生理学的モデリング要素42にインポートされる(例えば、コンピュータ、人工呼吸器10のプロセッサ、超音波システム34のプロセッサなどにより実現される)。一例では、電子リンク39は、画像保管及び通信システム(PACS)38を介している。このリンク39は、「プッシュ」タイプのリンクとして構成されることができる。そこでは、撮像システム34の画像処理要素36が、PACS38におけるパラメータの利用可能性を生理学的モデリング要素42に通知する。又は「プル」タイプのリンクとして構成されることができる。そこでは、生理学的モデリング要素42が、更新されるモデルパラメータに関してPACS38を定期的にチェックする。更に、PACS38を介した通信は、例示的な例であり、2つの要素36、42の間の直接接続(例えば、WiFi経由)を介した転送などの他の通信経路が想定される点を理解されたい。例えば、ユーザが特定のモデルパラメータのための患者特有の値を入力することができる設定ファイル編集ウィンドウを含むようモデリング要素42をプログラミングすることにより、手動転送を採用することも考えられる。撮像システム34は、そのディスプレイにパラメータ値を表示し、その結果、ユーザは、撮像システム34からパラメータ値を読み出してモデリング要素42の構成ウィンドウに入力することができる。
【0025】
引き続き図1を参照すると、例示的な実施例において、換気患者CPモデル40は、特定の換気患者12に適合するよう、患者特有のCPモデリング要素42によりリアルタイムに個人化される。換気されたCPモデル40は、(i)センサ32及び/又はベンチレータ10の内蔵センサから少なくとも1つの監視される生理学的変数の測定値を受信し、(ii)撮像デバイス34、36から、患者の医用画像から生成される1つ又は複数の生理学的モデルパラメータの値を受信する。パラメータ推定アルゴリズム44は、センサ32により患者12から収集される生理学的変数測定値と、撮像デバイス34から得られる医用画像から決定される1つ又は複数の生理学的パラメータとに基づき、患者の変化する状態にCPモデルを適合させるよう構成される。比較器要素46は、(1)監視される生理学的変数に関する換気患者CPモデル40の予測と、(2)センサ32により測定される監視される生理学的変数の換気患者12に関する値との誤差を決定する。パラメータ推定ルーチン44で使用される基準は、この誤差の最小化である。この最適化の実行において、モデルパラメータは一般に、パラメータ推定44の一部としてその値が最適化される調整可能な変数として扱われてもよいし、又は固定されてもよい。しかしながら、撮像システム34から得られる1つ又は複数のモデルパラメータは好ましくは、推定44の間に医用画像から決定される値に固定される。これは、計算の複雑さを低減し、血管狭窄又は心臓若しくは肺疾患などのいくつかの状態のために特定の患者12が非定型パラメータ値を持つことが原因による、実質的な誤差の確率を減らす。説明のため、図2では、血管横断面積、心室容積などの医療画像からのパラメータ値P1が、CPモデル40の心臓血管要素に提供される。患者特有のCPモデリング要素42の出力は、未測定生理学的変数及び/又は高レイテンシの生理学的変数に関する値(例えば実験室試験値)を出力するのに使用され得る、適合された換気患者CPモデル50である。CPモデル50は追加的又は代替的に、以下により詳細に説明されるように、人工呼吸器10の人工呼吸器設定を最適化するために人工呼吸器モジュール54により使用されてもよい。
【0026】
パラメータ推定ルーチン44は、監視される生理学的変数の患者に関する測定値に基づき、未監視生理学的変数の患者に関する値を計算することができる。パラメータ推定ルーチン44により計算され得る未監視生理学的変数のいくつかの例は、肺コンプライアンス、気道抵抗及び大動脈狭窄を含む。パラメータ推定ルーチン44は、センサ32により得られる監視される生理学的変数値に基づき生理学的パラメータ及び変数の全てではないにしても大部分を計算することができるが、1つ又は複数の生理学的モデルパラメータを得るために撮像デバイス34からの画像を使用することは、パラメータ推定ルーチン44が実行する計算の数を有利に減らす(即ち、最適化する値の数が減少される)。これは、モデル40の精度を向上させつつ、複数の計算を行った後の「収穫逓減」が低減される。撮像は通常、離散的撮像セッションで行われるので、撮像ベースの変数は、患者12が超音波撮像セッションを受けるたびに更新される点を理解されたい。実際には、斯かる更新は、測定される生理学的変数におけるリアルタイムの変化に対応するため、すでに実行されている場合がある。医学的状態及び医療機関の実務に基づき、斯かる撮像セッションは、診断及び/又はモニタリング目的のために既に日常的にスケジュールされているので、追加的な撮像手順が実行される必要はない。
【0027】
いくつかの実施形態では、CPモデル50を使用して、例示的な人工呼吸器10の閉ループフィードバック制御が提供され、又は人工呼吸器設定の推奨が提供される。図1の例示的な例では、人工呼吸器モジュール54は、適合された換気患者CPモデル50を使用して、人工呼吸器設定の調整のためのコスト関数60を計算し、最適化アルゴリズム62(例えば、空間探索、又は勾配降下のようなより複雑な最適化)を使用して、最適な人工呼吸器設定を特定する。より詳細には、換気モジュール54は、適合された換気患者CPモデル50を使用して、調整に対する患者の応答を予測し、適合された換気患者CPモデルに関するコスト関数60の値を計算する。コスト関数60は、各調整に関連付けられる総コストを表す(本書で使用される「コスト」は、利益を包含する点に留意されたい。例えば、コスト関数60は、換気患者12の実際の集合状態に対して予測される人工呼吸器システム調整が、コスト関数設計に基づき、低コスト、又は負のコストさえも生成するよう構成されることができる。)。コスト関数60は、動脈O2及びCO2血液成分目標などの費用条件を集約し、酸素毒性を回避し、目標肺胞圧を得るなどにより規定されてもよい。最適化アルゴリズム62により実行される最適化は、制約付き最適化であってもよい。そこでは、最適化は、医師又は他の医療関係者により特定される1つ又は複数の制約により制約される。例えば、斯かる制約の1つは、動脈血酸素分圧(PaO2)が医師の指定範囲内にあること、及び/又は動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が医師指定範囲内にあることを要求する場合がある。
【0028】
様々なデータ処理要素36、42、54は、開示された処理を実行するため、ファームウェア又はソフトウェアによりプログラムされたマイクロプロセッサとして適切に実現される。いくつかの実施形態では、マイクロプロセッサは、人工呼吸器10及び/又は撮像システム34に一体化され、その結果、データ処理は、ベンチレータ10及び/又は撮像システム34により直接実行される。他の実施形態では、マイクロプロセッサは、人工呼吸器10とは別個であり、例えばデスクトップコンピュータのマイクロプロセッサである。人工呼吸器設定最適化システムの様々なデータ処理要素36、42、54は、開示された動作を実現するため、(例えば、上述のような)マイクロプロセッサにより読み出し可能かつ実行可能な命令を格納する非一時的記憶媒体として実現されてもよい。非一時的記憶媒体は、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、フラッシュメモリ、又はベンチレータ10に関するファームウェアの他のリポジトリを有することができる。追加的に又は代替的に、非一時的記憶媒体は、(コンピュータ実現による実施形態に適した)コンピュータハードドライブ、(例えば斯かるコンピュータにインストールするための)光ディスク、ベンチレータ10又はコンピュータが、インターネット又は他の電子データネットワークなどを介して、システムソフトウェア又はファームウェアをダウンロードすることができるネットワークサーバデータ記憶装置(例えばRAIDアレイ)などを有することができる。
【0029】
本発明が、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。上記の詳細な説明を読み及び理解すると、第三者は、修正及び変更を思いつくことができる。本発明は、添付の特許請求の範囲又はその均等の範囲に入る限りにおいて、斯かる修正及び変更の全てを含むものとして解釈されることが意図される。
以上をまとめると付記のようになる。
(付記1)
患者監視デバイスであって、
少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する少なくとも1つの測定値を取得する少なくとも1つの生理学的センサと、
マイクロプロセッサを含む心臓血管、肺又は心肺モデリング要素とを有し、上記マイクロプロセッサが、
上記少なくとも1つの監視される生理学的変数の測定値を受信し、
上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を受信し、
上記監視される生理学的変数の上記患者に関する上記測定値及び上記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに基づき、上記未監視生理学的変数の上記患者に関する値を計算し、並びに
1)上記計算された値を表示する、及び2)上記計算された値に基づき患者に治療を供給する治療デバイスを制御することの少なくとも一方を行う、患者監視デバイス。
(付記2)
上記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが、上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの解剖学的構造測定値を含む、付記1に記載のデバイス。
(付記3)
上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの解剖学的構造測定値が、上記解剖学的構造のサイズ、上記解剖学的構造の断面積、上記解剖学的構造の容積、及び心筋虚血のパーセンテージの1つ又は複数を含む、付記2に記載のデバイス。
(付記4)
上記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが、上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される、解剖学的構造又は組織の弾性、コンプライアンス、耐性、せん断弾性率、ヤング率、又は皮膚張力測定値の少なくとも1つを含む、付記1乃至3のいずれか一項に記載のデバイス。
(付記5)
上記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータが、上記患者の少なくとも1つの医用画像から生成される少なくとも1つの血流測定値を含む、付記1乃至4の任意の一項に記載のデバイス。
(付記6)
上記少なくとも1つの血流測定値が、平均又は瞬間速度、流速、流量プロフィール、心臓駆出率、心拍出量、又は僧帽弁逆流の量の1つ又は複数を含む、付記5に記載のデバイス。
(付記7)
少なくとも1つのプロセッサを含む画像処理要素を更に有し、上記プロセッサが、
上記患者の少なくとも1つの医用画像を受信し、
上記患者の受信される少なくとも1つの医用画像から少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータに関する値を生成し、及び
上記心臓血管、肺、又は心肺モデリング要素に上記生成された値を電子リンクを介して伝達する、付記1乃至6の任意の一項に記載のデバイス。
(付記8)
上記電子リンクが、画像処理要素が上記少なくとも1つの医用画像及び上記生成された値を格納するようプログラムされる画像保管及び通信システムPACSを有し、
上記心臓血管、肺、又は心肺モデリング要素が、上記PACSから上記生成された値を読み出すようプログラムされる、付記7に記載のデバイス。
(付記9)
上記心臓血管、肺、又は心肺モデリング要素が、上記少なくとも1つの患者特有の医用画像パラメータの更新された値を自動的に検出し、上記更新された値を使用して未監視生理学的変数の上記患者に関する値を再計算するようプログラムされる、付記7又は8に記載のデバイス。
(付記10)
上記画像処理要素により受信される上記患者の少なくとも1つの医用画像を取得する撮像デバイスを更に有する、付記7乃至9の任意の一項に記載のデバイス。
(付記11)
上記マイクロプロセッサが、治療デバイスを制御するようプログラムされ、上記治療デバイスは、上記計算された値に少なくとも部分的に基づき制御される人工呼吸器設定に従って、上記患者に対する換気を提供するため、上記患者に接続される人工呼吸器を有する、付記1乃至10の任意の一項に記載のデバイス。
(付記12)
患者監視方法を実行するため、1つ又は複数のマイクロプロセッサにより読み出し可能かつ実行可能な命令を格納する非一時的記憶媒体であって、上記方法が、
患者の生理学的センサから少なくとも1つの監視される生理学的変数の患者に関する測定値を受信するステップと、
上記患者の医用画像からパラメータに関する患者特有の値を決定するステップと、
心臓血管、肺、又は心肺モデルを使用して、未監視生理学的変数の上記患者に関する値を計算するステップであって、入力が、上記監視される生理学的変数の患者に関する上記測定値を含み、上記CV、肺又はCPモデルのモデルパラメータが、上記患者の医用画像から上記パラメータに関して決定される上記患者特有の値にセットされる、ステップとを有する、非一時的記憶媒体。
(付記13)
上記患者監視方法が、1)上記計算された値を表示要素に表示するステップ、及び2)上記計算された値に基づき換気を上記患者に供給するよう人工呼吸器を制御するステップの少なくとも一方を更に有する、付記12に記載の非一時的記憶媒体。
(付記14)
上記パラメータが、解剖学的構造のサイズ、断面積、又は体積である、付記12又は13に記載の非一時的記憶媒体。
(付記15)
上記パラメータが、心筋虚血のパーセンテージ、心臓駆出率、心拍出量、及び僧帽弁逆流の量からなる群から選択される心臓パラメータである、付記12又は13に記載の非一時的記憶媒体。
(付記16)
上記パラメータが、せん断弾性率、相対ヤング率、皮膚張力、運動、又は境界位置からなる群から選択される解剖学的構造又は組織パラメータである、付記12又は13に記載の非一時的記憶媒体。
(付記17)
上記パラメータが、血流パラメータである、付記12又は13に記載の非一時的記憶媒体。
(付記18)
上記患者監視方法が、上記患者の医学的画像が、より最近に取得された上記患者の医用画像により更新されることに基づき、上記決定ステップ及び上記計算ステップを繰り返すステップを更に有する、付記12乃至17の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
(付記19)
上記モデルが、肺モデル又は心肺モデルであり、上記パラメータは、上記患者の超音波画像から決定される横隔膜運動と、上記患者のX線又はコンピュータ断層撮影画像から決定される肺の大きさとの少なくとも一方を含み、未監視生理学的変数の上記患者に関する計算値が、1回換気量、分換気量、及び死腔量の1つ又は複数を含む、付記12乃至18の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
(付記20)
上記モデルが、心臓血管モデル又は心肺モデルであり、上記パラメータは、上記患者の超音波画像から決定される下大静脈における血流を特徴付け、上記監視される生理学的変数が、動脈血圧値を含み、未監視生理学的変数の上記患者に関する計算値は、心拍出量を含む、付記12乃至18の任意の一項に記載の非一時的記憶媒体。
図1
図2