(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転カウンタで設定できる測定可能な回転数nを決定する際にエラー状態を自己検知する磁気回転カウンタであって、回転数nは回転する磁気要素(4)、若しくは回転する磁極ホイール(5a)若しくは通過移動可能なリニア磁気スケール(5b)の通過移動可能な数nの磁極によって生み出され、この磁気回転カウンタはセンサ(2)を有しており、このセンサは各巻きが略菱形に形成されたオープンスパイラル(20;20a、20b)又は多巻きクローズドループ(27)からなる磁壁伝導路を含み、これらの磁壁伝導路はGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成され、それらに少なくとも2個の磁壁(111、112)を導入でき、これら少なくとも2個の磁壁は、オープンスパイラル(20;20a、20b)又は多巻きクローズドループ(27)の角に位置していると共に互いに180度の角度間隔で配置されており、設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を磁壁伝導路上に設けた接点(70、80;91、93、95、90、92、94又は70、80;91、93、95、97又は71、81;91、93、95、97−72、82;99、101、103、l05、107又は71、81;91、93−72、82;95、97、99又は71、81;91〜74、84;95)で測定することによって、磁壁のポジションを探し出すことができるものにおいて、
−磁壁伝導路は磁壁(DW)及び/又は磁壁ギャップ(DWL)の設定可能な一対一で対応する磁化パターン(MM)を有しており、
−前記接点は、これらによって覆われている磁壁伝導路の関連する部分と共に、並行に又は同時に読み出し可能なホイートストンブリッジ若しくはホイートストンハーフブリッジを形成し、ホイートストンブリッジ若しくはホイートストンハーフブリッジによって測定された抵抗比は信号レベルとして信号レベルシーケンス(SPF)の形で全て第1のメモリ(9)に表形式で記憶し、その信号レベルは現在の回転数若しくは移動数を把握するために、各回転数i(0≦i≦n)について第2のメモリ(10)に表形式で記憶された信号レベルシーケンスの目標値パターン(10a、10b、10c及び10d)と連続的に比較可能であり、及び
−第3のメモリ(12)が設けられており、第3のメモリには、各回転数及び各想定可能な計数エラーに対応する信号レベルシーケンスのエラー目標値パターン(12a、12b、12c、12d)が表形式で記憶されおり、第1のメモリ(9)に記憶された信号レベルシーケンスと目標値パターン(10a、10b、10c及び10d)との比較によって、目標値パターン(10a、10b、10c及び10d)と測定された前記抵抗比との間に一致が存在しなければ、第1のメモリ(9)に記憶された信号レベルシーケンスとエラー目標値パターン(12a、12b、12c、12d)との比較が行われ、発生したエラーに依存して、なおも回転数に対して妥当な値を出力することができ、
−処理ユニット(11)によって第1のメモリ(9)に記憶されている測定された信号レベルシーケンスと、第2のメモリ(10)及び第3のメモリ(12)に記憶されている信号レベルシーケンスとの連続的比較を行うことができ、及び
−回転要素(4)の全回転又は半回転、又は回転する磁極ホイール(5a)若しくは通過移動可能なリニア磁気スケール(5b)の移動ステップの間に、第3のメモリに記録された発生したエラーに対応するエラー値又は第3のメモリ(12)に記録されたエラー値及び有効な回転数を出力可能である磁気回転カウンタ。
回転カウンタ(2)の他に、回転要素(4)若しくは磁極ホイール(5a)の角度位置又はリニアスケール(5b)の直線移動を検知するための別の角度センサ又は象限センサ(3)が設けられており、角度センサ又は象限センサ(3)の信号は処理ユニット(11)による比較のために、象限若しくは角度部分又はリニアスケール部分に割り当てられた第2のメモリ(10)内のどのサブテーブル(10a−10d)と、第3のメモリ(12)内のどのサブテーブル(12a−12d)を使用すべきか指定することを特徴とする、請求項1に記載の磁気回転カウンタ。
磁壁伝導路は多数巻きスパイラル(20)から形成されており、このスパイラルは両側が2個の尖端部(21、22)で終わり、又は尖端箇所に1個若しくはそれぞれ1個の磁壁生成器(23、24)が設けられており、各巻きが略菱形に形成されたスパイラル(20)に所定の磁化パターン(MM)を2個の隣接する磁壁(DW)若しくは磁壁ギャップ(DWL)との間の設定可能な間隔で有しており、磁壁伝導路上に電気接点が設けられていて、スパイラル(20)の各巻きは、対角線状に相対して、それぞれ1個のgnd接点(70)とそれぞれ1個のVcc接点(80)と接触し、又は多重読出しの場合は1個の共通のgnd接点及びそれぞれ1個のVcc接点若しくは1個の共通のVcc接点群及びそれぞれ1個のgnd接点と接触しており、スパイラル(20)の各巻きの角と接触する中間接点(91、93、95及び90、92、94)が、Vcc接点及びgnd接点上にある対角線を基準にして専ら片側に局在化して設けられており、若しくは多重読出しの場合はホイートストン(ハーフ)ブリッジ中間接点として複数の巻きと接触する接点に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の磁気回転カウンタ。
複数の互いに分離された多巻きクローズドループ(S5、S8、S9)が設けられており、それらのそれぞれ一対一に対応して決定可能な最大回転数は、設定可能な磁壁生成時に、互いに素に規定されていることを特徴とする、請求項1及び4に記載の磁気回転カウンタ。
【背景技術】
【0002】
基本的に磁壁(DW)を利用して回転を無接触及び無電流で計数するための回転カウンタは自体公知であり、例えばDE102008063226A1、DE102010022611A1、DE102011075306A1及びDE102013018680A1に詳述されている。
【0003】
上の文献で開示されている回転カウンタに共通しているのは、次の点である。使用されるセンサシステムは、少なくとも1個のセンサ要素と少なくとも1個の外部磁界からなり、センサ要素は磁界において、若しくは磁界はセンサ要素において無接触に通過移動又は回転する。
【0004】
センサ要素は、少なくとも部分的に、非磁性層によって分離された、少なくとも1個の硬磁性層と少なくとも1個の軟磁性層からなる層構造を有している。センサシステムの動作時に磁界がセンサ要素において(又はその逆に)回転又は通過移動することによって、軟磁性層の磁化のみ変化させることができ、硬磁性層の磁化は変化しない。これにより軟磁性層の磁化はセンサ要素内で全部又は一部を硬磁性層の磁化に対してむしろ平行に、或いはむしろ逆平行に配向できる。この磁化の異なる向きは、種々の経路部分に電気抵抗の差を生じさせ、その差はGMR効果又はTMR効果によって読出し可能である。
【0005】
軟磁性層の内部では、2種類の磁化された領域が磁壁(DW)によって互いに分離されている。
【0006】
センサシステムの動作時に、センサ要素内における、例えば回転による外部磁界の位置変化が、センサ要素内に存在する磁壁の無電流の運動を引き起こす。
【0007】
読み出されたDWポジションは、具体的な回転カウンタで把握可能な一対一で対応して決定された回転(回転数)に割り当てられており、電子評価装置において把握される。好適な実施形態において、複数のセンサ要素又はセンサ要素の複数の部分はホイートストンブリッジ又はホイートストンハーフブリッジで電気的に相互に接続されており、そうすることにより温度が磁気抵抗信号に与える影響が抑制される。
【0008】
DE102008063226A1による回転カウンタは、幾何学的に一方の端部が大きい面で終わる菱形スパイラルによって形成されている。この大きい、好ましくは円形の面は、磁壁生成器(DWG)として働き、スパイラルと同じ材料から作られている。磁界が180度回転するごとに、又はセンサ要素が180度回転するごとに、この磁壁生成器において面−スパイラル移行部にいわゆる180度磁壁が生成される。この180度DWはスパイラル内に進入する。生成された180度DWは磁界の回転方向でスパイラル端部に向かってスパイラル回転方向に輸送され、若しくはスパイラル回転方向と反対の回転方向で磁壁がDWGに向かって輸送される。その際にスパイラルから最初にDWGに到着する180度DWは、同時にDWG内で生成される180度DWと対消滅する。従ってスパイラルは磁界が連続的に回転することにより順次磁壁を消去できる。固定したセンサ要素における磁界の回転と同等に、定置された磁石システムに対してセンサ要素の回転が行なわれる。
【0009】
DE102011075306A1による回転カウンタは、一方の端部に回転方向が反対に向けられたそれぞれ1個のDWGを有する2個の菱形スパイラルから、若しくは一方の端部又は中央に1個のみのDWGを有するこれら2個のスパイラルの組み合わせからなる。
【0010】
DE102008063226A1及びDE102011075306A1によるこれらの回転カウンタに共通しているのは、半回転ごとに各スパイラルにおける180度磁壁の数が1ずつ変化することである。
【0011】
これは、少なくとも1個の交点を備えた少なくとも1個のクローズドループ(DE102013018680A1)、又は少なくとも1個のブリッジを備えた少なくとも1個のクローズドループ(DE102010022611A1)を有する回転カウンタでは異なる。これらの回転カウンタでは1個のスパイラルの両端部が互いにクローズドループに接続されている。n巻きでは直接接続は(n−1)巻きと交差する。従って2巻きスパイラルは1個の交点を備えたループとなり、3巻きスパイラルは2個の交点を備えたループとなる。各巻きは最大2個の磁壁を受容できるので、n巻きのループでは最大2n個の磁壁が存在できる。
【0012】
クローズドループでは通常の計数動作時にDWは生成又は消去されない。磁壁の消去又は生成は計数エラーを招く結果となり、排除されなければならない。少なくとも1個のクローズドループを有する回転カウンタは、初期化プロセスにおいて正確な数の磁壁がセンサ要素に書き込まれることを要求する。
【0013】
DWGを有するオープンスパイラルを備えた回転カウンタの幾つかの実施形態は、機械的に初期化できる。これは例えばn巻きのスパイラルにおいて、スパイラルを完全に磁壁で満たすために、センサ要素若しくはセンサシステムの外側の磁石が少なくともn回転動くことによって起こる。続いて反対方向にn回転すると、スパイラルは磁壁が空になる。回転を右から左に計数する応用に対しては、初期化のために中央位置でスパイラルは最大n回転後にDWで満たされ、それから反対の回転方向にn/2回転するとn/2DWまで空になる。
【0014】
前述した全ての回転カウンタで共通しているのは、回転の計数が、クローズドループ内で磁壁を輸送することにより、若しくはオープンスパイラル内で磁壁を輸送して生成又は消去することにより、無電流で行われる点である。計数された回転を一対一で対応するDWポジション及び/又はDW数によりセンサ要素に記憶することも無電流で行われる。
【0015】
これに対してセンサ要素を読み出すために電力が必要とされる。このために好適な実施形態において、巨大磁気抵抗効果(GMR)又はトンネル磁気抵抗効果(TMR)が利用されて、複数のセンサ要素又は1個のセンサ要素の複数の部分が公知の先行技術によりホイートストンハーフブリッジ又はホイートストンブリッジに接続されている。
【0016】
磁化に応じてセンサ要素は種々の部分に異なる電気抵抗若しくは異なる電位を有し、これらはセンサ要素又はセンサ要素の一部がホイートストンハーフブリッジ又はホイートストンブリッジに接続されている場合は読出し可能である。磁化状態を呼び出すために、測定電流がセンサ要素(若しくはホイートストン(ハーフ)ブリッジ)に通されて、測定結果が所定の閾値と比較される。閾値を下回るか又は上回るかによって、測定結果が例えば「このハーフブリッジにDWが存在する」状態に相当するか否かを決定できる。
【0017】
DE102008063226A1による回転カウンタにおいて、初めて半巻きの個別接点接触を有する菱形がホイートストンハーフブリッジに導入された。この特に有利な構成は正方形を用い、巻き当り互いに90度の角度で4個のウェブを使用する。それぞれ2個のウェブは四分円又は四分円状の多角線と互いに接続されている。四分円は電気接点で覆われており、更にこれらの電気接点は境を接するウェブの部分を、電気接点の間で全てのウェブの接触されない部分が好ましくは同じ長さになるように覆っている。各巻きの4個のウェブは、2個のホイートストンハーフブリッジに接続されている。基準方向は菱形若しくは正方形の対角で、Vcc接点とgnd接点との間の線に対して垂直に位置している。これにより各磁界角度について、1個の正方形(菱形)スパイラルのみで回転数に対する常に一対一で対応する割当てが可能である。このことは、刊行物「IEEE磁気学会議45巻10号3792−3795頁、2009年」に記載されているように、センサで計数可能な全ての回転について計数された回転による磁化の一対一で対応する割当てを許す。
【0018】
このジオメトリにより、n>10の回転数を測定できる回転カウンタが可能になる。ノヴォテヒニーク社のセンサシステム「RSM2800」において、16回転までの計数のための正方形スパイラル技術的に実現されている。
【0019】
スパイラル又はループの内部で磁壁が最も長時間局在している幾何学的領域を、以下に磁壁位置(DW位置)と表記する。正方形又は菱形スパイラルにおいて、これはそれぞれ2個の直線ウェブを互いに接続している四分円又は四分円状の多角線である。DWが四分円を通過するには、外部磁界は90度プラス通常5度〜20度のヒステリシス角度だけ回転しなければならない。DWが四分円−ウェブ移行部に輸送されて、そこにある磁界がDWをデピニングするとすぐに、DWはウェブを数100m/secの速度で100ns以内に通過する。この非常に短い時間の内部では、磁界の回転は無視できるほど小さい。
【0020】
正方形スパイラル(若しくは正方形ループ)において巻き当り4個の四分円、従って4個のDW位置があり、これらは2個のホイートストンハーフブリッジの電気接点で覆われている。1個のDW位置上にはVcc接点があり、これと相対するDW位置上にはgnd接点があり、これらの間にある2個のDW位置はそれぞれ1個の中間接点で覆われている。
【0021】
前述した全ての公知の先行技術による回転カウンタにおいて、ホイートストンハーフブリッジ中間接点と接触しているDW位置は180度の角度間隔を有している。
【0022】
GMR層スタックにおける基準磁化の方向を選択することにより、DWがDW位置で中間接点下に配置されている場合は、ホイートストンハーフブリッジは中央電位にあり、DWがDW位置でVcc接点又はgnd接点下に配置されている場合は、ホイートストンハーフブリッジは高電位又は低電位にあるTMR層スタックに対して、これはより可変に選択できる。
【0023】
各180度の磁界回転に対して、センサ要素に記憶されている磁壁はエラーのない動作においては隣接のホイートストンハーフブリッジに輸送される。DW数が一定の回転カウンタではその際にDW配置はセンサ要素内で180度の角度間隔だけ移動し、1個のDWGを有するスパイラルでは更にスパイラル内の磁壁の数はDWだけ変化する。この運動の証明は、ホイートストンブリッジ若しくはホイートストンハーフブリッジの電気的読出しによって行われる。
【0024】
これら全ての回転カウンタに共通しているのは、センサシステムの磁石の磁界Hは動作時にH
minとH
maxの間の「磁界窓」の内部になければならないことであり、ここでH
minは最大デピニング磁界H
depinnより大きく、H
maxはセンサ要素の核生成磁界H
Nukと等しいか又は小さくなければならない。即ち
H
depinn<H
min≦H<H
max<H
Nuk
最大磁界H
max及び最小磁界H
minは応用によって設定される。これら全ての回転カウンタで更に共通しているのは、センサ要素は応用の最大磁界H
maxと最小磁界H
minにおいて、例えば10−7より小さい何らかのエラー確率に関して適切にテストされていることである。この磁界窓の内部で磁壁は確実に輸送される。
【0025】
DE102011075306A1による回転カウンタを除き、上述した全ての先行技術による回転カウンタに共通しているのは、エラー状態の認識が設けられておらず、実施形態で実現されていないことである。
【0026】
DE102011075306A1による回転カウンタは、消去された磁壁又は核生成された磁壁によってエラー状態を認識するために、反対の回転方向を持つ2個の(菱形)スパイラルの配置を使用する。両スパイラルはそれぞれ1個の磁壁生成器(DWG)か、又は中央に1個の共通DWGを有している。そのため通常の計数動作では磁界が180度回転するごとにDWがスパイラルに注入されて、DWGから離れる方向に輸送され、並びに同時に他のスパイラルにおいてはDWGに向かって輸送されるDWがDWGによって注入されるDWとの対消滅によって消去される。機械的にブロックされた最終ポジションにおいて、一方の最終ポジションでは例えばccw回転方向を有するスパイラルは完全に磁壁で満たされ、cw回転方向を有するスパイラルはDWがなく、並びに他方の最終ポジションではccw回転方向を有するスパイラルはDWがなく、cw回転方向を有するスパイラルは完全に磁壁で満たされている。これらの回転カウンタにおいて両スパイラルにおける磁壁の総数は等しいままである。これによりスパイラルにおいて磁壁が生成または消滅したとき認識することが可能になる。なぜなら、それによって磁壁の総数が通常の計数動作で設けられているDW数に対して変化するからである。通常の計数動作ではDW数は合計のみが一定であるが、各個々のスパイラルではそうでないために、エラー状態においてどのスパイラルでエラーが発生したか検知することは可能ではない。従ってこの解決によってはエラー状態で回転数を把握することも可能ではない。
【0027】
センサによる誤測定及び/又は誤機能の認識、並びに測定値の冗長的把握は、とりわけ自動車分野ではしばしば様々な規則や規格の要求および対象である(例えばASILC)。
【0028】
磁気回転カウンタには次のエラー状態がある。
a.ホイートストン(ハーフ)ブリッジの内部の短絡又は伝導路若しくはセンサウェブの中断に基づく電気的エラー状態
b.DW数の減少(DW対消滅)又は増加(DW核生成)又はDWセンサ要素内におけるDWの(部分的)「不動」(DWピニング)に基づく磁気的エラー状態
短絡又は伝導路中断若しくはセンサウェブ中断による電気的エラー状態は、ホイートストン(ハーフ)ブリッジの許容信号レベルである高レベル、中レベル又は低レベルに合致しない信号レベルを発生させる。電気的エラー状態は、計数された回転の検知を永続的に妨げる。
【0029】
エラー状態「DWピニング」では、回転計数中に少なくとも1個のDWが少なくとも半回転に対して輸送されず、それによって他の通常の輸送された磁壁との角度間隔が変化する。エラー状態「DW対消滅」では、DWがピニングされたDWに輸送されて、これら2個の磁壁が解消する。エラー状態「DW核生成」では、センサ要素内で互いに180度の角度間隔を有する2個の磁壁が生成され、又は各2個の磁壁の数倍が生成される。これらの「磁気」エラー状態は、たいてい回転数の正しい検知を妨げる。即ちそれらは誤測定につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の課題は、既に進行中の動作において外部の補助手段と比較することなく、回転数の誤測定を認識し、好適な構成において新たに初期化することなく回転カウンタの継続動作を可能にする回転カウンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この課題は請求項1の特徴部の特徴によって解決される。有利な構成が従属請求項に記載されている。
【0034】
本発明の本質は、まず回転要素若しくは磁極ホイール若しくはリニア磁気スケールによって生成される外部磁界の設定可能な特定すべき回転数を決定するための磁気回転カウンタが設けられていることにあり、この磁気回転カウンタは、
● オープンスパイラル又は多巻きクローズドループからなる磁壁伝導路を含み、これらの磁壁伝導路はGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成されており、及び
● それらに180度磁壁を導入でき、設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を測定することにより−一部公知の先行技術に従って探し出すことができ、
● しかしながら本発明により、磁壁伝導路には1個又は少なくとも2個の磁壁、若しくは好適な実施形態において4個の磁壁が、磁壁の発生、ピニング又は所定の消去を行うための手段によって導入されており、及び
● 磁壁伝導路上に電気接点が設けられ、その際に磁壁伝導路が、対角線状に相対してそれぞれ1個のVcc接点及びgnd接点により協同して、又は多重読出しに対しては複数のVcc接点及びgnd接点の群において覆われるようにされ、及び
● Vcc接点及びgnd接点上にある対角線を基準にして両側に、或いは本発明による好適な実施形態において専ら片側に電気接点が設けられており、
● 上記のVcc接点とgnd接点との間の実質的に中央においてそれぞれ1巻きと接触し、又は多重読出しの場合はこれらの間にある各磁壁伝導路部分の複数の巻きと接触し、
● 上記の接点は、分離した、好ましくは並行に読み出し可能な、又は多重読出しの場合は高速に相次いで、いわば同時に読み出し可能なホイートストンハーフブリッジを形成し、
● ホイートストンハーフブリッジによって把握された抵抗比は信号レベルとしてことごとくメモリに表形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、別のメモリに記憶されている具体的な回転数に対応する表形式の目標値パターンと連続的に比較され、及び
● 目標値パターンとホイートストンハーフブリッジによって把握された抵抗比との間に一致が存在しなければ、これらは別のメモリに記憶されている、具体的な回転数及び特定のエラーに対応する、表形式のエラー目標値パターンと比較され、
● 一対一で対応する回転値若しくは移動値、又は補正不可能なエラーとして直ちに出力可能である。
【0035】
ホイートストンハーフブリッジによる回路で電位測定によってセンサ要素を読み出す代替として、本発明では、全ての巻きの(TMR)抵抗の測定によりセンサ要素を読み出す。このために各個々の巻きがそれぞれ1個のgnd接点及びそれぞれ1個のVcc接点と接触するか、又は多重読出しを用いる好適な実施形態において、1個の共通のgnd接点及び各巻き上のそれぞれ1個のVcc接点と、若しくは1個の共通のVcc接点及び各巻き上のそれぞれ1個のgnd接点と接触する。gnd接点とVcc接点は好ましくは対角線状に相対して配置されている。
図15は、この回路の実施形態を示す。ここでは把握された抵抗は、ホイートストンハーフブリッジによる回路におけるように信号レベルとしてことごとくメモリに表形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、別のメモリに記憶されている、具体的な回転数に対応する表形式の目標値パターンと連続的に比較される。
【0036】
好適な実施形態は、公知技術に従い、回転角度センサ又は象限センサを有しており、磁界角度象限を予め選択することにより、測定値を測定された磁界角度象限と結び付いている目標値パターンとのみ比較するようにした。これにより最大限必要な比較の数は、4分の1に減少し、それにより回転数決定が加速される。
回転数を決定するために最大限必要な比較の数は更に、通常の計数動作においてDW数は一定のままであることによって少なく抑えられる。そうすることによって回転ごと及び磁界角度象限ごとに正確にそれぞれ1個の信号パターンが存在し、それによってまたそれぞれ1個の目標値パターンのみ比較のために記憶されていればよい。
【0037】
本発明により、磁壁伝導路をなすオープンスパイラル又は多巻きクローズドループは実質的に菱形に形成されており、上記の接点は菱形の角領域を覆っている。更に、2個の隣接する磁壁を使用する場合は所定の離間は、本発明により好ましくは540度に規定されている。
【0038】
GMR層スタックを使用する代りに、本発明により磁壁伝導路を軟磁性材料−例えばパーマロイ−から作製し、Vcc接点及びgnd接点を磁壁伝導路の例えば中央に設けられているTMR層スタック上に配置することも可能である。これに対して電気的中間接点は、ここでも上記の菱形の角領域で特設軟磁性磁壁伝導路と接触する。
【0039】
回転数を決定するための本質は、計数された回転の決定が電子評価装置によって行なわれることにあり、電子評価装置は第1ステップで全ての読み出されたホイートストンハーフブリッジ(又は抵抗測定の場合は全ての巻きの抵抗)の信号の比較を実行し、各計数可能な回転に対してホイートストンハーフブリッジ(若しくは全ての巻きの抵抗)のそれぞれの信号を保存して記憶されている表との比較を実行する。即ち、電子評価装置は、オープンスパイラル又は多巻きクローズドループの巻き1〜巻きnの測定された信号電圧から形成されるパターンが、巻き1〜巻きnについて記憶された信号パターンと一致するものを計数された回転として出力する。一致が見出されない場合、第2ステップで、全ての読み出されたホイートストンハーフブリッジ(又は抵抗測定の場合は全ての巻きの抵抗)の測定された信号と、各計数可能な回転及び各可能なエラー状態に対してホイートストンハーフブリッジ(若しくは全ての巻きの抵抗)のそれぞれの信号を保存している、別の記憶された表との比較が行なわれる。
【0040】
正方形スパイラル又は正方形クローズドループを用いる好適な実施形態における90度の角度に基づいて、電位はそれぞれ90度の磁界回転後に変化するので、少なくとも各90度の磁界角度範囲(磁界角度象限)について対応する目標値パターンが記憶されて、角度センサ(若しくは象限センサ)の測定値を回転カウンタ信号と比較するために選択される。これに従い更に各磁界角度象限に対してエラー目標値パターンが比較のために保持される。
【0041】
ループ又はスパイラルに記録された磁化パターンは、それにより±45度の許容ヒステリシスにおいても計数された回転の一対一で対応する決定を可能にする。動作安定性の理由から、実際のヒステリシスが±30度より著しく小さい磁界強度(例えばH
minの120%)が常に選択されよう。
【0042】
本発明による回転カウンタの全ての構成は、各計数可能な回転に対して一対一で対応する磁化パターン(MM)を有している。GMR層スタックを有する各センサ要素はホイートストン(ハーフ)ブリッジを形成し、電位測定によって読み出される。TMR層スタックを有するセンサ要素は、ホイートストン(ハーフ)ブリッジに接続できる。代替として電位測定の代わりに、TMR比が>100%と大きいためにトンネル接点抵抗の測定を行うこともできる。先行技術と異なり、本発明により電子読出し装置は常に全てのホイートストン(ハーフ)ブリッジ若しくはトンネル接点−抵抗をいわば同時に読み出す。ホイートストン(ハーフ)ブリッジの測定された信号レベルは、所定のシーケンスにおいて、例えばn巻きのスパイラルの場合は巻き1〜巻きnの順序で処理される。この信号レベルの順序を以下に信号レベルシーケンス(SPF)と表記する。測定されたSPFは、各計数可能な回転に対して電子読出し装置によって保持される記憶された目標値SPFと比較される。この目標値SPFは、先行技術に対して新規であり、電気的及び磁気的エラー状態の確実な検知を初めて可能にする。電子読出し装置は電気的エラー状態を許容されない信号レベルに基づいて検知し、磁気的エラー状態を例えば2ステップで検知する。第1ステップでは、電子読出し装置は磁気的エラー状態を、測定されたSPFと目標値SPFの間に一致が存在しないことで認識する。第2ステップでは、電子読出し装置はエラー状態を測定されたSPFと目標値エラーSPFとの一致により検知する。これらの目標値エラーSPFは、有利な構成において各想定可能な計数エラー及び各計数可能な回転について電子読出し装置内に保持されており、若しくは電子読出し装置によって算出される。目標値エラーSPFの保持又は算出先行技術に対して新規である。次に有利な構成において電子読出し装置は初期化されたMMに依存してエラー値を、又はエラー値とそれにもかかわらず正しい回転数を出力する。
【0043】
3種類の可能な磁気エラータイプであるDWピニング、DW対消滅及びDW核生成の検知は、通常の計数動作でDW数が一定のままである場合のみ可能である。本発明による有利な構成は、初期化後にエラーのない計数動作でDW数が常に変化しないままであるセンサ要素を使用する。即ち、センサ要素はDW生成器(DWG)を有していないか、又は2個の相補的に作用するDW生成器(即ち第1のDWGでDWが生成されるのと同時に第2のDWGでDWが対消滅される)を有している。
【0044】
本発明による有利な構成は、エラーのない計数動作でDW数が一定のままであるセンサ要素と、常に回転数の把握を可能にする、4個の又はそれ以上の磁壁を含む初期化されたMMを使用する。これらのMMは、計数された回転の数の読出しにおいて冗長的であり、同様に公知の先行技術に対して新規である。
【0045】
本発明による別の有利な構成は、位相的に冗長的回転計数を可能にするセンサ要素を使用する。
【0046】
本発明による回転カウンタの核心は、装置構成要素−所定のMMを用いるセンサ要素と、メモリ内に保持された目標値SPF及び目標値エラーSPFと、測定されたSPFと目標値SPF及び目標値エラーSPFの比較とを組み合わせたことである。有利な構成において、先行技術に対して新規である目標値SPF及び目標値エラーSPFの保持と、それらの実際に把握されたSPFとの比較は、電子読出し装置内で行われる。この先行技術に対して新規の電子読出し装置を、先行技術によるセンサ要素と組み合わせると、これら自体公知である回転カウンタによっても、初めて計数動作中のエラー監視が可能になる。
【0047】
本発明の有利な構成は、DW数が一定の磁化パターン(MM)を使用する。MMは、磁壁の、若しくはMM内における一連の磁壁の内部のDWギャップ(DWL)の初期化されたポジションによって定義される。MMが回転数の把握に適しているためには、磁界変化による運動で生じる全てのMMは、有意に異なる電気信号を有していなければならない。この特性を持つ単純なパターンは、センサ要素が含んでいる最初に完全に磁壁によって占められたMMから出発して、少なくとも2個の隣接する磁壁の消去によって生じる。即ち、これらの2個のDWは、互いに180度の角度間隔を有する2個のDWLによって置き換えられており、それによって2個の残っている磁壁の間に540度の角度間隔が生じ、それぞれDWLと境を接する。通常の計数動作ではこのMMはセンサ要素の内部で計数された回転と同時に輸送され、MM内における各2個の磁壁の間の角度間隔はほとんどの時間一定にとどまる。MMの輸送時のみDWのウェブ通過が、磁壁運動のヒステリシスに制約されてわずかな角度の違いで発生できる。
【0048】
MMの初期化は、先行技術によるオープンスパイラルにおいてもクローズドループにおいても、電流により誘導されたエルステッド磁界によって行うことができる。この場合、DW消去で常に2個の隣接する磁壁が伝導路(
図3aの25)の下で対消滅し、又はDW生成で常に2個のDWが伝導路(
図3aの25)の下で生成し、その後直ちに互いに180度の角度間隔に離れる。
【0049】
有利な構成は、全て常に所定の順序で、例えばスパイラルの最も外側の巻きから最も内側の巻きへ読み出されるホイートストンハーフブリッジを使用する。
【0050】
有利な正方形のスパイラル又はループにおける90度の角度に基づいて、電位はそれぞれ90度の磁界回転後に変化するので、各90度の磁界角度範囲(磁界角度象限)に対して他の信号レベルシーケンス(SPF)が生じる。
【0051】
MMは、磁壁が局在しているDW位置を有するホイートストンハーフブリッジの信号レベルによって表される。即ち、全てのハーフブリッジの信号レベルシーケンス(SPF)の内部で、MMの信号レベルシーケンス(SPF−MM)は通常の計数動作で特定の磁界角度象限に対して十分定義され、他の磁界角度象限に対応する他の全てのSPFとは異なっている。なぜならSPFの内部におけるSPF−MMのポジションは回転数と共に変化するからである。SPF−MMのポジションに基づいて、若しくはSPF−MMの内部におけるDWのポジションに基づいて、電子読出し装置が回転数を検知する。
【0052】
有利な構成は、電子評価装置が全ての読み出されたホイートストンハーフブリッジのSPFと、各計数可能な回転(各磁界角度象限に分割されている)に対してホイートストンハーフブリッジのそれぞれの目標値SPFを保存して記憶されている表との比較を実行することによって、回転数を決定する。即ち、電子評価装置は、ホイートストンハーフブリッジ1(W1)からホイートストンハーフブリッジn(Wn)までの測定されたSPFが、W1〜Wnに対する記憶された目標値SPFと一致するものを回転数として出力する。比較する前に、角度センサ測定値が評価されて、作用する磁気要素の構成に応じて、対応する磁界角度象限(
図2参照)、又はアングルスケール部分若しくはリニアスケール部分を決定する。
【0053】
電子読出し装置は、測定されたSPFと記憶された目標値との比較に基づいて、DW数が初期化されたMM内における数に対して変化したか、又はDW数が等しい場合に(少なくとも)2個の磁壁の間の角度間隔が変化したかも認識する。このエラーは即ち目標値と一致しないSPFにつながる。エラーの種類、初期化されたMM内における磁壁の数、及び(更に)エラー状態で記憶されたSPFに応じて、電子読出し装置がこのエラーケースでなおも妥当な回転数を出力できるか否かが決まる。以下にこれについて詳述する。
【0054】
以下、上述の内容と本発明を好ましい態様と図面で詳述するが、本発明はこれらに制限されない。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、本発明による回転カウンタ1aと、回転シャフト5に取り付けたN極(N)及びS極(S)を備える磁石システム4とを有する回転カウンタシステム1を示す。回転カウンタ1aは、主要コンポーネントである回転センサUS2、360度角度センサWS3(若しくは象限センサ)及び電子装置6からなる。センサ2及び3は定置されており、回転磁界の角度位置及び回転数を検知する。電子装置6は、センサ2及び3に対する電圧供給源7、及び角度センサ3の測定値用のメモリ8と、回転センサ2の測定値用のメモリ9と、表形式で記憶された回転センサ2の目標値用のメモリ10と、記憶されたエラー状態値用のメモリ12と、処理ユニット11とによる測定値の処理を含む。この処理ユニット11は、メモリ8及び9からの測定値をメモリ10からの表の値と比較して、各測定の結果を出力する。メモリ9からの測定値とメモリ10からの目標値との比較が有効な値を出さない場合は、メモリ12からの記憶されたエラー値がメモリ9からの回転カウンタの測定値と比較されて、エラー値と並んで、発生したエラーに依存して、なおも回転数に対して妥当な値を出力する。
【0057】
図2は、回転カウンタシステム1による回転数の決定及びエラー検知を手順
図400で模式的に示している。
● 測定サイクルの開始後に、
● 電子装置6が第1ステップで角度センサWS3及び回転数センサUS2を読み出し、
● 第2ステップでメモリ8にWS測定値W8(8a)を記憶し、メモリ9にUS測定値を表T9(9a)として記憶し、
● 第3ステップで処理ユニット11により角度センサ測定値から関連する磁界角度象限Q1、Q2、Q3又はQ4が把握され、
● 第4ステップで把握された象限(例えばQ1)に対して、目標値SPFを含むメモリ10から把握された象限に対するサブテーブル(例えばS1Q1(10a))が許容回転i(0≦i≦n)についてロードされ、
● 第5ステップで処理ユニット11により回転インデックスiは0に設定され、
● 第6ステップは回転iについて処理ユニット11による測定値9aと目標値(例えば10a)との反復比較であり、
○ それらの値が一致すれば、電子読出し装置は第7ステップで回転数iを出力して測定サイクルを終了し、又は
○ それらの値が一致しなければ、第7ステップで回転インデックスiは1だけ高められ、及び
○ 第8ステップでi>nであるかチェックされ、
■ i>nであれば、第9ステップでエラー検知が行われ、
■ そうでない場合は、第6ステップが回転i+1について繰り返され、
● エラー検知に対して処理ユニット11は第9ステップで回転インデックスiを0に設定し、
● 第10ステップで回転iについて目標値エラーSPFを含むメモリ12から予め計算されたエラーmについてのm(i)(0≦j≦m)サブテーブル(例えばSF1Q1(12a))を読み取り、
● 第11ステップで回転インデックスjは0に設定され、
● 第12ステップは、回転iについて測定値9aとエラー状態jに対する目標値エラーSPF(例えばサブテーブルSF1Q1(12a))との比較であり、
○ 値が一致すれば、電子読出し装置は第13ステップで回転数iとエラー状態に対するエラー値を出力して、測定サイクルを終了し、
○ 値が一致しなければ、第14ステップで回転インデックスjは1高められ、
○ 第15ステップでj>mであるかチェックされ、
■ j≦mであれば、予め計算されたエラーj+1について第12ステップが繰り返され、
■ j>mであれば、第16ステップで、回転インデックスi>nであるか質問され、
● そうであれば、第17ステップで1個のエラー値のみが出力されて、測定サイクルが終了し、
● そうでなければ、第17ステップで回転インデックスiは1高められて、ステップ10が繰り返され、
● 測定サイクルは回転数(ステップ7)の出力、又はエラー値を有する回転数の出力(ステップ13)、又は1個のエラー値のみの出力(ステップ17)をもって終了する。
エラー値及び有効な回転数の出力は、MMが初期化済みであり、エラー状態においてもなお有効な回転数の決定が可能であることを前提とする。
【0058】
図3は、2個のDWからなる磁化パターン(MM)で一定のDW数を可能にする3種類のセンサ要素ジオメトリを模式的に示す。
【0059】
図3aは、スパイラル端に2個の尖端を有する5巻きスパイラルを模式的に示しており、垂直マークを描いた長い水平線によって表現されている。各垂直マークは正方形スパイラルにおけるDW位置(
図5の四分円状の多角線302参照)を表しており、長いマークは全回転、中位の長さのマークは半回転、及び短いマークは360度の回転内部で90度若しくは270度の磁界角度増分を表している。磁壁は太い黒線によって表されている。水平線上の白い領域は、ccw方向の磁化を表し、水平線の灰色の領域はcw方向の磁化を表している。磁壁は、時間的に見ると最も長く四分円(DW位置、
図6参照)内に滞在している。それゆえ磁壁は四分円内に配置され、垂直マークで表されている。例示的に2個の磁壁を含むMMは、磁壁の間に180度の角度間隔を有している。MMは、スパイラルの内部で任意の頻度で左端から記入されたポジションを経て右端に移動し、また戻ることができる。MMがセンサ要素を超え出て移動しないように、センサ要素は自体公知の図示されない機械的エンドストップを必要とする。
【0060】
図3bは、スパイラル端に2個の磁壁生成器(DWG)を有する5巻きスパイラルを模式的に示しており、垂直マークと外側にDWGを表す2個の円を描いた長い水平線によって表現されている。DW位置と磁化は
図3aについて記したように表されている。ここでは2個のDWギャップ(DWL)を含むMMは、それぞれ1個の十字で表されており、DWLの間に180度、及びDWLと境を接する磁壁の間に540度の角度間隔を有している。2個のDWLを含むMMは、スパイラルの内部で任意の頻度で左端から記入されたポジションを経て右端に移動し、また戻ることができる。その際にDWギャップは、
図3jに示されているようにDWGと境を接することができる。MMの輸送中DW数は一定のままである。MMが右に動くと、右側のDWGで半回転ごとにDWがDWGによって生成されたDWと対消滅し、同時に左側のDWGによりDWが左からスパイラル内に注入される。MMがセンサ要素を超え出て移動しないように、センサ要素はここでも上記の機械的エンドストップを必要とする。
【0061】
図3cは、5巻きクローズドループを模式的に示しており1個の円とこの円に対して垂直に立つマークによって表現され、マークは
図3aにおけると同様にDW位置を表す。2個の磁壁を含むMMは、磁壁の間に180度の若しくは1620度(4.5巻き)の角度間隔を有している。MMは任意の頻度でcw又はccw方向にループを通して移動できる。このように構成されたセンサ要素は、機械的エンドストップを必要としない。
【0062】
図3dは、
図3cのセンサ要素を幾何学的に修正した簡略的な表現で示している。
図3aと同様に5巻きが図示されている。下側のアーチは外側の巻きから内側の巻きへ接続するウェブを表しており、これがスパイラルを交点のあるクローズドループにしている(
図7のウェブ64参照)。
【0063】
図3e〜
図3iは、
図3aで5種類のポジションにMMを有するセンサ要素を示しており、それらのポジションは回転数0(
図3e)、1(
図3f)、2(
図3g)、3(
図3h)及び4(
図3i)を表す。この割当ては応用例に依存するもので、センサ要素には依存しない。他の応用例では同じMM位置が、0〜4回転の代わりに−2〜+2回転を表すこともある。
図3eのMM位置から出発すると、MMは1回転ごとにcw方向に更に4DW位置(1巻きに対応)移動する。その際に180度の角度間隔で2個の磁壁を含むMMは変化しないままである。
【0064】
図3j〜
図3lは、
図3bのMMが回転数0、1及び2を表すポジションに局在するとどのように見えるかを模式的に示している。2個のDWLを含むMMはセンサ要素中を移動する際に変化しない。磁壁の総数も同様である。MMが右方向に移動すると、1回転ごとに右側で2個の磁壁が消え、左側で新しい2個の磁壁が付加される。
【0065】
図4は、磁化パターン(MM)を例示的に2個の尖端を有する5巻き正方形スパイラルで示している。ヒステリシスがMMの内部におけるDWポジションにどのように影響するかが示されている(
図4a及び4b)。
図4c及び
図4dは2個のエラーのないMMを示し、
図4e〜
図4kは例示的なエラー状態を有するMMを示している。以下に、これらのMMがエラー状態で回転数の決定を可能にするか否か説明する。
【0066】
図4aは、
図3aで、例えば回転ゼロを表すポジションに2個の磁壁を含むMMを示している。これら2個のDWは、互いに180度の角度間隔で2個のDW位置に配置されている。
【0067】
図4bは、
図4aのMMを±45度のヒステリシスを伴って示しており、ヒステリシスは灰色の方形によって表される。±45度のヒステリシスは90度、即ち1個の象限を包含する。象限は好ましくはスパイラル(
図5にそのような典型的なスパイラルを示す)に対して、ヒステリシスの「0度位置」を表す磁界角度がウェブに対して垂直になるように配置されている。このようにすることによりヒステリシス限界を表す磁界角度は、このウェブを包含する2個のDW位置を指す。象限を正方形スパイラルに対してこのように配置することにより、1巻き内部の4個の象限はそれぞれ1個のウェブを表し、ヒステリシスはこのウェブ上の各DW位置と、DWが時間的に見て最も長く滞在する隣接DW位置を表す。
図4bでは
図4aのDWポジションが太い垂直線で表され、関連するウェブの他方の端部におけるDW位置におけるDWポジションが細い垂直線で表されている。エラーのない通常動作でDWは2個のDW位置の間のウェブを100ns以下で通過する。ウェブの内部におけるDWポジションは、灰色の方形によって表されている。このウェブがホイートストンハーフブリッジの一部である場合、象限1及び象限2内の許容信号レベルは淡灰色の方形で表された高レベル又は中レベルであり、象限3及び象限4内の許容信号レベルは濃灰色の方形によって表された中レベル又は低レベルである(基準方向は
図5〜
図7に示されている通りである)。
【0068】
図4cは、例えば回転ゼロを表すポジションに4個の磁壁を含むMMを示す。電子読出し装置によって回転数ゼロが出力される。MM内の角度間隔は、左外側DWと左内側DWの間では180度、左内側DWと右内側DWの間では540度、及び右内側DWと及び右外側DWの間では180度で、外側磁壁の間は合計900度である。磁壁は、±45度の許容ヒステリシスに対応してウェブ上の全てのDWポジションを包含する方形によって表わされている。
図4bと同様に、淡灰色の方形はホイートストンハーフブリッジの高レベル又は中レベルを表し、濃灰色の方形は中レベル又は低レベルを表す。
【0069】
図4dは、
図4cでcw方向に回転した後のMMを示す。全て4個の磁壁はそれぞれ4個のDW位置(四分円)だけ更に移動している。MM内の角度間隔は同じままである。このMMポジションは回転数1を表す。電子読出し装置から回転数1が出力される。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0070】
図4eは、
図4cの外側磁壁も占めるポジションに900度の角度間隔で2個の磁壁を含むMMを示す。
図4eで初期化されたMMが
図4cのMMであった場合は、
図4cのMMの測定と
図4eの測定の間で2個の磁壁が対消滅した。900度の角度間隔に基づき、
図4eのMMから回転数ゼロが妥当に把握できる。有利な構成において、電子読出し装置は回転数ゼロとエラー値を出力する。磁壁は、
図4cにおけるように淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0071】
図4fは、180度の角度間隔で2個の磁壁を含むMMを示す。
図4fで初期化されたMMが
図4cのMMであった場合は、
図4cのMMの測定と
図4fの測定の間で2個の磁壁が対消滅した。180度の角度間隔に基づき、
図4fのMMから回転数は妥当に把握されない。有利な構成において、電子読出し装置はエラー値を出力する。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0072】
図4gは、外側DWの間に1260度、及び右外側DWと右内側DWの間に180度の角度間隔で4個の磁壁を含むMMを示す。これら2個の磁壁に基づき、回転数1が妥当に把握できる。有利な構成において、電子読出し装置は回転数1と1個のエラー値を出力する。
図4cのMMに対して左外側DWは同じポジションにある。これは他の3個の磁壁のように(4DW位置)、cw方向に360度移動しておらず、cw方向回転の間ピニングされていた。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0073】
図4hは、外側DWの間に900度、及び左内側DWと左外側DWの間に180度の角度間隔で4個の磁壁を含むMMを示す。これら2個の磁壁に基づき、回転数1が妥当に把握できる。有利な構成において、電子読出し装置は回転数1と1個のエラー値を出力する。
図4cのMMと比較すると、右内側DWは同じポジションにある。これは他の3個の磁壁のように(4DW位置)、cw方向に360度移動しておらず、cw方向回転の間ピニングされていた。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0074】
図4iは、外側DWの間に900度、及び隣接する各2個の磁壁の間に180度の角度間隔で6個の磁壁を含むMMを示す。両外側磁壁に基づき、回転数ゼロが妥当に把握できる。有利な構成において、電子読出し装置は回転数ゼロと1個のエラー値を出力する。
図4cのMMと比較すると、最初のMMの内部で2個の磁壁がDW核生成によって付加されている。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0075】
図4jは、外側DWの間に1260度、及び左内側DWと左外側DWの間に180度、及び左内側DWと左中央DWの間に540度、並びに左中央DWと右中央DWの間に180度の角度間隔で6個の磁壁を含むMMを示す。
図4cで4個のDWのポジションを占めるこれら4個のDWに基づき、回転数ゼロが妥当に把握できる。有利な構成において、電子読出し装置は回転数ゼロと1個のエラー値を出力する。
図4cのMMと比較すると、最初のMMの外部で2個のDW磁壁がDW核生成によって付加されている。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている。
【0076】
図4kは、外側磁壁の間に1620度の角度間隔で6個の磁壁を含むMMを示す。
図4aのMMと比較すると、最初のMMの外部でDW核生成によって2個の磁壁が、
図4aで右外側DW、現在はMM内で右中央DWに対して540度と720度の角度間隔で付加されている。
図4iのMM内の角度間隔に基づき、回転数は妥当に把握されない。有利な構成において、この場合に電子読出し装置は1個のエラー値のみを出力する。磁壁は、
図4cにおけるように、淡灰色及び濃灰色の方形によって表されている
【0077】
以下の
図5〜
図7は、例示的にDW数が一定のMMによる動作を可能にする実際のセンサ要素ジオメトリを平面図で示す。この例は、2個の尖端を有する180度接点接触による3巻きスパイラル(
図5)、2個のDWGを有する3巻きスパイラル(
図6)、及び本発明による360度接点接触による4巻き正方形ループ(
図7)を模式的に示している。見やすくするために、例示的な回転センサはそれぞれの図について以下に説明する細部のみが表現されている。
【0078】
図5は、回転センサの本発明による構成を示す。第2のセンサ要素は、この例では端部が尖った3巻き正方形スパイラル20である。尖端21は外側巻きの端部であり、尖端22は最も内側の巻きの端部である。スパイラルは、GMR効果を示す磁性層スタックからなる。基準方向28は正方形の巻きに対して対角線状である。第1の最も外側の巻きは、ウェブ3l、32、33及び34からなり、第2の中央の巻きはウェブ41、42、43及び44からなり、第3の最も内側の巻きはウェブ51、52、53及び54(時計回り)からなる。各ウェブは後続のウェブに対して90度の角度をなしている。ウェブの間の接続部は、上記のウェブ自体と同じ層スタックから作られた四分円又は四分円状の多角線302(拡大した円301内に示されている)である。この多角線は正方形スパイラルの「角」であると同時に、磁壁位置(DW位置)である。第1の最も外側の巻きはDW位置35、36、37及び38を含み、第2の巻きはDW位置45、46、47及び48を含み第3の巻きはDW位置55、56、57及び58を含む。
スパイラルは「180度接点接触方式」で電気接点を備えている。左上に1個の共通のgnd接点70、右下に1個の共通のVcc接点80、及び右上に3個の中間接点91、93及び95、左下に3個の中間接点90、92及び94、並びにセンサ要素を初期化するための狭隘部26を有する伝導路25がある。センサ要素の磁化状態は6個のホイートストンハーフブリッジを用いる電位測定によって読み出される。左下には、中間接点90、92及び94を有する3個のハーフブリッジがある。
● ホイートストンハーフブリッジW1−1は、中間接点90、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ3l及び32を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジW2−1は、中間接点92、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ41及び42を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジW3−lは、中間接点94、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ51及び52を形成する。
右上には、中間接点91、93及び95を有する3個のハーフブリッジがある。
● ホイートストンハーフブリッジW1−2は、中間接点91、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ33及び34を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジW2−2は、中間接点93、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ43及び44を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジW3−2は、中間接点95、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ53及び54を形成する。
【0079】
センサ要素2は、ここでは最初に6個のDW(例えばセンサ要素2の核生成磁界強度を上回る磁界強度を有する磁界パルスに従う)で次のように完全に満たされている。
● 第1の最も外側の巻きにおいて、DW111はDW位置36に局在し、DW112はDW位置38に局在している。
● 第2の中央の巻きにおいて、DW113はDW位置46に局在し、DW114はDW位置48に局在している。
● 第3の最も内側の巻きにおいて、DW115はDW位置56に局在し、DW116はDW位置58に局在している。
3個のハーフブリッジはこれらのDWポジション及び基準方向28の位置により中央電位にある。ccw方向における磁化方向は濃灰色、cw方向における磁化方向は淡灰色で表現されている。更に各ウェブについて磁化方向は矢印で表示されている。GMR層スタックの基準方向28は正方形スパイラルに対して対角線状であり、左下から右上を指している。
【0080】
図5に示されている6個のDWを含む磁化パターンは、回転の計数にはまだ適していない。最初になおDWが消去されなければならない。それ以外は同一の消去手順を、
図6に示されているように端部に2個の磁壁生成器を有するスパイラルに基づいて説明するが、それによって直ちに本来のセンサ要素の別の実施の可能性が論じられる。
【0081】
図6は、センサ要素2の変化例を示す。センサ要素2は巻き正方形スパイラル20であり、その端部に磁壁生成器23及び24が配置されているセンサ要素2は、それぞれ1個の十字で視覚化された2DWギャップ(DWL)221及び222を含む磁化パターン(MM)を有している。消去の前にDW113及びDW114(
図6にはもはや示されていない。これについては
図5参照)は、DWL221及びDWL222のポジションにあった。初期化は詳述しないが、例えば2段階で行われる。
1.スパイラル対角線に沿った磁界方向(例えば左下から右上)の核生成磁界強度より高い磁界強度を有する磁界パルスによるDWの核生成か、又はセンサシステムの磁界の回転、n巻きスパイラルの場合はcw方向若しくはccw方向に少なくともn+1回転(ここでは4回転)。これによりスパイラルは磁壁生成器DWG23(又はDWG24)により完全にDWで満たされる。
2.伝導路25の狭隘部26の下で十分に大きいエルステッド磁界を用いた2個のDWの対消滅、それによって2個のDWギャップDWL221及びDWL222が生じ、次にこれらが所望されたゼロ位置に移動される。
【0082】
図5に示されたセンサ要素の尖端21及び22の代わりに、
図6の正方形スパイラル20は端部に2個の磁壁生成器(DWG)23及び24を備えている。回転数を決定するために、測定されたSPFにおけるDW112及び/又はDW115のポジションが把握される。2個のDWGを有するスパイラルに対する電気接触は、常に「180度接点接触」(
図5参照)であり、
図6では、見やすさのために省略された。GMR層スタックの基準方向28は、正方形スパイラルに対して対角線状であり、左下から右上を指している。
【0083】
図7は、4巻きクローズドループ27からなる本発明による回転センサ2の別の構成を示す。この例では2個のDW111及びDW112を540度の角度間隔を含むMMが、狭隘部26を有する伝導路25で初期化された。GMR層スタックの基準方向28はここでも正方形スパイラルに対して対角線状であり、左下から右上を指している。このループは
図5におけるスパイラルと同様に、但し1個の共通のgnd接点70、1個の共通のVcc接点80、及びVcc接点からgnd接点まで結ぶ線の右半分に局在している4個の中間接点91、93、95及び97からなる「360度接点接触」と電気的に接触する。センサ要素の磁化状態は、4個のホイートストンハーフブリッジによる電位測定によって読み出される。
● ホイートストンハーフブリッジWHB1は、中間接点91、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ33及び34を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジWHB2は、中間接点93、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ43及び44を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジWHB3は、中間接点95、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ53及び54を形成する。
● ホイートストンハーフブリッジWHB4は、中間接点97、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ63及び64を形成する。
4個のホイートストンハーフブリッジWHB1〜WHB4は、同時に巻きW1〜W4と相関関係にある。
【0084】
図8は、本発明による回転を測定するためのセンサ要素2の別の例示的な構成を示す。この例ではセンサ要素2は2個の部分スパイラル20a及び20bからなり、それぞれ尖端21及び22と、4個の巻き及び「360度接点接触」を有しており、これは部分スパイラル20aでは接点71(gnd)、81(Vcc)、91、93、95及び97(中間接点)からなり、並びに部分スパイラル20bでは72(gnd)、82(Vcc)、99、101、103、l05及び107(中間接点)からなり、4個の磁壁DW111、DW112、DW113及びDW114は初期化された。この構成において、これら4個の磁壁は、それぞれ2個の磁壁を含む2個の論理的磁化パターンを形成する。DW111及びDW112は部分スパイラル20aのMMを形成し、並びにDW113及びDW114は第2のMMを形成する。各MMは、図示された例では「ゼロポジション」にあり、cw方向に3回転動くことができる。DW111とDW112の間、及びDW113とDW114の間の角度間隔は、それぞれ540度であり、DW112とDW113の間の角度間隔は900度である。この2個の論理的MMによりこの構成は、3回転計数できるチップ上で冗長的回転計数を有する回転カウンタとなる。初期化には狭隘部26を有する伝導路25を用いる。GMR層スタックの基準方向28は、正方形スパイラルに対して対角線状に向けられており、それぞれ左下から右上を指している。2個の部分スパイラルの測定結果は電子読出し装置(6)(
図1参照)によって評価される。電子読出し装置が両部分スパイラルの測定された部分SPFから同じ回転数を把握すると、測定は2倍冗長的な結果を出す。一方のスパイラルでエラーが生じた場合は、電子読出し装置は常に回転数を、電子読出し装置が有効な状態(目標値パターンとの一致)を認識する方のスパイラルのSPFから把握できる。他方のSPFはエラー値をもたらす。この場合、適当なMM、例えば
図4cのMMでエラー状態にかかわらずなおも回転数を把握できるので(エラー目標値パターンとの一致)、回転数はエラー状態にもかかわらずやはり2倍冗長的に把握される。
【0085】
図9は、本発明による3回転を測定するためのセンサ要素の別の例示的な構成可能性を示す。2個の互いに入り組んで案内されたスパイラル20a(内側スパイラル)及び20b(外側スパイラル)はそれぞれ尖端21a及び22a若しくは21b及び22bと、それぞれ4個の巻き及び1個の共通の360度接点接触を有しており、これは左の部分スパイラルでは接点71(gnd)、81(Vcc)、91、93(中間接点)からなり、並びに右の部分スパイラルでは72(gnd)、82(Vcc)、95、97及び99(中間接点)からなり、これにより並行に案内された2重スパイラルによって2倍の冗長性が得られる回転カウンタを形成する。GMR層スタックの基準方向28は正方形スパイラルに対して対角線状であり、左下から右上を指している。初期化には狭隘部26を有する伝導路25を用いる。この例ではスパイラル20a内にDW111aとDW112a並びにスパイラル20b内にDW111bとDW112bの各1対のDWを、それぞれ540度の角度間隔で含むMMが初期化されている。有効な計数動作において、このセンサ要素は高レベル(100%レベル)、中レベル(50%レベル)及び低レベル(0%レベル)の信号レベルを出す。DWピニングが起きて2個のDWの間の角度間隔が変化したら、75%レベルと25%レベルの2個の新しいレベルが生じて、電子読出し装置にエラーが発生したことを示す。電子読出し装置はこのレベルを疑いなく検知できなければならない。電子読出し装置はそれにもかかわらず、75%レベル又は25%レベルを有するSPFに基づいて有効な回転数を把握できる。なぜなら一方のスパイラル(例えばスパイラル20a)内のDW対がエラーなしで輸送されたからである。即ち、SPF内には例えば高レベルの代わりに75%レベルが存在し、及び低レベルの代わりに25%レベルが存在している。保持される目標値パターン及びエラー目標値パターンは、このセンサ要素の5通りの信号レベルに適合されている。
【0086】
図10は、例示的な応用で40回転(U)を計数するためのセンサ要素本発明による構成を模式的に示している。センサ要素は、互いに素の最大回転数5(S5)、8(S8)及び9(S9)を有する3個のループが含んでいる。平面図ではこれらは
図7に例示的に示され、ここでは簡略的に表現されているように正方形ループである。ループ、DW位置及び磁壁は
図3dにおけるように記号で表されている。非冗長的回転計数のためにループS5とS8が必要とされ、これらは組み合わされて5U*8U=40Uと40回転まで計数する。冗長的回転計数のためにループS9を追加することにより、少なくとも40回転計数できるそれぞれ2個のループの3通りの組み合わせが生じる。
【0087】
図10aは、例示的に回転数10Uに対して、ループS5(個別ループ回転数:0U)、S8(個別ループ回転数:2U)及びS9(個別ループ回転数:1U)内のMM位置を示しており、それぞれ4個のDWを左外側DWと左内側DWの間に180度、左内側DWと右内側DWの間に180度、及び右内側DWと右外側DWの間に540度の角度間隔で含む冗長的MMを有している。ここで右外側DWのポジションは、それぞれ個別ループ回転数を表す。ループの3通りの組み合わせ(S5+S8)、(S5+S9)及び(S8+S9)の各々について、電子読出し装置は個別ループ回転数からそれぞれループ組み合わせに対する回転数10Uを把握する。合計すると回転数は3倍冗長的に把握される。このために各ループ組み合わせについて、個別ループ回転数の各組み合わせに対してそれに付属するループ組み合わせの回転数が(表形式で)保存されているか、或いはこれが算出される。40回転を計数する応用において、個別ループ回転数はそれぞれ以下の通り表す。
● ループS5に対する0Uは回転数0U、5U、10U、15U、20U、25U、30U、35U及び40U(一般式n*5U)
● ループS8に対する2Uは回転数10U、18U、26U及び34U(一般式m*8U+2U)
● ループS9に対する1Uは回転数10U、19U、28U及び37U(一般式k*9U+1U)
ループが互いに素であることに基づいて、個別ループ回転数の各組み合わせについて常に必ず正確な一致が生じ、それが組み合わせの回転数である。ここでは回転数は10Uである。
目標値SPFを作成するために、正しいMMポジション若しくは基準となるDWの正しいポジションが算出されなければならない。正しいDWポジションは回転数(ここでは10U)をループの最大の回転数(ここでは5U、8U又は9U)で除した余りである。
● S5:0U(10/5=2+余り0)
● S8:2U(10/8=1+余り2)
● S9:1U(10/9=1+余り1)
【0088】
図10bは、計数された回転数10Uに対してMMポジションを示しており、この場合はループS8において右外側DWが1回転中にピニングされており、それにより
図10aと比較すると、右内側DWとの角度間隔は540度から180度に縮小し、左外側DWとの角度間隔は900度から540度に縮小した。この540度の角度間隔に基づいて、電子読出し装置は、ループS8がエラー状態(F)にあることを検知する。左外側DWと左内側DWとの180度の角度間隔は、
図10aに対して変化しておらず、これに基づいて電子読出し装置はループS8に対する回転数2Uを妥当に検知する。
● S5:0U(10/5=2+余り0)
● S8:F+2U(エラー状態並びに10/8=1+余り2)
● S9:1U(10/9=1+余り1)
ループS8のエラー状態に基づいて電子読出し装置は、回転数10UをループS5及びS9の有効な値(S5:0U及びS9:1U)で把握する。4個のDWを含む冗長的MMに基づいて、電子読出し装置はループS8(F)のエラー状態にかかわらず、その個別ループ回転数2Uを把握して使用することができ、その結果としてループ(S5+S8)及び(S8+S9)の組み合わせについても、各個別ループにおける4個の磁壁を含む冗長的磁化パターンに基づいてそれぞれ回転数10Uを合計3倍冗長的に把握する。
【0089】
図11は、DWGを有する5巻きスパイラルのMMを示す。これは平面図では、DWGが尖端に置き換えられた
図6のスパイラルに類似の正方形スパイラルである。スパイラルはここでも簡略的に表現されている。スパイラル、DWG、DW位置、DW及びDWLは、
図3bにおけるように記号で表されている。このスパイラルは基本的に先行技術から公知のセンサ要素(
図11a〜
図11e)であり、これはエラー状態を検出するために本発明による電子読出し装置と組み合わされる。
図11f〜
図11hは先行技術に対して新規である変化例を示しており、これはエラー状態、DW核生成及びDW対消滅の検知では
図11a〜
図11eにおける先行技術から公知のスパイラルよりも敏感である。DWGは半回転ごとにDWをスパイラルに注入するので、エラーのない動作においてDWGからスパイラルの尖端までDWチェーンをスパイラル内に配置できる。右外側DWはスパイラル内に最も大きく進入したDWであり、この構成形態では把握可能な最大回転数を表す。
【0090】
図11aは、6個の磁壁を含む5巻きスパイラルを示す。右外側DWは、回転数3を表す。
【0091】
図11bは、4個の磁壁と、それぞれ1個の十字で表された2個のDWLを有する5巻きスパイラルを示す。2個の右外側DWLは、
図11aで右外側の2個の磁壁の対消滅によって生じた。
図11bのMMは回転数2を表す。DW対消滅のエラー状態は認識されない。
【0092】
図11cは、4個の磁壁と、それぞれ1個の十字で表された2個のDWLを有する5巻きスパイラルを示す。DWチェーンの内部の2個のDWLは、
図11aでMM内の中央の2個の磁壁の対消滅によって生じた。
図11cのMMは、回転数3を表す。DW対消滅のエラー状態(F)は認識される。
【0093】
図11dは、10個のDWを含む5巻きスパイラルを示す。
図11eのMMは回転数5を表している。これは、両スパイラルが完全にDWで満たされるDW核生成後のMMとも同一である。従ってこのエラー状態(F)は認識されない。
【0094】
図11eは、機械的エンドストップにより4回転のみ計数可能である5巻きスパイラルを示す。この第5巻き(5)は通常の計数動作から排除されており、常時この巻き内のDW核生成を検知できるようにDWは常にない。従って
図11eの10個のDWを含むMMは、スパイラルが完全にDWで満たされるDW核生成によって生じている。このエラー状態(F)は、通常の計数動作−回転4まで計数−では存在しない巻き(5)における2個のDWによって認識される。
【0095】
図11fは、
図11eの5巻きスパイラルで第5巻きが幅の広いウェブを有する変化例を示す。これによりDWは最初に巻き(5)で生成する。この巻きで2個のDWのみ生成する場合、回転数はなおも妥当に把握できる。
図11fのMMは、回転数2を妥当に示して巻き(5)におけるDW核生成のエラー状態を表す。
【0096】
図11gは、
図11fの5巻きスパイラルで第1巻きが幅の狭いウェブを有する変化例を示す。これによりDWは、他の巻きにおけるより高い確率で巻き(0)でピニングされる。この巻きは機械的エンドストップによって通常の計数動作から排除されており、常に2個のDWで満たされて、巻き(0)におけるDWピニングと後続のDW対消滅の可能なエラー状態を常時検知できる。
図11hのMMは、回転数1を表している。
【0097】
図11hは、
図11gの巻き(0)で2個のDWが対消滅した後のMMを示す。このエラー状態(F)は認識される。
図11gのMMは回転数1を妥当に示すと同時に、エラー状態巻き(0)におけるDW対消滅(F)を表す。
【0098】
図1では1aで示した本来の回転カウンタの本発明にとって本質的なすべてのアセンブリが枠の中に設けられているのに対し、以下の図は本発明による解決の広い用途を明らかにするものである。
【0099】
図12は、
図1によるシャフト5上の磁石4の代わりに、磁極4a〜41を有する磁極ホイール5aと組み合わせた
図1の回転カウンタ1aを示す。磁極ホイール5aが回転すると、角度センサWS3及び回転センサUS2の場所に回転磁界が形成されて、磁化パターンの磁壁をセンサ要素2内で動かす。従って各磁極ホイールポジションは角度センサ測定値と回転カウンタ測定値に対応している。回転カウンタは通過移動する磁極対の数を計数する。これは
図1による磁石4の回転の計数と同様である。
【0100】
図13は、
図1によるシャフト5上の磁石4の代わりに、磁極4a〜41を有するリニアスケール5bと組み合わせた
図1の回転カウンタ1aを示す。この例では12個の磁極(6N極と交互に6S極)4a〜41を有するリニアスケール5bは、磁極がこれより多い又は少ない他のリニアスケールをも代表している。スケール5bが回転カウンタ1aに対して相対的に通過移動すると、角度センサWS3及び回転センサUS2の場所に回転磁界が形成されて、記録された磁化パターンの磁壁をセンサ要素2内で動かす。従って各リニアスケールポジションは角度センサ測定値と回転カウンタ−測定値に対応している。回転カウンタは通過移動する磁極対の数を計数する。これは
図1による磁石4の回転の計数と同様である。
【0101】
最後に、
図14a+bは、例示的に「360度接点接触」を形成するTMR接点を有するセンサ要素2の読出しを示す。この場合にスパイラル27は軟磁性材料、例えばパーマロイからなる。
【0102】
図14aは、例示的な4巻きクローズドループ27を平面図で示す。センサ要素2は、4個のホイートストンハーフブリッジWHB1〜WHB4による電位測定によって読み出される。
● WHB1は、gndトンネル接点71を有するウェブ33、Vccトンネル接点81を有するウェブ34、並びにウェブ33とウェブ34の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点91からなる。
● WHB2は、gndトンネル接点72を有するウェブ43、Vccトンネル接点82を有するウェブ44、並びにウェブ43とウェブ44の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点93からなる。
● WHB3は、gndトンネル接点73を有するウェブ53、Vccトンネル接点83を有するウェブ54、並びにウェブ53とウェブ54の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点95からなる。
● WHB4は、gndトンネル接点74を有するウェブ63、Vccトンネル接点84を有するウェブ64、並びにウェブ63とウェブ64の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点97からなる。
【0103】
図14bは、トンネル接点を有する全てのウェブを代表して、例示的にウェブ33を
図14aの横断面図で示す。ウェブ33は軟磁性材料パーマロイ501からなり、酸化物層504a及び504bによって保護されている。ウェブ中央ではgndトンネル接点71が配置されている。トンネル接点は、パーマロイ層501、トンネルバリア502(例えばAl
2O
3又はMgO)、基準方向(
図14aの28)が書き込まれた硬磁性層スタック503、及び金電極505からなる。ウェブ33の右側には直接パーマロイ501上に金製中間接点91が載っている。トンネル接点における電流は、電極505から硬磁性層スタックとバリア502を通ってパーマロイ501に流れる。典型的なTMR接点は、TMR接点内の軟磁性層及び硬磁性層の並行磁化と逆並行磁化の間で、即ち磁壁111、112のそれぞれのポジションに依存して>100%の抵抗変化を達成する。この例では本発明による磁壁パターンの初期化、並びに現在の回転数の評価及び決定は、
図5以下で既に説明されたのと同様の条件で行なわれるため、ここでは繰り返さない。
【0104】
図15は、抵抗が読み出される接点接触を変化させた
図14aの回転センサを示す。gnd接点71、72、73及び74、並びにVcc接点、81、82、83及び84を有するこのループは、それぞれ1巻き上のgnd接点およびVcc接点と電気的に接触する。TMR効果が利用されるようにするために、例えばVcc接点はそれぞれ軟磁性層と接触し、gnd接点はそれぞれ硬磁性層と接触しなければならず(
図14bで中間接点91が軟磁性層501と接触し、gndトンネル接点71が硬磁性層と接触するのと同様)、又はその逆でなければならない。接点は
図14から逸脱してウェブ上の角に配置する代わりに、好ましくは相対するウェブ上に配置できる。例えばウェブ3l、41、51及び61上のVcc接点81、82、83及び84と、ウェブ33、43、53及び63上のgnd接点71、72、73及び74。
【0105】
センサ要素の磁化状態は、ここでは各個々の巻きの抵抗測定によって読み出される。
外側の第1巻きW1は、gnd接点71及びVcc接点81を有するウェブ3l、32、33及び34を形成する。
第2巻きW2は、gnd接点72及びVcc接点82を有するウェブ41、42、43及び44を形成する。
第3巻きW3は、gnd接点73及びVcc接点83を有するウェブ51、52、53及び54を形成する。
最も内側の第4巻きW4は、gnd接点74及びVcc接点83を有するウェブ61、62、63及び64を形成する。
この例でも2個の隣接する磁壁DW111とDW112の間の間隔は、cw方向に見て540度である。
【0106】
前述した全ての具体的な実施形態は本発明の多用途性を明らかにするものであり、本発明は冒頭に記載した種類の公知の回転センサにも、本明細書で新たに提案された回転センサにも応用できる。
【0107】
詳細な説明、実施例及び/又は以下の図面から認識される全ての特徴は、単独でも、互いに任意に組み合わせても本発明にとって本質的である。