(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイルが非励磁状態のときブレーキを作用させ、前記コイルが励磁状態のときブレーキを作用させないよう構成された無励磁作動型電磁ブレーキの動作を制御するための制御装置であって、
2つの電極を有し、前記2つの電極の端子間電圧が所定の電圧以上となったとき前記所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなる特性を有する電子部品と、
カソードがアノードよりも電位の高い側に位置するように配置されるダイオードと、を備え、
前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルと前記電子部品とが直列に接続されて第1直列回路が構成され、前記第1直列回路と前記ダイオードとが並列に接続され、
前記電子部品は、前記端子間電圧が前記所定の電圧よりも低いときに導通せず、前記端子間電圧が前記所定の電圧以上となったときに導通するように、前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルに対して直列に接続され、
前記無励磁作動型電磁ブレーキは、モータにブレーキを作用させるために前記モータに取り付けられ、
前記モータがサーボモータであり、
記憶部と、前記記憶部に格納されたプログラムを実行するためのプロセッサと、をさらに備え、
前記記憶部に格納されたプログラムが前記プロセッサによって実行されているとき、サーボリングによって前記サーボモータの回転が停止されようとする際には、前記スイッチング素子をONにして前記電子部品が有効に機能しない状態とすることを特徴とする、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置。
前記所定の電圧は、前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルを励磁状態とするために前記コイルに対して印加される励磁電圧の120%以上200%以下に設定される、請求項1又は2に記載の無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置。
前記電子部品のバイパスとなるように前記電子部品に対して並列に接続され、前記電子部品が有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能なスイッチング素子をさらに備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来から、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止するために、前記コイルに対して並列にダイオードを接続する回路構成が知られている。
図11は、従来からある無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の要部構成を示す回路図である。制御装置170´は、
図11に示すような回路構成を備えることで、無励磁作動型電磁ブレーキB81´に設けられるコイル113´にサージ電流が流れることを防止することができる。
【0006】
しかし、
図11に示すような回路構成では、例えば、npn型トランジスタ192´、194´の両方をONにした状態から当該npn型トランジスタ192´、194´の少なくともいずれか一方をOFFに切り替えて、コイル113´を非励磁状態に切り替えようとしたとき、コイル113´に逆起電力が生じ、ダイオード198´を経由して還流電流が流れてしまう。これに起因して、特許文献1及び従来からある無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置では、ブレーキが作用するまでに遅延が生じる場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止しつつ、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能な、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置、マルチブレーキシステム、ロボット及び医療用ロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置は、コイルが非励磁状態のときブレーキを作用させ、前記コイルが励磁状態のときブレーキを作用させないよう構成された無励磁作動型電磁ブレーキの動作を制御するための制御装置であって、2つの電極を有し、前記2つの電極の端子間電圧が所定の電圧以上となったとき前記所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなる特性を有する電子部品と、カソードがアノードよりも電位の高い側に位置するように配置されるダイオードと、を備え、前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルと前記電子部品とが直列に接続されて第1直列回路が構成され、前記第1直列回路と前記ダイオードとが並列に接続され、前記電子部品は、前記端子間電圧が前記所定の電圧よりも低いときに導通せず、前記端子間電圧が前記所定の電圧以上となったときに導通するように、前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルに対して直列に接続されることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、本発明に係る制御装置は、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルに対してダイオードを並列に接続することで、前記コイルにサージ電流が流れることを防止することが可能となる。また、本発明に係る制御装置は、端子間電圧が所定の電圧よりも低いときに導通せず、端子間電圧が所定の電圧以上となったときに導通するように、前記コイルに対して直列に接続される電子部品を備えるので、前記コイルに還流電流が流れることを防止することができる。これにより、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。
【0010】
例えば、電子部品がツェナーダイオード又はバリスタであってもよい。
【0011】
前記所定の電圧は、前記無励磁作動型電磁ブレーキに設けられる前記コイルを励磁状態とするために前記コイルに対して印加される励磁電圧の120%以上200%以下に設定されてもよい。
【0012】
上記構成によれば、前記所定の電圧が前記励磁電圧の120%未満である場合と比較して、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることをいっそう抑制することが可能となる。また、前記所定の電圧が前記励磁電圧の200%よりも大きい場合と比較して、ノイズを抑制することが可能となる。
【0013】
前記電子部品のバイパスとなるように前記電子部品に対して並列に接続され、前記電子部品が有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能なスイッチング素子をさらに備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、状況に応じて、電子部品が有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替えることが可能となる。
【0015】
前記スイッチング素子がトランジスタ又は電界効果トランジスタであってもよい。
【0016】
例えば、前記無励磁作動型電磁ブレーキは、モータにブレーキを作用させるために前記モータに取り付けられてもよい。
【0017】
前記モータがサーボモータであり、記憶部と、前記記憶部に格納されたプログラムを実行するためのプロセッサと、をさらに備え、前記記憶部に格納されたプログラムが前記プロセッサによって実行されるとき、サーボリングによって前記サーボモータの回転が停止されようとする際には、前記スイッチング素子をONにして前記電子部品が有効に機能しない状態としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、サーボモータと無励磁作動型電磁ブレーキとの間で摩耗が生じることを防止することができ、且つ、無励磁作動型電磁ブレーキを迅速に作用させた場合に生じ得るノイズを抑制することが可能となる。
【0019】
前記課題を解決するために、本発明に係るマルチブレーキシステムは、複数の無励磁作動型電磁ブレーキを備えるマルチブレーキシステムであって、前記複数の無励磁作動型電磁ブレーキそれぞれの動作を制御するための制御装置が設けられ、前記制御装置
が無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、本発明に係るマルチブレーキシステムは、上記いずれかの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置を備えるので、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止しつつ、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。また、複数の無励磁作動型電磁ブレーキそれぞれの動作を制御するために上記いずれかの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置を備えるので、安全性を向上させることが可能となる。
【0021】
前記課題を解決するために、本発明に係るロボットは、上記いずれかの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置と、前記無励磁作動型電磁ブレーキと、前記無励磁作動型電磁ブレーキが取り付けられる前記モータと、前記モータによって駆動する関節軸を少なくとも一つ有するロボットアームと、前記モータの動作を制御するロボット制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、本発明に係るロボットは、上記いずれかの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置を備えるので、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止しつつ、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。
【0023】
上記のマルチブレーキシステムを備えてもよい。
【0024】
上記構成によれば、複数の無励磁作動型電磁ブレーキそれぞれの動作を制御するために上記いずれかの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置を備えるので、安全性を向上させることが可能となる。
【0025】
前記無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置は、前記ロボット制御装置の一部として構成されてもよい。
【0026】
上記構成によれば、本発明に係るロボットを簡単な構成にすることが可能となる。
【0027】
前記課題を解決するために、本発明に係る医療用ロボットシステムは、上記いずれかのロボットを備える。
【0028】
上記構成によれば、本発明に係る医療用ロボットシステムは、上記いずれかのロボットを備えるので、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止しつつ、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、無励磁作動型電磁ブレーキに設けられるコイルにサージ電流が流れることを防止しつつ、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能な、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置、マルチブレーキシステム、ロボット、及び医療用ロボットシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(外科手術システム10)
以下、本発明の実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置、マルチブレーキシステム、ロボット及び医療用ロボットシステムについて、添付図面に基づき説明する。なお、本実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る医療用マニピュレータの使用態様を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態に係る医療用マニピュレータ20(ロボット)は、外科手術システム10(医療用ロボットシステム)において設けられる。外科手術システム10は、例えば、ロボット支援手術やロボット遠隔手術などのように、医師などの施術者Sが手術台300上の患者Pに内視鏡外科手術を施す際に使用されるシステムである。
【0033】
外科手術システム10は、患者側システムである医療用マニピュレータ20(ロボット)と、この医療用マニピュレータ20の後述する複数のロボットアーム70を操るための指示装置200とを備える。指示装置200は、医療用マニピュレータ20から離れて配置され、医療用マニピュレータ20は、指示装置200によって遠隔操作される。
【0034】
施術者Sは、医療用マニピュレータ20に行わせる動作を指示装置200に入力し、指示装置200は、その動作指令を医療用マニピュレータ20に送信する。医療用マニピュレータ20は、指示装置200から送信された動作指令を受け取り、この動作指令に基づいて後述する複数のロボットアーム70を動作させる。
【0035】
医療用台車22内部には、ロボット制御装置150および動作制御に用いられるプログラム及び各種データが記憶される記憶部160が格納される。また、医療用台車22には、主に施術前におけるポジショナ30、アームベース60及び複数のロボットアーム70の位置及び姿勢を設定入力するための操作部164が設けられる。
【0036】
指示装置200は、手術室内に配置されてもよいし、又は手術室外に配置されてもよい。指示装置200は、施術者Sが動作指令を入力するための操作用アーム202、操作ペダル204、タッチパネル206、内視鏡アセンブリで撮影された画像を表示するモニタ208、医師などの操作者の顔の高さ位置にモニタ208を支持する支持アーム210、及びタッチパネル206が配されたバー212等を含む。
【0037】
施術者Sは、モニタ208で患部を視認しながら、操作用アーム202、及び操作ペダル204を操作して指示装置200に動作指令を入力する。指示装置200に入力された動作指令は、有線又は無線により医療用マニピュレータ20のロボット制御装置150に伝達される。医療用マニピュレータ20は、ロボット制御装置150により動作制御される。なお、ロボット制御装置150は、例えば、公知のプロセッサ(CPU等)が記憶部(メモリ等)に格納されるプログラムに従って動作することで実現される構成であってもよい。
【0038】
(医療用マニピュレータ20)
図1において、医療用マニピュレータ20は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置される。医療用マニピュレータ20は、ポジショナ30と、ポジショナ30の先端部に取り付けられた長尺状のアームベース60と、アームベース60にその基端部が着脱可能に取り付けられた複数(本実施形態では4本)の多自由度ロボットアーム70とを備える。医療用マニピュレータ20は、複数のロボットアーム70が折り畳まれた収納姿勢をとるように構成される。
【0039】
ポジショナ30は、垂直多関節型ロボットとして構成されており、手術室の所定位置に配置された医療用台車22のベース本体22a上に設けられ、アームベース60の位置を3次元的に移動させることができる。アームベース60及びロボットアーム70は、滅菌ドレープ(図示せず)で覆われることで、手術室内の滅菌野から遮蔽される。
【0040】
ポジショナ30は、医療用台車22の上面に取り付けられるベース33と、ベース33から先端部に向けて順次連結された複数のポジショナリンクを備えている。ポジショナ30は、一のポジショナリンクが他の一のポジショナリンクに対して回動するように順に連結されることで複数の関節軸を構成する。複数のポジショナリンクは、リンク34a〜34fを含む。複数の関節軸は、関節軸J31〜関節軸J37を含む。なお、本実施の形態における複数の関節部は、回転軸を備えた回転関節により構成されているが、少なくとも一部の関節部が直動関節により構成されてもよい。
【0041】
より詳細には、ベース33の先端部に、捩り(ロール)関節である関節軸J31を介してリンク34aの基端部が連結されている。リンク34aの先端部には、曲げ(ピッチ)関節である関節軸J32を介してリンク34bの基端部が連結される。リンク34bの先端部には、曲げ関節である関節軸J33を介してリンク34cの基端部が連結される。リンク34cの先端部には、捩り関節である関節軸J34を介してリンク34dの基端部が連結される。リンク34dの先端部には、曲げ関節である関節軸J35を介してリンク34eの基端部が連結される。リンク34eの先端部には、捩り関節である関節軸J36を介してリンク34fの基端部が連結される。リンク34fの先端部には、捩り関節である関節軸J37を介してアームベース60のポジショナ取り付け部39が連結される。これにより、ポジショナ30は、複数の自由度(7自由度)を有する多軸関節(7軸関節)アームとして構成される。
【0042】
複数のロボットアーム70のうちロボットアーム70Aの先端部には、医療器具140として、例えば取り替え用のインストゥルメント(例えば鉗子など)が保持される。ロボットアーム70Bの先端部には、医療器具140として、例えば鉗子などのインストゥルメントが保持される。また、ロボットアーム70Cの先端部には、医療器具140として、例えば内視鏡アセンブリが保持される。ロボットアーム70Dの先端部には、医療器具140として、例えば取り替え用の内視鏡アセンブリが保持される。
【0043】
アームベース60は、複数のロボットアーム70の拠点となるハブとしての機能を有する。本実施形態では、ポジショナ30及びアームベース60によって、複数のロボットアーム70を移動可能に支持するアーム支持体28が構成される。医療用マニピュレータ20は、ポジショナ30から医療器具140まで、各構成要素が一連に繋がっている。以下、本明細書では、上記一連の構成要素において、ポジショナ30の側を基端部とし、医療器具140の側を先端部とする。
【0044】
図2に示すように、医療器具140がインストゥルメントである場合、当該医療器具140は、その基端部に駆動ユニット142を有する。このインストゥルメントの先端部に設けられたエンドエフェクタは、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、及び、クリップアプライヤー等)、並びに、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、及び、吸引オリフィス等)を含む群より選択される。
【0045】
医療用マニピュレータ20を用いた施術においては、最初に、医療用台車22が医療従事者によって手術室の所定位置に移動される。この場合、所定位置に移動された医療用台車22は、予期せぬ位置に移動しないように停止される。
【0046】
次に、医療従事者は、操作部164に含まれるタッチパネルを操作することにより、指示装置200から動作指令を受けたロボット制御装置150が、アームベース60と手術台300又は患者Pとが所定の位置関係となるように、ポジショナ30を動作させてアームベース60の位置決めを行う。
【0047】
次に、患者Pの体表に留置されたスリーブ(カニューレスリーブ)と医療器具140とが所定の初期位置関係となるように、各ロボットアーム70に設けられた図示しないアーム操作装置を医療従事者が操作することにより各ロボットアーム70を動作させて医療器具140の位置決めを行う。なお、ポジショナ30の位置決め動作と各ロボットアーム70の位置決め動作とは同時に行われてもよい。そして、ロボット制御装置150は、原則としてポジショナ30を静止させた状態で、指示装置200からの動作指令に応じて、各ロボットアーム70により医療器具140を動作させて適宜変位及び姿勢変化させつつ施術を行う。
【0048】
つづいて、ロボットアーム70の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、ロボットアーム70は、アーム本体80と、アーム本体80の先端部に連結された並進ユニット90とを備え、基端部に対して先端部を3次元空間内で移動させることができるように構成されている。
【0049】
なお、本実施形態では、医療用マニピュレータ20が具備する複数のロボットアーム70は、いずれも同様または類似の構成を有するが、複数のロボットアーム70のうち少なくとも1本が他のアームと異なる構成を有してもよい。ロボットアーム70の先端部には、医療器具140を保持可能なホルダ96が設けられる。
【0050】
医療器具140は、基端部に設けられた駆動ユニット142と、先端部に設けられたエンドエフェクタ144(処置具)と、駆動ユニット142とエンドエフェクタ144との間を繋ぐ細長いシャフト146とを有している。駆動ユニット142、シャフト146、及びエンドエフェクタ144は長軸方向Dtに沿って配置される。
【0051】
ロボットアーム70は、アームベース60に対して着脱可能に構成される。ロボットアーム70は、洗浄処理及び滅菌処理のための耐水性、耐熱性、及び耐薬品性を備える。ロボットアーム70の滅菌処理には様々な方法があるが、例えば、高圧蒸気滅菌法、EOG滅菌法、消毒薬による化学滅菌法などが選択的に用いられる。
【0052】
アーム本体80は、アームベース60に着脱可能に取り付けられるベース82と、ベース82から先端部に向けて順次連結されたリンク84a〜84fとを含む。より詳細には、ベース82の先端部に、捩り関節軸J81を介してリンク84aの基端部が連結される。リンク84aの先端部に、曲げ関節軸J82を介してリンク84bの基端部が連結される。リンク84aの先端部に、捩り関節軸J83を介してリンク84cの基端部が連結される。
【0053】
リンク84cの先端部に、曲げ関節軸J84を介してリンク84dの基端部が連結される。リンク84dの先端部に、捩り関節軸J85を介してリンク84eの基端部が連結される。リンク84eの先端部に、曲げ関節軸J86を介してリンク84fの基端部が連結される。リンク86fの先端部に、曲げ関節軸J87を介して並進ユニット90の基端部が連結される。
【0054】
上記構成により、ロボットアーム70は、自由度(7自由度)を有する多関節(7軸関節)アームとして構成される。したがって、ロボットアーム70は、当該ロボットアーム70の先端部の位置を変化させることなく姿勢を変えることが可能である。
【0055】
アーム本体80の外殻は、主にステンレスなどの耐熱性及び耐薬品性を有する部材で形成される。また、リンク同士の連結部には、耐水性を備えるための図略のシールが設けられる。このシールは、高圧蒸気滅菌法に対応する耐熱性や、消毒薬に対する耐薬品性を備える。なお、リンク同士の連結部において、連結される一方のリンクの端部の内側に他方のリンクの端部が挿入され、これらのリンクの端部同士の間を埋めるようにシールが配置されることによって、シールが外観から隠蔽されている。これにより、シールとリンクとの間から水、薬液、及び蒸気等の浸入が抑制される。
【0056】
並進ユニット90は、その先端部に取り付けられたホルダ96を長軸方向Dtに並進移動させることにより、このホルダ96に取り付けられた医療器具140をシャフト146の延在方向に並進移動させる。
【0057】
並進ユニット90は、アーム本体80の第6リンク84fの先端部に、曲げ関節軸J87を介して連結される基端側リンク91aと、先端側リンク91bと、基端側リンク91aと先端側リンク91bとの間で連動して動く連結リンク92と、連動機構(図略)とを有する。曲げ関節軸J87は、長軸方向Dtに直交する方向に延びる。また、並進ユニット90の先端部、すなわち先端側リンク91bの先端部には回動軸64が設けられている。並進ユニット90の駆動源は基端側リンク91aに設けられている。連結リンク92は長軸方向Dtに沿って延びる。
【0058】
このような構成において、並進ユニット90は、連動機構により、基端側リンク91aと連結リンク92との長軸方向Dtにおける相対位置が変化するとともに、連結リンク92と先端側リンク91bとの長軸方向Dtにおける相対位置が変化することにより、基端側リンク91aに対して先端側リンク91bに設けられるホルダ96に保持された医療器具140の長軸方向Dtに関する位置を変化させることができる。
【0059】
次に、
図3に示すように、ロボットアーム70には、各関節軸J81〜J87に対応して、駆動用のサーボモータM81〜M87(モータ)、サーボモータM81〜M87の回転角を検出するエンコーダE81〜E87、及びサーボモータM81〜M87の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)が設けられる。さらに、並進ユニット90には、並進動作のためのサーボモータM88と、回転軸99回りの回動動作のためのサーボモータM89と、サーボモータM88、M89の回転角を検出するエンコーダE88、E89と、サーボモータM88、M89の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)とが設けられる。なお、
図3では、サーボモータM81〜M89のうちサーボモータM81、M89が代表的に示され、エンコーダE81〜E89のうちエンコーダE81、E89が代表的に示され、その他の関節軸J82〜J87の制御系統は省略されている。
【0060】
そして、サーボモータM81には、第1無励磁作動型電磁ブレーキ81(1)、及び第2無励磁作動型電磁ブレーキ81(2)(複数の無励磁作動型電磁ブレーキ)が取り付けられる。そして、第1無励磁作動型電磁ブレーキ81(1)、及び第2無励磁作動型電磁ブレーキ81(2)それぞれの動作を制御するために本実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aが設けられる。本実施形態では、このようにして複数の無励磁作動型電磁ブレーキを備えるマルチブレーキシステムが構成される。
【0061】
なお、ロボットアーム70AのサーボモータM82〜M89それぞれにも同様に2つの無励磁作動型電磁ブレーキが取り付けられる。
図3に示すように、ロボットアーム70AのサーボモータM81〜M89それぞれに設けられる第1無励磁作動型電磁ブレーキB81(1)〜B89(1)の動作、及び第2無励磁作動型電磁ブレーキB81(2)〜B89(2)の動作は、それぞれ、1つの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aによって制御される。
【0062】
同様に、ポジショナ30のサーボモータM31〜M37それぞれにも同様に2つの無励磁作動型電磁ブレーキが取り付けられる。
図3に示すように、ポジショナ30のサーボモータM31〜M37それぞれに設けられる第1無励磁作動型電磁ブレーキB31(1)〜B37(1)の動作、及び第2無励磁作動型電磁ブレーキB31(2)〜B37(2)の動作は、それぞれ、ロボットアーム70Aのための無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aとは別個に設けられた1つの無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aによって制御される。
【0063】
なお、上記マルチブレーキシステムは、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aからの同一の動作指令に基づき、第1無励磁作動型電磁ブレーキB81(1)、及び第2無励磁作動型電磁ブレーキB81(2)それぞれを同様に動作させてもよい。これにより、外科手術システム10の安全性を向上させることができる。
【0064】
また、
図3に示すように、ポジショナ30には、ポジショナ30の各関節軸J31〜J37に対応して、駆動用のサーボモータM31〜M37、サーボモータM31〜M37の回転角を検出するエンコーダE31〜E37、および、サーボモータM31〜M37の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)が設けられる。なお、
図3においては、ポジショナ30の関節軸J31〜J37のうち、関節軸J31,J37の制御系統が代表的に示され、その他の関節軸J32〜J36の制御系統は省略されている。
【0065】
ロボット制御装置150は、動作指令に基づいて複数のロボットアーム70の移動を制御するアーム制御部151と、ポジショナ30の移動制御するポジショナ制御部152とを含む。アーム制御部151には、サーボ制御部C81〜C89が電気的に接続される。サーボ制御部C81〜C89には、エンコーダE81〜E89が電気的に接続される。また、ポジショナ制御部152には、サーボ制御部C31〜C37が電気的に接続される。サーボ制御部C31〜C37には、エンコーダE31〜E37が電気的に接続される。
【0066】
指示装置200に入力された動作指令に基づいて、アーム制御部151にロボットアーム70の先端部の位置姿勢指令が入力される。アーム制御部151は、位置姿勢指令とエンコーダE81〜E89で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C81〜C89は、エンコーダE81〜E89で検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM81〜M89へ供給する。このようにして、ロボットアーム70の先端部が、位置姿勢指令と対応する位置および姿勢に到達するように、各サーボモータM81〜MM89がサーボ制御される。
【0067】
ロボット制御装置150には、アーム制御部151にデータを読み出し可能な記憶部160が設けられる。記憶部160には、指示装置200を介して入力された手術情報が予め記憶される。
【0068】
ポジショナ制御部152は、操作装置162から入力された準備位置の設定等に関する動作指令とエンコーダE31〜E37で検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C31〜C37は、エンコーダE31〜E37で検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31〜M37へ供給する。このようにして、ポジショナ30が、位置指令値と対応する位置・姿勢に到達するように、各サーボモータM31〜M37がサーボ制御される。
【0069】
(サーボモータM81)
図4は、本実施形態に係る医療用マニピュレータが備えるサーボモータ、エンコーダ及び無励磁作動型電磁ブレーキそれぞれの内部構成を示す軸方向に沿った断面図である。なお、以下において「負荷側」とはサーボモータM81に対して負荷が取り付けられる方向、すなわち、この一例ではシャフト102が突出する方向(
図4の下側)であり、「反負荷側」とは負荷側の反対方向(
図4の上側)である。なお、
図4に示す関節軸J81内のサーボモータM81、エンコーダE81及び無励磁作動型電磁ブレーキB81と同様の構成が、サーボモータM82〜M89、M31〜M37それぞれにも設けられる。しかし、ここではサーボモータM81(すなわち、関節軸J81)の構造についてのみ説明し、その他の同様となる説明は繰り返さない。
【0070】
図4に示すように、サーボモータM81は、フレーム101と、シャフト102と、フレーム101の負荷側端部に設けられた負荷側ブラケット103と、フレーム101の反負荷側端部に設けられた反負荷側ブラケット104(以下、プレートともいう)とを備える。負荷側ブラケット103及び反負荷側ブラケット104(プレート)には、それぞれ、図示しない負荷側軸受け及び反負荷側軸受けが設けられ、シャフト102はこれら軸受けを介して回転自在に支持される。
【0071】
サーボモータM81は、シャフト102に設けられる回転子105と、フレーム101の内周面に設けられる固定子106とを有する。回転子105には、例えば、図示しない複数の永久磁石が設けられる。固定子106は、環状に配置される図示しない固定子鉄心と、当該固定子鉄心の複数のティース部に巻回される図示しない複数の電機子巻線と、を有する。
【0072】
(無励磁作動型電磁ブレーキB81)
図4に示すように、サーボモータM81には、無励磁作動型電磁ブレーキB81が設けられる。なお、ここでは見た目の煩雑さを避けるため、サーボモータM81に対して1つの無励磁作動型電磁ブレーキB81が設けられる場合を図示してあるが、本実施形態では、
図3に基づき説明したように、サーボモータM81には、2つの無励磁作動型電磁ブレーキB81(第1無励磁作動型電磁ブレーキB81(1)及び第2無励磁作動型電磁ブレーキB81(2))が設けられる。
【0073】
無励磁作動型電磁ブレーキB81は、サーボモータM81の反負荷側に配置されており、シャフト102の停止保持又は制動を行う。そして、無励磁作動型電磁ブレーキB81は、後述するコイル113が非励磁状態のときブレーキを作用させ、同コイル113が励磁状態のときブレーキを作用させないよう構成される。
【0074】
なお、無励磁作動型電磁ブレーキB81をサーボモータM81の負荷側に配置してもよい。無励磁作動型電磁ブレーキB81は、図示しないブレーキカバーによって覆われる。無励磁作動型電磁ブレーキB81は、円筒状のフィールドコア117と、フィールドコア117の負荷側に対向配置された円環状のアーマチュア118と、アーマチュア118とプレート104(反負荷側ブラケット)との間に配置されたブレーキディスク119と、を有する。
【0075】
フィールドコア117は、ボルト111によりプレート104に固定される。フィールドコア117には、複数の制動ばね112が設けられる。制動ばね112は、アーマチュア118を押圧して負荷側へ付勢する。またフィールドコア117には、コイル113が設けられる。コイル113は通電時に磁気吸引力を発生し、制動ばね112の付勢力に抗してアーマチュア118を反負荷側へ吸引する。アーマチュア118は、磁性体(鋼板等)で構成される。
【0076】
ブレーキディスク119は、ハブ114を介してシャフト102に固定される。ブレーキディスク119の負荷側及び反負荷側の両面には、環状の摩擦板115が取り付けられる。ブレーキディスク119は、シャフト102の軸方向にスライド可能に構成される。
【0077】
無励磁作動型電磁ブレーキB81は、コイル113が非励磁状態のとき、アーマチュア118が制動ばね112の付勢力によりプレート104の側(負荷側)へと押圧される。アーマチュア118とプレート104によりブレーキディスク119及び摩擦板115が挟み込まれる。このときフィールドコア117とアーマチュア118との間にはギャップGが生じる。その結果、電源遮断時にシャフト102の停止保持又は回転が制動される。この状態が、無励磁作動型電磁ブレーキB81が作用している状態である。
【0078】
一方、コイル113が励磁状態のとき、コイル113による磁気吸引力によりアーマチュア118がコイル113側(反負荷側)へと移動する。アーマチュア118とプレート104との間にギャップG分の隙間が生じ、ブレーキディスク119及び摩擦板115がフリーになる。この結果、サーボモータM81の可動時にブレーキディスク119は上記制動から開放され、シャフト102が回転可能となる。この状態が、無励磁作動型電磁ブレーキB81が解除された状態である。
【0079】
エンコーダE81は、無励磁作動型電磁ブレーキB81の反負荷側に配置され、シャフト102に連結される。なお、エンコーダE81をこれ以外の配置(例えば、サーボモータM81と無励磁作動型電磁ブレーキB81との間に配置)にしてもよい。そして、エンコーダE81は、シャフト102の回転位置(回転角度等)を検出することで、サーボモータM81の回転位置を検出し、検出位置のデータを出力する。なお、エンコーダE81は、サーボモータM81の回転位置に加えて又はそれ代えて、サーボモータM81の速度(例えば、回転速度及び角速度等)及びサーボモータM81の加速度(例えば、回転加速度及び角加速度等)の少なくとも一方を検出してもよい。
【0080】
(無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170A)
図5は、本実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の要部構成を示す回路図である。
図5に示すように、本実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170A(以下、単に「制御装置170A」と称することがある)は、カソードがアノードよりも電位の高い側に位置するように、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113に対して並列に接続されるダイオード198を備える。
【0081】
また、制御装置170Aは、2つの電極181a、181bを有し、当該2つの電極181a、181bの端子間電圧が所定の電圧以上となったとき当該所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなる特性を有するツェナーダイオード180A(電子部品)を備える。なお、ここでいう所定の電圧は、ツェナーダイオード180Aの降伏電圧である。なお、降伏電圧は、例えば、33V程度に設定されていてもよい。このような降伏電圧に設定されるとき、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113を励磁状態とするために当該コイル113に対して印加される励磁電圧は24V程度に設定されてもよい。
【0082】
無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113とツェナーダイオード180Aとが直列に接続されて第1直列回路が構成され、当該第1直列回路とダイオード198とが並列に接続されて第1並列回路が構成される。そして、本実施形態では、当該第1並列回路よりも電位の高い側にnpn型トランジスタ192が設けられ、当該第1並列回路よりも電位の低い側にnpn型トランジスタ194が設けられる。npn型トランジスタ192、194の両方がONされることで、コイル113が励磁状態となる。また、npn型トランジスタ192、194のうち少なくともいずれか一方がOFFされることでコイル113が非励磁状態となる。このような構成により、外科手術システム10の安全性を向上させることができる。
【0083】
ツェナーダイオード180Aは、前記端子間電圧が前記所定の電圧よりも低いときに導通せず、前記端子間電圧が前記所定の電圧以上となったときに導通するように、当該コイル113に対して直列に接続される。具体的には、ツェナーダイオード180Aは、そのカソードがコイル113側に位置し、そのアノードがアース側に位置するように、コイル113に対して直列に接続される。なお、ここでいう導通するとは、ツェナーダイオード180Aの抵抗値が0Ω(又はほぼ0Ω)であることで導通する場合に限定されず、ツェナーダイオード180Aのインピーダンス(抵抗値)がコイル113のインピーダンスと比較して十分に小さいことで導通する場合も含まれる。
【0084】
本実施形態に係る制御装置170Aは、ツェナーダイオード180A(電子部品)のバイパスとなるようにツェナーダイオード180Aに対して並列に接続され、ツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能なnpn型トランジスタ190A(スイッチング素子)をさらに備える。npn型トランジスタ190Aは、コレクタがツェナーダイオード180Aの電極181aに接続され、エミッタがツェナーダイオード180Aの電極181bに接続されることで、ツェナーダイオード180Aに対して並列に接続される。
【0085】
図3のブロック図に示すように、本実施形態に係る制御装置170Aは、記憶部172と、当該記憶部172に格納されたプログラムを実行するためのプロセッサ174と、を有する。なお、制御装置170Aが、ロボット制御装置150の一部として構成されてもよい。さらに、制御装置170Aの記憶部172は、ロボット制御装置150の記憶部160の一部として構成されてもよい。
【0086】
また、本実施形態に係る制御装置170Aは、ロボットアーム70A〜70D及びポジショナ30それぞれに対して設けられてもよい。なお、
図3において、ロボットアーム70Aに設けられる制御装置170Aは、アーム制御部151と別個に記載してあるが、当該アーム制御部151の一部として構成されてもよい。ポジショナ30に設けられる170Aについても同様に、ポジショナ制御部152の一部として構成されてもよい。
【0087】
つづいて、
図6に基づき、制御装置170Aが実行する処理の一例について説明する。
図6は、本実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0088】
まず、制御装置170Aは、npn型トランジスタ190AをOFFにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態とする(
図6においてステップS1)。
【0089】
次に、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとするとき(
図6のステップS2で「YES」)、npn型トランジスタ190AをONにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能しない状態とする(
図6においてステップS3)。
【0090】
なお、制御装置170Aは、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとしていないとき(
図6のステップS2で「NO」)、ステップS2に戻って処理を繰り返す。
【0091】
(効果)
本実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Aは、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113に対してダイオード198を並列に接続することで、前記コイル113にサージ電流が流れることを防止することが可能となる。また、同制御装置170Aは、端子間電圧(すなわち、電極181a、181bの間の電位差)が所定の電圧よりも低いときに導通せず、端子間電圧(同前)が前記所定の電圧以上となったときに導通するように、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113に対して直列に接続されたツェナーダイオード180A(電子部品)を備えるので、前記コイル113に還流電流が流れることを防止することができる。これにより、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る制御装置170Aは、ツェナーダイオード180A(電子部品)のバイパスとなるようにツェナーダイオード180Aに対して並列に接続されるnpn型トランジスタ190A(スイッチング素子)をさらに備えるので、状況に応じて、ツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替えることが可能となる。
【0093】
さらに、本実施形態では、ツェナーダイオード180Aの降伏電圧(所定の電圧)が励磁電圧の120%以上200%以下に設定されることで、降伏電圧が励磁電圧の120%未満である場合と比較して、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることをいっそう抑制することが可能となる。また、降伏電圧が励磁電圧の200%よりも大きい場合と比較して、ノイズを抑制することが可能となる。
【0094】
本実施形態では、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとする際には、npn型トランジスタ190AをONにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能しない状態とすることで、サーボモータM81と無励磁作動型電磁ブレーキB81(より詳細には、第1無励磁作動型電磁ブレーキ81(1)及び第2無励磁作動型電磁ブレーキ81(1))との間で摩耗が生じることを防止することができ、且つ、無励磁作動型電磁ブレーキB81を迅速に作用させた場合に生じ得るノイズを抑制することが可能となる。
【0095】
なお、ツェナーダイオード180A(電子部品)が有効に機能する状態とすることで、システム内に故障が生じたときや、落雷によりサージ電流が流れたとき等、その旨のエラー信号がサーボ制御部C81によって検知され、それを受信してnpn型トランジスタ192、194のうち少なくともいずれか一方をOFFすることで、コイル113を非励磁状態にして迅速にブレーキを作用させてもよい。或いは、施術中にコイル113を非励磁状態にして迅速にブレーキを作用させることで、安全性を向上させることが可能となる。このように安全性を向上させることは、特に、外科手術システム10(医療用ロボットシステム)において有効である。
【0096】
また、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとするときにnpn型トランジスタ190AをONにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能しない状態とすることで、サーボモータと無励磁作動型電磁ブレーキとの間で摩耗が生じることを防止することができ、且つ、無励磁作動型電磁ブレーキB81を迅速に作用させた場合に生じ得るノイズを抑制することが可能となる。
【0097】
(変形例)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0098】
(第1変形例)
図7に基づき、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第1変形例について説明する。
図7は、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第1変形例の要部構成を示す回路図である。なお、本変形例に係る制御装置170Bは、npn型トランジスタ190Aの代わりに電界効果トランジスタ190Bを備えることを除き、上記実施形態に係る制御装置170Aと同様の構成である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0099】
図7に示すように、本変形例に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Bは、ツェナーダイオード180A(電子部品)のバイパスとなるようにツェナーダイオード180Aに対して並列に接続され、ツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能な電界効果トランジスタ190B(スイッチング素子)を備える。無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置は、このような構成であってもよい。
【0100】
(第2変形例)
図8に基づき、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第2変形例について説明する。
図8は、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第2変形例の要部構成を示す回路図である。なお、本変形例に係る制御装置170Cは、ツェナーダイオード180Aの代わりにバリスタ180Bを備えることを除き、上記実施形態に係る制御装置170Aと同様の構成である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0101】
図8に示すように、本変形例に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Cは、2つの電極181a、181bを有し、当該2つの電極181a、181bの端子間電圧が所定の電圧以上となったとき当該所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなるバリスタ180B(電子部品)を備える。なお、ここでいう所定の電圧は、バリスタ180Bのバリスタ電圧である。無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置は、このような構成であってもよい。
【0102】
(第3変形例)
図9に基づき、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第3変形例について説明する。
図9は、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の第3変形例の要部構成を示す回路図である。なお、本変形例に係る制御装置170Dは、npn型トランジスタ190Aを備えないことを除き、上記実施形態に係る制御装置170Aと同様の構成である。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0103】
図9に示すように、本変形例に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170Dは、上記実施形態に係る制御装置170Aとは異なり、npn型トランジスタ190A(スイッチング素子)を備えない。これにより、制御装置170Dは、いっそう簡単な構成となる。
【0104】
(その他の変形例)
上記実施形態及び第1〜第3変形例では、2つの電極181a、181bの端子間電圧が所定の電圧よりも低いときに導通せず、前記端子間電圧が前記所定の電圧以上となったときに導通するようにコイル113に対して直列に接続される電子部品が、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180Bである場合を説明したが、これに限定されない。例えば、前記電子部品が、チップ型の積層セラミックコンデンサであってもよいし、又は、静電気放電サプレッサであってもよい。或いは、2つの電極181a、181bの端子間電圧が所定の電圧よりも低いときに導通せず、前記端子間電圧が前記所定の電圧以上となったときに導通するようにコイル113に対して直列に接続されることが可能であれば、その電子部品であってもよい。
【0105】
上記実施形態では、ツェナーダイオード180Aの降伏電圧が33V程度に設定され、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113を励磁状態とするために当該コイル113に対して印加される励磁電圧が24V程度に設定される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、ツェナーダイオード180Aの降伏電圧は、前記励磁電圧の120%以上200%以下に設定されてもよい。なお、ツェナーダイオード180Aの代わりに、端子間電圧が所定の電圧以上となったとき前記所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなる特性を有する電子部品を設けた場合、前記所定の電圧が、例えば、前記励磁電圧の120%以上200%以下に設定されてもよい。
【0106】
上記実施形態及び第1〜第3変形例では、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180Bが、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113よりも電位の低い側で当該コイル113に対して直列に接続される場合を図示してあるが、この場合に限定されない。
【0107】
例えば、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180Bは、回路構成を適宜変更することでコイル113よりも電位の高い側で当該コイル113に対して直列に接続されてもよいし、又は、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113よりも電位の低い側と高い側の両方で当該コイル113に対して直列に接続されてもよい。
【0108】
さらに、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180Bは、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113よりも電位の低い側で当該コイル113に対して複数直列に接続されてもよいし、電位の高い側で当該コイル113に対して複数直列に接続されてもよい。
【0109】
なお、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180Bの代わりに、端子間電圧が所定の電圧以上となったとき前記所定の電圧よりも低いときと比較して抵抗値が低くなる特性を有する電子部品をコイル113に対して直列に接続した場合も同様である。そして、前記特性を有する異なる種類の電子部品それぞれがコイル113に対して直列に接続されてもよい。
【0110】
上記本実施形態では、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとする際には、npn型トランジスタ190AをONにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能しない状態とする場合を説明した。しかし、この場合に限定されず、サーボリングによってサーボモータM81の回転が停止されようとする際にもnpn型トランジスタ190AをOFFにしてツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態としてもよい。これにより、サーボモータM81と無励磁作動型電磁ブレーキB81との間で摩耗が生じ得るが、迅速にブレーキを作用させることで安全性を向上させることが可能となる。このように安全性を向上させることは、特に、外科手術システム10(医療用ロボットシステム)において有効である。
【0111】
上記実施形態及び第1〜第3変形例では、ツェナーダイオード180A又はバリスタ180B(電子部品)が有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能なスイッチング素子がnpn型トランジスタ190A又は電界効果トランジスタ190Bである場合を説明したが、これに限定されない。例えば、ベースへの入力信号を反転させてnpn型トランジスタ190Aをpnp型トランジスタに置き換えてもよい。或いは、前記スイッチング素子は、リレー回路であってもよいし、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(いわゆる「IGBT」)であってもよいし、又は、前記電子部品が有効に機能する状態と機能しない状態とを切り替え可能であれば、その他のスイッチング素子であってもよい。
【0112】
上記実施形態では、第1直列回路(コイル113とツェナーダイオード180Aとが直列に接続されて構成される直列回路)とダイオード198とが並列に接続されて第1並列回路が構成され、当該第1並列回路よりも電位の高い側にnpn型トランジスタ192が設けられ、当該第1並列回路よりも電位の低い側にnpn型トランジスタ194が設けられる場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、npn型トランジスタ192、194が電界効果トランジスタに置き換えられてもよいし、リレー回路に置き換えられてもよいし、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(いわゆる「IGBT」)に置き換えられてもよいし、又はその他のスイッチング素子に置き換えられてもよい。なお、npn型トランジスタ192、194が互いに異なるスイッチング素子に置き換えられてもよい。
【0113】
上記実施形態及び第1〜第3変形例では、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170が外科手術システム10の複数のロボットアーム70及びポジショナ30に適用される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170は、外科手術システム10における施術者Sが動作指令を入力するための操作用アーム202に適用されてもよい。
【0114】
或いは、無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置170は、無励磁作動型電磁ブレーキを用いる他のロボットシステムで用いられてもよい。また、無励磁作動型電磁ブレーキが適用されるロボットは、
図1〜3に示す構造に限定されず、例えば、1軸以上5軸以下若しくは8軸以上の垂直多関節型ロボットであってもよい。或いは、無励磁作動型電磁ブレーキが適用されるロボットは、極座標型ロボットであってもよいし、円筒座標型ロボットであってもよいし、直角座標型ロボットであってもよいし、又は、その他の構造を有するロボットであってもよい。
【0115】
(実験例)
最後に、
図10に基づき、この発明の効果を確認するために発明者らが行った実験例について説明する。
図10は、上記実施形態に係る無励磁作動型電磁ブレーキ用の制御装置の効果を確かめるために発明者らが行った実験結果を示すグラフ図であり、(A)がツェナーダイオードを有効にしてからコイルを非励磁状態に切り替えたときのグラフ図、(B)がツェナーダイオードを無効にしてからコイルを非励磁状態に切り替えたときのグラフ図である。
【0116】
なお、上記実施形態に係る制御装置170Aが備える
図5に示す回路構成を用いて実験を行った。なお、ツェナーダイオード180Aの降伏電圧は33Vに設定された。また、無励磁作動型電磁ブレーキB81に設けられるコイル113を励磁状態とするために当該コイル113に対して印加される励磁電圧は24Vに設定された。
【0117】
図10(A)の上側のデータは、上記実施形態に係る制御装置170Aでツェナーダイオード180Aを有効にしてからコイル113を非励磁状態に切り替えたとき、当該コイル113に流れる電流値である。また、
図10(A)の下側のデータは、同じときの当該コイル113の端子間電圧である。
【0118】
一方、
図10(B)の上側のデータは、上記実施形態に係る制御装置170Aでツェナーダイオード180Aを無効にしてからコイル113を非励磁状態に切り替えたとき、当該コイル113に流れる電流値である。また、
図10(B)の下側のデータは、同じときの当該コイル113の端子間電圧である。
【0119】
図10(A)に示すように、ツェナーダイオード180Aを有効にしてからコイル113を非励磁状態に切り替えたとき、コイル113に流れる電流は迅速になくなっている。すなわち、コイル113に還流電流が流れていない。これにより、ブレーキが作用するまでに遅延が生じることを防止することが可能となる。
【0120】
一方、
図10(B)に示すように、ツェナーダイオード180Aを無効にしてからコイル113を非励磁状態に切り替えたとき、コイル113に流れる電流は迅速になくならず、一定の時間をかけて少しずつ減少している。すなわち、このとき、コイル113に還流電流が流れており、ブレーキが作用するまでに遅延が生じている。しかし、一方で、このとき、
図10(B)の下側のデータから解るように、
図10(A)に示す場合と比べて、無励磁作動型電磁ブレーキB81を迅速に作用させた場合に生じ得るノイズを抑制することができる。また、
図10(A)に示す場合と比べて、サーボモータM81と無励磁作動型電磁ブレーキB81との間で摩耗が生じることを防止することができる。
【0121】
上記の通りであるため、状況に応じて(例えば、
図6のフローチャートに基づき説明したように)、ツェナーダイオード180Aが有効に機能する状態と機能しない状態とをnpn型トランジスタ190A(スイッチング素子)で切り替えることが好ましい。