特許第6855600号(P6855600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855600
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】X線を生成する装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/34 20060101AFI20210329BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20210329BHJP
   H05G 1/32 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   H05G1/34 Z
   H01J35/00 Z
   H05G1/32 Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-567643(P2019-567643)
(86)(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公表番号】特表2020-522859(P2020-522859A)
(43)【公表日】2020年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2018064154
(87)【国際公開番号】WO2018224369
(87)【国際公開日】20181213
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】17174902.1
(32)【優先日】2017年6月8日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ドカニア アナンド クマール
(72)【発明者】
【氏名】ベーリンフ ロルフ カール オットー
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−164197(JP,A)
【文献】 特開2005−142140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00
H01J 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
少なくとも1つの電源と、
電子検出器と、
処理ユニットと、
を有する、X線を生成する装置において、
前記少なくとも1つの電源が、前記陰極と前記陽極との間の電圧を生成し、
前記少なくとも1つの電源が、前記陰極に陰極電流を提供し、
前記陰極が、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が前記電圧に対応するエネルギで前記陽極と相互作用するように、動作可能であり、前記電子が、焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成し、
前記電子検出器が、前記陽極に対して配置され、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定し、
前記電子検出器が、前記測定された後方散乱電子信号を前記処理ユニットに提供し、
前記処理ユニットが、陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正を決定し、前記決定が、前記測定された後方散乱電子信号陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関、及び陽極表面粗さとX線放射との間の相関の使用を含み、
前記処理ユニットが、前記陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供する、
装置。
【請求項2】
前記後方散乱電子信号が、後方散乱電子電流を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電子検出器が、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口が、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記処理ユニットが、前記複数の電子検出素子により測定された後方散乱電子信号の分布に基づいて記焦点スポットのサイズを決定する、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記処理ユニットが、前記複数の電子検出素子により測定された後方散乱電子信号の分布に基づいて前記焦点スポットの場所を決定する、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電源が、前記電子を前記焦点スポットにおいて収束させる少なくとも1つの電圧を提供し、前記処理ユニットが、前記電子を前記焦点スポットにおいて収束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定し、前記処理ユニットが、前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供する、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記後方散乱電子信号が、後方散乱電子束を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記電子検出器が、前記陽極からのX線束を測定する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記電子検出器が、シンチレータを有する、請求項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のX線を生成する装置と、
X線検出器と、
出力ユニットと、
を有する、対象を撮像するシステムにおいて、
前記陰極及び前記陽極は、これらの間の領域の少なくとも一部が対象を収容する検査領域であるように、前記X線検出器に対して配置され、
前記X線検出器が、前記対象の画像データを取得し、
前記出力ユニットが、前記対象の前記画像データを表すデータを出力する、
システム
【請求項11】
X線を生成する方法において、
(a)少なくとも1つの電源で、陰極と陽極との間の電圧を生成するステップであって、前記陰極が、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が前記電圧に対応するエネルギで前記陽極と相互作用するように、動作可能であり、前記電子が、焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成する、ステップと、
(b)前記少なくとも1つの電源で、前記陰極に陰極電流を提供するステップと、
(c)電子検出器を前記陽極に対して配置し、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するステップと、
(d)前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニットに提供するステップと、
(e)前記処理ユニットで、陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正を決定するステップであって、前記決定が、前記測定された後方散乱電子信号陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関、及び陽極表面粗さとX線放射との間の相関の使用を含む、ステップと、
(h)前記陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供するステップと、
を有する方法。
【請求項12】
プロセッサにより実行される場合に、請求項11に記載の方法を実行する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の装置又は請求項10に記載のシステムを制御するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を生成する装置、対象を撮像するシステム、X線を生成する方法、並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体に関する。本発明は、X線を生成するのに使用される集束電子ビームを制御する装置及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の一般的な背景は、X線の生成である。陽極ターゲット劣化は、線管経年劣化でX線束の減少をもたらす、特にコンピュータ断層撮影(CT)線管に対する線管経年劣化の原因の1つである。線管のX線出力が、陽極ターゲットのX線放射領域の表面の粗化(roughening)により使用とともに減少することは、周知である。X線出力スペクトルの減少(線束における5乃至20%の減少)に対する表面の粗さ及び亀裂のかなりの影響が、例えば、M. Erdelyi et al, Measurement of the x-ray tube anodes' surface profile and its effects on the x-ray spectra, Medical Physics, Vol. 36, Issue 2, 2009, pp. 587-593; R. Kakonyi et al, Monte Carlo simulation of the effects of anode surface roughness on x-ray spectra, Medical Physics, Vol. 37, Issue 11, 2010, pp. 5737-5745; 及びA. Mehranian et al, Quantitative Assessment of the Effect of Anode Surface Roughness on the Diagnostic X-ray Spectra Using Monte Carlo Simulation, 2009 IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record M05-361, pp. 2902において報告されている。線量降下較正又はX線束に基づいて陽極経年劣化に関する情報を抽出する方法は、US2013/0083901A1、US2014/0177810A1、及びUS2007/0189463A1に記載されている。更に、回転する陽極上の電子ビームの焦点スポットの場所及びサイズは、変動する。場所は、陽極の揺れ、遠心力、X線システムにおける陰極及び/又は陽極固定又は取り付けの重力的、機械的不安定性により変動することができる。サイズは、電子空間電荷、電子エミッタの移動のような機械的不安定性、磁気的又は電気的集束場の変化により変動することができる。通常、このような変動は、最悪の条件下でさえ、焦点スポットサイズ及び場所が要求されるものであることを保証するのに要求されるものより小さく設計される焦点スポットのような余分なマージンを実施することにより軽減される。したがって、このような問題の観点から、最大X線束を維持するためには、陽極に提供される電力は、増大されなくてはならず、これにより陽極の劣化を悪化させるか、又は陽極の回転速度の要求される増大により流体動圧軸受における機械的摩擦損失を増大する。代わりに、最大X線束の減少が、受け入れられなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
X線を生成する改良された装置を持つことは、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、独立請求項の対象物(subject matter)で解決され、他の実施例は、従属請求項に組み込まれる。本発明の以下に記載される態様及び例が、X線を生成する装置、対象を撮像するシステム、X線を生成する方法、集束電子ビームを制御する装置、集束電子ビームを制御する方法、並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体にも当てはまることに注意すべきである。
【0005】
第1の態様によると、
−陰極と、
−陽極と、
−少なくとも1つの電源と、
−電子検出器と、
−処理ユニットと、
を有する、X線を生成する装置が、提供される。
【0006】
前記少なくとも1つの電源は、陰極と陽極との間の電圧を生成するように構成される。前記少なくとも1つの電源は、前記陰極に陰極電流を提供するようにも構成される。前記陰極は、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が前記電圧に対応するエネルギで前記陽極と相互作用するように、動作可能である。前記電子は、X線を生成するように焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用する。前記電子検出器は、前記陽極に対して配置され、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するように構成される。前記電子検出器は、前記測定された後方散乱電子信号を前記処理ユニットに提供するように構成される。前記処理ユニットは、陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正を決定するように構成される。前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号及び陽極表面粗さと交渉散乱放射との間の相関の使用を含む。前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの電源に対して前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正及び/又は前記陰極電流補正を提供するように構成される。
【0007】
換言すると、X線放射が、陽極の表面粗さで変化することは、既知であり、陽極の表面が、使用により劣化し、表面陽極粗さと後方散乱電子放射との間の相関を使用して、X線管電流の適切な調整が、測定された後方散乱電子信号に基づいてX線放射を最適なレベルに維持するためになされることができる。これは、前記装置が、前記X線管電流の適切な補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正により前記X線束を自動補正することができるだけでなく、フィールドサービスエンジニアによる改善作業が、頻繁に開始されなくてもよく、これにより経費を節約する。
【0008】
不断の監視は、線管の残りの寿命を予測するのを助けることができ、したがって、予測保全、システムアップタイム及びよりよいサービス契約を助ける。
【0009】
一例において、前記決定は、陽極表面粗さとX線放射との間の相関の使用を含む。
【0010】
したがって、後方散乱電子放射と表面粗さとの間の相関を持つと、測定された後方散乱電子信号は、前記陽極の表面粗さを決定するのに使用されることができる。この場合、陽極表面粗さとX線放射との間の相関に基づいて、表面粗さの変化により生じたX線放射の変化が、(前記測定された後方散乱電子信号から)決定されることができ、前記陰極電流(X線管電流)及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧は、例えば、前記X線放射を同じレベルに維持するように、適切に調整されることができる。
【0011】
一例において、前記後方散乱電子信号は、後方散乱電子電流を含む。
【0012】
一例において、前記電子検出器は、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口は、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される。
【0013】
換言すると、X線ピンホールカメラが、直接電子検出に基づいて前記陽極上に集束された電子ビームの特性を決定するのに使用される。したがって、高い空間解像度及びダイナミックレンジを持つ高い信号が、取得可能である。電子焦点スポットの特性を知ることで、当該焦点スポットを最適な形に維持する適切なフィードバックループが、実施されることができる。
【0014】
一例において、前記処理ユニットは、前記焦点スポットのサイズを決定するように構成され、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0015】
一例において、前記処理ユニットは、前記焦点スポットの場所を決定するように構成され、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0016】
一例において、前記少なくとも1つの電源は、前記電子を前記焦点スポットに集束させる少なくとも1つの電圧を提供するように構成され、前記処理ユニットは、前記電子を前記焦点スポットに集束させる前記少なくとも1つの電源に対する補正を決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの電源に対して前記補正を提供するように構成される。
【0017】
このようにして、前記電子焦点スポットの場所及びサイズが、正しい位置に保持されることができるので、前記電子ビーム焦点スポットのサイズは、特定の応用に対して最大化されることができる。これは、前記焦点スポットが、ビームワンダ(beam wander)及び焦点スポットサイズ変化のせいで最適より小さいことを必要としないので、X線束が、前記陽極における特定の電子出力密度(electron power density)に対して最大化されることができることを意味する。
【0018】
一例において、前記後方散乱電子信号は、後方散乱電子束を有する。
【0019】
一例において、前記電子検出器は、前記陽極からのX線束を測定するように構成される。
【0020】
換言すると、前記電子検出器は、光子検出器でもある。したがって、前記後方散乱電子束及び前記陽極からのX線束を同時に測定することにより、光子束に対する電子の比が加速電圧に依存するので、X線管電圧が、決定されることができる。このようにして、前記陰極電流が、自動補正プロセス内で補正されることができるだけでなく、電子及び光子束に基づいて、前記X線管が正しい電圧で動作しているかどうかが、確認されることができる。
【0021】
一例において、前記電子検出器は、シンチレータを有する。
【0022】
第2の態様によると、
−陰極と、
−陽極と、
−少なくとも1つの電源と、
−電子検出器と、
−処理ユニットと、
を有する、集束電子ビームを制御する装置が、提供される。
【0023】
前記陰極は、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成するように、動作可能である。前記少なくとも1つの電源は、前記焦点スポットにおいて前記電子を集束させる少なくとも1つの電圧を提供するように構成される。前記電子検出器は、前記陽極に対して配置され、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するように構成される。前記電子検出器は、複数の電子検出素子及び開口を有する。前記開口は、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される。前記電子検出器は、前記測定された後方散乱電子信号を前記処理ユニットに提供するように構成される。前記処理ユニットは、前記焦点スポットのサイズ及び/又は前記焦点スポットの場所を決定するように構成される。前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。前記処理ユニットは、前記焦点スポットにおいて前記電子を集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定するようにも構成される。前記処理ユニットは、前記少なくとも1つの電源に対して前記補正を提供するように構成される。
【0024】
このようにして、前記電子焦点スポットのサイズ及び/又は場所が、決定されることができるので、前記集束電子ビームのサイズを最大化する及び/又は前記集束電子ビームをより正確に配置するように、補正がなされることができる。これは、前記焦点スポットが、ビームワンダ及び/又は焦点スポットサイズ変化のせいで最適より小さいことを必要としないので、X線束が、前記陽極において特定の電子出力密度に対して最大化されることができることを意味する。更に、要求されるX線束に対して、前記電子出力密度は、減少され、前記陽極の長寿命を提供することができ、及び/又はガントリ回転速度が、減少され、流体ベアリングにおける機械的摩擦損失の減少をもたらすことができる。
【0025】
第3の態様によると、
−第1の態様によるX線を生成する装置と、
−X線検出器と、
−出力ユニットと、
を有する、対象を撮像するシステムが、提供される。
【0026】
前記陰極及び前記陽極は、これらの間の領域の少なくとも一部が、対象を収容する検査領域であるように、前記X線検出器に対して配置されるように構成される。前記X線検出器は、前記対象の画像データを取得するように構成される。前記出力ユニットは、前記対象の前記画像データを表すデータを出力するように構成される。
【0027】
このようにして、前記陰極及び前記陽極は、前記陰極/陽極と前記X線検出器との間に、対象を収容する検査領域が提供されるように、配置される。
【0028】
第4の態様によると、
(a)少なくとも1つの電源で、陰極と陽極との間の電圧を生成するステップであって、前記陰極が、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が前記電圧に対応するエネルギで前記陽極と相互作用し、前記電子が、焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成するように動作可能である、ステップと、
(b)前記少なくとも1つの電源で、前記陰極に陰極電流を提供するステップと、
(c)電子検出器を前記陽極に対して配置し、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するステップと、
(d)前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニットに提供するステップと、
(e)前記処理ユニットで、陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正を決定するステップであって、前記決定が、前記測定された後方散乱電子信号及び陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関の使用を含む、ステップと、
(h)前記陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の電圧に対する補正を前記少なくとも1つの電源に提供するステップと、
を有する、X線を生成する方法が、提供される。
【0029】
第5の態様によると、
(a1)陰極を陽極に対して配置するステップであって、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成するように動作可能である、ステップと、
(b1)前記少なくとも1つの電源で、前記電子を焦点スポットにおいて集束させる少なくとも1つの電圧を提供するステップと、
(c1)電子検出器を前記陽極に対して配置するステップであって、前記電子検出器が、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するように構成され、前記電子検出器が、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口が、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される、ステップと、
(d1)前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニットに提供するステップと、
(e1)前記処理ユニットにより前記焦点スポットのサイズ及び/又は前記焦点スポットの場所を決定するステップであって、前記決定が、前記測定された後方散乱電子信号を使用する、ステップと、
(f1)前記処理ユニットで、前記電子を前記焦点スポットにおいて集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定するステップであって、前記処理ユニットが、前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供するように構成される、ステップと、
を有する、集束電子ビームを制御する方法が、提供される。
【0030】
他の態様によると、処理ユニットにより実行される場合に、前述の方法ステップを実行するように構成される、前述の装置を制御するコンピュータプログラム要素が、提供される。
【0031】
他の態様によると、前述のコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ可読媒体が、提供される。
【0032】
有利には、上記の態様のいずれかにより提供される利益は、全ての他の態様に等しく当てはまり、逆も同様である。
【0033】
上記の態様及び例は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかになる。
【0034】
典型的な実施例は、以下の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】X線を生成する装置の一例の概略的セットアップを示す。
図2】対象を撮像するシステムの一例の概略的セットアップを示す。
図3】X線を生成する方法を示す。
図4】陽極ターゲットと相互作用して後方散乱電子の放射を生じる、陰極により放射される電子の一例を示す。
図5】表面粗さを持つ陽極ターゲットと相互作用する、陰極により放射された電子の一例を示し、関連したグラフが、表面フィーチャの幅に対する高さの比の関数として後方散乱電子の収量を示す。
図6】電子衝突エネルギの関数として異なる要素の電子後方散乱収量を示す。
図7】X線を生成する詳細なワークフローを示す。
図8】X線を生成する装置の一例の概略的セットアップを示す。
図9】後方散乱電子を検出するのに使用される検出器の一例の概略的セットアップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、X線を生成する装置10の一例を示す。装置10は、陰極20と、陽極30と、少なくとも1つの電源40と、電子検出器50と、処理ユニット60とを有する。少なくとも1つの電源40は、陰極20と陽極30との間の電圧を生成するように構成される。少なくとも1つの電源40は、陰極20に陰極電流を提供するように構成される。陰極20は、陽極30に対して配置され、陰極20及び陽極30は、陰極20から放射された電子が、前記電圧に対応するエネルギで陽極30と相互作用するように動作可能である。電子は、焦点スポットにおいて陽極30と相互作用してX線を生成する。電子検出器50は、陽極30に対して配置され、陽極30からの後方散乱電子信号を測定するように構成される。電子検出器50は、前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニット60に提供するように構成される。これは、有線又は無線通信を介する。処理ユニット60は、陰極電流補正を決定するように構成される。前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号及び陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関の使用を含む。処理ユニット60は、前記陰極電流補正を少なくとも1つの電源40に提供するように構成される。これは、有線又は無線通信を介する。
【0037】
一例において、前記処理ユニットは、前記陰極と前記陽極との間の前記電圧に対する補正を決定するように構成され、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号及び陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関の使用を含み、前記処理ユニットは、前記電圧補正を前記少なくとも1つの電源に提供するように構成される。このようにして、陰極電流及びX線管電圧補正が、X線の生成を最適なレベルに保つために決定及び提供されることができる。
【0038】
一例によると、前記決定は、陽極表面粗さとX線放射との間の相関の使用を含む。
【0039】
一例によると、前記電子検出器は、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口は、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される。
【0040】
一例において、前記測定された後方散乱電子信号は、前記処理ユニットにより処理される場合に、点(線)広がり関数を有する。
【0041】
一例によると、前記処理ユニットは、前記焦点スポットのサイズを決定するように構成され、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0042】
一例によると、前記処理ユニットは、前記焦点スポットの場所を決定するように構成され、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0043】
一例によると、前記少なくとも1つの電源は、電子を前記焦点スポットにおいて集束させる少なくとも1つの電圧を提供するように構成される。前記処理ユニットは、電子を前記焦点スポットにおいて集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供するように構成される。
【0044】
一例によると、前記後方散乱電子信号は、後方散乱電子束を有する。
【0045】
一例によると、前記電子検出器は、前記陽極からのX線束を測定するように構成される。
【0046】
一例によると、前記電子検出器は、シンチレータを有する。
【0047】
図1を続けて参照すると、電子検出器50は、前記集束電子ビームを制御する自己充足(self-contained)装置において使用されることができる。集束電子ビームを制御するこの装置において、陰極20、陽極30、少なくとも1つの電源70が、存在する。少なくとも1つの電源70は、陰極20と陽極30との間の電圧を提供する又は陰極電流を提供する必要はないが、することができ、したがって、一例において、少なくとも1つの電源70は、少なくとも1つの電源40と同じ機能を持つ。前記集束電子ビームを制御する装置は、電子検出器50及び処理ユニット60をも有する。陰極20は、陽極30に対して配置され、陰極20及び陽極30は、陰極20から放射された電子が焦点スポットにおいて陽極30と相互作用してX線を生成するように動作可能である。少なくとも1つの電源70は、前記電子を前記焦点スポットにおいて集束させる少なくとも1つの電圧を提供するように構成される。電子検出器50は、陽極30に対して配置され、陽極30からの後方散乱電子信号を測定するように構成される。電子検出器50は、複数の電子検出素子及び開口を有する。前記開口は、陽極30と前記複数の電子検出素子との間に配置される。電子検出器50は、前記測定された後方散乱電子信号を有線又は無線通信を介して処理ユニット60に提供するように構成される。処理ユニット60は、前記焦点スポットのサイズ及び/又は前記焦点スポットの場所を決定するように構成される。前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。処理ユニット60は、電子を前記焦点スポットにおいて集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定するように構成される。処理ユニット60は、前記補正を少なくとも1つの電源70に提供するように構成される。
【0048】
図2は、対象を撮像するシステム100の一例を示す。システム100は、図1を参照して前記例のいずれかにおいて記載されたX線を生成する装置10を有する。システム100は、X線検出器110及び出力ユニット120をも有する。陰極20及び陽極30は、これらの間の領域の少なくとも一部が対象を収容する検査領域であるように、X線検出器110に対して配置されるように構成される。X線検出器110は、前記対象の画像データを取得するように構成される。出力ユニット120は、前記対象の前記画像データを表すデータを出力するように構成される。
【0049】
図3は、基本的なステップにおいてX線を生成する方法200を示す。方法200は、
ステップ(a)とも称される生成ステップ210において、少なくとも1つの電源40で、陰極20と陽極30との間の電圧を生成し、ここで、前記陰極は、前記陽極に対して配置され、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が前記電圧に対応するエネルギで前記陽極と相互作用するように動作可能であり、前記電子が、焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成し、
ステップ(b)とも称される提供ステップ220において、前記少なくとも1つの電源で、前記陰極に陰極電流を提供し、
ステップ(c)とも称される配置230及び測定ステップ240において、電子検出器50を前記陽極に対して配置し、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定し、
ステップ(d)とも称される提供ステップ250において、前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニット60に提供し、
ステップ(e)とも称される決定ステップ260において、前記処理ユニットで、陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の電圧に対する補正を決定し、ここで、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号及び陽極表面粗さと後方散乱電子放射との間の相関の使用を含み、
ステップ(h)とも称される提供ステップ270において、前記陰極電流補正及び/又は前記陰極と前記陽極との間の電圧に対する補正を前記少なくとも1つの電源に提供する、
ことを有する。
【0050】
一例において、ステップ(e)は、陽極表面粗さとX線放射との間の相関を使用することを有する。
【0051】
一例において、前記後方散乱電子信号は、後方散乱電子電流を有する。
【0052】
一例において、前記電子検出器は、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口は、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置される。
【0053】
一例において、前記方法は、前記焦点スポットのサイズを決定280するステップf)を有し、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0054】
一例において、前記方法は、前記焦点スポットの場所を決定290するステップg)を有し、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用する。
【0055】
一例において、前記少なくとも1つの電源は、前記電子を前記焦点スポットに集束させる少なくとも1つの電圧を提供するように構成され、前記方法は、前記処理ユニットで、前記電子を前記焦点スポットに集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定し、前記電子を前記焦点スポットに収束させる前記少なくとも1つの電圧に対する前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供することを有する。
【0056】
一例において、前記後方散乱電子信号は、後方散乱電子束を有する。
【0057】
一例において、前記方法は、前記電子検出器で、前記陽極からのX線束を測定することを有する。
【0058】
一例において、前記電子検出器は、シンチレータを有する。
【0059】
一例において、
ステップ(a1)とも称される配置ステップ310において、陰極20を陽極30に対して配置し、前記陰極及び陽極は、前記陰極から放射された電子が焦点スポットにおいて前記陽極と相互作用してX線を生成するように動作可能であり、
ステップ(b1)とも称される提供ステップ320において、少なくとも1つの電源70で、前記電子を前記焦点スポットに集束させる少なくとも1つの電圧を提供し、
ステップ(c1)とも称される配置ステップ330において、電子検出器50を前記陽極に対して配置し、ここで、前記電子検出器は、前記陽極からの後方散乱電子信号を測定するように構成され、前記電子検出器は、複数の電子検出素子及び開口を有し、前記開口は、前記陽極と前記複数の電子検出素子との間に配置され、
ステップ(d1)とも称される提供ステップ340において、前記測定された後方散乱電子信号を処理ユニット60に提供し、
ステップ(e1)とも称される決定ステップ350において、前記処理ユニットにより前記焦点スポットのサイズ及び/又は前記焦点スポットの場所を決定し、ここで、前記決定は、前記測定された後方散乱電子信号を使用し、
ステップ(f1)とも称される決定ステップ360において、前記処理ユニットで、電子を前記焦点スポットにおいて集束させる前記少なくとも1つの電圧に対する補正を決定し、ここで、前記処理ユニットは、前記補正を前記少なくとも1つの電源に提供するように構成される、
ことを有する、集束電子ビームを制御する方法300が提供されることは、関連図には示されないが、ここに明確に記載される。
【0060】
X線を生成する装置、対象を撮像するシステム、及びX線を生成する方法は、ここで、図4乃至9と併せて、より詳細に記載される。
【0061】
図4は、後方散乱電子(BSE)が放射される陽極表面と相互作用する電子を示す。X線も放射されるが、しかしながら、X線は、前記陽極内の異なる深度で生成され、X線ビームのフィルタリング及びX線束の減少であると見なされることができる一部のX線の吸収及び散乱を生じる。この状況は、前記陽極表面が粗化されると悪化される。なぜなら、以前に前記陽極のほとんどを通っておらず、したがって特にフィルタされていない、前記陽極の表面の近くで生成されたX線が、前記陽極表面のトラフ内で生成されることができ、前記陽極表面を最終的に出る前に陽極の増大された厚さを通過しなければならず、したがって前記X線ビームが、増大されたフィルタリングを持ち、X線束の降下を生じるからである。
【0062】
ヘルスケア撮像産業は、マシンのアップタイムが最大に保たれる指示とともに撮像機器をリースする又はX線機器を販売する新しいビジネスモデルに移行している。したがって、ハードウェアにおける新しい投資(センサ)又は主要な設計変更又はフィールドサービスエンジニア(FSE)からフィールドへの頻繁な訪問なしで、連続的に線管の性能を監視及び維持することが、望ましい。現在、X線管は、陰極及び陽極の両側から使用に基づく頻繁な適応(例えば年に2回)を必要とする。陰極電流適応は、同じ放射電流を得るように(経時的な抵抗の変化を補償するように)陰極電流をリセットするように行われ、別の線管収量較正は、X線束の出力及び画質を確認するように行われる。図4に関して論じられるように、前記陽極表面の劣化は、X線束の変化を生じる。前記X線を生成する装置、対象を撮像するシステム、及びX線を生成する方法は、この問題に対処する。
【0063】
図5は、一次電子、前記陰極により放射された電子が、表面粗さを示す陽極と相互作用することを除いて、図4に示されるものと同様の状況を示す。前記陽極の表面は、高さH及び幅Wを持つ表面フィーチャを持つように表され、後方散乱電子の収量(yield)が、図5のグラフに表される正規化された表面粗さ(H/W)に依存することが、示されている。より詳細には、0.1より低い粗さに対して、前記後方散乱電子収量は、平坦な表面に対するものと同じであり、粗さの増大とともに、前記収量は、連続的に減少する。前記電子ビームがぶつかる焦点スポットにおいて、検出される後方散乱電子の数は、前記粗さ及び前記陽極ターゲットの角度に関する直接的な情報を与える。Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 33 (1994) pp. 4727-4734を参照されたい。図6に示されるように、前記電子後方散乱収量(後方散乱電子BSEの収量)は、衝突エネルギとは独立であり、換言すると、加速電圧、したがって後方散乱電子の測定は、前記陽極表面の粗さの測定と関連付けられることができる。既知であるように、背景セクションで論じられたように、陽極表面粗さとX線出力スペクトルとの間に相関が存在し、前記X線管内で接続される後方散乱電子電流は、前記陽極の粗さと関連付けられることができ、X線スペクトルに関連付けられることができる。これは、前記X線束を適切なレベルで維持するように前記陰極電流及び/又はX線管電圧が調整されることを可能にする。換言すると、後方散乱電子電流は、陽極粗さの度合いに対するインジケータとして測定され、これは、前記陰極電流及び/又はX線管電圧を補正するようにフィードバックとして使用される。
【0064】
図7は、同じX線強度又はX線束を維持するための詳細なワークフローを示す。特定のシステムに対し、経験的較正調査が、粗さの異なる度合いを後方散乱電子電流と関連付け、粗さの異なる度合いをX線束の損失と関連付けるように実行される。前記測定された後方散乱電子電流は、次いで、前記X線束の損失に対する値を提供するのに使用され、これは、前記陰極電流を適宜に調整するのに使用される。前記ワークフローは、前記陰極電流に対する補正を示すが、これに加えて又は代わりに、前記X線管電圧が同じ強度を維持するように調整されることができる場合に、前記X線管電圧に対する補正にも当てはまることができる。後方散乱電子収量が、加速電圧とは独立であるので、後方散乱電子電流は、前記X線管が高いKVで動作する又は最大陽極回転速度で動作することなしに測定されることができる。前記後方散乱電子電流を定期的に測定することにより、前記X線管からの前記X線束が、維持されることができる。更に、図1を参照して上に及び図9を参照して下に記載されるように、シンチレータが、前記陽極からの前記X線束を検出するのに前記後方散乱電子検出器で使用されることができる。これは、前記陰極電流及び/又は線管電圧をより良く調整するのに前記後方散乱電子電流とともに使用されることができる。前記X線管の概略は、図8に示される。
【0065】
前記陽極における電子ビーム焦点スポットの場所及びサイズの変動に対処するために、前記装置は、前記電子ビーム焦点スポットを感知することを提供し、集束及び偏向磁場を制御する高電圧発生器により焦点スポット特性の閉ループ制御を可能にし、これにより前記電子ビーム焦点スポットのサイズ及び場所を安定化する。
【0066】
図9は、どのように前記装置がこれを達成するかを概略的に示す。電子を直接的に検出することができる画素化検出器は、前記焦点スポットに対して小さな絞り(diaphragm)(例えばピンホールカメラ)の遠い側に配置される。直接電子検出は、透過電子顕微鏡撮像に対する確立された技術(DDD)であり、例えば、フレームレートが毎秒100フレームに到達することができるhttp://www.directelectron.com/products/de-seriesを参照されたい。電子及びシンチレータの光子を変換して光子を検出するのではなく、電子を直接的に検出することにより、光子束と比較して、桁違いに大きい電子束が、測定されることができる。これは、改善された信号速度、空間解像度(シンチレータなし)及びダイナミックレンジに帰着する。十分に小さい絞り(例えばピンホールカメラ)を通って送られる場合に、後ろの局所電子束は、FSと絞りとの間の電場が、1:1マッピングを可能にするのに十分に小さい場合に、前記焦点スポット(点広がり関数)における束分布をマッピングする。例えば、フィリップスiMRC単極性陽極接地型線管において、後方散乱電子は、前記線管電圧のたった数%のオーダの電位差を見る。電子束分布は、空間分布電子捕獲電極(直接検出)を用いて電場なし(field-less)空間における前記絞りの下流で検出される。「電子画像」は、十分であり、比較的高い信号強度を提供する。
【0067】
後方散乱対一次電子の割合は、上で論じられたように、一次電子の運動エネルギにほとんど依存しない。散乱電子の束は、したがって、線管加速電圧に反応しない。これは、高いダイナミックレンジを達成することを単純化する。光子束が、線管電圧の二乗に比例するのに対し、電子束が一定に近いことに注意すべきである。散乱電子の割合は、前記陽極における到来角度の小さなずれに反応せず、X線管の集束手段が、電子到来角度の小さなずれ(例えば±20°)を引き起こすので、前記散乱電子割合は、このような小さなずれに反応しない。したがって、前記検出された後方散乱電子束は、前記焦点スポットにおける入射電子の束パターンを真にマッピングする。散乱電子は、幅広い範囲の方向に現れる。これらの束は、法線から60°離れても大きい。後方散乱ピンホール電子カメラは、したがって、使用されたX線の扇ビームの外に配置され、依然として高い信号を提供することができる。
【0068】
具体的な実施例は、
電子を捕獲するための画素化された低電子散乱材料(低Z例えば炭素、Be)の使用、
低Z(低後方散乱材料、コーティング又はバルク)の絞りの使用、
アバランシェ(avalanche)検出器(電子増倍管)の使用、
光子及び電子検出の組み合わせ。電子束及びX線束を同時に測定(シンチレータ/フォトダイオード対の上の薄い電子捕獲電極)。線管電圧(光子束に対する電子の比が線管電圧に依存する)及び線管電流(後方散乱電子からの合計信号に比例する)を測定することを可能にする、
電子捕獲電極とフォトダイオードに対する読み出し電子機器の組み合わせ(ゲイン補正、バイアス)、
陽極空間及びカメラ空間を分離する(カメラの汚染を防ぐ)電子透過ホイル(例えばダイヤモンドホイル)の使用、
開放環境又は不活性ガス環境におけるこのようなホイルの後ろの電子検出、
である。
【0069】
したがって、頻繁な較正及びFSE訪問は、遠隔で監視されることができるので、X線管収量を較正するのに必要ではない。加えて、追加のセンサが、X線管劣化を監視するのに要求されない。後方散乱電子収量生成は、kVとは独立であるので、このような監視は、高いkV印可又はX線生成を要求しない。これは、陽極の残りの寿命を予測し、粗さによるX線強度損失を補正し、システムのアップタイムを増大させ、FSEの訪問の数を減らすことにより経費を節約するのを助けることができる。陰極適応及び線管線量適応の両方を、全ての撮像モダリティの未来のシステムに対する1つの自動化された適応プロセスに結合するポテンシャルも存在する。
【0070】
他の典型的な実施例において、適切なシステム上で、先行する実施例の1つによる方法の方法ステップを実行するように構成されることを特徴とするコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が、提供される。
【0071】
前記コンピュータプログラム要素は、したがって、一実施例の一部であってもよいコンピュータユニットに記憶されてもよい。この計算ユニットは、上記の方法のステップを実行する又は実行を誘導するように構成されてもよい。更に、上記の装置及び/又はシステムの構成要素を動作させるように構成されてもよい。計算ユニットは、自動的に動作するように、及び/又はユーザのオーダを実行するように構成されることができる。コンピュータプログラムは、データプロセッサのワーキングメモリにロードされてもよい。したがって、データプロセッサは、前述の実施例のうちの1つによる方法を実行するように備えられてもよい。
【0072】
本発明のこの例示的な実施例は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、更新によって既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方をカバーする。
【0073】
更に、コンピュータプログラム要素は、上述の方法の例示的な実施例の手順を実行するために必要な全てのステップを提供することができてもよい。
【0074】
本発明の更なる例示的な実施例によれば、CD―ROM、USBスティック等のようなコンピュータ可読媒体が、提示され、コンピュータ可読媒体は、前のセクションに記載されたコンピュータプログラム要素を記憶している。
【0075】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として提供される光記憶媒体又は半導体媒体等の適切な媒体に記憶及び/又は配布されうるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形式で配布されてもよい。
【0076】
しかしながら、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提示されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされることができる。本発明の更なる例示的な実施例によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロード可能にする媒体が、提供され、そのコンピュータプログラム要素は、本発明の前述の実施例の1つによる方法を実行するように構成される。
【0077】
本発明の実施例は、異なる対象物を参照して説明されることに留意されたい。特に、いくつかの実施例は、方法型請求項を参照して説明され、他の実施例は、装置型請求項を参照して説明される。しかしながら、当業者は、上記及び以下の説明から、特に断りのない限り、1つのタイプの対象物に属する特徴の組み合わせに加えて、異なる対象物に関連する特徴間の組み合わせも、本出願で開示されていると見なされることを推測するであろう。しかしながら、全ての機能は、組み合わせられて、機能の単純な合計以上の相乗効果を提供することができる。
【0078】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されているが、このような図示及び説明は、例示的又は典型的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施例に限定されない。開示された実施例に対する他の変形は、図面、開示、及び従属請求項の研究から、請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成されることができる。
【0079】
請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載されているいくつかのアイテムの機能を満たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項中の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9