特許第6855611号(P6855611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6855611
(24)【登録日】2021年3月19日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】吸引器用コントローラ
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/57 20200101AFI20210329BHJP
【FI】
   A24F40/57
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-38095(P2020-38095)
(22)【出願日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年3月5日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 啓司
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6651667(JP,B1)
【文献】 国際公開第2019/146063(WO,A1)
【文献】 特表2015−517312(JP,A)
【文献】 特表2015−536648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00−47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル源を加熱して霧化するためのヒータに電力を供給する電力供給部と、
前記ヒータの抵抗値を検出するための検出回路と、
前記エアロゾル源の霧化要求の受信に応じて、前記ヒータに電力を供給するように前記電力供給部を制御することで前記エアロゾル源を加熱する加熱処理を実行するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、前記加熱処理中に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値と、前記ヒータの基準温度と、当該基準温度に対応付けられた前記ヒータの基準抵抗値とに基づいて前記加熱処理を制御し、
前記プロセッサは、
第1霧化要求の終了後、前記第1霧化要求での前記加熱処理が終了してからの前記ヒータの自然冷却の完了を判断する冷却判断処理を行い、
前記冷却判断処理で前記ヒータの自然冷却が完了したと判断した場合、前記検出回路を用いて前記ヒータの抵抗値を検出し、当該抵抗値により前記基準抵抗値を更新し、
前記第1霧化要求の次の第2霧化要求での前記加熱処理を、更新された前記基準抵抗値を用いて制御
前記基準温度は、前記プロセッサにより前記ヒータの自然冷却が完了したと判断されるときの前記ヒータの温度である、ことを特徴とする吸引器用コントローラ。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1霧化要求での前記加熱処理の終了時にタイマーを起動させ、当該タイマーでの計時結果に基づいて前記冷却判断処理を実行する、ことを特徴とする請求項1に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記冷却判断処理として、前記加熱処理を終了してから所定時間が経過した場合に前記ヒータの自然冷却が完了したと判断する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記冷却判断処理として、前記加熱処理の終了後、前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値の経時変化率の監視を開始し、当該経時変化率が許容範囲に収まった場合に前記ヒータの自然冷却が完了したと判断する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記加熱処理が終了してから所定時間が経過した後に前記経時変化率の監視を開始する、ことを特徴とする請求項4に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項6】
前記プロセッサは、
求めた前記ヒータの温度が閾値を超える場合、前記霧化要求の受信に応じた前記加熱処理を所定期間だけ禁止し、
前記所定期間の間における前記ヒータの温度の安定後又は前記所定期間の経過後に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項7】
前記プロセッサは、
動作モードとして、前記霧化要求の受信に応じて前記加熱処理を実行可能な第1モードと、前記第1モードより消費電力が小さい第2モードとを有し、
前記第1モードから前記第2モードに移行させる際に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項8】
前記基準温度が記憶されたメモリを更に備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記基準温度を用いて、前記加熱処理中の前記ヒータの温度を求める、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項9】
前記基準温度は、30〜50℃の範囲内における温度に設定されている、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項10】
前記ヒータとは異なる部品の温度を検出する温度センサを更に備え、
前記プロセッサは、前記冷却判断処理で前記ヒータの自然冷却が完了したと判断したときにおける前記温度センサの出力値に基づいて前記基準温度を設定する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項11】
ユーザのパフ動作を検出するための圧力センサを更に備え、
前記圧力センサは、温度補償された圧力値を出力するために前記温度センサを有する、ことを特徴とする請求項10に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項12】
バッテリを更に備え、
前記温度センサは、前記バッテリの温度を検出する、ことを特徴とする請求項10に記載の吸引器用コントローラ。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記温度センサの出力値を前記ヒータの温度に換算した値を前記基準温度として設定する、ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の吸引器用コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引器用コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エアロゾル形成基体を加熱するための電気ヒータを備えたエアロゾル発生システムが記載されている。該システムは、カードリッジ内のエアロゾル形成基体をほとんど使用しきることによるヒータの温度変化の速度の増加を、ヒータの抵抗の変化から検出する。具体的には、ヒータの電気接点の寄生抵抗RPとヒータフィラメントの抵抗R0とからなる抵抗R1を、いかなる加熱も行われる前(ヒータを最初に起動する前)に初期抵抗値として測定しておき、初期抵抗値R1を基準として、ヒータに電力を供給してからtの時点におけるヒータの抵抗の変化ΔR(=R2−R1)を算出する。R2は、tの時点におけるヒータの抵抗である。そして、算出されたヒータの抵抗の変化ΔRを用いて、ヒータフィラメントが乾燥した状態を示すヒータの温度の急激な上昇を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018−514191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ヒータの温度検出の基準とされる抵抗値R1を、いかなる加熱も行われる前(ヒータを最初に起動する前)に測定しており、すべての後に続くヒータの温度検出に対して使用している。しかしながら、ヒータの所定の温度(基準温度)に対応するヒータの基準抵抗値は、ヒータの電気接点の寄生抵抗(接触抵抗)等に起因して、例えばユーザのパフ動作ごとに変動することを本願発明者が見出した。ヒータの基準温度に対応する基準抵抗値が変化してしまうと、ヒータの温度を精度よく検出することが困難になりうる。
【0005】
そこで、本発明は、エアロゾル源を加熱するヒータの温度を精度よく検出するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る吸引器用コントローラは、エアロゾル源を加熱して霧化するためのヒータに電力を供給する電力供給部と、前記ヒータの抵抗値を検出するための検出回路と、前記エアロゾル源の霧化要求の受信に応じて、前記ヒータに電力を供給するように前記電力供給部を制御することで前記エアロゾル源を加熱する加熱処理を実行するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記加熱処理中に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値と、前記ヒータの基準温度と、当該基準温度における前記ヒータの基準抵抗値とに基づいて前記加熱処理を制御し、前記加熱処理の終了後かつ次の前記霧化要求の受信前に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【0007】
一実施形態において、前記プロセッサは、前記加熱処理の終了後において、前記ヒータが冷却するのを待ってから前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【0008】
一実施形態において、前記プロセッサは、前記加熱処理を終了してから所定時間が経過した後に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【0009】
一実施形態において、前記プロセッサは、前記加熱処理の終了後、前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値の経時変化率の監視を開始し、当該経時変化率が許容範囲に収まった場合に前記基準抵抗値を更新する。
【0010】
一実施形態において、前記プロセッサは、前記加熱処理が終了してから所定時間が経過した後に前記経時変化率の監視を開始する。
【0011】
一実施形態において、前記プロセッサは、求めた前記ヒータの温度が閾値を超える場合、前記霧化要求の受信に応じた前記加熱処理を所定期間だけ禁止し、前記所定期間の間における前記ヒータの温度の安定後又は前記所定期間の経過後に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【0012】
一実施形態において、前記プロセッサは、動作モードとして、前記霧化要求の受信に応じて前記加熱処理を実行可能な第1モードと、前記第1モードより消費電力が小さい第2モードとを有し、前記第1モードから前記第2モードに移行させる際に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【0013】
一実施形態において、前記基準温度が記憶されたメモリを更に備え、前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記基準温度を用いて、前記加熱処理中の前記ヒータの温度を求める。
【0014】
一実施形態において、前記基準温度は、30〜50℃の範囲内における温度に設定されている。
【0015】
一実施形態において、前記ヒータとは異なる部品の温度を検出する温度センサを更に備え、前記プロセッサは、前記温度センサの出力値に基づいて前記基準温度を取得する。
【0016】
一実施形態において、ユーザのパフ動作を検出するための圧力センサを更に備え、前記圧力センサは、温度補償された圧力値を出力するために前記温度センサを有する。
【0017】
一実施形態において、バッテリを更に備え、前記温度センサは、前記バッテリの温度を検出する。
【0018】
一実施形態において、前記プロセッサは、前記温度センサの出力値を前記ヒータの温度に換算した値を前記基準温度として設定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エアロゾル源を加熱するヒータの温度を精度よく検出するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の吸引器の構成を模式的に示す図。
図2】電気部品の第1構成例を示す図。
図3】電気部品の第2構成例を示す図。
図4】電気部品の第3構成例を示す図。
図5】一実施形態の吸引器の動作を示す図。
図6】一実施形態の吸引器の検出関連処理を示す図。
図7】ヒータの温度および抵抗値の経時変化の検証例を示す図。
図8】ヒータの温度および抵抗値の経時変化の検証例を示す図。
図9】自然冷却中のヒータの温度および抵抗値の経時変化の検証例を示す図。
図10】自然冷却中のヒータの温度および抵抗値の経時変化の検証例を示す図。
図11】冷却判断処理の詳細を提供する第1例を示す図。
図12】冷却判断処理の詳細を提供する第2例を示す図。
図13】吸引器の検出関連処理の他の例を示す図。
図14】プロセッサの動作モードの例を示す図。
図15】ヒータの抵抗値RHTRの計算をアナログ回路で実現した具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
図1には、一実施形態の吸引器100の構成が模式的に示されている。ユーザによる吸引動作に応じて、エアロゾルを含む気体、または、エアロゾルおよび香味物質を含む気体を吸口部130を通してユーザに提供するように構成されうる。吸引器100は、コントローラ102と、霧化器104とを備えうる。吸引器100は、霧化器104を取り外し可能な状態で保持する保持部103を備えうる。コントローラ102は、吸引器用コントローラとして理解されてもよい。霧化器104は、エアロゾル源を霧化するように構成されうる。エアロゾル源は、例えば、グリセリンまたはプロピレングリコール等の多価アルコール等の液体でありうる。あるいは、エアロゾル源は、薬剤を含んでもよい。エアロゾル源は、液体であってもよいし、固体であってもよいし、液体および固体の混合物であってもよい。エアロゾル源に代えて、水等の蒸気源が用いられてもよい。
【0023】
吸引器100は、香味源131を含むカプセル106を更に備えてもよく、霧化器104は、カプセル106を取り外し可能な状態で保持するカプセルホルダ105を含みうる。カプセルホルダ106は、霧化器104ではなくコントローラ102に含められていてもよい。香味源131は、例えば、たばこ材料を成形した成形体でありうる。あるいは、香味源131は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、ハーブ、漢方、コーヒー豆等)によって構成されてもよい。香味源には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。香味源131は、エアロゾル源に添加されてもよい。
【0024】
コントローラ102は、電気部品110を含みうる。電気部品110は、ユーザインターフェース116を含みうる。あるいは、コントローラ102は、電気部品110およびユーザインターフェース116を含むものとして理解されてもよい。ユーザインターフェース116は、例えば、表示部DISP(例えば、LED等の発光素子、および/または、LCD等の画像表示器)、および/または、操作部OP(例えば、ボタンスイッチ等のスイッチ、および/または、タッチディスプレイ)を含みうる。
【0025】
コントローラ102の保持部103は、第1電気接点111および第2電気接点112を含みうる。保持部103によって霧化器104が保持された状態において、保持部103の第1電気接点111は、霧化器104の第3電気接点123に接し、また、保持部103の第2電気接点112は、霧化器104の第4電気接点124に接しうる。コントローラ102は、第1電気接点111および第2電気接点112を通して霧化器104に電力を供給しうる。
【0026】
霧化器104は、前述の第3電気接点123および第4電気接点124を含みうる。また、霧化器104は、エアロゾル源を加熱するヒータ127と、エアロゾル源を保持する容器125、容器125によって保持されたエアロゾル源をヒータ127による加熱領域に輸送する輸送部(ウイック)126とを含みうる。該加熱領域の少なくとも一部は、霧化器104内に設けられた流路128に配置されうる。第1電気接点111、第3電気接点123、ヒータ127、第4電気接点124および第2電気接点112は、ヒータ127に電流を流すための電流経路を形成する。輸送部126は、例えば、繊維素材または多孔質素材で構成されうる。
【0027】
霧化器104は、前述のように、カプセル106を取り外し可能に保持するカプセルホルダ105を含むことができる。カプセルホルダ105は、一例において、カプセル106の一部をカプセルホルダ105内または霧化器104内に収容し、他の一部を露出させるようにカプセル106を保持しうる。ユーザは、吸口部130を口で銜えて、エアロゾルを含有する気体を吸引することができる。このように吸口部130が取り外し可能なカプセル106に備えられることで、吸引器100を清潔に保つことができる。
【0028】
ユーザが吸口部130を銜えて吸引動作を行うと、矢印で例示されるように、不図示の開口を通じて霧化器104の流路128に空気が流入し、ヒータ127がエアロゾル源を加熱することによって発生するエアロゾルがその空気によって吸口部130に向けて輸送される。そして、香味源131が配置されている構成においては、そのエアロゾルに香味源131が発生する香味物質が添加されて吸口部130に輸送され、ユーザの口に吸い込まれる。
【0029】
図2には、電気部品110の第1構成例が示されている。電気部品110は、電源(バッテリ)250と、霧化器104(のヒータ127)に電力を供給する電力供給部270と、ヒータ127の抵抗値を検出するための検出回路220と、検出回路220を使って得られる情報に応じて制御信号を発生するプロセッサ240とを備えうる。ヒータ127は、ヒータ127の温度によって変化する抵抗値RHTRを有する。
【0030】
電力供給部270は、ヒータ127に電流を流すための電流経路に配置されたスイッチSW1を含みうる。スイッチSW1の開閉(オフ、オン)は、プロセッサ240が発生する制御信号SWC1によって制御されうる。電力供給部270は、例えば、電源250から供給される電源電圧Vbatをヒータ駆動電圧Voutに変換する電圧変換器272を含むことができる。スイッチSW1は、ヒータ駆動電圧Voutの供給ラインと接地ラインとの間に、ヒータ127に電流を流すための電流経路を構成するように配置されうる。スイッチSW1は、例えば、ヒータ駆動電圧Voutの供給ラインとヒータ127との間に配置されうる。
【0031】
検出回路220は、ヒータ駆動電圧Voutの供給ラインと接地ラインとの間に、ヒータ127と直列に配置されたシャント抵抗Rshunt1と、スイッチSW2とを含みうる。また、検出回路220は、ヒータ127に印加される電圧VHTRを検出する増幅器AMPを含みうる。ここで、シャント抵抗Rshunt1の抵抗値をその符号と同様にRshunt1と標記する。増幅器AMPは、例えば、非反転入力端子、反転入力端子および出力端子を有する差動増幅器221と、反転入力端子と接地ラインとを接続する抵抗素子R1と、反転入力端子と出力端子とを接続する抵抗素子R2とを有し、VHTRが非反転入力端子に入力されうる。このような構成例では、抵抗素子R1の抵抗値をR1、抵抗素子R2の抵抗値をR2と標記すると、増幅器AMPの増幅率Aは、(1+R2/R1)である。スイッチSW2は、プロセッサ240が発生する制御信号SWC2によって制御されうる。
【0032】
ヒータ127の抵抗値RHTRを検出するときは、スイッチSW1がオフされ、スイッチSW2がオンされる。このとき、RHTRを流れる電流をIHTRとすると、
HTR=VHTR/IHTR=VHTR・(RHTR+Rshunt1)/Vout
・・・式(1)
である。式(1)を変形すると、RHTRを与える式(2)が得られる。
HTR=Rshunt1・VHTR/(Vout−VHTR) ・・・式(2)
【0033】
検出回路220の増幅器AMPの出力電圧VAMPは、式(3)で与えられる。
AMP=A・VHTR ・・・式(3)
式(3)を変形すると、VHTRを与える式(4)が得られる。
HTR=VAMP/A ・・・式(4)
よって、式(2)および式(4)に従って、ヒータ127の抵抗値RHTRを得ることができる。
【0034】
プロセッサ240は、検出回路220の増幅器AMPの出力電圧VAMPが入力される入力端子、および、該入力端子に入力された電圧であるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器を含みうる。プロセッサ240は、検出回路220を使って得られる情報(ここでは、VAMP)に応じて制御信号を発生しうる。該制御信号は、例えば、制御信号SWC1でありうるが、他の制御信号(例えば、表示部DISPを制御する制御信号)を含むこともできる。
【0035】
プロセッサ240は、例えば、MCU(Micro Controller Unit(マイクロコントローラユニット))で構成されうるが、プロセッサ240は、MCUとアナログ回路とによって構成されてもよい。プロセッサ240には、電源電圧Vbatをプロセッサ240用の電圧Vmcuに変換するLDO(Low DropOut)等の電圧変換回路260から電圧Vmcuが供給されうる。プロセッサ240は、既知の値であるRshunt1、out、および、増幅器AMPから供給されるVAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従って、ヒータ127の抵抗値RHTRを計算しうる。
【0036】
プロセッサ240は、ヒータ127の抵抗値RHTRに基づいて、式(5)に従って、ヒータ127の温度を計算しうる。
T=Tref+(1/α)・(RHTR−Rref)・(1/Rref)・10
・・・式(5)
【0037】
式(5)において、Trefはヒータ127の基準温度である。Rrefはヒータ127の基準抵抗値であり、これは基準温度におけるヒータ127の抵抗値RHTRである。αはヒータ127の温度係数[ppm/℃]である。ここで、基準温度は、任意の温度とすることができ、基準抵抗値と対応付けられて(紐付けられて)プロセッサ240のメモリに記憶されうる。基準温度としては、後述するように、事前に設定された温度が用いられてもよいし、基準抵抗値を取得する際に得られるヒータ127の温度が用いられてもよい。基準抵抗値を取得する際に得られるヒータ127の温度は、吸引器100内の任意箇所の温度(例えば、後述の温度センサ282によって検出される温度)から換算されうる。
【0038】
プロセッサ240は、ヒータ127の温度に基づいて、ヒータ127の温度が目標温度に一致するように、スイッチSW1を制御するための制御信号SWC1を発生しうる。プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の操作部OPからの信号を取り込み、また、ユーザインターフェース116の表示部DISPに対して表示制御用の信号を提供する。電気部品110は、ユーザのパフ動作を検出するパフセンサ(例えば、圧力センサ)281、および、電気部品110の所定箇所の温度を検出する温度センサ282を含みうる。温度センサ282は、パフセンサ281または電源250またはプロセッサ240に組み込まれていてもよい。
【0039】
図3には、電気部品110の第2構成例が示されている。第2構成例は、シャント抵抗Rshunt1と接地ラインとの間に、シャント抵抗Rshunt1と直列にシャント抵抗Rshunt2が設けられている点で第1構成例と異なり、その他は第1構成例と同じである。ここで、シャント抵抗Rshunt2の抵抗値をその符号と同様にRshunt2と標記する。抵抗値Rshunt2は、抵抗値RHTRよりも十分に大きい。したがって、抵抗値RHTRの計算においては、式(2)を使用することができる。
【0040】
図4には、電気部品110の第3構成例が示されている。第3構成例は、差動増幅器221の電源端子に電圧Vmcuが供給されている点で、差動増幅器221の電源端子に電圧Voutが供給されている第1構成例とは異なる。第3構成例に対して、第2構成例のようなシャント抵抗Rshunt2が追加されてもよい。差動増幅器221の非反転入力端子と出力端子との間には、非反転入力端子から出力端子に向かって順方向に、ダイオードが配置されうる。
【0041】
図5には、吸引器100の動作が示されている。この動作は、プロセッサ240によって制御される。プロセッサ240は、プログラムを格納したメモリと、該プログラムに従って動作するCPUとを含む。ステップS501では、プロセッサ240は、霧化要求の受信を待ち、霧化要求を受信したら、ステップS502を実行する。霧化要求は、霧化器104を動作させること、より詳しくは、エアロゾル源からエアロゾルを発生させるようにヒータ127を目標温度範囲内に制御することの要求である。霧化要求は、ユーザが吸口部130を通して吸引動作(パフ動作)を行ったことをパフセンサ281が検出し、その検出をパフセンサ281がプロセッサ240に通知する動作(例えば、検出信号の送信)でありうる。あるいは、霧化要求は、ユーザが操作部OPを操作したことを操作部OPがプロセッサ240に通知する動作(例えば、操作信号の送信)でありうる。以下では、ユーザが吸引動作を行っている間、あるいはユーザが操作部OPを操作している間は、パフセンサ281あるいは操作部OPから霧化要求が継続的に送信され、ユーザが吸引動作あるいは操作部OPの操作を終了したときに霧化要求(の送信)が終了するものとする。
【0042】
ステップS502では、プロセッサ240は、電源電圧Vbatを不図示の電源管理回路から取得し、電源電圧Vbatが放電終止電圧Vend(例えば3.2V)を上回っているかどうかを判断する。電源電圧Vbatが放電終止電圧Vend以下ということは、電源250の放電可能残量が十分ではないことを意味する。そこで、電源電圧Vbatが放電終止電圧Vend以下である場合は、ステップS519において、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の表示部DISPを使って、電源250の充電を促す報知を行う。この報知は、表示部DISPがLEDを含む場合において、該LEDを赤色で点灯させることでありうる。一方、電源電圧Vbatが放電終止電圧Vendを上回っている場合、プロセッサ240は加熱処理を実行する。加熱処理は、エアロゾル源の霧化要求の受信に応じて、ヒータ127に電力を供給するように電力供給部270を制御してエアロゾル源を加熱する処理であり、ステップS503〜S507を含みうる。
【0043】
ステップS503では、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の表示部DISPを使って、正常動作が可能であることを報知しうる。この報知は、表示部DISPがLEDを含む場合において、該LEDを青色で点灯させることでありうる。次いで、ステップS504では、プロセッサ240は、ヒータ127に対する給電制御を開始する。ヒータ127に対する給電制御は、ヒータ127を目標温度範囲内に制御する温度制御を含む。温度制御は、ヒータ127の抵抗値RHTRを検出することによってヒータ127の温度を検出し、その検出結果に基づいてスイッチSW1の開閉を制御信号SWC1によって制御するフィードバック制御を含みうる。
【0044】
次いで、ステップS505では、プロセッサ240は、吸引時間Tを0にリセットし、その後、ステップS506では、プロセッサ240は、吸引時間TにΔtを加算する。Δtは、ステップS506の実行と次のステップ506の実行との時間間隔に相当する。
【0045】
次いで、ステップS507では、プロセッサ240は、霧化要求が終了しているかどうかを判断し、霧化要求が終了している場合は、ステップS509において、プロセッサ240は、ヒータ127に対する給電制御を停止する。一方、霧化要求が終了していない場合は、ステップS508において、プロセッサ240は、吸引時間Tが上限時間に達したかどうかを判断し、吸引時間Tが上限時間に達していない場合は、ステップS506に戻る。一例として、上限時間は2.0〜2.5secであってもよい。
【0046】
ステップS509に次いで、ステップS510では、プロセッサ240は、青色で点灯させていたLEDを消灯させる。次いで、ステップS511では、プロセッサ240は、積算時間Tを更新する。より具体的には、ステップS511では、現時点での積算時間Tに吸引時間Tを加算する。積算時間Tは、カプセル106が吸引のために使用された積算時間、換言すると、カプセル106の香味源131を通してエアロゾルが吸引された積算時間でありうる。
【0047】
ステップS512では、プロセッサ240は、積算時間Tが吸引可能時間(例えば、120sec)を超えていないかどうかを判断する。積算時間Tが吸引可能時間を超えていない場合は、カプセル106が未だ香味物質を提供可能であることを意味し、この場合は、ステップS501に戻る。積算時間Tが吸引可能時間を超えている場合は、ステップS513において、プロセッサ240は、霧化要求の発生を待つ。そして、霧化要求が発生したら、ステップS514において、プロセッサ240は、霧化要求が所定時間にわたって継続するのを待ち、その後、ステップS515において、プロセッサ240は、ヒータ127に対する給電制御を禁止する。なお、ステップS514は省略されてもよい。
【0048】
次いで、ステップS516では、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の表示部DISPを使って、カプセル106の交換を促す報知を行う。この報知は、表示部DISPがLEDを含む場合において、該LEDを青色で点滅(点灯、消灯の繰り返し)させることでありうる。これを受けて、ユーザは、カプセル106を交換しうる。一例において、1個の霧化器104と複数個(例えば、3個)のカプセル106とが1個のセットとして販売されうる。このような例では、1個のセットの1個の霧化器104および全てのカプセル106が消費された後、消費されたセットの霧化器104と最後のカプセル106が新しいセットの霧化器104およびカプセル106に交換されうる。
【0049】
ステップS517では、プロセッサ240は、カプセル106(または、カプセル106および霧化器104)の交換が完了するのを待ち、ステップS518では、プロセッサ240は、ヒータ127に対する給電制御の禁止を解除し、ステップS501に戻る。
【0050】
以下、ヒータ127の抵抗値RHTRの検出およびそれに基づくヒータ127の温度の検出に関する検出関連処理を説明する。図6には、検出関連処理が示されている。検出関連処理は、プロセッサ240によって、図5に示された処理とは別に実行される。図5を参照しながら説明された給電制御は、図6に示された検出関連処理によって取得されるヒータ127の温度に基づいて実行されうる。
【0051】
ステップS601では、プロセッサ240は、霧化要求を受信したかどうかを判断し、霧化要求を受信した場合はステップS602に進み、霧化要求を受信していない場合はステップS621に進む。ステップS602では、プロセッサ240は、制御用の変数であるCountが所定数(例えば、3)以上であるかどうかを判断し、Countが所定数以上であれば、ステップS616に進み、そうでなければステップS603に進む。Countは、ヒータ127の温度が250℃を超えたことが検出される度にカウントアップされる変数であり、Countが所定数以上であることは、霧化器104の容器125のエアロゾル源が枯渇しかけているか、あるいは、枯渇していることを示す。所定数の値は、ヒータ127の温度の検出誤差(ノイズの影響を含む)等を考慮して定められうる。
【0052】
ステップS603〜S611は、加熱処理(図5の503〜S507)の実行中に行われる工程である。ステップS603では、プロセッサ240は、スイッチSW1をオンさせ、ステップS604では、プロセッサ240は、スイッチSW2をオンさせる。次いで、ステップS605では、プロセッサ240は、スイッチSW1をオフさせる。この状態で、ヒータ127の抵抗値RHTRの検出が可能な状態になる。ステップS606では、プロセッサ240は、検出回路220の増幅器AMPの出力電圧VAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従ってヒータ127の抵抗値RHTRを計算する。
【0053】
ステップS607では、プロセッサ240は、ステップS606で計算したヒータ127の抵抗値RHTRと、既に設定されている基準温度Trefおよび基準抵抗値Rrefとに基づいて、式(5)に従ってヒータ127の温度THTRを計算する。ステップS606、S607は、検出回路220を使って得られる情報および基準抵抗値Rrefに基づいてヒータ127の温度を取得する処理である。ステップS608では、プロセッサ240は、スイッチSW2をオフさせる。
【0054】
ステップS609では、プロセッサ240は、ヒータ127の温度THTRが300℃を超えているかどうかを判断し、温度THTRが300℃(第2温度、第2閾値)を超えている場合はステップS616に進み、温度THTRが300℃以下である場合はステップS610に進む。ステップS610では、プロセッサ240は、ヒータ127の温度THTRが250℃(第1温度、第1閾値)を超えているかどうかを判断し、温度THTRが250℃を超えている場合はステップS625に進み、温度THTRが250℃以下である場合はステップS611に進む。ステップS625では、プロセッサ240は、フラグFlagをセットする(つまり、Flag=Trueとする)。この例では、ヒータ127の温度THTRが250℃(第1温度)を超えていることは、霧化器104の容器125のエアロゾル源が枯渇しつつあることを示し、ヒータ127の温度THTRが300℃(第2温度)を超えていることは、該エアロゾル源が完全に枯渇していることを示す。しかし、第1温度および第2温度は、エアロゾル源の種類および輸送部(ウイック)127の構造等に応じて任意に定めることができる。
【0055】
ステップS611では、プロセッサ240は、霧化要求が終了しているかどうかを判断し、霧化要求が終了している場合はステップS612に進み、霧化要求が終了していない場合はステップS603に戻る。ステップS612では、プロセッサ240は、フラグFlagがセットされているかどうかを判断し、フラグFlagがセットされている場合はステップS626に進み、フラグFlagがセットされていない場合はステップS613に進む。ここで、フラグFlagがセットされていることは、ヒータ127の温度THTRが250℃を超えたことを示している。
【0056】
ステップS613では、プロセッサ240は、ヒータ127の自然冷却が完了したかどうかを判断する冷却判断処理を行う。プロセッサ240は、加熱処理を終了してから(即ち、ステップS611が終了してから)所定時間が経過した場合に、ヒータ127の自然冷却が完了したと判断してもよい。あるいは、プロセッサ240は、ヒータ127の抵抗値RHTRを検出し、その抵抗値RHTRに基づいてヒータ127の自然冷却が完了したと判断してもよい。ステップS613の具体例については後述する。
【0057】
ステップS613に次いで、ステップS614では、プロセッサ240は、検出回路220を用いてヒータ127の抵抗値RHTRを検出し、その抵抗値RHTRにより基準抵抗値Rrefを更新する。具体的には、プロセッサ240は、スイッチSW2をオンさせて、増幅器AMPの出力電圧VAMPを検出し、その後、スイッチSW2をオフさせる。そして、プロセッサ240は、検出した出力電圧VAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従ってヒータ127の抵抗値RHTRを計算し、計算した抵抗値RHTRを基準抵抗値Rrefとして、基準温度Trefに対応付けて(紐付けて)メモリに格納する。ステップS615では、プロセッサ240は、Countを0にリセットする。
【0058】
基準温度Trefにおける基準抵抗値Rrefは、コントローラ102の保持部103の電気接点(111、112)とヒータ127の電気接点(123、124)との接触抵抗やヒータ127の酸化などに起因して、例えばユーザの吸引動作(パフ動作)ごとに変動しうる。そのため、ステップS614において、加熱処理の終了後で且つ次の霧化要求の受信前にヒータ127の抵抗値RHTRを検出し、該抵抗値RHTRにより基準抵抗値Rrefを更新することで、加熱処理中におけるヒータ127の温度を精度よく取得することができる。また、ステップS613は、ステップS612においてヒータ127の自然冷却が完了したと判断された後で、即ち、ヒータ127を十分に自然冷却してヒータ127の温度が安定した状態で行われる。つまり、ヒータ127の抵抗値RHTRの時間変動が小さく安定した状態で該抵抗値RHTRが検出されるため、信頼性の高い基準抵抗値Rrefを取得することができる。
【0059】
ここで、基準抵抗値Rrefと対応付けてメモリに格納される基準温度Trefとしては、例えば、メモリに基準温度Trefとして既に記憶されている定数(温度)が用いられてもよい。この場合、当該定数は、事前の検証などにより任意に設定されうるが、一般に室温(R.T.)と言われる27℃より高い温度に設定されるとよい。これは、自然冷却では、ヒータ127の温度THTRを室温(27℃)にするのに相当の時間を要するからである。例えば、当該定数は、30〜50℃の範囲内における任意の温度、好ましくは35〜45℃の範囲内における任意の温度に設定され、一例として40℃である。
【0060】
また、基準抵抗値Rrefと対応付けてメモリに格納される基準温度Trefとして、例えば、温度センサ282の出力値に基づいて算出された温度が用いられてもよい。この場合、温度センサ282は、ヒータ127とは異なる部品の温度を検出しているため、温度センサ282の出力値(当該部品の温度)から冷却後のヒータ127の温度を算出(換算)するための補正値を事前の検証で求めておくとよい。補正値は、温度センサ282の出力値に乗算される係数の形態であってもよいし、当該出力値に加算される定数の形態であってもよい。なお、温度センサ282は、上述したように、電源(バッテリ)250の温度を検出するための温度センサであってもよいし、温度補償された圧力値を出力するためにパフセンサ281に設けられた温度センサであってもよい。パフセンサ281の温度センサは外気温を検出しうる。
【0061】
ステップS609においてヒータ127の温度THTRが300℃を超えたとプロセッサ240が判断した場合、ステップS616において、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の表示部DISPを使って、異常の発生(エアロゾル源の枯渇)を示す報知を行う。この報知は、表示部DISPがLEDを含む場合において、該LEDを赤色で点滅(点灯、消灯の繰り返し)させることでありうる。
【0062】
次いで、ステップS617では、霧化要求をマスク(無効化)する。霧化要求がマスクされた状態では、霧化要求が発生しても、それが無視される。つまり、霧化要求がマスクされた状態では、霧化要求が仮に発生しても、ステップS601(図5のステップS501も同様)において、その霧化要求はないものとして判断される。次いで、ステップS618では、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の操作部OPに対するユーザによる操作がなされない時間(無操作時間)が所定時間(例えば、6分)に達したかどうかを判断する。そして、プロセッサ240は、無操作時間が所定時間に達した場合は、スリープ状態(スリープモード)に移行する。スリープ状態からの復帰は、例えば、ユーザインターフェース116の操作部OPに対するユーザの操作に応答してなされうる。
【0063】
無操作時間が所定時間に達するまでは、ステップS619が実行される。ステップS619では、プロセッサ240は、霧化器104の交換作業の完了を待つ。より具体的には、ステップS619では、プロセッサ240は、霧化器104がコントローラ102(の保持部103)から取り外され、新たな霧化器104がコントローラ102(の保持部103)に取り付けられる操作の完了を待つ。プロセッサ240は、検出回路220の増幅器AMPの出力電圧VAMPの変化に基づいて霧化器104の交換作業の完了を判断することができる。
【0064】
ここで、保持部103から霧化器104が取り外されると、第1電気接点111と第2電気接点112との間に接続されていたヒータ127が失われるので、増幅器AMPの出力電圧VAMPが変化する。これに基づいて、プロセッサ240は、保持部103からの霧化器104の取り外しを検出することができる。また、保持部103に霧化器104が取り付けられると、第1電気接点111と第2電気接点112との間にヒータ127が接続されるので、増幅器AMPの出力電圧VAMPが変化する。これに基づいて、プロセッサ240は、保持部103に霧化器104が取り付けられたことを検出することができる。
【0065】
霧化器104の交換が検出されたら、ステップS620において、プロセッサ240は、Countを0にリセットするとともに、Flagをクリアする。次いで、ステップS621において、プロセッサ240は、増幅器AMPの出力電圧VAMPを検出し、その出力電圧VAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従ってヒータ127の抵抗値RHTRを計算し、その抵抗値RHTRを基準抵抗値Rrefとしてメモリに格納する。ステップS621は、コントローラ102(の保持部)103に新たに取り付けられた霧化器104のヒータ127の基準抵抗値Rrefを取得する処理である。新たな霧化器104は、製造誤差や個体差などにより、これまで使用されていた霧化器104に対してヒータ127の特性(例えば、基準温度と基準抵抗値との相関関係)が異なりうる。したがって、このステップS621を行うことで、コントローラ102に新たに取り付けられた霧化器104のヒータ127の抵抗値RHTRを、未だ給電されていない(加熱されていない)状態で、基準抵抗値Rrefとして検出することができる。
【0066】
ステップS622では、プロセッサ240は、吸引器100の所定箇所の温度を温度センサ282から取得し、該温度を基準温度Trefとしてメモリに格納する。ここで、吸引器100の所定箇所とヒータ127との間には温度差が存在しうるが、そのような温度差は無視してもよいし、上述した補正値によってこの温度差を解消してもよい。次いで、ステップS623では、霧化要求のマスクを解除する。
【0067】
ステップS624では、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の操作部OPに対するユーザによる操作がなされない無操作時間が所定時間(例えば、6分)に達したかどうかを判断する。そして、無操作時間が所定時間に達した場合、プロセッサ240はスリープ状態(スリープモード)に移行する。一方、無操作時間が所定時間に達していない場合はステップS601に進む。
【0068】
上述したステップS612においてフラグFlagがセットされている場合には、ステップS626に進む。ステップS626では、プロセッサ240は、ユーザインターフェース116の表示部DISPを使って、異常の発生(輸送部(ウイック)127におけるエアロゾル源の一時的な不足)を示す報知を行う。この報知は、表示部DISPがLEDを含む場合において、該LEDを赤色で点滅(点灯、消灯の繰り返し)させることでありうる。次いで、ステップS627では、プロセッサ240は、霧化要求をマスク(無効化)し、ステップS628では、プロセッサ240は、所定期間(例えば、11秒間)にわたりヒータ127の加熱(ヒータ127に対する給電)を禁止する。次いで、プロセッサ240は、ステップS629において霧化要求のマスクを解除し、ステップS630においてCountをカウントアップして、ステップS618に進む。
【0069】
図7図12を用いて、図6のステップS613における冷却判断処理の詳細を説明する。図7図8は、ヒータ127の加熱処理(ヒータ127に対する給電)の実行中および終了後におけるヒータ127の温度および抵抗値の経時変化の検証例を示している。図7図8では、0〜3秒は、ヒータ127の加熱処理を行っている期間であり、3秒より後は、ヒータ127の加熱処理を終了して自然冷却している期間である。図7図8において、ヒータ127の抵抗値(右側の縦軸)は、増幅器AMPの出力電圧VAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従って計算した値であり、ヒータ127の温度(左側の縦軸)は、計算した抵抗値に基づいて、式(5)に従って計算した値である。
【0070】
図7は、霧化器104の容器125内にエアロゾル源が十分にあり、輸送部(ウイック)126にエアロゾル源が十分に供給される状態で、ヒータ127の温度および抵抗値の経時変化の検証を複数回(4回)行った例を示している。図7に示す例では、4回の検証において同様であり、加熱処理の実行中(0〜3秒の期間)におけるヒータ127の温度が200℃程度であることが分かる。また、図9は、加熱処理の終了後(3秒より後の期間)において自然冷却しているヒータ127の温度および抵抗値の経時変化を示す拡大図である。ヒータ127の温度および抵抗値の経時変化は、加熱処理を終了してから約10秒後(即ち、加熱処理を開始してから約13秒後)に安定することが分かる。ここで、ヒータ127の抵抗値の経時変化の安定は、任意に定義することができるが、例えば、ヒータ127の抵抗値の経時変化率(傾き)が許容範囲(例えば、10mΩ/秒以下)に収まる状態として定義されてもよい。その一例として、所定時間(例えば、3秒間)におけるヒータ127の最大抵抗値と最小抵抗値との差が許容範囲(例えば、10mΩ以下)となる状態として定義されてもよい。
【0071】
図8は、霧化器104の容器125内のエアロゾル源が枯渇しかけて、輸送部(ウイック)126が乾燥し始めている状態で、ヒータ127の温度および抵抗値の経時変化の検証を複数回行った例を示している。図8に示す例では、検証の回数が増えるにつれて、輸送部126が乾燥していくため、加熱処理の実行中(0〜3秒の期間)におけるヒータ127の温度が増加していることが分かる。また、図10は、加熱処理の終了後(3秒より後の期間)において自然冷却しているヒータ127の温度および抵抗値の経時変化を示す拡大図である。ヒータ127の温度および抵抗値の経時変化は、加熱処理を終了してから約10秒後(即ち、加熱処理を開始してから約13秒後)に安定することが分かる。そして、検証の回数に関わらず、ほぼ同じ抵抗値に収束することが分かる。
【0072】
上記の検証によると、加熱処理を終了してから所定時間(例えば、10秒間)が経過すれば、容器125内のエアロゾル源の量に関わらず、ほぼ同じ抵抗値に収束し、且つヒータ127の抵抗値の経時変化も安定することが分かる。つまり、基準抵抗値Rrefとしてのヒータ127の抵抗値RHTRの検出(ステップS614)が、加熱処理を終了してから所定時間の経過後に実行されるように、冷却判断処理(ステップS613)が行われるとよい。
【0073】
図11には、図6におけるステップS613の冷却判断処理の詳細を提供する第1例が示されている。ステップS701では、プロセッサ240は、タイマーを起動させる。例えば、プロセッサ240は、ステップS611において霧化要求が終了したと判断した場合(即ち、加熱処理の終了時)にタイマーを起動させるとよい。ステップS702では、プロセッサ240は、予め設定された所定時間が経過したかどうかを判断し、所定時間が経過した場合に図6のS614に進む。所定時間は、上述したように、加熱処理の終了後の自然冷却においてヒータ127の抵抗値の経時変化が安定する時間(例えば、10秒間)に設定されうる。
【0074】
図12には、図6におけるステップS613の冷却判断処理の詳細を提供する第2例が示されている。ステップS801では、プロセッサ240は、タイマーを起動させる。例えば、プロセッサ240は、ステップS611において霧化要求が終了していると判断した場合(即ち、加熱処理の終了時)にタイマーを起動させるとよい。次いで、プロセッサ240は、ステップS802においてヒータ127の抵抗値RHTRの検出を開始し、ステップS803においてヒータ127の抵抗値RHTRの経時変化率の監視を開始する。例えば、プロセッサ240は、スイッチSW2をオンさせて、増幅器AMPの出力電圧VAMPを検出し、その出力電圧VAMPに基づいて、式(2)および式(4)に従ってヒータ127の抵抗値RHTRを計算する。プロセッサ240は、このようなヒータ127の抵抗値RHTRの検出(計算)を周期的(例えば、10m秒周期)に行い、検出されたヒータ127の抵抗値RHTRを、加熱処理の終了時からの経過時間に紐付けてメモリに格納する。
【0075】
次いで、ステップS804では、プロセッサ240は、ヒータ127の抵抗値RHTRの経時変化率が許容範囲に収まったかどうかを判断する。一例として、プロセッサ240は、現在時刻と該現在時刻から所定時間(例えば、3秒間)だけ遡った時刻との間の時間内におけるヒータ127の最大抵抗値MAX(RHTR)と最大抵抗値MIN(RHTR)との差が許容範囲(例えば、10mΩ以下)に収まったかどうかを判断する。当該差が許容範囲に収まるまでは、ステップS803が実行される。一方、当該差が許容範囲に収まった場合、プロセッサ240は、ステップS805においてヒータ127の抵抗値RHTRの経時変化率の監視を終了し、その後、図6のS614に進む。
【0076】
ここで、図12に示される第2例では、図11に示される上記の第1例が適用されてもよい。具体的には、図12に示される第2例のステップS801とステップS802との間に、図11に示される第1例のステップS702が適用されてもよい。この場合、加熱処理が終了してから所定時間(例えば、10秒間)が経過した後にステップS802が行われる。このようにすれば、ヒータ127の抵抗値RHTRを取得するためにヒータ127へ通電する回数が減るため、ステップS804で肯定的な判断がされるまでの時間を短くすることができる。
【0077】
<検出関連処理の他の例>
次に、ヒータ127の抵抗値RHTRの検出およびそれに基づくヒータ127の温度の検出に関する検出関連処理の他の例について説明する。図13には、検出関連処理の他の例が示されている。図13のフローチャートは、図6のフローチャートと基本的に同様であるが、ステップS631およびS632が更に付加されている点で異なる。なお、図13に示す例では、ステップS631およびS632の両方が実行されるように構成されているが、それに限られず、ステップS631およびS632のいずれかが実行されるように構成されてもよい。
【0078】
ステップS631は、ステップS630とステップS618との間に配置されている。ステップS631では、プロセッサ240は、ステップS614と同様に、検出回路220を用いてヒータ127の抵抗値RHTRを検出し、その抵抗値RHTRにより基準抵抗値Rrefを更新する。このステップS631は、所定時間(例えば、11秒間)にわたりヒータ127の加熱を禁止するステップS628の後に行われるため、ヒータ127が十分に冷却されてヒータ127の温度が安定した状態である。したがって、この状態で検出されたヒータ127の抵抗値RHTRにより基準抵抗値Rrefを更新することで、信頼性の高い基準抵抗値Rrefを取得することができる。なお、ステップS631は、ステップS630とステップS618の間に限られず、ステップS628の後かつ次の霧化要求の前であれば任意のタイミングで実行することができる。または、ステップS631は、ステップS628の間(即ち、ヒータ127の加熱を禁止する所定時間の間)に実行されてもよい。この場合、ステップS631は、ヒータ127の温度の安定後(例えば、ヒータ127の温度を安定させるために事前に設定された時間(約10秒)を待った後)に実行されるとよく、特にステップS628における所定時間が経過する直前に実行されるとよい。前述した通り加熱処理を終了してから約10秒後以降であればヒータ127の温度および抵抗値の経時変化は安定しているため、ステップS628における所定時間が経過する前であっても、信頼性の高い基準抵抗値Rrefを取得することができる。
【0079】
ステップS632は、ステップS618またはステップS624において無操作時間が所定時間(例えば、6分)に達したと判断された場合に、スリープ状態(スリープモード)に移行する前に実行される。ステップS632においても、ステップS614やS631と同様に、プロセッサ240は、検出回路220を用いてヒータ127の抵抗値RHTRを検出し、その抵抗値RHTRにより基準抵抗値Rrefを更新する。このようにスリープ状態に移行する際のタイミングにおいても、ヒータ127が十分に冷却されてヒータ127の温度が安定した状態であるため、信頼性の高い基準抵抗値Rrefを取得することができる。
【0080】
ここで、プロセッサ240の動作モードについて説明する。図14には、プロセッサ240の動作モードの例が示されている。プロセッサ240は、動作モードとして、例えば、パワーモード901、スリープモード902、吸引モード903および充電モード904を含みうる。上述した図5図6および図13の処理は、パワーモード901と吸引モード903の状態で実行されうる。パワーモード901は、パフセンサ281に給電している状態であり、霧化要求の受信に応じて加熱処理を実行可能なモード(第1モード)である。パワーモード901の状態において、ユーザが吸口部130を通して吸引動作を行ったことをパフセンサ281が検出し、パフセンサ281から霧化要求を受信すると、プロセッサ240は、パワーモード901から吸引モード903に移行する。吸引モード903は、ヒータ127に電力を供給して加熱処理を行うモードであり、霧化要求が終了すると、プロセッサ240は、吸引モード903からパワーモード901に移行する。
【0081】
また、無操作期間が所定時間(例えば、6分)に達した場合、プロセッサ240は、パワーモード901からスリープモード902に移行する。スリープモード902は、パフセンサ281への給電を中止することでパワーモード901より消費電力を小さくしたモード(第2モード)である。操作部OPに対するユーザの操作(例えば、ユーザによる操作部OP(スイッチ)の長押し)が検出された場合に、プロセッサ240は、スリープモード902からパワーモード901に移行する。
【0082】
充電モード904は、電源(バッテリ)250の充電を行うモードである。コントローラ102に設けられた充電ポート(例えば、USBポート)に充電器が接続された場合に、プロセッサ240は、スリープモード902から充電モード904に移行する。一方、コントローラ102の充電ポートから充電器が取り外された場合、プロセッサ240は、充電モード904からスリープモード902に移行する。また、コントローラ102の充電ポートに充電器が接続されている状態(充電モード904の状態)においてユーザの操作(例えば、ユーザによる操作部OPの長押し)が検出された場合、プロセッサ240は、電源250の充電を中断して、充電モード904からパワーモード901に移行する。この場合において霧化要求が終了したら、プロセッサ240は、パワーモード901から充電モード904に移行し、電源250の充電を再開する。
【0083】
<他の実施形態>
式(2)および式(4)として例示されるような計算は、アナログ回路によって実現されてもよい。図15には、式(2)および式(4)に従ってヒータ127の抵抗値RHTRを計算するアナログ回路が例示されている。このようなアナログ回路は、プロセッサ240を構成するMCUに組み込まれてもよいし、MCUとは別に設けられてもよい。また、図6および図13における検出関連処理では、ステップS606で計算したヒータ127の抵抗値RHTRに基づき、ステップS607でヒータ127の温度THTRを計算しているが、ステップS607を省略してもよい。この場合、ステップS609における第2温度とステップS610における第1温度とを、式(5)を用いてそれぞれ抵抗値に換算する必要がある点に留意されたい。つまり、ステップS609において、プロセッサ240は、ステップS606で計算したヒータ127の抵抗値RHTRが、第2温度(300℃)から換算される抵抗値を超えているかどうかを判断する。また、ステップ610において、プロセッサ240は、ステップS606で計算したヒータの抵抗値RHTRが、第1温度(250℃)から換算される抵抗値を超えているかどうかを判断する。
【0084】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【要約】
【課題】エアロゾル源を加熱するヒータの温度を精度よく検出するために有利な技術を提供する。
【解決手段】吸引用コントローラは、エアロゾル源を加熱して霧化するためのヒータに電力を供給する電力供給部と、前記ヒータの抵抗値を検出するための検出回路と、前記エアロゾル源の霧化要求の受信に応じて、前記ヒータに電力を供給するように前記電力供給部を制御することで前記エアロゾル源を加熱する加熱処理を実行するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記加熱処理中に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値と、前記ヒータの基準温度と、当該基準温度における前記ヒータの基準抵抗値とに基づいて前記加熱処理を制御し、前記加熱処理の終了後かつ次の前記霧化要求の受信前に前記検出回路を用いて検出された前記ヒータの抵抗値により前記基準抵抗値を更新する。
【選択図】図2
図1
図2
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図14
図15