(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855712
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法
(51)【国際特許分類】
B61L 23/14 20060101AFI20210329BHJP
B61L 3/12 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
B61L23/14 Z
B61L3/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-172824(P2016-172824)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-39288(P2018-39288A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 大樹
(72)【発明者】
【氏名】深井 寛修
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−030055(JP,A)
【文献】
特開2016−091506(JP,A)
【文献】
特開2002−008019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/14
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根上に設置され車両前方の線路を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影した画像に基づいて分岐器への進入の可否を判定する画像処理手段とを備える分岐器進入可否判定装置であって、
前記画像処理手段が、
前記撮影手段によって撮影された画像を入力する画像入力部と、
前記画像入力部によって入力した画像から前記線路を検出する線路検出部と、
前記線路検出部により検出した前記線路の画像上の位置を利用して当該画像から前記分岐器を検出する分岐器検出部と、
前記線路検出部により検出した前記線路の画像上の位置及び前記分岐器検出部により検出した前記分岐器の画像上の位置から前記分岐器の開通状態を認識し、前記分岐器への進入の可否を判定する分岐器開閉認識部と
を備え、
前記線路検出部が、前記車両から一定距離離れた位置に対応する画像上の領域について、線路と軌間内との輝度差を特徴量として線路候補点を検出し、当該線路候補点間の中心座標を求め、設備データ部に予め入力され前記中心座標と前記線路の位置との関係を予め統計的に関連付けた線路モデルを当該中心座標の横軸方向の位置に応じて決定し、当該線路モデルごとに設定された特徴量評価点を基準として前記特徴量の尤度を算出し、当該尤度が最も高い位置を線路検出点として検出することを特徴とする分岐器進入可否判定装置。
【請求項2】
前記画像入力部によって入力した画像及び前記分岐器開閉認識部による判定結果を表示する表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の分岐器進入可否判定装置。
【請求項3】
前記分岐器開閉認識部において前記分岐器への進入が不可であると判定された場合に警報を出力する警報手段を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の分岐器進入可否判定装置。
【請求項4】
前記分岐器検出部が、画像上の軌間内に存在し前記線路検出部で検出した線路の輝度に対し所定範囲内の輝度を有する線状の部分を分岐器の一部として検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分岐器進入可否判定装置。
【請求項5】
前記分岐器開閉認識部が、前記線路検出部により検出された画像上の線路と、前記分岐器検出部により検出された前記線状の部分との輝度値の連続性の有無により前記分岐器の開通状態を認識する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の分岐器進入可否判定装置。
【請求項6】
車両の屋根上に設置され車両前方の線路を撮影する撮影手段によって撮影した画像に基づいて分岐器への進入の可否を判定する分岐器進入可否判定方法であって、
前記撮影手段によって撮影された画像を入力する画像入力工程と、
前記画像入力工程で入力した画像から前記線路を検出する線路検出工程と、
前記線路検出工程で検出した前記線路の画像上の位置を利用して当該画像から前記分岐器を検出する分岐器検出工程と、
前記線路検出工程で検出した前記線路の画像上の位置及び前記分岐器検出工程で検出した前記分岐器の画像上の位置から前記分岐器の開通状態を認識し、前記分岐器への進入の可否を判定する分岐器開閉認識工程と
を有し、
前記線路検出工程が、前記車両から一定距離離れた位置に対応する画像上の領域について、線路と軌間内との輝度差を特徴量として線路候補点を検出し、当該線路候補点間の中心座標を求め、設備データ部に予め入力され前記中心座標と前記線路の位置との関係を予め統計的に関連付けた線路モデルを当該中心座標の横軸方向の位置に応じて決定し、当該線路モデルごとに設定された特徴量評価点を基準として前記特徴量の尤度を算出し、当該尤度が最も高い位置を線路検出点として検出することを特徴とする分岐器進入可否判定方法。
【請求項7】
前記撮影手段によって撮影された画像及び前記分岐器開閉認識工程において判定した結果を表示手段に表示する
ことを特徴とする請求項6記載の分岐器進入可否判定方法。
【請求項8】
前記分岐器開閉認識工程において前記分岐器への進入が不可であると判定された場合に警報を出力する
ことを特徴とする請求項6または請求項7記載の分岐器進入可否判定方法。
【請求項9】
前記分岐器検出工程が、画像上の軌間内に存在し前記線路検出部で検出した線路の輝度に対し所定範囲内の輝度を有する線状の部分を分岐器の一部として検出する
ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の分岐器進入可否判定方法。
【請求項10】
前記分岐器開閉認識工程が、前記線路検出部により検出された画像上の線路と、前記分岐器検出部により検出された前記線状の部分との輝度値の連続性の有無により前記分岐器の開通状態を認識する
ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の分岐器進入可否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理により電気鉄道の設備である分岐器への進入の可否を判定する分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道は長大で膨大な設備を有する大規模輸送システムである。鉄道設備は複数の線路を有しており、複数の線路間を通行するために分岐器が設置されている。分岐器は一つの軌道を複数に分ける軌道構造の装置である。鉄道車両を他の線路に移動させる際には、分岐器のポイント部分の開閉を切り替える必要がある。分岐器の開閉方向が鉄道車両の進行方向と異なると重大事故に繋がる危険性があり、分岐器の開閉方向の自動認識が望まれている。
【0003】
下記特許文献1には、台車に走行距離センサを設け、走行距離センサから発生するパルスにより走行距離をカウントし、走行距離が分岐器の測定位置情報と一致した時点で台車の走行を停止し、レーザ式変位センサを用いて分岐器の測定を行う分岐器検査装置が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2及び下記特許文献3には、保守用車両に搭載したアンテナからマイクロ波を送信し、このアンテナが地上子の直上を通過すると、マイクロ波を受信した地上子が内蔵のRF−IDタグに書き込まれている分岐器の情報及び通過位置情報をアンテナに向けて送信する一方、検知部により検出した分岐器の作動モーターの動作杆の動きに基づいて保守用車両に搭載された車内制御ボックスにより分岐器の開通方向情報を判断し、通過位置情報と開通方向情報が一致する場合に開通ボタンを点灯させ、通過位置情報と開通方向情報が不一致である場合に非開通ボタンを点灯させ且つ保守用車両に自動制動をかけるようにした保守用車自動停止装置が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献4及び下記特許文献5には、GPS衛星からのGPS信号を受信して取得した自己の座標情報により、分岐器内等の速度制限箇所に入るまたは出ることを判断することができるようにした軌道上移動体制御装置が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献6には、分岐器から離間した位置に二つの地上センサを配置するとともに、保守用車に地上センサと交信を行うアンテナを配置して、保守用車が分岐器に接近して地上センサとの交信範囲に入り、地上センサからデータを取得すると、カメラにより分岐器のズームアップ映像を捕えると同時に分岐器に接近したことを音声により通知し、さらに画像処理によりカメラが撮影した画像から分岐器の開通状態を検出して非開通状態であると判定された場合はモニターに表示し非常ブレーキ信号を出力するようにした分岐器誤進入防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4857369号公報
【特許文献2】特許第4750069号公報
【特許文献3】特許第4199226号公報
【特許文献4】特許第4573864号公報
【特許文献5】特許第4121897号公報
【特許文献6】特許第3583084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の分岐器検査装置は、予め分岐器の位置をデータ部に入力するフェイズが必要であることに加え、分岐器の自動検出を行うものでもなかった。
【0009】
また、特許文献2及び特許文献3の保守用車自動停止装置は、RF−IDの通過位置情報から進入可否を判定するため、画像による進入可否の確認ができないという問題や、分岐器の後端位置に地上制御ボックスを取り付ける必要があるため、設置作業が煩雑になるうえにコストが掛かるという問題があった。
【0010】
また、特許文献4及び特許文献5の軌道上移動体制御装置は、速度制限箇所内において移動体が制限速度を無視して走行しようとするとき移動体を停止させ、運転手に警報を発したり移動体を停止させたりするものであり、分岐器への進入可否を判定するものではなかった。そして、カメラを備えないため、画像による進入可否の確認を行うことができないという問題があった。
【0011】
また、特許文献6の分岐器誤進入防止装置は、分岐器の有無を地上センサとの交信により判断しており、分岐器の数に対応した数の地上センサが必要になることから、設置作業が煩雑になるうえにコストが掛かるという問題があった。
【0012】
このようなことから本発明は、簡素な構成で分岐器の位置を特定するとともに、分岐器への進入の可否を判定することを可能とした分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
車両の屋根上に設置され車両前方の線路を撮影する撮影手段と、前記撮影手段によって撮影した画像に基づいて分岐器への進入の可否を判定する画像処理手段とを備える分岐器進入可否判定装置であって、
前記画像処理手段が、
前記撮影手段によって撮影された画像を入力する画像入力部と、
前記画像入力部によって入力した画像から前記線路を検出する線路検出部と、
前記線路検出部により検出した前記線路の画像上の位置を利用して当該画像から前記分岐器を検出する分岐器検出部と、
前記線路検出部により検出した前記線路の画像上の位置及び前記分岐器検出部により検出した前記分岐器の画像上の位置から前記分岐器の開通状態を認識し、前記分岐器への進入の可否を判定する分岐器開閉認識部と
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記の課題を解決するための第2の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
前記画像入力部によって入力した画像及び前記分岐器開閉認識部による判定結果を表示する表示手段を備える
ことを特徴とする。
【0015】
また、上記の課題を解決するための第3の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
前記分岐器開閉認識部において前記分岐器への進入が不可であると判定された場合に警報を出力する警報手段を備える
ことを特徴とする。
【0016】
また、上記の課題を解決するための第4の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
前記線路検出部が、前記車両から一定距離離れた位置に対応する画像上の領域について、線路と軌間内との輝度差を特徴量として線路候補点を検出し、当該線路候補点間の中心座標を求め、当該中心座標の横軸方向の位置に応じて前記中心座標と前記線路の位置とを予め関連付けた線路モデルを決定し、当該線路モデルごとに設定された特徴量評価点を基準として前記特徴量の尤度を算出し、当該尤度が最も高い位置を線路検出点として検出する
ことを特徴とする。
【0017】
また、上記の課題を解決するための第5の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
前記分岐器検出部が、画像上の軌間内に存在し前記線路検出部で検出した線路の輝度に対し所定範囲内の輝度を有する線状の部分を分岐器の一部として検出する
ことを特徴とする。
【0018】
また、上記の課題を解決するための第6の発明に係る分岐器進入可否判定装置は、
前記分岐器開閉認識部が、前記線路検出部により検出された画像上の線路と、前記分岐器検出部により検出された前記線状の部分との輝度値の連続性の有無により前記分岐器の開通状態を認識する
ことを特徴とする。
【0019】
また、上記の課題を解決するための第7の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
車両の屋根上に設置され車両前方の線路を撮影する撮影手段によって撮影した画像に基づいて分岐器への進入の可否を判定する分岐器進入可否判定方法であって、
前記撮影手段によって撮影された画像を入力する画像入力工程と、
前記画像入力工程で入力した画像から前記線路を検出する線路検出工程と、
前記線路検出工程で検出した前記線路の画像上の位置を利用して当該画像から前記分岐器を検出する分岐器検出工程と、
前記線路検出工程で検出した前記線路の画像上の位置及び前記分岐器検出工程で検出した前記分岐器の画像上の位置から前記分岐器の開通状態を認識し、前記分岐器への進入の可否を判定する分岐器開閉認識工程と
を有することを特徴とする。
【0020】
また、上記の課題を解決するための第8の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
前記撮影手段によって撮影された画像及び前記分岐器開閉認識工程において判定した結果を表示手段に表示する
ことを特徴とする。
【0021】
また、上記の課題を解決するための第9の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
前記分岐器開閉認識工程において前記分岐器への進入が不可であると判定された場合に警報を出力する
ことを特徴とする。
【0022】
また、上記の課題を解決するための第10の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
前記線路検出工程が、前記車両から一定距離離れた位置に対応する画像上の領域について、線路と軌間内との輝度差を特徴量として線路候補点を検出し、当該線路候補点間の中心座標を求め、当該中心座標の横軸方向の位置に応じて前記中心座標と前記線路の位置とを予め関連付けた線路モデルを決定し、当該線路モデルごとに設定された特徴量評価点を基準として前記特徴量の尤度を算出し、当該尤度が最も高い位置を線路検出点として検出する
ことを特徴とする。
【0023】
また、上記の課題を解決するための第11の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
前記分岐器開閉認識工程が、前記線路検出部により検出された画像上の線路と、前記分岐器検出部により検出された前記線状の部分との輝度値の連続性の有無により前記分岐器の開通状態を認識する
ことを特徴とする。
【0024】
また、上記の課題を解決するための第12の発明に係る分岐器進入可否判定方法は、
前記分岐器開閉認識工程が、前記線路検出部により検出された画像上の線路と、前記分岐器検出部により検出された前記線状の部分との輝度値の連続性の有無により前記分岐器の開通状態を認識する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法によれば、簡素な構成で分岐器の位置を特定するとともに、分岐器への進入の可否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分岐器進入可否判定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す分岐器進入可否判定装置のエリアカメラによって撮影した画像の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る分岐器進入可否判定装置の装置構成を示すブロック図である。
【
図5】
図2に示す画像から線路を検出した結果を示す模式図である。
【
図6】線路の判別に用いる基準の輝度分布の一例を示す説明図である。
【
図7】
図2に示す画像から得られる線路の存在確率を示す説明図である。
【
図8】線路中心座標と線路モデルとの関係を示す説明図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る分岐器進入可否判定装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、
図1から
図10を用いて本発明に係る分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法の一実施形態について説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る分岐器進入可否判定装置は、電気鉄道車両(以下、単に「車両」と称する)1の屋根上に設置された撮影手段としてのエリアカメラ2及び照明装置3と、車両1の内部に設置されたパーソナルコンピュータ4とを備えて構成されている。
【0029】
エリアカメラ2は車両1の屋根上前方に設置され、車両1の走行中に走行進路側(車両1の前方)の線路5を撮影する。また、このエリアカメラ2は、車両1の走行速度等の条件に応じてレンズを選択される。エリアカメラ2によって撮影された画像は、例えば
図2に示すような画像になる。
照明装置3は、エリアカメラ2によって撮影される範囲にある線路5に対し照明を行う。
【0030】
パーソナルコンピュータ4は、
図3に示すように、画像処理手段としての画像処理部41と、表示手段としてのモニター42と、警報手段としてのスピーカー43とを備えている。
【0031】
画像処理部41は、エリアカメラ2によって撮影した画像を解析して
図4に示すような分岐器50の開通状態を認識し、車両1の分岐器50への進入の可否を判定する部分であり、設備データ部41aと、画像入力部41bと、線路検出部41cと、分岐器検出部41dと、分岐器開閉認識部41eと、記憶部41fとを備えている。
【0032】
ここで、分岐器50は
図4に示すように線路5を複数に分岐させるための機構であり、ポイント部分51と、リード部分52と、クロッシング部分53とを有している。ポイント部分51は車両1を走行進路側へ誘導するためのトングレール50aが設置されている部分である。リード部分52はトングレール50aとクロッシング部分53とを結ぶリードレール50bが設置された部分である。クロッシング部分53は線路5が交差している部分である。
【0033】
設備データ部41aは、少なくともエリアカメラ2の設置高さ[mm](以下、カメラ高さ)及びエリアカメラ2の設置角度[deg](以下、カメラ設置角度)のデータと、後述する基準の輝度分布と、線路モデルとを予め入力しておく部分である。
画像入力部41bは、エリアカメラ2によって撮影した画像データを入力する部分である。この画像データは線路検出部41cへ送られるとともに記憶部41fに保管される。
【0034】
線路検出部41cは、設備データ部41aから取得したカメラ高さ[mm]、カメラ設置角度[deg]、基準の輝度分布及び線路モデルと、画像入力部41bから入力された画像データとに基づいて、
図5に示すような線路検出点P
L(x
L[pix],y
L[pix]),P
R(x
R[pix],y
R[pix])を検出する。
【0035】
具体的に説明すると、画像上において線路5と軌間内とでは輝度値が異なる(
図6参照)。そのため、まず、線路5と軌間内との輝度差を特徴量として、車両1から一定距離離れた局所的な領域に対応する画像上の領域Aから、
図6に示すような輝度分布を基準として線路5の候補(以下、線路候補点という)を検出し、左右の線路候補点間の中心座標C(x
C[pix],y
C[pix])を求める(
図8参照)。なお、
図7は
図2に示す画像の領域Aにおける線路5の存在確率である。
【0036】
ここで、領域Aにおける線路中心座標Cと線路5の形状との間には強い相関がある。
例えば、
図8(a)に示すように、線路5の形状が進行方向に対して右へカーブした形状である場合、上記領域Aにおいて、線路中心座標Cは通常、画像の左右方向(進行方向に対して左右の方向。以下、横軸方向と称する)右側に位置する。
また、
図8(c)に示すように、線路5の形状が車両進行方向前方へ向かって直線状に延びた形状である場合、上記領域Aにおいて、線路中心座標Cは通常、横軸方向中心に位置する。
また、
図8(e)に示すように、線路5の形状が進行方向に対して左側へカーブした形状である場合、上記領域Aにおいて、線路中心座標Cは通常、横軸方向左側に位置する。
【0037】
そこで、領域A及び当該領域Aの進路方向前後に相互に所定距離離間した複数の領域(以下、総称して線路検出領域という)における線路5の横軸方向の位置と線路中心座標Cの位置との関係を予め統計的に求め、線路中心座標Cと線路5の形状(特徴量評価点F)とを関連付けたモデル式(線路モデル)を作成しておく。
【0038】
そして、線路候補点から線路中心座標Cの位置を求めたら、この線路中心座標Cの位置に対応する線路モデルを決定する。例えば
図8(a)に示す線路中心座標Cに対しては
図8(b)に示す線路モデル、
図8(c)に示す線路中心座標Cに対しては
図8(d)に示す線路モデル、
図8(e)に示す線路中心座標Cに対しては
図8(f)に示す線路モデルが決定される。
【0039】
線路モデルを決定したら、この線路モデルごとに設定された
図8(b),(d),(f)に示すような特徴量評価点Fを中心として、線路検出領域における特徴量(線路5と軌間内との輝度差)の尤度を算出する。そして、線路検出領域に対してそれぞれラスタスキャンを行い、上述した特徴量の尤度が最も高い位置を検出し、この位置を線路検出点P
L,P
Rとする。線路検出点P
L,P
Rは、線路位置データ[pix]として分岐器検出部41dへ送られる。
【0040】
分岐器検出部41dは、線路検出部41cから入力された線路位置データ及び画像データに基づいて分岐器50の位置(x[pix],y[pix])を検出する。
図9(a)〜(d)に示すように、分岐器50(トングレール50a及びリードレール50b)は線路検出部41cにより検出した線路5の軌間内に必ず存在する。そのため線路検出部41cにより検出した線路5の軌間内において、当該線路5と類似した輝度値を有する線状の部分を抽出しこれを分岐器50として検出する。
【0041】
例えば、
図9(a)〜(d)に示す例では、破線で囲んで示す検出範囲(軌間内であって、且つ領域Aを挟んで車両進行方向前後に所定距離の範囲に設定した領域)に対して線路検出部41cにおいて検出した線路5と類似する輝度値の線状の部分(
図9(a)〜(d)中、ハッチングで示す部分)が存在する箇所を分岐器50の位置として検出する。検出した分岐器50の位置は、分岐器位置データ[pix]として線路位置データとともに分岐器開閉認識部41eへ送られる。なお、線路5と類似する輝度値とは、線路5の輝度値に対し予め設定する所定範囲内にある輝度値とする。
【0042】
分岐器開閉認識部41eは、分岐器検出部41dから入力された分岐器位置データ、線路位置データ及び画像データに基づいて、トングレール50aと線路5との連続性を輝度値により求めて分岐器50の開通状態の認識を行い、分岐器50が開通状態であれば進入可能と判定して判定結果をモニター42に出力し、分岐器50が非開通状態であれば進入不可と判定して判定結果をモニター42及びスピーカー43に出力する。
例えば、
図9(a)〜(d)に示す例では、トングレール50aと線路5とが連続性を有さず、分岐器50が開通状態となっているため、進入可能と判定される。
【0043】
モニター42は、エリアカメラ2によって撮影した画像と、分岐器開閉認識部41eから入力された進入可否の判定結果を画面に表示する。
スピーカー43は、分岐器開閉認識部41eから入力された進入不可の判定結果に基づいて警報(警戒音)を出力する。
【0044】
以下、
図10を用いて本実施形態における分岐器進入可否判定処理の流れを簡単に説明する。
【0045】
図10に示すように、本実施形態においては設備データ部41aによりカメラ高さデータ及びカメラ設置角度と、基準の輝度分布と、線路モデルとを予め入力しておく(ステップS1)。
【0046】
続いて、画像入力部41bによりエリアカメラ2によって撮影した画像データを入力する(ステップS2)。そして、線路検出部41cにおいて、カメラ高さデータ及びカメラ設置角度、基準の輝度分布、線路モデル及び画像データに基づいて線路検出点P
L,P
Rの位置(x
L,y
L),(x
R,y
R)を求める(ステップS3)。
【0047】
その後、分岐器検出部41dにおいて、画像データ及び線路検出点P
L,P
Rの位置(x
L,y
L),(x
R,y
R)に基づいて、分岐器50を検出する(ステップS4)。ステップS4で分岐器50が検出されれば(YES)、後述するステップS5に移行する。ステップS4で分岐器50が検出されなければ(NO)、ステップS2に戻る。
【0048】
ステップS5では、分岐器開閉認識部41eにおいて、分岐器50の開通状態の認識を行い、分岐器50への進入の可否を判定する。ステップS5で分岐器50への進入が不可であれば(NO)、モニター42において分岐器50への進入不可を表示する(ステップS6)とともに、スピーカー43において警戒音を出力する(ステップS7)。ステップS5で分岐器50への進入が可であれば(YES)、前述したステップS6に移行する。
以上の処理をエリアカメラ2による撮影が終了するまで行う(ステップS8)。
【0049】
この本実施形態に係る分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法によれば、エリアカメラ2によって撮影した画像のみから、分岐器50の位置を特定し、分岐器50への進入の可否を判定することが可能となるため、センサや制御装置が不要となり、簡素かつ構成で低コストに分岐器50への進入の可否を判定することが可能になるという利点を有する。
【0050】
さらに、線路5及び分岐器50の画像を連続して撮影するため、分岐器50への進入不可の警戒音が出力された際には分岐器50の開通状態を画像で確認することができるという利点を有する。
【0051】
また、必要に応じてエリアカメラ2のレンズを換えることにより、車両1から遠方にある分岐器50を検出することも可能であるため、従来に比較して車両1の速度や停止距離の制限が少なくなるという利点も有する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、分岐器進入可否判定装置及び分岐器進入可否判定方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 エリアカメラ
3 照明装置
4 パーソナルコンピュータ
5 線路
41 画像処理部
41a 設備データ部
41b 画像入力部
41c 線路検出部
41d 分岐器検出部
41e 分岐器開閉認識部
41f 記憶部
42 モニター
43 スピーカー
50 分岐器
50a トングレール
50b リードレール
51 ポイント部分
52 リード部分
53 クロッシング部分
P
R,P
L 線路検出点
A 車両から一定距離離れた局所的な領域に対応する画像上の領域
C 線路中心座標
F 特徴量評価点