(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記力逃がし手段は、前記軸部が前記開口に当接していない状態で前記軸部から前記起歪体に対して鉛直方向にかかる力を、前記軸部が前記開口に当接した状態においても維持することを特徴とする請求項1または2に記載のトイレ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用者が着座した際に便座が受ける荷重は、便座の裏面よりも、ヒンジ部において小さくなりやすく、ヒンジ部にひずみゲージを設けて着座を検知しようとすると、同じひずみゲージおよび起歪体を用いると、便座の裏面にひずみゲージを設けた場合よりも、起歪体はたわみにくく、その起歪体に設けられたひずみゲージの出力は小さくなる。
【0006】
すなわち、ヒンジ部に設けられたひずみゲージの出力は小さいので、使用者の体重移動などに伴う便座の前後方向の移動による荷重が、鉛直方向の荷重検知に大きく影響してしまう。
【0007】
また、様々な人が様々な座り方をしても着座を検知したいということを考えると、例えば子供が便座の前方に座った場合でも着座を検知することができるように起歪体をたわみやすくし、ひずみゲージの出力を大きくしたいが、一方で、起歪体をたわみやすくすると、大人が便座の上で体重移動した際に想定よりも大きな荷重が起歪体に作用して起歪体が破損してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明のトイレ装置は、ケーシングと、前記ケーシングに対して回転自在に取り付けられた便座
と、使用者が前記便座に着座したことを検知する着座検知手段
と、力逃がし手段と、
を備え、前記ケーシングおよび前記便座の一方に開口が
設けられ、他方に前記開口に挿入される軸部が設けられ、前記便座の前後方向の移動により前記軸部が前記開口に当接可能であ
り、
前記着座検知手段は、前記ケーシングまたは前記便座に保持され、前記軸部を介して前記便座から荷重を受けてひずみが生じる起歪体と、前記起歪体に設けられ、前記起歪体のひずみ量を検出するひずみゲージと、を有
し、
前記力逃がし手段は、前記軸部が前記開口に当接した状態で前記軸部から前記開口に対して水平方向にかかる力を、鉛直方向下方に変換されないように逃がす
手段であり、且つ、前記開口の側面である、ことを特徴としている。
第1の発明によれば、使用者が便座に着座した際に起歪体に対して鉛直方向にかかる荷重は、使用者の前後方向の体重移動などによる荷重に影響されず、本来の鉛直荷重が確実に起歪体にかかるため、使用者が便座に着座したことを確実に検知することができる。また、水平荷重から鉛直荷重に変換されてないため、起歪体に過大な荷重がかからず、起歪体やひずみゲージの破損を防止することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記ケーシングに前記開口が設けられ、前記便座に前記軸部が設けられ、前記起歪体は、前記軸部の下方で前記ケーシングに対して保持されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、既存の構成を大幅に変えることなく、ヒンジ部に着座検知手段を設けることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記力逃がし手段は、前記軸部が前記開口に当接していない状態で前記軸部から前記起歪体に対して鉛直方向にかかる力を、前記軸部が前記開口に当接した状態においても維持することを特徴とする。
第3の発明によれば、起歪体に加わる鉛直荷重のノイズをほとんどなくすことができ、起歪体に加わる荷重とひずみゲージの出力との相関関係の設定が容易になる。
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、前記
開口の側面は、前記軸部が当接可能な鉛直面であることを特徴とする。
第4の発明によれば、軸部が側面(鉛直面)に当接しても、軸部は開口から水平方向の反作用の力を受けるだけで、鉛直方向の力を受けない。したがって、軸部が開口の側面に当接していない状態で軸部から起歪体に対して鉛直方向にかかる力は、軸部が開口の側面に当接した状態においても変化せず、維持される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒンジ部にひずみゲージを利用した着座検知手段を設けて品位向上を図りつつ、小さな荷重に対する着座検知性能の向上と、大きな荷重による起歪体やひずみゲージの破損防止を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0012】
図1(a)は、実施形態のトイレ装置10の上面図である。
【0013】
実施形態のトイレ装置10は、ケーシング11と便座15とを有する。便座15は、便座本体16と、便座本体16の後端部における幅方向の左右の両端付近に設けられた一対の軸部(回転軸部)17とを有する。
【0014】
便座15の軸部17はケーシング11に形成された後述する開口に挿入され、便座15は軸部17を支点に回転自在にケーシング11に対して取り付けられている。実施形態のトイレ装置10において、便座15の回転の支点となる部分をヒンジ部ともいう。
【0015】
図1(b)は、一対のヒンジ部における一方のヒンジ部が設けられた部分(
図1(a)のA部)の拡大図である。
図1(b)は、便座本体16を外した状態を表す。
【0016】
図1(b)に示す一方のヒンジ部には、後述するように、着座検知手段が設けられている。他方のヒンジ部には、着座検知手段は設けられていない。または、他方のヒンジ部に着座検知手段を設けてもよい。2つのヒンジ部の少なくともいずれか一方に着座検知手段が設けられればよい。
【0017】
図2は、
図1(b)に示す部分を右方から見た斜視図である。
図3は、
図1(b)におけるA−A断面図である。
図4は、
図3におけるB部の拡大図である。
図5は、
図1(b)におけるB−B断面図である。また、
図5は、
図4におけるC−C断面に対応する。
図6(a)はケーシング11における開口形成部分の拡大図であり、
図6(b)は
図6(a)の開口20に便座15の軸部17を挿入した図である。
【0018】
図6(a)に示すように、ケーシング11の側面12に開口20が形成されている。
図6(a)および(b)において、左方はトイレ装置10の前方を、右方はトイレ装置10の後方を、下方は重力の作用方向を表す。
【0019】
開口20における、トイレ装置10の前方側の側面21および後方側の側面21は、鉛直方向に延びる鉛直面である。開口20における側面(鉛直面)21よりも上側の面22および下側の面23は曲面である。開口20の側面21、上側の面22、および下側の面23は連続して形成され、開口20の輪郭を形作っている。
【0020】
上側の面22は上に凸状の曲面であり、下側の面23は下に凸状の曲面である。一対の側面21間の水平方向に沿った距離は、上側の面22の頂と下側の面23のボトムとの間の鉛直方向の距離よりも短い。
【0021】
図4、
図5、および
図6(b)に示すように、便座15の軸部17は円筒状に形成され、その軸部17は開口20を通じてケーシング11の内側に挿入されている。軸部17の外周面と開口20の内面(側面21、上側の面22、および下側の面23)との間には、軸部17の回転を許容するクリアランスが形成されている。
【0022】
そのクリアランスのため、便座15はトイレ装置10の前後方向(
図6(b)において左右方向)にわずかに移動可能となっている。軸部17が開口20の側面21に当接することで、便座15のそれ以上の前後方向の移動が規制される。
【0023】
ケーシング11の内側において、便座15の軸部17が挿入された部分には、
図4、
図5に示すように、位置ずれ吸収部材30が設けられている。
【0024】
図7(a)は、位置ずれ吸収部材30の斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)とは反対側から見た位置ずれ吸収部材30の斜視図である。
【0025】
位置ずれ吸収部材30は、筒部31と押し部36とを有し、これらは一体に設けられている。さらに、位置ずれ吸収部材30に対して一体に規制手段40が設けられている。規制手段40は、位置ずれ吸収部材30とは別体でもよい。
【0026】
筒部31の鉛直方向の下部には荷重受け部35が設けられている。筒部31の内周面の一部が水平面となっており、その水平面が荷重受け部35として機能する。筒部31の軸方向の一方には開口32が形成され、他方にはカバー33が一体に設けられている。
【0027】
筒部31の外周面よりも外側の下方に、規制手段40が設けられている。規制手段40は、上面部41と、側面部42と、下面部43とを有し、これらは四角形の枠状に一体に設けられている。下面部43は水平方向で連続しておらず、切欠きによって分断され、側面部42および下面部43は断面L字状に形成されている。
【0028】
荷重受け部35の下方の上面部41の裏面に、押し部36が設けられている。押し部36は、上面部41の裏面から下方に突出する凸部として設けられ、筒部31の軸方向に延びている。
【0029】
図6(a)および(b)に示すように、ケーシング11の側面12の内側における開口20の下方に、凹状の保持部13が設けられている。保持部13は、ケーシング11に一体に設けられている。
【0030】
図5に示すように、位置ずれ吸収部材30は、ケーシング11の側面12の内側における保持部13の上方に設けられている。
図2、
図4に示すように、規制手段40がケーシング11の凹状の保持部13内に配置されている。規制手段40の下面部43が保持部13のボトム上に乗っており、その保持部13のボトムは、規制手段40および位置ずれ吸収部材30の鉛直方向の支持を担う。
【0031】
また、規制手段40の側面部42が保持部13の側面に当接することで、規制手段40および位置ずれ吸収部材30の、トイレ装置10の前後方向(
図4における左右方向)の移動が規制される。
【0032】
図5に示すように、便座15の軸部17は、ケーシング11の開口20および位置ずれ吸収部材30の筒部31の開口32を通じて、筒部31の内側に挿入され、その軸部17は位置ずれ吸収部材30の荷重受け部35の上に乗っている。
【0033】
軸部17が荷重受け部35の上に乗った状態で、軸部17と、ケーシング11の開口20の下側の面23との間にはクリアランスが確保される。すなわち、便座15の鉛直下方への荷重は、ケーシング11の開口20の下側の面23にはかからない。位置ずれ吸収部材30の荷重受け部35が、軸部17を介して便座15の鉛直下方の荷重を受ける。
【0034】
位置ずれ吸収部材30の筒部31における、軸部17が挿入された開口32の反対側には、
図2、
図5に示すようにカバー33が設けられている。
【0035】
図4に示すように、規制手段40の内側には、起歪体50が保持されている。起歪体50は、位置ずれ吸収部材30の押し部36と、規制手段40の下面部43との間に挟まれている。また、起歪体50の側面は規制手段40の側面部42に当接し、起歪体50の前後方向(
図4における左右方向)の移動が規制されている。すなわち、押し部36に対する起歪体50の相対的な前後方向のずれが規制されている。
【0036】
規制手段40は、ケーシング11の保持部13上に支持されている。したがって、規制手段40に保持された起歪体50は、便座15の軸部17の下方でケーシング11に対して保持されている。
【0037】
荷重受け部35は軸部17と起歪体50との間に設けられ、軸部17は荷重受け部35に接触して荷重受け部35の上に乗っている。荷重受け部35と起歪体50との間に、押し部36が設けられている。荷重受け部35は軸部17を介して便座15の荷重を受け、その荷重受け部35で受けた荷重は押し部36に伝達され、押し部36は起歪体50を押す。
【0038】
起歪体50は押し部36に押されてたわみ、起歪体50にひずみが生じる。起歪体50は、金属材料からなり、例えばステンレス材料からなる。または、起歪体50は樹脂材料から構成されてもよい。
【0039】
図8は、起歪体50を保持した状態の規制手段40および位置ずれ吸収部材30を下方から見た斜視図である。
【0040】
図8に示すように、起歪体50の裏面(下面)には、起歪体50のひずみ量を検出するひずみゲージ60が設けられている。ひずみゲージ60は、起歪体50の裏面における規制手段40の下面部43で覆われていない領域に形成されている。そのひずみゲージ60は、空間を介して
図4に示す保持部13のボトムに対向している。
【0041】
起歪体50およびひずみゲージ60は、使用者が便座15に着座したことを検知する着座検知手段を構成する。
【0042】
図9は、実施形態のトイレ装置10の回路ブロック図である。
【0043】
ひずみゲージ60は、例えば、樹脂膜上にパターニングされた金属膜で、ホイートストンブリッジ回路を形成した構成を有する。起歪体50に力が加わり、起歪体50にひずみが発生すると、ひずみゲージ60の抵抗値が変化し、ホイートストンブリッジ回路の出力電圧が変化する。
【0044】
ホイートストンブリッジ回路の出力電圧はアンプ80を介して制御部90に入力し、制御部90は着座検知の有無に応じてトイレ装置10の各種機器を制御する。
【0045】
図10(a)は実施形態のヒンジ部の
図4と同様の図であり、
図10(b)および
図10(c)は
図10(a)に対する比較例の図である。
【0046】
実施形態の
図10(a)に示す開口20の側面21は、前述したように鉛直面である。これに対して、比較例の
図10(b)および(c)における開口20’は例えば真円形状であり、側面は曲面である。
【0047】
図11(a)は、使用者100が便座15の前方に座った状態を表す。
図11(b)は、
図11(a)に示す使用者100が後方側に体重移動して、便座15の後方側に座る位置を変えた状態を表す。
【0048】
このような使用者100の後方側への体重移動により、ケーシング11の開口20、20’に挿入された便座15の軸部17も後方側に移動する。そして、
図10(a)は、軸部17の後方側への移動により軸部17が開口20における後方側の側面21に当接した状態を表し、
図10(b)および(c)は、軸部17の後方側への移動により軸部17が開口20’における後方側の内周面に当接した状態を表す。
【0049】
図10(b)および(c)に示すように、軸部17が曲面に当接すると、軸部17の後方側への移動に伴う水平荷重の一部成分が鉛直荷重に変換されてしまう。
【0050】
図10(b)は、開口20’における後方側内周面の下側の部分に軸部17が当接し、そのときの水平荷重の一部成分が鉛直上方への荷重に変換された例を表す。開口20’から反作用として上向きの力が軸部17にかかる。このため、軸部17から荷重受け部35および押し部36を介して起歪体50に対してかかる本来の鉛直下方の荷重Aが、水平荷重から変換された上向き荷重B(鉛直荷重のノイズ)の分だけ減ってしまい、本来の鉛直下方の荷重Aよりも小さい荷重Cが検知荷重となってしまう。すなわち、起歪体50のひずみ量が減少してしまう。これは、使用者が便座15に着座しているのにもかかわらず、ひずみゲージ60の出力電圧が着座検知電圧に達しないことで、着座していないという誤った検知結果(検知性能の低下)をまねきうる。
【0051】
逆に、
図10(c)は、開口20’における後方側内周面の上側の部分に軸部17が当接し、そのときの水平荷重の一部成分が鉛直下方への荷重に変換された例を表す。開口20’から反作用として下向きの力が軸部17にかかる。このため、軸部17から荷重受け部35および押し部36を介して起歪体50に対してかかる本来の鉛直下方の荷重Aに対して、さらに水平荷重から変換された下向き荷重B’(鉛直荷重のノイズ)が加わる。これは、起歪体50の耐荷重(破壊限界)を超えた過大な荷重C’が起歪体50にかかることによる起歪体50やひずみゲージ60の破損をまねきうる。
【0052】
なお、便座15が前方側に移動して、軸部17が開口20’の前方側内周面に当接した場合にも、水平荷重によって、本来の鉛直荷重に対する荷重の増減が引き起こされうる。
【0053】
これに対して実施形態によれば、便座15の前後方向の移動により軸部17が開口20に当接したときに、軸部17から開口20に対してかかる力(水平荷重)が、鉛直方向に変換されないように逃がす力逃がし手段を設けている。この力逃がし手段は、具体的には、鉛直面として形成された開口20の側面21である。
【0054】
開口20における軸部17が当接可能な領域(範囲)の側面21が鉛直面になっている。そのため、軸部17が側面(鉛直面)21に当接しても、軸部17は開口20から水平方向の反作用の力を受けるだけで、鉛直方向の力を受けない。したがって、軸部17が開口20の側面21に当接していない状態で軸部17から起歪体50に対して鉛直方向にかかる力は、軸部17が開口20の側面21に当接した状態においても変化せず、維持される。
【0055】
すなわち、使用者が便座15に着座した際に起歪体50に対して鉛直方向下方にかかる荷重Aは、使用者の前後方向の体重移動などによる荷重に影響されず、本来の鉛直荷重Aが確実に起歪体50にかかるため、使用者が便座15に着座したことを確実に検知することができる。また、水平荷重から鉛直荷重に変換されてないため、起歪体50に過大な荷重がかからず、起歪体50やひずみゲージ60の破損を防止することができる。
【0056】
このように構成された実施形態によれば、起歪体50のひずみ量が小さくなりがちなヒンジ部に着座検知手段が設けられているがゆえに小さな荷重でも着座を検知できるように起歪体50をたわみやすくしつつも、使用者の体重移動などで水平荷重が発生してもその荷重は起歪体50に伝達されないため、起歪体50やひずみゲージ60の破損を防止することができる。
【0057】
すなわち、実施形態によれば、開口20の側面21を鉛直面にするという簡易な構成により、小さな荷重に対する着座検知性能の向上と、過大荷重による起歪体50やひずみゲージ60の破損防止とを両立することができる。
【0058】
なお、位置ずれ吸収部材30を設けずに、軸部17が直接起歪体50を押すように構成してもよい。ただし、実施形態のように、軸部17の荷重を一旦位置ずれ吸収部材30で受けるようにすると、位置ずれ吸収部材30が便座15の位置ずれを吸収することができる。
【0059】
位置ずれ吸収部材30の荷重受け部35の面積は、軸部17における荷重受け部35に接触する面の面積よりも広いため、使用者が着座中に動くことによって便座15の軸部17の位置がずれても、使用者が着座したことによる荷重を確実に荷重受け部35で受けることができる。なおかつ、押し部36における起歪体50を押す面の面積は、荷重受け部35の面積よりも小さいため、軸部17が位置ずれしても、起歪体50が押し部36から押される位置のずれは抑えられ、軸部17の位置ずれが起歪体50のたわみ方に影響しない。
【0060】
すなわち、荷重受け部35における軸部17が接触する位置が変動しても、鉛直方向の荷重は、軸部17の接触位置に関係なく、押し部36から起歪体50の特定部位に伝達される。起歪体50のたわみ方(ひずみ量)は、軸部17の位置の影響を受けずに、鉛直方向の荷重の大きさに依存する。
【0061】
位置ずれ吸収部材30を設けずに、軸部17が直接起歪体50を押すように構成した場合において、例えば、軸部17の接触位置が起歪体50の中央部から端の方に位置ずれすると、起歪体50は十分にたわむことができずに、着座の検知に必要なひずみ量を検出できない可能性が懸念される。
【0062】
これに対して、位置ずれ吸収部材30を設けることで、軸部17が起歪体50の中央部の上に位置する場合も、起歪体50の端の方に位置する場合でも、押し部36は起歪体50の同じ特定部位を押し、起歪体50は同じようにたわみ、ひずみゲージ60で検出されるひずみ量も同じになる。使用者が着座中に動いて軸部17が起歪体50の端の方にずれても、起歪体50に着座検知に必要なたわみ(ひずみ)を発生させることができ、使用者が便座15に着座したことを確実に検知することができる。
【0063】
図12(a)〜(c)は、ケーシング11に形成され、便座15の軸部17が挿入される開口の他の例を示す模式図である。
【0064】
図12(a)に示す開口120の側面121は、鉛直面ではなく、曲面である。この側面121の曲率は、開口120における上側の面の曲率および下側の面の曲率よりも小さい。軸部17が当接可能な側面121が曲面であっても、その曲率が小さければ、軸部17が側面121に当接したときに鉛直方向に変換される力の大きさを小さくできる。開口の側面が完全な鉛直面でなく、多少の曲率をもっていても、起歪体50に加わる本来の鉛直荷重に対する増減幅を、着座検知および起歪体50の耐荷重に影響のない範囲に抑えることができればよい。
【0065】
このような観点から、側面121の鉛直方向からの傾斜角度θは10°以下が望ましく、さらに望ましくは5°以下がよい。ここでのθは、
図12(a)に示すような開口120の平面視において曲線として現れる側面121を直線に近似した線または任意の点における接線の鉛直方向(点線)からの傾斜角度を表す。
【0066】
開口の形状(輪郭)は、軸部17が開口に挿入された状態で回転自在であればよい。例えば、
図12(b)に示すように、四角形の開口220であってもよい。この開口220は、上記実施形態の開口20と同様に鉛直面である側面221を有し、さらに上側の面および下側の面は、側面221に対して直角を形成して連続する平面である。
【0067】
また、
図12(c)に示す開口320のように、側面321が開口320の内側に向かって山なりになるような曲面であってもよい。この場合も、前述したように、側面321の鉛直方向からの傾斜角度θは10°以下が望ましく、さらに望ましくは5°以下がよい。
【0068】
図13(a)は、他の実施形態のヒンジ部の鉛直方向に沿った模式断面図であり、
図13(b)は、
図13(a)におけるD−D線から左側を見た一部断面側面図である。
【0069】
図13(a)および(b)に示すヒンジ部においては、ケーシング150に軸部151が設けられ、便座15側に、軸部151が挿入される開口170が形成されている。
【0070】
便座15は、
図1(a)に示す便座本体16と、
図13(a)に示す中空軸部160とを有し、便座本体16は中空軸部160に結合されている。中空軸部160に開口170が形成され、その開口170にケーシング150の軸部151が挿入されている。
【0071】
中空軸部160は軸部151のまわりに回転自在であり、よって、便座15はケーシング150の軸部151を支点に回転する。
【0072】
便座側の中空軸部160の内壁に起歪体50が保持されている。起歪体50の上面にはひずみゲージ60が設けられている。起歪体50は、ケーシング150の軸部151の上方に設けられ、起歪体50と軸部151との間に位置ずれ吸収部材30が設けられている。
【0073】
起歪体50を保持した便座15の中空軸部160が、位置ずれ吸収部材30を介して、ケーシング150の軸部151の上に乗っている。すなわち、ケーシング150の軸部151が、便座150の鉛直下方への荷重を位置ずれ吸収部材30を介して受け、起歪体50にひずみを生じさせる。起歪体50のひずみ量はひずみゲージ60で検出される。
【0074】
便座15の前後方向(
図13(b)における左右方向)の移動により、便座15の中空軸部160が前後方向に移動し、ケーシング150の軸部151が開口170の側面171に当接可能である。
【0075】
図13(b)に示すように、開口170の側面171は鉛直面である。そのため、前述したように、軸部151が開口170の側面(鉛直面)171に当接しても、水平方向の荷重が鉛直方向の荷重に変換されない。したがって、使用者が便座15に着座した際に起歪体50に対して鉛直方向にかかる荷重は、使用者の前後方向の体重移動などによる荷重に影響されず、本来の鉛直荷重が確実に起歪体50にかかるため、使用者が便座15に着座したことを確実に検知することができる。また、水平荷重から変換された鉛直荷重が起歪体50に伝達されないため、起歪体50に過大な荷重がかからず、起歪体50やひずみゲージ60の破損を防止することができる。
【0076】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。