(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1、第2の粘着剤]
本発明の第1、第2の粘着剤はいずれも、1種以上のポリウレタンポリオール(A)と、1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)とを含むウレタン系粘着剤である。
【0021】
本発明の第1の粘着剤は、1種以上のポリウレタンポリオール(A)として、数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AX)を用い、数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)を添加した粘着剤である。
【0022】
本発明の第2の粘着剤は、1種以上のポリウレタンポリオール(A)として、数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AY)を用いた粘着剤である。
【0023】
「第1の粘着剤」
本発明の第1の粘着剤は、
数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AX)と、
1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)と、
数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)とを含む。
【0024】
(ポリウレタンポリオール(AX))
ポリウレタンポリオール(AX)は、1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて得られる反応生成物である。共重合反応は必要に応じて、1種以上の触媒存在下で行うことができる。共重合反応には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。
【0025】
<第1のポリオール(x)>
第1のポリオール(x)は、数平均分子量(Mn)が300超であるポリオールである。第1のポリオール(x)の種類は特に制限されず、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオールとしては、公知のものを用いることができる。
ポリエステルポリオールとしては例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とのエステル化反応によって得られる化合物(エステル化物)が挙げられる。
【0027】
原料のポリオール成分としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびヘキサントリオール等が挙げられる。
【0028】
原料の酸成分としては、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェエルジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0029】
上記の他、ポリエステルポリオールとしては、ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、およびポリバレロラクトン等の1種以上のラクトン類を開環重合して得られる化合物(開環重合物)も挙げられる。
【0030】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は特に制限されず、好ましくは300超〜8,000、より好ましくは400〜7,000、特に好ましくは500〜6,000である。Mnが300超であることで、反応性が好適となり、ポリウレタンポリオール(AX)の重合反応安定性がより向上する。Mnが8,000以下であることで、ポリウレタンポリオール(AX)の凝集力が好適となる。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、公知のものを用いることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、1分子中に2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させて得られる化合物(付加重合物)が挙げられる。
【0032】
開始剤としては、水酸基含有化合物およびアミン類等が挙げられる。具体的には、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、N−アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、およびキシリレンジアミン等の2官能開始剤;グリセリン、トリメチロールプロパン、およびトリエタノールアミン等の3官能開始剤;ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、および芳香族ジアミン等の4官能開始剤;ジエチレントリアミン等の5官能開始剤等が挙げられる。
【0033】
オキシラン化合物としては、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0034】
ポリエーテルポリオールとしては、活性水素含有化合物のアルキレンオキシド付加物(「ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう)が好ましい。中でも、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリテトラメチレングリコール等の2官能ポリエーテルポリオール;グリセリンのアルキレンオキシド付加物等の3官能ポリエーテルポリオール等が好ましい。
【0035】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は特に制限されず、好ましくは300超〜8,000、より好ましくは400〜7,000、特に好ましくは500〜4,000である。Mnが300超であることで、反応性が好適となり、ポリウレタンポリオール(AX)のゲル化が効果的に抑制される。Mnが8,000以下であることで、ポリウレタンポリオール(AX)の凝集力が好適となる。
【0036】
1種以上の第1のポリオール(x)として、1種以上の2官能ポリオール(x1)と1種以上の3官能ポリオール(x2)とを併用することができる。
2官能ポリオール(x1)は2次元架橋性を有し、粘着層に適度な柔軟性を付与することができる。3官能ポリオール(x2)は3次元架橋性を有し、粘着層に適度な硬さを付与することができる。これらを併用することで、好適な凝集力と粘着力を有する粘着層が得られやすくなる傾向がある。
【0037】
1種以上の2官能ポリオール(x1)と1種以上の3官能ポリオール(x2)との合計量を100質量部としたとき、
1種以上の2官能ポリオール(x1)の量が1〜40質量部であり、1種以上の3官能ポリオール(x2)の量が99〜60質量部であることがより好ましく、
1種以上の2官能ポリオール(x1)の量が1〜30質量部であり、1種以上の3官能ポリオール(x2)の量が99〜70質量部であることがより好ましく、
1種以上の2官能ポリエーテルポリオール(x1)の量が5〜15質量部であり、1種以上の3官能ポリエーテルポリオール(x2)の量が95〜85質量部であることがより好ましい。
【0038】
<有機ポリイソシアネート(y)>
有機ポリイソシアネート化合物(y)としては公知のものを使用でき、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0042】
その他、ポリイソシアネートとしては、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネート(y)としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が好ましい。
【0044】
<触媒>
触媒としては公知のものを使用でき、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が挙げられる。
【0045】
3級アミン系化合物としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0046】
有機金属系化合物としては、錫系化合物および非錫系化合物等が挙げられる。
錫系化合物としては、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物としては、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系;オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系;2−エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系;安息香酸コバルトおよび2−エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系;ナフテン酸亜鉛および2−エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系が挙げられる。
【0047】
触媒は、1種または2種以上用いることができる。
反応性の異なる複数種の第1のポリオール(x)を併用する場合、これらの反応性の相違により、単一触媒の系では重合安定性の不良または反応溶液の白濁が生じやすくなる恐れがある。この場合、2種以上の触媒を用いることにより、反応(例えば反応速度等)を制御しやすく、上記問題を解決することができる。反応性の異なる複数種の第1のポリオール(x)を併用する系では、2種以上の触媒を用いることが好ましい。2種以上の触媒の組合せは特に制限されず、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、および錫系/錫系等が挙げられる。好ましくは錫系/錫系、より好ましくはジブチル錫ジラウレートと2−エチルヘキサン酸錫である。
2−エチルヘキサン酸錫とジブチル錫ジラウレートとの質量比(2−エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレート)は特に制限されず、好ましくは0超1未満、より好ましくは0.2〜0.6である。当該質量比が1未満であれば、触媒活性のバランスが良く、反応溶液のゲル化および白濁を効果的に抑制し、重合安定性がより向上する。
【0048】
1種以上の触媒の使用量は特に制限されず、1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との合計量に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%である。
【0049】
<溶剤>
ポリウレタンポリオール(AX)の重合には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ポリウレタンポリオール(AX)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0050】
<重合方法>
ポリウレタンポリオール(AX)の重合方法としては特に制限されず、塊状重合法および溶液重合法等の公知重合方法を適用することができる。
重合手順は特に制限されず、
手順1)1種以上の第1のポリオール(x)、1種以上の有機ポリイソシアネート(y)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)1種以上の第1のポリオール(x)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上の有機ポリイソシアネ−ト(y)を滴下添加する手順が挙げられる。
反応を制御しやすいことから、手順2)が好ましい。
【0051】
触媒を使用する場合の反応温度は、好ましくは100℃未満、より好ましくは85〜95℃である。反応温度が100℃以上では、反応速度および重合安定性等の制御が困難となり、所望の分子量を有するポリウレタンポリオール(AX)の生成が困難となる恐れがある。
触媒を使用しない場合の反応温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。触媒を使用しない場合の反応時間は、好ましくは3時間以上である。
【0052】
ポリウレタンポリオール(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万〜50万、より好ましくは3万〜40万、特に好ましくは5万〜35万である。ポリウレタンポリオール(A)のMwが適切な範囲にあることで良好な塗工性が得易い。分子量の分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1〜15、より好ましくは4〜12である。
【0053】
(多官能イソシアネート化合物(B))
多官能イソシアネート化合物(B)としては公知のものを使用でき、ポリウレタンポリオール(AX)の原料である有機ポリイソシアネート(y)として例示した化合物(具体的には、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および、これらのトリメチロールプロパンアダクト体/ビュウレット体/3量体)を用いることができる。
【0054】
(第2のポリオール(C))
第2のポリオール(C)は、数平均分子量(Mn)が300以下であるポリオールである。第2のポリオール(C)としては、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびヘキサントリオール等が挙げられる。
複数の水酸基を有し、比較的分子量の小さい第2のポリオール(C)は、水溶性を有することができ、水溶性であることが好ましい。
本明細書において、「水溶性を有する」とは具体的には、25℃における水に対する溶解度が0.1g/100gH
2O以上であることを意味し、好ましくは0.5g/100gH
2O以上、より好ましくは1g/100gH
2O以上である。
【0055】
一般的に、粘着シートを被着体に貼着した構造体が高温高湿環境に曝された場合、粘着層の粘着力の上昇により再剥離性が低下し、再剥離後に被着体の表面に粘着剤が残る被着体汚染が生じる場合がある。
第2のポリオール(C)を含む本発明の第1の粘着剤は、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することができる。なお、このことを示すため、後記[実施例]の項では、再剥離性評価の温湿度条件を、「背景技術」の項で挙げた特許文献1〜3よりも過酷に設定している。
【0056】
上記作用効果のメカニズムは必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
一般的に、高温乾燥環境下では粘着層の再剥離性の低下が見られないことから、粘着層の再剥離性の低下は水分によると推測される。粘着剤に、複数の水酸基を有し、比較的分子量が小さく、親水性が比較的高い第2のポリオール(C)を添加することで、粘着層の形成時に親水性が高いウレタン結合を多数形成(高密度に形成)することができ、粘着層の親水性が向上すると推測される。この結果、粘着層と外部環境との間の水分の移行が起こりやすくなり、外部から粘着層に水分が侵入したとしても、粘着層から外部環境への水分の排出も起こりやすく、粘着層内の水分量を相対的に低く維持でき、水分の影響を受けにくくなると推測される。
【0057】
また、理由は明らかではないが、粘着剤に、複数の水酸基を有し、比較的分子量が小さく、親水性が比較的高い第2のポリオール(C)を添加することで、粘着層の基材密着性の向上効果も得られる。特に本発明の第1の粘着剤では基材密着性が向上することから、比較的分子量の小さい第2のポリオール(C)、多官能イソシアネート化合物(B)、またはこれらの反応物が、基材への投錨性を高め、基材密着性が良好になると推測している。
本発明の第1の粘着剤は、PETシートに対しても、PPシート等の相対的に低極性の基材に対しても優れた基材密着性を有する粘着層を形成することができる。そのため、本発明の第1の粘着剤は、用いる基材シートの選択自由度が高く、好ましい。例えば、安価なPPシート等を用いることで、粘着シートの低コスト化を図ることができる。
【0058】
また、理由は明らかではないが、粘着剤に第2のポリオール(C)を添加することで、粘着層の柔軟性が向上し、湾曲性が向上する効果も得られる。特に本発明の第2の粘着剤では湾曲性が向上することから、ポリウレタンポリオール(AY)中の比較的分子量の小さい第2のポリオール(C)が凝集力の強いウレタン結合部分(ハードセグメントともいう)の凝集力を低下させ、粘着層を柔軟化させていると推測している。
OELD等のディスプレイでは、基板としてプラスチックフィルムを用いることでフレキシブル化が可能である。本発明の第1の粘着剤を用いた場合、粘着シートをフレキシブルな被着体に貼着した構造体が繰り返し湾曲された場合も、粘着層の基材シートからの剥離が効果的に抑制される。
【0059】
なお、粘着層は粘着剤の硬化物からなるが、粘着剤の硬化過程で、第2のポリオール(C)は多官能イソシアネート化合物(B)と反応してポリマーネットワーク内に取り込まれると推測される。粘着層のポリマーネットワーク内に第2のポリオール(C)成分が取り込まれることで、粘着層の上記作用効果(高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果)が発現すると推測される。
【0060】
粘着層の上記作用効果(高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果)が効果的に発現することから、第2のポリオール(C)はモノマーであることが好ましい。
【0061】
粘着層の上記作用効果(高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果)が効果的に発現することから、第2のポリオール(C)の数平均分子量(Mn)は、300以下、好ましくは60〜200、より好ましくは70〜150である。
【0062】
本発明の関連文献として、「背景技術」の項に挙げた特許文献4がある。この文献には、ポリイソシアネート化合物として、2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物とを用いたウレタン系粘着剤が開示されている(請求項1)。特許文献4には、2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物の原料として、分子量300以下の短鎖モノオールが挙げられている(請求項2)。3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物として、分子量300以下の短鎖ジオールが挙げられている(請求項3)。
本発明と異なり、特許文献4において、分子量300以下の短鎖モノオールおよび分子量300以下の短鎖ジオールは、「硬化剤であるポリイソシアネート化合物を製造する際の原料」であり、粘着剤の成分として添加されたものではない。また、ポリウレタンポリオールの原料ポリオールでもない。
【0063】
(可塑剤(P))
濡れ性を向上できることから、本発明の第1の粘着剤はさらに1種以上可塑剤(P)を含むことができる。可塑剤(P)としては、脂肪酸エステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤、およびリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
【0064】
脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステル、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸と4価以下のアルコールとのエステル、および、炭素数6〜18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル等が挙げられる。
【0065】
炭素数6〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数18以下の分岐アルコールとのエステルとしては、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソステアリル、セバシン酸ジイソセチル、トリメリト酸トリオレイル、およびトリメリト酸トリイソセチル等が挙げられる。
【0066】
炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸としては、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、およびイソステアリン酸等が挙げられる。4価以下のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびソルビタン等が挙げられる。
【0067】
ポリエーテルエステル系可塑剤としては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ−2−エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
可塑剤(P)は、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを縮合させたソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル等の、脂肪酸エステル構造とポリエーテル構造とを含む化合物であってもよい。例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0069】
ヒドロキシカルボン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸ブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリプロピル、およびo−アセチルクエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0070】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、およびトリクレジルホスフェート等が挙げられる。
【0071】
可塑剤(P)の数平均分子量(Mn)は特に制限されず、濡れ速度向上等の観点から、好ましくは200〜1,000、より好ましくは230〜900、さらに好ましくは250〜800、特に好ましくは250〜500である。
【0072】
(溶剤)
本発明の第1の粘着剤は必要に応じて、1種以上の溶剤を含むことができる。溶剤としては公知のものを使用でき、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、およびアセトン等が挙げられる。ポリウレタンポリオール(AX)の溶解性および溶剤の沸点等の観点から、酢酸エチルおよびトルエン等が特に好ましい。
【0073】
(他の任意成分)
本発明の第1の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、1種以上の他の任意成分を含むことができる。他の任意成分としては、触媒、ウレタン系樹脂以外の他の樹脂、充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、導電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、消泡剤、および滑剤等が挙げられる。
【0074】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、および酸化チタン等が挙げられる。
【0075】
酸化防止剤(I)としては、フェノール系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤;硫黄系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤等の過酸化物分解剤等が挙げられる。
【0076】
フェノール系酸化防止剤としては、
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、およびステアリン−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、および3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のビスフェノール系酸化防止剤;
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、および1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0077】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0078】
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびフェニルジイソデシルホスファイト等が挙げられる。
【0079】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0080】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、およびビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等が挙げられる。
【0081】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’,−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、および[2(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0082】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、およびp−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0083】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、およびエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0084】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤および紫外線安定剤等が挙げられる。
【0085】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート]、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、およびメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0086】
紫外線安定剤としては、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)]−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケル−ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、およびニッケル−ジブチルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0087】
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、およびシリコーン系レベリング剤等が挙げられる。アクリル系レベリング剤としては、ポリフローNo.36、ポリフローNo.56、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.99C(いすれも共栄社化学社製)等が挙げられる。フッ素系レベリング剤としては、メガファックF470N、メガファックF556(いずれもDIC社製)等が挙げられる。シリコーン系レベリング剤としては、グランディックPC4100(DIC社製)等が挙げられる。
【0088】
(配合比)
本発明の第1の粘着剤は、1種以上のポリウレタンポリオール(AX)、1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)、および1種以上の第2のポリオール(C)を必須成分として含み、さらに必要に応じて1種以上の可塑剤(P)を含む。これらの配合比は特に制限されないが、好ましい配合比は以下の通りである。
【0089】
1種以上のポリウレタンポリオール(AX)100質量部に対する1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、1質量部以上であれば粘着層の凝集力が良好となり、20質量部以下であれば粘着層の粘着力が良好となる。
【0090】
1種以上のポリウレタンポリオール(AX)100質量部に対する1種以上の第2のポリオール(C)の量は、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部である。
1種以上の第2のポリオール(C)の量が0.1〜10質量部であれば、粘着層の親水性が好適となり、高温高湿環境に置かれたときの水分の侵入と排出のバランスが良好となり、第2のポリオール(C)の添加による粘着層の作用効果(高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果)が効果的に発現する。また、1種以上の第2のポリオール(C)の量が10質量部以下であれば、本来必要な粘着剤の主有効成分であるポリウレタンポリオール(AX)の量が充分に確保され、粘着剤として必要な性能が確保される。
【0091】
1種以上のポリウレタンポリオール(AX)100質量部に対する1種以上の可塑剤(P)の量は、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは20〜50質量部である。1種以上の可塑剤(P)の量が10質量部以上であれば、可塑剤(P)の添加効果(濡れ性向上効果)が効果的に発現することができる。1種以上の可塑剤(P)の量が70質量部以下であれば、本来必要な粘着剤の主有効成分であるポリウレタンポリオール(AX)の量が充分に確保され、粘着剤として必要な性能が確保される。
【0092】
(第1の粘着剤の製造方法)
本発明の第1の粘着剤の製造方法は、特に制限されない。
本発明に係る一態様の第1の粘着剤の製造方法は、
数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて、1種以上のポリウレタンポリオール(AX)を得る工程と、
1種以上のポリウレタンポリオール(AX)に対して、1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)と数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)とを混合する工程とを有する。
【0093】
「第2の粘着剤」
本発明の第2の粘着剤は、
数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AY)と、
1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)とを含む。
【0094】
第1のポリオール(x)、第2のポリオール(C)、有機ポリイソシアネート(y)、および多官能イソシアネート化合物(B)はそれぞれ、本発明の第1の粘着剤で用いられるこれらの材料と同様である。
【0095】
本発明の第1の粘着剤では、1種以上のポリウレタンポリオール(AX)に対して1種以上の第2のポリオール(C)を添加するのに対し、本発明の第2の粘着剤では、ポリウレタンポリオール(AY)の1種以上の原料ポリオールが1種以上の第2のポリオール(C)を含む。すなわち、ポリウレタンポリオール(AY)は、1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて得られる反応生成物である。共重合反応は必要に応じて、1種以上の触媒存在下で行うことができる。共重合反応には必要に応じて、1種以上の溶剤を用いることができる。用いることができる触媒と溶剤は、本発明の第1の粘着剤で用いられるポリウレタンポリオール(AX)と同様である。
【0096】
本発明の第2の粘着剤は、本発明の第1の粘着剤は同様の作用効果することができる。
すなわち、本発明の第2の粘着剤は、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することができる。また、基材密着性が向上し、湾曲性が向上した粘着層を形成することができる。
粘着層は粘着剤の硬化物からなるが、本発明の第1の粘着剤と同様、粘着層のポリマーネットワーク内に第2のポリオール(C)成分が取り込まれることで、高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果が発現すると推測される。上記したように、本発明の第2の粘着剤は、特に湾曲性に優れる。
【0097】
第2のポリオール(C)の好ましい態様(種類および数平均分子量(Mn))は、本発明の第1の粘着剤と同様である。
ポリウレタンポリオール(AY)の原料ポリオールの総量100質量部に対する1種以上の第2のポリオール(C)の量は、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部である。ポリウレタンポリオール(AY)の原料ポリオールの総量100質量部に対する1種以上の第2のポリオール(C)の量が0.1〜10質量部であれば、粘着層の親水性が好適となり、高温高湿環境に置かれたときの水分の侵入と排出のバランスが良好となり、第2のポリオール(C)の添加による粘着層の作用効果(高温高湿環境に置かれたときの再剥離性の向上効果、基材密着性の向上効果、および湾曲性の向上効果)が効果的に発現する。また、ポリウレタンポリオール(AY)の原料ポリオールの総量100質量部に対する1種以上の第2のポリオール(C)の量が10質量部以下であれば、粘着剤の特性に本来必要な第1のポリオール(x)の量が充分に確保され、粘着剤として必要な性能が確保される。
【0098】
<重合方法>
ポリウレタンポリオール(AY)の重合手順としては、本発明の第1の粘着剤で用いられるポリウレタンポリオール(AX)と同様、
手順1)1種以上の第1のポリオール(x)、1種以上の第2のポリオール(C)、1種以上の有機ポリイソシアネート(y)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
手順2)1種以上の第1のポリオール(x)、1種以上の第2のポリオール(C)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上の有機ポリイソシアネ−ト(y)を滴下添加する手順が挙げられる。
反応を制御しやすいことから、手順2)が好ましい。
ポリウレタンポリオール(AY)の重合の好ましい反応条件(反応温度と反応時間)は、本発明の第1の粘着剤で用いられるポリウレタンポリオール(AX)と同様である。
【0099】
(任意成分)
本発明の第1の粘着剤と同様、濡れ性を向上できることから、本発明の第2の粘着剤はさらに1種以上可塑剤(P)を含むことができる。
本発明の第1の粘着剤と同様、本発明の第2の粘着剤は必要に応じて、1種以上の溶剤を含むことができる。
本発明の第1の粘着剤と同様、本発明の第2の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記以外の1種以上の他の任意成分を含むことができる。
用いることができる可塑剤(P)、溶剤、および他の任意成分は、本発明の第1の粘着剤と同様である。
【0100】
(配合比)
本発明の第2の粘着剤は、1種以上のポリウレタンポリオール(AY)および1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)を必須成分として含み、さらに必要に応じて1種以上の可塑剤(P)を含む。これらの配合比は特に制限されないが、好ましい配合比は以下の通りである。
【0101】
1種以上のポリウレタンポリオール(AY)100質量部に対する1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部である。1種以上の多官能イソシアネート(B)の量は、1質量部以上であれば粘着層の凝集力が良好となり、20質量部以下であれば粘着層の粘着力が良好となる。
【0102】
1種以上のポリウレタンポリオール(AY)100質量部に対する1種以上の可塑剤(P)の量は、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは20〜50質量部である。
1種以上の可塑剤(P)の量が10質量部以上であれば、1種以上の可塑剤(P)の添加効果(濡れ性向上効果)が効果的に発現することができる。可塑剤(P)の量が70質量部以下であれば、本来必要な粘着剤の主有効成分であるポリウレタンポリオール(AY)の量が充分に確保され、粘着剤として必要な性能が確保される。
【0103】
(第2の粘着剤の製造方法)
本発明の第2の粘着剤の製造方法は、特に制限されない。
本発明に係る一態様の第2の粘着剤の製造方法は、
数平均分子量(Mn)が300超である1種以上の第1のポリオール(x)と数平均分子量(Mn)が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)とを共重合反応させて、1種以上のポリウレタンポリオール(AY)を得る工程と、
1種以上のポリウレタンポリオール(AY)に対して、1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)を混合する工程とを有する。
【0104】
「第3のウレタン粘着剤」
本発明の第1の粘着剤および本発明の第2の粘着剤には、これらの粘着剤を組み合わせた本発明の第3の粘着剤が含まれる。
本発明の第3のウレタン粘着剤は、
Mnが300超である1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AX)と、
1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)と、
Mnが300以下である1種以上の第2のポリオール(C)とを含む。
【0105】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、基材シートと、上記の本発明の第1または第2の粘着剤の硬化物からなる粘着層とを含む。
粘着層は、基材シートの片面または両面に形成することができる。必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離シートで被覆することができる。なお、剥離シートは、粘着シートを被着体に貼着する際に剥離される。
【0106】
図1に、本発明に係る第1実施形態の粘着シートの模式断面図を示す。
図1中、符号10は粘着シート、符号11は基材シート、符号12は粘着層、符号13は剥離シートである。粘着シート10は、基材シートの片面に粘着層が形成された片面粘着シートである。
図2に、本発明に係る第2実施形態の粘着シートの模式断面図を示す。
図2中、符号20は粘着シート、符号21は基材シート、符号22A、22Bは粘着層、符号23A、23Bは剥離シートである。
【0107】
基材シートとしては特に制限されず、樹脂シート、紙、および金属箔等が挙げられる。基材シートは、これら基材シートの少なくとも一方の面に任意の1つ以上の層が積層された積層シートであってもよい。基材シートの粘着層を形成する側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理およびアンカーコート剤塗布等の易接着処理が施されていてもよい。
【0108】
樹脂シートの構成樹脂としては特に制限されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)等エステル系樹脂;ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む);これらの組合せ等が挙げられる。
上記したように、本発明の第1、第2の粘着剤は、PETシートに対しても、PPシート等の相対的に低極性の基材に対しても、優れた基材密着性を有する。そのため、本発明の粘着シートでは、用いる基材シートの選択自由度が高く、好ましい。例えば、安価なPPシート等を用いることで、粘着シートの低コストを図ることができる。
ポリウレタンシートを除く樹脂シートの厚みは特に制限されず、好ましくは15〜300μmである。ポリウレタンシート(発泡体を含む)の厚みは特に制限されず、好ましくは20〜50,000μmである。
【0109】
紙としては特に制限されず、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。
金属箔の構成金属としては特に制限されず、アルミニウム、銅、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0110】
剥離シートとしては特に制限されず、樹脂シートまたは紙等の基材シートの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを用いることができる。
【0111】
粘着シートは、公知方法にて製造することができる。
はじめに、基材シートの表面に本発明の第1の粘着剤または本発明の第2の粘着剤を塗工して、本発明の第1の粘着剤または本発明の第2の粘着剤からなる塗工層を形成する。塗布方法は公知方法を適用でき、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等が挙げられる。
次に、塗工層を乾燥および硬化して、本発明の第1の粘着剤または本発明の第2の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成する。加熱乾燥温度は特に制限されず、60〜150℃程度が好ましい。粘着層の厚み(乾燥後の厚み)は用途によって異なるが、好ましくは0.1〜200μmである。
次に必要に応じて、公知方法により粘着層の露出面に剥離シートを貼着する。
以上のようにして、片面粘着シートを製造することができる。
上記操作を両面に行うことで、両面粘着シートを製造することができる。
【0112】
上記方法とは逆に、剥離シートの表面に本発明の粘着剤を塗工して、本発明の粘着剤からなる塗工層を形成し、次いで塗工層を乾燥および硬化して、本発明の粘着剤の硬化物からなる粘着層を形成し、粘着層の露出面に基材シートを積層してもよい。
【0113】
(用途)
本発明の粘着シートは、テープ、ラベル、シール、および両面テープ等の形態で、使用することができる。本発明の粘着シートは、表面保護シート、化粧用シート、および滑り止めシート等として好適に使用される。
液晶ディスプレイ(LCD)および有機エレクトロルミネセンスディスプレイ(OELD)等のフラットパネルディスプレイ、並びに、かかるフラットパネルディスプレイとタッチパネルとを組み合わせたタッチパネルディスプレイは、テレビ(TV)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、および携帯情報端末等の電子機器に広く使用されている。
【0114】
本発明の粘着シートは、フラットパネルディスプレイおよびタッチパネルディスプレイ、並びに、これらの製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護シートとして好適に用いられる。
上記電子機器の利用範囲は広がってきており、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれる可能性が生じつつある。
本発明の粘着シートは、良好な粘着性を有し、かつ、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれても、良好な再剥離性を有することができ、好ましい。
【0115】
本発明の粘着シートは従来よりも基材密着性に優れるため、用いる基材シートの選択自由度が高く、各種用途に好適に用いることができる。安価な基材シートを用いることで、粘着シートの低コスト化も可能である。
【0116】
本発明の粘着シートは、従来よりも湾曲性に優れる。そのため、本発明の粘着シートは、基板としてプラスチックフィルムを用いたOELD等のフレキシブルなディスプレイ、および、この製造工程で製造または使用される基板および光学部材等の表面保護シートとして、好適に用いることができる。
【0117】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも過酷な高温高湿環境下に置かれたとしても良好な再剥離性を有する粘着層を形成することが可能な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
本発明によればまた、基材密着性が良好な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
本発明によればまた、湾曲性が良好な粘着剤、およびこれを用いた粘着シートを提供することができる。
【実施例】
【0118】
以下、合成例、本発明に係る実施例、および比較例について説明する。なお、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0119】
[Mw、Mnの測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りとした。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
<測定条件>
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF−804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:0.5mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.1%、
試料注入量:100μL。
【0120】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<第1のポリオール(x)>
(x−1):P−1010(クラレ社製)、2官能ポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基数2、
(x−2):P−2010(クラレ社製)、2官能ポリエステルポリオール、Mn2000、水酸基数2、
(x−3):PP−1000(三洋化成社製)、2官能ポリエーテルポリオール、Mn1000、水酸基数2、
(x−4):PP−2000(三洋化成社製)、2官能ポリエーテルポリオール、Mn2000、水酸基数2、
(x−5):TG−1000(日油社製),3官能ポリエーテルポリオール、Mn1000、水酸基数3、
(x−6):G−3000B(アデカ社製)、3官能ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、
(x−7):AM302(アデカ社製)、3官能ポリエーテルポリオール、Mn3000、水酸基数3、
(x−8):エクセノール820(旭硝子社製)、3官能ポリエーテルポリオール、Mn4900、水酸基数3、
(x−9):F−3010(クラレ社製)、3官能ポリエステルポリオール、Mn3000、水酸基数3。
【0121】
<ポリイソシアネート(y)>
(y−1):デスモジュールH(東ソー社製)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、
(y−2):タケネート500(三井化学社製)、1,3−キシリレンジイソシアネート、
(y−3):VESTANAT IPDI(EVONIK社製)、イソホロンジイソシアネート。
【0122】
<多官能イソシアネート化合物(B)>
(B−1)コロネート HL(東ソー社製)、ヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールプロパンアダクト、
(B−2)スミジュール N−3300(住化バイエルウレタン社製)、ヘキサメチレンジイソシアネート/イソシアヌレート、
(B−3)スミジュール N−75(住化バイエルウレタン社製)、ヘキサメチレンジイソシアネート/イソシアビュレット、
(B−4)デスモジュール Z4470BA(住化バイエルウレタン社製)、イソホロンジイソシアネート/イソシアヌレート。
【0123】
<第2のポリオール(C)>
(C−1):1,3−ブタンジオール(ダイセル社製)、1,3−ブタンジオール、Mn90、水酸基数2、
(C−2):BEPG(KHネオケム社製),2−ブチル−2−エチル−1.3−プロパンジオール、Mn160、水酸基数2、
(C−3):TMP(三菱瓦斯化学社製),トリメチロールプロパン、Mn134、水酸基数3、
(C−12):1,4−ブタンジオール(三菱化学社製),1,4−ブタンジオール、Mn90、水酸基数2、
(C−13):プロピレングリコール(ダウケミカル社製),1,2−プロパンジオール、Mn76、水酸基数2、
(C−14):ネオペンチルグリコール(宇部興産社製),2,2−ジメチル−1.3−プロパンジオール、Mn104、水酸基数2、
(C−15):ヘキサンジオール(宇部興産社製),1,6−ヘキサンジオール、Mn118、水酸基数2、
(C−16):MPD(クラレ社製),3−メチル−1,5−ペンタンジオール、Mn118、水酸基数2、
(C−17):オクタンジオール(KHネオケム社製),2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、Mn146、水酸基数2、
(C−18):キョーワジオールPD−9(KHネオケム社製),2.4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、Mn160、水酸基数2、
(C−20):1,10−デカンジオール(小倉合成工業社製)、1,10−デカンジオール、Mn174、水酸基数2。
第2のポリオール(C)のリストと主な特性を表4に示しておく。
【0124】
<可塑剤(P)>
(P−1):NIKKOL IPM−100(日光ケミカルズ社製)、ミリスチン酸イソプロピル、
(P−2):ユニスターM−182A(日油社製)、オレイン酸メチル、
(P−3):アデカサイザーRS735(ADEKA社製)、ポリエーテルエステル化合物、
(P−4):TOP(大八化学工業社製)、リン酸エステル、
(P−5):T−80(東邦化学工業社製)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン。
【0125】
<酸化防止剤(I)>
(I−1):IRGANOX 1135(BASF社製)。
【0126】
[ポリウレタンポリオールの合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、および滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Mnが300超である第1のポリオール(x)を100部仕込んだ。これに、溶剤としてトルエン70部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03部および2−エチルヘキサン酸錫0.01部を加えた後、窒素雰囲気下で90℃まで徐々に昇温した。これにポリイソシアネート(y−3)を滴下し、滴下終了後から2時間反応を行った。赤外吸収スペクトル(IR)で残存イソシアネート基の消滅を確認した上で反応液を冷却し、反応を終了した。以上のようにして、ポリウレタンポリオール(AX−1)の溶液(不揮発分:60%)を得た。得られたポリウレタンポリオール(AX−1)のMwは、202,000であった。
【0127】
(合成例2〜17)
合成例2〜17においては、用いたポリオールとポリイソシアネートの種類とこれらの配合比を表1−1、表1−2に示すように変更した以外は合成例1と同様にして、ポリウレタンポリオール(AX−2)〜(AX−9)、(AY−10)〜(AY−17)を得た。各合成例において、得られたポリウレタンポリオールのMwを表1−1、表1−2に示す
【0128】
[ウレタン系粘着剤の製造]
(実施例1)
合成例1で得られたポリウレタンポリオール(AX−1)100部、多官能イソシアネート化合物(B−1)5部、第2のポリオール(C−1)1部、酸化防止剤(I−1)1部、および、溶剤として酢酸エチル50部を配合し、ディスパーで攪拌することで、ウレタン系粘着剤を得た。なお、溶剤を除く各材料の配合量は、不揮発分換算値を示す(他の実施例および比較例においても、同様)。用いた材料の種類と配合比を表2−1に示す。
【0129】
(実施例2〜34、比較例1〜5)
実施例2〜34、比較例1〜5の各例においては、用いた材料の種類と配合比を表2−1〜2−3に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタン系粘着剤を得た。
【0130】
[粘着シートの製造と評価]
実施例1〜34、比較例1〜5の各例においては、以下のようにして粘着シートの製造と評価を実施した。
(粘着シートの製造)
基材シートして、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(東レ社製「ルミラーT−60」、厚さ50μm)を用意した。コンマコーター(登録商標)を用いて、基材シートの片面に、得られたウレタン系粘着剤を、塗工速度3m/分で、乾燥後厚み)が12μmになるように、塗工した。次に、形成された塗工層を100℃で2分間乾燥して、粘着層を形成した。この粘着層の上に、厚さ38μmの剥離シート(リンテック社製「スーパーステックSP−PET38」)を貼着して、粘着シートを得た。得られた粘着シートを23℃−50%RHの条件下で1週間養生した後、粘着力、再剥離性(被着体汚染抑制性)、基材密着性、および湾曲性の評価に供した。
【0131】
[評価項目および評価方法]
評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(粘着力)
粘着シートから幅25mm長さ100mmの2枚の試験片を切り出した。2枚の試験片についてそれぞれ、23℃−50%RHの雰囲気下で、剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面にソーダガラス板を貼着し、2kgロールで圧着した。
得られた2枚の積層体のうち一方の積層体は、23℃−50%RHの雰囲気下で24時間放置した(温湿度条件1)。
他方の積層体は、85℃−85%RHのオーブン内に24時間放置した(温湿度条件2)後、オーブンから取り出し、23℃−50%RHの雰囲気下で1時間空冷した。
各積層体について、JIS Z 0237に準拠し、引張試験機を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:20mN/25mm未満、良好。
△:20〜100mN/25mm、実用可。
×:100mN/25mm超、実用不可。
【0132】
(再剥離性(被着体汚染抑制性))
粘着シートから幅70mm長さ100mmの3枚の試験片を切り出した。3枚の試験片についてそれぞれ、23℃−50%RHの雰囲気下で、剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面に苛性ソーダガラス板を貼着し、ラミネータで圧着した。
得られた3枚の積層体をそれぞれ、40℃−90%RH(温湿度条件1)、60℃−90%RH(温湿度条件2)、85℃−85%RH(温湿度条件3)にセットしたオーブン内に72時間放置した。
3枚の積層体をそれぞれ、オーブンから取り出し、23℃−50%RHの雰囲気下で1時間空冷した後、ガラス板から粘着シートを剥離し、再剥離性を評価した。暗室内で粘着シートを貼ってあった側のガラス板の表面にLEDランプ光を照射し、目視観察にて評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:ガラス表面に粘着層成分の付着が一切見られない、優。
○:ガラス表面の1〜2箇所に薄い粘着層成分の付着が見られる、良好。
△:ガラス表面の3箇所に薄い粘着層成分の付着が見られる、実用可。
×:ガラス表面の4箇所以上に薄い粘着層成分の付着が見られる/もしくはガラス表面の1〜2箇所に濃い粘着層成分の付着が見られる、実用不可。
【0133】
(基材密着性)
粘着シートの粘着層に対して、互いに直交する2つの直線方向に対して、それぞれ1mm間隔で11回ハーフカットを行って、1mm四方の100個のマスを形成した。この100マス全体を指で1分間擦った後、目視にて基材シート上に残ったマスの数を数えた。
評価基準は以下の通りである。
◎:残ったマスの数が95〜100個、優。
○:残ったマスの数が80〜95個、良好。
△:残ったマスの数が60〜80個、実用可。
×:残ったマスの数が0〜60個、実用不可。
【0134】
(湾曲性)
粘着シートから幅20mm長さ15mmの試験片を切り出した。23℃−50%RHの雰囲気下で、試験片から剥離シートを剥離し、露出した粘着層の表面を長さ30cm直径60mmφのポリプロピレン(PP)製の丸棒の周囲に貼着し、指で強く圧着した。この際、試験片の幅方向を、丸棒の長さ方向に対して平行方向とした。この試料を23℃−50%RHの雰囲気下に24時間放置した。その後、粘着シートの両端部についてそれぞれ丸棒からの剥離範囲の長さを測定し、剥離範囲の大きい方の端部について、以下の基準にて評価した。
◎:剥離範囲なし/または剥離範囲が1mm未満、優。
○:剥離範囲が1mm以上2mm未満、良好。
△:剥離範囲が2mm以上5mm、実用可。
×:剥離範囲が5mm以上、実用不可。
【0135】
[評価結果]
評価結果を、表3−1〜表3−3に示す。
【0136】
実施例1〜18では、
Mnが300超である1種以上の第1のポリオール(x)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AX)と、
1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)と、
Mnが300以下である1種以上の第2のポリオール(C)とを含む、ウレタン系粘着剤を製造した。
【0137】
実施例19〜34では、
Mnが300超である1種以上の第1のポリオール(x)とMnが300以下である1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AY)と、
1種以上の多官能イソシアネート化合物(B)とを含む、ウレタン系粘着剤を製造した。
【0138】
実施例1〜34で得られた粘着シートはいずれも、すべての評価項目において、結果が良好または比較的良好であった。
【0139】
特に、1種以上のポリウレタンポリオール(AX)に対してMnが300以下である1種以上の第2のポリオール(C)を添加し、1種以上のポリウレタンポリオール(AX)の量を100質量部としたとき、1種以上の第2のポリオール(C)の量を0.1〜10質量部とした実施例1〜3、5〜10、12〜18では、基材密着性が優良であった。
【0140】
特に、Mnが300超である1種以上の第1のポリオール(x)と数平均分子量が300以下である1種以上の第2のポリオール(C)と1種以上の有機ポリイソシアネート(y)との共重合反応生成物である1種以上のポリウレタンポリオール(AY)を用いた実施例19〜34で得られた粘着シートは、湾曲性が優良であった。
【0141】
これに対して、ポリウレタンポリオール(A)の原料ポリオールとして第2のポリオール(C)を用いず、かつ、ポリウレタンポリオール(A)および多官能イソシアネート化合物(B)に対して第2のポリオール(C)を添加しなかった比較例1〜5で得られた粘着シートはいずれも、再剥離性(被着体汚染抑制性)の評価の温湿度条件3(85℃−85%RH)、基材密着性、および湾曲性の評価項目において、結果が不良であった。
【0142】
【表1-1】
【0143】
【表1-2】
【0144】
【表2-1】
【0145】
【表2-2】
【0146】
【表2-3】
【0147】
【表3-1】
【0148】
【表3-2】
【0149】
【表3-3】
【0150】
【表4】
【0151】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。