(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記ノズルが洗浄水を吐水している状態において、前記操作部の操作に基づいて前記ノズルを移動させて所定の位置で停止させる位置調整モードを実行可能であり、
前記第1閾値は、
前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される前記電力量と、
前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される前記電力量と、
前記位置調整モードを少なくとも所定時間実行する際に消費される電力量と、
の合計より大きい値に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
前記制御部は、前記位置調整モードの実行中に前記電池の前記残量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になった場合に、前記操作部の操作に基づくことなく前記モータを停止させて前記ノズルの移動を強制的に停止させる位置調整強制停止を実行し、
前記第2閾値は、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される前記電力量よりも大きい値に設定されていることを特徴とする請求項3記載の衛生洗浄装置。
前記制御部は、前記流量調整モードの実行中に前記電池の前記残量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下になった場合に、前記操作部の操作に基づくことなく前記流量調整弁の作動を停止させて前記流量調整弁の作動を強制的に禁止する流量調整強制停止を実行し、
前記第3閾値は、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される前記電力量よりも大きい値に設定されていることを特徴とする請求項5記載の衛生洗浄装置。
前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ノズルの移動が停止するまでの前記所定時間は、変更可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
前記制御部は、前記ムーブ洗浄自動停止を実行する際に、前記ノズルを予め設定された所定位置に移動させてから前記ノズルの前記移動を停止させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AC電源(交流電源)に接続されない衛生洗浄装置において、ムーブ洗浄(洗浄水を吐水するノズルの運動)のための駆動源として、電池を用いる方法が考えられる。この電池は、例えば、ノズルへの洗浄水の供給を制御するラッチ式の電磁弁を駆動するためにも用いられる。この場合、ムーブ洗浄中に電池残量がなくなると、電磁弁を駆動することができなくなり、ノズルへの洗浄水の供給を停止することができなくなる恐れがある。すなわち、ノズルからの洗浄水の吐水を停止することが出来なくなる、という課題が生じる。
【0007】
これに対して、ムーブ洗浄を開始する前の電池残量を検知して、電池残量が所定値未満である場合には、ムーブ洗浄の実行を禁止する方法が考えられる。しかし、ムーブ洗浄が実行される時間の長さは、局部の汚れ具合などによって大きく変わる。このため、1回のムーブ洗浄によって消費される電力量が一定にならないという特有の事情がある。すなわち、電池残量が所定値以上の状態でムーブ洗浄を開始したとしても、ムーブ洗浄が想定以上に長く実行された場合には、ムーブ洗浄中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水を停止することが出来なくなる、という恐れがある。
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、AC電源と接続されない電池駆動式の衛生洗浄装置であって、ムーブ洗浄中に電池残量がなくなり洗浄水の吐水を停止できなくなるという事態を確実に防止できる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、AC電源と接続されずに用いられる電池駆動式の衛生洗浄装置であって、便座と、前記便座に着座した使用者の局部に向けて洗浄水を吐水するノズルと
、電池を収容する電池収容部と、前記電池によって駆動され、前記ノズルからの洗浄水の吐水と止水とを切り替えるラッチ式の電磁弁と、前記電池によって駆動され、前記ノズルを移動させるモータと、前記電池によって駆動され、前記電磁弁及び前記モータを制御する制御部であって、前記ノズルを移動させながら洗浄水を吐水させるムーブ洗浄モードを実行可能である制御部と、前記電池の残量を検知する電池残量検知手段と、前記ノズルからの洗浄水の吐水及び止水と、前記ムーブ洗浄モードの開始及び停止と、を操作するための操作部と、を備え、前記制御部は、前記ムーブ洗浄モードの実行前に前記電池の前記残量が第1閾値以下の場合に、前記操作部で前記ムーブ洗浄モードを開始させる操作が行われても前記ムーブ洗浄モードの実行を禁止するムーブ洗浄禁止と、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから所定時間経過後に、前記操作部の操作に基づくことなく前記モータを停止させて前記ノズルの移動を自動的に停止させるムーブ洗浄自動停止と、を実行可能であり、前記第1閾値は、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電力量と、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電力量と、の合計よりも大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0010】
第1の発明に係る衛生洗浄装置によれば、電池によって電磁弁が駆動されることにより、AC電源のないトイレに設置される衛生洗浄装置であっても、使用者は、手動でバルブを開閉せずに、洗浄水の吐水及び止水を切り替えることができる。これにより、操作性を向上させることができる。また、電磁弁がラッチ式であるため、電磁弁は、開閉の切替時にのみ電力を消費する。このため電池の寿命を延ばすことができる。
また、電池の電力によって実行可能なムーブ洗浄モードを設けたことにより、衛生洗浄装置がAC電源のないトイレに設置された場合であっても、マッサージ効果のあるムーブ洗浄を行うことができる。
また、制御部がムーブ洗浄禁止及びムーブ洗浄自動停止を実行することにより、ムーブ洗浄中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1閾値は、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電力量と、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電力量と、前記電磁弁を複数回開閉する際に消費される電力量と、の合計よりも大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0012】
第2の発明に係る衛生洗浄装置によれば、制御部は、ムーブ洗浄モードの実行を禁止した後も、基本機能である通常洗浄モードを複数回実行できるため、電池の残量が少なくなり電池交換時期が近いことを早期に且つ確実に使用者に認識させることができる。これにより使用者が電池を交換するまでに期間を要する場合であっても、その期間、使用者は基本機能である通常洗浄モードを使用することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制御部は、前記ノズルが洗浄水を吐水している状態において、前記操作部の操作に基づいて前記ノズルを移動させて所定の位置で停止させる位置調整モードを実行可能であり、前記第1閾値は、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電力量と、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電力量と、前記位置調整モードを少なくとも所定時間実行する際に消費される電力量と、の合計より大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
第3の発明に係る衛生洗浄装置によれば、ムーブ洗浄禁止後も使用者は位置調整モードにより好みの位置に吐水を変更できるため、ムーブ洗浄禁止後の通常洗浄モードの洗浄性が低下することを抑制できる。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、前記制御部は、前記位置調整モードの実行中に前記電池の前記残量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下になった場合に、前記操作部の操作に基づくことなく前記モータを停止させて前記ノズルの移動を強制的に停止させる位置調整強制停止を実行し、前記第2閾値は、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される前記電力量よりも大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0016】
第4の発明に係る衛生洗浄装置によれば、位置調整モードの実行中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0017】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記電池によって駆動され、前記ノズルに供給される洗浄水の流量を変更する流量調整弁をさらに備え、前記制御部は、前記ノズルが洗浄水を吐水している状態において、前記操作部の操作に基づいて前記ノズルから吐水される洗浄水の流量を変更する流量調整モードを実行可能であり、前記第1閾値は、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電力量と、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電力量と、前記流量調整モードを少なくとも所定時間実行する際に消費される電力量と、の合計より大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0018】
第5の発明に係る衛生洗浄装置によれば、ムーブ洗浄禁止後も使用者は流量調整モードにより好みの流量に吐水を変更できるため、ムーブ洗浄禁止後の通常洗浄モードの洗浄性が低下することを抑制できる。
【0019】
第6の発明は、第5の発明において、前記制御部は、前記流量調整モードの実行中に前記電池の前記残量が前記第1閾値よりも小さい第3閾値以下になった場合に、前記操作部の操作に基づくことなく前記流量調整弁の作動を停止させて前記流量調整弁の作動を強制的に禁止する流量調整強制停止を実行し、前記第3閾値は、前記電磁弁が開状態から閉状態とされ前記ノズルからの洗浄水の吐水が停止される際に消費される前記電力量よりも大きい値に設定されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0020】
第6の発明に係る衛生洗浄装置によれば、流量調整モードの実行中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0021】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ノズルの移動が停止するまでの前記所定時間は、変更可能であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0022】
第7の発明に係る衛生洗浄装置によれば、使用者は、ムーブ洗浄モードが自動停止するまでの時間(ムーブ時間)を状況に応じて最適に設定できる。例えば、電池交換を頻繁に行うことができる場合にはムーブ時間を長くすることで洗浄性の向上を優先し、電池交換を頻繁に行うことができない場合にはムーブ時間を短くすることで電池寿命の向上を優先することができる。
【0023】
第8の発明は、第7の発明において、前記制御部は、前記ムーブ洗浄モードの実行前の前記電池の前記残量が前記第
1閾値より大きい値である第5の閾値より大きいときに、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ノズルの移動が停止するまでの前記所定時間を第1の時間とし、前記ムーブ洗浄モードの実行前の前記電池の前記残量が前記第5の閾値以下であるときに、前記ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから前記ノズルの移動が停止するまでの前記所定時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とすることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0024】
第8の発明に係る衛生洗浄装置によれば、制御部は、電池の残量が多いときにはムーブ時間を長くすることで洗浄性を向上し、電池の残量が少ないときにはムーブ時間を短くすることで電池寿命を向上させる。これにより、洗浄性の向上と電池寿命の向上とを両立できる。
【0025】
第9の発明は、第1〜第8のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記ムーブ洗浄自動停止を実行する際に、前記ノズルを予め設定された所定位置に移動させてから前記ノズルの前記移動を停止させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0026】
第9の発明に係る衛生洗浄装置によれば、ムーブ洗浄自動停止後に最適な位置で吐水を継続できるため、洗浄性が低下することを防止できる。
【0027】
第10の発明は、第1〜第9のいずれか1つの発明において、前記電池の前記残量が前記第1閾値以下となったことを報知する報知部をさらに備え、前記報知部は、前記ムーブ洗浄禁止が実行されると、所定時間作動した後に停止することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0028】
第10の発明に係る衛生洗浄装置によれば、ムーブ洗浄が禁止されたことを使用者が故障と誤解することを防止できる。また、報知部の動作が停止することにより、報知部における電力消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の態様によれば、AC電源と接続されない電池駆動式の衛生洗浄装置であって、ムーブ洗浄中に電池残量がなくなり洗浄水の吐水を停止できなくなるという事態を確実に防止できる衛生洗浄装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0032】
図1は、実施形態に係る衛生洗浄便座が設けられたトイレ装置を例示する斜視図である。
図1に示すように、トイレ装置200は、衛生洗浄便座(衛生洗浄装置)100と、便器150とを有する。衛生洗浄便座100は、便器150の上に設けられている。便器150は、例えば洋式腰掛大便器であり、使用者の排泄物を受けるボウル151を有する。
【0033】
衛生洗浄便座100は、局部洗浄ユニット101を有する機能部130と、ケーシング201と、便座202と、便蓋203と、を有する。
局部洗浄ユニット101は、ノズル(水圧式洗浄ノズル10)を有し、ケーシング201の内部に収容される。水圧式洗浄ノズル10は、例えばその先端部に吐水口10aを有し、使用時には
図1に示すようにボウル151へ進出して吐水口10aから、便座202に着座した使用者の局部(例えば「おしり」や女性局部)に向けて洗浄水を吐水する。便座202は、ケーシング201に対して回動自在に軸支されている。便蓋203は、ケーシング201に対して回動自在に軸支され、便座202を覆うことができる。
【0034】
実施形態の説明において、便座202に腰かけた使用者から見て前方を「前方」とし、前方と反対の方向を「後方」という。
【0035】
図2は、実施形態に係る衛生洗浄便座を例示するブロック図である。
図2に示すように、実施形態に係る衛生洗浄便座100は、機能部130と、電池収容部60と、を有する。機能部130及び電池収容部60は、例えば
図1に示したケーシング201の内部に収容される。
【0036】
機能部130は、電磁弁131と、流量調整弁(電動流量調整弁132)と、局部洗浄ユニット101と、制御部70と、電池残量検知手段71と、を有する。
局部洗浄ユニット101の水圧式洗浄ノズル10には、給水源(水道管など)204から水が供給される。水圧式洗浄ノズル10と給水源204との間の流路には、止水栓205、電磁弁131、電動流量調整弁132が、上流側からこの順で配置されている。
【0037】
電磁弁131は、水圧式洗浄ノズル10への流路を開閉し、水圧式洗浄ノズル10への給止水を制御する。これにより、電磁弁131は、水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水と止水とを切り替える。電磁弁131には、ラッチ式の電磁弁が用いられる。ラッチ式電磁弁は、ソレノイドコイルへの通電によりプランジャを移動させて流路の開/閉状態を切替える。流路の開状態または閉状態が維持されているときは、電磁弁は、永久磁石の磁力またはバネの弾性力を利用してプランジャを保持する。一方、開状態と閉状態との切替え時(駆動時)には、電磁弁は、通電されプランジャを移動させる。そのため、電磁弁には、流路の開/閉状態の切替え時にのみ電力が供給されればよい。
電動流量調整弁132は、水圧式洗浄ノズル10への流路の開き具合を調整することで、水圧式洗浄ノズル10に供給される洗浄水の流量を調整(変更)する。電動流量調整弁132には、例えばモータを有するバルブが用いられる。
【0038】
また、局部洗浄ユニット101は、前述の水圧式洗浄ノズル10に加え、洗浄ノズル往復運動手段20を有する。洗浄ノズル往復運動手段20は、水圧式洗浄ノズル10と連結されており、水圧式洗浄ノズル10を往復回動させる。洗浄ノズル往復運動手段20は、水圧式洗浄ノズル10を移動させるモータ21を有する。この例では、モータ21は、水圧式洗浄ノズル10を上下方向に往復回動させる。モータ21は、例えばステッピングモータまたはサーボモータである。洗浄ノズル往復運動手段20(モータ21)による往復運動については、後述する。
【0039】
制御部70は、電磁弁131、電動流量調整弁132及びモータ21と電気的に接続されている。制御部70は、例えばIC素子などを含む制御回路である。制御部70は、信号を送信することで、電磁弁131、電動流量調整弁132及びモータ21の動作を制御する。
また、制御部70は、洗浄切替手段72、位置調整強制停止手段74、流量調整強制停止手段75、ムーブ洗浄禁止手段76、ムーブ自動停止手段77及びムーブ時間変更手段78を含む。これらについては後述する。
【0040】
電池収容部60は、直流電力を生成し、その直流電力によって機能部130を駆動させる電池61を収容する。電磁弁131、電動流量調整弁132、モータ21及び制御部70は、電池61から供給される電力によって駆動される。すなわち、実施形態に係る衛生洗浄便座100は、AC電源と接続されずに用いられる電池駆動式の装置である。電池61には、例えば、乾電池や充電式電池(二次電池、キャパシタ等)が用いられる。電池収容部60は例えば電池ケース(電池ボックス)であり、電池61は電池収容部60に対して着脱可能(交換可能)である。
【0041】
衛生洗浄便座100は、機能部130の動作(ノズルからの洗浄水の吐水及び止水や、後述するムーブ洗浄モードの開始及び停止など)を使用者が操作するための操作部80を有する。操作部80は、複数のボタン(止ボタン81、おしり洗浄ボタン82、ビデボタン83、ノズルムーブボタン84、位置調整ボタン85、流量調整ボタン86)を有する。使用者がこれらのボタンのいずれかを押すと、押されたボタンに対応する信号が制御部70に送信される。制御部70は、この信号に基づいて機能部130を制御する。操作部80と制御部70と間の通信は、有線通信であってもよいし、電波又は赤外線による無線通信であってもよい。操作部80は、トイレルームの壁面等に設置されるリモコンであってもよいし、衛生洗浄便座100のケーシング201に取り付けられてもよい。
【0042】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットを例示する斜視図である。
水圧式洗浄ノズル10は、吐水口10aが設けられたノズル本体11と、ノズル本体11を収納するシリンダ12と、を有する。シリンダ12は、その後方に設けられた流入口12aを有する。流入口12aには、ホースなどが接続され、給水源204から供給される水は、流入口12aから水圧式洗浄ノズル10に流入する。
【0043】
局部洗浄ユニット101は、水圧式洗浄ノズル10を支持する支持部22を有する。支持部22は、衛生洗浄便座100のケーシング201に対して直接的又は間接的に固定されている。水圧式洗浄ノズル10は、支持部22によって支持されており、シリンダ12に設けられた回動軸Ax1を中心に回動自在である。
【0044】
モータ21は、シリンダ12と連結されている。モータ21の回転(駆動力)がシリンダ12に伝達されることにより、水圧式洗浄ノズル10は、矢印A1のように回動軸Ax1を中心に回動することができる。なお、回動軸Ax1は、ノズル本体11が直線状に延びる方向D1に対して垂直かつ水平な方向D2に沿って延びる。例えば、回動軸Ax1は、水平な方向D2と平行である。
【0045】
図4(a)〜
図4(c)は、水圧式洗浄ノズルの動作を例示する断面図である。
図4(a)は、水圧式洗浄ノズル10の不使用時の状態(待機状態)を表す。このとき、水圧式洗浄ノズル10には、水が供給されていない。
図4(a)に示すように、待機状態においては、ノズル本体11は、シリンダ12に収納されている。
【0046】
ノズル本体11は、シリンダ12の内部に設けられたばね13によって、後方に付勢されている。また、ノズル本体11は、筒状部11aと、その後端に設けられた閉止部11eを有する。待機状態において、筒状部11a内の流路11bは、閉止部11eによって閉止されている。
【0047】
図4(b)は、流入口12aに水が流入し始めたときの状態を表す。水は、シリンダ12内に流入し、ノズル本体11に向けて供給される。その水圧により、
図4(b)に示すようにノズル本体11は、シリンダ12から前方(便器150のボウル151内)に進出する。このとき、筒状部11aの流路11bは、閉止部11eによって閉止されたままである。
【0048】
図4(c)は、流入口12aに水がさらに流入し、ノズル本体11がさらに前方に進出した状態(吐水状態)を表す。このとき、筒状部11aと閉止部11eとの間に隙間が生じ、水は流路11b内に流れ込む。これにより、筒状部11aの先端付近に設けられた吐水口10aは、供給された水を洗浄水Wとして吐水する。流入口12aからの水の流入が停止すると、水圧式洗浄ノズル10内の水圧が下がり、ばね13の付勢力が支配的となり
図4(a)の待機状態に戻る。
【0049】
図5(a)〜
図5(c)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の局部洗浄ユニットの動作を例示する側面図である。これらの図は、吐水状態における水圧式洗浄ノズル10を表す。 制御部70は、局部洗浄ユニット101にムーブ洗浄を実行させるムーブ洗浄モードと、固定洗浄を実行させる固定洗浄モードと、を有する。ムーブ洗浄とは、水圧式洗浄ノズル10を移動させながら、水圧式洗浄ノズル10に洗浄水を吐水させることをいう。固定洗浄モードとは、水圧式洗浄ノズル10の位置を固定した状態で、水圧式洗浄ノズル10の洗浄水を吐水させることをいう。
また、制御部70(洗浄切替手段72)は、モータ21を制御して、ムーブ洗浄と固定洗浄とを切り換える。
【0050】
この例では、ムーブ洗浄モードにおいて制御部70は、モータ21(洗浄ノズル往復運動手段20)によって水圧式洗浄ノズル10を基準位置Pを起点として所定角度往復運動させつつ、水圧式洗浄ノズル10に人体局部へ洗浄水を吐水させる。
【0051】
より具体的には、制御部70は、モータ21を回転(正回転)させることにより、吐水口10aを下方へ動かす。これにより、水圧式洗浄ノズル10の位置(吐水口10aの位置)を
図5(a)に示す下側位置PLとする。その後、制御部70は、モータ21を逆回転させることにより、吐水口10aを上方へ動かす。これにより、水圧式洗浄ノズル10の位置(吐水口10aの位置)は、
図5(b)に示す基準位置Pを経て、
図5(c)に示す上側位置PUとなる。その後、制御部70は、モータ21を正回転させ、再び水圧式洗浄ノズル10の位置を下側位置PLとする。このように、モータ21は正回転と逆回転とを交互に繰り返し、水圧式洗浄ノズル10を上側位置PUと下側位置PLとの間で上下方向に往復回動させる。なお、実施形態の説明では、
図5における時計回りを正回転、反時計回りを逆回転とする。
【0052】
この往復回動によって、洗浄水の吐水方向が変化する。例えば、水圧式洗浄ノズル10が下側位置PLにあるときは、水圧式洗浄ノズル10が上側位置PUにあるときに比べて、洗浄水は前方に向けて吐水される。
【0053】
図5(b)に示す状態における水圧式洗浄ノズル10の角度を洗浄標準角度(θ)とすると、
図5(a)に示す状態における水圧式洗浄ノズル10の角度は例えばθ+Δγであり、
図5(c)に示す状態における水圧式洗浄ノズル10の角度は例えばθ−Δγである。水圧式洗浄ノズル10の角度が洗浄標準角度(θ)であるときの水圧式洗浄ノズル10の位置を基準位置Pと呼ぶ。水圧式洗浄ノズル10は、基準位置Pを中心に、振幅角(Δγ)で往復回動する。なお、水圧式洗浄ノズル10の角度とは、水圧式洗浄ノズル10の吐水口10a側が水平面Hから鉛直下方に向かって回転した角度である。Δγは、例えば0.5°以上5°以下程度である。
【0054】
一方、固定洗浄において制御部70は、水圧式洗浄ノズル10の位置が固定された状態で、水圧式洗浄ノズル10に人体局部へ局部洗浄水を吐水させる。例えば、固定洗浄は、基準位置Pにおいて行われる。
【0055】
また、基準位置Pは洗浄対象によって変わる。例えば、基準位置Pは、おしりの洗浄に用いるおしり洗浄用基準位置PA、または、女性局部の洗浄(ビデ)に用いるビデ用基準位置PB(女性局部洗浄用基準位置)である。例えば、使用者がおしり洗浄ボタン82を押すと、制御部70が標準洗浄角度(θ)をおしり洗浄標準角度(φA)に設定することにより、基準位置Pはおしり洗浄用基準位置PAとなる。使用者がビデボタン83を押すと、制御部70が標準洗浄角度(θ)をビデ標準角度(φB)に設定することにより、基準位置Pはビデ用基準位置PBとなる。また、基準位置Pは、操作部80の位置調整ボタン85により、使用者が適宜調整可能であってもよい。
【0056】
また、制御部70は、水圧式洗浄ノズル10が洗浄水を吐水している状態において、使用者による操作部80の操作に基づいて水圧式洗浄ノズル10を移動させて、所定の位置P’で停止させる位置調整モードを有する。例えば、位置調整ボタン85が押されるたびに、制御部70は、モータ21を回転させて、
図5(b)に示すように水圧式洗浄ノズル10を所定の角度(+Δθ又は−Δθ)だけ回転させる。
【0057】
さらに、制御部70は、水圧式洗浄ノズル10が洗浄水を吐水している状態において、使用者による操作部80の操作に基づいて水圧式洗浄ノズル10から吐水される洗浄水の流量を変更する流量調整モードを有する。例えば、流量調整ボタン86が押されるたびに、制御部70は、電動流量調整弁132のモータを制御して、水圧式洗浄ノズル10に供給される水の流量を所定量だけ増加又は減少させる。この所定量は、任意であり、使用者の使い勝手を考慮して適宜定められる。
【0058】
なお、上記では、水圧式洗浄ノズル10が上下方向に往復回動する場合を例に挙げたが、水圧式洗浄ノズル10の移動は往復回動に限らない。例えば、ノズルが直線状に延びる方向に沿って、ノズル本体11が直線的に動く方式(直動式)を採用してもよい。また、洗浄水を吐水するノズルは、水圧式に限らず、例えば電池から供給される電力によって進退してもよい。
【0059】
以上説明した衛生洗浄便座100によれば、電池61によって電磁弁131が駆動されることにより、AC電源がない場合であっても、使用者は手動でバルブを開閉せずに洗浄水の吐水及び止水を切り替えることができる。これにより、操作性を向上させることができる。また、電磁弁131がラッチ式であるため、電磁弁131は、開閉の切替時にのみ電力を消費するので、電池61の寿命を延ばすことができる。また、電池61の電力によって実行可能なムーブ洗浄モードを設けたことにより、AC電源のない場合であっても、マッサージ効果のあるムーブ洗浄を行うことができる。
【0060】
ところで、一般に電池には寿命があり、電池61が供給できる電力の残量、いわゆる電池残量は、使用期間の経過とともに減少する。このため、例えばムーブ洗浄中に電池の残量がなくなると、ラッチ式電磁弁を駆動することができなくなり、ノズルからの洗浄水の吐水を停止することが出来なくなる恐れがある。これに対して、実施形態における制御部70は、電池61の残量に応じた制御を行うことで、洗浄水の吐水が停止できなくなることを防止する。
【0061】
電池61の残量に基づく制御について、
図6(a)及び
図6(b)を参照して説明する。
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係る衛生洗浄便座の動作を例示するグラフ図及び表である。
図6(a)の縦軸は電池61の残量を表し、横軸は使用期間(経過時間)を表す。電池61の残量に関して、電池交換直後の残量よりも小さい第1〜第5閾値Vt1〜Vt5が設けられている。
【0062】
期間P1において電池61の残量は、第5閾値Vt5より大きい。
期間P2において電池61の残量は、第1閾値Vt1より大きく第5閾値Vt5以下である。
期間P3において電池61の残量は、第2閾値Vt2または第3閾値Vt3より大きく第1閾値Vt1以下である。
期間P4において電池61の残量は、第4閾値Vt4より大きく、第2閾値Vt2または第3閾値Vt3以下である。
期間P5において電池61の残量は、第4閾値Vt4以下である。
なお、この例では、第2閾値Vt2及び第3閾値Vt3は、互いに同じ値であるが、異なる値であってもよい。
【0063】
また、電池61の残量は、電池残量検知手段71によって検知されている。例えば、電池残量検知手段71は、電気回路を有し、電池61の出力電圧によって電池61の残量を検知することができる。この場合、第1〜第5閾値Vt1〜Vt5に対応して、電池61の出力電圧に関する5つの閾値が設けられ、制御部70は電池61の出力電圧に応じた制御を行う。また、制御部70は、電池61の残量(出力電圧値)を、例えば常時、取得する。電池残量検知手段71は、制御部70の一部であってもよいし、制御部70とは別に設けられてもよい。電池61の出力電圧を測定する手段(電圧計など)は、電池残量検知手段71に含まれていてもよいし、別途設けられていてもよい。
【0064】
制御部70は、取得した電池61の残量の情報に応じて、機能部130の機能を制限する。
図6(b)は、各期間において機能部130が実施可能な機能を示す。「〇」は実施可能であることを表し、「×」は、停止又は禁止を表す。
【0065】
例えば、ムーブ洗浄モードの実行前に電池61の残量が第1閾値Vt1以下である場合がある。すなわち、ムーブ洗浄の実行前に電池の残量が期間P3、P4及びP5のいずれかの状態である場合がある。このとき、制御部70(ムーブ洗浄禁止手段76)は、ムーブ洗浄禁止を実行する。すなわち、制御部70は、操作部80でムーブ洗浄モードを開始させる操作が行われても、ムーブ洗浄モードを禁止する。
【0066】
また、ムーブ洗浄モードが開始された場合、制御部70(ムーブ自動停止手段77)は、ムーブ洗浄自動停止を実行する。すなわち、制御部70は、ムーブ洗浄モードの実行が開始されてから所定時間(以下「ムーブ時間」という場合がある)経過後に、操作部80の操作に基づくことなくモータ21を停止させて水圧式洗浄ノズル10の移動を自動的に停止させる。
【0067】
なお、第1閾値Vt1は、ムーブ洗浄モードの実行が開始されてからムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電池61の電力量と、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池61の電力量と、の合計よりも大きい値に設定されている。
【0068】
このように、実施形態においては、制御部70がムーブ洗浄自動停止を実行することで、1回のムーブ洗浄において消費される電力の最大量を限ることができる。その上で、制御部70は、電池61の残量が第1閾値以下の場合にはムーブ洗浄禁止を実行する。すなわち、ムーブ洗浄を行うと電池61の残量が吐水を停止できる電力量よりも少なくなる恐れがある場合、制御部70はムーブ洗浄モードを実行しない。これにより、ムーブ洗浄中に電池61の残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0069】
また、第1閾値Vt1は、ムーブ洗浄モードの実行が開始されてからムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電池61の電力量と、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池61電力量と、電磁弁131を複数回開閉する際に消費される電池61の電力量と、の合計よりも大きい値に設定されていてもよい。
【0070】
電磁弁131を複数回開閉する際に消費される電池61の電力量とは、電磁弁131を開く動作及び閉じる動作のそれぞれを少なくとも2回以上行うことができる電力量である。これにより、制御部70は、ムーブ洗浄モードの実行を禁止した後も、基本機能である固定洗浄モード(通常洗浄モード)を複数回実行できる。また、第1閾値Vt1をこのような値に設定することで、ムーブ洗浄モードが禁止される時期が早くなるため、電池61の残量が少なくなり電池交換時期が近いことを早期に且つ確実に使用者に認識させることができる。使用者が電池を交換するまでに期間を要する場合であっても、その期間、使用者は基本機能である固定洗浄モードを使用することができる。
【0071】
また、
図6(b)に示すように、期間P3において、制御部70は、ムーブ洗浄モードを実行しないが、位置調整モードを実行することができる。
この場合、第1閾値Vt1は、ムーブ洗浄モードの実行が開始されてからムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電池61の電力量と、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池61の電力量と、前記位置調整モードを少なくとも所定時間実行する際に消費される電池61の電力量と、の合計より大きい値に設定されている。なお、この所定時間は、例えば水圧式洗浄ノズル10の角度を0.1〜0.5度ずつの範囲で100回程度調整可能な長さであり、例えば、1秒以上5秒以下である。1回の洗浄につき、5回程度の、位置調整を行ったとしても、20回は位置調整を実施しながらの固定洗浄が可能である。
【0072】
すなわち、制御部70は、電池61の残量が第1閾値Vt1以下となると、吐水の停止及び水圧式洗浄ノズル10の位置調整が可能な電力が電池61に残った状態で、ムーブ洗浄禁止を実行する。これにより、ムーブ洗浄禁止後も位置調整モードにより、使用者は好みの位置に吐水を変更できるため、ムーブ洗浄禁止後の固定洗浄モードの洗浄性が低下することを抑制できる。さらに、複数回分の位置調整可能な電力を残しておくことで、複数回、位置調整を実施しながらの固定洗浄が可能であり、使用者は余裕を持って電池交換を行うことができる。
【0073】
また、例えば、位置調整モードの実行中に電池61の残量が第2閾値Vt2以下となる場合がある。すなわち、位置調整モードの実行中に電池残量が、期間P3の状態から期間P4の状態となる場合がある。このとき、制御部70(位置調整強制停止手段74)は、使用者による操作部80の操作に基づくことなく、モータ21を停止させて水圧式洗浄ノズル10の移動を強制的に停止させる位置調整強制停止を実行する。
【0074】
なお、第2閾値Vt2は、第1閾値Vt1よりも小さく、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池の電力量よりも大きい値に設定されている。
【0075】
すなわち、制御部70は、電池61の残量が第2閾値Vt2以下となると、吐水の停止が可能な電力が電池61に残った状態で、位置調整モードを強制的に停止する。これにより、位置調整モードモードの実行中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0076】
また、期間P3において、制御部70は、流量調整モードを実行することができる。この場合、第1閾値Vt1は、ムーブ洗浄モードの実行が開始されてからムーブ洗浄自動停止の実行が完了するまでに消費される電池61の電力量と、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池61の電力量と、流量調整モードを少なくとも所定時間実行する際に消費される電池61の電力量と、の合計より大きい値に設定されている。なお、この所定時間は、例えば流量の変更を少なくとも40回以上実行可能な長さであり、例えば10秒以上20秒以下である。1回の洗浄につき、2回程度、流量変更を実施したとしても、20回は流量調整を実施しながらの固定洗浄が可能である。
【0077】
すなわち、制御部70は、電池61の残量が第1閾値Vt1以下となると、吐水の停止及び洗浄水の流量調整が可能な電力が電池61に残った状態で、ムーブ洗浄禁止を実行する。これにより、ムーブ洗浄禁止後でも、使用者は流量調整モードにより好みの流量に吐水を変更できるため、ムーブ洗浄禁止後の固定洗浄モードの洗浄性が低下することを抑制できる。さらに、複数回分の流量調整可能な電力を残しておくことで、複数回、位置調整を実施しながらの固定洗浄が可能であり、使用者は余裕を持って電池交換を行うことができる。
【0078】
また、例えば、流量調整モードの実行中に電池61の残量が第3閾値Vt3以下となる場合がある。すなわち、流量調整モードの実行中に電池残量が、期間P3の状態から期間P4の状態となる場合がある。このとき、制御部70(流量調整強制停止手段75)は、使用者による操作部80の操作に基づくことなく、電動流量調整弁132の作動を停止させて電動流量調整弁132の作動を強制的に禁止する流量調整強制停止を実行する。
【0079】
なお、第3閾値Vt3は、第1閾値Vt1よりも小さく、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池の電力量よりも大きい値に設定されている。
【0080】
すなわち、制御部70は、電池61の残量が第3閾値Vt3以下となると、吐水の停止が可能な電力が電池61に残った状態で、流量調整モードを強制的に停止する。これにより、流量調整モードの実行中に電池残量がなくなり、洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0081】
また、水圧式洗浄ノズル10が移動せずに洗浄水を吐水している状態において、電池61の残量が第4閾値Vt4以下となる場合がある。すなわち、例えば固定洗浄時に電池残量が期間P4の状態から期間P5の状態となる場合がある。このとき、制御部70は、操作部80からの操作に基づくことなく、電磁弁131を閉状態にして水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水を強制的に停止させる強制止水を実行する。
【0082】
なお、第4閾値Vt4は、第1〜第3閾値Vt1〜Vt3よりも小さく、電磁弁131が開状態から閉状態とされ水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が停止される際に消費される電池61の電力量よりも大きい値に設定されている。
【0083】
モータ21や電磁弁131電動流量調整弁132などが電池61によって駆動されていない場合でも、制御部70などにおいては僅かながら電池61の電力が消費され続けている。これに対して、実施形態においては、吐水状態において電池61の残量が第4閾値Vt4以下になると、洗浄の吐水を停止できる電力が電池61に残っているうちに、水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水が強制的に停止する。これにより、洗浄水の吐水中に電池残量がなくなり、ノズルからの洗浄水の吐水が停止できなくなる事態を確実に防止することができる。
【0084】
また、ムーブ洗浄自動停止におけるムーブ時間(ムーブ洗浄モードの実行が開始されてからノズルの移動が停止するまでの所定時間)の長さは、変更可能であってもよい。例えば、使用者が操作部80などを用いて制御部70に設定変更の信号を送ると、制御部70(ムーブ時間変更手段78)は、その信号に基づいてムーブ時間を変更する。これにより、使用者は、ムーブ時間を状況に応じて最適に設定することができる。例えば、電池交換を頻繁に行うことができる場合にはムーブ時間を長くすることで洗浄性の向上を優先し、電池交換を頻繁に行うことができない場合にはムーブ時間を短くすることで電池寿命の向上を優先することができる。
【0085】
また、制御部70は、電池61の残量に応じてムーブ時間を変更してもよい。例えば、期間P1のように、電池61の残量が第5閾値Vt5よりも大きい値(第1の値)である場合には、制御部70は、ムーブ時間を比較的長い時間(第1の時間)とする。一方、期間P2のように、電池61の残量が第5閾値Vt5以下の値(第1の値よりも小さい第2の値)である場合には、制御部70は、ムーブ時間を比較的短い時間(第1の時間よりも短い第2の時間)とする。これにより、制御部70は、電池61の残量が多いときにはムーブ時間を長くすることで洗浄性を向上させ、電池61の残量が少ないときにはムーブ時間を短くすることで電池寿命を向上させる。したがって、洗浄性の向上と電池寿命の向上とを両立させることができる。
【0086】
なお、ムーブ時間(第1の時間、第2の時間)の長さは、任意であり、使用者の使い勝手などを考慮して適宜定められ、例えば20秒以上60秒以下程度である。
【0087】
図7を参照して、実施形態に係る衛生洗浄便座100の動作の具体例について、さらに説明する。
図7は、実施形態に係る衛生洗浄便座の動作を例示するフローチャートである。
このフローチャートは、水圧式洗浄ノズル10が洗浄水を吐水している吐水状態における動作を表している。
例えば、使用者がおしり洗浄ボタン82又はビデボタン83を押すと、洗浄開始信号が制御部70に送られる。制御部70は、この信号に基づいて、電磁弁131を開く。また、制御部70は、水圧式洗浄ノズル10の位置を基準位置Pとする。これにより、固定洗浄が実行されている(ステップS101)。
【0088】
固定洗浄の実行中に、電池61の残量が第4閾値Vt4以下となった場合(ステップS102:YES)、制御部70は、強制止水を実行する。すなわち制御部70は、電磁弁131を閉状態とする(ステップS103)。
【0089】
また、衛生洗浄便座100は、報知部87(
図2を参照)を有する。報知部87は、電池61の残量が第4閾値Vt4以下となり、強制止水が実行されたことを使用者に報知する。この報知には、音による報知や光による報知など任意の手段を用いることができる。報知部87は、例えばLED(Light Emitting Diode)、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、スピーカなどである。この例では、報知部87は、操作部80に設けられたLEDであり、所定のパターンAで点灯や点滅することにより、使用者に電池61の残量が第4閾値Vt4以下となったことを報知する(ステップS104)。これにより、吐水が終了したことを使用者が故障と誤解することを防げる。
【0090】
固定洗浄の実行中に、電池61の残量が第4閾値Vt4よりも大きいとき(ステップS102:NO)には、衛生洗浄便座100は以下の動作を行う。
使用者が止ボタン81を押した場合(ステップS105:YES)、制御部70は、電磁弁131を閉状態とする(ステップS106)。
【0091】
使用者が位置調整ボタン85(「前」ボタン85a又は「後」ボタン85b)を押した場合(ステップS107:YES)、電池61の残量が第2閾値Vt2以下であったとき(ステップS108:YES)には、制御部70は、位置調整モードを実行しない。この場合には、制御部70は、モータ21を停止させたままとし(ステップS109)、報知部87は、所定のパターンBにより、使用者に電池61の残量が第2閾値Vt2以下であることを報知する(ステップS110)。これにより、位置調整モードが実行されないことを使用者が故障と誤解することを防げる。
【0092】
位置調整ボタン85が押され、電池61の残量が第2閾値Vt2より大きい場合(ステップS108:NO)、制御部70は、位置調整モードの実行を開始する(ステップS111)。例えば、制御部70は、「後」ボタン85bが押された場合には水圧式洗浄ノズル10を−Δθ回転させる制御を開始し、「前」ボタン85aが押された場合には水圧式洗浄ノズル10を+Δθ回転させる制御を開始する。
【0093】
位置調整モードの実行中(ステップS112:NO)に、電池61の残量が第2閾値Vt2以下となった場合(ステップS108:YES)、制御部70は、位置調整強制停止を実行し(ステップS109)、報知部87は報知を行う(ステップS110)。
水圧式洗浄ノズル10のΔθの回転が終了すると(ステップS112:YES)、モータ21は停止する(ステップS113)。
【0094】
使用者が流量調整ボタン86(「大」ボタン86a又は「小」ボタン86b)を押した場合(ステップS114:YES)、電池61の残量が第3閾値Vt3以下であったとき(ステップS115:YES)には、制御部70は、流量調整モードを実行しない。この場合には、制御部70は、電動流量調整弁132のモータを停止させたままとし(ステップS116)、報知部87は、所定のパターンCにより、使用者に電池61の残量が第3閾値Vt3以下であることを報知する(ステップS117)。これにより、流量調整モードが実行されないことを使用者が故障と誤解することを防げる。なお、パターンCは、パターンBと同じでもよい。
【0095】
流量調整ボタン86が押され、電池61の残量が第3閾値Vt3より大きい場合(ステップS115:NO)、制御部70は、流量調整モードの実行を開始する(ステップS118)。例えば、制御部70は、「大」ボタン86aが押された場合には洗浄水の流量を所定量増加させる制御を開始し、「小」ボタン86bが押された場合には洗浄水の流量を所定量減少させる制御を開始する。
【0096】
流量調整モードの実行中(ステップS119:NO)に、電池61の残量が第3閾値Vt3以下となった場合(ステップS115:YES)、制御部70は、流量調整強制停止を実行し(ステップS116)、報知部87は報知を行う(ステップS117)。
流量の所定量の変更が終了すると(ステップS119:YES)、電動流量調整弁132のモータは停止する(ステップS120)。
【0097】
使用者がノズルムーブボタン84を押した場合(ステップS121:YES)、電池61の残量が第1閾値Vt1以下であったとき(ステップS122:YES)には、制御部70は、ムーブ洗浄モードを実行しない。この場合には、制御部70は、モータ21を停止させたままとし(ステップS123)、報知部87は、所定のパターンDにより、使用者に電池61の残量が第1閾値Vt1以下であることを報知する(ステップS124)。これによりムーブ洗浄が実行されないことを使用者が故障と誤解することを防げる。
【0098】
ノズルムーブボタン84が押され、電池61の残量が第1閾値Vt1よりも大きい場合(ステップS122:NO)、制御部70は、ムーブ洗浄モードを開始する(ステップS126又はステップS128)。この際、電池61の残量が第5閾値Vt5よりも大きい場合(ステップS125:NO)、制御部70は、ムーブ時間を第1の所定時間とする(ステップS127)。また、電池61の残量が第5閾値Vt5以下の場合(ステップS125:YES)、制御部70は、ムーブ時間を第2の所定時間とする(ステップS129)。
【0099】
所定のムーブ時間が経過する前(ステップS127:NO又はステップS129:NO)に、ノズルムーブボタン84が再び押され、ムーブ洗浄モードの停止が指示された場合(ステップS132:YES又はステップS133:YES)、制御部70は、水圧式洗浄ノズル10をノズル標準位置(基準位置P)に移動させる(ステップS130)。その後、モータ21が停止する(ステップS131)。
【0100】
所定のムーブ時間が経過すると(ステップS127:YES又はステップS129:YES)、制御部70は、ムーブ洗浄自動停止を実行する。この際、制御部70は、水圧式洗浄ノズル10をノズル標準位置(基準位置P)に移動させる(ステップS130)。その後、モータ21が停止する(ステップS131)。
【0101】
制御部70は、ムーブ洗浄自動停止によって水圧式洗浄ノズル10の移動を停止させた後も、水圧式洗浄ノズル10からの洗浄水の吐水を継続するために、電磁弁131を開状態のまま保持する。すなわち、ムーブ洗浄自動停止後に、固定洗浄モードが実行される。このようにムーブ洗浄自動停止後も吐水が継続されることにより、局部の汚れが落とし切れていない状態で吐水が終了してしまうことを防止できる。
【0102】
また、上述した通り、制御部70は、ムーブ洗浄自動停止によって水圧式洗浄ノズル10の移動を自動的に停止させる際に、水圧式洗浄ノズル10をあらかじめ設定された所定位置(例えば基準位置P)に移動させてから、水圧式洗浄ノズル10の移動を停止させる。水圧式洗浄ノズル10が所定位置に移動することにより、使用感の良くない位置で水圧式洗浄ノズル10の移動が停止してしまうことを防げる。これにより、ムーブ洗浄自動停止後に最適な位置で吐水を継続できるため、洗浄性が低下することを防止できる。
【0103】
また、ステップS104、S110、S117及びS124において、報知部87は所定時間作動した後、自動停止する。つまり、報知部87の動作は、操作部80等における使用者の操作に基づかずに停止する。報知部87が自動停止することにより、報知部87における電力消費を抑えることができる。なお、この所定時間は、使用者が報知部87の作動に気づくことができる程度の任意の長さでよく、例えば5秒以上10秒以下程度である。
【0104】
なお、以上説明した、Δθ、振幅角(Δγ)、おしり洗浄標準角度(φA)及びビデ標準角度(φB)等のそれぞれは、ノズル本体11の長さ、回動軸Ax1の位置、便座202の形状及び使用者の体格などを考慮して、局部を洗浄しやすいように適宜定められる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座、ノズル、電池収容部、電磁弁、モータ、制御部、操作部などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。