(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1フィンおよび前記第2フィンのうち少なくとも一方は、前記整列方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している、請求項1または2に記載の鉄道車両用電力変換装置。
前記走行方向および前記整列方向に直交し、かつ、前記複数のフィンが突出する突出方向において、前記第1フィンの突出高さと前記第2フィンの突出高さとが異なる、請求項4に記載の鉄道車両用電力変換装置。
前記走行方向および前記整列方向に直交し、かつ、前記複数のフィンが突出する突出方向において、前記第1フィンの突出高さと前記第2フィンの突出高さとが略等しい、請求項6または7に記載の鉄道車両用電力変換装置。
前記冷却部は、前記鉄道車両の床下空間に設置されるとともに、前記冷却部に設けられた前記複数のフィンは、前記鉄道車両の側方に向かって突出している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
前記冷却部は、前記鉄道車両の床下空間に設置されるとともに、前記冷却部に設けられた前記複数のフィンは、前記鉄道車両の下方に向かって突出している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
前記冷却部は、前記走行方向に所定の間隔を隔てて配置された、第1冷却部と第2冷却部とを含み、前記第1冷却部および前記第2冷却部は、それぞれ、前記第1フィンおよび前記第2フィンを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄道車両用電力変換装置では、所定の間隔で配置されている複数の放熱フィンが、電力変換装置本体側において、放熱フィンの走行方向の長さが等しく、かつ、走行方向の全体にわたって放熱フィン同士が対向しているため、走行風が放熱フィン間を通過する際に流路抵抗が生じる距離が長くなり、走行風の速度が低下し易い。このため、上記特許文献1に記載された鉄道車両用電力変換装置では、放熱フィン間を通過する走行風の流速が低下することにより、冷却器の冷却性能が低下してしまうという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、放熱フィン間を通過する走行風の流速の低下を抑制することにより、冷却部の冷却性能を改善することが可能な鉄道車両用電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両に搭載された電力変換装置本体と、電力変換装置本体の熱を放熱する冷却部とを備え、冷却部は、鉄道車両の走行方向に沿って延びるように設けられた複数のフィンを含み、複数のフィンは、互いに隣り合うように
かつ所定の間隔を隔てて整列方向に並んで配置され、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する第1フィンおよび第2フィンを含み、第1フィンおよび第2フィンの走行方向における両端部には、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向する重なり領域を挟むように、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向しない非重なり領域が形成されており、走行方向において、重なり領域における電力変換装置本体側の根元部の長さは、重なり領域における電力変換装置本体とは反対側の先端部の長さよりも長
く、整列方向から見て、重なり領域は、非重なり領域の間において、台形形状となるように配置されている。
【0008】
この発明の一の局面による鉄道車両用電力変換装置は、上記のように、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する第1フィンおよび第2フィンを含み、第1フィンおよび第2フィンの走行方向における両端部には、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向する重なり領域を挟むように、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向しない非重なり領域が形成されている。また、走行方向において、重なり領域における電力変換装置本体側の根元部の長さは、重なり領域における電力変換装置本体とは反対側の先端部の長さよりも長い。これにより、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向しない非重なり領域において、隣り合うフィン同士の整列方向における間隔が、走行方向の長さが等しい1種類のフィンだけが並んで設けられる場合と比較して広くなるので、非重なり領域におけるフィン間の走行風の流路抵抗を低下させることができる。さらに、走行方向の両端部に非重なり領域が形成されていることにより、特に流路抵抗が大きくなるフィン間への走行風の入口において、流路抵抗を効果的に小さくすることができる。その結果、非重なり領域においてフィン間の走行風の流路抵抗が低下した分だけ、走行風の流速の低下を抑制し、冷却部の冷却性能を改善することができる。また、重なり領域において根元部の長さが先端部の長さより長いことにより、第1フィンおよび第2フィンの両方の根元部(基台に接合される部分)の長さを長くすることができるので、第1フィンと第2フィンとの走行方向の両端部に非重なり領域を設けて流路抵抗を低下させても、基台に対する第1フィンおよび第2フィンの両方の接合強度を確保することができる。
【0009】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、第1フィンと第2フィンとが交互に配置されている。このように構成すれば、第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向しない非重なり領域を、冷却部に同一枚数のフィンを設ける条件下において最も多く形成することができる。その結果、フィン間の走行風の流路抵抗を確実に低下させることができる。
【0010】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、第1フィンおよび第2フィンのうち少なくとも一方は、整列方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している。このように構成すれば、たとえば、第1フィンおよび第2フィンを、それぞれ、長方形形状および台形形状、長方形形状および三角形形状、長方形形状および平行四辺形形状、整列方向から見て互いに逆向きに配置された2つの平行四辺形形状とすることにより、整列方向から見て互いに外形形状が異なり、非重なり領域を形成することが可能な第1フィンおよび第2フィンを容易に実現することができる。
【0011】
上記第1フィンおよび第2フィンのうち少なくとも一方が長方形形状とは異なる多角形形状を有している鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、第1フィンおよび第2フィンのうち一方は、整列方向から見て長方形形状であり、第1フィンおよび第2フィンのうち他方は、整列方向から見て台形形状または三角形形状である。このように構成すれば、第1フィンおよび第2フィンのうち一方が、製造が容易な長方形形状であるとともに、第1フィンおよび第2フィンのうち他方が、底辺を長方形形状と共通とした場合に底辺に対する両側に確実に非重なり領域を形成可能な台形形状または三角形形状であるので、重なり領域を挟むように第1フィンと第2フィンとが整列方向に対向しない非重なり領域を容易に形成することができる。
【0012】
上記第1フィンおよび第2フィンのうち一方が長方形形状であり、他方が台形形状または三角形形状である鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、走行方向および整列方向に直交し、かつ、複数のフィンが突出する突出方向において、第1フィンの突出高さと第2フィンの突出高さとが異なる。このように構成すれば、第1フィンの突出高さまたは第2フィンの突出高さを適宜変更することにより、重なり領域の大きさを容易に調整することができるので、たとえば、整列方向において、第1フィンの面積と第2フィンの面積とを略等しくすることが容易になる。ここで、整列方向において、第1フィンの面積と第2フィンの面積とを略等しくした場合、第1フィンからの放熱量と第2フィンからの放熱量とを略等しくすることができる。その結果、電力変換装置本体の第1フィンおよび第2フィンが設置される側の表面温度を均等化し易くなり、電力変換装置本体において熱抵抗のバラつきを抑制することができる。
【0013】
上記第1フィンおよび第2フィンのうち少なくとも一方が整列方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、第1フィンおよび第2フィンのうち一方は、整列方向から見て長方形形状であり、第1フィンおよび第2フィンのうち他方は、整列方向から見て平行四辺形形状である。このように構成すれば、第1フィンおよび第2フィンのうち一方が、製造が容易な長方形形状であるとともに、第1フィンおよび第2フィンのうち他方が、底辺を長方形形状と共通とした場合に底辺に対する両側に確実に非重なり領域が形成される平行四辺形形状であるので、第1フィンと第2フィンとの走行方向の両端部に非重なり領域を容易に形成することができる。また、底辺を長方形形状と共通とした場合、第1フィンおよび第2フィンのうち他方が台形形状または三角形形状である場合と比較して、突出高さを一定(フィンの面積を一定)にしたまま非重なり領域の面積を大きくすることができる。
【0014】
上記第1フィンおよび第2フィンのうち少なくとも一方が長方形形状とは異なる多角形形状を有している鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、第1フィンおよび第2フィンは、平行四辺形形状であり、第1フィンにおける根元部と走行方向の一方端とがなす角度と、第2フィンにおける根元部と走行方向の他方端とがなす角度とが等しい。このように構成すれば、平行四辺形形状のフィン同士が整列方向から見て互いに逆向きとなるので、第1フィンおよび第2フィンのうち一方が長方形形状であり、他方が平行四辺形形状である場合と比較して、重なり領域を挟むように非重なり領域を一層容易に形成することができる。また、第1フィンおよび第2フィンが整列方向から見て互いに逆向きの平行四辺形形状であるので、重なり領域を挟むように形成される非重なり領域が、走行方向と直交する方向に延びる中心線に対して対称となるので、第1フィンおよび第2フィンのうち一方が長方形形状であり、他方が平行四辺形形状であり、非重なり領域が対称とならない場合と比較して、走行方向が反転した場合でも、走行風の流速の低下を等しく抑制することができる。
【0015】
上記第1フィンおよび第2フィンのうち一方は、長方形形状であり、他方は、平行四辺形形状である、または、第1フィンおよび第2フィンが平行四辺形形状である鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、走行方向および整列方向に直交し、かつ、複数のフィンが突出する突出方向において、第1フィンの突出高さと第2フィンの突出高さとが略等しい。このように構成すれば、たとえば、第1フィンと第2フィンとで根元部の長さを等しくした場合、整列方向において、第1フィンの面積と第2フィンの面積とを略等しくすることができるので、第1フィンからの放熱量と第2フィンからの放熱量とを略等しくすることができる。その結果、電力変換装置本体の第1フィンおよび第2フィンが設置される側の表面温度を均等化し易くなり、電力変換装置本体において熱抵抗のバラつきを抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、冷却部は、鉄道車両の床下空間に設置されるとともに、冷却部に設けられた複数のフィンは、鉄道車両の側方に向かって突出している。このように構成すれば、電力変換装置本体の側方に冷却部を設置するための空間が十分にある場合に、走行風の流速の低下を抑制することにより冷却性能を改善することができる冷却部を容易に設置することができる。また、冷却部を電力変換装置本体の側方に設けることにより、鉄道車両の走行時に、冷却部が鉄道車両の側方に露出した状態となる。これにより、他の装置などが多く取り付けられる鉄道車両の下方から走行風を取り込む場合と比べて、乱れの少ない走行風を取り込むことができるので、鉄道車両の側方からの走行風を冷却部により容易に取り込むことができる。この結果、冷却部の冷却性能(放熱性能)をより改善させることができる。
【0017】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、冷却部は、鉄道車両の床下空間に設置されるとともに、冷却部に設けられた複数のフィンは、鉄道車両の下方に向かって突出している。このように構成すれば、電力変換装置本体の下方に冷却部を設置するための空間が十分にある場合に、走行風の流速の低下を抑制することにより冷却性能を改善することができる冷却部を容易に設置することができる。
【0018】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、冷却部は、走行方向に所定の間隔を隔てて配置された、第1冷却部と第2冷却部とを含み、第1冷却部および第2冷却部は、それぞれ、第1フィンおよび第2フィンを含む。このように構成すれば、第1冷却部および第2冷却部のうち上流側の冷却部で流速の低下が抑制された走行風が第1冷却部および第2冷却部のうち下流側の冷却部に取り込まれるとともに、下流側の冷却部での流速の低下も抑制されるので、上流側の冷却部および下流側の冷却部のいずれにおいても、冷却性能を改善することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、放熱フィン間を通過する走行風の流速の低下を抑制することにより、冷却器の冷却性能を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態による鉄道車両10用の電力変換装置20の構成について説明する。なお、電力変換装置20は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。以下では、鉄道車両10の走行方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する枕木方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に共に直交する上下方向をZ軸方向として説明を行う。
【0023】
本発明の第1実施形態による電力変換装置20は、
図1および
図2に示すように、鉄道車両10における車体11の床下空間11aに設置されている。ここで、鉄道車両10の概略構成を簡潔に説明する。鉄道車両10は、
図1に示すように、車体11と、架線2に供給されている電力を受電(集電)するパンタグラフ12と、架線2からの電力を利用して駆動輪13を回転させる誘導電動機14(破線で示す)と、空調機や制御機器などその他の複数の機器類15と、を備える。そして、電力変換装置20は、鉄道車両10の走行時に、架線2からの電力を半導体素子(図示せず)のスイッチングにより変換して、誘導電動機14の回転制御を行う役割を有している。
【0024】
(電力変換装置の構成)
電力変換装置20は、電力変換を行う半導体装置21と、半導体装置21内の半導体素子から発生する熱を外気に放熱するための複数の冷却器30と、を備える。また、
図2に示すように、電力変換装置20は、車体11の床下空間11aにおいて車体11の下面11bに吊り下げられて固定されている。また、電力変換装置20では、半導体装置21の側方(Y2方向)に、複数の冷却器30が配置されている。複数の冷却器30は、車体11の延びるX軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器31およびX2側の冷却器32を含んでいる。なお、半導体装置21は、特許請求の範囲の「電力変換装置本体」の一例である。また、冷却器30は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。また、冷却器31および冷却器32は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却部」および「第2冷却部」の一例である。
【0025】
(冷却器の構成)
冷却器31および冷却器32は、それぞれ、半導体装置21のY2側の側面21aから側方(Y2方向)に向かって突出するとともに、X軸方向に沿って薄板状に延びる複数のフィン40を含む。複数のフィン40は、
図2に示すように、Z軸方向から見て互いに外形形状が異なるとともに、Y軸方向に突出する複数のフィン41と複数のフィン42とを含む。フィン41およびフィン42は、所定のフィンピッチを有して、互い違いにZ軸方向に並ぶように隣接配置されている。すなわち、複数のフィン41は、Z軸方向においてフィン42と隣り合うとともに、複数のフィン42は、Z軸方向においてフィン41と隣り合うように配置されている。また、フィン41およびフィン42は、平板状の受熱板43のY2側の表面上に固定されている。そして、受熱板43を介して伝達された半導体素子から発生する熱がフィン41およびフィン42から放出される。なお、以降の説明では、複数のフィン41およびフィン42が並ぶZ軸方向を「整列方向」と呼ぶ場合がある。
【0026】
フィン41は、
図3に示すように、X軸方向における長さW1、かつ、Y軸方向における長さ(突出高さ)H1を有し、Z軸方向から見て長方形形状となるように構成されている。また、フィン42は、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21とは反対側(Y2側)の先端部の長さW2、かつ、Y軸方向における長さ(突出高さ)H2を有し、Z軸方向から見て台形形状となるように構成されている。すなわち、フィン41の半導体装置21側の根元部の長さW1は、フィン42の半導体装置21側の根元部の長さW1と等しい。また、フィン41およびフィン42のうち一方(フィン42)は、Z軸方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している。また、第1実施形態の電力変換装置20では、Z軸方向から見て、フィン41の面積は、フィン42の面積と略等しくなるように構成されている。なお、フィン41の半導体装置21側の根元部とフィン42の半導体装置21側の根元部とは、X軸方向にずれないように配置されている。
【0027】
ここで、フィン42における根元部の長さW1は先端部の長さW2よりも長い。また、フィン41のY軸方向における突出高さH1は、フィン42のY軸方向における突出高さH2よりも小さい。すなわち、フィン41およびフィン42が突出する突出方向において、フィン41の突出高さH1と、フィン42の突出高さH2とは異なっている。
【0028】
上記の構成により、第1実施形態の電力変換装置20では、Z軸方向から見て、フィン41とフィン42とが対向する重なり領域S1と、フィン41とフィン42とが対向しない非重なり領域S2とが形成されている。なお、重なり領域S1は、図面中において、斜線で示した領域である。
【0029】
重なり領域S1は、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21とは反対側(Y2側)の先端部の長さW3を有し、Z軸方向から見て台形形状に形成されている。ここで、根元部の長さW1は、フィン41およびフィン42の根元部の長さW1と等しく、先端部の長さW3よりも長い。
【0030】
非重なり領域S2は、X軸方向に重なり領域S1を挟むように、フィン41のX軸方向における一方側(X1側)および他方側(X2側)にそれぞれ形成された非重なり領域S2aおよび非重なり領域S2bと、重なり領域S1よりもY2側に形成された非重なり領域S2cとを含む。
【0031】
これにより、非重なり領域S2aおよびS2bでは、Z軸方向において、フィン41同士が隣り合い、フィン40間の間隔が所定のフィンピッチの2倍となる。したがって、非重なり領域S2aおよびS2bでは、重なり領域S1よりも、フィン40間の間隔が広くなるので、フィン40間を走行風が通過する際の流路抵抗が小さくなる。
【0032】
なお、第1実施形態の電力変換装置20では、フィン41の面積とフィン42の面積とが略等しくなるように構成されているので、フィン41による非重なり領域S2aと非重なり領域S2bの面積の合計は、フィン42による非重なり領域S2cの面積と略等しい。
【0033】
(実施例)
次に、第1実施形態の電力変換装置20において、鉄道車両10がX1方向に走行した場合の走行風の流速および冷却器の冷却性能を計測熱流体解析により計算した結果について説明する。
【0034】
走行風の流速の計測算出は、
図4に示すように、フィン41のYZ平面における断面D1aおよび断面D1bと、フィン42のYZ平面における断面D2aおよび断面D2bにおいて行った。断面D1aおよび断面D2aは、非重なり領域S2aのX1側の端部近傍であり、断面D1bおよび断面D2bは、非重なり領域S2bのX2側の端部近傍である。すなわち、走行風の上流側の冷却器31の入口近傍および出口近傍と、走行風の下流側の冷却器32の入口近傍および出口近傍とにおける、走行風の流速を計測したの平均速度(各断面における体積流量を断面積で割った値)である。なお、フィン40が全て長方形形状(フィン41の形状)で構成されている場合の走行風の流速も比較例として計測計算した。
【0035】
図5には、断面D1a、断面D1b,断面D2aおよび断面D2bにおいて、それぞれ一定期間計測したおける走行風の平均速度を示している。(第1実施形態の電力変換装置20における)長方形形状のフィン41および台形形状のフィン42とで構成された場合のフィン40間の走行風の平均速度は、断面D1a、断面D1b,断面D2aおよび断面D2bのいずれにおいても、長方形形状のフィン41のみから構成されたフィン40間の走行風の平均速度よりも大きくなっている。これは、フィン40間の流路抵抗が低下することにより、走行風の速度の低下が抑制されたためであると考えられる。なお、半導体装置21が発熱している場合において、冷却器30による放熱性能を計測したところ、比較例と比べて、半導体装置21の温度の上昇を10%程度抑制することができることが確認できた。
【0036】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、整列方向(Z軸方向)から見て互いに異なる外形形状を有するフィン41およびフィン42を含み、フィン41およびフィン42の走行方向(X軸方向)における両端部(X1側およびX2側の端部)には、フィン41とフィン42とが整列方向に対向する重なり領域S1を挟むように、フィン41とフィン42とが整列方向に対向しない非重なり領域S2が形成されている。また、走行方向において、重なり領域S1における半導体装置21側の根元部の長さW1は、重なり領域S1における半導体装置21とは反対側の先端部の長さW3よりも長い。これにより、フィン41とフィン42とが整列方向に対向しない非重なり領域S2において、隣り合うフィン40同士の整列方向における間隔が、走行方向の長さが等しい1種類のフィン40だけが並んで設けられる場合と比較して広くなるので、非重なり領域S2におけるフィン40間の走行風の流路抵抗を低下させることができる。さらに、走行方向の両端部に非重なり領域S2(S2a、S2b)が形成されていることにより、特に流路抵抗が大きくなるフィン40間への走行風の入口において、流路抵抗を効果的に小さくすることができる。その結果、非重なり領域S2においてフィン40間の走行風の流路抵抗が低下した分だけ、走行風の流速の低下を抑制し、冷却器30の冷却性能を改善することができる。また、重なり領域S1において根元部の長さW1が先端部の長さW3より長いことにより、フィン41およびフィン42の両方の根元部(受熱板43に接合される部分)の長さを長くすることができるので、フィン41と42フィンとの走行方向の両端部に非重なり領域S2を設けて流路抵抗を低下させても、受熱板43に対するフィン41およびフィン42の両方の接合強度を確保することができる。
【0038】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、フィン41とフィン42とが交互に配置されている。これにより、フィン41とフィン42とが整列方向(Z軸方向)に対向しない非重なり領域S2を、冷却器30に同一枚数のフィン40を設ける条件下において最も多く形成することができる。その結果、フィン40間の走行風の流路抵抗を確実に低下させることができる。
【0039】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、フィン41およびフィン42のうち少なくとも一方(フィン42)は、整列方向(Z軸方向)から見て長方形形状とは異なる多角形形状(台形形状)を有している。これにより、フィン41およびフィン42を、それぞれ、長方形形状および台形形状の構成とすることにより、整列方向から見て互いに外形形状が異なり、非重なり領域S2を形成することが可能なフィン41およびフィン42を容易に実現することができる。
【0040】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、フィン41およびフィン42のうち一方(フィン41)は、整列方向(Z軸方向)から見て長方形形状であり、フィン41およびフィン42のうち他方(フィン42)は、整列方向から見て台形形状である。これにより、フィン41およびフィン42のうち一方(フィン41)が、製造が容易な長方形形状であるとともに、フィン41およびフィン42のうち他方(フィン42)が、底辺を長方形形状と共通とすることにより底辺に対する両側に確実に非重なり領域S2を形成可能な台形形状であるので、重なり領域S1を挟むようにフィン41とフィン42とが整列方向に対向しない非重なり領域S2を容易に形成することができる。
【0041】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、走行方向(X軸方向)および整列方向(Z軸方向)に直交し、かつ、複数のフィン40が突出する突出方向(Y軸方向)おいて、フィン41の突出高さH1とフィン42の突出高さH2とが異なる。これにより、フィン41の突出高さH1またはフィン42の突出高さH2を適宜変更することにより、重なり領域S1の大きさを容易に調整することができるので、整列方向において、フィン41の面積とフィン42の面積とを略等しくすることが容易になる。また、整列方向において、フィン41の面積とフィン42の面積とを略等しくした場合、フィン41からの放熱量とフィン42からの放熱量とを略等しくすることができる。その結果、半導体装置21のフィン41およびフィン42が設置される側の表面温度を均等化し易くなり、半導体装置21において熱抵抗のバラつきを抑制することができる。
【0042】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、冷却器30は、鉄道車両10の床下空間に設置されるとともに、冷却器30に設けられた複数のフィン40は、鉄道車両10の側方(Y2方向)に向かって突出している。これにより、半導体装置21の側方に冷却器30を設置するための空間が十分にある場合に、走行風の流速の低下を抑制することにより冷却性能を改善することができる冷却器30を容易に設置することができる。また、冷却器30を半導体装置21の側方に設けることにより、鉄道車両10の走行時に、冷却器30が鉄道車両10の側方に露出した状態となる。これにより、他の装置などが多く取り付けられる鉄道車両10の下方から走行風を取り込む場合と比べて、乱れの少ない走行風を取り込むことができるので、鉄道車両10の側方からの走行風を冷却器30により容易に取り込むことができる。この結果、冷却器30の冷却性能(放熱性能)をより改善させることができる。
【0043】
また、第1実施形態の電力変換装置20では、上記のように、冷却器30は、走行方向(X軸方向)に所定の間隔を隔てて配置された、冷却器31と冷却器32とを含み、冷却器31および冷却器32は、それぞれ、フィン41およびフィン42を含む。これにより、冷却器31および冷却器32のうち上流側の冷却器30で流速の低下が抑制された走行風が冷却器31および冷却器32のうち下流側の冷却器30に取り込まれるとともに、下流側の冷却器30での流速の低下も抑制されるので、上流側の冷却器30および下流側の冷却器30のいずれにおいても、冷却性能を改善することができる。
【0044】
(第1実施形態の第1変形例)
次に、
図6および
図7を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例では、上記第1実施形態における台形形状のフィン42の代わりに、三角形形状のフィン142を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0045】
図6に示すように、第1実施形態の第1変形例による電力変換装置120では、半導体装置21の側方(Y2方向)に、複数の冷却器130が配置されている。複数の冷却器130は、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器131およびX2側の冷却器132を含んでいる。なお、冷却器130は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。また、冷却器131および冷却器132は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却部」および「第2冷却部」の一例である。
【0046】
冷却器131および冷却器132は、それぞれ、半導体装置21のY2側の側面21aから側方(Y2方向)に向かって突出する複数のフィン140を含む。複数のフィン140は、
図6に示すように、Z軸方向から見て互いに外形形状が異なるとともに、Y軸方向に突出する複数のフィン41と複数のフィン142とを含む。フィン41およびフィン142は、所定のフィンピッチを有して、互い違いにZ軸方向に並ぶように隣接配置されている。
【0047】
フィン142は、
図7に示すように、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、かつ、Y軸方向における長さ(突出高さ)H12を有し、Z軸方向から見て三角形形状(二等辺三角形形状)となるように構成されている。すなわち、フィン41およびフィン142のうち一方(フィン142)は、Z軸方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している。また、第1実施形態の第1変形例による電力変換装置120では、Z軸方向から見て、フィン41の面積は、フィン142の面積と略等しくなるように構成されている。
【0048】
ここで、フィン41のY軸方向における突出高さH1は、フィン142のY軸方向における突出高さH12よりも低い。すなわち、フィン41およびフィン142とが突出する突出方向において、フィン41の突出高さH1と、フィン142の突出高さH12とは異なっている。
【0049】
上記の構成により、第1実施形態の第1変形例による電力変換装置120では、Z軸方向から見て、フィン41とフィン142とが対向する重なり領域S11と、フィン41とフィン142とが対向しない非重なり領域S12とが形成されている。なお、重なり領域S11は、図面中において、斜線で示した領域である。
【0050】
重なり領域S11は、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21とは反対側(Y2側)の先端部の長さW13を有し、Z軸方向から見て台形形状に形成されている。ここで、根元部の長さW1は、フィン41およびフィン142の根元部の長さW1と等しく、先端部の長さW13よりも長い。
【0051】
非重なり領域S12は、X軸方向に重なり領域S11を挟むように、フィン41のX軸方向における一方側(X1側)および他方側(X2側)にそれぞれ形成された非重なり領域S12aおよび非重なり領域S12bと、重なり領域S11よりもY2側に形成された非重なり領域S12cとを含む。
【0052】
これにより、非重なり領域S12aおよびS12bでは、Z軸方向において、フィン41同士が隣り合い、フィン140間の間隔が所定のフィンピッチの2倍となる。したがって、非重なり領域S12aおよびS12bでは、重なり領域S11よりも、フィン140間の間隔が広くなるので、フィン140間を走行風が通過する際の流路抵抗が小さくなる。
【0053】
なお、第1実施形態の第1変形例による電力変換装置120では、フィン41の面積とフィン142の面積とが略等しくなるように構成されているので、フィン41による非重なり領域S12aと非重なり領域S12bの面積の合計は、フィン142による非重なり領域S12cの面積と略等しい。
【0054】
なお、第1実施形態の第1変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
第1実施形態の第1変形例による電力変換装置120では、上記のように、フィン41およびフィン142のうち一方(フィン41)は、整列方向(Z軸方向)から見て長方形形状であり、フィン41およびフィン142のうち他方(フィン142)は、整列方向から見て三角形形状である。これにより、フィン41およびフィン142のうち一方(フィン41)が、製造が容易な長方形形状であるとともに、フィン41およびフィン142のうち他方(フィン142)が、底辺を長方形形状と共通とすることにより底辺に対する両側に確実に非重なり領域S12を形成可能な三角形形状であるので、重なり領域S11を挟むようにフィン41とフィン42とが整列方向に対向しない非重なり領域S12を容易に形成することができる。
【0056】
なお、第1実施形態の第1変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0057】
(第1実施形態の第2変形例)
次に、
図8および
図9を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。この第1実施形態の第2変形例では、上記第1実施形態における台形形状のフィン42の代わりに、平行四辺形形状のフィン242を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0058】
第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、半導体装置21の側方(Y2方向)に、複数の冷却器230が配置されている。複数の冷却器230は、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器231およびX2側の冷却器232を含んでいる。なお、冷却器230は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。また、冷却器231および冷却器232は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却部」および「第2冷却部」の一例である。
【0059】
冷却器231および冷却器232は、それぞれ、半導体装置21のY2側の側面21aから側方(Y2方向)に向かって突出する複数のフィン240を含む。複数のフィン240は、
図8に示すように、Z軸方向から見て互いに外形形状が異なるとともに、Y軸方向に突出する複数のフィン41と複数のフィン242とを含む。フィン41およびフィン242は、所定のフィンピッチを有して、互い違いにZ軸方向に並ぶように隣接配置されている。
【0060】
フィン242は、
図9に示すように、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21の反対側(Y2側)の先端部の長さW1、かつ、Y軸方向における長さ(突出高さ)H1を有し、Z軸方向から見て平行四辺形形状となるように構成されている。すなわち、フィン41およびフィン242のうち一方(フィン242)は、Z軸方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している。また、第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、Z軸方向から見て、フィン41の面積は、フィン242の面積と略等しくなるように構成されている。
【0061】
ここで、フィン41のY軸方向における突出高さH1は、フィン142のY軸方向における突出高さH1と略等しい。
【0062】
上記の構成により、第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、Z軸方向から見て、フィン41とフィン242とが対向する重なり領域S21と、フィン41とフィン242とが対向しない非重なり領域S22とが形成されている。なお、重なり領域S21は、図面中において、斜線で示した領域である。
【0063】
重なり領域S21は、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21とは反対側(Y2側)の先端部の長さW23を有し、Z軸方向から見て台形形状に形成されている。ここで、根元部の長さW1は、フィン41およびフィン242の根元部の長さW1と等しく、先端部の長さW23よりも長い。
【0064】
非重なり領域S22は、X軸方向に重なり領域S21を挟むように、フィン41のX軸方向における一方側(X1側)および他方側(X2側)にそれぞれ形成された非重なり領域S22aおよび非重なり領域S22bを含む。
【0065】
これにより、非重なり領域S22aおよび非重なり領域S22bでは、Z軸方向において、それぞれ、フィン242同士およびフィン41同士が隣り合い、フィン240間の間隔が所定のフィンピッチの2倍となる。したがって、非重なり領域S22では、重なり領域S21よりも、フィン240間の間隔が広くなるので、フィン240間を走行風が通過する際の流路抵抗が小さくなる。
【0066】
なお、第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、フィン41の面積とフィン242の面積とが略等しくなるように構成されているので、フィン242による非重なり領域S22aの面積は、フィン41による非重なり領域S22bの面積と略等しい。
【0067】
なお、第1実施形態の第2変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0068】
第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、上記のように、フィン41およびフィン242のうち一方(フィン41)は、整列方向(Z軸方向)から見て長方形形状であり、フィン41およびフィン242のうち他方(フィン242)は、整列方向から見て平行四辺形形状である。これにより、フィン41およびフィン242のうち一方(フィン41)が、製造が容易な長方形形状であるとともに、フィン41およびフィン242のうち他方(フィン242)が、底辺を長方形形状と共通とし、底辺に対する両側に確実に非重なり領域S22が形成される平行四辺形形状であるので、フィン41とフィン242との走行方向(X軸方向)の両端部に非重なり領域S22を容易に形成することができる。また、底辺を長方形形状と共通とした場合、フィン41およびフィン242のうち他方(フィン242)が台形形状または三角形形状の場合と比較して、突出高さH1を一定(フィンの面積を一定)にしたまま非重なり領域S22の面積を大きくすることができる。
【0069】
また、第1実施形態の第2変形例による電力変換装置220では、上記のように、走行方向(X軸方向)および整列方向(Z軸方向)に直交し、かつ、複数のフィン240が突出する突出方向(Y軸方向)において、フィン41の突出高さH1とフィン242の突出高さH1とが略等しい。これにより、フィン41とフィン42とで根元部の長さW1が等しいことにより、整列方向において、フィン41の面積とフィン242の面積とを略等しくすることができるので、フィン41からの放熱量とフィン242からの放熱量とを略等しくすることができる。その結果、半導体装置21のフィン41およびフィン242が設置される側の表面温度を均等化し易くなり、半導体装置21において熱抵抗のバラつきを抑制することができる。
【0070】
なお、第1実施形態の第2変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0071】
(第1実施形態の第3変形例)
次に、
図10および
図11を参照して、第1実施形態の第3変形例について説明する。この第1実施形態の第3変形例では、上記第1実施形態の第2変形例における長方形形状のフィン41に代わりに、平行四辺形形状のフィン341を設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態および上記第1実施形態の第2変形例と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0072】
第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、半導体装置21の側方(Y2方向)に、複数の冷却器330が配置されている。複数の冷却器330は、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器331およびX2側の冷却器332を含んでいる。なお、冷却器330は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。また、冷却器331および冷却器332は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却部」および「第2冷却部」の一例である。
【0073】
冷却器331および冷却器332は、それぞれ、半導体装置21のY2側の側面21aから側方(Y2方向)に向かって突出する複数のフィン340を含む。複数のフィン340は、
図10に示すように、Z軸方向から見て互いに外形形状が異なるとともに、Y軸方向に突出する複数のフィン341と複数のフィン242とを含む。フィン341およびフィン242は、所定のフィンピッチを有して、互い違いにZ軸方向に並ぶように隣接配置されている。
【0074】
フィン341は、
図11に示すように、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21の反対側(Y2側)の先端部の長さW1、かつ、Y軸方向における長さ(突出高さ)H1を有し、Z軸方向から見て平行四辺形形状となるように構成されている。すなわち、フィン341およびフィン242は共に、Z軸方向から見て長方形形状とは異なる多角形形状を有している。また、フィン341とフィン242とは、Z軸方向から見て、半導体装置21側の根元部が同一位置となるように配置され、かつ、フィン341の半導体装置21側の根元部とX軸方向の一方端(X2側)とがなす角度A1は、フィン242の半導体装置21側の根元部とX軸方向の他方端(X1側)とがなす角度A2と等しくなるように配置されている。すなわち、フィン341とフィン242とは、フィン341またはフィン242のX軸方向の中心を通りY軸方向に延びる中心線に対して対称となるように配置されている。また、第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、Z軸方向から見て、フィン341の面積は、フィン242の面積と略等しくなるように構成されている。
【0075】
ここで、フィン341のY軸方向における突出高さH1は、フィン242のY軸方向における突出高さH1と略等しい。
【0076】
上記の構成により、第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、Z軸方向から見て、フィン341とフィン242とが対向する重なり領域S31と、フィン341とフィン242とが対向しない非重なり領域S32とが形成されている。なお、重なり領域S31は、図面中において、斜線で示した領域である。
【0077】
重なり領域S31は、Y軸方向における半導体装置21側(Y1側)の根元部の長さW1、Y軸方向における半導体装置21とは反対側(Y2側)の先端部の長さW33を有し、Z軸方向から見て台形形状に形成されている。ここで、根元部の長さW1は、フィン341およびフィン242の根元部の長さW1と等しく、先端部の長さW33よりも長い。
【0078】
非重なり領域S32は、X軸方向に重なり領域S31を挟むように、フィン41のX軸方向における一方側(X1側)および他方側(X2側)にそれぞれ形成された非重なり領域S32aおよび非重なり領域S32bを含む。
【0079】
これにより、非重なり領域S32aおよび非重なり領域S32bでは、Z軸方向において、それぞれ、フィン242同士およびフィン341同士が隣り合い、フィン340間の間隔が所定のフィンピッチの2倍となる。したがって、非重なり領域S32では、重なり領域S31よりも、フィン340間の間隔が広くなるので、フィン340間を走行風が通過する際の流路抵抗が小さくなる。
【0080】
なお、第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、フィン341の面積とフィン242の面積とが略等しくなるように構成されているので、フィン242による非重なり領域S32aの面積は、フィン341による非重なり領域S32bの面積と略等しい。
【0081】
なお、第1実施形態の第3変形例のその他の構成は、上記第1実施形態および上記第1実施形態の第2変形例と同様である。
【0082】
第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、上記のように、フィン341およびフィン242は、平行四辺形形状であり、フィン341における根元部と走行方向(X軸方向)の一方端(X2側の端)とがなす角度A1と、フィン242における根元部と走行方向の他方端(X1側の端)とがなす角度A2とが等しい。これにより、平行四辺形形状のフィン340同士が整列方向(Z軸方向)から見て互いに逆向きとなるので、フィン341およびフィン242のうち一方(フィン341)が長方形形状であり、他方(フィン242)が平行四辺形形状である場合と比較して、重なり領域S31を挟むように非重なり領域S32を一層容易に形成することができる。また、フィン341およびフィン242が整列方向から見て互いに逆向きの平行四辺形形状であるので、重なり領域S31を挟むように形成される非重なり領域S32が、走行方向と直交する方向に延びる中心線に対して対称となり、フィン341およびフィン242のうち一方(フィン341)が長方形形状であり、他方が平行四辺形形状である場合と比較して、走行方向が反転した場合でも、走行風の流速の低下を等しく抑制することができる。
【0083】
また、第1実施形態の第3変形例による電力変換装置320では、上記のように、走行方向(X軸方向)および整列方向(Z軸方向)に直交し、かつ、複数のフィン340が突出する突出方向(Y軸方向)において、フィン341の突出高さH1とフィン242の突出高さH1とが略等しい。これにより、フィン341とフィン242とで根元部の長さが等しいことにより、整列方向(Z軸方向)において、フィン341の面積とフィン242の面積とを略等しくすることができるので、フィン341からの放熱量とフィン242からの放熱量とを略等しくすることができる。その結果、半導体装置21のフィン341およびフィン242が設置される側の表面温度を均等化し易くなり、半導体装置21において熱抵抗のバラつきを抑制することができる。
【0084】
なお、第1実施形態の第3変形例のその他の効果は、上記第1実施形態および上記第1実施形態の第2変形例と同様である。
【0085】
[第2実施形態]
次に、
図12および
図13を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の冷却器30と同様の構成の冷却器430を、半導体装置21の下方に突出するように設けた例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0086】
本発明の第2実施形態による鉄道車両410用の電力変換装置420は、
図12および
図13に示すように、半導体装置21と、複数の冷却器430と、を備える。また、
図12に示すように、電力変換装置420では、半導体装置21の下方(Z1方向)に、複数の冷却器430が配置されている。複数の冷却器430は、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器431およびX2側の冷却器432を含んでいる。なお、電力変換装置420は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。また、冷却器430は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。また、冷却器431および冷却器432は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1冷却部」および「第2冷却部」の一例である。
【0087】
冷却器431および冷却器432は、それぞれ、半導体装置21のZ1側の下面21bから下方(Z1方向)に向かって突出するとともに、X軸方向に沿って薄板状に延びる複数のフィン440を含む。複数のフィン440は、
図13に示すように、Y軸方向から見て互いに外形形状が異なるとともに、Z軸方向に突出する複数のフィン441と複数のフィン442とを含む。フィン441およびフィン442は、所定のフィンピッチを有して、互い違いにY軸方向に並ぶように隣接配置されている。すなわち、複数のフィン441は、Y軸方向においてフィン442と隣り合うとともに、フィン442は、Y軸方向においてフィン441と隣り合うように配置されている。
【0088】
上記の構成により、第2実施形態の電力変換装置420では、上記第1実施形態の電力変換装置20と同様に、Y軸方向から見て、フィン441とフィン442とが対向する重なり領域S41と、フィン441とフィン442とが対向しない非重なり領域S42とが形成されている。これにより、フィン441およびフィン442のX軸方向の一方側(X1側)および他方側(X2側)に形成された非重なり領域S42では、Y軸方向において、フィン441同士が隣り合い、フィン440間の間隔が所定のフィンピッチの2倍となる。したがって、フィン441およびフィン442のX1側およびX2側に形成された非重なり領域S42では、重なり領域S41よりも、フィン440間の間隔が広くなるので、フィン440間を走行風が通過する際の流路抵抗が小さくなる。
【0089】
なお、第2実施形態による電力変換装置420の構成は、冷却器30を半導体装置21の側方に設けた上記第1実施形態の電力変換装置20の構成を、冷却器430を半導体装置21の下方に設けるように置き換えたものである。したがって、第2実施形態による電力変換装置420のその他の構成は、上記第1実施形態の電力変換装置20のY軸方向(突出方向)およびZ軸方向(整列方向)を、それぞれ、Z軸方向およびY軸方向に変更した点を除いて同様である。
【0090】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の電力変換装置420では、上記のように、整列方向(Y軸方向)から見て互いに異なる外形形状を有するフィン441およびフィン442を含み、フィン441およびフィン442の走行方向(X軸方向)における両端部(X1側およびX2側の端部)には、フィン441とフィン442とが整列方向に対向する重なり領域S41を挟むように、フィン441とフィン442とが整列方向に対向しない非重なり領域S42が形成されている。これにより、第1実施形態の電力変換装置20と同様に、フィン440間の走行風の流路抵抗を低下させることができる。その結果、フィン440間の走行風の流路抵抗が低下した分だけ、走行風の流速の低下を抑制し、冷却器430の冷却性能を改善することができる。
【0091】
また、第2実施形態の電力変換装置420では、上記のように、冷却器430は、鉄道車両410の床下空間に設置されるとともに、冷却器430に設けられた複数のフィン440は、鉄道車両410の下方(Z1方向)に向かって突出している。これにより、半導体装置21の下方に冷却器430を設置するための空間が十分にある場合に、走行風の流速の低下を抑制することにより冷却性能を改善することができる冷却器430を容易に設置することができる。
【0092】
なお、第2実施形態のその他の効果については、上記第1実施形態と同様である。
【0093】
[第3実施形態]
次に、
図14および
図15を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態の冷却器30と同様の構成と、上記第2実施形態の冷却器430と同様の構成とを共に備える冷却器530の例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0094】
本発明の第3実施形態による鉄道車両510用の電力変換装置520は、
図14および
図15に示すように、半導体装置21と、複数の冷却器530と、を備える。また、
図14に示すように、電力変換装置520では、半導体装置21の側方(Y2方向)および下方(Z1方向)に、複数の冷却器530が配置されている。複数の冷却器530は、半導体装置21の側方において、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器31およびX2側の冷却器32を含むとともに、半導体装置21の下方において、X軸方向に沿って所定の間隔を隔てて配置された、X1側の冷却器431およびX2側の冷却器432を含んでいる。なお、電力変換装置520は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。また、冷却器530は、特許請求の範囲の「冷却部」の一例である。
【0095】
なお、第3実施形態による電力変換装置520の構成は、冷却器30を半導体装置21の側方に設けた上記第1実施形態の電力変換装置20の構成、および、冷却器430を半導体装置21の下方に設けた上記第2実施形態の電力変換装置420の構成を、それぞれ、冷却器530として、半導体装置21の側方および下方に設けたものである。したがって、第3実施形態による電力変換装置520の構成は、上記第1実施形態の電力変換装置20および上記第2実施形態の電力変換装置420の構成を兼ねたものとなっている。
【0096】
したがって、第3実施形態の電力変換装置520では、上記第1実施形態の電力変換装置20の効果と、上記第2実施形態の電力変換装置420の効果とを兼ね備えたものとなる。すなわち、フィン40間およびフィン440間の走行風の流路抵抗が低下した分だけ、走行風の流速の低下を抑制し、冷却器530の冷却性能を改善することができる。その結果、冷却部が半導体装置21の側方または下方のみに設けられる第1実施形態の電力変換装置20および第2実施形態の電力変換装置420の構成と比較して、冷却器530の冷却性能を一層改善することができる。
【0097】
[その他の変形例]
今回開示された実施形態および変形例は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態および変形例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0098】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、車体11の床下空間11aに設置された電力変換装置20、120、220、320、420および520に対して本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。たとえば、車体11の屋根上に設置された電力変換装置に対して、本発明を適用してもよい。
【0099】
また、上記第1〜第3実施形態では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有するフィン同士の面積が略等しくなるように構成したが、本発明はこれに限らない。本発明では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有するフィン同士の面積を異ならせてもよい。
【0100】
また、上記第1〜第3実施形態では、走行方向に沿って、所定の間隔で、2台の冷却器が並ぶように構成したが、本発明はこれに限らない。本発明では、走行方向に沿って1台のみを設けてもよいし、3台以上の冷却器を所定の間隔で設けてもよい。
【0101】
また、上記第1〜第3実施形態では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する2種類のフィンを、2台の冷却器において、同一の組み合わせとするように構成したが、本発明はこれに限らない。本発明では、2台の冷却器において、異なる組み合わせで、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する2種類のフィンを設けてもよい。たとえば、一方の冷却器を上記第1実施形態の冷却器30に、他方の冷却器を上記第1実施形態の第2変形例の冷却器230としてもよい。
【0102】
また、上記第1〜第3実施形態では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する2種類のフィンを、整列方向から見て、互いに違いに配置するように構成したが、本発明はこれに限らない。本発明では、整列方向から見て、同一の外形形状を有するフィンが隣り合う部分を含むように構成してもよい。つまり、少なくとも整列方向の一部において、同一の外形形状を有するフィンが隣り合う部分があればよく、整列方向の全てにおいて、互いに異なる外形形状を有する2種類のフィンが隣り合う必要はない。
【0103】
また、上記第1〜第3実施形態では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する2種類のフィンを設けたが、本発明はこれに限らない。本発明では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する3種類以上のフィンを設けてもよい。
【0104】
また、上記第1〜第3実施形態では、整列方向から見て互いに異なる外形形状を有する2種類のフィン同士を、半導体装置21側の根元部の長さW1が等しく、かつ、2種類のフィンが走行方向にずれていない(走行方向において同一位置)となるように構成したが、本発明はこれに限らない。本発明では、2種類のフィン同士で、根元部の長さが異なってもよいし、走行方向にずれるように構成してもよい。
【0105】
また、上記第1および第3実施形態では、冷却器31(131、231、331)および冷却器32(132、232、332)を、半導体装置21の一方(Y2側)の側面に設けるように構成したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却器31(131、231、331)および冷却器32(132、232、332)を、半導体装置21の他方(Y1側)の側面に設けてもよい。また、冷却器31(131、231、331)および冷却器32(132、232、332)を、半導体装置21の両側の側面に設けてもよい。
【0106】
また、上記第1〜第3実施形態では、架線2からの電力を利用して走行する架空電車線方式の鉄道車両10、410および510の電力変換装置20、120、220、320、420および520に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。走行用のレールとは別に並行して第三の給電用レール(第三軌条)が敷設され、この第三軌条に対して車体11側に設けられた集電靴(コレクターシュー)が擦って集電する第三軌条方式の鉄道車両10、410および510の電力変換装置に対して本発明を適用してもよい。
【0107】
また、上記第1〜第3実施形態では、架線2からの電力を利用して走行する架空電車線方式の鉄道車両10、410および510の電力変換装置20、120、220、320、420および520に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ディーゼル機関を直接的な駆動源とする気動車に搭載された機器の冷却や、ディーゼル機関の発電によって誘導電動機14を回転させる電気式気動車などの鉄道車両10、410および510の電力変換装置の冷却に対して、本発明を適用してもよい。