特許第6855898号(P6855898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6855898
(24)【登録日】2021年3月22日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20210329BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20210329BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B66F9/24 T
   B66F11/04
   B66F9/24 H
   B66F9/06 L
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-82621(P2017-82621)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-177503(P2018-177503A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−185900(JP,A)
【文献】 特開2003−165700(JP,A)
【文献】 特開2013−052948(JP,A)
【文献】 特開平08−104500(JP,A)
【文献】 特開2009−113881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0197094(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0221916(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体上に旋回動、起伏動及び伸縮動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端側に旋回動自在に設けられた作業台と、
前記作業台に設けられる超音波発生手段と、
前記作業台に設けられる超音波検知手段と、
前記ブーム及び前記作業台を前記走行体上の所定の位置に自動格納することを指示する自動格納指示手段と、
前記自動格納指示手段からの自動格納指示に応じて、前記ブーム及び前記作業台を前記所定の位置に格納させる格納制御手段と、を備え、
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記ブーム又は前記作業台を移動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
高所作業車。
【請求項2】
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記ブームを旋回動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記ブームを起伏動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項1に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記ブームを伸縮動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項1に記載の高所作業車。
【請求項5】
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記作業台を旋回動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項1に記載の高所作業車。
【請求項6】
前記作業台の旋回動を、水平面で所定の角度旋回させた場合であって、前記距離が前記第2の所定値より大きくならなかった場合に、前記格納制御手段は、前記ブームを旋回動させ、前記距離が前記第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項5に記載の高所作業車。
【請求項7】
前記作業台の旋回動を、水平面で所定の角度旋回させた場合であって、前記距離が前記第2の所定値より大きくならなかった場合に、前記格納制御手段は、前記ブームを起伏動させ、前記距離が前記第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項5に記載の高所作業車。
【請求項8】
前記作業台の旋回動を、水平面で所定の角度旋回させた場合であって、前記距離が前記第2の所定値より大きくならなかった場合に、前記格納制御手段は、前記ブームを伸縮動させ、前記距離が前記第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
請求項5に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業車を用いた作業後におけるブーム及び作業台の自動格納機能では、障害物(周囲物体)の有無に関わらず作動するため、ブーム及び/又は作業台が周囲物体と干渉する可能性があった(特許文献1参照)。そのため、操作者は、目視等で周囲を確認しながら、各自の判断で自動格納操作と手動格納操作とのどちらを使用するかを判断していた。具体的には、周囲物体がある場合、自動格納操作を一旦停止して手動で周囲物体の回避処理を行ってから、再度自動格納操作を再開させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−113881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、作業者は、周囲物体との干渉防止のための監視及び操作に注意を払わなければならず、負担が大きいという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、ブーム及び/又は作業台を自動格納できる高所作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によると、
走行体と、
前記走行体上に旋回動、起伏動及び伸縮動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端側に旋回動自在に設けられた作業台と、
前記作業台に設けられる超音波発生手段と、
前記作業台に設けられる超音波検知手段と、
前記ブーム及び前記作業台を前記走行体上の所定の位置に自動格納することを指示する自動格納指示手段と、
前記自動格納指示手段からの自動格納指示に応じて、前記ブーム及び前記作業台を前記所定の位置に格納させる格納制御手段と、を備え、
前記格納制御手段は、前記超音波検知手段の検知結果に基づく、前記作業台と、前記作業台の周囲の物体との間の距離が第1の所定値になった場合に格納作業を停止して、前記ブーム又は前記作業台を移動させて前記距離が第2の所定値より大きくなった場合に、前記格納作業を再開する、
高所作業車である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によると、ブーム及び/又は作業台を自動格納できる高所作業車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る高所作業車の一例の全体構成図である。
図2】本実施形態に係る高所作業車の制御系のブロック図の一例である。
図3】本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の一例である。
図4】本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の他の例である。
図5】本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態に係る高所作業車について、図面を参照して説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(高所作業車の全体構成例)
まず、図1を用いて、本実施形態に係る高所作業車1の全体構成について説明する。図1に、本実施形態に係る高所作業車の一例の全体構成図を示す。
【0011】
図1に示すように、高所作業車1は、走行機能を有する車両の本体部分である走行体10と、走行体10の前方に配置されたキャビン11と、走行体10に旋回自在に搭載された旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13と、ブラケット13に取り付けられたブーム14と、走行体10の四隅に設けられたアウトリガ16a〜16dと、を備えている。
【0012】
旋回台12は、旋回モータなどの旋回駆動手段51(図2参照)を回転させることで、旋回ベアリング機構により走行体10に対して相対的に回転(旋回)する。
【0013】
ブーム14は、ブラケット13側から順に、基端ブーム、中間ブーム、先端ブームなどによって入れ子式に構成されており、内部の伸縮シリンダなどの伸縮駆動手段52(図2参照)を伸縮することによって伸縮自在に設けられている。
【0014】
また、基端ブームは、ブラケット13に水平に設置された支持軸に回動自在に取り付けられており、起伏シリンダなどの起伏駆動手段53(図2参照)を伸縮することでブーム14全体が起伏自在に設けられている。
【0015】
先端ブームの先端側には、作業者が高所作業を行うために搭乗する作業台としてのバケット15が取り付けられている。バケット15は、首振駆動手段53(図2参照)により、水平面上で回転可能に設けられている。
【0016】
バケット15には、作業者がバケット15に搭乗した状態でブーム14の旋回・起伏・伸縮操作とバケット15のスイング操作(旋回操作)などができるように、各種の操作手段としての操作レバーが配置された操作盤などの格納制御手段20が設けられている。
【0017】
また、バケット15には、作業後にブーム14及びバケット15を所定の格納位置へと移動させるための、自動格納指示手段21が設けられている。自動格納指示手段21としては、例えば、スイッチタイプのものや、ボタンタイプのもの等が挙げられる。
【0018】
例えば、バケット15に搭乗した作業者が自動格納指示手段21を作動させることにより、後述する制御方法により、ブーム14及びバケット15は所定の格納位置へと移動する。なお、自動格納指示手段21は、操作盤20上に設けられる構成であってもよいし、別途独立して設けられる構成であってもよい。
【0019】
バケット15には、超音波センサ30が取り付けられている。超音波センサ30は、1つのバケット15に対して、例えばバケット15の上部に1つ、底部に1つ、側面部に5つ等といったように、複数個取り付けることが好ましい。
【0020】
超音波センサ30は、少なくとも超音波発生手段及び超音波検知手段を含んで構成されており、超音波発生手段により発生した超音波の反射波を超音波検知手段が検知することにより、超音波センサ30と周囲物体との距離を測定することができる。
【0021】
(制御系の構成)
次に、図2を参照して、本実施形態に係る高所作業車の制御系の最適な構成について説明する。図2に、本実施形態に係る高所作業車の制御系のブロック図の一例を示す。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る高所作業車は、自動格納指示手段21を有する。自動格納指示手段21は、作業者の操作により自動格納指令信号を格納制御手段20へと送信する。格納制御手段20は、自動格納指示手段21からの自動格納指令信号に基づき、所定の基本格納経路に従ってブーム14及びバケット15を所定の格納位置まで作動させる。自動格納指令信号は、バケット15の首振駆動に関する首振駆動信号及び首振停止信号、ブーム14の旋回駆動に関する旋回駆動信号及び旋回停止信号、ブーム14の伸縮駆動に関する伸縮駆動信号及び伸縮停止信号、ブーム14の起伏駆動に関する起伏駆動信号及び起伏停止信号を含む。具体的な自動格納方法のフローについては、図3を用いて後述する。
【0023】
本実施形態に係る高所作業車1は、旋回角度検出手段40、伸縮長さ検出手段41、起伏角度検出手段42、首振角度検出手段43を有する。
【0024】
旋回角度検出手段40は、旋回台12の旋回角度を検出し、伸縮長さ検出手段41は、ブーム14のブーム長さを検出し、起伏角度検出手段42は、ブーム14の起伏角度を検出し、首振角度検出手段43は、バケット15の首振角度(旋回角度)を検出する。
【0025】
また、本実施形態に係る高所作業車は、格納位置記憶手段44及び位置比較手段45を有する。格納位置記憶手段44は、ブーム14に関する所定の起伏角度、所定の旋回角度、所定の伸縮長さ、及び、バケット15に関する所定の首振角度を記憶している。なお、ここで言う、所定の起伏角度、所定の旋回角度、所定の伸縮長さ、及び、所定の首振角度とは、格納位置における、ブーム14の起伏角度、旋回角度、伸縮長さ及びバケット15の首振角度に対応している。
【0026】
位置比較手段45は、旋回角度検出手段40の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と異なる場合に、旋回駆動に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、伸縮長さ検出手段41の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と異なる場合に、伸縮駆動に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、起伏角度検出手段42の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と異なる場合に、起伏駆動に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、首振角度検出手段43の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と異なる場合に、首振駆動に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。
【0027】
そして、位置比較手段45は、旋回角度検出手段40の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と一致する場合に、旋回停止に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、伸縮長さ検出手段41の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と一致する場合に、伸縮停止に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、起伏角度検出手段42の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と一致する場合に、起伏停止に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。また、位置比較手段45は、首振角度検出手段43の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している対応する記憶値と一致する場合に、首振停止に関する制御信号を格納制御手段20に送信する。
【0028】
格納制御手段20は、位置比較手段45から首振駆動に関する制御信号を受信すると、首振駆動手段50に首振駆動信号を送信する。そして、格納制御手段20は、位置比較手段45から首振停止に関する制御信号を受信すると、首振駆動手段50に首振停止信号を送信する。
【0029】
また、格納制御手段20は、位置比較手段45から旋回駆動に関する制御信号を受信すると、旋回駆動手段51に旋回駆動信号を送信する。そして、格納制御手段20は、位置比較手段45から旋回停止に関する制御信号を受信すると、旋回駆動手段51に旋回停止信号を送信する。
【0030】
さらに、格納制御手段20は、位置比較手段45から伸縮駆動に関する制御信号を受信すると、伸縮駆動手段52に伸縮駆動信号を送信する。そして、格納制御手段20は、位置比較手段45から伸縮停止に関する制御信号を受信すると、伸縮駆動手段52に伸縮停止信号を送信する。
【0031】
またさらに、格納制御手段20は、位置比較手段45から起伏駆動に関する制御信号を受信すると、起伏駆動手段53に起伏駆動信号を送信する。そして、格納制御手段20は、位置比較手段45から起伏停止に関する制御信号を受信すると、起伏駆動手段53に起伏停止信号を送信する。
【0032】
また、本実施形態に係る高所作業車は、超音波センサ30、距離記憶手段46及び距離比較手段47を有する。
【0033】
超音波センサ30は、少なくとも超音波発生手段及び超音波検知手段を含んで構成されており、超音波発生手段により発生した超音波の反射波を超音波検知手段が検知することにより、超音波センサ30と周囲物体との間の距離を測定し、距離情報(距離値)を距離比較手段47に送信する。
【0034】
距離記憶手段46は、超音波センサ30と周囲物体との間の距離に関する所定の距離情報(距離値)を記憶している。距離比較手段47は、超音波センサ30により検出された距離値と、所定の距離値とを比較し、検出された距離値が第1の所定の距離値になった場合(若しくは、第1の所定の距離値以下になった場合)に、周囲物体を回避してブーム14及びバケット15を所定の格納位置まで作動させるための回避制御信号を格納制御手段20へと送信する。また、回避制御信号を格納制御手段20へと送信した後、距離比較手段47は、超音波センサ30により検出された距離値と、第2の所定の距離値とを比較し、検出された距離が第2の所定の距離値を超えた場合、回避停止信号を格納制御手段20へと送信する。なお、第1の所定値と、第2の所定値とは、同じ値であってもいいが、通常、第1の所定値は、第2の所定値よりも小さい値とする。
【0035】
格納制御手段20は、回避制御信号を受信すると、自動格納のための各々の駆動を停止させ、首振駆動手段50、旋回駆動手段51、伸縮駆動手段52及び/又は起伏駆動手段53の各々に、周囲物体の回避に関する駆動信号を送信する。なお、周囲物体を回避してブーム14及びバケット15を所定の格納位置まで作動させるフローについては、図4及び図5を参照して後述する。そして、格納制御手段20は、回避停止信号を受信すると、回避のための各々の駆動を停止させ、上述の格納位置記憶手段44及び位置比較手段45に基づく自動格納を再開させる。
【0036】
(実施例:障害物がない場合の自動格納方法)
次に、本実施形態に係る自動格納方法の一例について、図3乃至図5を参照して説明する。先ずは、図3を参照して、高所作業車の周囲に障害物(周囲物体)がない存在しない場合の自動格納方法について説明する。図3に、本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の一例を示す。
【0037】
ブーム14の自動格納においては、ブーム14の伸縮駆動、旋回駆動、起伏駆動でブーム14を作業位置から格納位置まで移動させる。本実施例では、上記3つの駆動を、優先度の高い順番に伸縮駆動、旋回駆動、起伏駆動の順番で実施する実施例について説明する。即ち、作業位置から先ずブーム14を全縮駆動させ、その後格納位置まで、旋回駆動、伏せ駆動させる実施例について説明する。しかしながら、本発明はこの点において限定されない。例えば、作業位置から先ずブーム14を旋回させ、その後格納位置まで全縮駆動、伏せ駆動させてもよい。
【0038】
本実施形態に係る高所作業車1においては、作業者が自動格納指示手段21を作動させると、自動格納指令信号を格納制御手段20に送信し、基本格納経路に従ったブーム14及びバケット15の自動格納が開始される。
【0039】
格納制御手段20は、伸縮駆動手段52に伸縮駆動信号を送信し、所定のブーム長さへの縮み動作を開始する(ステップS100)。縮み動作時は、超音波センサ30による障害物(周囲物体)の検知を行う。なお、本実施例において、障害物の検知とは、超音波センサ30と周囲物体との間の距離値が、距離記憶手段46に記憶された所定の距離値になる(若しくは所定の距離値以下となる)場合のことを意味する。
【0040】
縮み動作中に超音波センサ30により障害物が検知されなかった場合(ステップS110:No)、縮み動作は、ブーム14が所定のブーム長さになる(ブーム14が全縮する)まで実施される(ステップS120:No)。
【0041】
所定のブーム長さとなったかどうかは、例えば、位置比較手段45による、伸縮長さ検出手段41の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している記憶値に一致したかどうかを判定すること等により実施することができる。
【0042】
ブーム14が所定のブーム長さとなった、即ち、ブーム14が全縮した場合(ステップS120:Yes)、位置比較手段45は伸縮停止に関する制御信号を送信し、格納制御手段20はこの制御信号を受信すると、伸縮駆動手段52に伸縮停止信号を送信し、縮み動作を停止する(ステップS140)。
【0043】
次に、格納制御手段20は、旋回駆動手段51に旋回駆動信号を送信し、所定の旋回角度への旋回動作を開始する(ステップS150)。旋回動作時は、超音波センサ30による障害物(周囲物体)の検知を行う。
【0044】
旋回動作中に超音波センサ30により障害物が検知されなかった場合(ステップS160:No)、旋回動作は、ブーム14が所定の位置となるまで実施される(ステップS170:No)。
【0045】
ブーム14が所定の位置となったかどうかは、例えば、位置比較手段45による、旋回角度検出手段40の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している記憶値に一致したかどうかを判定することにより実施することができる。
【0046】
ブーム14が所定の位置となった場合(ステップS170:Yes)、位置比較手段45は旋回停止に関する制御信号を送信し、格納制御手段20はこの制御信号を受信すると、旋回駆動手段51に旋回停止信号を送信し、旋回動作を停止する(ステップS190)。
【0047】
次に、格納制御手段20は、首振駆動手段50に首振駆動信号を送信し、所定の首振角度への首振動作を開始する(ステップS200)。首振動作は、バケット15が所定の位置となるまで繰り返し実施される(ステップS210:No)。
【0048】
バケット15が所定の位置となったかどうかは、例えば、位置比較手段45による、首振角度検出手段43の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している記憶値に一致したかどうかを判定することにより実施することができる。
【0049】
バケット15が所定の位置となった場合(ステップS210:Yes)、位置比較手段45は首振停止に関する制御信号を送信し、格納制御手段20はこの制御信号を受信すると、首振駆動手段50に首振停止信号を送信し、首振動作を停止する(ステップS220)。
【0050】
なお、本実施形態において、首振動作時も、超音波センサ30による障害物(周囲物体)の検知を行う構成であってもよい。
【0051】
最後に、格納制御手段20は、起伏駆動手段53に起伏駆動信号を送信し、所定の格納位置までの伏せ動作を開始する(ステップS230)。伏せ動作は、ブーム14が所定の位置となるまで繰り返し実施される(ステップS240:No)。
【0052】
ブーム14が所定の位置となったかどうかは、例えば、位置比較手段45による、起伏角度検出手段42の検出値が、格納位置記憶手段44の記憶している記憶値に一致したかどうかを判定することにより実施することができる。
【0053】
ブーム14が所定の位置となった場合(ステップS240:Yes)、位置比較手段45は起伏停止に関する制御信号を送信し、格納制御手段20はこの制御信号を受信すると、起伏駆動手段53に起伏停止信号を送信し、伏せ動作を停止する(ステップS250)と共に自動格納を終了する。
【0054】
なお、本実施形態において、伏せ動作時も、超音波センサ30による障害物(周囲物体)の検知を行う構成であってもよい。
【0055】
(実施例:障害物の回避方法1)
次に、上記図3を参照して説明した自動格納方法について、ステップS100の縮み動作中に超音波センサ30が障害物(周囲物体)を検知した場合(ステップS110:Yes)における、周囲物体の回避方法について、図4を参照して説明する。図4に、本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の他の例を示す。なお、自動格納時における、障害物を検知するとは、超音波センサ30と周囲物体との間の距離値が、距離記憶手段46に記憶された第1の所定の距離値になる(若しくは第1の所定の距離値以下となる)場合のことを意味する。また、障害物の回避時における、障害物を検知しなくなるとは、超音波センサ30と周囲物体との間の距離値が、距離記憶手段46に記憶された第2の所定の距離値になる(若しくは第2の所定の距離値以上となる)場合のことを意味する。
【0056】
図3を参照して説明した縮み動作中に超音波センサ30により障害物が検知された場合(ステップS110:Yes)、距離比較手段47は回避制御信号を送信し、格納制御手段20は回避制御信号を受信すると、伸縮駆動手段52に伸縮停止信号を送信し、縮み動作を停止する(ステップS1301)。
【0057】
次に、格納制御手段20は、首振駆動手段50に首振駆動信号を送信し、首振動作を開始する(ステップS1302)。首振動作により、超音波センサ30が障害物を検知しなくなった場合(ステップS1303:No)、距離比較手段47は回避停止信号を送信し、格納制御手段20は回避停止信号を受信すると、再びステップS100に戻り、縮み動作を続行する。
【0058】
首振動作中に超音波センサ30が障害物を検知している場合(ステップS1303:Yes)、この首振動作は、バケット15が所定の位置に移動するまで実施される(ステップS1304:No)。なお、ここで言うバケット15が所定の位置に移動するとは、バケット15が全周可能なタイプの高所作業車の場合は、例えば、バケット15が水平面で一周することを意味する。また、バケット15が全周する場合にバケット15がブーム14等に干渉するタイプの高所作業車の場合は、例えば、バケット15がブーム14等に干渉しない位置まで移動することを意味する。
【0059】
バケット15が所定の位置まで移動しても障害物の検知がなくならなかった場合(ステップS1304:Yes)、格納制御手段20は首振駆動手段50に首振停止信号を送信し、首振動作を停止する(ステップS1305)。
【0060】
そして、格納制御手段20は、旋回駆動手段51に旋回駆動信号を送信し、旋回動作を開始する(ステップS1306)。旋回動作により、超音波センサ30が障害物を検知しなくなった場合(ステップS1307:Yes)、距離比較手段47は回避停止信号を送信し、格納制御手段20は回避停止信号を受信すると、再びステップS100に戻り、縮み動作を続行する。
【0061】
旋回動作中に超音波センサ30による障害物の検知反応がなくならなかった場合(ステップS1307:No)、この旋回動作は、ブーム14が水平面において一周するまで実施される(ステップS1308:No)。
【0062】
ブーム14が水平面において一周しても障害物の検知がなくならなかった場合(ステップS1308:Yes)、格納制御手段20は旋回駆動手段51に旋回停止信号を送信し、旋回動作を停止する(ステップS1309)。
【0063】
そして、格納制御手段20は、起伏駆動手段53に起伏駆動信号を送信し、起き動作を開始する(ステップS1310)。起き動作により、超音波センサ30が障害物を検知しなくなった場合(ステップS1311:Yes)、距離比較手段47は回避停止信号を送信し、格納制御手段20は回避停止信号を受信すると、再びステップS100に戻り、縮み動作を続行する。
【0064】
起き動作中に超音波センサ30による障害物の検知反応がなくならなかった場合(ステップS1311:No)、この起き動作は、ブーム14が鉛直になるまで実施される(ステップS1312:No)。
【0065】
ブーム14が鉛直になっても障害物の検知がなくならなかった場合(ステップS1312:Yes)、格納制御手段20は起伏駆動手段53に起伏停止信号を送信し、起き動作を停止する(ステップS1313)。そして、図示しない通知手段などにより、作業者に自動格納を停止する旨を通知する(ステップS1314)とともに、自動格納を停止する。
【0066】
上記本実施形態に係る高所作業車においては、自動格納時に超音波センサ30が障害物を検知した場合に、格納制御手段20は自動格納を停止させ、自動で障害物を回避させた後に、自動格納を再開させる。そのため、作業者が周囲物体との干渉防止のための監視及び操作に注意を払う必要が少なくなり、作業者の負担を軽減することができる。
また、障害物を回避する場合には、先ずは、バケット15の首振動作により障害物を回避させることが好ましい。これにより、障害物の回避前のブーム14の駆動を、首振動作による障害物の回避後に引き続き実施することができる。
【0067】
(実施例:障害物の回避方法2)
次に、上記図3を参照して説明した自動格納方法について、ステップS150の旋回動作中に超音波センサ30が障害物(周囲物体)を検知した場合(ステップS160:Yes)における、障害物の回避方法について、図5を参照して説明する。図5に、本実施形態に係る高所作業車の自動格納方法のフロー図の他の例を示す。なお、自動格納時における、障害物を検知するとは、超音波センサ30と周囲物体との間の距離値が、距離記憶手段46に記憶された第1の所定の距離値になる(若しくは第1の所定の距離値以下となる)場合のことを意味する。また、障害物の回避時における、障害物を検知しなくなるとは、超音波センサ30と周囲物体との間の距離値が、距離記憶手段46に記憶された第2の所定の距離値になる(若しくは第2の所定の距離値以上となる)場合のことを意味する。
【0068】
図3を参照して説明した旋回動作中に超音波センサ30により障害物が検知された場合(ステップS160:Yes)、距離比較手段47は回避制御信号を送信し、格納制御手段20は回避制御信号を受信すると、旋回駆動手段51に旋回停止信号を送信し、旋回動作を停止する(ステップS1801)。
【0069】
次に、格納制御手段20は、首振駆動手段50に首振駆動信号を送信し、首振動作を開始する(ステップS1802)。首振動作により、超音波センサ30が障害物を検知しなくなった場合(ステップS1803:Yes)、距離比較手段47は回避停止信号を送信し、格納制御手段20は回避停止信号を受信すると、再びステップS150に戻り、旋回動作を続行する。
【0070】
首振動作中に超音波センサ30による障害物の検知反応がなくならなかった場合(ステップS1803:No)、この首振動作は、バケット15が所定の位置に移動するまで実施される(ステップS1804:No)。
【0071】
バケット15が所定の位置に移動するまで障害物の検知がなくならなかった場合(ステップS1804:Yes)、格納制御手段20は首振駆動手段50に首振停止信号を送信し、首振動作を停止する(ステップS1805)。
【0072】
そして、格納制御手段20は、起伏駆動手段53に起伏駆動信号を送信し、起き動作を開始する(ステップS1806)。起き動作により、超音波センサ30が障害物を検知しなくなった場合(ステップS1807:Yes)、距離比較手段47は回避停止信号を送信し、格納制御手段20は回避停止信号を受信すると、再びステップS150に戻り、旋回動作を続行する。
【0073】
起き動作中に超音波センサ30による障害物の検知反応がなくならなかった場合(ステップS1807:No)、この起き動作は、ブーム14が鉛直になるまで実施される(ステップS1808:No)。
【0074】
ブーム14が鉛直になっても障害物の検知がなくならなかった場合(ステップS1808:Yes)、格納制御手段20は起伏駆動手段53に起伏停止信号を送信し、起き動作を停止する(ステップS1809)。そして、図示しない通知手段などにより、作業者に自動格納を停止する旨を通知する(ステップS1810)とともに、自動格納を停止する。
【0075】
上記本実施形態に係る高所作業車においても、自動格納時に超音波センサ30が障害物を検知した場合に、格納制御手段20は自動格納を停止させ、自動で障害物を回避させた後に、自動格納を再開させる。そのため、作業者が周囲物体との干渉防止のための監視及び操作に注意を払う必要が少なくなり、作業者の負担を軽減することができる。
また、本実施形態においても、障害物を回避する場合には、先ずは、バケット15の首振動作により障害物を回避させることが好ましい。これにより、障害物の回避前のブーム14の駆動を、首振動作による障害物の回避後に引き続き実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:高所作業車
10:走行体
11:キャビン
12:旋回台
13:ブラケット
14:ブーム
15:バケット
16:アウトリガ
20:格納制御手段
21:自動格納指示手段
22:レーザ距離測定装置取付け位置算出部
23:検出距離算出部
24:周囲物体位置座標算出部
25:最適格納経路算出部
26:メモリ
30:超音波センサ
40:旋回角度検出手段
41:伸縮長さ検出手段
42:起伏角度検出手段
43:首振角度検出手段
44:格納位置記憶手段
45:位置比較手段
46:距離記憶手段
47:距離比較手段
50:首振駆動手段
51:旋回駆動手段
52:伸縮駆動手段
53:起伏駆動手段
図1
図2
図3
図4
図5